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ホットスタンプ方法
説明

ホットスタンプ方法

【課題】凹部を有する転写面に対して良好に箔を転写することができるホットスタンプ方法を提供する。
【解決手段】ホットスタンプ方法は、凹部11A,11Bを有する転写面11Pに箔50を転写するホットスタンプ方法であって、凹部11A,11Bを覆う箔50を転写面11Pに配置し、加熱したスタンプ部材により箔50を転写面11Pに対して押圧する押圧工程と、押圧工程よりも高圧状態でスタンプ部材の押圧を解除する押圧解除工程と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂成型品の転写面に箔を転写するホットスタンプ方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば車両前面に設けられる合成樹脂製のラジエータグリルの一部に、ホットスタンプ工法にて箔を転写して、エンブレム等の識別マーク(意匠部)を形成する技術が従来から知られている。
【0003】
しかし、内側に湾曲する面(凹曲面)等を有する樹脂成型品では、ホットスタンプ工法にて箔を転写することが困難であった。そこで、凹曲面(転写面)に対応した箔押し面を有する押型を有する押型を凹曲面に対する押圧方向に沿って2以上に分割して押圧する方法が提案されている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭54−89835号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示された箔の転写方法では、箔の加圧を解除すると、箔が復元力で押圧面から剥離してしまい、凹曲面の中心領域に転写不良が発生するという問題があった。
また、周縁部が面取り処理された凹部が転写面に形成されていると、この凹部の周縁部(面取り処理部)に箔が転写できないという問題があった。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、凹部を有する転写面に対して良好に箔を転写することができるホットスタンプ方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明では以下の手段を採用する。
本発明に係るホットスタンプ方法は、凹部を有する転写面に箔を転写するホットスタンプ方法であって、前記凹部を覆う前記箔を前記転写面に配置し、加熱したスタンプ部材により前記箔を前記転写面に対して押圧する押圧工程と、前記押圧工程よりも高圧状態で前記スタンプ部材の押圧を解除する押圧解除工程と、を有することを特徴とする。
【0008】
前記押圧解除工程において、前記凹部の周縁部に前記箔が密着するように、前記押圧工程との圧力差を調圧することを特徴とする。
【0009】
前記押圧工程を減圧状態で行い、前記押圧解除工程を大気圧状態で行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、凹部を有する転写面に対して良好に箔転写を行うことができる。特に、転写面が内側に湾曲する面(凹曲面)であっても良好に箔転写を行うことができる。また、凹部の周縁部(面取り処理部)に対して良好に箔転写行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】レドームが設けられたラジエータグリル(モール本体)の前面図である。
【図2】図1のA−A断面図である。
【図3】モール本体の背面図であり、スタンプ箔を配置した図である。
【図4】本実施形態に係るホットスタンプ方法を工程順に示した図である。
【図5】図4に続く工程図である。
【図6】本実施形態に係るホットスタンプ方法の箔転写状態を示す図である。
【図7】図6の部分拡大図である。
【図8】従来のホットスタンプ方法の箔転写状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の一実施形態に係るホットスタンプ方法について、図面を参照して説明する。なお、各図では、説明のために各構成要素の縮尺を適宜変更して記載している。
図1は、レドーム10が設けられたラジエータグリル1(モール本体11)の前面図である。図2は、図1のA−A断面図である。
【0013】
レドーム10は、車両に搭載され電波を用いて車両周囲の障害物を検知するレーダ20の検知側に配置されるものである。以下の説明において、レドーム10のレーダ20に対向する面を背面、その反対側で車両前方に対向する面を前面と呼ぶ。
【0014】
図1に示すように、ラジエータグリル1は、車両の前面に設けられる車両構成体であり、複数の略水平方向に延びる部材等が一体となって構成されている。
また、ラジエータグリル1は、中央から上側はモール本体11で構成されており、その中央部にレドーム10を備えている。なお、レドーム10の背面側にはレーダ20(図2参照)が設置されている。
【0015】
レーダ20は、車両に搭載され電波を用いて車両周囲の障害物を検知するものである。より具体的には、車両と車両前方の障害物との距離や相対速度等を計測するものである。また、レーダ20は、車間距離検知用レーダの適用周波数である76GHz〜77GHzの電波(ミリ波)を出射する発信部と、障害物からの反射電波を受信する受信部とを有している。
【0016】
レーダ20が出射した電波がレドーム10を透過すると電波の減衰が生じるが、レーダ20が安定して動作し車両と障害物との距離等を正しく計測するために、上記減衰はできるだけ低く抑える必要がある。
【0017】
レドーム10は、モール本体11の背面に、接着剤層15を介して、ベース部材16を貼り合わせたものである。レドーム10を形成するモール本体11の部位の中央には、いわゆるエンブレム5が形成される。
ベース部材16は、エンブレム5より広い範囲を覆うように、モール本体11の背面に貼り合わされる。また、ベース部材16は、レーダ20が出射した電波が透過する領域(面積)よりもやや広い範囲を覆うように、モール本体11の背面に貼り合わされる。
つまり、レーダ20が出射した電波は、ベース部材16及びモール本体11の一部からなるレドーム10を透過し、この透過領域の一部にエンブレム5が含まれている。
【0018】
モール本体11は、前面側から見て五角形を左右に延ばした横長の形状を呈し、その横幅はおおよそ800mm〜900mm程度である。また、背面側に凹状に湾曲した板状の部材である。
モール本体11は、透明部材にて形成され、その中央には、透明部材を介して前面から見た場合に金属調を呈する山形突状に立体視認される金属部5A(文字F及び文字Fを取り囲む円形枠)と黒色を呈する平坦な黒色部5B(文字Fと枠の間及び円形枠の外周縁)が形成される。この金属部5Aと黒色部5Bが上述したエンブレム5である。
【0019】
モール本体11の背面には、金属部5Aに対応する凹部(文字F)11A、凹部(円形枠)11Bが形成されている。この凹部11A、凹部11Bは、前面側から見た場合に金属部5Aを立体的に視認させるためのものである。凹部11Aは、エンブレム5の金属部5Aのうちの“文字F”となる。また、凹部11Bは、金属部5Aのうちの円形枠となる(図2、図3参照)。
モール本体11は、例えばポリカーネート(PC基材)等の透明部合成樹脂で形成され、その厚みは3mm〜10mmである。
【0020】
モール本体11の前面は、平滑となるように形成される。そして、モール本体11の前面には、擦過等に対する耐久性を向上させて傷等の発生を防止する。いわゆるハードコート層9が塗装(配置)される。
【0021】
モール本体11の背面側は、内側に凹状に湾曲して形成される。そして、その背面には、第一着色層12、クリアー層13A、金属蒸着層13、クリアー層13B、第二着色層14が重ねて塗装(配置)される。
【0022】
第一着色層12は、上述したエンブレム5の黒色部5Bにのみ塗装される。つまり、第一着色層12がエンブレム5の黒色部5Bとなる。第一着色層12は、凸型の版によるホットスタンプを用いて黒色の黒色箔51をモール本体11の背面うち、エンブレム5の黒色部5Bとなる領域(転写面11P)に転写することにより形成される。
第一着色層12は、黒色以外の色であってもよい。
なお、黒色の黒色箔51を転写面11Pに転写する方法(ホットスタンプ方法)については、後述する。
【0023】
クリアー層13Aは、金属蒸着層13を保護するための層である。
金属蒸着層13は、モール本体11の背面の全面に亘って配置される。この金属蒸着層13は、インジウムを真空蒸着して形成される。金属蒸着層13の膜厚は、約0.05μm程度である。これにより、上述した黒色部5B以外の部分が、前面側から見た場合に、金属蒸着層13により金属調(本実施形態ではクロム調)を呈することになる。
さらに、金属蒸着層13の背面には、クリアー層13Bが塗布される。
【0024】
第二着色層14は黒色の塗装層であり、目隠し、損傷防止のために用いられる塗装層である。第二着色層14は、金属蒸着層13の色調の調整及び金属蒸着層13の保護のために用いられる塗装層である。
第二着色層14は、金属蒸着層13の最背面に灰黒色の合成樹脂を塗布して形成される。第二着色層14の膜圧は、40μmm〜90μmmである。
なお、第二着色層14は、灰黒色以外の色であってもよい。
【0025】
ベース部材16は、図2に示すように、ミリ波レーダの透過範囲に対する面積を有するように射出成型等により形成される。
ベース部材16は、スチレン系樹脂、例えばABS(アクロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合合成樹脂)、AES(アクロニトリル・エチレン・スチレン共重合合成樹脂)等の合成樹脂からなり、その部材厚みは1mm〜10mmである。
ベース部材16には、その前面にモール本体11の凹部11Aに嵌め込まれる凸部16Aと、凹部11Bに嵌め込まれる凸部16Bが形成される。
【0026】
また、ベース部材16の前面のうち凸部16Aと凸部16Bを除く領域には、複数の接着剤充填溝17Aとはみ出し防止溝17Bとが形成される。
接着剤充填溝17Aは、モール本体11とベース部材16との接着強度を得るために必要な接着剤層15の膜厚を確保するために設けられる。また、モール本体11とベース部材16との間に配置される接着剤層15がベース部材16の前面の全域行き亘るようにするために設けられる。はみ出し防止溝17Bは、ベース部材16の前面の最外周部位に形成された枠形の溝であり、接着剤充填溝17Aよりも、幅、深さが共に大きく形成される。
【0027】
そして、ベース部材16の前面のうち、凸部16A,16B及び接着剤充填溝17A、はみ出し防止溝17Bを除く領域は、モール本体11の背面に当接する平坦な当接面18として形成される。当接面18は、レドーム10の厚みの精度を確保するためには広い面積を有する方が好ましい。
【0028】
接着剤層15は、モール本体11とベース部材16を強固に固着するために用いられる。接着剤層15(接着剤15A)としては、ウレタン系接着剤が用いられるが、これに限定されるものではない。例えば、加熱することにより低粘度化するホットメルト系接着剤でもよい。
【0029】
続いて、本実施形態に係るホットスタンプ方法を、図3〜図5に基づいて説明する。
図3は、モール本体11の背面図であり、スタンプ箔50を配置した図である。
図4、図5は、本実施形態に係るホットスタンプによる転写工程を模式的に示す工程図である。特に、スタンプ箔50を模式的に図示している。
【0030】
上述したように、モール本体11の背面(転写面11P)に配置される第一着色層12は、ホットスタンプ方法により黒色の黒色箔51を転写することにより形成される。
このホットスタンプ方法は、モール本体11の転写面11Pに凹部11A,11Bを覆うスタンプ箔50を配置し、減圧状態において加熱したスタンプ部材62によりスタンプ箔50を押圧する押圧工程と、大気圧状態においてスタンプ治具62を解除する押圧解除工程と、からなる。
【0031】
押圧工程と押圧解除工程は、床に固定された下チャンバー60Aと、上下移動可能な上チャンバー60Bと、から構成されるチャンバー60の内部にて行われる。
下チャンバー60Aの底面には、モール本体11を湾曲した背面を上向きにして固定する固定治具61が取り付けられる。
【0032】
また、上チャンバー60Bの天面には、スタンプ治具62がモール本体11の背面(転写面11P)に対向するように取り付けられる。
スタンプ治具62の下面は、モール本体11の背面に対応する凸型湾曲面が形成されており、この凸型湾曲面にはスタンプ版62Bが貼付されている。このスタンプ版62Bは、厚さが2.0〜3.0mmで硬度が約80度のシリコンラバー製の板材で構成されている。
【0033】
下チャンバー60Aの側壁にはバルブ65が取付けられており、チャンバー60の内部の気圧を昇降する際に開閉操作される。また、固定治具61及びスタンプ治具62には、加熱用のヒータコイル64A,64Bが埋設されている。
【0034】
固定治具61のヒータコイル64Aは、温度管理のために一定の加熱温度30℃になるように設定されている。
また、上方のスタンプ治具62のヒータコイル64Bは、230℃の加熱温度でスタンプ版62Bを加熱できる。この加熱温度では、スタンプ版62Bの表面温度は190℃となる。
【0035】
スタンプ箔50は、19μm〜26μmの厚さを有するPET(ポリエチレンテレフタレート)樹脂製のフィルム52と、このフィルム52の片面に離型層を介して顔料などの色材層として形成された4μmの黒色箔51とから構成されている。そして、黒色箔51の転写側にはアクリル系ホットメルト(透明)により約2μmの接着層が形成されている。
【0036】
そして、まず最初に、図3及び図4(a)に示すように、チャンバー60の内部に、モール本体11とスタンプ部材62を対向させて取り付ける。さらに、スタンプ箔50をモール本体11の背面(転写面11P)に載置する。
なお、スタンプ箔50は、転写面11Pを完全に覆う大きさ(広さ)に予め形成されている。
【0037】
次に、図4(b)に示すように、上チャンバー60Bをスタンプ治具62と共に下降させ、下チャンバー60Aと密着させて、チャンバー60を密閉する。この状態で、バルブ65を介してチャンバー60の内部の空気を吸引して減圧し、1000Pa程度の減圧状態にする。
チャンバー60の内部を減圧状態にする目的は、モール本体11の転写面11Pとスタンプ箔50(黒色箔51)の間への気泡の混入を防止するためである。また、転写面11Pに形成された凹部11A,11Bとスタンプ箔50(黒色箔51)により密閉される空間Sを減圧状態にするためである。
この状態において、ヒータコイル64A,64Bには電流がれており、固定治具61及びスタンプ治具62は加熱されている。
【0038】
次に、図4(c)に示すように、スタンプ治具62を降下させて、スタンプ箔50をモール本体11の背面の転写面11Pに対して、3t(22.6kgf/cm)の押圧力で約3秒間程度、押圧する。
押圧と同時に、スタンプ箔50はスタンプ治具62及びモール本体11を介して加熱される。これにより、スタンプ箔50が軟化して、モール本体11の転写面11Pに対する追従性が向上する。さらに、スタンプ箔50の接着層が加熱される。
【0039】
次いで、押圧解除工程では、図5(a)に示すように、バルブ65の操作によりチャンバー60の内部の気圧を大気圧に戻す。
この状態において、モール本体11の転写面11Pの凹部11A,11Bとスタンプ箔50(黒色箔51)により密閉される空間Sは、減圧状態を維持する。転写面11Pの凹部11A,11Bを覆うようにスタンプ箔50(黒色箔51)が配置され、スタンプ箔50の接着層が溶融して空間Sが密閉されるからである。
こうして、凹部11A,11Bの内部は減圧状態が保たれる。したがって、スタンプ箔50により覆われた凹部11A,11Bの空間Sとスタンプ箔50の外側(フィルム52側)の空間には圧力差が生ずる。
【0040】
最後に、図5(b)に示すように、上チャンバー60Bをスタンプ治具62と共に上昇(押圧解除)させる。これにより、スタンプ箔50及びモール本体11は冷却される。
スタンプ治具62をスタンプ箔50から離間しても、スタンプ箔50はモール本体11の転写面11Pに密着貼付された状態を維持する。なぜなら、スタンプ箔50により覆われた凹部11A,11Bの空間Sがスタンプ箔50の外側(フィルム52側)の空間よりも低圧となり、スタンプ箔50がモール本体11の転写面11Pに向けて吸引されるからである。
【0041】
そして、下チャンバー60Aの固定治具61からモール本体11を取り出す。モール本体11を固定治具61から取り出す間に、スタンプ箔50が冷却されて接着層が固化して、黒色箔51が転写面11Pに固着する。
そして、モール本体11からスタンプ箔50のフィルム52を剥がす。具体的には、スタンプ箔50が転写面11Pよりも大きく(広く)形成されているので、スタンプ箔50の外縁部分を摘まんでモール本体11から容易に引き剥がすことができる。
このようにして、スタンプ箔50の黒色箔51のうち、転写面11Pに密着した部分のみが転写される。
以上の工程により、凹部11A,11Bを有するモール本体11の転写面11Pに対して良好に箔転写を行って、第一着色層12が形成される。
【0042】
本実施形態に係るホットスタンプ方法の作用効果について、従来例と比較しつつ詳述する。
図6は、本実施形態に係るホットスタンプ方法の箔転写状態を示す図であって、
(a)はスタンプ箔50のフィルム52を剥がす直前、(b)はスタンプ箔50のフィルム52を剥がした後を示す図である。
図7は、凹部11Bの拡大図であり、(a)はスタンプ箔50のフィルム52を剥がす直前、(b)はスタンプ箔50のフィルム52を剥がした後を示す図である。
図8は、従来のホットスタンプ方法の箔転写状態を示す図であり、(a)はスタンプ治具62を離間した直後、(b)はスタンプ箔50のフィルム52を剥がした後の凹部11Bの拡大図である。
【0043】
ホットスタンプ方法では、加熱したスタンプ治具62によりスタンプ箔50をモール本体11の転写面11Pに密着させた後に、スタンプ治具62を離間する。
図6(a)に示すように、本実施形態に係るホットスタンプ方法では、スタンプ箔50はモール本体11の転写面11Pの湾曲状態に倣って密着貼付された状態を維持する。
上述したように、転写面11Pの凹部11A,11Bとスタンプ箔50により密閉された空間Sが大気圧よりも低圧であるため、スタンプ箔50がモール本体11の転写面11Pに向けて吸引されるからである。
したがって、図6(b)に示すように、スタンプ箔50のフィルム52を剥がすと、スタンプ箔50の黒色箔51が転写面11Pに良好に転写される。
【0044】
一方、図8(a)に示すように、従来例のホットスタンプ方法では、スタンプ治具62をスタンプ箔50から離間すると、スタンプ箔50の両端のみは転写面11Pに貼り付いた状態となるが、スタンプ箔50の中央の領域はスタンプ箔50の弾性復元力により、転写面11Pから剥離してしまう。スタンプ治具62を離間したときは、まだスタンプ箔50の接着層が完全に固化しておらず、接着力を発揮できないからである。
したがって、転写面11Pの中央の領域には、黒色箔51が転写されない転写不良が発生してしまう。
【0045】
また、図7に示すように、本実施形態に係るホットスタンプ方法では、転写面11Pの凹部11A,11Bの周縁部11Rにおいても、黒色箔51が良好に転写される。この周縁部11Rは、円弧状に面取りされた部分(R面取り処理部)である。
図7(a)に示すように、スタンプ箔50は空間Sに向けて吸引された状態となる。このため、スタンプ箔50のうち、凹部11A,11Bを覆う領域の中央が空間Sに向けて凹むように変形する。また、スタンプ箔50のうち、凹部11A,11Bの周縁部11Rにも、スタンプ箔50が密着する。
このため、図7(b)に示すように、凹部11A,11Bの周縁部11Rにも、黒色箔51が良好に転写される。したがって、エンブレム5の金属部5Aとなる凹部11A,11Bとエンブレム5の黒色部5Bとなる転写面11Pの境(見切り位置P1)が凹部11A,11Bの輪郭形状に一致して、エンブレム5の意匠性が向上する。
【0046】
なお、スタンプ箔50が凹部11A,11Bに向けて凹むように変形する量を調整することで、金属部5Aとなる凹部11A,11Bと黒色部5Bとなる転写面11Pの境(見切り位置P1)の位置を調整することができる。つまり、転写面11Pの凹部11A,11Bとスタンプ箔50により密閉された空間Sの圧力(空間Sの圧力とスタンプ箔50の外側の圧力の差)を調整することで、転写面11Pの見切り位置P1を調整できる。
言い換えれば、押圧工程と押圧解除工程の圧力差を調整することで、転写面11Pの見切り位置P1を調整できる。
なお、スタンプ箔50のフィルム52の材質や伸展性等の機械的強度等によってスタンプ箔50の変形量が異なるので、スタンプ箔50の種類によって空間Sの圧力を調整する必要がある。
【0047】
一方、図8(b)に示すように、従来例のホットスタンプ方法では、スタンプ箔50が凹部11A,11Bの周縁部11Rには密着することはない。このため、凹部11A,11Bの周縁部11Rには黒色箔51が転写されない。
したがって、エンブレム5の金属部5Aとなる凹部11A,11Bとエンブレム5の黒色部5Bとなる転写面11Pの境(見切り位置P2)が、本来の見切り位置P1とは異なる位置となるため、エンブレム5の意匠性が低下してしまう。
【0048】
以上のように、本実施形態のホットスタンプ方法によれば、凹部11A,11Bを有する転写面11Pに対して、良好に黒色箔51を転写することができる。特に、転写面11Pが内側に湾曲する面(凹曲面)であっても良好に黒色箔51を転写することができる。また、凹部11A,11B周縁部11Rに対しても良好に黒色箔51を転写することができる。
【0049】
また、押圧工程または押圧解除工程の少なくとも一方の工程を調圧可能なチャンバー60の内部で行い、押圧解除工程を押圧工程よりも高圧状態で行うことで、転写面11Pの凹部11A,11Bとスタンプ箔50により密閉された空間Sを低圧状態にして、スタンプ箔50を転写面11Pに向けて吸引させることができる。
【0050】
また、押圧工程を減圧状態で、押圧解除工程を大気圧状態で行うことで、スタンプ箔50の接着層が効率良く冷却される。また、減圧状態でスタンプ箔50の押圧と加熱を行うので、ヒータコイル64A,64Bの熱を効率よく黒色箔51に伝達することができ、押圧時間を短縮することができる。
【0051】
なお、前述した実施の形態において示した工程手順、あるいは各構成部材の諸形状や組み合せ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲においてプロセス条件や設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0052】
上記実施形態では、レドーム10は車両の構成体であるラジエータグリル1のモール本体11に取り付けられているが、本発明はかかる構成に限定されるものではなく、車両における他の構成体や部品等に取り付けられるものであっても良い。
【0053】
また、前記実施形態では、レドーム10は車両に搭載されているが、上記車両は1輪又は複数の車輪数を持つ車両である。また、キャタピラー等で移動する車両、軌道上を移動する車両であってもよい。
【0054】
上記実施形態では、モール本体11の背面の第一着色層12に対して適用する場合について説明したが、これに限らず、第二着色層14に適用してもよい。また、金属蒸着層13に代えて、金属光沢箔を転写してもよい。
【0055】
上記実施形態では、スタンプ箔50をモール本体11の転写面11Pに押圧する押圧工程を減圧状態で行い、スタンプ治具62の押圧を解除する押圧解除工程を大気圧状態で行う場合について説明したが、これに限らない。
押圧工程を大気圧状態で行い、押圧解除工程を高圧状態で行ってもよい。この場合には、スタンプ箔50の接着層が完全に固化したことを確認してから大気圧状態に戻す必要がある。
【0056】
また、上記実施形態では、固定治具61及びスタンプ治具62に加熱用のヒータコイル64A,64Bを埋設してスタンプ箔50及びモール本体11を加熱しているが、チャンバー60にヒータを設けて、受け治具31及びプレス治具32を加熱することによりスタンプ箔50及びモール本体11を加熱しても良い。
【符号の説明】
【0057】
11…モール本体、 11P…転写面、 11A,11B…凹部、 11R…周縁部、 50…スタンプ箔(箔)、 51…黒色箔、 52…フィルム、 60…チャンバー、 62B…スタンプ版(スタンプ部材)、 64A,64B…ヒータコイル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
凹部を有する転写面に箔を転写するホットスタンプ方法であって、
前記凹部を覆う前記箔を前記転写面に配置し、加熱したスタンプ部材により前記箔を前記転写面に対して押圧する押圧工程と、
前記押圧工程よりも高圧状態で前記スタンプ部材の押圧を解除する押圧解除工程と、
を有することを特徴とするホットスタンプ方法。
【請求項2】
前記押圧解除工程において、前記凹部の周縁部に前記箔が密着するように、前記押圧工程との圧力差を調圧することを特徴とする請求項1に記載のホットスタンプ方法。
【請求項3】
前記押圧工程を減圧状態で行い、前記押圧解除工程を大気圧状態で行うことを特徴とする請求項1または2に記載のホットスタンプ方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−111045(P2012−111045A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−259215(P2010−259215)
【出願日】平成22年11月19日(2010.11.19)
【出願人】(504136889)株式会社ファルテック (57)
【Fターム(参考)】