説明

ホットチャンバーダイカストマシン

【課題】酸化物等の不純物がプランジャとシリンダの隙間に入り込み、プランジャ及びシリンダの表面にキズがついたり、早期に摩耗することを防止または抑制すると共に、シリンダ内に空気が侵入することを防止または抑制する。
【解決手段】主筒3は、ポット2に収容された溶湯50内に配置されている。この主筒3は、溶湯50が供給されるシリンダ16と、底面部にシリンダ16内へ溶湯50を供給する溶湯供給孔18と、側面部にシリンダから押し出された溶湯50が通過する注湯路19とを有している。更に、シリンダ16内を往復運動するプランジャ4と、注湯路19と金型40の鋳込口43を連結して金型40に溶湯50を注入するノズル5と、プランジャ4の往復運動に連動して溶湯供給孔18を開閉する弁22と、を備えている。これにより、プランジャとシリンダの隙間から酸化物等の不純物が入り込むことを防止または抑制すると共に、シリンダ内に空気が侵入することを防止または抑制する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルミニウムやマグネシウム及びその合金等の溶湯を金型に鋳込むホットチャンバーダイカストマシンに関し、特に、溶湯をシリンダ内に供給する溶湯供給機構に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、アルミニウムやマグネシウム及びこれらの合金等を鋳造する手段としてホットチャンバーダイカストマシンが用いられている。ホットチャンバーダイカストマシンは、溶湯内に配置された主筒と、この主筒に設けられたシリンダ内を往復運動するプランジャとから構成されている。このホットチャンバーダイカストマシンは、シリンダ内に供給された溶湯をプランジャで金型に射出して鋳造を行う装置である(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図9は、従来のホットチャンバーダイカストマシンの要部を拡大して示す模式図である。
図9に示すように、従来のホットチャンバーダイカストマシン100は、溶湯50内に配置された主筒101と、この主筒101に設けられたシリンダ103内を往復運動するプランジャ102を有している。主筒101の側面部の上部には、シリンダ103内に溶湯50を供給する溶湯供給孔104が設けられており、主筒101の側面部には、下部から上部に向けて傾斜状に立ち上がった注湯路105が設けられている。そして、主筒101の注湯路105には、金型に溶湯50を注入するノズル106が連結している。
【0004】
このような構成を有するホットチャンバーダイカストマシンは、プランジャが主筒の溶湯供給孔の上方まで移動することにより、溶湯供給孔からシリンダ内に溶湯が供給される。そして、プランジャがシリンダの下方まで移動することにより、シリンダ内の溶湯が注湯路とノズルを通り金型に射出される。
【特許文献1】特開平10−296420号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、図9に示すような従来のホットチャンバーダイカストマシン100では、溶湯供給孔104が主筒101の側面部の上部に設けられている。そのため、シリンダ103内に溶湯50を供給するためには、プランジャ105を溶湯供給孔104の上方まで移動させなければならない。その結果、プランジャ102のストロークが長いため、シリンダ103内が急激に減圧される。ここで、プランジャとシリンダの間には、微小な隙間がある。そのため、シリンダ内が急激に減圧されると、図9に示す矢印のように、溶湯と共に溶湯の表面に浮遊している酸化物等の不純物が、プランジャとシリンダの隙間に入り込む。その結果、不純物がプランジャとシリンダの隙間に入り込むことにより、この不純物によってプランジャ及びシリンダの表面にキズが発生したり、プランジャ及びシリンダの摩耗が早まる、という問題がある。
【0006】
また、ノズルからシリンダ103内部への空気の侵入を防止するために、ノズル先端にノズルキャップを形成する必要がある。このノズルキャップは、ノズル内に残留する半溶融化部分が空気に触れ凝固することにより形成される。そのため、ノズルキャップは、外部の温度や鋳造条件に左右され、鋳造毎に必ず形成できているか否かは、鋳造作業中に確認することができない。その結果、ノズルキャップが形成できないと、ノズルからシリンダ内に空気が侵入し、鋳造物の形状や品質に悪影響を与える、という不具合が発生する。また、ノズルキャップは、溶融金属が空気に触れることで形成されるものであるため、射出の際に溶湯と共に鋳造物内部に侵入し、製品強度に悪影響を与える、という不具合も発生する。
【0007】
本発明の目的は、上述の問題点を考慮し、酸化物等の不純物が、プランジャとシリンダの隙間に入り込み、プランジャ及びシリンダの表面にキズがついたり、早期に摩耗することを防止または抑制すると共に、シリンダ内に空気が侵入することを防止または抑制することができる、ホットチャンバーダイカストマシンを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決し、本発明の目的を達成するため、本発明のホットチャンバーダイカストマシンは、金型に設けられた鋳込口から溶湯を鋳込むホットチャンバーダイカストマシンであって、溶湯を収容する溶湯収容部と、この溶湯収容部に収容され、かつ溶湯内に配置された主筒と、シリンダ内を往復運動するプランジャと、注湯路と金型の鋳込口を連結して金型に溶湯を注入するノズルと、プランジャの往復運動に連動して前記溶湯供給孔を開閉する弁と、を備えている。そして、上記溶湯収容部に収容された主筒には、溶湯が供給されるシリンダと、底面部に前記シリンダ内へ前記溶湯を供給する溶湯供給孔と、側面部に前記シリンダから押し出された前記溶湯が通過する注湯路とが設けられている。
【発明の効果】
【0009】
本発明のホットチャンバーダイカストマシンによれば、プランジャとシリンダの隙間から酸化物等の不純物が入り込むことを防止または抑制することができると共に、シリンダ内に空気が侵入することを防止または抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の座標検出装置の実施形態例について、図1〜図8を参照して説明する。ここで、図1は、本発明のホットチャンバーダイカストマシンの実施形態を示す断面図、図2Aは、主筒を示す断面図、図3A及び図3Bは、弁を示す斜視図、図4及び図5は、鋳造動作を断面して示す説明図、図6〜図8は、ホットチャンバーダイカストマシンの他の実施形態例を示す図である。なお、各図において共通の部材には、同一の符号を付している。また、本発明は、以下の形態に限定されるものではない。
【0011】
図1は、本発明が適用されるホットチャンバーダイカストマシンを示す断面図、図2Aは、本例のホットチャンバーダイカストマシンに係る主筒を示す断面図である。
この図1及び図2Aに示すように、本発明の実施の形態例(以下、「本例」という。)であるホットチャンバーダイカストマシン1は、アルミニウムやマグネシウム及びこれらの合金等を鋳造する装置であり、固定型41と可動型42とからなる金型40に溶湯50を高速高圧で鋳込むものである。ホットチャンバーダイカストマシン1は、溶湯50を収容する溶湯収容部であるポット2と、シリンダ16を有する中空の主筒3と、このシリンダ16内を往復運動するプランジャ4と、金型40に溶湯50を注入するノズル5とから構成されている。
【0012】
金型40は、固定型41と可動型42とから構成されている。固定型41は、図示しない固定盤に取り付けられており、可動型42は、図示しない可動盤に取り付けられている。また、固定型41には、ノズル5から溶湯50が注入される鋳込口43が設けられている。可動型42には、鋳造された鋳物を金型から押し出す図示しない押出しロッドが設けられている。この固定型41と可動型42により、鋳型空間44が形成されている。
【0013】
ポット2は、一面が開口された容器状をなしており、その内部空間にアルミニウムやマグネシウム及びこれらの合金等を溶解した溶湯50が収納されている。ポット2は、例えば、セラミック等からなる耐熱性に優れた材質で形成されるか、または表面を耐熱性に優れた材質でコーティングされている。このポット2の下方には、ポット2内に収容された溶湯50を加熱する図示しない電熱ヒータ等からなる加熱手段が設けられている。このポット2に収容された溶湯50内に主筒3が、保持部材6と固定部材7により保持されて配置されている。
【0014】
主筒3は、中空の筒状をなしており、その内部に略円柱状に開口したシリンダ16が設けられている。主筒3は、軸方向の一端部の全面が開口しており、軸方向の他端部である底面部も開口している。主筒の底面部側の開口部に略円盤状の底板17が嵌合している。底板17には、上下方向に貫通する溶湯供給孔18が設けられている。そして、この底板17には、溶湯供給孔18を開閉可能な弁22が設けられている。
【0015】
更に、この主筒3の側面部には、下部から上部に向けて傾斜状に貫通した注湯路19が設けられている。そして、この主筒3の注湯路19には、図1に示すように、主筒3の外側からノズル5が連結されている。また、主筒3の底面部付近には、図2Aに示すように、ストッパ21が設けられている。ストッパ21は、シリンダ16の側面部における注入路19の下方の一部を切り欠くことにより形成されている。
【0016】
プランジャ4は、円柱状をなしており、軸部4aと、軸部4aの一側に軸部4aよりも直径の大きい加圧部4bを有している。プランジャ4の加圧部4bの外径は、主筒3のシリンダ16の内径と略等しい大きさを有している。このプランジャ4は、図示しない支柱に軸方向に往復運動可能に支持されている。そして、プランジャ4は、主筒3の一側の開口部からシリンダ16内に挿入されて、このシリンダ16内を軸方向に摺動する構造になっている。
【0017】
保持部材6は、筒状をなしており、その内径が主筒3の外径と略等しくなるように設定されている。保持部材6は、軸方向の一端に外側に張り出した外フランジ部8と、軸方向の他端に内側に張り出した内フランジ部9とを有している。更に、保持部材6の側面には、ノズル5が挿通する開口孔11が設けられている。このような構成を有する保持部材6に、主筒3が保持部材6の筒孔に圧入されて、保持部材6に取り付けられている。このとき、保持部材6の内フランジ部9が主筒3の底板17まで張り出している。そのため、保持部材6の内フランジ部9で主筒3の底板17を支持することにより、プランジャ4の加圧によって底板17が主筒3の開口部から抜け落ちることを防止することができる。そして、主筒3が取り付けられた保持部材6は、外フランジ部8が固定部材7に形成した段部7aに係合されて固定部材7に取り付けられている。この固定部材7は、プランジャ4を支える図示しない支柱の固定部12にボルト13等の機械的な固定手段によって固定されている。
【0018】
ノズル5は、円筒状をなしており、軸方向の両端部は面取りされている。そして、ノズル5の軸方向の一端部が金型40の固定型41の鋳込口43に接続されており、軸方向の他端部が主筒3の注湯路19に接続されている。このノズル5の筒孔5aを通ってシリンダ4から押し出された溶湯50が金型40に注入される。そして、ノズル5の周囲には、ノズル5の筒孔5aを通る溶湯50が冷えないようにノズル5を加熱するノズルヒータ14が配置されている。
【0019】
図3は、本例のホットチャンバーダイカストマシンに係る弁の第1の実施形態例を示すものであり、図3Aは正面側から見た斜視図、図3Bは背面側から見た斜視図である。
この図3A及び図3Bに示すように、弁22は、略円盤状の蓋部23と、蓋部23の略中心から突出する棒状の軸部24とから構成されている。軸部24における蓋部23と反対側の端部には、略円盤状のフィルタ26が取り付けられている。そして、この弁22は、図2Aに示すように、軸部24を主筒3の溶湯供給孔18に昇降自在に挿通して、主筒3の底板17に取り付けられている。なお、この弁22は、逆止弁であり、溶湯50がシリンダ16内から溶湯供給孔18を通ってポット2へ流れることを止める働きを有している。
【0020】
これら主筒3、保持部材6、固定部材7及び弁22の材質としては、耐熱性に優れたものであればよく、例えばセラミックが挙げられる。なお、本例では、ストッパ21をシリンダ16の側面部の一部を切り欠いて形成した例を説明したが、図2Bに示すように、シリンダ16の側面部における注入路19の下方を全周にわたって切り欠いてストッパ21を形成してもよい。
【0021】
次に、図4及び図5を参照してこのような構成を有するホットチャンバーダイカストマシンの動作について説明する。
図4A及び図4Bは、本例のホットチャンバーダイカストマシンの鋳造動作を示す断面図であり、図5A及び図5Bは、本例のホットチャンバーダイカストマシンの鋳造動作における要部を拡大して示す断面図である。
【0022】
図4A及び図5Aに示すように、プランジャ4がシリンダ16の底部まで押し込まれているとき、弁22の蓋部23が底板17の一面に接触しており、溶湯供給孔18は、閉じている。そして、図4B及び図5Bに示すように、プランジャ4が軸方向の一側、即ちシリンダ16の上側に移動すると、シリンダ16内の圧力が低下する。このとき、主筒3は、溶湯50内に配置されている。そのため、溶湯供給孔18を閉じていた弁22は、シリンダ16内の圧力が低下することにより溶湯50からの圧力を受けて、主筒3の底板17から略垂直をなして離反する。すると、主筒3の溶湯供給孔18が開放される。このとき、主筒3に設けたストッパ21に弁22が当接することにより、弁22の開放動作が止まる。
【0023】
そして、溶湯供給孔18が開放されると、この溶湯供給孔18からシリンダ16内に溶湯50が入り込む。このとき、図5Bに示すように、弁22に設けたフィルタ26が、酸化物等の不純物を吸着することにより、シリンダ16内に供給される溶湯50に不純物が混ざることを防止または抑制することができる。更に、溶湯供給孔18を主筒3の底部に設けて、溶湯50の表面から溶湯供給孔18を遠ざけている。そのため、溶湯50表面よりも酸化物が少ない内部の溶湯50をシリンダ16内に取り入れることができる。
【0024】
このように、プランジャの動きに連動して弁22が溶湯供給孔18を開放することにより、シリンダ16内にスムーズに溶湯50が供給される。更に、シリンダ内において溶湯供給孔18を注湯路よりも下方に設けたため、ノズル16から空気が侵入する前にシリンダ16内に溶湯50を供給することができる。従って、シリンダ16内にノズル5及び注湯路19から空気が侵入することを防止または抑制できる。その結果、従来のホットチャンバーダイカストマシンのように、ノズル5の先端にノズルキャップを形成して、シリンダ16内を密閉する必要がないため、ノズルキャップが不要になる。これにより、鋳造製品内に溶湯の酸化物であるノズルキャップや空気が混入するおそれがなく、鋳造製品の品質を向上させることが可能である。
【0025】
また、シリンダ16内に溶湯50がスムーズに供給されることにより、シリンダ16内の圧力が急激に低下することを防止または抑制することができる。その結果、プランジャ4とシリンダ16の隙間から溶湯50表面の酸化物等の不純物が侵入することを防ぐことができ、この不純物の侵入による、プランジャ4やシリンダ16の破損を防ぐことができる。
【0026】
シリンダ16内に溶湯50が溜まると、次に、図4A及び図5Aに示すように、プランジャ4がシリンダ16の底部まで下がり、シリンダ16内の溶湯50を押し出す。このとき、プランジャ4が下がることにより、弁22が溶湯50に押されて弁22の蓋部23が主筒3の底板17の一面に接触し、溶湯供給孔18を閉じる。そして、プランジャ4に押された溶湯50は、主筒3の注湯路19を介してノズル5の筒孔5aを通り、金型40の鋳型空間44に射出される。このように、プランジャ4がシリンダ16内を軸方向に往復運動することにより、連続して鋳造が行われる。
【0027】
図6は、本例のホットチャンバーダイカストマシンの第2の実施形態例を示す図である。
この図6に示すように、第2の実施形態例に係るホットチャンバーダイカストマシン1Aは、主筒3Aの底板17Aに2つの溶湯供給孔18A、18Aと弁22の軸部24が挿通されるガイド孔27を有している。このように、溶湯供給孔18Aとガイド孔27を別々に設けることにより、弁22の軸部24がガイド孔27にガイドされて、弁22が溶湯供給孔18Aから入り込む溶湯50の流れによって傾くことを防止することができる。その結果、弁22を底板17に対して略垂直に昇降動作させることができ、溶湯供給孔18の開閉をスムーズに行うことができる。
【0028】
その他の構成は、前述したホットチャンバーダイカストマシン1と同様であるため、それらの説明は省略する。このようなホットチャンバーダイカストマシン1Aによっても、前述したホットチャンバーダイカストマシン1と同様の効果を得ることができる。なお、この実施の形態例では、溶湯供給孔18Aを2つ設けた例を説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、溶湯供給孔18Aを1つ、あるいは3つ以上設けてもよいことは、言うまでもない。
【0029】
図7は、本例のホットチャンバーダイカストマシンの第3の実施形態例を示す図である。
この図7に示すように、この実施形態に係るホットチャンバーダイカストマシン1Bは、弁22Bについて第1の実施形態例に係る弁22から軸部24とフィルタ26を除いた構造を有している。ここで、本例では、溶湯供給孔18を、主筒3の底部に設けて、不純物が浮遊している溶湯50表面から遠ざけている。よって、この溶湯供給孔18から取り込まれる溶湯50は、溶湯50表面よりも比較的不純物が少ない。そのため、フィルタ26を設けなくても、不純物の少ない綺麗な溶湯50をシリンダ16内に取り込むことができる。従って、このように、弁22にフィルタ26を設けていないホットチャンバーダイカストマシン1Bによっても、前述したホットチャンバーダイカストマシン1と同様の効果を得ることができる。更に、この実施形態に係る弁22Bによれば、第1の実施形態例に係る弁22よりも、軸部24とフィルタ26の部品点数を減らすことができる。
【0030】
図8A〜図8Cは、本例のホットチャンバーダイカストマシンに係る弁の他の実施形態例を示す図であり、弁による溶湯供給孔のシール構造の変形例を示している。
図8Aに示すシール構造は、弁22aの蓋部23aの一側、即ち、溶湯供給孔18側に同心円状の2つの弁側突条部28を設けている。この2つの弁側突条部28は、断面形状が略半球状をなしている。このように、蓋部23aに弁側突条部28を設けたことにより、弁22aと底板17が面ではなく、線で接触する。そのため、弁22aの蓋部23aに多少の撓みが生じた場合でも、弁側突条部28が底板17と確実に接触する、これにより、弁22aで溶湯供給孔18を閉じた状態のシール効果を向上させることができる。
【0031】
また、弁側突条部28の断面形状を略半球状に形成することにより、この弁側突条部28に作用する応力手中を分散することができ、弁側突条部28の耐久性を高めることができる。
【0032】
図8Bに示すシール構造は、弁22aの蓋部23aに弁側突条部28を設けると共に、底板17の溶湯供給孔18の周囲に該溶湯供給孔18と同心円状をなす孔側突条部29を設けている。この孔側突条部29は、弁22aに設けた弁側突条部28と同様に断面形状が略半球状に形成されている。そして、孔側突条部29は、2つの弁側突条部28,28の間に位置するように設けられている。このように、底板17側にも突条部29を設けたことにより、弁22側だけに設けるよりも、溶湯供給孔18を閉じた状態のシール効果を向上させることができる。
【0033】
なお、この突条部28,29の数は、図8Bでは、孔側突条部29を1つ、弁側突条部28を2つ設けた例を説明したが、これに限定されるものではない。例えば、孔側突条部29を2つ以上、弁側突条部28を3つ以上設けてのよい。そして、この場合、孔側突条部29と弁側突条部28が、互い違いに配置されることが好ましい。
【0034】
図8Cに示すシール構造は、主筒3の底板17bが溶湯供給孔18を中心に略曲面をなして凹んでおり、弁22bにおける蓋部23bの溶湯供給孔18側の面が主筒3の底板17bの凹みに対応するように略曲面をなして膨出している。このように、底板17bを略曲面状に凹ませると共に、弁22bの蓋部23bを略曲面状に膨出させることにより、弁23bと底板17bの密閉度を高めることができる。更に、弁22bが多少傾いても、底板17bに設けた溶湯供給孔18を密閉することができる。
【0035】
なお、図8A〜図8Cに示す弁において、軸部及びフィルタは示していないが、これらの弁に軸部及びフィルタを設けてもよいことは言うまでもない。
【0036】
以上説明してきたように、本発明のホットチャンバーダイカストマシンによれば、プランジャの動きに連動するように弁が、シリンダの底部に設けた溶湯供給孔を開閉する。その結果、溶湯供給孔からシリンダ内へスムーズに溶湯が供給される。これにより、シリンダ内にノズルから空気が侵入することを防止できると共に、シリンダ内の圧力が急激に低下してシリンダとプランジャの隙間に溶湯が入り込むことを防止することができる。従って、空気及び酸化物等の不純物が鋳造製品に混入することを防止でき、製品の品質を向上させることができる。
【0037】
なお、本発明は前述しかつ図面に示した実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の変形実施が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明のホットチャンバーダイカストマシンの実施の形態を示す断面図である。
【図2】図2Aは本発明のホットチャンバーダイカストマシンの要部を拡大して示す断面図であり、図2Bは本発明のホットチャンバーダイカストマシンのストッパの変形例を示す断面図である。
【図3】本発明のホットチャンバーダイカストマシンに係る弁を示すもので、図3Aは正面側から見た斜視図、図3Bは背面側から見た斜視図である。
【図4】本発明のホットチャンバーダイカストマシンの鋳造動作を示すもので、図4Aは初期状態を示す断面図、図4Bはシリンダに溶湯を供給した状態を示す断面図である。
【図5】本発明のホットチャンバーダイカストマシンの鋳造動作を示すもので、図5Aは初期状態における要部を拡大して示す断面図、図5Bはシリンダに溶湯を供給した状態における要部を拡大して示す断面図である。
【図6】本発明のホットチャンバーダイカストマシンの第2の実施形態例を示す断面図である。
【図7】本発明のホットチャンバーダイカストマシンの第3の実施形態例を示す断面図である。
【図8】本発明のホットチャンバーダイカストマシンに係る弁の他の変形例を示すもので、図8Aは第4の実施形態例を示す断面図、図8Bは第5の実施形態例を示す断面図、図8Cは第6の実施形態例を示す断面図である。
【図9】従来のホットチャンバーダイカストマシンの要部を拡大して示す断面図である。
【符号の説明】
【0039】
1…ホットチャンバーダイカストマシン、 2・・・溶湯収容部(ポット)、 3・・・主筒、 4・・・プランジャ、 5・・・ノズル、 16・・・シリンダ、 18・・・溶湯供給孔、 19・・・注湯路、 21・・・ストッパ、 22・・・弁、 23・・・蓋部、 24・・・軸部、 26・・・フィルタ、 40・・・金型、 43・・・鋳込口 50・・・溶湯

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金型に設けられた鋳込口から溶湯を鋳込むホットチャンバーダイカストマシンであって、
前記溶湯を収容する溶湯収容部と、
前記溶湯が供給されるシリンダと、底面部に前記シリンダ内へ前記溶湯を供給する溶湯供給孔と、側面部に前記シリンダから押し出された前記溶湯が通過する注湯路とを有し、前記溶湯収容部に収容され、かつ前記溶湯内に配置された主筒と、
前記シリンダ内を往復運動するプランジャと、
前記注湯路と前記金型の前記鋳込口を連結して前記金型に前記溶湯を注入するノズルと、
前記プランジャの往復運動に連動して前記溶湯供給孔を開閉する弁と、を備えた
ことを特徴とするホットチャンバーダイカストマシン。
【請求項2】
前記弁は、前記溶湯供給孔に対して略垂直方向に昇降移動する逆止弁である
ことを特徴とする請求項1に記載のホットチャンバーダイカストマシン。
【請求項3】
前記弁は、略平板状の蓋部と、該蓋部から突出する軸部とを有し、
前記主筒に、前記弁の前記軸部が挿通されるガイド孔を設けた
ことを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載のホットチャンバーダイカストマシン。
【請求項4】
前記シリンダ内に、前記弁の開放動作を止めるストッパを設けた
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のホットチャンバーダイカストマシン。
【請求項5】
前記弁、または、前記主筒の前記溶湯供給孔の周囲に、突条部からなるシール機構を設けた
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のホットチャンバーダイカストマシン。
【請求項6】
前記主筒の底面部は、前記溶湯供給孔を中心に略曲面をなして凹んでおり、
前記弁の前記溶湯供給孔側は、前記主筒の底面部の凹みに対応して略曲面をなして膨らんでいる
ことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のホットチャンバーダイカストマシン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−148796(P2009−148796A)
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−329047(P2007−329047)
【出願日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【出願人】(504145364)国立大学法人群馬大学 (352)
【出願人】(304016804)グンダイ株式会社 (5)