説明

ホットメルト型接着剤及びそれを用いた塗工物

【課題】本発明は、プラスチックフィルム、不織布または金属箔など基材を選ばずに、ボイル処理温度(95℃)や冷凍温度(−10℃以下)といった異なる温度領域でも良好な接着力を維持し、ドット状やビード状などの部分塗工が可能なホットメルト型接着剤およびそれを用いた塗工物の提供を目的とする。
【解決手段】軟化点が100〜160℃のワックス(A)と、軟化点が60℃以下の粘着付与樹脂(b1)と、熱可塑性樹脂(C)と、温度38℃において粘度10〜10000Pa・sである共重合体(D)とを含むホットメルト型接着剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホットメルト型接着剤に関する。
【背景技術】
【0002】
缶詰にかわる加工食品の保存容器として普及しているパウチは、主としてボイル食品用に使用されている。そして、パウチの構成は、プラスチックフィルムや金属箔などの層を複数積層されているのが一般的である。そして近年では、内容物の取り出しの効率性、利便性の観点からパウチの高機能化が求められており、パウチに使用される接着剤に求められる物性も高まっている。
【0003】
例えば、ボイル処理されたパウチを冷凍保存する用途では、ポリエステルフィルムや金属箔などの異なる基材に対して、高温であるボイル処理温度(90℃)と、低温である冷凍温度(−10℃以下)といった異なる温度領域でも良好な接着力を維持する必要がある。
【0004】
また接着剤の塗工もコストダウンの必要から、接着する面の全面に接着剤を塗工することは少なく、ドット状やビード状に塗工することで、接着剤の使用量を減らしパウチのコストを下げる試みがされている。しかし、溶剤タイプや水系タイプの接着剤は、その粘性等から前記のような形状に塗工することは困難であった。
【0005】
そこで、パウチに使用されるプラスチックフィルムや金属箔に対して、前記のような温度雰囲気で十分な接着力を発現し、かつ塗工も生産性の観点から好適である光硬化型接着組成物が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−275545号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1の接着剤では、紫外線を照射するために、貼りあわせた少なくとも一方の基材は透明でなければならず、金属箔同士、またはこれを含む積層体同士を接着することはできなかった。
【0008】
本発明は、プラスチックフィルム、不織布または金属箔など基材を選ばずに、ボイル処理温度(90℃)や冷凍温度(−10℃以下)といった異なる温度領域でも良好な接着力を維持し、ドット状やビード状などの部分塗工が可能なホットメルト型接着剤およびそれを用いた塗工物の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、軟化点が100〜160℃のワックス(A)と、軟化点が60℃以下の粘着付与樹脂(b1)と、熱可塑性樹脂(C)と、温度38℃において粘度10〜10000Pa・sである共重合体(D)とを含むホットメルト型接着剤である。
【発明の効果】
【0010】
上記構成の本発明は、軟化点が100〜160℃のワックス(A)を含むことでボイル処理温度での接着力を維持できる。また、軟化点が60℃以下の粘着付与樹脂(b1)に加えて温度38℃において粘度10〜10000Pa・sである共重合体(D)を含むことで冷凍温度での接着力を維持できる。さらにワックス(A)、粘着付与樹脂(b1)、熱可塑性樹脂(C)および共重合体(D)の組み合せによりプラスチックフィルムや金属箔など異なる基材であっても良好な接着力を実現できる。
【0011】
本発明により、プラスチックフィルム、不織布または金属箔など基材を選ばずに、ボイル処理温度(90℃)や冷凍温度(−10℃以下)といった異なる温度領域でも良好な接着力を維持し、ドット状やビード状などの部分塗工が可能なホットメルト型接着剤およびそれを用いた塗工物の提供ができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は実施例でのボイル浸漬試験を示した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、ホットメルト型接着剤であることが重要である。高温で溶融し、室温で固化するというホットメルト型接着剤特有の性質によりドット状やビード状などの部分塗工が実現できる。
【0014】
本発明のホットメルト型接着剤は、軟化点が100〜160℃のワックス(A)と、軟化点が60℃以下の粘着付与樹脂(b1)と、熱可塑性樹脂(C)と、温度38℃において粘度10〜10000Pa・sである共重合体(D)とを含むことが特徴である。
【0015】
本発明においてワックス(A)は、軟化点が100〜160℃であること重要である。軟化点が100〜160℃であることで、ホットメルト型粘着剤でありながらボイル温度においても接着力を維持できる。軟化点が100℃未満の場合は、ボイル中に剥がれが生じる恐れがある。一方、軟化点が160℃を超えると冷凍温度で剥がれが生じる恐れがある。なお、剥がれとは複数の基材を積層した塗工物が、基材間で剥がれることをいう。
【0016】
さらにワックス(A)は、160℃における粘度が1000mPa・s以下であることが好ましい。
ワックス(A)は、具体的には、例えばパラフィン、マイクロクリスタリンなどの石油ワックス、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−アクリル酸エステル熱可塑性樹脂、エチレン−酢酸ビニル熱可塑性樹脂、エチレン−無水マレイン酸熱可塑性樹脂などのオレフィンワックスが挙げられる。これらは単独で使用しても、2種類以上を併用してもよい。なお、軟化点とは、JIS K 6863に規定される方法により求められる温度である。すなわち、規定の環に充填し12時間以上静置させた樹脂を熱媒体中に入れて規定の球を置き一定の割合で熱媒体の温度を上昇させたとき、樹脂の軟化により球が沈み環台の底板に触れたときの温度である。また、熱媒体の温度を上昇させる以前に球が底板に触れた場合、<30℃と表記する。
【0017】
ワックス(A)は、ホットメルト型接着剤100重量%中、1〜40重量%含むことが好ましく、5〜35重量%がより好ましい。1重量%以上含むことで、ボイル処理温度での接着力を高くしやすい。一方、40重量%以下含むことで冷蔵温度での接着力が低下しにくい。
【0018】
粘着付与樹脂(b1)は、軟化点が60℃以下であることが重要である。軟化点が60℃を超えると、冷凍温度で剥がれが生じる恐れがある。軟化点の下限は特に無いが、−30℃以上が好ましい。
【0019】
本発明では、さらに軟化点が100〜170℃の粘着付与樹脂(b2)を含むことが好ましい。粘着付与樹脂(b2)を含むことでボイル処理温度での接着力をより向上できる。軟化点が100℃以上になることでボイル処理温度での接着力をより高くできる。一方、軟化点が170℃以下になることで冷凍温度での接着力を維持しやすい。
【0020】
本発明において粘着付与樹脂(b1)および粘着付与樹脂(b2)は、軟化点で区別する。そのため樹脂の種類は同一であっても良い。具体的には、例えば、フェノール樹脂、変性フェノール樹脂、テルペンフェノール樹脂、キシレンフェノール樹脂、シクロペンタジエン−フェノール樹脂、キシレン樹脂、脂肪族系、脂環族系、芳香族系等の石油樹脂、水素添加された脂肪族系、脂環族系、芳香族系等の石油樹脂、フェノール−変性石油樹脂、ロジンエステル樹脂、水素添加されたロジンエステル樹脂、低分子量ポリスチレン系樹脂、テルペン樹脂、水素添加されたテルペン樹脂等を挙げることができる。これらは単独で使用しても、2種類以上を併用してもよい。
【0021】
さらに本発明の課題が解決できる範囲内であれば、軟化点が60度を超えて100℃未満の粘着付与樹脂を併用しても良い。
【0022】
粘着付与樹脂(b1)は、ホットメルト型接着剤100重量%中、1〜20重量%含むことが好ましく、2〜15重量%がより好ましい。1〜20重量%の範囲を含むこと冷凍温度でも接着力を維持しやすい。
【0023】
さらに、ホットメルト型接着剤100重量%中、粘着付与樹脂(b1)と粘着付与樹脂(b2)を合計15〜50重量%含むことが好ましく、20〜45%がより好ましい。15〜50重量%の範囲を含むことで、ボイル処理温度と冷蔵温度での高い接着力を両立しやすくなる。
【0024】
熱可塑性樹脂(C)は、エラストマーであることが好ましい。エラストマーであることでホットメルト型接着剤の凝集力がより向上できる。具体的には、スチレン系エラストマー、エチレン系エラストマー等がこの好ましい。スチレン系エラストマーは、例えばスチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合物(以下、「SBS」とも略記する)、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合物の水素添加物(以下、「SEBS」とも略記する)、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合物(以下、「SIS」とも略記する)、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合物の水素添加物(以下、「SEPS」とも略記する)、スチレン−ブタジエン−イソプレン−スチレンブロック共重合物(以下、「SBIS」とも略記する)、 スチレン−ブタジエン−イソプレン−スチレンブロック共重合物の水素添加物(以下、「SEEPS」とも略記する)が挙げられる。
【0025】
エチレン系エラストマーは、例えばエチレン−酢酸ビニル共重合体(以下、「EVA」とも略記する)、エチレン−メタクリル酸エステル共重合体(以下、「EMA」)、エチレン−アクリル酸エステル共重合体(以下、「EA」)、無定形ポリアルファオレフィン共重合物(以下、「APAO」とも略記する)等が挙げられる。
また、熱可塑性樹脂(C)は、カルボキシル変性されたものであってもよい。またスチレン系エラストマーでのスチレンブロックは、スチレンと、α−メチルスチレン等のその他の芳香族系ビニル化合物との共重合体を含んでいてもよい。これらは単独で使用しても、2種類以上を併用してもよい。
【0026】
また熱可塑性樹脂(C)は、メルトフローレート(以下、MFRという)が1〜4000g/10minであることが好ましい。 なおMFRとは、JIS K−6760に規定される方法により求められる流動性のことである。すなわち、ヒーターで加熱された円筒容器内で一定量の熱可塑性樹脂(C)を、定められた温度で加熱・加圧し、容器底部に設け荒れた開口部から10分間あたりに押し出された量である。
【0027】
熱可塑性樹脂(C)は、ホットメルト型接着剤100重量%中、3〜35重量%含むことが好ましく、5〜30重量%がより好ましい。3〜35重量%含むことで、接着剤としての凝集力が維持しやすくなる。
【0028】
共重合体(D)は、温度38℃において粘度10〜10000Pa・sが重要であり、10〜5000Pa・sが好ましい。また共重合体(D)は温度38℃で流動性があることがより好ましい。粘度が10〜10000Pa・sの範囲内であることで冷凍温度での接着力をより向上できる。
具体的には、例えばイソプレンホモポリマー、スチレン−イソプレンブロックポリマー、イソプレン−ブタジエンブロックポリマー、または、これらに水素添加したポリマー、または、一方が水素添加されたイソプレン−イソプレンブロックポリマー等が挙げられる。これらは単独で使用しても、2種類以上を併用してもよい。
【0029】
共重合体(D)は、ホットメルト型接着剤100重量%中、3〜40重量%含むことが好ましく、5〜35重量%がより好ましい。3重量%以上含むことで冷凍温度での接着力をより向上できる。一方、35重量%以下含むことでボイル処理温度での接着力を維持しやすい。
【0030】
本発明のホットメルト型接着剤には、発明の目的を損なわない範囲で酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、接着昂進防止剤、シランカップリング剤、抗菌剤、消臭剤、香料などの添加剤を含んでもよい。
【0031】
上記の酸化防止剤としては、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ジエチル〔[3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル]メチル〕ホスフォネート、4,6−ビス(オクチルチオメチル)−o−クレゾール、エチレンビス(オキシエチレン)ビス[3−(5−t−ブチル−4−ヒドロキシ−m−トリル)プロピオネート、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジフォスファイト等が挙げられる。これらは単独で使用しても、2種類以上を併用してもよい。
【0032】
上記のフェノール系酸化防止剤は、自動酸化の連鎖成長過程で生じるROO・(パーオキシラジカル)に水素を供与して安定化し、自身はオルト位置換基によって保護された安定なフェノキシラジカルとなって連鎖反応を停止するラジカルトラップ剤としての機能を有し、そのことにより樹脂組成物の熱劣化を効果的に抑制する。特に、フェノール系酸化防止剤と、フェノール系酸化防止剤よりラジカルトラップ反応の速いラクトン系酸化防止剤やビタミンE系酸化防止剤等とを併用することにより、より優れたものとなる。また、上記のリン系酸化防止剤は、過酸化物、ROOHを非ラジカル的に分解し、自動酸化過程の連鎖反応を停止する機能を有し、そのことにより樹脂組成物の熱劣化を効果的に抑制する。
【0033】
上記の紫外線吸収剤としては特に限定されず、例えば、サリチル酸系、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系などの通常使用されるものが挙げられる。これらは単独で使用しても、2種類以上を併用してもよい。
【0034】
上記の光安定剤としては、ヒンダードアミン系の通常使用されるものが挙げられる。
【0035】
上記の接着昂進防止剤としては、脂肪酸アミド、ポリエチレンイミンの長鎖アルキルグラフト物、大豆油変性アルキド樹脂(例えば、荒川化学工業社製、商品名「アラキード251」等)、トール油変性アルキド樹脂(例えば、荒川化学工業社製、商品名「アラキード6300」等)などが挙げられる。これらは単独で使用しても、2種類以上を併用してもよい。
【0036】
上記のシランカップリング剤としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、メルカプトブチルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン等が挙げられる。これらは単独で使用しても、2種類以上を併用してもよい。
【0037】
上記の抗菌剤としては、ブテナフィン及びその塩等のベンジルアミン系抗菌剤、ビフォナゾール、ネチコナゾール、ケトコナゾール、ラノコナゾール、クロトリマゾール、ミコナゾール、オキシコナゾール、チオコナゾール、クロコナゾール、オモコナゾール、スルコナゾール及びこれらの塩等のイミダゾール系抗菌剤、テルビナフィン及びその塩などのアリルアミン系抗菌剤、アモロルフィン及びその塩等のモルホリン系抗菌剤、リラナフタート、トルナフテート及びトルシクラート等のチオカルバミン酸系抗菌剤、ナイスタチン、トリコマイシン、バリオチン、シッカニン、ピロールニトリン等の抗生物質等の抗菌剤などが挙げられる。これらは単独で使用しても、2種類以上を併用してもよい。
【0038】
上記の消臭剤としては、消臭効果を有するものであれば特に限定はないが、ラウリルメタクリレート、ゲラニルクロリネート、フィルムロネリルセネシオネート、テルペンアルデヒド類、ピルビン酸エステル類、2−エチルヘキサン酸亜鉛、リシノール酸亜鉛などが挙げられる。これらは単独で使用しても、2種類以上を併用してもよい。
【0039】
上記の香料としては、ピネン、リモネン等の炭化水素系香料、リナロール、ゲラニオール、フィルムロネロール、メントール、ボルネオール、ベンジルアルコール、アニスアルコール、β−フェネチルアルコール等のアルコール系香料、アネトール、オイゲノール等のフェノール系香料、n−ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、ヘキシルアルデヒド、フィルムラール、フィルムロネラール、ベンズアルデヒド、シンナミックアルデヒド等のアルデヒド系香料、カルボン、メントン、樟脳、アセトフェノン、イオノン等のケトン系香料、γ―ブトルラクトン、クマリン、シネオール等のラクトン系香料、オクチルアセテート、ベンジルアセテート、シンナミルアセテート、プロピオン酸ブチル、安息香酸メチル等のエステル系香料などが挙げられる。これらは単独で使用しても、2種類以上を併用してもよい。
【0040】
本発明の目的を損なわない範囲で添加できる紫外線吸収剤、光安定剤、接着昂進防止剤、シランカップリング剤、抗菌剤、消臭剤、香料などの添加剤はホットメルト型接着剤100重量%中、5重量%以下であることが好ましく、より好ましくは3重量%以下である。5重量%を超えてしまうとブリードアウトしてしまうことがある。
【0041】
ホットメルト型接着剤の180℃における粘度は、500〜20000mPa・sが好ましい。180℃における粘度が500mPa・s未満であると、塗工した際にホットメルト型接着剤が過度に濡れ広がるため、塗工適性が悪くなることがある。180℃における粘度が20000mPa・sを超えると、濡れ広がりが悪くなるため、低温域で剥がれを生じることがある。なお粘度は、B型粘度計(測定条件は、180℃、ローターNo.3、12rpm、30秒間)を使用し、測定した値である。
【0042】
本発明のホットメルト型接着剤を製造する方法としては、特に限定されず、ロール、バンバリーミキサー、ニーダー、撹拌機を備えた溶融釜、一軸又は二軸の押し出し機のいずれかを用いて加熱混合するホットメルト法が好ましい。
【0043】
本発明の塗工物は、ホットメルト型接着剤を加熱溶融し、ホットメルト塗工機を用いて基材上に、塗布することで得ることが好ましい。また複数の基材をホットメルト型接着剤を介して積層することで積層体を得ることも好ましい。塗工物の好ましい構成は、「基材/接着層/基材」のような積層体である。
【0044】
接着層の厚さ、すなわちホットメルト型接着剤の塗布量は、0.001〜100g/m2が好ましい。塗布量が0.001g未満になると接着力が不足する恐れがある。塗布量が100g/m2を超えても特に接着力向上は期待できない。
【0045】
基材は、特に制限はなく、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアリレート系樹脂、アクリル系樹脂、ポリフェニレンサルファイド系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ビニル系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリイミド系樹脂、エポキシ樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポオリノルボルネン等のポリオレフィン系樹脂などの単層或いは積層体がある。その他、前述記載のフィルム状基材と不織布、織布、布、紙、ガラス、金属箔、金属メッシュ等を含む積層体が挙げられる。また、必要に応じて、フィルムの表面にコロナ放電処理、プラズマ処理、ブラスト処理、ケミカルエッチング処理などの易接着処理、帯電防止処理、着色処理などを施してもよい。但し、ボイル中に浸漬するため、フィルム状基材はこれに耐えうるものでなければならない。基材の厚みには特に制限はないが、作業性の観点から1〜500μmが好ましい。
【0046】
本発明の包装容器は、塗工物、好ましくは積層体をヒートシールやラミネートなどの方法により、飲料や食品、あるいは工業用製品等を保存する目的で製造できる。ヒートシールするためには、例えばCPPなどの熱溶融可能な基材を使用することが好ましく、ラミネートするためには、接着剤を使用して貼りあわせることが好ましい。
【実施例】
【0047】
以下、本発明を実施例により具体的かつ詳細に説明するが、これらの実施例は本発明の一態様に過ぎず、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
なお、例中、「部」とあるのは「重量部」を、「%」とあるのは「重量%」をそれぞれ表すものとする。
【0048】
(製造例1〜16)
表1に示した部数で、撹拌機を備えたニーダーにワックス(A)、粘着付与樹脂(b1)、粘着付与樹脂(b2)、熱可塑性樹脂(C)、共重合体(D)、場合によりその他の成分を添加し、180℃で3時間撹拌することでホットメルト型接着剤を得た。
【0049】
【表1】

【0050】
表1に記載のワックス(A)の略号を以下に示す。
ワックス1:ポリエチレンワックス、軟化点110℃、粘度200mPa・s(160℃)
ワックス2:ポリプロピレンワックス、軟化点154℃、粘度650mPa・s(160℃)
【0051】
表1に記載の粘着付与樹脂(b1)の略号を以下に示す。
粘着付与樹脂1:ロジン樹脂、軟化点<30℃
粘着付与樹脂2:テルペンフェノール樹脂、軟化点30℃
粘着付与樹脂3:テルペンフェノール樹脂、軟化点50℃
粘着付与樹脂4:石油樹脂、軟化点80℃
【0052】
表1に記載の粘着付与樹脂(b2)の略号を以下に示す。
粘着付与樹脂5:石油樹脂、軟化点100℃
粘着付与樹脂6:テルペン樹脂、軟化点100℃
粘着付与樹脂7:ロジン樹脂、軟化点105℃
粘着付与樹脂8:石油樹脂、軟化点150℃
粘着付与樹脂4:石油樹脂、軟化点80℃
【0053】
表1に記載の熱可塑性樹脂(C)の略号を以下に示す。
熱可塑性樹脂1:SIS、ジブロック含量33%
熱可塑性樹脂2:SEBS、ジブロック含量70%
熱可塑性樹脂3:SEPS、ジブロック含量<1%
熱可塑性樹脂4:APAO、ポリエチレン−ポリプロピレンポリマー
熱可塑性樹脂5:EVA、酢酸ビニル含有量20重量%、MFR:350g/10min
なおジブロックとは、例えばSISの場合スチレン−イソプレンブロック共重合物のように2つのブロックポリマーからなるエラストマーのことをいう。
【0054】
共重合体1:イソプレン−ブタジエンブロックポリマー、水素添加、粘度400Pa・s(38℃)
共重合体2:イソプレン−イソプレンブロックポリマー、一方のブロックのみ水素添加、粘度1200Pa・s(38℃)
共重合体3:ホモブタジエンブロックポリマー、未水素添加、粘度40Pa・s(38℃)
共重合体4:ホモブタジエンブロックポリマー、未水素添加、粘度1.5Pa・s(38℃)
【0055】
表1に記載のその他の成分の略号を以下に示す。
酸化防止剤:ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]
紫外線吸収剤:2−[5−クロロ(2H)−ベンゾトリアゾール−2−イル]−4−メチル−6−(tert−ブチル)フェノール
【0056】
(実施例1〜7、比較例1〜6)
上記製造例1〜15で得られたホットメルト型接着剤をノズル型アプリケーターを用いてPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム上に、1箇所につき塗布量が0.10gなるようにドット状に塗布し、オープンタイム1秒で他のPETフィルムを重ね合わせ、ハンドローラーを用いて圧着し、「PETフィルム/接着層/PETフィルム」という構成の積層体を得た。これを積層体(1)とする。また、「不織布/接着層/不織布」という構成の積層体を積層体(2)、「アルミ箔/接着層/アルミ箔」という構成の積層体を積層体(3)とする。
なおオープンタイムとは、ホットメルト型接着剤を塗布してから貼りあわせるまでの時間である。
【0057】
[常温接着試験−1]
積層体(1)を作製してから24時間静置した後、23℃雰囲気下でT字型になるように引張試験機にセットし、速度300mm/分で、T字方向に引き剥がし、その接着力を測定した。
[判定基準]
○:10N/25mm以上だった。
△:5N/25mm以上、10N/25mm未満だった。
×:5N/25mm未満だった。
○、△を使用可能と判断する。
【0058】
[常温接着試験−2]
積層体(2)を作製してから24時間静置した後、23℃雰囲気下でT字型になるように引張試験機にセットし、速度300mm/分で、T字方向に引き剥がし、その接着力を測定した。
[判定基準]
○:塗布時に塗布面の反対側まで染み出さない、かつ、強度測定時に不織布が破断しホットメルト型接着剤の塗布面では剥がれなかった。
×:塗布時に塗布面の反対側に染み出した。または、ホットメルト型接着剤の塗布面で剥がれた。
○を使用可能と判断する。
【0059】
[常温接着試験−3]
積層体(3)を作製してから24時間静置した後、23℃雰囲気下でT字型になるように引張試験機にセットし、速度300mm/分で、T字方向に引き剥がし、その接着力を測定した。
[判定基準]
○:強度測定時にアルミ箔が破断しホットメルト型接着剤の塗布面では剥がれなかった。
×:ホットメルト型接着剤の塗布面で剥がれた。
○を使用可能と判断する。
【0060】
[ボイル浸漬試験]
積層体(1)を作製してから24時間静置した後、図1記載の通りに一方のPETフィルムに10gのおもりをかけ、他方のPETフィルムに紐をつけ吊るすことで積層体(1)をT字型にし、これを水温95℃のウォーターバス中におもりが底に着かないよう浸漬させた。荷重をかけたPETフィルムの落下を確認し、10分以内に落下しなかった場合は積層体(1)の状態を確認した。
[判定基準]
○:10分内に落下せず、ホットメルト型接着剤の剥がれはほとんどなかった。
△:10分内に落下しなかったが、ホットメルト型接着剤は半分程度剥がれが生じていた。
×:10分内に落下した。
○、△を使用可能と判断する。
【0061】
[低温接着試験]
積層体(1)を作製してから24時間静置した後、JIS Z0237に準拠して温度−10℃雰囲気下でT字型になるように引張試験機にセットし、速度300mm/分で、T字方向に引き剥がし、その強度を測定した。
[判定基準]
○:5N/25mm以上だった。
△:2.5N/25mm以上、5N/25mm未満だった。
×:2.5N/25mm未満だった。
○、△を使用可能と判断する。
【0062】
【表2】

【0063】
本発明は、基材の種類によらず、低温から高温まで極めて優れた接着力と耐熱水性を有したホットメルト型接着剤である。
【符号の説明】
【0064】
(1)ウォーターバス
(2)95℃の温水
(3)10gのおもり
(4)PET基材
(5)接着層
(6)紐

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軟化点が100〜160℃のワックス(A)と、軟化点が60℃以下の粘着付与樹脂(b1)と、熱可塑性樹脂(C)と、温度38℃において粘度10〜10000Pa・sである共重合体(D)とを含むことを特徴とするホットメルト型接着剤。
【請求項2】
さらに、軟化点が100℃以上の粘着付与樹脂(b2)を含むことを特徴とする請求項1記載のホットメルト型接着剤。
【請求項3】
ホットメルト型接着剤100重量%中、粘着付与樹脂(b1)と粘着付与樹脂(b2)を合計10〜50重量%含むことを特徴とする請求項1または2記載のホットメルト型接着剤。
【請求項4】
基材と、請求項1ないし3いずれか記載のホットメルト型接着剤から形成されてなる接着剤層とを備えた塗工物。
【請求項5】
請求項4記載の塗工物から形成されてなる包装容器。

【図1】
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【公開番号】特開2013−18826(P2013−18826A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−151628(P2011−151628)
【出願日】平成23年7月8日(2011.7.8)
【出願人】(000222118)東洋インキSCホールディングス株式会社 (2,229)
【出願人】(591004881)東洋アドレ株式会社 (51)
【出願人】(711004506)トーヨーケム株式会社 (17)
【Fターム(参考)】