説明

ホットメルト接着剤およびそれを用いたフラットケーブル

【課題】ハロゲンフリーで、優れた難燃性と高い弾性率を有するホットメルト接着剤と、前記ホットメルト接着剤を接着層として有することにより、ハロゲンフリーであるにもかかわらず、高い難燃性を有し、屈曲に対する高い強度を有するフラットケーブルを提供する。
【解決手段】ポリエステル系樹脂100質量部に対して、有機リン系難燃剤が30〜100質量部と、セピオライトが0.3〜55質量部と、ヒンダートフェノール系酸化防止剤、銅害防止剤、およびカルボジイミド系樹脂の3種類のうち少なくとも1種類が0.05〜10質量部とを含有することを特徴とするホットメルト接着剤と前記ホットメルト接着剤を接着層として有するフラットケーブル。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホットメルト接着剤に関し、更に詳しくは難燃性を有し、弾性率が高く、かつ耐湿熱性の高いハロゲンフリーなホットメルト接着剤に関する。 また、本発明は、前記ホットメルト接着剤を接着層として有するフラットケーブルに関し、前記フラットケーブルに屈曲が加えられても断線を生じるおそれがなく、高温多湿環境下でも安定した特性を保持しうるフラットケーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
フラットケーブルは、通常、図1の断面図に示すように、ポリエチレンテレフタレートのような汎用プラスチックを絶縁層1とし、接着層2としてホットメルト接着剤を塗布したラミネートフイルムにて芯材3を挟み、熱ロールなどで接着層を融着して一体化した構造を有している。
【0003】
近年、前記フラットケーブルにも高い難燃性が要求される。フラットケーブルに難燃性を付与するには、絶縁層として難燃性の高い樹脂を使用することが考えられるが、難燃性の高いプラスチックフィルムは非常に高価である。
【0004】
そこで、価格を低く抑えるため、接着層に使用する接着剤に難燃剤を添加し、難燃性を高める方法が良く行われている。
【0005】
汎用で価格も低いポリエチレンテレフタレートを使用し、UL94のVW−1(垂直難燃試験)に合格するフラットケーブルを得るには、今までは、難燃効果の高いデカブロモジフェニル系化合物のようなハロゲン系難燃剤が使用されてきた。しかしながら、近年ハロゲン物質の使用が規制されてきており、ハロゲンフリー化が求められている。
【0006】
ハロゲンフリーな難燃性接着剤としては、ハロゲン系難燃剤の代わりに、リン酸エステル系やポリリン酸アンモニウム系、有機ホスホン酸メラミンやポリリン酸メラミンなどの有機リン系難燃剤を多量に添加、もしくはリン成分が導入されたリン変性ポリエステル共重合体を添加することで所望の難燃性を確保する試みが行われている(例えば特許文献1、2)。
【0007】
しかし、有機リン系難燃剤もしくはリン変性ポリエステル共重合体を含有した接着剤を使用したフラットケーブルは、屈曲した際に断線が生じる場合があることが明らかとなった。本発明者らが原因を調査したところ、有機リン系難燃剤もしくはリン変性ポリエステル共重合体を添加すると接着剤自身が柔らかくなってしまい、フラットケーブルに屈曲を加えると、屈曲した部分の接着剤が周辺に移動してしまい、その結果薄肉部が生じるため、その位置を基点として断線が起こる場合があることが明らかとなった。
【特許文献1】特開平9−221642号公報
【特許文献2】特開平8−060108号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、有機リン系難燃剤もしくはリン変性ポリエステル共重合体の添加による接着剤の軟質化を抑制するために各種フィラーの利用について検討を行った。
【0009】
しかしながら、一般に無機フィラーは含水率が高く、環境温度が上昇すると水分を放出する特性を有する。そのため、無機フィラーが添加された接着剤では、高温環境にさらされると、無機フィラーとの接触部分において、無機フィラーから放出された水分にさらされ、あたかも高温多湿環境下のような状態となり、接着剤自身が加水分解を引き起こし、変色や接着強度低下などの不具合を生じやすいという問題が明らかとなった。この問題は、東南アジアなど高温多湿な地域においては深刻である。
【0010】
本発明は、上記の問題点を解決し、ハロゲンフリーで、優れた難燃性と高い弾性率、耐湿熱性を有するホットメルト接着剤を提供することを目的とする。
また、本発明は、前記ホットメルト接着剤を接着層として有することにより、ハロゲンフリーであるにもかかわらず、高い難燃性を有し、屈曲に対する高い強度と優れた耐湿熱性を有するフラットケーブルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、鋭意検討した結果、ポリエステル系樹脂と有機リン系難燃剤とセピオライトと、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、銅害防止剤、およびカルボジイミド系樹脂の3種のうち少なくとも1種とを含有するホットメルト接着剤は、優れた難燃性、高い弾性率とともに優れた耐湿熱性を有することを見出した。本発明はこれらの知見に基づくものである。
上記課題を解決するために、本発明は、
(1)ポリエステル系樹脂と有機リン系難燃剤とセピオライトと、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、銅害防止剤、およびカルボジイミド系樹脂の3種のうち少なくとも1種とを含有するホットメルト接着剤、
(2)前記ポリエステル系樹脂100質量部に対して、前記有機リン系難燃剤が30〜100質量部と、前記セピオライトが0.3〜55質量部と、前記ヒンダードフェノール系酸化防止剤、前記銅害防止剤、および前記カルボジイミド系樹脂の3種のうち少なくとも1種が0.05〜10質量部とを含有することを特徴とするホットメルト接着剤、
(3)前記ポリエステル系樹脂100質量部に対して、前記有機リン系難燃剤が30〜100質量部と、前記セピオライトが0.3〜55質量部と、前記ヒンダードフェノール系酸化防止剤、前記銅害防止剤、および前記カルボジイミド系樹脂の3種のうち少なくとも2種がそれぞれ0.05〜10質量部とを含有することを特徴とするホットメルト接着剤、
(4)前記ポリエステル系樹脂100質量部に対して、前記有機リン系難燃剤が30〜100質量部と、前記セピオライトが0.3〜55質量部と、前記ヒンダードフェノール系酸化防止剤が0.05〜10質量部と、前記銅害防止剤が0.05〜10質量部と、前記カルボジイミド系樹脂が0.05〜10質量部とを含有することを特徴とするホットメルト接着剤、
(5)前記銅害防止剤がN,N′−ビス(3−(3,5−ジーt−ブチルー4−ヒドロキシフェ二ル)プロピオ二ル)ヒドラジン、3−(N−サリチロイル)アミノー1,2,4−トリアゾール、およびデカメチレンジカルボン酸ジサリチロイルヒドラジドの少なくとも1種であることを特徴とする請求項1〜4記載のホットメルト接着剤、
(6)複数本の芯材を並列に配置し、接着層を介し一対の絶縁層により挟んで一体化してなるフラットケーブルであって、前記接着層が請求項1〜5いずれか1項に記載の接着剤からなることを特徴とするフラットケーブル、を提供するものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明のホットメルト接着剤は、ハロゲンフリーで、優れた難燃性と高い弾性率と耐湿熱性を有するホットメルト接着剤である。
さらに本発明のフラットケーブルは、前記ホットメルト接着剤を接着層として有することにより、ハロゲンフリーであるにもかかわらず、高い難燃性と優れた耐屈曲性を有するとともに優れた耐湿熱性を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
初めに、本発明のホットメルト接着剤について説明する。
本発明におけるホットメルト接着剤の組成は、好ましくは、ポリエステル系樹脂100質量部に対して、有機リン系難燃剤が30〜100質量部と、セピオライトが0.3〜55質量部と、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、銅害防止剤、およびカルボジイミド系樹脂の3種のうち少なくとも1種が0.05〜10質量部とを含有する。また、ホットメルト接着剤は、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、銅害防止剤、およびカルボジイミド系樹脂は3種のうち少なくとも2種がそれぞれ0.05〜10質量部含有してもよく、さらにはそれら3種全てそれぞれ0.05〜10質量部含有してもよい。
【0014】
本発明におけるポリエステル系樹脂とは、通常、ホットメルト系接着剤として使用されるポリエステル系の樹脂であれば、特に限定されるものではない。具体的には例えば、TK−33%(商品名、東特塗料(株)社製)などが挙げられる。
【0015】
本発明に用いられる有機リン系難燃剤としては、リン酸エステル系難燃剤やポリリン酸アンモ二ウム系難燃剤などが挙げられる。具体的には、リン酸エステル系難燃剤としては例えば、Phosflex TPP(トリフェニルホスフェート、商品名、アクゾ ノーベル(株)社製)、Fyrolfrex BDP(ビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)、商品名、アクゾ ノーベル(株)社製)などが挙げられ、ポリリン酸アンモニウム系難燃剤としてはポリセーフNH−12B(商品名、味の素ファインテクノ(株)社製)、アダカスタブ FP−2000(商品名、旭電化工業(株)社製)などが好適に用いられる。その他にも、ヒシガードセレクト N−6ME(商品名、日本化学工業(株)社製)、PHOSMEL−100、PHOSMEL−200(全て商品名、日産化学工業(株)社製)などが好適に用いられる。
本発明に用いられる有機リン系難燃剤は形態を問わず、粉体でもトルエンやMEKなどの溶剤に溶かし込んだものでも良い。接着剤混練製造時に各種材料を添加する際に添加して混練履歴を加えても良いし、接着剤の混練加工後に添加して攪拌によって分散させる方法でも添加は可能である。
【0016】
本発明における有機リン系難燃剤の含有量は、ポリエステル系樹脂100質量部に対して30〜100質量部、好ましくは、60〜80質量部である。含有量が少なすぎると、難燃性が不十分となり、多すぎると脆くなる。
【0017】
本発明におけるセピオライトとは、吸湿性の粘土鉱物の一種であり、その形状はとわないが、針状(繊維状)のものが好ましく用いられる。具体的には例えば、PANGEL、PANSIL(いずれも商品名、TOLSA社製)などが挙げられる。
本発明においてはセピオライトとしては、表面処理剤で表面処理したものを使用してもよいし、表面未処理のものを使用してもよい。表面処理剤としては例えば、高級脂肪酸やその金属塩、シラン系、アルミニウム系、チタネート系カップリング剤、リン酸エステル等が挙げられる。表面処理の方法としては例えば、接着剤混練製造時にセピオライトと表面処理剤を投入し十分な混練履歴を加える方法が最も簡易である。その他の方法として、セピオライトの懸濁液に表面処理剤を添加して混合した後、濃縮乾燥する方法や、粉体状のセピオライトに表面処理剤を添加して混合、分散させる方法などの接着剤に投入する前に予め表面処理を済ませておく方法は、セピオライトの分散性を向上させ、その添加効果をより高める上で非常に効果的である。
【0018】
本発明におけるセピオライトの含有量は、ポリエステル系樹脂100質量部に対して0.3〜55質量部が好ましく、より好ましくは、0.5〜50質量部である。含有量が少なすぎると、弾性率向上効果が不足する場合があり、多すぎると脆くなってしまう可能性がある。セピオライトを加えることで、接着剤に耐熱性を付与することができる。
【0019】
本発明におけるヒンダードフェノール系酸化防止剤とは具体的には例えば、イルガノックス1010、イルガノックス1035、イルガノックス1076、イルガノックス3114(全て商品名、チバ・スペシャリティケミカルズ社製)などが挙げられる。
【0020】
本発明におけるヒンダードフェノール系酸化防止剤の含有量は、ポリエステル系樹脂100質量部に対して0.05〜10質量部が好ましく、より好ましくは、0.1〜5質量部である。含有量が少なすぎると十分な耐湿熱性の向上効果は得られず、多すぎると接着剤の粘度異常や耐熱温度の低下、接着力の低下などの不具合を引き起こす。
【0021】
本発明における銅害防止剤とは具体的には例えば、N,N′−ビス{3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェ二ル)プロピオ二ル}ヒドラジン(商品名はイルガノックスMD1024、チバ・スペシャリティケミカルズ社製)や、3−(N−サリチロイル)アミノ−1,2,4−トリアゾール(商品名はアデカスタブCDA−1、アデカ社製)、もしくはデカメチレンジカルボン酸ジサリチロイルヒドラジド(商品名はアデカスタブCDA−6、アデカ社製)などが挙げられる。
【0022】
本発明における銅害防止剤の含有量は、ポリエステル系樹脂100質量部に対して0.05〜10質量部が好ましく、より好ましくは、0.1〜5質量部である。含有量が少なすぎると十分な耐湿熱性の向上効果は得られず、多すぎると接着剤の粘度異常や耐熱温度の低下、接着力の低下などの不具合を引き起こす。
【0023】
本発明におけるカルボジイミド系樹脂とは、カルボジイミド基を含有する樹脂で、具体的には例えば、カルボジライト(商品名、日清紡績(株)社製)などが挙げられる。
【0024】
本発明におけるカルボジイミド系樹脂の含有量は、ポリエステル系樹脂100質量部に対して0.05〜10質量部が好ましく、より好ましくは、0.1〜5質量部である。含有量が少なすぎると耐湿熱性の向上効果が得られず、多すぎると接着剤の粘度異常を招き接着剤の塗布、塗工作業性に問題が出る可能性がある。
【0025】
本発明においてはヒンダードフェノール系酸化防止剤、銅害防止剤、カルボジイミド系樹脂は形態を問わず、粉体でもトルエンやMEKなどの溶剤に溶かし込んだものでも良い。接着剤混練製造時に各種材料を添加する際に添加して混練履歴を加えても良いし、接着剤の混練加工後に添加して攪拌によって分散させる方法でも添加は可能である。
【0026】
本発明のホットメルト接着剤は、例えば、ポリエステル系樹脂100質量部に対して、有機リン系難燃剤が30〜100質量部と、セピオライトが0.3〜55質量部と、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、銅害防止剤、およびカルボジイミド系樹脂の3種のうち少なくとも1種を0.05〜10質量部とを含有することにより、ハロゲンフリーで高い難燃性を有する上に、弾性率と耐湿熱性も優れたホットメルト接着剤とすることが可能となる。さらにセピオライトは他のフィラーと比較して安価であり、コスト面でも有利である。
【0027】
本発明のホットメルト接着剤には、本発明の目的の特性を損なわない範囲で他の添加剤を配合しても良い。具体的には例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、酸化チタニウム、焼成クレー、シリカ、ホウ酸亜鉛、窒素系難燃剤、タルク、炭酸カルシウム、膨張性黒鉛、グラスファイバー、シリコーンオイルなどがあげられる。
【0028】
次に本発明のフラットケーブルについて説明する。
本発明のフラットケーブルの好ましい一実施態様を図1に基づいて説明する。
本発明のフラットケーブルは、複数本の芯材3を並列に配置し、接着層2を介し一対の絶縁層1により挟んで一体化してなる。
【0029】
本発明に用いられる芯材としては、任意の材質のものであってよいし、任意の断面の形状を有するものであってよく、例えば、丸断面導体等任意の導体、被覆電線等任意の電線または任意の光ファイバ等が挙げられる。芯材の本数は特に制限はないが2〜30本が好ましい。芯材の厚さ、直径は特に制限はないが25〜250μmが好ましい。芯材の幅も特に制限はないが0.5〜15mmが好ましい。芯材同士の間隔も絶縁が保たれる限り特に制限はないが0.5〜5mmが好ましい。
【0030】
本明細書において、ケーブル又は芯材の「幅」方向とは、ケーブル又は芯材の長さ方向と直交する面内における、芯材が並ぶ方向を表し、「厚さ」方向とはケーブル又は芯材の長さ方向と直交する面内における、幅方向と直交する方向を表す。
【0031】
本発明において絶縁層としては例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリカーボネートをフイルム状にしたものを使用することが出来る。なかでも、強度やコストの点でポリエチレンテレフタレートフイルムが好ましい。
【0032】
フラットケーブルの幅は特に制限はないが、2〜100mmが好ましく、その幅は前記ポリエチレンテレフタレートフイルムの幅に対応する。
【0033】
本発明において接着層には、前述のポリエステル系樹脂100質量部に対して、有機リン系難燃剤が30〜100質量部と、セピオライトが0.3〜55質量部と、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、銅害防止剤、およびカルボジイミド系樹脂の3種のうち少なくとも1種が0.05〜10質量部とを含有するホットメルト接着剤を使用する。前記ホットメルト接着剤を使用することにより、ハロゲンフリーであるにもかかわらず、高い難燃性と屈曲に対する高い強度とともに優れた耐湿熱性を有するフラットケーブルとすることが可能である。
【0034】
本発明のフラットケーブルを製造する方法としては、通常の方法を用いることができ、特に限定されない。例えば、まず、ポリエチレンテレフタレート等の絶縁層1の片面に前記のホットメルト接着剤を塗布した接着剤つき絶縁フイルム1aをあらかじめ作製しておく。次に図2に示すように、並列に配列した芯材3を、一対の熱ロール4へと案内し、この熱ロール4により、前記芯材3を、前記芯材3の上下方向(それぞれ、矢印h、i)から供給される接着剤つき絶縁フイルム1aを接着剤が芯材に対する状態にて挟み、熱ロール4にて加熱して接着、一体化させる方法などが挙げられる。
【実施例】
【0035】
以下に本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
[接着剤]
表1〜3に示す配合比で、各成分をビーズミルにて混合し、各実施例、比較例に対応する接着剤を得た。なお、表に示す配合比を示す数値はすべて質量部である。
【0036】
なお、表1に示す接着剤の各成分の詳細は下記の通りである。
ポリエステル系樹脂
TX−33%(商品名、東特塗料(株)社製)
有機リン系難燃剤
ポリセーフNH−12B(商品名、味の素ファインテクノ(株)社製)
ヒシガードセレクトN−6ME(商品名、日本化学工業(株)社製)
セピオライト
PANGEL AD(商品名、TOLSA社製)
焼成クレー
SATINTONE SP33(商品名、ENGEL HARD社製)
ヒンダードフェノール系酸化防止剤
イルガノックス1010(商品名、チバ・スペシャリティケミカルズ社製)
銅害防止剤
イルガノックスMD1024(商品名、チバ・スペシャリティケミカルズ社製)
カルボジイミド系樹脂
カルボジライト V03、V07(共に商品名、日清紡績(株)社製)
【0037】
[フラットケーブル]
25μm厚、幅600mmのポリエチレンテレフタレートフイルムに前記の各実施例、比較例の接着剤を20μmの仕上がり厚さになるように塗布し、接着剤付きポリエチレンテレフタレートフイルムを得た。これを150mm幅に裁断して紙管を芯にしてロール状に巻き取っておいた。
その後、芯材として厚さ35μm、幅1.5mmの平角導体を幅方向に複数本並べ、前記導体を各接着剤付きポリエチレンテレフタレートフイルムにてはさみ込み、160℃の熱ロール間を通過させることにより、接着剤を融着させ、表1〜3に示す各実施例、比較例に対応するフラットケーブルを得た。
【0038】
得られたフラットケーブルに対し、下記の評価を行った。フラットケーブルの評価結果を表1〜3に示した。なお、引張弾性率、耐屈曲性については、ポリエステル系樹脂に何も配合していない接着剤を使用した比較例1を基準(100%)とし、それとの比で表示した。
【0039】
(引張弾性率)
シート状に加工した接着剤サンプルについて、1分間当たりサンプル変形部長さの1%にあたる変形を加える引張試験を行い、変形量と応力のグラフの立ち上がり部に接線を引き、その傾きから引張弾性率を算出した。
【0040】
(耐屈曲性)
フラットケーブルについて、常温(25℃)にて屈曲半径7mmに曲げたり真っ直ぐに伸ばしたりを繰り返し、フラットケーブル内の芯材が破断するまでの回数を測定した。数字が大きいほど、耐屈曲性に優れる。
【0041】
(回転コネクタ耐久試験)
フラットケーブルを特開平05−234651に示される回転コネクタに組み込み、60℃、95%RH環境下で1週間湿熱処理した後、90℃で168時間熱処理を行い、静止状態で徐冷したものを耐久試験(毎秒5回転の速度で左右2回転ずつを1サイクルとして400000サイクル実施)にかけた。耐久試験の前後でフラットケーブル内の回路導体の導電抵抗値の上昇率が50%未満の場合を合格とした。
【0042】
(難燃性(UL94VW−1))
UL1581で規定するVW−1垂直燃焼試験を行なった。着火しなくなるまで15秒間の接炎を繰り返しても全焼しない場合を合格とした。
【0043】
(耐湿熱性試験)
回転コネクタ耐久試験後のコネクタからフラットケーブルを取り出し観察を行う。表面や内部に目立った変色がなければ耐湿熱性合格、著しい変色が見られる場合は不合格とした。
【0044】
【表1】

【0045】
【表2】

【0046】
【表3】

【0047】
表1〜3から明らかなように、本発明の実施例1〜18のフラットケーブルは耐屈曲性、回転コネクタ耐久試験、難燃性、耐湿熱性評価において良好な結果となっている。また、接着剤のセピオライトの含有量が増えると、接着剤自身の引張弾性率が向上し、その接着剤を用いたフラットケーブルの耐屈曲性が向上する傾向が見られる。
【0048】
対して、ポリエステル系樹脂のみからなる接着剤を用いた比較例1のフラットケーブルは難燃性が悪く、ポリエステル系樹脂に有機リン系難燃剤のみが含有した接着剤を用いた比較例2のフラットケーブルは、接着剤自身の引張弾性率が低いため、耐屈曲性が低く、回転コネクタ耐久試験が不合格となってしまった。
【0049】
ポリエステル系樹脂に有機リン系難燃剤とセピオライトを含有するが、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、銅害防止剤、およびカルボジイミド系樹脂の3種のうち少なくとも1種を含有しない接着剤を用いた比較例3のフラットケーブルは、接着剤自身の引張弾性率が低くなり、耐屈曲性が低く、回転コネクタ耐久試験が不合格となり、且つ耐湿熱性も不合格となってしまった。
ポリエステル系樹脂に有機リン系難燃剤とセピオライトを含有し、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、銅害防止剤、およびカルボジイミド系樹脂の3種のうち少なくとも1種を含有しない接着剤であるので比較例4のフラットケーブルは、耐湿熱性が不合格となってしまった。
【0050】
ポリエステル系樹脂に有機リン系難燃剤とセピオライトと、ヒンダードフェノール系酸化防止剤とを含有するが、ヒンダードフェノール系酸化防止剤の配合量が少なすぎる接着剤を用いた比較例5のフラットケーブルは、耐湿熱性が不合格となってしまった。
ポリエステル系樹脂に有機リン系難燃剤とセピオライトと、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、銅害防止剤、およびカルボジイミド系樹脂の3種を含有するが、セピオライトの配合量が多すぎる接着剤を用いた比較例6のフラットケーブルは、耐湿熱性の問題が解決されない。
【0051】
セピオライトの代わりに焼成クレーを含有した比較例7、8のフラットケーブルは、接着剤自身の引張弾性率を向上させる効果が小さいため、耐屈曲性が低く、回転コネクタ耐久試験が不合格となった。
【0052】
以上で明らかなように、本発明のホットメルト接着剤は、ハロゲンフリーで、優れた難燃性と高い弾性率と耐湿熱性を有するホットメルト接着剤である。
さらに本発明のフラットケーブルは、前記ホットメルト接着剤を接着層として有することにより、ハロゲンフリーであるにもかかわらず、高い難燃性と屈曲に対する高い強度とともに優れた耐湿熱性を有するフラットケーブルである。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明のフラットケーブルの一実施態様を示す断面図である。
【図2】本発明のフラットケーブルを製造するための熱ラミネート加工の説明図である。
【符号の説明】
【0054】
1 絶縁層
1a 接着剤つき絶縁フイルム
2 接着層
3 芯材
4 熱ロール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステル系樹脂と有機リン系難燃剤とセピオライトと、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、銅害防止剤、およびカルボジイミド系樹脂の3種のうち少なくとも1種とを含有することを特徴とするホットメルト接着剤。
【請求項2】
前記ポリエステル系樹脂100質量部に対して、前記有機リン系難燃剤が30〜100質量部と、前記セピオライトが0.3〜55質量部と、前記ヒンダードフェノール系酸化防止剤、前記銅害防止剤、および前記カルボジイミド系樹脂の3種のうち少なくとも1種が0.05〜10質量部とを含有することを特徴とするホットメルト接着剤。
【請求項3】
前記ポリエステル系樹脂100質量部に対して、前記有機リン系難燃剤が30〜100質量部と、前記セピオライトが0.3〜55質量部と、前記ヒンダードフェノール系酸化防止剤、前記銅害防止剤、および前記カルボジイミド系樹脂の3種のうち少なくとも2種がそれぞれ0.05〜10質量部とを含有することを特徴とするホットメルト接着剤。
【請求項4】
前記ポリエステル系樹脂100質量部に対して、前記有機リン系難燃剤が30〜100質量部と、前記セピオライトが0.3〜55質量部と、前記ヒンダードフェノール系酸化防止剤が0.05〜10質量部と、前記銅害防止剤が0.05〜10質量部と、前記カルボジイミド系樹脂が0.05〜10質量部とを含有することを特徴とするホットメルト接着剤。
【請求項5】
前記銅害防止剤がN,N’−ビス(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェ二ル)プロピオ二ル)ヒドラジン、3−(N−サリチロイル)アミノ−1,2,4−トリアゾール、およびデカメチレンジカルボン酸ジサリチロイルヒドラジドの少なくとも1種であることを特徴とする請求項1〜4記載のホットメルト接着剤。
【請求項6】
複数本の芯材を並列に配置し、接着層を介し一対の絶縁層により挟んで一体化してなるフラットケーブルであって、前記接着層が請求項1〜5いずれか1項に記載の接着剤からなることを特徴とするフラットケーブル。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−248042(P2008−248042A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−89860(P2007−89860)
【出願日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【出願人】(000003414)東京特殊電線株式会社 (173)
【Fターム(参考)】