説明

ホットメルト接着剤組成物

【課題】糸引きが一層低減され、熱安定性および透明性に優れたホットメルト接着剤組成物を提供すること。
【解決手段】ホットメルト接着組成物は、少なくとも1種のエチレン/C3〜C20α−オレフィン共重合体を包含する第1の成分;第1の成分100重量部につき6〜12重量部の量の、少なくとも1種のエチレン/(メタ)アクリル酸エステル共重合体を包含する第2の成分;第1の成分100重量部につき50〜200重量部の量の、少なくとも1種の粘着付与樹脂を包含し、第1および第2の成分と相溶性の第3の成分を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホットメルト接着剤組成物に係り、より具体的には、糸引きが少なく、透明で、熱安定性に優れたホットメルト接着剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ホットメルト接着剤は、セット速度の速さ、良好な経済性、溶剤の不使用等の点から、包装、製本、木工等様々な用途に用いられている。
【0003】
しかしながら、ホットメルト接着剤は、使用に際し、糸引きを起こし、周辺機器(例えば、段ボール包装ラインの場合には、ケーサーや印字装置)を汚したり、製品に付着して商品価値を損ねたり、センサー等の機器に影響(誤動作)を及ぼす。
【0004】
また、ホットメルト接着剤の代表的な適用手法にノズル塗工がある。この場合、OFF信号が発信された後も、ノズルキャビティや機械的遮蔽(スプリングバック)による応答遅れにより、糸引きが発生し、この糸引きは、ノズルと被接着体との距離が長い場合、ライン速度が速い場合、使用時のホットメルト接着剤の溶融粘度が高い場合には、より一層顕著になる。
【0005】
そのため、糸引きが発生すると、オペレータは、作業ラインを停止し、糸を除去する必要がある。
【0006】
このホットメルト接着剤の糸引きを低減させるために、先行技術において多くの提案がなされている。
【0007】
例えば、特許文献1は、エチレン/酢酸ビニル共重合体、エチレン/(メタ)アクリレート共重合体等のベースポリマーおよび接着性付与剤を特定の割合で含むホットメルト接着剤に特定の低分子量エチレン/不飽和カルボン酸共重合体を特定の割合で配合することにより糸引き性を低減させることを開示している。しかしながら、このホットメルト接着剤組成物は、塗布時に垂れを生じたり、凝集力が不足するため接着力が十分でなかったりする不都合がある。
【0008】
特許文献2は、特定のエチレン/不飽和エステル共重合体、粘着性付与樹脂およびワックスからなるホットメルト組成物に特定のヒュームドシリカを配合することによりホットメルト組成物の糸引き性を低減させることを開示している。特許文献3は、特定の2種類のエチレン/不飽和エステル共重合体および粘着付与剤を含む組成物にポリエチレンを特定量配合することによりホットメルト組成物の糸引き性を低減させることを開示している。さらに、特許文献4は、エチレン/酢酸ビニル共重合体やエチレンアクリル酸エステル共重合体のようなベース樹脂にこのベース樹脂に対し非相容性の樹脂をコロイド粒子として配合することによりホットメルト組成物の糸引き性を低減させることを開示している。しかしながら、これらのホットメルト接着剤組成物は、いずれも、透明性にかけ、熱安定性に劣り、長時間の使用によりゲル化/炭化してアプリケーターの詰まりを生じさせたり、塗布不良を招いたりする不都合がある。
【特許文献1】特開平7−331221号公報
【特許文献2】特開平11−61067号公報
【特許文献3】特開2003−238920号公報
【特許文献4】特開2004−2634号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従って、本発明は、糸引きが一層低減され、熱安定性および透明性に優れたホットメルト接着剤組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、糸引きがほとんどなく、熱安定性および透明性に優れたホットメルト接着剤組成物について鋭意研究する中で、米国特許第6107430号に記載されたエチレン/α−オレフィン共重合体のようなエチレン/α−オレフィン共重合体に着目した。エチレン/α−オレフィン共重合体は、熱安定性に優れたホットメルト接着剤を提供し得る。本発明者らは、このエチレン/α−オレフィン共重合体(第1の成分)に、この共重合体と非相容性であるがこの共重合体の糸引き性を有意に低減させる特定のポリマー、すなわちエチレン/(メタ)アクリル酸エステル共重合体(第2の成分)、および第1の成分と第2の成分に相溶性のある第3の成分を特定の割合で配合することにより、所期の目的を達成し得ることを見いだした。本発明は、かかる知見に基づくものである。
【0011】
すなわち、本発明によれば、少なくとも1種のエチレン/C3〜C20α−オレフィン共重合体を包含する第1の成分;前記第1の成分100重量部につき約6〜約12重量部の量の、少なくとも1種のエチレン/(メタ)アクリル酸エステル共重合体を包含する第2の成分;並びに前記第1の成分100重量部につき約50〜約200重量部の量の、少なくとも1種の粘着付与樹脂を包含し、前記第1および前記第2の成分と相溶性の第3の成分を含むホットメルト接着組成物が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明をより詳しく説明する。
【0013】
本発明のホットメルト接着剤組成物は、(1)少なくとも1種のエチレン/C3〜C20α−オレフィン共重合体を包含する第1の成分、(2)少なくとも1種のエチレン/(メタ)アクリル酸エステル共重合体を包含する第2の成分、および(3)少なくとも1種の粘着付与樹脂を包含し、前記第1および前記第2の成分と相溶性の第3の成分を含む。
【0014】
第1の成分を構成するエチレン/C3〜C20α−オレフィン共重合体は、エチレンと少なくとも1種のC3〜C20α−オレフィン(例えば、プロピレン、イソブチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン)との共重合体である。α−オレフィンは、C4〜C20α−オレフィンであることが好ましく、C6〜C8α−オレフィンであることがより好ましく、1−オクテンであることがさらに好ましい。このエチレン/α−オレフィン共重合体は、C3〜C20α−オレフィンを約20〜約40モル%の量で含むことが好ましい。
【0015】
本発明のホットメルト接着剤組成物は、包装、製本、木工等様々な用途に用いることができるが、一般に、エチレン/α−オレフィン共重合体は、約5〜約2500g/10分のメルトインデックスを有することが好ましく、包装用には、約150〜約2500のg/10分のメルトインデックスを有することが好ましい。
【0016】
本発明に使用されるエチレン/α−オレフィン共重合体は、例えば米国特許第6107430号にその製造方法を含めて記載されている。エチレン/1−オクテン共重合体は、ダウ・ケミカル社から「AFFINITY(TM)」の商品名の下に販売されている。その例を挙げると、AFFINITY EG 8185(メルトインデックス:30.00g/10分)、AFFINITY EG 8200G(メルトインデックス:5.00g/10分)、AFFINITY GA 1900(メルトインデックス:1000.00g/10分)、AFFINITY GA 1950(メルトインデックス:500.00g/10分)、AFFINITY PT 1409(メルトインデックス:6.00g/10分)等である。これらエチレン/1−オクテン共重合体は、約35〜37モル%の1−オクテン含有率を有する。エチレン/α−オレフィン共重合体は、単独で、あるいは組み合わせて用いることができる。
【0017】
本発明のホットメルト接着剤組成物の第2の成分は、第1の成分であるエチレン/α−オレフィン共重合体と非相溶性のポリマーであり、糸引き性を有意に低減させるものである。この第2の成分は、エチレンと少なくとも1種の(メタ)アクリル酸エステルとの共重合体、すなわちエチレン/(メタ)アクリル酸エステル共重合体を含む。ここで、(メタ)アクリル酸エステルは、アクリル酸エステルとメタクリル酸エステルの総称である。(メタ)アクリル酸エステルは、(メタ)アクリル酸のC1〜C8アルキル(例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル)エステルであることが好ましく、(メタ)アクリル酸のC1〜C4アルキルエステルであることがより好ましい。(メタ)アクリル酸エステルは、アクリル酸エチルまたはメタクリル酸メチルであることが特に好ましい。エチレン/(メタ)アクリル酸エステル共重合体は、(メタ)アクリル酸エステルを約5〜約35モル%の量で含有することが好ましく、約20〜約35モル%の量で含有することがさらに好ましい。また、エチレン/(メタ)アクリル酸エステル共重合体は、約20〜約400g/10分のメルトインデックスを有することが好ましい。かかるエチレン/(メタ)アクリル酸エステル共重合体は、市販されている。その例を挙げると、三井・デュポンポリケミカル社からEVAFLEX−EEAの商品名の下で販売されているエチレン/アクリル酸エチル共重合体A704(メルトインデックス:275g/10分;アクリル酸エチル含有量25モル%)、同A709(メルトインデックス:25g/10分;アクリル酸エチル含有量34モル%);日本ユニカー社からそれぞれDPDJ−9169の商品名(メルトインデックス:20g/10分;アクリル酸エチル含有量20モル%)、NUC−6070の商品名(メルトインデックス:250g/10分;アクリル酸エチル含有量25モル%)およびNUC−6940の商品名(メルトインデックス:20g/10分;アクリル酸エチル含有量35モル%)の下で販売されているエチレン/アクリル酸エチル共重合体;住友化学社からそれぞれアクリフト(ACRYFT)CM5021の商品名(メルトインデックス:450g/10分;メタクリル酸メチル含有率:28モル%)、アクリフトCM5022の商品名(メルトインデックス:450g/10分;メタクリル酸メチル含有率;32モル%)、アクリフトCM5023の商品名(メルトインデックス:150g/10分;メタクリル酸メチル含有率;28モル%)の下で販売されているエチレン/メタクリル酸メチル共重合体等である。エチレン/(メタ)アクリル酸エステル共重合体は、単独で、または組み合わせて用いることができる。
【0018】
本発明のホットメルト接着剤組成物の第3の成分は、上記第1の成分と第2の成分と相溶するものであり、本発明のホットメルト接着剤組成物を透明にするものである。この第3の成分は、少なくとも1種の粘着付与樹脂を含む。
【0019】
本発明において、「相溶性」を有するとは、塗布温度付近(通常は約160〜約180℃、典型的には180℃)に加熱された溶融状態にて、数時間放置しても含有成分の相分離がなく、可視光を十分に通す「透明」な状態を指す。ここで、「透明な状態」とは、平底のガラス製サンプル瓶に溶融した試料を10cmの高さまで入れ、真上から見た場合、瓶下の新聞紙の文字が肉眼で読解できる状態と定義する。
【0020】
第3の成分は、1種類の粘着付与樹脂によって提供されてもよいし、あるいは第1の成分(エチレン/α−オレフィン共重合体)と相溶性の第1の粘着付与樹脂と、第2の成分(エチレン/(メタ)アクリル酸エステル共重合体)と相溶性の第2の粘着付与樹脂との組み合わせによって提供されてもよい。後者の場合、第1および第2の粘着付与樹脂は、石油樹脂によって提供され得、第1の粘着付与樹脂は、完全水素化石油樹脂、好ましくは水素化率約95%以上の石油樹脂からなることが好ましく、第2の粘着付与樹脂は、部分水素化石油樹脂、好ましくは水素化率約60〜約70%の部分水素化石油樹脂からなることが好ましい。石油樹脂は、不飽和石油留分を重合して製造される合成樹脂であり、ナフサ分解で副生する不飽和度の高いC4〜C5留分(例えば、1−ブテン、イソブチレン、ブタジエン、ペンテン、イソプレン、ピペリジン、1,3−ペンタジエン)、C9〜C10留分(ビニルトルエン、インデン、α−メチルスチレン、シクロペンタジエン)等が原料として主に用いられている。石油樹脂には、脂肪族系石油樹脂、脂環族系石油樹脂、芳香族系石油樹脂、および脂肪族成分と芳香族成分の共重合石油樹脂が含まれる。脂肪族系石油樹脂は、上記C4〜C5留分を重合させた樹脂である。脂環族系石油樹脂は、上記C4〜C5留分中の非環式ジエン成分を環化2量体化させ、この2量体モノマーを重合させた樹脂、シクロペンタジエンを重合させた樹脂等である。芳香族系石油樹脂は上記C9〜C10留分を重合させた樹脂である。また、脂肪族成分と芳香族成分の共重合石油樹脂は、上記C4〜C5留分とC9〜C10留分を共重合させた樹脂である。部分水素化石油樹脂および完全水素化石油樹脂は、市販されている。例えば、部分水素化C5芳香族系石油樹脂は、出光興産から商品名アイマーブ(IMARV)S−100(軟化点:100℃)、アイマーブ(IMARV)S−110(軟化点:110℃;)の下で販売されている。完全水素化C5芳香族系石油樹脂は、出光興産から商品名アイマーブ(IMARV)P−90(軟化点:90℃)、アイマーブ(IMARV)P−100(軟化点:100℃)、アイマーブ(IMARV)P−125(軟化点:125℃)、アイマーブ(IMARV)P−140(軟化点:140℃)の下で販売されている。
【0021】
さて、本発明のホットメルト接着剤組成物は、第2の成分(エチレン/(メタ)アクリル酸エステル共重合体)を第1の成分(エチレン/C3〜C20α−オレフィン共重合体)100重量部につき約5〜約12重量部の量で含有する。第2の成分の量が、第1の成分100重量部につき約5重量部未満であると、糸引き性を十分に減少させることができない。他方、第2の成分の量が第1の成分100重量部につき約12重量部を超えると、得られるホットメルト接着剤組成物の透明性が不十分となる。第2の成分の量は、第1の成分100重量部につき約7〜約10重量部であることが好ましい。
【0022】
また、第3の成分(粘着付与樹脂)の量は、第1の成分100重量部につき約50〜約250重量部である。第3の成分の量が第1の成分100重量部につき約50重量部未満であると、エラスティックで接着性に欠ける。他方、第3の成分が第1の成分100重量部につき約250重量部を超えると、ホットメルト接着剤が脆くなる。第3の成分が、第1の粘着付与樹脂と第2の粘着付与樹脂との組み合わせからなる場合、第1の粘着付与樹脂の量は、第1の成分100重量部につき約40〜約150重量部であることが好ましく、第2の粘着付与樹脂の量は、第1の成分100重量部につき約10〜約50重量部であることが好ましい。第1の粘着付与樹脂の量は、第1の成分100重量部につき約70〜約120重量部であることがより好ましく、第2の粘着付与樹脂の量は、第1の成分100重量部につき約20〜約40重量部であることがより好ましい。
【0023】
本発明のホットメルト接着剤組成物は、上記第1〜第3の成分に加えて、ホットメルト接着剤組成物の粘度を低下させ、結晶化を抑制して可使時間を調節するために、ワックスを含有することができる。
【0024】
ワックスとしては、ホットメルト接着剤に一般的に使用されている各種ワックスを使用することができる。その例を挙げると、フィッシャートロプシュワックス、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、アタクチックポリプロピレンワックス、エチレン/酢酸ビニル共重合体等の合成ワックス;パラフィンワックス、精製パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス等の石油系ワックス;木ロウ、カルナバワックス、蜜ロウ等の天然系ワックス等である。使用するワックスは、融点が約60〜約120℃であるものが好ましい。かかるワックスは市販されている。
【0025】
本発明のホットメルト接着剤組成物において、ワックスは、好ましくは、第1の成分100重量部につき約30〜約85重量部の量で含まれる。
【0026】
また、本発明のホットメルト接着剤組成物は、酸化防止剤を含有することができる。用いる酸化防止剤としは、ホットメルト接着剤に一般的に使用されている各種酸化防止剤を使用することができる。酸化防止剤の例を挙げると、ヒンダードフェノール系酸化防止剤(チバスペシャルティケミカルズ社製イルガノックス(IRGANOX)1010、1076等)、ホスフィト系酸化防止剤(チバスペシャルティケミカルズ社製イルガフォス168)等である。
【0027】
さらに、本発明のホットメルト接着剤組成物は、液状粘着付与樹脂および/またはプロセス油を含むことができる。液状粘着付与樹脂の例を挙げると、丸善石油化学(株)製マルカクリアー(MARUKACLEAR)H、イーストマンケミカル社製リガライト(REGALITE)R1010等である。また、プロセス油の例を挙げると、出光石油化学(株)製パラフィンオイルPW−90、シェルケミカルズジャパン(株)製ナフテンオイル371−N等である。
【0028】
以上、本発明のホットメルト接着剤組成物の成分の量を、第1の成分の重量を基準にして説明した。しかしながら、別の態様において、本発明のホットメルト接着剤組成物の成分の量をホットメルト接着剤組成物の合計量を基準として規定することもできる。その場合、本発明のホットメルト接着剤組成物は、好ましくは、約20〜約60重量%の第1の成分、約1〜約10重量%の第2の成分、約20〜約60重量%の第3の成分、0〜約40重量%のワックス、および0〜約1重量%の酸化防止剤を含有する。より好ましくは、本発明のホットメルト接着剤組成物は、約25〜約50重量%の第1の成分、約2〜約4重量%の第2の成分、約20〜約50重量%の第1の粘着付与樹脂、約5〜約20重量%の第2の粘着付与樹脂、約10〜約30重量%のワックス、および0〜約1重量%の酸化防止剤を含有する。
【実施例】
【0029】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明はそれらの実施例により限定されるものではない。
【0030】
実施例1〜6、比較例1〜5
下記表1に示す組成のホットメルト接着剤組成物を調製した。
【表1】

【0031】
表1において:
AFFINITY GA 1950(商品名)は、ダウ・ケミカル社から販売されているエチレン/1−オクテン共重合体(メルトインデックス:500.00g/10分;1−オクテン含有量:35〜37モル%)であり、本発明の第1の成分であり;
ACRYFT CM5021(商品名)は、住友化学社から販売されているエチレン/メタクリル酸メチル共重合体(メルトインデックス:450g/10分;メタクリル酸メチル含有率:28モル%)であり、本発明の第2の成分であり;
EEA A704(商品名)は、三井・デュポンポリケミカル社から販売されているエチレン/アクリル酸エチル共重合体(メルトインデックス:275g/10分;アクリル酸エチル含有量25モル%)であり、本発明の第2の成分であり;
IMARV P125(商品名)は、出光興産から販売されている完全水素化C5芳香族系石油樹脂(軟化点:125℃;気相浸透法による平均分子量:880)であり、本発明の第3の成分(第1の粘着付与樹脂)であり;
IMARV S100(商品名)は、出光興産から販売されている部分水素化C5芳香族系石油樹脂(軟化点:100℃;気相浸透法による平均分子量:700)であり、本発明の第3の成分(第2の粘着付与樹脂)であり;
BARECO PX−100は、Baker Petrolite社から販売されているフィッシャートロプシュワックス(融点:98℃)であり;
IRGANOX 1010FFは、チバスペシャルティケミカルズから販売されているヒンダードフェノール系酸化防止剤である。
【0032】
各ホットメルト接着剤組成物につき、各種物性を以下の通りの方法により測定した。結果を表1に併記する。
【0033】
<初期粘度(単位:mPa・s)>
ブルックフィールドRVF型粘度計とサーモセルを用い、No.21スピンドルにて180℃で測定する。
【0034】
<加熱養生後の粘度(単位:mPa・s)>
ホットメルト接着剤100gを225ccのガラスジャーに入れ、アルミニウム箔をかぶせてこれに蓋をし、180℃のオーブンに1週間放置し、そのときの粘度を上記初期粘度と同様に測定する。
【0035】
<加熱養生後の粘度変化率>
以下の式により、加熱養生後の粘度変化率を計算した。
【0036】
{[(加熱養生後の粘度)−(初期粘度)]÷(初期粘度)}×100。
【0037】
<初期透明性(相溶性)試験>
新聞紙(特に限定はないが、フォントは明朝体でサイズは3mmのもの)の上に、容量110ccの平底ガラス製サンプル瓶を置き、これに典型的なアプリケーション温度180℃で溶融させたホットメルト接着剤試料を1cmの高さまで入れる。この状態で真上から覗き、新聞の文字を肉眼で読みとる。読解可能な場合は、更に1cm試料を追い足し、同様に文字を読み取る。これを繰り返し、10cm以上の高さに至るまで行う。ただし、10cmの高さまで読み取り可能であれば、透明であると判断する。認識可能であった最高の液面高さを報告する。なお、サンプル瓶に試料を入れたとき、試料中に泡が存在する場合には、試料を入れたサンプル瓶を再び180℃に加熱して泡を追い出してから測定に供する。
【0038】
<接着性試験>
JTトーシ製接着力試験機を用い、ホットメルト接着剤をK−ライナー段ボール片に、180℃、塗布量3g/mで塗布し、オープンタイム2秒、プレス圧7.8kPaにて別のK−ライナー段ボール片と貼り合わせた。この貼り合わせた段ボール片を−20℃、−10℃、5℃、23℃、50℃および60℃に設定された恒温槽中に12時間以上放置し、その雰囲気下にて手で強制的に剥離する。全接着面積に占める段ボールライナーの破壊の割合を材破率とし、材破率が80%以上であれば、その温度で合格とする。
【0039】
<糸引き性試験>
基本的に特開2004−2634号公報に記載の方法によりホットメルト接着剤の糸引き性を評価した。ただし、ショット数を100とし、タンク、ホースおよびノズル温度を180℃または170℃とし、ノズル径を20/1000インチとし、ポンプ圧力を0.3または0.2MPaとした。受け皿にたまった落下物の量を測定するとともに、落下物の形態を観察する。表1中、落下物の形態に関し、「D」は、粒状であることを示し、「S」は、糸状であることを示し、「DS」は、主に粒状であるがわずかに糸も混じっていることを示し、「SD」は、主に糸状であるが、わずかに粒も混じっていることを示す。すなわち、落下物の形態が「D」であれば、その組成物は糸引き性が完全にないことを意味し、落下物の形態が「DS」であれば、その組成物は糸引き性が実質的にないことを意味する。
【0040】
表1に示す結果から、本発明の接着剤組成物は、接着性に優れるとともに、熱安定性が良好で(加熱養生前後の粘度変化率が低い)、透明性に優れ、しかも糸引き性が実質的にないという優れた性質を示す。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種のエチレン/C3〜C20α−オレフィン共重合体を包含する第1の成分、
前記第1の成分100重量部につき約6〜約12重量部の量の、少なくとも1種のエチレン/(メタ)アクリル酸エステル共重合体を包含する第2の成分、
前記第1の成分100重量部につき約50〜約200重量部の量の、少なくとも1種の粘着付与樹脂を包含し、前記第1および前記第2の成分と相溶性の第3の成分
を含むホットメルト接着組成物。
【請求項2】
前記α−オレフィンが、C6〜C8オレフィンである請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記α−オレフィンが、1−オクテンを含む請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記エチレン/C3〜C20α−オレフィン共重合体が、約5〜約2500g/10分のメルトインデックスを有する請求項1〜3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
前記エチレン/C3〜C20α−オレフィン共重合体が、約150〜約2500g/10分のメルトインデックスを有する請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記(メタ)アクリル酸エステルが、C1〜C8アルキル(メタ)アクリル酸エステルを含む請求項1〜5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
前記(メタ)アクリル酸エステルが、アクリル酸エチルまたはメタクリル酸メチルを含む請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
前記エチレン/(メタ)アクリル酸エステル共重合体が、約20〜約400g/10分のメルトインデックスを有する請求項1〜7のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項9】
前記第3の成分が、前記第1の成分100重量部につき約40〜約150重量部の量の、前記第1の成分と相溶性の第1の粘着付与樹脂、および前記第1の成分100重量部につき約10〜約50重量部の量の、前記第2の成分と相溶性の第2の粘着付与樹脂を含む請求項1〜8のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項10】
前記第1の粘着付与樹脂が、完全水素化石油樹脂を含む請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
前記第2の粘着付与樹脂が、部分水素化石油樹脂を含む請求項9または10に記載の組成物。
【請求項12】
少なくとも1種のワックスをさらに含有する請求項1〜11のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項13】
前記ワックスが、第1の成分100重量部につき約30〜約80重量部の量で存在する請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
少なくとも1種のプロセス油をさらに含有する請求項1〜11のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項15】
少なくとも1種の酸化防止剤をさらに含有する請求項1〜14のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項16】
少なくとも1種の液体粘着付与樹脂をさらに含有する請求項1〜15のいずれか1項に記載の組成物。

【公開番号】特開2006−188580(P2006−188580A)
【公開日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−604(P2005−604)
【出願日】平成17年1月5日(2005.1.5)
【出願人】(505008785)日本フーラー株式会社 (1)
【Fターム(参考)】