説明

ホットメルト接着剤組成物

【課題】 耐熱性を改良したホットメルト接着剤組成物およびリサイクル性に適した難細裂性ホットメルト接着剤組成物を提供する。
【解決手段】 JIS K6924−1(1997年版)に準拠した酢酸ビニル含有率が20〜50重量%、ビニルシラン含有率が0.01〜2重量%であるエチレン−酢酸ビニル−ビニルシラン系共重合体20〜90重量%及び水素化粘着付与剤10〜80重量%からなる混合物100重量部に対して、シラノール縮合触媒0.01〜1重量部添加した後、水分の存在下にてエチレン−酢酸ビニル−ビニルシラン系共重合体を架橋することを特徴とするホットメルト接着剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は耐熱性を改良したホットメルト接着剤組成物およびリサイクル性に適した難細裂性ホットメルト接着剤組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
エチレン−酢酸ビニル共重合体はその高い粘着性を利用してホットメルト接着剤の原料として使用されている。ホットメルト接着剤はエチレン−酢酸ビニル共重合体と粘着付与剤とワックスから構成され、包装、製本、合板、木工などの分野で広く使用されている。ホットメルト接着剤は塗布後の固化時間が短く、無溶剤であること等から年々使用量が増加している。
【0003】
製本分野においては、糸とじを行わずに容易に製本出来る「無線とじ」という方法が、電話帳、時刻表、文庫本、雑誌などの製本に広く利用されている。
【0004】
一方、近年の紙原料資源調達や最終処分場の能力不足等、深刻化する都市ごみ減量対策のため、従来ごみとして焼却処理されてきた紙類を古紙として回収、再利用する施策が推進されている。古紙リサイクルの主な阻害要因としては、製本用ホットメルト接着剤の混入が挙げられている。ホットメルト接着剤は古紙再生工程で接着剤が細裂化するため除去しきれずに再生紙の品質を落としてしまい、再生する場合背表紙部分を切断するなど手間がかかっていた。そのため難細裂性ホットメルト接着剤の開発が望まれている。
【0005】
加えて、従来のホットメルト接着剤では接着後の高温下において接着力の低下が問題となっており、耐熱性の向上が求められている。ホットメルト接着剤の耐熱性向上方法としては、用いるポリマーをシラン架橋する方法が知られている。シラン架橋の方法としては、ポリオレフィンにシラン化合物をグラフトする方法(例えば、特許文献1、2参照)、ポリオレフィンとシラン化合物を共重合させる方法(例えば、特許文献3参照)等が知られている。グラフトする方法では、パーオキサイドを使用して反応させるため温度条件に制約がありゲルも発生しやすく、また製造工程もポリオレフィンを一旦生産した後に変性する必要があるため、手間がかかりコストも高くなるという問題があった。
【0006】
一方、共重合する方法においても、酢酸ビニル含有率が18重量%以下では実績があるものの、ホットメルト接着剤に使用される酢酸ビニル含有率20重量%以上のものはなく、また酢酸ビニル含有率が18重量%以下の共重合体においても、粘着付与剤を添加すると混合時に架橋してしまうという問題があった。
【0007】
【特許文献1】特公昭55−160074号公報
【0008】
【特許文献2】特公昭62−23795号公報
【特許文献3】特公昭56−8447号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、耐熱性を改良したホットメルト接着剤組成物およびリサイクル性に適した難細裂性ホットメルト接着剤組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者はかかる点を考慮し鋭意検討した結果、特定のエチレン−酢酸ビニル−ビニルシラン系共重合体、水素化粘着付与剤及びシラノール縮合触媒からなる混合物を、水分の存在下にてエチレン−酢酸ビニル−ビニルシラン系共重合体を架橋することにより、良好な耐熱性を有し、かつリサイクル性に適した難細裂性に優れたホットメルト接着剤組成物となることを見出し本発明を完成するに至った。
【0011】
即ち本発明は、JIS K6924−1(1997年版)に準拠した酢酸ビニル含有率が20〜50重量%、ビニルシラン含有率が0.01〜2重量%であるエチレン−酢酸ビニル−ビニルシラン系共重合体20〜90重量%及び水素化粘着付与剤10〜80重量%からなる混合物100重量部に対して、シラノール縮合触媒0.01〜1重量部添加した後、水分の存在下にてエチレン−酢酸ビニル−ビニルシラン系共重合体を架橋することを特徴とするホットメルト接着剤組成物に関するものである。
【0012】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0013】
本発明のホットメルト接着剤組成物で使用されるエチレン−酢酸ビニル−ビニルシラン系共重合体とは、エチレン、酢酸ビニル、ビニルシラン含む共重合体であれば特に制限はなく、該ビニルシランとしてはビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン等が挙げられる。その中でもエチレン−酢酸ビニル−ビニルトリメトキシシラン共重合体が好ましい。
【0014】
エチレン−酢酸ビニル−ビニルシラン系共重合体は、エチレン、酢酸ビニル、ビニルシランに加えて、本発明のホットメルト接着剤組成物の物性を損なわない範囲で、他の共重合可能な単量体を添加することが可能であり、該共重合可能な単量体としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル等の(メタ)アクリル酸エステル類;(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸等の不飽和カルボン酸類;グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、イタコン酸モノグリシジルエステル等の不飽和グリシジル化合物等が挙げられる。
【0015】
本発明のホットメルト接着剤組成物において使用されるエチレン−酢酸ビニル−ビニルシラン系共重合体の酢酸ビニル含有率は20〜50重量%、好ましくは25〜45重量%の範囲である。酢酸ビニル含有率が20重量%未満ではホットメルト接着剤組成物の接着性が低下し、50重量%を超えるとホットメルト接着剤組成物の機械的強度が低下する。
【0016】
また、エチレン−酢酸ビニル−ビニルシラン系共重合体のビニルシラン含有率は0.01〜2重量%、好ましくは0.01〜1重量%の範囲である。ビニルシラン含有率が0.01重量%未満ではホットメルト接着剤組成物の架橋が不十分となり、2重量%を超えるとエチレン−酢酸ビニル−ビニルシラン系共重合体を安定的に製造することが困難となる。
【0017】
さらに、エチレン−酢酸ビニル−ビニルシラン系共重合体のK 6924−1(1997年版)に準拠した190℃におけるメルトマスフローレイト(MFR)は、好ましくは1〜3,000g/10min、特に好ましくは10〜1,000g/10minの範囲である。
【0018】
また、エチレン−酢酸ビニル−ビニルシラン系共重合体の製造方法は、当該共重合体が得られる限り如何なる共重合方法でもよく、例えば、攪拌式オートクレーブにエチレン、酢酸ビニル、ビニルシラン、一般的にラジカル重合に用いられるアゾ系開始剤化合物あるいは有機過酸化物化合物等の重合開始剤、及び一般的にラジカル重合に用いられる連鎖移動剤を供給し、重合圧力50〜300MPa、重合温度100〜250℃の条件下で共重合を行うことができる。
【0019】
本発明のホットメルト接着剤組成物のエチレン−酢酸ビニル−ビニルシラン系共重合体と水素化粘着付与剤の配合におけるエチレン−酢酸ビニル−ビニルシラン系共重合体の配合量は、20〜90重量%、好ましくは40〜80重量%の範囲である。配合量が20重量%未満ではホットメルト接着剤組成物の架橋が不十分となり、90重量%を超えるとホットメルト接着剤組成物の塗工作業性が悪化する。
【0020】
本発明のホットメルト接着剤組成物で使用される水素化粘着付与剤とは、粘着付与剤中の二重結合を水素化したものであり、特にエチレン−酢酸ビニル−ビニルシラン系共重合体との混合時の架橋反応を防ぐため水素化率が90〜100%であることが好ましい。水素化粘着付与剤としては、脂肪族系炭化水素樹脂、脱環族系炭化水素樹脂、芳香族系炭化水素樹脂、テルペン系樹脂、ロジン系樹脂、スチレン系樹脂等の水素化物が挙げられ、これらは単独または混合物として用いることができる。具体的には脱環族系炭化水素樹脂の水素化物としてはアルコン(荒川化学工業(株)製)、ロジンの水素化物としてはエステルガム(荒川化学工業(株)製)、パインクリスタル(荒川化学工業(株)製)、ポリテルペン系樹脂の水素化物としてはクリアロン(ヤスハラケミカル(株)製)等の商品が挙げられる。
【0021】
本発明のホットメルト接着剤組成物のエチレン−酢酸ビニル−ビニルシラン系共重合体と水素化粘着付与剤の配合における水素化粘着付与剤の配合量は、10〜80重量%であり、その中でも接着力及び塗工作業性の面から20〜50重量%であることが好ましい。
【0022】
本発明のホットメルト接着剤組成物で使用されるシラノール縮合触媒としては、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジオクトエート、ジオクチル錫ジラウレート、酢酸第一錫等が挙げられる。シラノール縮合触媒の配合量は、エチレン−酢酸ビニル−ビニルシラン系共重合体及び水素化粘着付与剤からなる混合物100重量部に対して、0.01〜1重量部であり、その中でも0.05〜0.5重量部であることが特に好ましい。0.01重量部未満では縮合触媒としての効果が小さく、1重量部を越えると経済的な面から好ましくない。
【0023】
本発明のホットメルト接着剤組成物は、水分の存在下にてエチレン−酢酸ビニル−ビニルシラン系共重合体を架橋することを特徴とし、用いる水分としては、水自体あるいは水を含有しているものであれば如何なる化合物をも用いることが可能である。架橋方法としては、例えば、30RH%〜100RH%の高湿度の環境下に1〜7日間放置することにより、エチレン−酢酸ビニル−ビニルシラン系共重合体を架橋することができる。
【0024】
本発明のホットメルト接着剤組成物には、粘度調整や作業性改善のために、エチレン−酢酸ビニル−ビニルシラン系共重合体、水素化粘着付与剤及びシラノール縮合触媒からなる混合物にさらにワックスを添加することが可能であり、用いるワックスとしては特に限定されず、一般にホットメルト接着剤組成物で使用されるものであれば如何なるものでもよく、具体例としては、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス等の石油ワックス;ポリエチレンワックス、フィッシャートロプシュワックス、ポリプロピレンワックス、アタクチックポリプロピレン等の合成ワックス;木ロウ、カルナバワックス、ミツロウ等の天然ワックス等が挙げられ、これらは単独または混合物として用いることができる。ワックスの配合量は、エチレン−酢酸ビニル−ビニルシラン系共重合体、水素化粘着付与剤及びシラノール縮合触媒からなる配合物100重量部に対して、1〜50重量部であり、接着性の面から10〜30重量部であることが好ましい。
【0025】
本発明のホットメルト接着剤組成物において、水分と接触させ架橋する前のエチレン−酢酸ビニル−ビニルシラン系共重合体、水素化粘着付与剤からなる混合物にシラノール縮合触媒、およびさらにワックスを添加した後の溶融粘度を架橋前の溶融粘度とし、JAI−7(1991年版)に準拠した180℃における該架橋前の溶融粘度は、塗工性の面から500〜50,000mPa・sであることが好ましく、作業性と接着剤の強度を考慮すると1,000〜30,000mPa・sであることが特に好ましい。
【0026】
また、エチレン−酢酸ビニル−ビニルシラン系共重合体、水素化粘着付与剤からなる混合物にシラノール縮合触媒、およびさらにワックスを添加した後に水分と接触させ架橋した後の溶融粘度を架橋後の溶融粘度とし、JAI−7(1991年版)に準拠した180℃における該架橋後の溶融粘度は、5,000mPa・s以上であることが好ましい。また、架橋前の溶融粘度の1.5倍以上であることが好ましい。
【0027】
本発明のホットメルト接着剤組成物のエチレン−酢酸ビニル−ビニルシラン系共重合体、水素化粘着付与剤からなる混合物にシラノール縮合触媒、およびさらにワックスを添加した後に水分と接触させ架橋した後のメルトマスフローレイト(MFR)を架橋後のMFRとし、JIS K−6924−1(1997年版)に準拠した190℃における該架橋後のMFRは、0.01g/10min以上であることが好ましい。
【0028】
本発明のホットメルト接着剤組成物は、エチレン−酢酸ビニル−ビニルシラン系共重合体、水素化粘着付与剤からなる混合物にシラノール縮合触媒、あるいはさらにワックスを添加した後、水分の存在下にてエチレン−酢酸ビニル−ビニルシラン系共重合体を架橋することによって得られる。エチレン−酢酸ビニル−ビニルシラン系共重合体、水素化粘着付与剤、シラノール縮合触媒、あるいはさらにワックスの混合方法としては、短軸または二軸押出機、オープンロールミル、バンバリーミキサー、ニーダー、ニーダールーダー、溶融混合槽等を用いて、機械的混合条件下で混合する方法;ホットメルトアプリケーターを用い、押出時に混合する方法等を用い、混合温度150〜200℃で行うことが可能である。例えば、溶液混合槽を用いる際には、180℃で1時間混練することが可能である。
【0029】
本発明のホットメルト接着剤組成物には必要に応じ、加熱安定性向上のためテトラキス(メチレン−3−(3,5ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)メタン等のフェノール系酸化防止剤;リン系、チオエーテル系等の酸化防止剤;相溶性を向上のためステアリン酸アミド等の滑剤;染料;耐候剤;ブロッキング防止剤;無機充填剤等を配合することができる。
【0030】
本発明のホットメルト接着剤組成物は製本、包装、木工用のホットメルト接着剤として使用される。
【発明の効果】
【0031】
以上のように、本発明に得られたホットメルト接着剤組成物は、耐熱性の改良およびリサイクル性に適した難細裂化が可能であるホットメルト接着剤組成物である。
【実施例】
【0032】
次に本発明を実施例及び比較例によって説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0033】
なお、以下の実施例及び比較例に用いた試験方法は、次の方法によって測定し、評価した。
【0034】
1.エチレン−酢酸ビニル−ビニルシラン系共重合体の合成
槽型反応器を用いて次の通り共重合を行った。エチレン、酢酸ビニル、ビニルトリメトキシシラン、n−ブタン、グリシジルメタクリレート、開始剤(化合物名:t−ブチルペルオキシピバレート)を表1に記載のとおり連続的に反応器内に供給して、全圧164MPa、温度165℃、回転数1,500rpmで撹拌し、エチレン−酢酸ビニル−ビニルトリメトキシシラン共重合体を得た。なお、ビニルトリメトキシシラン含有率は加熱キシレンで溶解しメタノールで再沈処理を実施後、蛍光X線装置((株)リガク製、3080E3)にてSiOを測定後、ビニルシラン含有率を算出した。酢酸ビニル含有率及びグリシジルメタクリレート含有率は核磁気共鳴測定装置(日本電子製、商品名JNM−GSX270型)を用い重クロロホルム中室温でH−NMRを測定し算出した。その結果を表1に示す。
【0035】
【表1】

2.耐熱接着性試験
接着力測定器(JTトーシ(株)製、ASM−15N)を用いて、JAI−7(1991年版)に準拠した耐熱接着性法(C法)を用い、エチレン−酢酸ビニル−ビニルシラン系共重合体、水素化粘着付与剤及びシラノール縮合触媒、およびさらにワックスの混合物からなる試験片を作製した。得られた試験片をタバイ製恒温恒湿槽(PLATINOUS LUCIFER PL−2G)の中(温度40℃、湿度80%の条件下)で1週間放置しエチレン−酢酸ビニル−ビニルシラン系共重合体を架橋し、ホットメルト接着剤組成物の試験片を作成した。更に温度23℃、湿度50%で24時間放置後、JAI−7(1991年版)に準拠した耐熱接着性試験を実施した。
【0036】
3.メルトマスフローレイト(MFR)の測定
JIS K6924−1(1997年版)に準拠して190℃にて測定した。
【0037】
4.溶融粘度の測定
JAI−7(1991年版)に準拠して180℃の条件にて測定した。
【0038】
5.軟化点の測定
耐熱接着性試験と同様にして得られたホットメルト接着剤組成物の試験片を、更に温度23℃、湿度50%で24時間放置後、JAI−7(1991年版)に準拠し軟化点を測定した。
【0039】
6.細裂試験
日本接着剤工業会認定の「難細裂化ホットメルトの試験方法」に基づき、下記の通り行った。
【0040】
(1)試験フィルムの作成(大きさ:3×3cm、厚さ:0.8mm)
エチレン−酢酸ビニル−ビニルシラン系共重合体、水素化粘着付与剤及びシラノール縮合触媒、およびさらにワックスからなる混合物をプレス機((株)神藤金属工業所製、NF−50単動油圧成形機)を用い130℃にてプレス成形を行い所定の大きさのフィルムを作成した後、温度40℃、湿度80%の条件下で2日間放置しエチレン−酢酸ビニル−ビニルシラン系共重合体を架橋し、ホットメルト接着剤組成物の試験用フィルムを作成した。
【0041】
(2)離解
温度30℃の水2L、苛性ソーダ溶液10ml(濃度50g/L)を入れたタッピーパルプ離解機((株)東洋精機製作所製、TAPPI−T20)に、新聞古紙AD(風乾量)50g、前記フィルムを3枚投入し、30分間、回転数3000rpmで離解処理を行った。その後、離解されたスラリーを洗浄水とともにバケツに受け、全量を約5Lとした。
【0042】
(3)フラットスクリーン処理1(10カットスクリーン)
フラットスクリーン((株)安田精機製作所製、DKFW233)を用い、スクリーンプレートを10カット(大きさ:30×25cm、厚み:0.25mm)とし、水流を10L/分に調整した。離解処理されたスラリーを10カットフラットスクリーンに投入し、5分間スクリーン処理を行った。アクセプト分を目開き100μm以下のワイヤーで回収し(リジェクト分は廃棄した)、アクセプト分をバケツに受け希釈水で全量を約5Lとした。
【0043】
(4)フラットスクリーン処理2(6カットスクリーン)
フラットスクリーン(安田精機製作所製、DKFW233)を用い、スクリーンプレートを6カット(大きさ:30×25cm、厚み:0.15mm)とし、水流を10L/分に調整した。10カットフラットスクリーン処理されたアクセプトスラリーを6カットフラットスクリーンに投入し、6分間スクリーン処理を行った。
【0044】
(5)残さ回収
リジェクト分をカミソリ等でかき取り、ガラスビーカーに回収した(アクセプト分は廃棄した)。ビーカーに回収した残さを水で適宜希釈しながら、残さがろ紙上に均一に分散するようにブフナー漏斗を用いて吸引ろ過を行った。
【0045】
(6)ホットメルト接着剤溶融・転写
105℃で30秒間乾燥を行った後、残渣を挟むようにしてPPC用紙(コピー用紙)を1枚重ね、120℃に設定したロータリードライヤーで2分間処理を行い、ろ紙の乾燥及びホットメルト接着剤を溶融させPPC用紙に転写させた。転写後直ちにろ紙を剥がした。
【0046】
(7)染色
PPC用紙の貼合面側に水性染料を刷毛で塗布した。
【0047】
(8)評価
A4サイズの面積当たりの染色がはじいた白い点の数を目視でカウントした。3度行い、カウント数の平均値が20個以下及び最大値が30個以下を○とし、前記条件を満たさないものを×とした。
【0048】
7.原材料
実施例及び比較例で用いた、エチレン−酢酸ビニル共重合体、粘着付与剤、ワックス、酸化防止剤及びシラノール縮合触媒を、それぞれ表2、表3、表4、表5及び表6に示す。
【0049】
【表2】

【0050】
【表3】

【0051】
【表4】

【0052】
【表5】

【0053】
【表6】

実施例1
エチレン−酢酸ビニル−ビニルシラン系共重合体(A−1)60重量部、粘着付与剤(B−1)40重量部、酸化防止剤(D−1)0.5重量部及びシラノール縮合触媒(E−1)0.1重量部を加えた後、180℃に設定したビーカー内で混練し混合物を得た。前記2.耐熱接着性試験及び6.細裂試験の項に記載のように、得られた混合物を用い耐熱接着性試験用試験片及び細裂試験用フィルムを作成した後、それぞれの条件下にてエチレン−酢酸ビニル−ビニルシラン系共重合体を架橋しホットメルト接着剤組成物を得、その性能を評価した。その結果を表7に示す。
【0054】
実施例2
エチレン−酢酸ビニル−ビニルシラン系共重合体を(A−1)から(A−2)に変更し、実施例1と同様にホットメルト接着剤組成物を得、評価した。その結果を表7に示す。
【0055】
実施例3
実施例1の粘着付与剤を(B−1)から(B−2)に変更し、実施例1と同様にホットメルト接着剤組成物を得、評価した。その結果を表7に示す。
実施例4
実施例1の粘着付与剤を(B−1)から(B−3)に変更し、実施例1と同様にホットメルト接着剤組成物を得、評価した。その結果を表7に示す。
【0056】
比較例1
エチレン−酢酸ビニル共重合体を(A−4)60重量部、粘着付与剤(B−1)40重量部及び酸化防止剤(D−1)0.5重量部加えた後、180℃に設定したビーカー内で混練し混合物を得、実施例1と同様にホットメルト接着剤組成物を得、その性能を評価した。その結果を表7に示す。ビニルシランを含有しないエチレン−酢酸ビニル共重合体を用いたこと、及びシラノール縮合触媒を用いなかったため、耐熱性は改良されなかった。
【0057】
比較例2
実施例1の粘着付与剤を(B−1)から(B−4)に変更し、実施例1と同様に、ホットメルト接着剤組成物を得、その性能を評価した。その結果を表7に示す。水素化していない粘着付与剤を用いたため、架橋前の溶融粘度が上昇し、作業性が悪化した。
【0058】
実施例5
エチレン−酢酸ビニル−ビニルシラン系共重合体(A−3)50重量部、粘着付与剤(B−1)30重量部、ワックス(C−1)10重量部、ワックス(C−2)10重量部、酸化防止剤(D−1)0.5重量部及びシラノール縮合触媒(E−1)0.1重量部を加えた後、180℃に設定したビーカー内で混練し混合物を得、実施例1と同様にホットメルト接着剤組成物を得、その性能を評価した。その結果を表7に示す。
【0059】
比較例3
エチレン−酢酸ビニル共重合体(A−5)50重量部、粘着付与剤(B−1)30重量部、ワックス(C−1)10重量部、ワックス(C−2)10重量部及び酸化防止剤(D−1)0.5重量部を加えた後、180℃に設定したビーカー内で混練し混合物を得、実施例1と同様にホットメルト接着剤組成物を得、その性能を評価した。その結果を表7に示す。ビニルシランを含有しないエチレン−酢酸ビニル共重合体を用いたこと、及びシラノール縮合触媒を用いなかったため、細裂試験では合格しなかった。
【0060】
【表7】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
JIS K6924−1(1997年版)に準拠した酢酸ビニル含有率が20〜50重量%、ビニルシラン含有率が0.01〜2重量%であるエチレン−酢酸ビニル−ビニルシラン系共重合体20〜90重量%及び水素化粘着付与剤10〜80重量%からなる混合物100重量部に対して、シラノール縮合触媒0.01〜1重量部添加した後、水分の存在下にてエチレン−酢酸ビニル−ビニルシラン系共重合体を架橋することを特徴とするホットメルト接着剤組成物。
【請求項2】
請求項1に記載のエチレン−酢酸ビニル−ビニルシラン系共重合体、水素化粘着付与剤及びシラノール縮合触媒からなる混合物100重量部に対して、さらにワックス1〜50重量部添加した後、水分の存在下にてエチレン−酢酸ビニル−ビニルシラン系共重合体を架橋することを特徴とする請求項1に記載のホットメルト接着剤組成物。
【請求項3】
エチレン−酢酸ビニル−ビニルシラン系共重合体がエチレン−酢酸ビニル−ビニルシラン−不飽和グリシジル化合物共重合体であることを特徴とする請求項1又は2に記載のホットメルト接着剤組成物。
【請求項4】
粘着付与剤の水素化率が90〜100%であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のホットメルト接着剤組成物。
【請求項5】
水分と接触させ架橋する前の、エチレン−酢酸ビニル−ビニルシラン系共重合体、水素化粘着付与剤からなる混合物にシラノール縮合触媒、およびさらにワックスを添加した後の、JAI−7(1991年版)に準拠した180℃における溶融粘度(架橋前の溶融粘度)が、500〜50,000mPa・sであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のホットメルト接着剤組成物。
【請求項6】
エチレン−酢酸ビニル−ビニルシラン系共重合体、水素化粘着付与剤からなる混合物にシラノール縮合触媒、およびさらにワックスを添加した後に水分と接触させ架橋した後の、JAI−7(1991年版)に準拠した180℃における溶融粘度(架橋後の溶融粘度)、及びJIS K6924−1(1997年版)に準拠した190℃におけるメルトマスフローレイト(MFR)(架橋後のMFR)が(a)〜(c)の式を満足することを特徴とする請求項1〜5にいずれかに記載のホットメルト接着剤組成物。
(a)架橋後の溶融粘度(mPa・s)≧5,000
(b)架橋後の溶融粘度(mPa・s)≧架橋前の溶融粘度(mPa・s)×1.5
(c)架橋後のMFR(g/10min)≧0.01
【請求項7】
製本用に使用することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のホットメルト接着剤組成物。

【公開番号】特開2006−8761(P2006−8761A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−184703(P2004−184703)
【出願日】平成16年6月23日(2004.6.23)
【出願人】(000003300)東ソー株式会社 (1,901)
【Fターム(参考)】