説明

ホットメルト接着剤

【課題】高速塗工及び低温でのスパイラル塗工に優れ、ポリエチレンや不織布との接着性にも優れるホットメルト接着剤、及びそのホットメルト接着剤によって得られる使い捨て製品を提供する。
【解決手段】(A)メタロセン触媒を用いてプロピレンを重合して得られた融点が100℃以下のプロピレンホモポリマーと、(B)エチレン系共重合体とを含むホットメルト接着剤は、高速塗工に優れ、低温でのスパイラル塗工に優れ、ポリエチレンフィルムや不織布との接着性にも優れる。(B)エチレン系共重合体がメタロセン触媒で重合して得られたエチレン/α-オレフィンコポリマーである場合、高速塗工適性及び低温でのスパイラル塗工適性を保ちつつ、ポリエチレンフィルムや不織布との接着性により優れる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はホットメルト接着剤に関し、さらに詳しくは紙おむつ、ナプキンに代表される使い捨て製品分野に使用されるホットメルト接着剤に関する。
【背景技術】
【0002】
おむつやナプキン等の使い捨て製品に用いられ、その基材、例えば、不織布、ティッシュ及びポリエチレンフィルム等に塗工されるホットメルト接着剤として、熱可塑性ブロック共重合体を主成分とする合成ゴム系ホットメルト接着剤が広く利用されている。
使い捨て製品を製造する際、ホットメルト接着剤をフィルムや不織布に塗工するが、使い捨て製品の生産効率を高めるため、高速塗工が用いられることがある。しかしながら、合成ゴム系ホットメルト接着剤は、高速で塗工されると飛散してしまうことがある。
【0003】
使い捨て製品の生産効率を高める手段の一つとして、エチレン−プロピレン共重合体に代表されるオレフィン系ホットメルト接着剤を高速塗工する方法がある。
特許文献1〜3には、オレフィンポリマーを主成分とするホットメルト接着剤が開示されている。オレフィン系ホットメルト接着剤は、一般的に、使い捨て製品よりも、紙加工用途に適することが知られている。
【0004】
特許文献1は、プロピレン重合体をホットメルト接着剤用原料として用いることを記載する(特許文献1請求項14等参照)が、特許文献1のホットメルト接着剤はポリエチレンフィルムに対する接着力が十分ではない。おむつ及びナプキン等は、パルプ及び吸収性ポリマー等で構成される吸収体をティッシュに包み、さらにその外側を不織布及びポリエチレンフィルム等で覆った構造を有するものが多い。よって、使い捨て製品向けのホットメルト接着剤には、ポリエチレンフィルムに対する接着強度が強いことが要求される。
【0005】
特許文献2は、ポリオレフィンベースの使い捨て製品用ホットメルト接着剤を開示する(特許文献2[0001]及び[0041]等参照)。特許文献2のホットメルト接着剤をポリエチレンフィルムにスパイラル塗工する際、複雑な塗工パターンに対応するために、塗工温度を高くし、粘度を低くする必要がある。特許文献2表1に示すように、ホットメルト接着剤の塗工温度は高温(350゜F〜365゜F)に設定されている。しかし、ホットメルト接着剤を上記温度でポリエチレンフィルムに塗工すると、フィルムが熱で溶けたり、塗工されたホットメルト接着剤が冷えて収縮し、フィルムにシワが生ずる。
【0006】
特許文献3は、プロピレンベースのホットメルト接着剤を開示するが(特許文献3特許請求の範囲等参照)。しかし、特許文献3のホットメルト接着剤も、特許文献2のホットメルト接着剤と同様、低温でスパイラル塗工が行い難く、更に、不織布同士の剥離強度も充分とは言えなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】再公表2003−87172号公報
【特許文献2】特表2003−533551号公報
【特許文献3】特表2003−518171号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、高速塗工及び低温でのスパイラル塗工に優れ、ポリエチレンや不織布との接着性にも優れるホットメルト接着剤、及びそのホットメルト接着剤によって得られる使い捨て製品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は、鋭意検討を重ねた結果、分子量分布が狭く、かつ、融点の低いプロピレンホモポリマーにエチレン系共重合体を配合すると、高速塗工に優れ、低温でのスパイラル塗工に優れ、ポリエチレンや不織布との接着性にも優れたホットメルト接着剤が得られることを見出し、そのようなホットメルト接着剤は使い捨て製品用途に好適であることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0010】
さらに、ホットメルト接着剤の配合成分であるエチレン系共重合体をエチレン/オクテン共重合体にすると、ホットメルト接着剤の塗工パターンが目立たなくなり、使い捨て製品の外観が良くなることを見出した。
【0011】
すなわち、本発明は、(A)メタロセン触媒を用いてプロピレンを重合して得られた融点100℃以下のプロピレンホモポリマーと、(B)エチレン系共重合体とを含むホットメルト接着剤を提供する。
【0012】
本発明は、一の態様において、(B)エチレン系共重合体がメタロセン触媒を用いて重合して得られたエチレン/α-オレフィンコポリマーであるホットメルト接着剤を提供する。
本発明の好ましい態様として、(B)エチレン/α−オレフィンコポリマーは、エチレン/プロピレンおよびエチレン/オクテンコポリマーから選ばれた少なくとも1種を含む、ホットメルト接着剤を提供する。
【0013】
本発明は、別の態様として、さらに、(C)粘着付与樹脂および(D)オイルを含むホットメルト接着剤を提供する。
本発明は、更なる態様として、(E)ワックスを含み、(E)ワックスがカルボン酸及び/又はカルボン酸無水物で変性されたワックスを有する、ホットメルト接着剤を提供する。
【0014】
本発明は、更なる好ましい態様として、150℃の溶融粘度が7000mPa.s以下であるホットメルト接着剤を提供する。
本発明は、第二の要旨として、上記ホットメルト接着剤によって得られる使い捨て製品を提供する。
【発明の効果】
【0015】
本発明のホットメルト接着剤は、(A)メタロセン触媒を用いてプロピレンを重合して得られた融点が100℃以下のプロピレンホモポリマーと、(B)エチレン系共重合体とを含むので、高速塗工や低温でのスパイラル塗工に優れ、ポリエチレンフィルムや不織布との接着性にも優れる。
【0016】
本発明のホットメルト接着剤は、(B)エチレン系共重合体がメタロセン触媒を用いて重合して得られたエチレン/α-オレフィンコポリマーである場合、高速塗工適性及び低温でのスパイラル塗工適性を保ちつつ、ポリエチレンフィルムや不織布との接着性により優れる。
【0017】
本発明のホットメルト接着剤は、(B)エチレン/α−オレフィンコポリマーがエチレン/プロピレンコポリマーおよびエチレン/オクテンコポリマーから選ばれた少なくとも1種を含む場合、低温でのスパイラル塗工適性がより向上し、エチレン/オクテンコポリマーを含む場合、ポリエチレンフィルムや不織布等の被着体へスパイラル塗工した際の塗工パターンが目立たなくなる。
【0018】
本発明のホットメルト接着剤は、さらに、(C)粘着付与樹脂および(D)オイルを含む場合、高速塗工や低温でのスパイラル塗工の適性を保ちつつ、ポリエチレンフィルムや不職布との接着性が更に優れたものになる。
本発明のホットメルト接着剤は、(E)ワックスを含み、(E)ワックスがカルボン酸及び/又はカルボン酸無水物で変性されたワックスを有する場合、高速塗工適性及び低温でのスパイラル塗工の適性を保ちつつ、ポリエチレンフィルムや不職布との接着性がよりいっそう優れる。
【0019】
本発明のホットメルト接着剤は、150℃の溶融粘度が7000mPa.s以下である場合、150℃程度の低温スパイラル塗工が可能となり、被着体であるフィルムが高温で溶融し難くなり、フィルムの接着部の温度が低下したときにもフィルムが収縮し難くなる。
本発明の使い捨て製品は、上記ホットメルト接着剤によって得られるので、高速塗工ラインで効率良く製造され、塗工ラインが150℃程度の低温なので安全性も高く、不織布やフィルムが剥離することがなく、塗工パターンも目立ち難く外観的にも優れる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明に係るホットメルト接着剤は、(A)メタロセン触媒を用いてプロピレンを重合して得られた融点100℃以下のプロピレンホモポリマーと、(B)エチレン系共重合体との、2成分を必須成分として含有する。
【0021】
本発明において、(A)プロピレンホモポリマーは、プロピレンの単独重合体であって、重合触媒としてメタロセン触媒を用いて製造されたものをいう。(A)プロピレンホモポリマーの融点は、100℃以下であり、60〜90℃であることがより好ましく、特に65〜85℃であることが最も好ましい。
【0022】
融点は、示差走査熱量測定(DSC)を用いて測定された値をいう。具体的には、SIIナノテクノロジー社製のDSC6220(商品名)を用い、アルミ容器に試料を10mg秤量し、昇温速度5℃/minで測定して、融解ピークの頂点の温度を融点という。
【0023】
メタロセン触媒を用いてプロピレンを重合すると、(i)結晶性を有し、(ii)非常に分子量分布の狭いプロピレンホモポリマーが合成される。
(i)は、完全なアイソタクティック性、シンジオタクティック性を任意に制御できることを意味する。従って、結晶性に偏りを生じさせることが無く、メチル基の並び方や割合等について均一な重合体が得られ、付着力低下の原因となる低結晶性部位が生じる可能性が低い。
【0024】
(ii)については、(A)プロピレンホモポリマーの分子量分布の程度を多分散度(Mw/Mn)で表すと、1.0〜3.0となる。多分散度1.0〜3.0のプロピレンホモポリマーは、接着力に優れたものとなる。分子量分布とは、合成高分子の分子量の分布を示す概念であり、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(多分散度:Mw/Mn)が尺度となる。本発明では、分子量分布の測定は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)でなされる。
【0025】
(A)プロピレンホモポリマーとして、(A1)重量平均分子量が60000以下のプロピレンホモポリマー、(A2)重量平均分子量が60000より大きいプロピレンホモポリマーを例示できる。
(A1)プロピレンホモポリマーの重量平均分子量は、30000〜60000であることが好ましく、特に重量平均分子量30000〜55000であることが好ましい。
【0026】
(A2)プロピレンホモポリマーは、重量平均分子量が60000より大きいが、特に重量平均分子量が60000より大きく、90000以下であることが好ましく、重量平均分子量60000より大きく、80000以下であることがより好ましい。
(A1)プロピレンホモポリマーの市販品として出光興産社製のエルモーデュX400S(商品名)を例示でき、(A2)プロピレンホモポリマーの市販品として出光興産社製のエルモーデュX600S(商品名)を例示できる。
【0027】
本発明では、(A)プロピレンホモポリマーが(A1)プロピレンホモポリマーを含んでいることが好ましいが、さらに、(A2)を含んでいてもよい。
また、(A)プロピレンホモポリマーが(A1)プロピレンホモポリマーを含まず、(A2)プロピレンホモポリマーのみを含んでもよい。
【0028】
本発明では、(A)プロピレンホモポリマーと(B)エチレン系共重合体の合計の重量100重量部に対し、(A)プロピレンホモポリマーは60〜95重量部であることが好ましく、特に70〜90重量部であることが好ましい。
(A)プロピレンホモポリマーが(A1)プロピレンホモポリマーおよび(A2)プロピレンホモポリマーの双方を含む場合、両ポリマーの重量比は1:3〜3:2((A1):(A2))であることが好ましい。
【0029】
重量平均分子量(Mw)はゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定した値を意味する。具体的には、下記の装置及び測定方法を用いて値を測定することができる。検出器として、ウォーターズ社製のRIを用いる。GPCカラムとして、東ソー社製のTSKGEL GMHHR−H(S)HTを用いる。試料を1,2,4−トリクロロベンゼンに溶解して、流速を1.0ml/min、測定温度を145℃にて流し、ポリプロピレンによる検量線を用いて分子量の換算を行い、重量平均分子量を求める。
尚、数平均分子量(Mn)も同方法で求められるので、分子量分布もGPCで算出されることになる。
【0030】
本発明のホットメルト接着剤は、(A1)プロピレンホモポリマーを含むことによって、ポリエチレンフィルムや不織布に対する接着力を維持しつつ、低温でのスパイラル塗工適性が向上する。
【0031】
本発明において、(B)エチレン系共重合体とは、エチレンと、エチレンと共重合し得る共重合性モノマーとの共重合体をいう。
【0032】
共重合性モノマーとしては、
エチレン、プロピレン、オクテン、ブテン等のα−オレフィン;
酢酸ビニル、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル、マレイン酸、マレイン酸エステル等のカルボン酸(エステル);
無水マレイン酸、無水フタル酸、無水コハク酸等のカルボン酸無水物;
等を例示できる。
【0033】
これら共重合性モノマーはエチレンと単独で共重合されてもよいし、2種以上の共重合性モノマーが共重合されてもよい。
【0034】
尚、本明細書では、(メタ)アクリル酸とは、メタクリル酸およびアクリル酸の双方を含む概念をいう。(メタ)アクリル酸エステルは、具体的に、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸イソオクチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸グリシジル等を例示できる。
【0035】
従って、本発明では、(B)エチレン系共重合体として、エチレン/α−オレフィンコポリマー、エチレン/カルボン酸共重合体、エチレン/カルボン酸エステル共重合体、エチレン/カルボン酸無水物共重合体を例示できる。
【0036】
本発明の(B)エチレン共重合体として、エチレン/α−オレフィンコポリマーが好ましい。エチレン/α−オレフィンコポリマーとして、特に、メタロセン触媒で重合して得られたエチレン/α−オレフィンコポリマーが好ましい。
本発明のホットメルト接着剤は、メタロセン触媒で重合して得られたエチレン/α−オレフィンコポリマーを含む場合、低温でのスパイラル塗工適性が向上し、ポリエチレンフィルムや不織布との接着性も更に優れる。
【0037】
メタロセン触媒で重合して得られたエチレン/α−オレフィンコポリマーとしては、エチレン/プロピレンコポリマー、エチレン/オクテンコポリマー、エチレン/ブテンコポリマー、エチレン/プロピレン/ブテンが挙げられるが、特にエチレン/プロピレンコポリマー、エチレン/オクテンが望ましい。
本発明のホットメルト接着剤は、エチレン/プロピレンコポリマー及びエチレン/オクテンから選択される少なくとも一種を含む場合、低温でのスパイラル塗工適性がより向上する。
【0038】
エチレン/プロピレンコポリマーは、230℃のメルトインデックスが200g/10min以下であることが好ましく、10〜50g/10minであることがより好ましく、20〜30g/10minであることが最も好ましい。メルトインデックスが上記範囲である場合、ホットメルト接着剤の剥離強度が向上する。
【0039】
本明細書において、メルトインデックスとは、樹脂の流動性を示す指数を意味し、ヒーターで加熱された円筒容器内で一定量の合成樹脂を、定められた温度(例えば、230℃)で加熱、定められた荷重(例えば2.16kg)で加圧し、容器底部に設けられた開口部(ノズル)から10分間あたりに押出された樹脂量で示す。単位:g/10minが使用される。ASTM D1238で規定されている測定方法で測定する。
【0040】
エチレン/オクテンコポリマーを含むホットメルト接着剤は、ポリエチレンフィルムや不織布等の被着体へスパイラル塗工されても塗工パターンが目立たないので、使い捨て製品の外観を向上させることができる。
【0041】
本発明の好ましい態様として、(B)エチレン系共重合体がメタロセン触媒で重合して得られたエチレン/プロピレンコポリマーの場合、(A)プロピレンホモポリマーは(A1)プロピレンホモポリマーおよび(A2)プロピレンホモポリマーの双方を含むことが好ましい。(A)成分および(B)成分が上述の組み合わせである場合、ホットメルト接着剤の剥離強度が著しく向上する。
【0042】
本発明の別の好ましい態様として、(B)エチレン系共重合体がメタロセン触媒で重合して得られたエチレン/オクテンコポリマーの場合、(A)プロピレンホモポリマーは(A1)プロピレンホモポリマーのみを含むことが好ましい。(A)成分および(B)成分が上述の組み合わせである場合、ホットメルト接着剤の塗工パターンが殆ど目立たなくなり、使い捨て製品の外観が著しく向上する。
【0043】
エチレン/オクテンコポリマーは、ランダムコポリマーであるより、ブロックコポリマーであることが好ましい。エチレン/オクテンコポリマーがブロックコポリマーである場合、剥離強度に優れたホットメルト接着剤が得られる。
【0044】
本発明の使い捨て製品用ホットメルト接着剤は、更に(C)粘着付与樹脂を含むことが好ましい。(C)粘着付与樹脂は、(A)プロプレンホモポリマーおよび(B)ワックスの合計の重量100重量部に対し、20〜180重量配合されることが好ましく、特に40〜150重量配合されることがより好ましく、60〜150重量部配合されることが特に好ましい。
(C)粘着付与樹脂が上記割合で配合されることによって、ホットメルト接着剤は、150℃以下の低温でのスパイラル塗工が可能となり、さらには、ポリエチレンフィルムや不織布へも均一に塗工でき、使い捨て製品の製造により適した接着剤となる。
【0045】
(C)粘着付与樹脂としては、例えば、天然ロジン、変性ロジン、水添ロジン、天然ロジンのグリセロールエステル、変性ロジンのグリセロールエステル、天然ロジンのペンタエリスリトールエステル、変性ロジンのペンタエリスリトールエステル、水添ロジンのペンタエリスリトールエステル、天然テルペンのコポリマー、天然テルペンの3次元ポリマー、水添テルペンのコポリマーの水素化誘導体、ポリテルペン樹脂、フェノール系変性テルペン樹脂の水素化誘導体、脂肪族石油炭化水素樹脂、脂肪族石油炭化水素樹脂の水素化誘導体、芳香族石油炭化水素樹脂、芳香族石油炭化水素樹脂の水素化誘導体、環状脂肪族石油炭化水素樹脂、環状脂肪族石油炭化水素樹脂の水素化誘導体を例示することができる。これらの粘着付与樹脂は、単独で、又は組み合わせて使用することができる。粘着付与樹脂は、色調が無色〜淡黄色であって、臭気が実質的に無く熱安定性が良好なものであれば、液状タイプの粘着付与樹脂も使用できる。これらの特性を総合的に考慮すると、粘着付与樹脂として、樹脂等の水素化誘導体が好ましく、特に水素添加ジシクロペンタジエン系樹脂が望ましい。
【0046】
(C)粘着付与樹脂として、市販品を用いることができる。そのような市販品として例えば、荒川化学社製のアルコンP100(商品名)、アルコンM100(商品名)、ヤスハラケミカル社製のクリアロンM105(商品名)、エクソン社製のECR5400(商品名)、ECR179EX(商品名)、日本ゼオン社製のQuinton DX390(商品名)を例示することができる。これらの市販の粘着付与樹脂は、単独で又は組み合わせて使用することができる。
【0047】
更に本発明のホットメルト接着剤は、(D)オイルを含むことができる。(D)オイルは、可塑剤として、ホットメルト接着剤の溶融粘度低下、柔軟性の付与、被着体への濡れ向上を目的として配合される。(D)オイルが配合されることによって、低温でのスパイラル塗工が可能となり、
(D)オイルとして、例えばパラフィン系オイル、ナフテン系オイル及び芳香族系オイルを例示することができる。
【0048】
(D)オイルとして、市販品を用いることができる。例えば、出光興産社製のダイアナフレシアS32(商品名)、ダイアナプロセスオイルPW−90(商品名)、プロセスオイルNS−100(商品名)、SK LUBRICANTS社製のファゾール35(商品名)、ペトロチャイナ社製 KN4010(商品名)、Kukdong Oil&Chem社製のWhite Oil Broom350(商品名)、DNオイルKP−68(商品名)、BPケミカルズ社製のEnerperM1930(商品名)、Crompton社製のKaydol(商品名)、エッソ社製のPrimol352(商品名)を例示することができる。これらの(D)オイルは、単独で又は組み合わせて使用することができる。
【0049】
本発明のホットメルト接着剤は、(E)ワックスを含んでいることが好ましい。尚、本明細書で「ワックス」とは、常温で固体、加熱すると液体となる重量平均分子量が10000未満の有機物であり、一般的に「ワックス」とされているものをいい、ワックス状の性質を有するものであれば、本発明に係るホットメルト接着剤を得ることができる限り、特に制限されるものではない。
【0050】
(E)ワックスは、(E1)カルボン酸又はカルボン酸無水物で変性されたオレフィンワックスを含むことが好ましい。
本発明において、「(E1)カルボン酸又はカルボン酸無水物で変性されたオレフィンワックス」とは、カルボン酸又はカルボン酸無水物で、化学的又は物理的に加工されたオレフィンワックスをいい、本発明が目的とするホットメルト接着剤を得ることができる限り、特に限定されるものではない。化学的、物理的加工として、例えば、酸化、重合、配合、合成等を例示できる。
【0051】
そのような(E1)ワックスとして、例えば、カルボン酸又はカルボン酸無水物がオレフィンワックスにグラフト重合することで得られるワックス;及びオレフィンワックスを重合により合成する際に、カルボン酸又はカルボン酸無水物を共重合することで得られるワックスを例示することができる。
従って、種々の反応を用いて、カルボン酸又はカルボン酸無水物が「オレフィンワックス」に導入されて、結果的に変性されたオレフィンワックスであって良い。
【0052】
オレフィンワックスを変性するための「カルボン酸」及び/又は「カルボン酸無水物」は、本発明のホットメルト接着剤を得ることができるものであれば、特に限定されるものではない。
カルボン酸又はカルボン酸無水物として、具体的には、例えば、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、無水フマル酸、イタコン酸、アクリル酸及びメタクリル酸等を例示できる。これらのカルボン酸及び/又はカルボン酸無水物は単独で又は組み合わせて使用してよい。マレイン酸、無水マレイン酸が好ましく、無水マレイン酸が特に好ましい。
【0053】
カルボン酸又はカルボン酸無水物で変性される「オレフィンワックス」とは、二種以上のオレフィンが共重合して得られるワックスをいい、本発明が目的とする(E1)ワックスを得ることができる限り、特に限定されるものではない。従って、一種のオレフィンが単独重合したワックスは、オレフィンワックスに含まれない。
【0054】
オレフィンワックスとして、具体的には、例えば、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、ポリエチレン/ポリプロピレンワックス、ポリエチレン/ポリブチレンワックス、ポリエチレン/ポリブテンワックス等を例示することができる。
従って、本発明における(E1)ワックスとして、無水マレイン酸で変性されたポリオレフィンワックスが特に好ましい。
【0055】
「(E)ワックス」は、(E1)ワックス以外に、ベースワックスを含むことができ、そのようなベースワックスとして、具体的には、例えば、
フィッシャートロプシュワックス、ポリオレフィンワックス(例えば、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、ポリエチレン/ポリプロピレンワックス)等の合成ワックス;
パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックスなどの石油ワックス;
カスターワックスなどの天然ワックス
等を例示することができる。
【0056】
上述のベースワックスは、変性されていてもよい。変性する物質として、極性基を導入できれば、各種カルボン酸誘導体であってもよい。そのような「カルボン酸誘導体」として、下記のものを例示することができる:
酢酸エチル、酢酸ビニル等のカルボン酸エステル;
臭化ベンゾイル等の酸ハロゲン化物;
ベンズアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド;
スクシンイミド等のイミド;
アジ化アセチル等のアジ化アシル;
プロパノイルヒドラジド等のヒドラジド;
クロロアセチルヒドロキサム酸等のヒドロキサム酸;
γ-ブチロラクトン等のラクトン;
δ-カプロラクタム等のラクタム。
尚、変性されたベースワックスは、(E1)カルボン酸又はカルボン酸無水物で変性されたオレフィンワックスを含まない。
【0057】
本発明では、(E)ワックスは、(E1)に加えて、ベースワックスとして記載した(E2)フィッシャートロプシュワックスを含むことが好ましい。「(E2)フィッシャートロプシュワックス」とは、フィッシャートロプシュ法によって合成され、一般的にフィッシャートロプシュワックスとされているものをいう。フィッシャートロプシュワックスは、成分分子が比較的幅広い炭素数分布を持つワックスから成分分子が狭い炭素数分布を持つようにワックスを分取したものである。代表的なフィッシャートロプシュワックスとして、サゾールH1(商品名)及びサゾールC80(商品名)を例示することができ、いずれもサゾールワックス社から市販されている。
【0058】
本発明において、(E1)ワックスの融点は100〜130℃であることが好ましく、ベースワックス、好ましくは(E2)ワックスの融点は60〜90℃であることが好ましい。融点の測定方法は、(A)成分の融点を測定方法と同一である。
(E)ワックスの酸価は、5〜200mgKOH/gであることが好ましく、20〜160mgKOH/gであることがより好ましい。酸価は、ASTM D1308又はBWM 3.01Aに準拠する方法で測定することができる。
【0059】
本発明に係るホットメルト接着剤は、必要に応じて、更に各種添加剤を含んでもよい。そのような各種添加剤として、例えば、安定化剤及び微粒子充填剤を例示することができる。
「安定化剤」とは、ホットメルト接着剤の熱による分子量低下、ゲル化、着色、臭気の発生等を防止して、ホットメルト接着剤の安定性を向上するために配合されるものであり、本発明が目的とするホットメルト接着剤を得ることができるものであれば、特に制限されるものではない。「安定化剤」として、例えば酸化防止剤及び紫外線吸収剤を例示することができる。
【0060】
「紫外線吸収剤」は、ホットメルト接着剤の耐光性を改善するために使用される。「酸化防止剤」は、ホットメルト接着剤の酸化劣化を防止するために使用される。酸化防止剤及び紫外線吸収剤は、一般的に使い捨て製品に使用されるものであって、後述する目的とする使い捨て製品を得ることができるものであれば使用することができ、特に制限されるものではない。
【0061】
酸化防止剤として、例えばフェノール系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤、リン系酸化防止剤を例示できる。紫外線吸収剤として、例えばベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤を例示できる。更に、ラクトン系安定剤を添加することもできる。これらは単独又は組み合わせて使用することができる。
【0062】
安定化剤として、市販品を使用することができる。例えば、住友化学工業(株)製のスミライザーGM(商品名)、スミライザーTPD(商品名)及びスミライザーTPS(商品名)、チバスペシャリティーケミカルズ社製のイルガノックス1010(商品名)、イルガノックスHP2225FF(商品名)、イルガフォス168(商品名)及びイルガノックス1520(商品名)、城北化学社製のJF77(商品名)を例示することができる。これら安定化剤は、単独で又は組み合わせて使用することができる。
【0063】
本発明の使い捨て製品用ホットメルト接着剤は、更に、微粒子充填剤を含むことができる。微粒子充填剤は、一般に使用されているものであれば良く、本発明が目的とするホットメルト接着剤を得ることができる限り、特に限定されることはない。「微粒子充填剤」として、例えば雲母、炭酸カルシウム、カオリン、タルク、酸化チタン、ケイソウ土、尿素系樹脂、スチレンビーズ、焼成クレー、澱粉等を例示できる。これらの形状は、好ましくは球状であり、その寸法(球状の場合は直径)については特に限定されるものではない。
【0064】
本発明の使い捨て製品用ホットメルト接着剤は、(A)成分及び(B)成分、場合によっては、(C)成分〜(E)成分を配合し、必要に応じて種々の添加剤を配合し、加熱して溶融し混合することで製造することができる。具体的には、上記成分を攪拌機付きの溶融混合釜に投入し、加熱混合することで製造することができる。
【0065】
本発明に係る使い捨て製品用ホットメルト接着剤は、150℃の溶融粘度が7000mPa・s以下であることが好ましく、1000〜6000mPa.sであることがより好ましく、2000〜6000mPa・sであることが特に好ましい。「溶融粘度」とは、ホットメルト接着剤の溶融体の粘度であり、ブルックフィールドRVT型粘度計(スピンドルNo.27)で測定される。
【0066】
溶融粘度が上記範囲に制御されることで、ホットメルト接着剤は、低温塗工により適し、更に不織布にも均一に塗工され、浸透し易くなるので、使い捨て製品用により適する。
このように、本発明に係るホットメルト接着剤は、紙加工、製本、使い捨て製品等にも利用可能であるが、不織布やポリエチレンフィルムに対する接着性が優れているので、使い捨て製品に好適に利用される。
【0067】
使い捨て製品は、織布、不織布、ゴム、樹脂、紙類、ポリオレフィンフィルムからなる群から選択される少なくとも一種の部材に本発明に係るホットメルト接着剤を塗布することで構成することができる。尚、ポリオレフィンフィルムは、耐久性及びコスト等の理由からポリエチレンフィルムが好ましい。
【0068】
使い捨て製品とは、いわゆる衛生材料であれば、特に限定されるものではない。具体的には紙おむつ、生理用ナプキン、ペットシート、病院用ガウン、手術用白衣等を例示できる。
使い捨て製品の製造ラインでは、一般に使い捨て製品の各種部材(例えば、ティッシュ、コットン、不織布、ポリオレフィンフィルム等)にホットメルト接着剤を塗布する。塗布の際、ホットメルト接着剤を、種々の噴出機から噴出して使用してよい。
【0069】
ホットメルト接着剤を塗布する方法は、目的とする使い捨て製品を得ることができる限り、特に制限されるものではない。そのような塗布方法は、接触塗布、非接触塗布に大別される。「接触塗布」とは、ホットメルト接着剤を塗布する際、噴出機を部材やフィルムに接触させる塗布方法をいい、「非接触塗布」とは、ホットメルト接着剤を塗布する際、噴出機を部材やフィルムに接触させない塗布方法をいう。接触塗布方法として、例えば、スロットコーター塗工及びロールコーター塗工等を例示でき、非接触塗布方法として、例えば、螺旋状に塗布できるスパイラル塗工、波状に塗布できるオメガ塗工やコントロールシーム塗工、面状に塗布できるスロットスプレー塗工やカーテンスプレー塗工、点状に塗工できるドット塗工などを例示できる。
【0070】
本発明のホットメルト接着剤は、スパイラル塗工に適する。スパイラル塗工とは、間欠的に又は連続的に接着剤を塗工する方法であって、エアーを送って、らせん状の接着剤を形成して、接着剤を部材(又は基材)に、非接触塗布する方法をいう。
【0071】
ホットメルト接着剤を、スプレー塗工にて広い幅で塗工できることは、使い捨て製品を製造するために極めて有利である。広い幅で塗工できるホットメルト接着剤は、ホットエアーの圧力を調整することにより、塗工幅を狭く調節することが可能である。
【0072】
ホットメルト接着剤が広い幅で塗工困難であると、充分な接着面積を得るために数多くのスプレーノズルが必要になり、尿取りライナーのような比較的小さな使い捨て製品、複雑な形状の使い捨て製品を製造するために、不利である。
従って、本発明のホットメルト接着剤は、広い幅でスパイラル塗工が可能であるため、使い捨て製品用に好適である。
【0073】
本発明のホットメルト接着剤は、150℃以下の塗工適性が良好なので、使い捨て製品を製造するために有用である。ホットメルト接着剤を高温で塗工すると、使い捨て製品の基材であるポリエチレンフィルムが溶融したり、熱収縮したりするので、使い捨て製品の外観が大きく損なわれる。150℃以下でホットメルト接着剤を塗工すると、使い捨て製品の基材であるポリエチレンフィルムや不織布の外観が殆ど変化せず、製品の外観が損なわれない。
【0074】
本発明のホットメルト接着剤は、高速塗工適性に優れるので、短時間で使い捨て製品を製造するために好適である。高速で搬送される基材にホットメルト接着剤を塗工する場合、接触式の塗工方法では、摩擦による基材の破断が発生することがある。本発明のホットメルト接着剤は、非接触塗工の一種であるスパイラル塗工に適するので、高速塗工に適し、使い捨て製品の生産効率を向上させることが可能である。更に、高速塗工に適する本発明のホットメルト接着剤は、塗工パターンの乱れも最小となる。
【0075】
本発明のホットメルト接着剤は、熱安定性が良好であり、100〜200℃の高温タンク内で均一に溶融され、相分離することがない。熱安定性に乏しいホットメルト接着剤は、高温タンク内で容易に成分が相分離する。このような相分離の発生は、タンクフィルター及び輸送配管等の詰まりの原因となり得る。
【0076】
本発明の主な態様を以下に示す。
1.(A)メタロセン触媒を用いてプロピレンを重合して得られた融点が100℃以下のプロピレンホモポリマーと、(B)エチレン系共重合体とを含むホットメルト接着剤。
2.(B)エチレン系共重合体は、メタロセン触媒を用いて重合して得られたエチレン/α-オレフィンコポリマーである上記1に記載のホットメルト接着剤。
3.(B)エチレン/α−オレフィンコポリマーは、エチレン/プロピレンコポリマーおよびエチレン/オクテンコポリマーから選ばれた少なくとも1種を含む上記2に記載のホットメルト接着剤。
4.更に、(C)粘着付与樹脂および(D)オイルを含む上記1〜3のいずれかに記載のホットメルト接着剤。
5.更に、(E)ワックスを含み、(E)ワックスは、カルボン酸及び/又はカルボン酸無水物で変性されたワックスを有する上記1〜4のいずれかに記載のホットメルト接着剤。
6.150℃の溶融粘度が7000mPa・s以下である上記1〜5のいずれかに記載のホットメルト接着剤。
7.上記1〜6のいずれかに記載のホットメルト接着剤によって得られる使い捨て製品。
【実施例】
【0077】
以下、本発明を更に詳細に、より具体的に説明することを目的として、実施例を用いて本発明を説明する。これらの実施例は、本発明を説明するためのものであり、本発明を何ら制限するものではない。
ホットメルト接着剤を配合するための成分を、以下に示す。
【0078】
(A)メタロセン触媒で重合して得られた融点100℃以下のプロピレンホモポリマー
(A1)出光興産社製 商品名「エルモーデュ X400S」
融点75℃ 重量平均分子量 45000
(A2)出光興産社製 商品名「エルモーデュ X600S」
融点80℃ 重量平均分子量 70000
(A’3)クラリアント社製 商品名「リコセン PP6102」
メタロセン触媒で重合して得られたプロピレンホモポリマー
融点145℃
(A’4)イーストマンケミカル社製 商品名 「イーストフレックス P1010」
チーグラーナッタ触媒で重合して得られたプロピレンホモポリマー
融点145℃
(A’5)クラリアント社製 商品名「リコセン PE4201GR」
メタロセン触媒で重合して得られたポリエチレンホモポリマー
融点128℃
【0079】
(B)エチレン系共重合体
(B1)エクソンモービル社製 商品名 「ビスタマックス 2330」
メタロセン触媒で重合して得られたプロピレン/エチレン共重合体
メルトインデックス200(g/10min:230℃)
(B2)エクソンモービル社製 商品名 「ビスタマックス 6202」
メタロセン触媒で重合して得られたプロピレン/エチレン共重合体
メルトインデックス20(g/10min:230℃)
(B3)ダウ社製 商品名 「バーシファイ 4301」
メタロセン触媒で重合して得られたプロピレン/エチレン共重合体
メルトインデックス25(g/10min:230℃)
プロピレン/エチレンのランダム共重合構造
(B4)ダウ社製 商品名 「インヒューズ 9807」
メタロセン触媒で重合して得られたエチレン/オクテン共重合体
メルトインデックス15(g/10min:190℃)
エチレン/オクテンでブロック構造を有する
(B5)ダウ社製 商品名 「エンゲージ 8137」
メタロセン触媒で重合して得られたエチレン/オクテン共重合体
メルトインデックス13(g/10min:190℃)
エチレン/オクテンのランダム共重合体構造
(B6)ダウ社製 商品名 「アフィニティー GA1950」
メタロセン触媒で重合して得られたエチレン/オクテン共重合体
メルトインデックス500(g/10min:190℃)
エチレン/オクテンのランダム共重合体構造
(B7)ハンツマン社製 商品名 「レキセンタック 2780A」
チーグラーナッタ触媒で重合して得られたプロピレン/エチレン共重合体
(B8)エボニック社製 商品名 「ベストプラスト 703」
チーグラーナッタ触媒で重合して得られたプロピレン/エチレン/ブテン共重合体
(B9)東ソー社製 商品名「ウルトラセン 722」
チーグラーナッタ触媒で重合して得られたエチレン/酢酸ビニル共重合体
(B’10)ハンツマン社製 商品名 「レキセンタック2780A」
チーグラーナッタ触媒で重合して得られたプロピレン/ブテン共重合体
(B’11)三菱レーヨン社製 商品名 「BR−106」
アクリル系共重合体
【0080】
(C)粘着付与樹脂
(C1)水素添加ジシクロペンタジエン系樹脂
エクソンモービル社製 商品名「ECR179EX」
(C2)水素添加ジシクロペンタジエン系樹脂
エクソンモービル社製 商品名「ECR5400」
(C3)水素添加環状脂肪族石油炭化水素樹脂
荒川化学社製 商品名 「アルコン M100」
(C4)水素添加環状脂肪族石油炭化水素樹脂
荒川化学社製 商品名 「アルコン P100」
(C5)未水素添加脂肪族芳香族共重合体系樹脂
日本ゼオン社製 商品名 「クイントン DX390N」
(C6)水素添加テルペン系樹脂
ヤスハラケミカル社製 商品名 「クリアロン M105」
【0081】
(D)オイル
(D1)パラフィンオイル 出光興産社製 商品名 「DNオイル KP−68」
(D2)パラフィンオイル SK LUBRICANTS社製 商品名 「ファゾール 35」
(D3)パラフィンオイル 出光興産社製 商品名 「ダイアナプロセスオイル PW−90」
(D4)パラフィンオイル 出光興産社製 商品名 「ダイアナフレシア S32」
(D5)ナフテンオイル 出光興産社製 商品名「プロセスオイル NS−100」
(D6)ナフテンオイル ペトロチャイナ社製 商品名 「KN4010」
【0082】
(E)カルボン酸及び/又はカルボン酸無水物で変性されたワックス
(E1)マレイン酸変性ワックス クラリアント社製 商品名 「リコセン MA6252TP」
(E2)フィッシャートロプスワックス サゾール社製 商品名 「サゾールワックス H-1」
【0083】
(F)酸化防止剤
(F1)アデカ社製 商品名 「アデカスタブ AO−60」
ヒンダードフェノール系酸化防止剤
【0084】
(A)〜(F)成分を表1〜3に示す割合で配合し、約150℃で2時間かけて万能攪拌機を用いて溶融混合し、実施例1〜19および比較例1〜9のホットメルト接着剤を調製した。表1〜3に示されるホットメルト接着剤の組成(配合)に関する数値は、全て重量部である。
ホットメルト接着剤の各々(実施例および比較例)について、ホットメルト接着剤の熱安定性、塗工適性、高速塗工適性、剥離強度を評価した。以下、各評価の概要について説明する。
【0085】
<熱安定性>
熱安定性については、ホットメルト接着剤が相分離するか否かで評価した。
各ホットメルト接着剤をガラス瓶に入れ、150℃の温度で6時間静置して、相分離の有無を目視で確認した。各ホットメルト接着剤の重量は350〜400gで、450ml容のガラス瓶を使用した。ホットメルト接着剤を入れたガラス瓶はアルミ製の蓋をして、乾燥機中にて静置した。
所定時間後に取り出し、速やかに目視で相分離の有無を確認した。
○・・・相分離が認められなかった。
×・・・相分離が認められた。
【0086】
<溶融粘度測定(150℃)>
JAI7−1991、B法に基づき、各ホットメルト接着剤の150℃の粘度を測定した。測定にはブルックフィールド粘度計を使用して、27番のローターを用いた。
【0087】
<塗工適性>
ノードソン社のスパイラルスプレーを用いて塗工基材に、ホットメルト接着剤を塗工し、この塗工基材と貼り合わせ基材との積層体を作製して、塗工適性を評価するとともに、後述する剥離強度を評価するためのサンプルを作製した。塗工基材および貼り合わせ基材は、共にポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムである。
より具体的に記載すると、ホットメルトタンク及びスパイラルスプレーノズルの温度は150℃、ホットエアーの温度は180℃、ホットエアーの圧力は0.32kgf/cm、ホットメルト接着剤の吐出量は15g/分(塗工目付け5g/mに相当)、ノズルから塗工基材への距離は35mm、基材の搬送速度は200m/分、オープンタイム0.21秒、塗工後のプレス圧は2.0kgf/cmの条件にて、ホットメルト接着剤を塗工基材に塗工し、積層体(PETフィルム/PETフィルム)を製造した後、塗工適性を評価した。塗工適性は、スパイラル塗工されたホットメルト接着剤の塗工幅を確認することで評価した。以下に評価基準を示す。
◎・・・塗工幅が15mm以上
○・・・塗工幅が12mm以上で、15mm未満
×・・・塗工幅が12mm未満
【0088】
<高速塗工適性>
上述の塗工適性の試験条件で高速塗工適性を評価した。
ホットエアーの圧力を0.45kgf/cmにした以外は、塗工適性の評価方法と同様の方法を用いて試験を行った。高速塗工適性は目視で評価した。評価基準は以下のとおりである。
◎:ホットメルト接着剤の飛散が認められない。
○:僅かにホットメルト接着剤の飛散が認められた。
×:ホットメルト接着剤が飛散してパターンが得られない。又は、ホットメルト接着剤の塗工幅が15mm未満であった。
【0089】
<剥離強度>
上述の高速塗工適性に記載した試験条件を用いて、剥離強度のサンプルを作成した。
塗工基材として汎用の不職布(SMS 15g/m 表面処理なし)を用い、貼り合わせ基材として、(1)汎用の不職布(SMS 15g/m 表面処理なし)、(2)汎用のポリエチレンフィルム(エンボス加工なし 30g/m コロナ処理なし)の2種類を用いた。
サンプルを23℃、65%R.H.の環境で24時間以上養生した後に、同環境下で剥離試験を行った。剥離試験は島津製作所社製オートグラフAGS−Jで、下記条件で実施した。
剥離方向:基材進行と同じ方向(MD)方向、チャック間距離:20mm、剥離速度:300mm/分
剥離長さ:50mm、解析方法:試験力平均
剥離強度は各ホットメルト接着剤(実施例および比較例)について、少なくとも3個の試料を作成し、測定して、得られる平均値で剥離強度を示した。剥離強度は、以下の基準で評価した
【0090】
(1)貼り合せ基材が不職布(不織布/不織布)
◎ :剥離強度が2.0N以上
○ :剥離強度が0.5N以上、2.0N未満
× :剥離強度が0.5N未満
(2)貼り合せ基材がポリエチレンフィルム(ポリエチレンフィルム/不織布)
◎ :剥離強度が0.20N以上
○ :剥離強度が0.10N以上、0.20N未満
× :剥離強度が0.10N未満
【0091】
<外観>
ホットメルト接着剤を通気性のポリエチレンフィルムに塗工した場合、内部に塗工したホットメルト接着剤の塗工パターンが、フィルムの表面から透けて見える場合がある。塗工パターンが目立つホットメルト接着剤は通気性フィルムを用いる使い捨て製品の意匠性から好ましくなく、塗工パターンが目立たないホットメルト接着剤が望まれる。
塗工パターンが目立つか評価するために、下記の方法で評価を行った。
【0092】
厚さ50μmのPETフィルムに、各ホットメルト接着剤を塗工し、厚さ50μmの接着層を形成し、これを25×10mmに成形して試験体とした。試験体を市販の通気ナプキン(エリエールペーパーテック社製 エリス 新・素肌感 20.5cm羽なし)に貼り合せ、貼り合せ部分に1kgの重りを載せ、50℃の乾燥機に入れて3日間静置した。所定時間後に重りを除去して、外観の変化を確認した。評価基準は以下のとおりである。
◎・・・塗工されたホットメルト接着剤が目立たないもの
○・・・塗工されたホットメルト接着剤が僅かに透けて見えるもの
×・・・塗工されたホットメルト接着剤が透けて見えるもの
【0093】
【表1】

【0094】
【表2】

【0095】
表1に示すように、実施例1〜11のホットメルト接着剤は、熱安定性、塗工適性、高速塗工適性に優れており、さらに、不織布に対する強度にも優れるので、オムツ、ナプキン等の不織布を用いる使い捨て製品用途に好適である。
これに対し、比較例1〜9のホットメルト接着剤は、表2に示すように、上記性能のいずれかが劣る。
【0096】
【表3】

【0097】
表3に示されるように、実施例12〜19のホットメルト接着剤は、上記性能が良いだけでなく、塗工された後のパターンが目立たない。通気性フィルムを用いる使い捨て製品の意匠性を考慮すると、実施例12〜19のホットメルト接着剤は、使い捨て製品用として、非常に優れている。
【産業上の利用可能性】
【0098】
本発明は、ホットメルト接着剤を提供する。本発明に係るホットメルト接着剤は、使い捨て製品用途として好適である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)メタロセン触媒を用いてプロピレンを重合して得られた融点が100℃以下のプロピレンホモポリマーと、
(B)エチレン系共重合体と、
を含むホットメルト接着剤。
【請求項2】
(B)エチレン系共重合体は、メタロセン触媒を用いて重合して得られたエチレン/α-オレフィンコポリマーである、請求項1に記載のホットメルト接着剤。
【請求項3】
(B)エチレン/α−オレフィンコポリマーは、エチレン/プロピレンコポリマーおよびエチレン/オクテンコポリマーから選ばれた少なくとも1種を含む、請求項2に記載のホットメルト接着剤。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載のホットメルト接着剤を用いて得られる使い捨て製品。

【公開番号】特開2013−64055(P2013−64055A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−203063(P2011−203063)
【出願日】平成23年9月16日(2011.9.16)
【出願人】(391047558)ヘンケルジャパン株式会社 (43)
【Fターム(参考)】