説明

ホットメルト

本発明は、イソシアネート官能性ポリウレタン構成単位を含んでなる反応性製剤、その製造方法、および高い初期強度と高い機械的強度とを有する接着剤としてのまたは接着剤におけるその使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イソシアネート官能性ポリウレタン構成単位を含有する反応性製剤に関する。とりわけホットメルトとして使用され得る、該製剤は、初期強度の促進された発現と高い機械的強度とを示す。
【背景技術】
【0002】
反応性ポリウレタン製剤は、被覆組成物、フォーム、シーラントとしての、特にホットメルトとしても知られている溶融接着剤としてのポリウレタン用途における急成長製品群である。
【0003】
該製剤の合成に、過剰のポリイソシアネート、好ましくはジイソシアネートと組み合わせた直鎖ポリエステルおよび/またはポリエーテルポリオールを使用することが好ましい。
【0004】
この種の製品の利点は、とりわけ、溶媒の不存在、比較的低い粘度を有する高温で該製品を適用できる能力、それにもかかわらず高い初期強度値が得られる能力、および比較的短い時間の後に、水分との更なる反応の故に、適用温度を遥かに超えた極めて高い耐熱性と優れた耐溶剤性とを有する接合部が得られる能力にある。
【0005】
反応性ポリウレタンホットメルトの特性の良好な範囲に関して重要なことは、接合部を接合後直ちに扱うことを可能にする、冷えるにつれて極めて迅速に凝集強さ(初期強度)を発現できる能力である。例えば、短いサイクル時間で迅速な更なる加工を可能にするため、または剥離現象を起こすことなく基材のレジリエンスを吸収することを可能にするため、多くの用途で、特に迅速な強度の発現が求められている。
【0006】
全てのホットメルトと同様に、数秒または数分以内に実質的な化学的過程は起こり得ないので、物理的現象のみが初期強度の発現に関与している。この物理的現象は、温度の低下に伴って起こる粘度の急激な継続的上昇を含み、結晶性成分を使用する場合は、再結晶化効果が強度を急激に上昇させる。
【0007】
反応性PUホットメルトの実際の硬化、即ち成分同士の架橋反応は、数時間から数日かけて、イソシアネート基と大気水分または結合基材との反応によって起こり、ポリウレアが生成される。その後、PUホットメルトは、ある程度までしか溶融または溶剤中溶解できなくなる。従って、硬化接着剤は、良好な耐熱性と化学薬品(例えば、可塑剤、溶剤、油または燃料)に対する良好な耐性とを有する。
【0008】
迅速に初期強度を発現させるため、反応性PUホットメルトにポリオールを使用する。ホットメルトにおけるポリオールの濃度は十分に高く、ポリオールの一次転移点または二次転移点(TmまたはTg)は比較的高い温度である。一次転移または二次転移が、製造されたホットメルト内で起こり、例えば完成した系における結晶化ポリオールの混和性の故に、抑制されないことを確実にすることが重要である。
【0009】
例えばDE−A 3 827 224に記載されているように、結晶性ポリエステルに基づくホットメルトは、極めて短い開放時間と初期強度の関連した迅速な発現とを特徴とする。これは、ドデカン二酸に基づくエステルの使用によって達成されている。ドデカン二酸は、極めて迅速な再結晶化速度と高い融点とを有することが知られている。
【0010】
核剤の添加によって、高分子量の部分的結晶性熱可塑性ポリマー(例えばポリオレフィンまたはポリエステル)の転移温度および再結晶化エンタルピーを上昇させ得ることが、WO 2005/066256から知られている。射出成形における剥離性、従ってサイクル時間を、例えばこのようにして改善することができる。
【0011】
高分子量の溶媒含有熱可塑性ポリウレタンエラストマーの初期強度への核剤の影響は、"Initial Bond Strength of Polyurethane Contact Adhesives" (Adv. Urethane Sci. Tec., 1992, 11, 192-216) に記載されている。
【0012】
しかしながら、結晶性または部分的結晶性および/または非晶質ポリオール成分含有低分子量NCO末端プレポリマーの再結晶化挙動への、ナノウレアの影響については、まだ知られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】DE−A 3 827 224
【特許文献2】WO 2005/066256
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】"Initial Bond Strength of Polyurethane Contact Adhesives" (Adv. Urethane Sci. Tec., 1992, 11, 192-216)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明の目的は、より迅速に初期強度が発現するように、反応性ポリウレタンホットメルト製剤を変性することである。これは、反応性ポリウレタンホットメルト製剤中の結晶性および/または部分的結晶性ポリオール成分が高い再結晶化温度を有することによって達成される。
【課題を解決するための手段】
【0016】
意外なことに、ナノウレアでの変性によって、結晶性または部分的結晶性ポリエステルポリオール或いはそれらの結晶性、部分的結晶性、非晶質、液体ポリオールまたは他成分との混合物に基づくホットメルト系が、ナノウレアで変性されていない製剤と比べて、特に迅速な初期強度の発現を特徴とすることが見出された。
【0017】
このことは、ナノウレアを添加した場合と添加しなかった場合とで純ポリエステルの再結晶化温度にほとんど差がなく、ナノウレア含量が上昇するにつれて再結晶化エンタルピーは低下するので、特に意外である(表2)。
【0018】
本発明は、
A)好ましくは(成分Aに対して)5〜60重量%の遊離NCO基含量を有する、少なくとも1種の芳香族、脂肪族、芳香脂肪族および/または脂環式イソシアネートと、
B)ポリオール、または少なくとも1種のポリエステルポリオールを含有するポリオール混合物
との反応生成物、並びに
成分Bの総量に対して0.001〜50重量%の割合のナノウレア
を含有する組成物を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0019】
該組成物の製造は、例えば以下のように実施する:ポリオールBとイソシアネートAを一緒に混合し、OHに対するNCOのモル比が1を超える、好ましくは1.2〜4.0、特に好ましくは1.3〜3.0になるようにBに対するAの比を選択し、均質な混合物を充填するかまたは一定のNCO値が得られるまで撹拌した後に充填する。好ましい反応温度として、60〜150℃、好適には80〜130℃を選択する。製剤の製造は、一連の撹拌槽反応器または適当な混合装置(例えば、回転子−固定子原理に基づく高速ミキサー、または静的ミキサー)で、連続して実施することもできる。
【0020】
ポリオールまたはポリオール混合物Bまたはその一部を少量のAで変性すること、その反応の完了時にウレタン基含有ポリオールと過剰のAとを反応させてイソシアネート基含有組成物を生成させることも可能である。
【0021】
5重量%までの例えば脂肪族および/または芳香族ジイソシアネート(例えばHDI)三量体の存在下で、ポリオールBとイソシアネートAとの反応を実施すること、または予備重合の完了時にそのような三量体を添加することも可能である。
【0022】
本発明はまた、本発明の組成物を含有する製剤、並びに本発明の組成物の、例えば、シーラント、被覆組成物、フォームとしての使用またはそれらへの使用、および接着剤、特に溶融接着剤、例えば部品を一時的に固定するための二次接着剤としての使用、一般に紙用接着剤としての使用、特に製本用接着剤としての使用、或いはブロックボトムバルブバッグ、複合フィルムまたはラミネートを製造するための接着剤としての使用、或いは縁取単板としての使用またはそれらの製造における使用も提供する。
【0023】
本発明の製剤は、水分で活性化される触媒、他の無機または有機充填剤、核剤、添加剤、助剤、界面活性剤、染料、樹脂、反応性および非反応性ポリマー、安定剤、光安定剤、酸化防止剤、殺生物剤、顔料および/またはエキステンダー油との反応によって、常套法で変性され得る。
【0024】
イソシアネート成分Aとして適当なイソシアネートは、例えば、脂肪族的、脂環式的、芳香脂肪族的および/または芳香族的に結合したイソシアネート基を含有する(イソシアネートに対して)5〜60重量%のイソシアネート含量を有するもの、例として、1,4−ジイソシアナトブタン、1,6−ジイソシアナトヘキサン(HDI)、2−メチル−1,5−ジイソシアナトペンタン、1,5−ジイソシアナト−2,2−ジメチルペンタン、2,2,4−トリメチル−1,6−ジイソシアナトヘキサンおよび2,4,4−トリメチル−1,6−ジイソシアナトヘキサン、1,10−ジイソシアナトデカン、1,3−ジイソシアナトシクロヘキサンおよび1,4−ジイソシアナトシクロヘキサン、1,3−ビス−(イソシアナトメチル)シクロヘキサンおよび1,4−ビス−(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1−イソシアナト−3,3,5−トリメチル−5−イソシアナトメチルシクロヘキサン(イソホロンジイソシアネート、IPDI)、4,4’−ジイソシアナトジシクロヘキシルメタン、1−イソシアナト−1−メチル−4(3)−イソシアナトメチルシクロヘキサン、ビス−(イソシアナトメチル)−ノルボルナン、1,3−ビス−(2−イソシアナト−プロプ−2−イル)ベンゼンおよび1,4−ビス−(2−イソシアナト−プロプ−2−イル)ベンゼン(TMXDI)、2,4−ジイソシアナトトルエンおよび/または2,6−ジイソシアナトトルエン(TDI)、2,2’−ジイソシアナトジフェニルメタン、2,4’−ジイソシアナトジフェニルメタンおよび/または4,4’−ジイソシアナトジフェニルメタン(MDI)、1,5−ジイソシアナトナフタレン、1,3−ビス−(イソシアナトメチル)ベンゼンおよび1,4−ビス−(イソシアナトメチル)ベンゼン、またはそれらの混合物である。もちろん、ポリイソシアネートを使用することもでき、その例は、前記ジイソシアネートに基づく、イソシアヌレート、ウレタン、アロファネート、ビウレット、イミノオキサジアジントリオン、オキサジアジントリオンおよび/またはウレトジオン基を含有する高分子量化合物である。
【0025】
イソシアネート成分Aとして好ましいジイソシアネートは、1,6−ジイソシアナトヘキサン(HDI)、1−イソシアナト−3,3,5−トリメチル−5−イソシアナトメチルシクロヘキサン(イソホロンジイソシアネート、IPDI)、4,4’−ジイソシアナトジシクロヘキシルメタン、2,4−ジイソシアナトトルエンおよび/または2,6−ジイソシアナトトルエン(TDI)、2,2’−ジイソシアナトジフェニルメタン、2,4’−ジイソシアナトジフェニルメタンおよび/または4,4’−ジイソシアナトジフェニルメタン(MDI)である。
【0026】
イソシアネート成分Aとして特に好ましいジイソシアネートは、2,4’−ジイソシアナトジフェニルメタンまたは4,4’−ジイソシアナトジフェニルメタン(MDI)および/またはそれらの混合物である。
【0027】
本発明では、ポリオールまたはポリオール混合物Bは、2個以上のOH基、好ましくは2個の末端OH基を含有するポリオールであると理解される。そのようなポリオールは当業者に知られている。ポリエステルポリオールが好ましい。ポリエステルポリオールは、例えば、脂肪族ヒドロキシカルボン酸から、或いは脂肪族および/または芳香族ジカルボン酸と1種以上のジオールとから、既知の方法によって製造され得る。対応する誘導体を使用することもでき、その例は、ラクトン、低級アルコールとのエステル、または無水物である。適当な出発物質の例は、コハク酸、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、グルタル酸、無水グルタル酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、無水フタル酸、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ε−カプロラクトンである。
【0028】
ポリエステルポリオールは、室温で液体であるか(ガラス転移温度Tg<20℃)または固体である。室温で固体であるポリエステルポリオールは、非晶質(ガラス転移温度Tg>20℃)であるかまたは結晶化している。
【0029】
適当な結晶化ポリエステルは、例えば、分子内に少なくとも2個の炭素原子、好ましくは少なくとも6個の炭素原子、特に好ましくは6〜14個の炭素原子を含有する直鎖脂肪族ジカルボン酸(例として、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸およびドデカン二酸、好ましくはアジピン酸およびドデカン二酸)と、分子中に少なくとも2個の炭素原子、好ましくは少なくとも4個の炭素原子、特に好ましくは4〜6個の炭素原子を含有する、好適には偶数の炭素原子を含有する直鎖ジオール(例として、1,4−ブタンジオールおよび1,6−ヘキサンジオール)とに基づくものである。例えば1,6−ヘキサンジオールのような二官能性スターター分子に基づくポリカプロラクトン誘導体も同様に、特に適しているものとして挙げることができる。
【0030】
適当な非晶質ポリエステルポリオールは、例えば、アジピン酸、イソフタル酸、テレフタル酸、エチレングリコール、ネオペンチルグリコールおよび3−ヒドロキシ−2,2−ジメチルプロピル−3−ヒドロキシ−2,2−ジメチルプロパノエートに基づくものである。
【0031】
室温で液体である適当なポリエステルポリオールは、例えば、アジピン酸、エチレングリコール、1,6−ヘキサンジオールおよびネオペンチルグリコールに基づくものである。
【0032】
ポリウレタン化学で通常使用されるポリエーテルが、ポリエーテルポリオールとして適しており、その例は、二価〜六価のスターター分子(例えば、水、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコールまたは1,3−プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、グリセロール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、または1〜4個のNH結合を含有するアミン)を用いて製造された、テトラヒドロフラン、スチレンオキシド、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシドまたはエピクロロヒドリンの、好ましくはエチレンオキシドおよび/またはプロピレンオキシドの付加化合物または混合付加化合物である。二官能性プロピレンオキシドおよび/またはエチレンオキシド付加生成物並びにポリテトラヒドロフランを好ましく挙げることができる。そのようなポリエーテルポリオールおよびその製造方法は、当業者に知られている。
【0033】
ナノウレアは、分散され架橋されたナノスケールのポリウレア粒子である。ナノウレア水性分散体の製造方法は、WO−A 2005/063873に記載されている。同文献では、触媒の存在下で親水性イソシアネートを水に導入しており、その結果、ウレア結合を介して分散粒子内で架橋が生じる。
【0034】
ナノウレアを含有するポリオールまたはポリオール混合物Bの製造方法は、DE−A 100 200 700 4769に記載されている。それは、架橋ナノウレア粒子と、少なくとも1個、好ましくは2個のイソシアネート基反応性基を含有する少なくとも1種の分散媒体とを含んでなり、分散体に対する含水量は0〜5重量%である。
【0035】
記載されている分散媒体の例は、ポリエステルポリオール、ポリアクリレートポリオール、ポリウレタンポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリアクリレートポリオール、ポリウレタンポリアクリレートポリオール、ポリウレタンポリエステルポリオール、ポリウレタンポリエーテルポリオール、ポリウレタンポリカーボネートポリオールまたはポリエステルポリカーボネートポリオールである。
【0036】
ナノウレア水性分散体と混合できる分散媒体であって、該分散媒体とナノウレア水性分散体との混合物から水を除去できる分散媒体として好ましい物質は、例えば、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリエーテルポリオールおよび短鎖ポリオールである。
【0037】
適当な短鎖ポリオールの例は、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブチレングリコール、シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ヒドロキノンジヒドロキシエチルエーテル、ビスフェノールA(2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン)、水素化ビスフェノールA(2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン)、トリメチロールプロパン、グリセロール、ペンタエリスリトールまたはヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールエステルである。好ましい短鎖ポリオールは、1,4−ブタンジオールまたは1,3−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオールまたはトリメチロールプロパンである。
【0038】
適当な単官能性アルコールの例は、エタノール、n−ブタノール、n−プロパノール、エチレングリコールモノブチルエーテル(2−ブトキシエタノール)、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル、2−エチルヘキサノール、1−オクタノール、1−ドデカノール、1−ヘキサデカノール、ジアセトンアルコール、ベンジルアルコール、アミルアルコール、シクロヘキサノール、フルフリルアルコール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾールおよびフェノールである。好ましい単官能性アルコールは、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジアセトンアルコール、アミルアルコールまたはシクロヘキサノールである。
【0039】
ポリエステルポリオール、例えば、それ自体知られている、ジオールおよび任意にトリオールおよび任意にテトラオールと、ジカルボン酸および任意にトリカルボン酸および任意にテトラカルボン酸またはヒドロキシカルボン酸またはラクトンとの重縮合物が、分散媒体として特に好ましい。遊離ポリカルボン酸に代えて、対応するポリカルボン酸無水物または対応する低級アルコールとのポリカルボン酸エステルを使用してポリエステルを調製することもできる。
【0040】
適当なジオールの例は、エチレングリコール、ブチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリアルキレングリコール、例えばポリエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、ブタンジオール(1,3)、ブタンジオール(1,4)、ヘキサンジオール(1,6)および各種異性体、ネオペンチルグリコールまたはヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールエステルであり、ヘキサンジオール(1、6)および異性体、ネオペンチルグリコールおよびヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールエステルが好ましい。加えて、ポリオール、例えば、トリメチロールプロパン、グリセロール、エリスリトール、ペンタエリスリトール、トリメチロールベンゼンまたはトリス−ヒドロキシエチルイソシアヌレートを使用することもできる。フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、グルタル酸、テトラクロロフタル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、マロン酸、スベリン酸、2−メチルコハク酸、3,3−ジエチルグルタル酸および/または2,2−ジメチルコハク酸をジカルボン酸として使用できる。対応する無水物を酸の供給源として使用することもできる。エステル化されるポリオールの平均官能価が3以上であるならば、モノカルボン酸、例えば、安息香酸およびヘキサンカルボン酸を付加的に使用できる。好ましい酸は、前記した種の脂肪族または芳香族酸である。アジピン酸、イソフタル酸および場合によりトリメリット酸が特に好ましい。末端ヒドロキシル基含有ポリエステルポリオールの調製で反応体として付加的に使用され得るヒドロキシカルボン酸は、例えば、ヒドロキシカプロン酸、ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシデカン酸、ヒドロキシステアリン酸などである。適当なラクトンは、カプロラクトン、ブチロラクトンおよび同族体である。カプロラクトンが好ましい。
【0041】
特に好ましいポリエステルポリオールは、酸成分としてのアジピン酸、フタル酸、イソフタル酸およびテトラヒドロフタル酸と、アルコール成分としてのエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール;1,4−ブタンジオールまたは1,3−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオールおよび/またはトリメチロールプロパンとに基づくものである。
【0042】
分散媒体として同様に好ましいものは、400〜8000g/mol、好ましくは600〜3000g/molの数平均分子量Mを有する、ヒドロキシル基含有ポリカーボネート、好ましくはポリカーボネートジオールである。それらは、炭酸誘導体(例えば、ジフェニルカーボネート、ジメチルカーボネートまたはホスゲン)とポリオール(好ましくはジオール)との反応によって得られる。そのようなジオールの例は、エチレングリコール、1,2−プロパンジオールおよび1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオールおよび1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−ビスヒドロキシメチルシクロヘキサン、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2,2,4−トリメチルペンタンジオール−1,3−ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ジブチレングリコール、ポリブチレングリコール、ビスフェノールA、テトラブロモビスフェノールA、および前記した種のラクトン変性ジオールである。ジオール成分は、好ましくは40〜100重量%のヘキサンジオールを含有し、1,6−ヘキサンジオールおよび/またはヘキサンジオール誘導体が好ましい。そのようなヘキサンジオール誘導体は、ヘキサンジオールに基づき、末端OH基に加えてエステル基またはエーテル基を含有する。そのような誘導体は、ヘキサンジオールと過剰のカプロラクトンとの反応によって、またはジヘキシレングリコールまたはトリヘキシレングリコールを生成するヘキサンジオール同士のエーテル化によって得られる。純ポリカーボネートジオールに代えて又は加えて、ポリエーテル−ポリカーボネートジオールを使用することもできる。ヒドロキシル基含有ポリカーボネートは、好ましくは直鎖構造であるが、多官能性成分(特に低分子量ポリオール)の配合によって容易に得ることもできる。この目的に適した例は、グリセロール、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオール−1,2,6、ブタントリオール−1,2,4、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ペンタエリスリトール、キニトール、マンニトール、ソルビトール、メチルグリコシド、または1,3,4,6−ジアンヒドロヘキサイトである。好ましいポリカーボネートは、ジフェニルカーボネートまたはジメチルカーボネートおよび1,6−ヘキサンジオール、1,4−ブタンジオールおよびメチル−1,3−プロパンジオールから合成される。
【0043】
分散媒体として、好ましくは、ポリエーテルポリオールを使用することもできる。適当な例は、カチオン開環によるテトラヒドロフランの重合によって得られるような、ポリウレタン化学でそれ自体知られているポリテトラメチレングリコールポリエーテルである。同様に適当なポリエーテルポリオールは、二官能性または多官能性スターター分子への、スチレンオキシド、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシドおよび/またはエピクロロヒドリンのそれ自体知られている付加生成物である。従来技術から知られている化合物の全てを適当なスターター分子として使用することができ、その例は、水、ブチルジグリコール、グリセロール、ジエチレングリコール、トリメチロールプロパン、プロピレングリコール、ソルビトール、エチレンジアミン、トリエタノールアミン、1,4−ブタンジオールである。エチレンオキシド、プロピレンオキシドおよびブチレンオキシドから合成されたポリエーテルポリオールを使用することが特に好ましい。
【0044】
ナノウレア粒子を含有するポリオールまたはポリオール混合物Bは、好ましくは、平均して少なくとも2個のイソシアネート基反応性基を含有するポリオールまたはポリオール混合物と、ナノウレア水性分散体とを混合し、次いで第二工程で水を除去するか、または混合工程と並行して水を除去することによって調製される。この目的で使用されるナノウレア水性分散体は、WO 2005/063873に記載されている。
【0045】
ナノウレア水性分散体および分散媒体を、任意の順序で一緒に混合することができる。一方の成分をもう一方の成分に、連続的に、少しずつ、または一度に全て添加することができる。好ましい変法では、まず、分散媒体およびナノウレア水性分散体を一緒に完全に混合し、次いで、混合物から水を除去する。
【0046】
基本的に、大気圧下、減圧下または加圧下で水を除去できる。特に好ましい変法では、減圧下および/または高温で操作する蒸留によって水を除去する。
【0047】
水を分離する別の方法も可能であり、その例は、膜法を用いた脱水、または親水性乾燥剤(例えばシリカゲルまたはゼオライト)の使用である。幾つかの脱水法を並行してまたは順次組み合わせることも可能である。添加剤を用いた水の分離も可能であり、その例は、蒸留による水の除去を容易にするための共留剤の混合である。
【0048】
好適な方法では、ナノウレア水性分散体を、好ましくは、スターラーで混合することにより非水性分散媒体と一緒に混合する。例えば、強制循環、静的ミキサー、振盪機、容器の回転、バレルミキサー、ジェットディスペンサー、回転子および固定子による、または超音波影響下での、他の混合法も可能である。0℃〜150℃、好ましくは10℃〜120℃、特に好ましくは20℃〜100℃の温度で混合を実施する。分散媒体が液体状である温度で実施する。
【0049】
蒸留によって水を除去するならば、20℃〜200℃、好ましくは25℃〜150℃、特に好ましくは40℃〜100℃の温度を選択する。減圧下で水を除去するならば、圧力は一般に1〜900mbar、好ましくは2〜500mbar、特に好ましくは5〜100mbarに設定する。温度および/または圧力プロファイルを使用することもできる。脱水工程の適当な継続時間は、例えば10分〜24時間、好ましくは30分〜16時間である。水の除去中、例えば撹拌および/または強制循環によって、混合物の混合を継続することが好ましい。
【0050】
本発明の方法の特に好ましい変法では、液体のまたは溶融された分散媒体を撹拌器に導入し、激しく撹拌しながらナノウレア水性分散体を滴加する。好適な添加時間は、1分〜10時間、好ましくは10分〜5時間であり、次いで、更に1時間〜10時間撹拌を継続する。その後、蒸留によって分散体から水を除去し、減圧下で分散体を乾燥させる。
【0051】
ナノウレア分散体の製造において、共溶媒、消泡剤、界面活性洗剤、他の助剤および添加剤を使用することもできる。揮発性共溶媒を使用するならば、それらをナノウレア分散体から、例えば水を除去するのと同時に、再び除去することができる。
【0052】
親水化ポリイソシアネートを水に導入すると、イソシアネート−水反応により、存在する遊離イソシアネート基が第一級アミンに分解され、それによって、ナノウレア水性分散体を得ることができる。次いで、該アミノ基が更なるイソシアネート基と反応してウレア基が生じ、結果として架橋してナノウレア粒子が水性分散体として形成される。基本的に、水との反応前または反応中に親水化ポリイソシアネートのNCO基を他のイソシアネート反応性化合物(例えば第一級または第二級のアミンおよび/またはアルコール)と反応させることも可能である。
【0053】
非イオン的または潜在イオン的に親水化された当業者に既知のNCO基含有化合物の全てを、親水化ポリイソシアネートとして使用することができる。前記した種の様々なポリイソシアネートの混合物を使用するならば、少なくとも1種のポリイソシアネートが非イオン的親水化構成単位を含有することが可能である。非イオン的親水化基含有ポリイソシアネートのみを使用することが特に好ましい。
【0054】
イオン的または潜在イオン的親水化化合物は、少なくとも1個のイソシアネート反応性基と少なくとも1個の官能基(例えば、−COOY、−SOY、−PO(OY)(Yは例えばH、NH、金属カチオン)、−NR、−NR(RはH、アルキル、アリール))とを含有する化合物の全てであると理解される。該化合物は、水性媒体との相互作用時にpH依存解離平衡に達し、このようにして、中性になるか或いは負または正に帯電し得る。好ましいイソシアネート反応性基はヒドロキシル基またはアミノ基である。
【0055】
そのようなポリイソシアネートは、ポリイソシアネートを、少なくとも1個のイソシアネート反応性基を含有する非イオン的および/またはイオン的或いは非イオン的或いは潜在イオン的親水化化合物と反応させる、当業者に既知の方法によって得られる。
【0056】
適当なイオン的または潜在イオン的親水化化合物は、例えば、モノヒドロキシカルボン酸およびジヒドロキシカルボン酸、モノアミノカルボン酸およびジアミノカルボン酸、モノヒドロキシスルホン酸およびジヒドロキシスルホン酸、モノアミノスルホン酸およびジアミノスルホン酸、並びにモノヒドロキシホスホン酸およびジヒドロキシホスホン酸、またはモノアミノホスホン酸およびジアミノホスホン酸、およびそれらの塩、例えば、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロール酪酸、ヒドロキシピバリン酸、N−(2−アミノエチル)−β−アラニン、2−(2−アミノエチルアミノ)エタンスルホン酸、エチレンジアミンプロピルスルホン酸またはエチレンジアミンブチルスルホン酸、1,2−プロピレンジアミン−β−エチルスルホン酸または1,3−プロピレンジアミン−β−エチルスルホン酸、リンゴ酸、クエン酸、グリコール酸、乳酸、グリシン、アラニン、タウリン、リジン、3,5−ジアミノ安息香酸、IPDIとアクリル酸の付加生成物(EP−A 0 916 647、実施例1)、並びにそれらのアルカリ塩および/またはアンモニウム塩;ブテン−2−ジオール−1,4への重亜硫酸ナトリウムの付加生成物、ポリエーテルスルホネート、2−ブテンジオールおよびNaHSOのプロポキシル化付加生成物(例えばDE−A 2 446 440(5〜9頁、式I〜III)に記載)、および親水性構成成分としてカチオン基に転化できる構成単位(例えばアミン系構成単位)を含有する化合物(例えばN−メチルジエタノールアミン)である。例えばWO 2001/88006に記載されているようなシクロヘキシルアミノプロパンスルホン酸(CAPS)を、親水化化合物または構成単位として使用することもできる。
【0057】
好ましいイオン性または潜在イオン性化合物は、カルボキシまたはカルボキシレートおよび/またはスルホネート基および/またはアンモニウム基を含有する化合物である。特に好ましいイオン性化合物は、イオン性または潜在イオン性基として、カルボキシル基および/またはスルホネート基を含有する化合物であり、その例は、N−(2−アミノエチル)−β−アラニンの塩、2−(2−アミノエチルアミノ)エタンスルホン酸、またはIPDIとアクリル酸の付加生成物(EP−A 0 916 647、実施例1)、およびジメチロールプロピオン酸である。
【0058】
適当な非イオン的親水化化合物は、例えば、少なくとも1個のヒドロキシ基またはアミノ基を含有するポリオキシアルキレンエーテルである。該ポリエーテルは、好ましくは、アルキレンオキシド単位の総含量に対して30重量%〜100重量%の割合のエチレンオキシド単位を含有する。
【0059】
好ましい非イオン的親水化化合物は、式(I):
H−Y’−X−Y−R (I)
[式中、Rは、1〜12個の炭素原子を含有する一価炭化水素基、好ましくは1〜4個の炭素原子を含有する不飽和アルキル基を表し、
Xは、アルキレンオキシド単位の総含量に対して少なくとも40重量%、好ましくは少なくとも65重量%、特に好ましくは55〜89重量%のエチレンオキシド単位からなり、エチレンオキシド単位に加えてプロピレンオキシド単位、ブチレンオキシド単位またはスチレンオキシド単位を含有することもできる(プロピレンオキシド単位が好ましい)、5〜90個、好ましくは20〜70個の環を含有するポリアルキレンオキシド鎖を表し、
Y’、Yは、酸素または−NR’−を表す(R’は、RまたはHである)。]
で示される化合物である。
【0060】
非イオン的親水化化合物は、好ましくは前記した種に対応し、少なくとも400g/mol、好ましくは少なくとも500g/mol、特に好ましくは1200〜4500g/molの数平均分子量を有する。
【0061】
一分子あたり2個以上のNCO基を含有し、0.5〜50重量%、好ましくは3〜30重量%、特に好ましくは5〜25重量%のイソシアネート含量を有する、当業者にそれ自体既知の脂肪族、脂環式、芳香脂肪族および芳香族ポリイソシアネートまたはそれらの混合物を使用して、本発明に重要な親水化ポリイソシアネートを調製することができる。
【0062】
適当なポリイソシアネートの例は、ブチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、シクロヘキサン−1,3−ジイソシアネートおよびシクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、1−イソシアナト−3,3,5−トリメチル−5−イソシアナトメチルシクロヘキサン(イソホロンジイソシアネート、IPDI)、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、イソシアナトメチル−1,8−オクタンジイソシアネート、メチレンビス−(4−イソシアナトシクロヘキサン)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)またはトリイソシアナトノナン(TIN、4−イソシアナトメチル−1,8−オクタンジイソシアネート)およびそれらの混合物である。基本的に、芳香族ポリイソシアネート、例えば、1,4−フェニレンジイソシアネート、2,4−トルイレンジイソシアネートおよび/または2,6−トルイレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタン−2,4’−ジイソシアネートおよび/またはジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート(MDI)、トリフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネートまたはナフチレン−1,5−ジイソシアネートが適している。
【0063】
前記ポリイソシアネートに加えて、ウレトジオン、イソシアヌレート、ウレタン、アロファネート、ビウレット、イミノオキサジアジンジオンおよび/またはオキサジアジントリオン構造を含有する高分子量二次生成物を使用することもできる。そのような二次生成物は、従来技術に記載されている変性反応によって、それ自体知られている方法で単量体ジイソシアネートから得られる。
【0064】
もっぱら脂肪族的または脂環式的に結合したイソシアネート基を含有する親水化ポリイソシアネートまたはそれらの混合物が好ましい。
【0065】
親水化ポリイソシアネートは、特に好ましくは、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、異性体ビス−(4,4’−イソシアナトシクロヘキシル)メタンおよび前記ジイソシアネートの混合物に基づく。混合物の場合は、50重量部のヘキサメチレンジイソシアネート系ポリイソシアネートを含む混合物が好ましい。
【0066】
親水化ポリイソシアネートの水への導入、および続く、ナノウレア分散体を形成するための水との反応は、好ましくは、スターラーまたは他の混合法、例えば、強制循環、静的ミキサー、バレルミキサー、ジェットディスペンサー、回転子および固定子を用いて或いは超音波影響下で、混合しながら実施される。
【0067】
基本的に、イソシアネート反応性化合物(例えば第一級または第二級のアミンまたは(ポリ)アルコール)でのNCO基の変性は、分散中または分散後に実施することもできる。その例は、エチレンジアミン、1,3−プロピレンジアミン、1,6−ヘキサメチレンジアミン、イソホロンジアミン、4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタン、ヒドラジン、1,4−ブタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,6−ヘキサンジオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、グリセロール、N−メチルエタノールおよびN−メチルイソプロパノールアミン、1−アミノプロパノールまたはジエタノールアミンである。
【0068】
親水化ポリイソシアネートのNCO基と水との分子比は、好ましくは1:100〜1:5、特に好ましくは1:30〜1:10である。
【0069】
基本的に、親水化ポリイソシアネートを水に一回で導入することが可能である。例えば30分〜20時間にわたる、親水化ポリイソシアネートの連続添加も同様に可能である。
【0070】
少しずつ添加することが好ましい。添加回数は2〜50回、好ましくは3〜20回、特に好ましくは4〜10回であり、一回分の量は同じであるかまたは異なっていてもよい。
【0071】
個々の添加の間の待ち時間は、典型的には5分〜12時間、好ましくは10分〜8時間、特に好ましくは30分〜5時間である。
【0072】
1時間〜24時間、好ましくは2時間〜15時間にわたって分配された親水化ポリイソシアネートの連続添加も同様に可能である。
【0073】
ウレア粒子の製造では、反応器温度は、10〜80℃、好ましくは20〜70℃、特に好ましくは25〜50℃である。
【0074】
親水化ポリイソシアネートと水との反応に続いて、0℃〜80℃、好ましくは20℃〜60℃、特に好ましくは25℃〜50℃の内部温度で好適には反応器を脱気する。1〜900mbar、好ましくは10〜800mbar、特に好ましくは100〜400mbarの内部圧力まで脱気を実施する。実際の反応に続く、このガス抜き時間は、1分〜24時間、好ましくは10分〜8時間である。脱気を伴わず、温度を上げることによってガス抜きすることもできる。
【0075】
ナノウレア分散体を、例えば撹拌によって、脱気と同時に混合することが好ましい。
【0076】
ナノウレア水性分散体の製造は、触媒の存在下で実施できる。
【0077】
この目的に適当な触媒は、例えば、アンモニア、塩化鉄(II)、塩化亜鉛、錫塩、水酸化テトラアルキルアンモニウム、水酸化アルカリ、アルカリアルコラート、10〜20個の炭素原子および任意にOH側基を含有する長鎖脂肪酸のアルカリ塩、オクタン酸鉛、または第三級アミン、例えば、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ジメチルベンジルアミン、ジシクロヘキシルメチルアミン、ジメチルシクロヘキシルアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルジアミノジエチルエーテル、ビス−(ジメチルアミノプロピル)ウレア、N−メチルモルホリンまたはN−エチルモルホリン、N,N’−ジモルホリノジエチルエーテル(DMDEE)、N−シクロヘキシルモルホリン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルブタンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルヘキサンジアミン−1,6、ペンタメチルジエチレントリアミン、ジメチルピペラジン、N−ジメチルアミノエチルピペリジン、1,2−ジメチルイミダゾール、N−ヒドロキシプロピルイミダゾール、1−アザビシクロ−(2,2,0)−オクタン、1,4−ジアザビシクロ−(2,2,2)−オクタン(Dabco)、またはアルカノールアミン化合物、例えば、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、N−メチルジエタノールアミンおよびN−エチルジエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、2−(N,N−ジメチルアミノエトキシ)エタノールまたはN−トリス−(ジアルキルアミノアルキル)ヘキサヒドロトリアジン、例えば、N,N’,N−トリス−(ジメチルアミノプロピル)−s−ヘキサヒドロトリアジンである。第三級アミンを使用するならば、例えば蒸留によって、ナノウレア分散体の製造後に触媒を再び分離することが可能である。
【0078】
ジオクタン酸錫、ジエチルヘキサン酸錫、ジラウリン酸ジブチル錫またはジブチルジラウリル錫メルカプチド、3−ジメチル−3,4,5,6−テトラヒドロピリミジン、水酸化テトラメチルアンモニウム、トリエチルアミン、水酸化ナトリウム、ナトリウムメチラートまたはカリウムイソプロピラートが好ましい。特に好ましい触媒はアンモニアである。
【0079】
触媒は、得られる分散体の総固形分に対して、0.01〜8重量%、好ましくは0.05〜5重量%、特に好ましくは0.1〜3重量%の量で使用される。
【0080】
触媒は、水への導入前に親水化ポリイソシアネートと混合してもよいし、または分散水と混合してもよいし、または親水化ポリイソシアネートを分散させて初めて水に添加してもよい。親水化ポリイソシアネートの添加前に、触媒を分散水に添加混合することが好ましい。触媒を少量ずつに分けて、反応過程の異なった段階で添加することもできる。
【0081】
ナノウレアを含有するポリオールまたはポリオール混合物Bの製造において、消泡剤、界面活性洗剤、他の助剤および添加剤を使用することもできる。塗料、シーラントまたは接着剤のような分野からの他の添加剤(例えば顔料または充填剤)を添加することもできる。
【実施例】
【0082】
特に記載のない限り、全てのパーセントは重量パーセントにかかわる。
特に記載のない限り、全ての分析測定は23℃の温度にかかわる。
特定の粒子寸法は、レーザー相関分光法によって(Malvern Instruments Limited社製Malvern Zetasizer 1000を用いて)測定した。
遊離NCO基の分析は、赤外分光法によって実施した(2260cm−1でのバンド)。
水分の測定は、DIN 51777のパート1に従ってカール・フィッシャー滴定によって実施した。アミンの不存在下で、安息香酸を用いたバッファリングを実施する。
【0083】
化学薬品
Bayhydur(登録商標) VP LS 2336(Bayer MaterialScience AG(ドイツ国レーフエルクーゼン)):ヘキサメチレンジイソシアネートに基づく親水化ポリイソシアネート、無溶媒、約6800mPasの粘度、約16.2%のイソシアネート含量(Bayer MaterialScience AG(ドイツ国レーフエルクーゼン))。
Isofoam(登録商標) 16(Petrofer-Chemie(ドイツ国ヒルデスハイム)):
【0084】
消泡剤
他の化学薬品は、Sigma-Aldrich GmbH(ドイツ国タウフキルヘン)のファインケミカル会社に発注した。
【0085】
ナノウレア水性分散体Nの調製
820.20gのBayhydur(登録商標) VP LS 2336、続いて0.32gのIsofoam(登録商標) 16を、激しく撹拌しながら、30℃で、トリエチルアミン20.72gの脱イオン水4952g溶液に添加し、撹拌を継続した。3時間後、6時間後および9時間後、更に、820.20gのBayhydur(登録商標) VP LS 2336、続いて0.32gのIsofoam(登録商標) 16を添加し、次いで、30℃で更に4時間撹拌を継続した。その後、撹拌を30℃、200mbarの減圧下で更に3時間継続し、得られた分散体を充填した。
得られた白色水性分散体は以下の特性を有していた。
粒子寸法(LCS):83nm
粘度(粘度計、23℃):<50mPas
pH(23℃):8.33
【0086】
実施例および比較例では、以下のポリオールを使用した。
ポリエステルA:
約30mgKOH/gのヒドロキシル価および約0.5mgKOH/gの酸価を有する、アジピン酸および1,6−ヘキサンジオールに基づくポリエステルポリオール。当業者に知られており、例えばUllmanns Enzyklopaedie der technischen Chemie, "ポリエステル"、第4版、Verlag Chemie, ヴァインハイム、1980に記載されている、方法で調製を実施する。
ポリエステルB:
500gのポリエステルAを、55℃で、蒸留塔を備えた撹拌器に導入する。39.6gの分散体Nを、撹拌しながら20分以内に滴加する。撹拌しながら約20mbarで脱気する。水が流通しなくなるまで、加熱浴の温度を100℃まで徐々に上げる。次いで、ロータリーエバポレーター内で、脱気を70℃、約1mbarで更に約3時間継続する。(カール・フィッシャーに対応する)含水量は0.075%であった。
ポリエステルC:
1800gのポリエステルAを、60℃で、蒸留塔を備えた撹拌器に導入する。460gの分散体Nを、撹拌しながら30分以内に滴加する。撹拌しながら約20mbarで脱気する。水が流通しなくなるまで、加熱浴の温度を100℃まで徐々に上げる。次いで、撹拌を同じ温度、約2mbarで更に約3時間継続する。(カール・フィッシャーに対応する)含水量は0.08%であった。
ポリエステルD:
約55mgKOH/gのヒドロキシル価および0.5mgKOH/gの酸価を有する、アジピン酸、イソフタル酸、ネオペンチルグリコールおよびエチレングリコールに基づくポリエステルポリオール。当業者に知られており、例えばUllmanns Enzyklopaedie der technischen Chemie, "ポリエステル"、第4版、Verlag Chemie, ヴァインハイム、1980に記載されている、方法で調製を実施する。
ポリエステルE:
約30mgKOH/gのヒドロキシル価および約0.5mgKOH/gの酸価を有する、ドデカン二酸および1,6−ヘキサンジオールに基づくポリエステルポリオール。当業者に知られており、例えばUllmanns Enzyklopaedie der technischen Chemie, "ポリエステル"、第4版、Verlag Chemie, ヴァインハイム、1980に記載されている、方法で調製を実施する。
ポリエーテルA:
Vorano(登録商標) P 400、The DOW Chemical Company(米国ミシガン州ミッドランド)
安定剤S:
Irganox(登録商標) 1010、Ciba Spezialitaetenchemie Lampertheim GmbH(ドイツ国ラムペルトハイム)
イソシアネートI:
Desmodur(登録商標) 44M(4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート)、Bayer MaterialScience AG(ドイツ国レーフエルクーゼン)
【0087】
反応性ポリウレタンホットメルトの製造(実施例および比較例):
2.20の指数(Kennzahl)で、比較例1並びに実施例1および2を実施した。ナノウレア変性ポリエステルを実際に含有する関連の製剤の初期強度を測定するために、ウレタン基含量を一定に保った(U=0.66mol/kg、実施例3および4並びに比較例2)。これにより、ナノウレア変性ポリエステル不含有ホットメルト(比較例1および2)と比べて、ナノウレア変性ポリエステル含有ホットメルト(実施例1〜4)の量的構造を変えた。
【0088】
表1に明記したポリオールの割合を、2リットル容の表面研磨されたビーカーに導入し、130℃で溶融させ、次いで15mbar(±10mbar)の不完全真空下、130℃で1時間、脱水した。続いて、対応する量のイソシアネートIを添加した。約20分の撹拌添加時間の後、生成物をアルミニウムカートリッジに充填し、気密シールで密閉した。その後、カートリッジを、循環空気乾燥炉内で100℃の温度で4時間の条件に付した。
【0089】
【表1】

【0090】
物理的転移の測定:
融点またはガラス転移温度のような物理的転移の測定は、Perkin-Elmer社製Pyris Diamond DSC熱量計を用いて熱変動(Waermetoenung)を測定することによって実施する。インジウムおよび鉛を用いて該温度を測定し、インジウムを用いて該熱変動を測定する。パージガスとして30ml/分の流量での窒素を用いる。液体窒素で冷却を実施する。温度勾配は20K/分である。−100℃〜+150℃の温度範囲で測定を実施する。アルミニウムカップ(標準るつぼ)内で重量測定した試料は9.5〜11.4mg試料重量である。結果を表2に示す。
【0091】
ブナ材接合部の剪断強度の測定:
23℃、50%相対湿度で保管していた40×20×5mm寸法のブナ材シートを使用して試験片を作成する。カートリッジに含まれた評価する製剤を、循環空気乾燥炉内で120℃×45分間で溶融させ、次いで、カートリッジガンを用い、接着剤滴として、特定の型の中に固定した木製試験片に内容物を適用する。続いて型を密閉する。型が、10mmのオーバーラップ高さ、2cmの接着表面積、および0.8mmの接着層厚さを確保する。所定の時間の後、試験片を型から取り出し、次いで、23℃、50%相対湿度で引張剪断試験を実施する。初期強度値を測定するために、試験片を、5分後、10分後、30分後、60分後、および120分後に調べる。14日後に最終強度値を測定する。各製剤について、5つの試験片を作成して測定し、個々の結果を求める。結果を表3に示す。
【0092】
反応性ポリウレタンホットメルトの流動学的特性評価:
試験前に、アルミニウムカートリッジに充填されている製剤を、循環空気炉内で、約125℃×約30分間で溶融させる。ポリウレタンホットメルトの粘弾性を測定するため、1Hzの一定周波数で測定を実施する。一定冷却速度で測定するため、2K/分の速度で、温度を130℃から0℃に低下させる。冷却するにつれて試験片は収縮するので、「オートテンション」機能を備えたレオメーターを用いて測定を実施しなければならない。評価のために、2つの異なった貯蔵弾性率(G’)での温度を用いた。このために、感圧接着剤に関する文献から知られているDahlquistバンド(Bandes)の上限値および下限値を選択した(各々、G’=5×10mPasおよびG’=5×10mPas)。
【0093】
2K/分の冷却速度は、適用中のホットメルトの実際の冷却速度に対応しないので、著しくより速い冷却速度を有する、硬化測定を実施する。硬化測定のため、溶融した熱いPUホットメルトを冷たい(室温の)測定容器に迅速に移し、流動学的測定を室温で直ちに実施する。従って、冷却速度は周囲温度による冷却に起因し、最初は約40〜80K/分である。流動学的挙動は時間経過と共に戻る。G’=1×10mPasの弾性率に達するのに要した時間は、系によって強度発現の尺度として選択された。
【0094】
振動プログラムおよび25HTプレート/プレートシステムを用いて、BOHLIN Instruments社製VOR-Meltレオメーターで、反応性ポリウレタンホットメルトの粘弾性を評価した。温度および周波数の関数として高粘性物質(例えば、プラスチック溶融物、ゴムなど)の粘弾性を評価するために、この機器は使用されている。
【0095】
結果:
DSC試験から得られた、純ポリエステルおよびナノウレア含有ポリエステルについての転移温度を、表2に示す。ブナ材接合部の特性評価からの剪断強度を表3に、流動学的特性を表4に示す。
【0096】
【表2】

【0097】
【表3】

【0098】
【表4】

【0099】
結果の考察
表2は、各々の場合にDSCによって測定された、ナノウレア変性を伴わなかった純ポリエステルAの転移温度と、ナノウレアを含有する純ポリエステルBおよびCの転移温度とを比較している。ナノウレアが融点に有意な影響を与えないことが明らかである。結晶化温度の観察も同様に、有意な影響を示していない。
【0100】
しかしながら、引張剪断試験では、ナノウレア変性ポリエステル含有ホットメルトにおいて、意外なほど向上した強度値が測定されている(表3)。
【0101】
ナノウレア変性ポリエステル不含有ホットメルトと比べて意外なほど向上したナノウレア変性ポリエステル含有ホットメルトの初期強度は、流動学的分析法によっても観察され得る(表4)。一定冷却速度でのDahlquist基準の上限値および下限値は、ナノウレア変性ポリエステル不含有ホットメルト(比較例1および2)よりナノウレア変性ポリエステル含有ホットメルト(実施例1〜4)を用いた方が、より高い温度で達成される。初期強度へのナノウレア変性ポリエステルの影響は、速い冷却速度(硬化試験)でも現れている。
【0102】
低分子量NCO末端ポリウレタンプレポリマー中のナノウレアの存在は、使用時に重要な利点をもたらす。なぜなら、これらの系は、その増大した再結晶化傾向の故に早期にDahlquist範囲に達するからである。このことは、それらの系が、既存の系と比べて、より早い段階で機械的固定を伴うことなく適切な位置に基材を結合させるのに十分な初期強度値に達することを意味する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
別の種の結晶性、部分的結晶性、非晶質または液体ポリオール或いは他成分と任意に混合されていてよい結晶性または部分的結晶性ポリエステルポリオールと、イソシアネートとの反応生成物に基づく製剤であって、ナノウレアを含有することを特徴とする製剤。
【請求項2】
A)好ましくは(成分Aに対して)5〜60重量%の遊離NCO基含量を有する、少なくとも1種の芳香族、脂肪族、芳香脂肪族および/または脂環式イソシアネートと、
B)ポリオール、または少なくとも1種のポリオールを含有するポリオール混合物
との少なくとも1種の反応生成物、並びに
成分Bの総量に対して0.001〜50重量%のナノウレア
を含有する、請求項1に記載の製剤であって、OHに対するNCOのモル比が1を超えるようにBに対するAの比を選択する製剤。
【請求項3】
OHに対するNCOのモル比が1.2〜4.0になるようにBに対するAの比を選択する、請求項2に記載の製剤。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の製剤の、被覆組成物としての使用。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれかに記載の製剤の、フォームとしての使用。
【請求項6】
請求項1〜3のいずれかに記載の製剤の、シーラントとしての使用。
【請求項7】
請求項1〜3のいずれかに記載の製剤の、接着剤としての使用。
【請求項8】
請求項1〜3のいずれかに記載の製剤の、溶融接着剤としての使用。
【請求項9】
請求項1〜3のいずれかに記載の製剤の、紙用接着剤としての使用。
【請求項10】
ポリオールBとイソシアネートAを一緒に混合し、OHに対するNCOのモル比が1を超えるようにBに対するAの比を選択し、このようにして得られた均質な混合物を直ちに充填するかまたは一定のNCO値に達するまで撹拌した後に充填することを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の製剤の製造方法。

【公表番号】特表2011−516643(P2011−516643A)
【公表日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−502266(P2011−502266)
【出願日】平成21年3月27日(2009.3.27)
【国際出願番号】PCT/EP2009/002259
【国際公開番号】WO2009/121527
【国際公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【出願人】(504037346)バイエル・マテリアルサイエンス・アクチェンゲゼルシャフト (728)
【氏名又は名称原語表記】Bayer MaterialScience AG
【Fターム(参考)】