説明

ホッパー及びこれを備えた薬剤供給装置

【課題】外力が加えられたことで薬剤を付着しにくくできるホッパー及びこれを備えた薬剤供給装置を提供する。
【解決手段】薬剤を下方へ通過させることのできる通路1aを有するホッパー1において、外力Xが加えられたことにより、内面1bに波打つような振動が発生するものとする。この構成によると、前記波打つような振動により、薬剤Mに対し、ホッパー1の内面1bから離れようとする力を与えることができ、ホッパー1に薬剤を付着しにくくできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬剤を下方へ通過させることのできる通路を有するホッパー、及び、これを備えた薬剤供給装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、薬剤分包装置等には薬剤供給装置が内蔵されて用いられている。そして、この薬剤供給装置にホッパーが設けられている。このホッパーは、散剤や錠剤などの流動性のある薬剤を下方へ通過させることのできる通路を有するもので、例えば特許文献1に記載されたものが挙げられる。
【0003】
このホッパーに供給する薬剤を異種のものに変更する場合、変更前の薬剤がホッパーに残留しているとコンタミネーションの原因になる。そのため、ホッパーにはできるだけ薬剤が残留しないようにすることが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−40506号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そのための方法として、間欠的にホッパーを打撃して衝撃を与えることで、ホッパーに薬剤が付着しにくいようにすることが行われていた。しかしながら、この方法は打撃に伴って発生する騒音が大きく、装置周囲の作業者等に不快感を与えるという問題があった。
【0006】
一方、特許文献1では、振動モーターを用いて、振動をホッパーに伝達することが提案されている。これによると、前記のような騒音の問題を軽減することができる。
【0007】
しかしながら、特許文献1に係る発明では、ホッパー自体の材質や形状と薬剤残留の関係については注意が払われていなかった。
【0008】
そこで本発明は、ホッパー自体に着目したものであり、外力が加えられたことで薬剤を付着しにくくできるホッパー及びこれを備えた薬剤供給装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1に係るホッパーは、薬剤Mを下方へ通過させることのできる通路1aを有するホッパー1において、外力Xが加えられたことにより、内面1bに波打つような振動が発生することを特徴としている。
【0010】
前記構成によると、波打つような振動により、薬剤Mに対し、ホッパー1の内面1bから離れようとする力を与えることができる。
【0011】
そして、本発明の第2に係るホッパーは、前記外力Xがホッパー全体に及ぶように加えられる振動であり、前記外力Xの振動と前記内面1bにおける振動とに関し、同一時刻における各振動の位相、または、各振動の振幅、または、各振動の周期が異なるものとすることが好ましい。
【0012】
前記好ましい構成によると、各振動の位相、または振幅、または、周期が異なることから、薬剤Mに対し、ホッパー1の内面1bから離れようとする力を効果的に与えることができる。
【0013】
そして、本発明の第3に係るホッパーは、弾性材料で形成されたことが好ましい。
【0014】
前記好ましい構成によると、薬剤が付着しにくいホッパー1の成形が容易である。
【0015】
そして、本発明の第4に係る薬剤供給装置は、本発明の第1〜第3のいずれかに係るホッパー1を備え、このホッパー1に対して振動を与える加振手段32が設けられたことを特徴としている。
【0016】
前記構成によると、加振手段32により波打つような振動を内面1bに発生させ、薬剤Mに対し、ホッパー1の内面1bから離れようとする力を与えることができる。
【0017】
そして、本発明の第5に係る薬剤供給装置は、前記ホッパー1がホッパー保持手段31に保持され、前記ホッパー保持手段31に、前記加振手段32が設けられたことを特徴としている。
【0018】
前記構成によると、ホッパー保持手段31と加振手段32とにより波打つような振動を内面1bに発生させ、薬剤Mに対し、ホッパー1の内面1bから離れようとする力を与えることができる。
【0019】
そして、本発明の第6に係る薬剤供給装置は、前記ホッパー保持手段31が、上下方向に変位可能なばね33により支持されたものとすることが好ましい。
【0020】
前記好ましい構成によると、ホッパー1により大きな振動を発生させることができる。
【0021】
また、本発明の第7に係る薬剤供給装置は、前記ホッパー保持手段31が、前記ホッパー1の上端と下端との間で前記ホッパー1を保持するものとすることが好ましい。
【0022】
前記好ましい構成によると、ホッパー1の形状を単純化できる。
【発明の効果】
【0023】
本発明は、外力が加えられたことで薬剤を付着しにくくできるホッパー及びこれを備えた薬剤供給装置を提供することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の一実施形態に係るホッパーを示す、底面側から見た斜視図である。
【図2】本発明の一実施形態に係るホッパーを取り付けた薬剤分包装置を示す要部斜視図である。
【図3】本発明の一実施形態に係るホッパーを取り付けた薬剤分包装置を示す要部正面図である。
【図4】本発明の一実施形態に係るホッパーを取り付けた薬剤分包装置のうち、開閉手段周りを示す要部側面図である。
【図5】本発明の一実施形態に係るホッパーの作用を示し、(A)はホッパー本体の縦断面視の概略図、(B)はホッパー内面の波打ちの様子を示す、要部を拡大した概略図である。
【図6】本発明の他の実施形態に係るホッパーを示す、底面側から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
次に、本発明につき、一実施形態を取り上げて説明を行う。まず、ホッパー1についての説明を行う。このホッパー1は、後述の開閉手段2と共に薬剤供給装置Aの一部を構成するものであり、図2及び図3に示すように、この薬剤供給装置Aが分包手段Bと組み合わされて薬剤分包装置を構成する。
【0026】
−ホッパーの構成−
本実施形態のホッパー1は、図1に示す形状とされており、薬剤を下方へ通過させることのできる通路1aを有する。そして、薬剤分包装置にて、この通路1aが上下方向になるようにホッパー1が取り付けられる。このホッパー1はホッパー本体11とノズル部12とからなる。ホッパー本体11はホッパー1の上方の部分で、薬剤を貯留しておくことのできる部分である。ノズル部12はホッパー本体11の下方に位置し、ホッパー本体11に貯留されている薬剤を下端の薬剤取出口121から取り出すことのできるように、通路1aの横断面積がホッパー本体11に比べて縮小された部分である。通路1aにおける薬剤が通過する空間には、通路1aを開閉するための開閉機構を構成する部材(例えば開閉板、ヒンジなど)は設けられていない。
【0027】
本実施形態では、ホッパー1の材質はゴム、より詳しくはシリコンゴムとされており、全体が一体成形されている。ゴムを用いることで、成形が容易であり、低コストで薬剤を付着しにくくできるホッパー1を製造できる。また、一体成形されたことにより、ホッパー1の内面1bを継ぎ目も段差もなく形成することができ、内面1bに薬剤が残留しにくくできる。そしてこれに加えて、前記のように通路1aにおける薬剤が通過する空間に開閉機構を構成する部材が設けられていないことから、本実施形態のホッパー1は、薬剤が残留し得る部分を薬剤の通過する経路から排除できており、ホッパー1の全体で薬剤が残留しにくいものとなっている。そして、ホッパー1の製造がしやすく、また、薬剤供給装置Aからホッパー1のみを取り外すことが簡単にできるためメンテナンス性が良好である。そして、ホッパー1が一体成形されたことから、後述のように、外力Xにより内面1bに発生する波打つような振動が伝達途中で減衰してしまうことが起こりにくく、ホッパー1全体に振動が効率良く伝えられる。
【0028】
ただし、本発明は一体成形によるものに限定されるものではなく、別部材を組み合わせてホッパー1を形成しても良い。また、材質に関しても、ホッパー1の内面1bに波打つような振動を発生させることのできる材質であれば、種々の材質を用いることができる。例えば、金属または硬質樹脂(いずれも厚みの小さいもの)、紙が挙げられるが、特に、ゴム等の弾性材料を用いることが望ましい。
【0029】
そして、本実施形態のホッパー1には、通路1aを通過する薬剤との摩擦を低減する表面処理が内面1bになされている。これにより、内面1bへの薬剤の残留が起こりにくい。この表面処理は、本実施形態では、ホッパー1と異なる材料からなるコーティング、例えば樹脂コーティングをなすものとされているが、薬剤の摩擦を低減できるものであれば、薬剤を用いて内面1bを溶融させること等による化学的な処理や、サンドブラストによって内面1bを削ること等による物理的な処理であっても良い。
【0030】
−ホッパー本体−
ホッパー本体11は、上広がりのラッパ状の形状とされた部分であって、本実施形態での横断面形状はほぼ正方形である。このホッパー本体11は、外縁部分及び四隅に形成され、板厚が相対的に厚く剛性の高い部分である枠部111と、枠部111に囲まれ、板厚が相対的に薄く剛性の低い平板部112とを有している。枠部111は、保形性を持たせるために、より詳しくは、ホッパー1が自重と前記通路1aを通過する薬剤の重量及び落下圧力とにより変形してしまうことを防止するために設けられる。平板部112は相対的に剛性が低くなっているが、これは材料を節約するためでもあり、それと共に、後述の加振手段32によってホッパー1を振動させ、平板部112における内面1bを波打たせることで残留する薬剤を振るい落とすためである。
【0031】
このホッパー本体11からは、板状の保持手段取付部113が外側面に突出している。この保持手段取付部113を用いて薬剤供給装置Aにホッパー1が固定される。本実施形態では、この保持手段取付部113が、ホッパー本体11の全周において水平方向に突出するように設けられているが、ホッパー1が固定できるものであれば、種々の形状で実施して良い。また、この保持手段取付部113はホッパー本体11の上端から下端までの間のいずれの位置に設けられていても良い。
【0032】
−ノズル部−
ノズル部12は、ホッパー本体11の下端に連続するように設けられており、下方に向かうにつれ通路1aの横断面積が小さくなる形状とされている。そして、下端が開口しており薬剤取出口121とされている。この下端は斜めにカットされた形状とされているが、その理由は、図3に示すように、薬剤分包装置における薬剤取出口121が、半折された分包紙Pの側端辺P1にほぼ平行となるようにし、分包紙Pの搬送を妨げないようにするためである。また、薬剤取出口121の周囲である下端縁部121aの板厚がノズル部12の他の部分よりも厚くされており、これにより、ノズル部12下端の保形性が確保されている。
【0033】
−変形可能部−
本実施形態では、ホッパー1がシリコンゴムで一体成形されているので、ノズル部12の材質も当然ながらシリコンゴムとなる。そのため、ノズル部12の全体が可撓性を有する変形可能部122となり、この変形可能部122が通路1aを開閉するように変形可能である。開閉は後述する開閉手段2によってなされる。ただし、本実施形態とは異なり、図6に示す実施形態のように、通路1aを開閉しない態様で実施することも可能である。なお、この変形可能部122は、可撓性に加え、形状の復元性が長期にわたって維持できる材質で形成しておくことが経済性の点から望ましい。このように変形可能部122を設けることにより、薬剤をホッパー1に一旦貯留することができる。なお、前記のように通路1aを開閉しない態様で実施した場合、あるいは通路1aを開閉する場合であり、後述のように通路1aが半開きとなった場合であっても、ノズル部12における通路1aの横断面積が小さくなる形状とされていることから、このノズル部12の内面に落下する薬剤が当たることで薬剤の落下速度を減少させ、半折された分包紙Pに落下した薬剤が上方に跳ねて舞い上がってしまうこと(「噴き上がり」と呼ばれる)を防止することができる。
【0034】
ここで、前記「開閉」の意味合いとしては、(1)通路1aを強制的に開閉させる、(2)通路1aを強制的に閉じ、変形可能部122の有する弾力等で自然に開く、(3)通路1aを強制的に開き、変形可能部122の有する弾力等で自然に閉じる、の3例が考えられる。また、通路1aが半開きや半閉じで止まる場合も含む。よって、通路1aを閉じる態様としては、完全に閉鎖されるものに限定されず、薬剤の取り出しを止められる程度の開口を残して閉じられるものも含む。逆に、通路1aを開く態様としては、わずかな開口であっても、薬剤が実質的に通過できるものも含む。
【0035】
また、本実施形態では、変形可能部122における通路1aが、外力を受けない場合では開かれており、後述の開閉手段2によって強制的に閉じられるものとされているが、これとは逆に、外力を受けない場合では閉じられており、開閉手段2によって開かれるように変形可能部122が形成されていても良い。
【0036】
−係止部−
変形可能部122の外面には係止部123が設けられている。この係止部123は、通路1aを開く方向に変形可能部122を変形させるために設けられたものであって、本実施形態では、図1に示すように、変形可能部122の各長辺側外面に、下向きに開口したポケット状のものとして設けられている。薬剤分包装置にホッパー1が取り付けられた際には、図3に示すように、このポケット状の係止部123に開閉操作部21の引掛部213(後述)が差し込まれる。そして、開閉操作部21の動作に伴い変形可能部122における通路1aを開くことができる。
【0037】
この係止部123は、開閉操作部21の動作に変形可能部122が連動するように係止できれば良く、接着、金具留め、嵌合などの種々の手段を採用することができる。なお、本実施形態では係止部123がポケット状であることから、ホッパー1の取り外しの際、ホッパー1を上方に動かすだけで係止部123から開閉操作部21の引掛部213が外れる。そのため、ホッパー1の取り外し作業が容易であり、このことからもホッパー1の清掃作業が容易であると言える。また、場合によってはノズル部12の内部に係止部123が設けられていても良い。
【0038】
−ホッパー(他の実施形態)−
ここで、前記実施形態のホッパー1と異なる他の実施形態について、図6と共に説明しておく。ここでは、これまで説明してきたものとの相違点についてのみ説明するものとし、図示の符号についても前記実施形態のものと機能が共通する部分には同一の記号を付している。この実施形態のホッパー1は開閉手段2を使用しないものである。このホッパー1の下端における、分包紙Pの移動方向(図3参照)における上流側となる位置には、三角形状の噴き上がり防止部124が下方に突出して設けられている。開閉手段2を使用しない場合にあっては、薬剤がホッパー1に一旦貯留されることがない。そのため、薬剤が上方から途中で止められないまま落下するため、開閉手段2を使用する場合よりも落下の勢いが強くなり、前記実施形態のホッパー1を用いると、半折された分包紙P内に落下した薬剤が上方に跳ねて舞い上がってしまうことがある(「噴き上がり」と呼ばれる)。この実施形態では、噴き上がり防止部124を設けたことにより、半折された分包紙Pの上流側に薬剤が回り込むことを妨げることができるため、「噴き上がり」を防止あるいは軽減できる。この噴き上がり防止部124の外側には、板厚がノズル部12の他の部分よりも厚くされた補強部124aが上下方向に設けられており、前記の下端縁部121aと共にノズル部12下端の保形性が確保されている。一方、この実施形態のホッパー本体11では、枠部111と共に側面中央に平板部112よりも板厚が厚い上下方向補強部114が設けられており、ホッパー本体11の保形性が高められている。
【0039】
以上、ホッパー1の材質及び形状に関して説明してきたが、ここでまとめておくと、ホッパー1は、外力Xが加えられたことにより、内面1bが弾性変形して波打つような振動が発生する程度の剛性を有することになる材質及び形状を選択して用いれば良い。この剛性は数値化が困難であるため、そのような剛性を有するホッパー1の一例として、本実施形態に係るホッパー1の材質及び形状を下記に示しておく(寸法に関しては図6に示した他の実施形態のものを示す)。

・硬化前特性
可塑度(ウィリアムス再練10分後)240
・硬化後特性(2mm厚の試験片にて測定)
密度1.14g/cm3、硬さ(JISタイプA)52、引っ張り強さ8.2MPa、切断時伸び325%、引裂き強さ23kN/m
なお、硬化後特性は2mm厚の試験片にて測定したものである。
・各部寸法(外寸)
上下方向全長:186mm
ホッパー本体11の上下寸法:68mm
ホッパー本体11の上端寸法:123mm×123mm
ホッパー本体11の下端寸法:63mm(正面側)×53mm(側面側)
ホッパー本体11の上端から保持手段取付部113の上端までの寸法:35.6mm
枠部111の幅寸法:7.5mm
ノズル部12の下端寸法(最大寸法):33.5mm(正面側)×26.5mm(側面側)
厚み:全体…0.6mm、枠部111及び上側補強部114…1.8mm、ホッパー本体11の上端における枠部111…2mm、下端縁部121a及び補強部(噴き上がり防止部)124a…1.1mm、保持手段取付部113(根元側)…2mm、保持手段取付部113(固定用クリップ311に挟まれる部分)…4mm
【0040】
−外力によるホッパーの挙動−
上記のようにホッパー1が形成されたことから、このホッパー1は、外力Xが加えられたことにより、内面1bに波打つような振動が発生する。前記の外力Xは、本実施形態では、後述の加振手段32によりホッパー1の全体に及ぶように加えられる振動である。
【0041】
また、前記の「外力(X)」に関しては、本実施形態の加振手段32である振動モーターから発生するもののように、振幅及び周波数が一定である振動に限られるものではなく、振幅及び周波数が変化する振動や、例えば、ソレノイド等により発生する衝撃(言い換えると、間欠的であって振幅及び周波数が変化するもので、振動の一態様ととらえることができる)であっても良い。
【0042】
また、前記の「波打つような振動」とは種々の態様が考えられるが、一例として、外力Xの振動に対し、同一時刻における各振動の位相、または、各振動の振幅、または、各振動の周期(周波数)が異なる振動が挙げられる。これらを言い換えると、外力Xの振動に対し、ホッパー1の内面1bに発生する振動の波形が異なる場合、または、振動の波形自体は同じであるが、波形がピークとなる時刻が異なるなど、同一時刻における各振動の位相が異なる場合、ホッパー1の内面1bに発生する振動である。なお、振幅及び周期(周波数)に関しては、時刻によって波形が変化するような振動の場合、ある時刻から所定時間経過した時刻までの時間範囲における振幅及び周期(周波数)の平均値にて判断することができる。
【0043】
このようにして発生する、波打つような振動により、微視的に見た場合、図5(B)に示すように、ホッパー1の内面1bから離れようとする離反力Zを薬剤Mの一粒一粒に与えることができる。これにより、図5(A)に示すように、薬剤Mをホッパー1の内面1bから振るい落とすことができ、ホッパー1に薬剤Mが残留しにくいようにできる。
【0044】
なお、薬剤Mをホッパー1の内面1bから有効に振るい落とすためには、内面1bの振動が、内面1bに対する薬剤Mの付着力(摩擦力等)よりも強い離反力Zを薬剤Mに与えることができる振動であることが望ましい。ただし、付着力以下の離反力Zを薬剤Mに与えるものであったとしても、薬剤Mの内面1bへの付着を弱めようとする作用を奏することはできるため、全く無意味ではなく、ある程度は有効である。また、本実施形態のように内面1bに表面処理がなされていた方が、薬剤Mの内面1bに対する付着力をより弱めることができるため望ましい。
【0045】
なお、前記の「付着力よりも強い離反力(Z)」を薬剤Mに与えるための振動とは、例えば、当該振動の波形の振幅が大きい、あるいは、当該振動の波形の周期が短いものである。
【0046】
ここで、本実施形態のホッパー1はシリコンゴム製であって、図2及び図3に示すように、保持手段取付部113で薬剤供給装置Aに固定されている。そのため、加振手段32である振動モーターから発生する振動は、後述のホッパー保持手段31から保持手段取付部113に伝わり、そこからホッパー1の全体に伝わっていく。
【0047】
本実施形態のホッパー1はシリコンゴム製であって可撓性を有する(柔らかい)ため、図5(A)に示すように、前記伝えられた振動によって撓みYが発生する。この撓みYがホッパー1の内面1b全体に発生し、前記の「波打つような振動」となる。この撓みYは、保持手段取付部113からの距離が離れるにつれて大きくなる、つまり、前記「波打つような振動」の振幅が大きくなる。そのため、ホッパー1の内面1bにおいて、保持手段取付部113の近傍における振動は加振手段32の振動にほぼ等しくなるが、それ以外の部分は加振手段32の振動よりも振幅の大きい振動となる。このことから、単に加振手段32の振動がそのままホッパー1の全体に伝達されるのに比べ、より強い力をホッパー1内部の薬剤Mに与えることができ、薬剤Mを有効に振るい落とすことができると推定される。
【0048】
なお、本実施形態では、ホッパー1の全体(ホッパー本体11及びノズル部12)における内面1bが波打つように振動するものとしたが、これに限定されず、例えば、薬剤供給装置Aにおけるホッパー1の配置の関係上、ホッパー1において薬剤Mが特に付着しやすい箇所が存在する場合、その箇所の内面1bに、重点的に波打つような振動が発生するようにしたり、場合によっては、その箇所の内面1bだけに波打つような振動が発生するようにしても良い。これは、形状を変更して、局所的に剛性の高い部分を形成したり、振動しにくい材質や振動を吸収する材質を一部に用いることで実現できる。
【0049】
−薬剤供給装置・薬剤分包装置−
次に、薬剤供給装置A及び薬剤分包装置について説明する。この薬剤供給装置Aは、所定量の薬剤を取り出すことができるように、前記のホッパー1と、通路1aを開閉する開閉手段2とを備えたものである。そして、薬剤分包装置は、前記の薬剤供給装置Aと、この薬剤供給装置Aにより供給された薬剤を分包紙Pで包むための分包手段Bとを備えたものである。分包手段Bは、長さ方向に連続して供給される分包紙Pを幅方向に半折し、薬剤供給容器から供給された1包分の薬剤を分包紙Pに包んだ後、ヒートシールなどにより分包紙Pの周囲を接着するものである。薬剤分包装置の要部を図2及び図3に示す。二点鎖線で図示したものが幅方向に半折された分包紙Pである。この分包紙Pの移動方向は図中に矢印で示した方向である。
【0050】
なお、ホッパー1におけるノズル部12の下端は、図示のように、半折された分包紙Pに挟まれるように位置する。また、薬剤取出口121の端面形状は図1に示すような二等辺三角形状であるが、前記形状における頂点側が分包紙Pの移動方向における下流側に位置する。
【0051】
−保持手段等−
本実施形態では、図2及び図3に示すように、ホッパー1が矩形枠状とされたホッパー保持手段31の枠内に係止されて保持されている。ホッパー保持手段31は、ホッパー1の上端と下端との間の位置に設けられる。よって、保持手段取付部113をホッパー1の外側面から突出させるだけで形成できることから、ホッパー1の形状を単純化できる。ホッパー保持手段31には、固定用クリップ311が設けられており、この固定用クリップ311の押圧片311aでホッパー1の保持手段取付部113を挟むことにより、ホッパー1をホッパー保持手段31に保持できる。本実施形態では、この押圧片311aが図示のように保持手段取付部113の一辺における全幅にわたって挟むことができるよう幅広に形成されている。そのため、後述のように加振手段32で発生した振動を有効にホッパー1に伝達することができる。
【0052】
また、ホッパー保持手段31は上下方向に変位可能なばね33により支持されている。このばね33は、後述のようにホッパー1を振動させるために作用すると共に、薬剤分包装置の薬剤供給装置A以外の部分に対して、加振手段32の振動を伝えないようにする、振動の絶縁手段として作用する。
【0053】
本実施形態では、ばね33としてコイルばねを用いており、矩形枠状のホッパー保持手段31の一方側辺と対向側の辺に2箇所ずつの計4箇所において、装置側に固定された基部4と連結されている。ばね33の種類はコイルばねに限らず、板ばねなど、種々のばねを用いることができる。このばね33は、軸線方向(上下方向)に主として振動するもので、径方向(水平方向)には実質的に振動しないものとすることが望ましい。本実施形態では、コイルばねをそのまま用いているが、コイルばねの内部に円柱状の内側ガイドを設けるか、あるいは、コイルばねの外部に円筒状の外側ガイドを設けること等、コイルばねの径方向(水平方向)への振動を積極的に規制する一方で上下方向の振動を許容するガイドを設けるものとしても良い。
【0054】
−加振手段−
そして本実施形態では、このホッパー保持手段31に、ホッパー1を振動させる加振手段32が設けられている。本実施形態の加振手段32としては、モーターの回転軸に偏心した錘が取り付けられてなる振動モーターが振動源として用いられ、振幅及び周波数が一定の振動を発生させるものとされているが、従来から存在する、ソレノイド等により衝撃を発生させるものであっても良い。また、電磁石等を用いて振動を発生させるものであっても良い。
【0055】
本実施形態において、この加振手段32は分包手段Bに連動して作動するものとされている。具体的には、ホッパー1の薬剤取出口121から分包手段Bに薬剤が供給されるタイミングに合わせて加振手段32が作動する。ただし、分包手段Bには連動させず、加振手段32を手動で作動させるものであっても良いし、場合によっては、薬剤分包装置の電源が入っている間、常時、加振手段32が作動するものであっても良い。
【0056】
前記のようにホッパー保持手段31はばね33により支持されているため、加振手段32により発生した振動により、ホッパー保持手段31が揺れ、これに伴ってホッパー1も揺れる。そのため、ホッパー保持手段31を固定した場合に比べて、ホッパー1により大きな振動を発生させることができ、ホッパー1に残留する薬剤Mを効果的に振るい落とすことができる。
【0057】
また、本実施形態の加振手段32は、図2に示すように、ホッパー保持手段31の一側辺部における長手方向一端部寄りに偏った位置に、金属板製の取付部32aを介して固定されている。なお、この固定は、振動モーターの回転軸が水平方向となるようにされている。加振手段32の取付位置は、矩形枠状のホッパー保持手段31の角部寄りの位置であるから、本実施形態では、矩形枠状のホッパー保持手段31の角部寄りの位置が振動発生位置となっている。
【0058】
従って、本実施形態においては、加振手段32の振動が伝達されて発生するホッパ−1の振動は、ばね33の作用による上下方向の振動が主となる。そして、前記上下方向の振動に、ばね33によってホッパー保持手段31が4箇所で支持されていること、及び、加振手段32の偏った固定位置に起因してホッパー保持手段31の角部寄りの位置が振動発生位置となっていることに基づく上下方向の軸線回りに回転する振動が僅かに加わった振動となると推定される。
【0059】
以上のような振動をホッパ−1に伝達する本実施形態では、ホッパ−1の所定箇所が前記振動により描く軌道は、「上下方向の軸線に沿った上下軌道に、前記軸線回りに回転する回転軌道が僅かに加わった軌道」となると推定される。
【0060】
前記のように、ホッパ−1の振動は、上下方向の振動に上下方向の軸線回りに回転する振動が複合したものであるため、ホッパー1に残留する薬剤Mを効果的に振るい落とすことができる。このような複合した振動をホッパー1に発生させるため、加振手段32はホッパー保持手段31の偏った位置に設けることが望ましい。
【0061】
なお、前記ホッパ−1の上下方向の振動は、ホッパー保持手段31を伝わるにつれて減衰することから、加振手段32に近い位置の方が大きいと推定される。このことから、ホッパ−1の振動は位置によって不均等になるものと思われ、このように振動が不均等となることによっても、ホッパー1に残留する薬剤Mを効果的に振るい落とすことができると考えられる。
【0062】
−開閉操作部−
開閉手段2は、図4に示すように、ホッパー1のノズル部12における変形可能部122を一方側と他方側とから挟むことのできる一対の開閉操作部21と、開閉操作部21を動作させるための駆動部22とを有している。各々の開閉操作部21は、金属製で断面「コ」の字状とされており、変形可能部122を押圧するように接近可能な、細長い板状の押圧部211と、押圧部211の両端から駆動部22へと延ばされた連結部214を有している。各押圧部211,211は、斜め方向、つまり、変形可能部122を側面視で横切るように、上下方向に対して交差する方向へと延びるように設けられている。また、各押圧部211,211は変形可能部122を挟んで平行に設けられている。そして、図3に示すように、薬剤分包装置内を移動する分包紙Pの外側に、分包紙Pの側辺と平行に設けられている。
【0063】
各押圧部211,211を分包紙Pの外側に設ける理由は、各押圧部211,211が分包紙Pのライン(図3上の二点鎖線の範囲)内にあると、分包紙Pをノズル部12の下流側で狭持するための紙つかみ手段(図示しない)が分包紙Pを狭持するタイミングと開閉手段2が変形可能部12を開くタイミングが一致するため、つまり、分包紙Pに前記の両者が与える力が相反してしまうため、分包紙Pが破れる原因となるからである。そして、各押圧部211,211が分包紙Pのライン内に位置すると、各押圧部211,211自体に薬剤が付着してしまうおそれがあるからである。
【0064】
また、開閉操作部21はホッパー1の下端よりも上方の位置に設けられている。これにより、開閉操作部21が通路1aを通過する薬剤に対してホッパー1で隔てられ、開閉操作部21周りに薬剤が残留することがない。なお、開閉操作部21はできるだけホッパー1の下端寄りに設ける方が、薬剤の落下距離が小さくなり、薬剤の「噴き上げ」を起こりにくくできる。
【0065】
本実施形態では、駆動部22がノズル部12の側方に設けられており、図示右側の開閉操作部21は、ホッパー1の通路1aを閉じる際に図示左方に移動し、図示左側の開閉操作部21は、ホッパー1の通路1aを閉じる際に図示右方に移動する。駆動部22はモーターにより駆動され、ギアの噛み合い(図示しない)によって、各連結部214を図示左右に移動させる。この移動の際、各押圧部211,211は平行な関係を保ってなされる。
【0066】
押圧部211の形状及び動作は本実施形態のものに限られるものではなく、種々に変更することができ、例えば、片持ちによるもの、シリンダー駆動によるもの、一端にヒンジを設けておき扇状に回動するものなどが挙げられる。要するに、押圧部211が変形可能部122に対して移動し、変形可能部122を通路1aを開閉するように変形できるものであればどのような形態であっても良い。また、押圧方向(変形可能部122に近づく方向)の動作のみが駆動部22によりなされ、反対方向の動作はばねの反発力等により(駆動部22によらず)なされるものであっても良い。
【0067】
また、ホッパー1の変形可能部122が、通路1aが外力を受けない場合では閉じられており、開閉手段2によって開かれるように成形されている場合では、開閉操作部21に押圧部211を設けず、通路1aを開くため、例えば後述の引掛部213のみを設けるものであっても良い。
【0068】
−クッション部−
本実施形態では、各押圧部211,211の内面、つまり、ホッパー1の変形可能部122に面する部分に弾性を有するクッション部212が設けられている。クッション部212を設けることにより、ホッパー1の成形誤差により発生する変形可能部122の厚みのムラを吸収できる。つまり、変形可能部122の厚みが全周において均一でない場合、本実施形態のように金属製で弾性のない各押圧部211,211が直接変形可能部122を押圧すると、変形可能部122を密着させて通路1aを完全に閉じることが難しいが、クッション部212を設けることにより、厚みが小さくなっている部分は相対的に大きな力で押さえることができ、厚みが大きくなっている部分は相対的に小さな力で抑えることができるため、通路1aを完全に閉じることができる。なお、場合によっては、各押圧部211,211のうち、いずれか一方の内面にのみクッション部212が設けられたものであっても良い。
【0069】
ここで、変形可能部122を密着させて通路1aを閉じる際には、通路1aの端を折り畳むように変形させないとならないため、通路1aの中央部分に比べて押圧力を大きくしないと完全に閉じることができない。よって、本実施形態では、各押圧部211,211の延長方向における中央寄りクッション部212aが両端寄りクッション部212bに比べて大きい弾性を有するものとされている。言い換えると、中央寄りクッション部212aの方が両端寄りクッション部212bに比べて柔らかい。本実施形態では、中央寄りクッション部212aがスポンジ製で両端寄りクッション部212bがゴム製とされている。これにより、通路1aの端の方が押圧力を大きくでき、確実に通路1aを閉じることができる。なお、本実施形態では、中央寄りクッション部212aの方が両端寄りクッション部212bよりも厚くされている。これにより、中央寄りクッション部212aがまず変形可能部122の中央側を押圧し、少し遅れて両端寄りクッション部212bが変形可能部122の中央側を押圧することになり、密着ムラを発生させずに確実に通路1aを閉じることができる。
【0070】
本実施形態では、各開閉操作部21,21における押圧部211と一体に、上方に突出するようにして引掛部213が設けられている。この引掛部213は、図3及び図4に示すように、ノズル部12に設けられたポケット状の係止部123に差し込まれるものであり、押圧部211が変形可能部122から離れる方向に移動する際に、変形可能部122を、通路1aを開く方向に移動させる。これにより、確実に通路1aを開くことができる。なお、この引掛部213を設けず、変形可能部122自体の弾性によって通路1aが自然に開かれるものであっても良い。
【符号の説明】
【0071】
1 ホッパー
1a 通路
1b ホッパーの内面
31 ホッパー保持手段
32 加振手段
33 ばね
A 薬剤供給装置
M 薬剤
X 外力

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬剤を下方へ通過させることのできる通路を有するホッパーにおいて、
外力が加えられたことにより、内面に波打つような振動が発生することを特徴とするホッパー。
【請求項2】
前記外力がホッパー全体に及ぶように加えられる振動であり、
前記外力の振動と前記内面における振動とに関し、同一時刻における各振動の位相、または、各振動の振幅、または、各振動の周期が異なることを特徴とする請求項1に記載のホッパー。
【請求項3】
弾性材料で形成されたことを特徴とする請求項1または2に記載のホッパー。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載のホッパーを備え、
このホッパーに対して振動を与える加振手段が設けられたことを特徴とする薬剤供給装置。
【請求項5】
前記ホッパーがホッパー保持手段に保持され、
前記ホッパー保持手段に、前記加振手段が設けられたことを特徴とする請求項4に記載の薬剤供給装置。
【請求項6】
前記ホッパー保持手段が、上下方向に変位可能なばねにより支持されたことを特徴とする請求項5に記載の薬剤供給装置。
【請求項7】
前記ホッパー保持手段が、前記ホッパーの上端と下端との間で前記ホッパーを保持することを特徴とする請求項5または6に記載の薬剤供給装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−51630(P2012−51630A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−197383(P2010−197383)
【出願日】平成22年9月3日(2010.9.3)
【出願人】(510154420)高園テクノロジー株式会社 (29)
【Fターム(参考)】