説明

ホッパ貨車

【課題】輸送中の積載物の漏れを抑制できるホッパ貨車を提供すること。
【解決手段】鉱石、砕石、セメント、石灰、石灰石、石炭等の粉粒体(積載物)を積載し輸送するホッパ貨車1において、側板4に回動可能に取着される開閉扉7が閉扉されると、開閉扉7は、傾斜板12の下縁12aに当接されると共に傾斜板12の下面に固定される横シール部材18を押圧する。開閉扉7は傾斜板12を臨む平坦な内板9が枠体8の一面側に接合されているので、内板9の下端側を折曲することなく開閉扉7を作成できる。これにより、開閉扉7の下端側の表面にうねり(凹凸)が生じることを防止でき、閉扉された開閉扉7と傾斜板12の下縁12a及び横シール部材18とに隙間が生じることを防止できる。その結果、輸送中の積載物の漏れを抑制できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はホッパ貨車に関し、特に輸送中の積載物の漏れを抑制できるホッパ貨車に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、鉱石、砕石、セメント、石灰、石灰石、石炭等の粉粒体(積載物)を積載し輸送するホッパ貨車が知られている。例えば特許文献1には、高温のペレット等の熱鋼片を輸送するホッパ貨車が開示されている。特許文献1に開示されるホッパ貨車は、熱の影響でホッパが変形しないように、複数本の支持梁でホッパの骨組みを形成し、その骨組みの内面に鋳物製の長尺部材が複数枚配設されている。鋳物製の長尺部材は自重が大きいため、ホッパ貨車の自重が嵩み、高速長距離の輸送には不利であり、また十分な積載量が得られなかった。
【0003】
そこで、軽量化と積載量の増加とを目的とする場合、従来は図8(a)に示すようなホッパ貨車が使用されていた。以下、図8(a)を参照して、従来のホッパ貨車301について説明する。図8(a)は、幅方向における従来のホッパ貨車301の断面図である。なお、図8(a)においてはホッパ貨車301の天井側(図8(a)上方向)の図示および台車の図示を省略している。
【0004】
図8(a)に示すように、ホッパ貨車301は、ホッパ貨車301の長手方向(図8(a)紙面垂直方向)に沿って幅方向(図8(a)左右方向)の両側に配設される一対の側板302と、その側板302に回動可能に取着されると共に側板302の下部(図8(a)下方向)に位置する一対の開閉扉303と、その開閉扉303が閉扉されると下縁304aに当接されると共に、その下縁304aに向けて下降傾斜する一対の傾斜板304と、ホッパ貨車301の幅方向に沿って長手方向の両側に配設される一対の妻板(図示せず)とを主に備えて構成されている。
【0005】
一対の傾斜板304は、ホッパ貨車301の幅方向の中央で上に凸に湾曲させた湾曲部材305により上縁が連結されており、積載物は、側板302、開閉扉303、傾斜板304、湾曲部材305及び妻板(図示せず)で囲繞された積載空間Sに積載される。開閉装置(図示せず)を作動させて、図8(a)の矢印A方向に開閉扉303を開扉すると、積載空間S内の積載物は、傾斜板304の傾斜に沿って左右に分配されて排出される。
【0006】
開閉扉303は、側板302に上端が取着される枠体303aと、その枠体303aの一面側に接合されると共に傾斜板304を臨む内板303bと、その内板303bと対向しつつ枠体303aの他面側に接合される外板303cとを備えて中空状に構成され、軽量化されている。
【0007】
傾斜板304は、断面L形の形鋼からなる梁306によって下端部が支持されている。梁306のフランジ306a及び傾斜板304にボルト307が貫設され、そのボルト307が板状のシール部材308に貫設されている。そして、座金309及びナット310により、梁306を介して傾斜板304の下面にシール部材308が固定されている。シール部材308は、傾斜板304との間にフランジ306aが介設された状態で傾斜板304と略平行に固定されており、開閉扉303が開扉された状態では、長手方向に延びる縁が傾斜板304の下縁304aからわずかに突出している。
【0008】
開閉扉303は、枠体303aの下端部のフランジ303a1がウェブ303a2に対して略120°の角度で折曲される一方、内板303bは下端側が略60°の角度で折曲され、フランジ303a1及び内板303bが密着されている。内板303bの下端側が折曲されることにより内板303bの剛性が向上されると共に、開閉扉303が閉扉されると、傾斜板304に直交するように開閉扉303が傾斜板304に当接されつつシール部材308が押圧される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】実開昭62−6172号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら上記従来の技術では、枠体303aの下端部のフランジ303a1をウェブ303a2に対して略120°の角度で折曲すると、フランジ303a1の長手方向の表面に波長の長い凹凸(うねり)が生じ易いという問題があった。また、内板303bの下端側を略60°の角度で折曲すると、内板303bの長手方向の表面にもうねりが生じ易いという問題があった。さらに、うねりの生じたフランジ303a1及び内板303bを密着させると、フランジ303a1に比べて薄い内板303b(開閉扉303の下端側の内面)にうねりが増幅され易いという問題があった。
【0011】
開閉扉303の下端側の内面にうねりがあると、閉扉された開閉扉303のうねりの高い部分と傾斜板304の下縁304aとが当接し、うねりの低い部分と傾斜板304の下縁304aとに隙間が生じる。その隙間から輸送中に積載空間S内の粉粒体が漏れてしまうという問題点があった。また、開閉扉303の下端側の内面のうねりの大きさが、シール部材308が追随できる範囲より大きいと、閉扉された開閉扉303とシール部材308とに隙間が生じ、その隙間から粉粒体(積載物)が漏れてしまうという問題点があった。
【0012】
本発明は上述した問題点を解決するためになされたものであり、輸送中の積載物の漏れを抑制できるホッパ貨車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段および発明の効果】
【0013】
この目的を達成するために、請求項1記載のホッパ貨車によれば、側板に回動可能に取着される開閉扉が閉扉されると、開閉扉は、傾斜板の下縁に当接されると共に傾斜板の下面に固定される横シール部材を押圧する。開閉扉が開扉されると積載物の排出口が形成され、積載物は傾斜板の傾斜に沿って排出口から排出される。ここで、開閉扉は縦方向および横方向に配設される縦枠材および横枠材を有する枠体と、その枠体の一面側に接合されると共に傾斜板を臨む平坦な内板とを備えている。そのため、内板の下端側を折曲することなく開閉扉を作成できる。これにより、開閉扉の下端側の表面にうねりが生じることを防止でき、閉扉された開閉扉と傾斜板の下縁とに隙間が生じることを防止できる。
【0014】
また、内板の下端側の表面にうねりが生じることを防止できると、横シール部材が閉扉された開閉扉に密接するので、開閉扉とシール部材とに隙間が生じることも防止できる。これらの結果、輸送中の積載物の漏れを抑制できる効果がある。
【0015】
請求項2記載のホッパ貨車によれば、開閉扉が閉扉されると、開閉扉の下端側に横方向に沿って突設される突起部により横シール部材が押圧される。これにより、横シール部材の長手方向に延びる縁部を、突起部の突起量の分だけ、開閉扉から遠ざかるように傾斜板の下縁から後退させておくことができる。そのため、開閉扉が開扉されたときに、排出口から排出される積載物が横シール部材に衝突することを防止でき、排出される積載物によって横シール部材が損傷を受けることを防止できる。その結果、請求項1の効果に加え、横シール部材の耐久性を向上させ、輸送中の積載物の漏れを長期間に亘って抑制できる効果がある。
【0016】
請求項3記載のホッパ貨車によれば、横枠材は、外板の下端側に接合される第1フランジと、その第1フランジから内板の下端側へ起立されるウェブと、そのウェブに垂設され内板の下端側に接合される第2フランジとを備えている。ウェブに第2フランジを垂設する場合は、ウェブに対して略120°や略60°の角度で第2フランジを設ける場合と比較して、第2フランジの長手方向の表面にうねりを生じ難くできる。これにより、第2フランジが接合された内板にうねりが生じることを抑制できると共に、第2フランジにより内板を補強できる。その結果、請求項1又は2の効果に加え、内板の機械的強度を向上させ、輸送中の積載物の漏れを長期間に亘って抑制できる効果がある。
【0017】
請求項4記載のホッパ貨車によれば、傾斜板から下向きに突出されると共に開閉扉の下端部に対峙する横シール保持部材を備え、その横シール保持部材により横シール部材の基部が保持される。これにより、閉扉されたときに、開閉扉と横シール保持部材との間で横シール部材を挟み込むことができ、横シール部材を開閉扉の下端部に強く押圧させることができる。その結果、請求項1から3のいずれかの効果に加え、横シール部材と開閉扉とに隙間が生じることが防止され、輸送中の積載物の漏れを抑制できる効果がある。
【0018】
請求項5記載のホッパ貨車によれば、互いに所定の間隔をあけて側板の下方に縦部材が配設され、その縦部材の外面または縦部材に対応する開閉扉に縦シール部材が固定される。開閉扉が閉扉されると縦シール部材が押圧される。これにより、請求項1から4のいずれかの効果に加え、閉扉された開閉扉と縦部材とに隙間が生じることが防止され、輸送中の積載物の漏れを抑制できる効果がある。
【0019】
請求項6記載のホッパ貨車によれば、開閉扉は、内板から外板に向けて縦枠材および横枠材の間に立設される補強部材により内板が補強される。これにより、内板の剛性を向上させ、積載物の重量や開閉扉の開閉動作が原因となる内板(開閉扉)の変形を抑制できる。その結果、閉扉された開閉扉と傾斜板および横シール部材とに隙間が生じることを防止でき、請求項1から5のいずれかの効果に加え、輸送中の積載物の漏れを長期間に亘って抑制できる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の第1実施の形態におけるホッパ貨車の側面図である。
【図2】図1のII−II線における構体の断面図である。
【図3】第1実施の形態におけるホッパ貨車の一部を切断して示した開閉扉および傾斜板の部分断面図であり、(a)は開扉された状態、(b)は閉扉された状態を示す図である。(c)は掴持部と、横シール部材との分解拡大図である。
【図4】(a)は図1のIVa−IVa線における構体の断面図であり、(b)は図1のIVb−IVb線における構体の断面図である。
【図5】第2実施の形態におけるホッパ貨車の一部を切断して示した開閉扉および傾斜板の部分断面図であり、(a)は開扉された状態、(b)は閉扉された状態を示す図である。
【図6】第3実施の形態におけるホッパ貨車の一部を切断して示した開閉扉および傾斜板の部分断面図であり、(a)は開扉された状態、(b)は閉扉された状態を示す図である。
【図7】(a)は第4実施の形態におけるホッパ貨車の一部を切断して示した構体の端部の部分断面図であり、(b)は第4実施の形態におけるホッパ貨車の一部を切断して示した構体の中央部の部分断面図である。
【図8】(a)は幅方向における従来のホッパ貨車の断面図であり、(b)はホッパ貨車の一部を切断して示したシール部材の部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の好ましい実施の形態について、添付図面を参照して説明する。まず、図1を参照して、本発明の第1実施の形態におけるホッパ貨車1について説明する。図1は第1実施の形態におけるホッパ貨車1の側面図である。
【0022】
図1に示すように、ホッパ貨車1は、複数の台車2と、それら台車2に支持される構体3とを備えて構成されている。構体3は、構体3の長手方向(図1左右方向)に沿って鉛直(図1上下方向)に配設される側板4と、その側板4の両端に鉛直に配設される妻板5と、側板4の下方に柱状に配設されると共に互いに所定の間隔をあけて台枠(図示せず)に立設される縦部材6a,6bと、側板4に回動可能に取着されると共に側板4の下部に位置する開閉扉7とを主に備えて構成されている。本実施の形態においては、一つの構体3に3本の縦部材6a,6bが配設されており、縦部材6a,6b間に各々1枚ずつ開閉扉7が配設されている。
【0023】
次に図2、図3を参照して、構体3について説明する。図2は、図1のII−II線における構体3の断面図である。図3は、ホッパ貨車1の一部を切断して示した開閉扉7および傾斜板12の部分断面図であり、(a)は開扉された状態、(b)は閉扉された状態を示す図である。(c)は掴持部15aと、横シール部材18との分解拡大図である。
【0024】
なお、図2においては構体3の天井側(図2上方向)の図示を省略している。図2に示すように構体3は、側板4に回動可能に取着される左右一対の開閉扉7と、その開閉扉7が閉扉されると下縁12aに当接されると共に、その下縁12aに向かって構体3の幅方向の中心から下降傾斜する左右一対の傾斜板12とを主に備えて構成されている。
【0025】
一対の傾斜板12は、上に凸の角部(頂部)を有し山形に形成された略L字状の連結部材13により、構体3の幅方向の中央で連結されている。連結部材13の傾斜角は、粉粒体の安息角を考慮して、傾斜板12の傾斜角と同一乃至は大きめに設定されている。また、連結部材13は、傾斜板12の上面に両端部をオーバーラップさせて、傾斜板12と接合されている。積載物は、側板4、開閉扉7、傾斜板12、連結部材13及び妻板5(図1参照)で囲繞された積載空間Sに積載される。開閉扉7に連結された開閉装置(図示せず)を作動させて、図2の矢印A方向に開閉扉7を開扉すると、積載空間S内の積載物は、傾斜板12の傾斜に沿って左右に分配されて排出口Eから排出される。
【0026】
ここで、従来は図8(a)に示すように、上に凸に湾曲させた湾曲部材305により傾斜板の上縁が連結されていた。そのため開閉扉303を開扉したときに、粉粒体(積載物)の安息角との関係で、積載空間S内の粉粒体(積載物)の一部が湾曲部材305の上に積もったまま、排出されずに残ってしまうという問題があった。
【0027】
これに対し本実施の形態では、連結部材13は上に凸の角部を有しているので、開閉扉7を開扉したときに、連結部材13に粉粒体(積載物)が積もることを防ぎ、粉粒体を連結部材13の傾斜に沿って左右に分配させて、排出口Eから排出させることができる。これにより、粉粒体の一部が連結部材13上に残ってしまうことを防止できる。また、連結部材13は傾斜板12の上面に両端部をオーバーラップさせて傾斜板12と接合されているので、傾斜板12と連結部材13とを突き合わせて接合する場合と比較して、傾斜板12と連結部材13との接合強度を大きくできると共に、連結部材13と傾斜板12との接合部のエッジに、粉粒体が排出されずに残留してしまうことを防止できる。
【0028】
開閉扉7は、縦方向および横方向に配設される縦枠材8b(図4(a)及び図4b)参照)及び横枠材8aを備える枠体8と、その枠体8の一面側に接合されると共に傾斜板12を臨む平坦な内板9と、その内板9と対向しつつ枠体8の他面側に接合される外板10とを備えて構成されている。
【0029】
枠体8は、開閉扉7の骨組みとなる部材であり、断面Z形の横枠材8a及び断面C形の縦枠材8b(図4参照)が額縁状乃至は格子状に接合されて形成されている。内板9及び外板10は、開閉扉7の外形を規定するための部材であり、板状の部材で構成されている。内板9が平坦(平板状)であるため、内板9の下端側を折曲することなく開閉扉7を作成できる。これにより、開閉扉7を製造するときに内板9を折曲する工数を不要にできる。また、内板9の折曲加工に起因するうねり(凹凸)が、開閉扉7の下端側の表面に生じることを防止でき、閉扉された開閉扉7と傾斜板12の下縁12aとに隙間が生じることを防止できる。その結果、開閉扉7と傾斜板12の下縁12aとの隙間から輸送中に積載物が漏れることを防止できる。
【0030】
なお、本実施の形態では、断面Z形の補強部材11が、開閉扉7の短手方向(図2上下方向)の略中央に配設されている。補強部材11は、ウェブが内板9から外板10に向けて開閉扉7の長手方向(図2紙面垂直方向)に沿って立設され、フランジが内板9及び外板10に接合されている。補強部材11により内板9の剛性を向上させ、開閉扉7の耐久性を向上させ、積載物の重量や開閉扉7の開閉動作が原因となる内板9(開閉扉7)の変形を抑制できる。その結果、閉扉された開閉扉7と傾斜板12とに隙間が生じることを防止でき、輸送中の積載物の漏れを長期間に亘って抑制できる。
【0031】
図3に示すように、枠体8の横枠材8aは、外板10の下端側に接合される第1フランジ8a1と、その第1フランジ8a1から内板9の下端側へ起立されるウェブ8a2と、そのウェブ8a2に垂設され内板9の下端側に接合される第2フランジ8a3とを備えて構成されている。横枠材8aは押出し加工や折曲加工等により製造することができるが、ウェブ8a2に第2フランジ8a3を垂設する加工は、ウェブ8a2に対して第2フランジ8a3を略120°や略60°の角度にする加工(図8(a)に示す従来の加工)と比較して、第2フランジ8a3の長手方向(図2紙面垂直方向)の表面にうねりを生じ難くできる。これにより、第2フランジ8a3が接合された内板9にうねりが生じることを抑制できると共に、第2フランジ8a3により内板9を補強し内板9の機械的強度を向上できる。その結果、閉扉された開閉扉7と傾斜板12とを密接させることができ、輸送中の積載物の漏れを長期間に亘って抑制できる。
【0032】
傾斜板12は、断面L形の形鋼からなる梁14によって下端部が支持されている。梁14のフランジ及び傾斜板12にボルト16が貫設され、そのボルト16が横シール保持部材15の基部に貫設されている。横シール保持部材15は、横シール部材18を傾斜板12の下面に固定するために構体3の長手方向(図2紙面垂直方向)に配設される長尺の部材である。横シール保持部材15は、ボルト16及びナット17により梁14を介して傾斜板12の下面に基部が固定されると共に、閉扉された開閉扉7の下端部に対峙するように下向きに起立して、閉扉された開閉扉7と略平行に対向するように傾斜板12から突出され、先端に掴持部15aが形成されている。
【0033】
掴持部15aは横シール部材18を開閉扉7側に向けて保持する部材であり、構体3の長手方向に延びる断面C形の長尺の部材である。掴持部15aは、横シール保持部材15と背中合わせに固定され、構体3の長手方向に延びるベース部15a1と、そのベース部15a1の長手方向に延びる両縁部から立設して、先端が内側に屈曲するフック部15a2とによって構成されている。そして、ベース部15a1と、フック部15a2とに囲まれて形成される空間に横シール部材18が掴持される。
【0034】
横シール部材18は、図3(c)に示す通り、閉扉される開閉扉7に押圧されて弾性変形することにより開閉扉7に密接される部材であり、構体3の長手方向に沿って配設される。横シール部材18は、開閉扉7の下端部に当接する当接部18bと、その当接部18bとは反対側の基部18cと、その基部18cと当接部18bとの途中であって傾斜板12の下縁に沿って延びる両側面において内側に切り欠かれた切り欠き部18dとによって構成されている。そして、横シール部材18は、掴持部15aのベース部15a1と、フック部15a2とに囲まれて形成される空間に、その基部18cが内包されつつ、切り欠き部18dに掴持部15aのフック部15a2が嵌め込まれ、掴持部15aに掴持されている。
【0035】
また、横シール部材18は、基部18cの長手方向に沿って基部18cの一部に溝部18aが切欠形成されると共に、先端側が中空状に形成されている。横シール部材18の先端側が中空状なので、横シール部材18の弾性変形量を大きくできる。また、基部18cに溝部18aが形成されているので、基部を変形させ易くすることができ、掴持部15aによる横シール部材18の保持を容易にできる。
【0036】
ここで、従来は図8(a)に示すように、断面視P形のシール部材308は、その環状部分が開閉扉303側を向けられ、その反対側にボルト307が貫設され、座金309及びナット310により傾斜板304の下面にシール部材308が固定されていた。即ち、シール部材308は、片持ち状態で固定されており、自身の劣化により、その環状部分が下方に垂れ下がり易く、これにより、シール性が低下していた。また、シール部材308と、座金309とが共締されており、シール部材308の弾性により、ナット310が緩み易く、これによっても、シール性が低下していた。そして、シール性が低下することで、輸送中に積載物が隙間から漏れるという問題が生じていた。
【0037】
また、シール部材308は、長手方向(紙面垂直方向)に沿って数多くのボルト307、ナット310で固定されていたので、シール部材308を交換する場合には、全てのボルト307,ナット310を外さなければならず、シール部材308の交換作業が手間であるという問題点があった。
【0038】
更に、ホッパ貨車301が長期間に亘って使用されてシール部材308が疲労(塑性流動)すると、応力緩和が生じ永久クリープとなって現れ、重力により下方に撓む(だれる)。そうすると、図8(b)に示すように、撓んだシール部材308が閉扉された開閉扉303と座金309との間に挟まり、開閉扉7を完全に閉じることができず、傾斜板304の下縁304aと開閉扉303とに隙間が生じていた。この場合は、輸送中に積載物が隙間から漏れるという問題が生じていた。なお、図8(b)はホッパ貨車301の一部を切断して示したシール部材308の部分断面図である。
【0039】
これに対し、本実施の形態によれば、傾斜板12から下向きに突出されると共に開閉扉7の下端部に対峙する横シール保持部材15を備え、その横シール保持部材15(掴持部15a)により横シール部材18の基部18cが保持されるので、横シール部材18が撓んだ(だれた)ときでも、撓んだ横シール部材18に妨げられることなく、開閉扉7を完全に閉じることができる。これにより、閉扉された開閉扉7と傾斜板12の下縁12aとに隙間が生じることが防止される。
【0040】
また、閉扉されたときに対向する開閉扉7と横シール保持部材15との間で横シール部材18が挟み込まれるので、横シール部材18を開閉扉7の下端部に強く押圧させることができる。その結果、横シール部材18と開閉扉7とを密接させることができ、輸送中の積載物の漏れを長期間に亘って抑制できる。更に、横シール部材18を交換する場合には、掴持部15aから横シール部材18を抜き取れば良いので、横シール部材18の交換効率を向上できる。
【0041】
次に図4を参照して、開閉扉7及び縦部材6a,6bについて説明する。図4(a)は図1のIIIa−IIIa線における構体3の断面図であり、図4(b)は図1のIIIb−IIIb線における構体3の断面図である。なお、図4(a)及び図4(b)においては、開閉扉7の長手方向(図4(a),図4(b)左右方向)の一部の図示および補強部材11(図2参照)の図示を省略している。
【0042】
図4(a)及び図4(b)に示すように、ホッパ貨車1(図1参照)は、縦部材6a,6bの外面に縦シール部材20a,20b,20cが固定されている。縦シール部材20a,20b,20cは縦部材6a,6bの上下方向に沿って、閉扉される開閉扉7の縦枠材8bに対応する位置に固定されている。縦シール部材20a,20b,20cは、閉扉される開閉扉7に押圧されて弾性変形することにより開閉扉7に密接される部材であり、本実施の形態では、中空部を有する管状に形成され開閉扉7に押圧される管状部20a1,20b1,20c1と、その管状部20a1,20b1,20c1の外周から片状に延設され長手方向(図4(a)及び図4(b)紙面垂直方向)に延びる縦片部20a2,20b2,20c2とを備えて構成されている。
【0043】
縦片部20a2,20b2,20c2は、固定部材19a,19b,19cを介して縦部材6a,6bに固定される部位である。その固定部材19a,19b,19cは縦長の板状の部材であり、縦部材6a,6bの外面に上下方向(図4(a)及び図4(b)紙面垂直方向)に沿って、閉扉されたときの開閉扉7の縦枠材8bとわずかに間隔をあけて立設されている。縦片部20a2,20b2,20c2は、固定部材19a,19b,19cの側面(開閉扉7側)にボルト等により固定されている。
【0044】
スペーサ21a,21b,21cは、閉扉された開閉扉7と縦部材6a,6bとの隙間を確保するための部材であり、所定の厚さに形成されて、縦シール部材20a,20b,20cと並設されつつ、閉扉される開閉扉7の縦枠材6a,6bに対応する位置に固定されている。
【0045】
開閉扉7が閉扉されると、開閉扉7の縦枠材8bと縦部材6a,6bとに縦シール部材20a,20b,20cの管状部20a1,20b1,20c1が押圧される。これにより、閉扉された開閉扉7と縦部材6a,6bとに隙間が生じることが防止され、輸送中の積載物の漏れを抑制できる。また、縦シール部材20a,20b,20cの管状部20a1,20b1,20c1は中空状に形成されているので、弾性変形量を十分に確保できる。
【0046】
また、縦シール部材20a,20b,20cが、縦片部20a2,20b2,20c2により、閉扉されたときの開閉扉7の縦枠材8bとわずかに間隔をあけて立設された固定部材19a,19b,19cの側面(開閉扉7側)に固定されているので、縦シール部材20a,20b,20cが疲労(塑性流動)したときのシール不良を防止できる。即ち、縦シール部材20a,20b,20cが疲労して撓んだ(だれた)としても、縦シール部材20a,20b,20cの水平方向の変形が固定部材19a,19b,19cにより規制されるので、縦シール部材20a,20b,20cが、縦部材6a,6bと開閉扉7との間に介設されなくなることを防止できる。
【0047】
また、スペーサ21a,21b,21cが開閉扉7と縦部材6a,6bとの間に介設されるので、縦シール部材20a,20b,20cが過剰に押し潰されることが防止され、縦シール部材20a,20b,20cの耐久性を確保できる。さらに、縦シール部材20a,20b,20cが縦部材6a,6bの外面に固定されているので、排出口E(図2参照)から排出される積載物と縦シール部材20a,20b,20cとが接触することを防ぎ、流動する(排出される)積載物により縦シール部材20a,20b,20cが損傷を受けることを防止できる。
【0048】
次に図5を参照して、第2実施の形態について説明する。第1実施の形態では、開閉扉7が閉扉されると、横シール部材18が開閉扉7の内板9に押圧される場合について説明した。これに対し、第2実施の形態では、開閉扉107に突設される突起部108を備え、開閉扉107が閉扉されると横シール部材18が突起部108に押圧される場合について説明する。なお、第1実施の形態と同一の部分は、同一の符号を付して説明を省略する。図5は、第2実施の形態におけるホッパ貨車の一部を切断して示した開閉扉107及び傾斜板12の部分断面図であり、(a)は開扉された状態、(b)は閉扉された状態を示す図である。
【0049】
開閉扉107は、内板9の下端部に横方向(図5紙面垂直方向)に沿って突起部108が突設されている。突起部108は、開閉扉107が閉扉されると傾斜板12の下面側に位置し、傾斜板12の下面に固定される横シール部材18を押圧する部位である。本実施の形態では、突起部108は横長の板材により形成されており、第2フランジ8a3に突設されている。突起部108の下端108aが第2フランジ8a3の下端部に固着され、上端側が撓曲され、表面108bが横シール部材18を押圧可能に形成されている。即ち、表面108bは、第2フランジ8a3の内面から下降傾斜して形成されている。このように、突起部108は、板材を撓曲させて形成されるので、開閉扉107の軽量化を図ることができる。また、板材を撓曲させることで突起部108の剛性を向上させることができる。更に、突起部108の表面108bは、第2フランジ8a3の内面から下降傾斜して形成されているので、積載物は突起部108の表面108bに沿って排出され、突起部108に積載物が載積するのが抑制される。よって、突起部108に積載された積載物が、輸送中に漏れるのを抑制できる。
【0050】
横シール保持部材115は、断面L形の形鋼により形成され、基部(ウェブ)に貫通形成された長孔状の貫通孔115cにボルト16が挿通され、ナット17により傾斜板12及び梁14に固定されて、突起部108の表面108bと対峙される。掴持部115aは横シール部材18を保持し、横シール部材18と反対側に突設された螺棒115bにより横シール保持部材115に着脱自在に固定される。掴持部115aが横シール保持部材115に着脱自在に固定されているので、疲労や破損した横シール部材18を掴持部115aと共に交換することができ、横シール部材18の交換作業性を向上できる。
【0051】
また、貫通孔115cは、傾斜板12の傾斜方向に沿って延びるように形成されている。そのため、横シール保持部材115の固定位置を、貫通孔115cの長さの範囲内で傾斜板12の傾斜方向に沿って上昇または下降させることができる。横シール部材18の基部を保持する掴持部115aは、傾斜板12と略直交する位置に配設されているので、横シール保持部材115を傾斜板12の傾斜方向に沿って上昇または下降させることにより、突起部108に対する横シール部材18の水平方向の位置は変えずに、突起部108に対する垂直方向の位置(高さ)を変えることができる。これにより突起部108に対する横シール部材18の押し込み量(押圧強さ)を調整できる。
【0052】
また、開閉扉7が閉扉されると突起部108により横シール部材18が押圧されるので、横シール部材18の長手方向(図5(a)紙面垂直方向)に延びる縁部を、突起部108の内板9からの突起量の分だけ、開閉扉7から遠ざかるように傾斜板12の下縁12aから後退させておくことができる。そのため、開閉扉7が開扉されて排出口E(図2参照)が形成されたときに、排出口Eから排出される積載物を横シール部材18に衝突し難くできる。これにより、排出される積載物によって横シール部材18が損傷を受けることを防止でき、横シール部材18の耐久性を確保し、輸送中の積載物の漏れを長期間に亘って抑制できる。
【0053】
次に図6を参照して、第3実施の形態について説明する。第2実施の形態では、突起部108が板材を撓曲して形成される場合について説明した。これに対し第3実施の形態では、突起部208が角柱状の部材により形成される場合について説明する。なお、第1実施の形態と同一の部分は、同一の符号を付して説明を省略する。図6は第3実施の形態におけるホッパ貨車の一部を切断して示した開閉扉207及び傾斜板12の部分断面図であり、(a)は開扉された状態、(b)は閉扉された状態を示す図である。
【0054】
開閉扉207は、枠体8の第2フランジ8a3の下端部に横方向(図6紙面垂直方向)に沿って長尺の三角柱状に形成された突起部208が突設されている。突起部208は、開閉扉207の上部208cから下部(図6下方向)に向かって厚さが漸次増加するように構成されており、上部208cの厚さは、内板9の厚さと略同一に形成されている。内板9は、下端部を突起部208の上部208cに当接させて第2フランジ8a3に密着されており、内板9と突起部208とが連なるように設けられている。これにより、開閉扉207が開扉されて積載物が排出口E(図1参照)から排出されるときに、積載物の一部が突起部208に積もったまま、排出されずに残ってしまうという問題を回避できる。
【0055】
横シール保持部材215は、ボルト16及びナット17によりフランジ14aを介して傾斜板12の下面に基部が固定されると共に、閉扉された開閉扉207の突起部208に対峙するように垂設され下向きに起立され、閉扉された開閉扉207の突起部208の表面208bと略平行に対向するように傾斜板12から突出され、先端に掴持部15aが形成されている。ボルト16は、横シール保持部材215の基部に形成された長孔状の貫通孔215cに貫装されている。これにより突起部208に対する横シール部材18の垂直方向の位置(高さ)を変えることができ、突起部208に対する横シール部材18の押し込み量(押圧強さ)を調整できる。
【0056】
次に図7を参照して、第4実施の形態について説明する。第1実施の形態では、縦部材6a,6bの外面に立設される固定部材19a,19b,19cに縦シール部材20a,20b,20cが固定される場合について説明した。これに対し第4実施の形態では、縦シール部材220a,220b,220cが縦部材6a,6bに直接固定される場合について説明する。なお、第1実施の形態と同一の部分は、同じ符号を付して説明を省略する。図7(a)は第4実施の形態におけるホッパ貨車の一部を切断して示した構体3(図1参照)の端部の部分断面図であり、図7(b)は第4実施の形態におけるホッパ貨車の一部を切断して示した構体3の中央部の部分断面図である。
【0057】
図7(a)及び図7(b)に示すように、縦シール部材220a,220b,220cは、管状の中空部が形成される管状部220a1,220b1,220c1と、その管状部220a1,220b1,220c1の外周の両側に片状に延設され長手方向(図7(a)及び図7(b)紙面垂直方向)に延びる縦片部220a2,220b2,220c2とを備えて構成されており、縦片部220a2,220b2,220c2は縦部材6a,6bの外面にボルト等により直接固定されている。これにより、第1実施の形態で説明した固定部材19a,19b,19c(図4参照)を省略することができ、部品点数を削減できる。
【0058】
スペーサ210a,210b,210cは、閉扉された開閉扉7と縦部材6a,6bとの隙間を確保するための部材であり、縦片部220a2,220b2,220c2を固定するボルト等の突出高さより少し厚く形成され、閉扉される開閉扉7と対応する縦枠材6a,6bに固定されている。開閉扉7が閉扉されるとスペーサ210a,210b,210cが内板9に当接するので、縦シール部材220a,220b,220cが過剰に押し潰されることを防止できると共に、開閉扉7の内板9がボルト等により損傷することが防止される。
【0059】
また、管状部220a1,220b1,220c1が、両側に延設された縦片部220a2,220b2,220c2で縦枠材6a,6bに固定されるので、疲労(塑性流動)したときでも縦シール部材220a,220b,220cは下方に撓む(だれる)ことができない。これにより、開閉扉7が閉扉されると縦シール部材220a,220b,220cは開閉扉7と縦枠材6a,6bとの間に介設されるので、シール不良を防止できる。
【0060】
以上、実施の形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。例えば、上記実施の形態で挙げた数値(例えば縦部材6a,6bや開閉扉7の数や長さ)は一例であり、他の数値を採用することは当然可能である。
【0061】
上記実施の形態では、妻板5が鉛直に配設されるホッパ貨車1に適用する場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、妻板5を内側に向けて上向きに傾斜させて配設したホッパ貨車1に適用することは可能である。
【0062】
上記実施の形態では、枠体8の横枠材8aが断面Z形の部材により構成され、縦枠材8bが断面C形の部材により構成される場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、他の部材を用いて枠体8の剛性を確保することは当然可能である。他の部材としては、例えば、横枠材8aに用いる断面C形、断面H形の部材や、縦枠材8bに用いる断面H形の部材等が挙げられる。
【0063】
上記実施の形態では、補強部材11が断面Z形の板材により構成され、ウェブが内板9から外板10に向けて開閉扉7の長手方向に沿って立設され、フランジが内板9及び外板10に接合されている場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、他の補強部材を採用することは当然可能である。他の補強部材としては、例えば内板9と外板10との間に配設されるリブを挙げることができる。リブは内板9に立設され、開閉扉7の長手方向(左右方向)または短手方向(上下方向)に延設されるものが用いられる。内板9にリブを立設することで、内板9の剛性を向上させ、内板9の変形を抑制できる。
【0064】
上記実施の形態では、横シール部材18や縦シール部材20a,20b,20c,220a,220b,220cが中空状の弾性部材により構成される場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、弾性部材の弾性係数を適宜設定することにより、中実状の横シール部材18や縦シール部材20a,20b,20c,220a,220b,220cを採用することは当然可能である。
【0065】
上記実施の形態では、スペーサ21a,21b,21cが縦部材6a,6bに固定される場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、開閉扉7側に設けることは可能である。この場合も、開閉扉7の閉扉により縦シール部材20a,20b,20c,220a,220b,220cが過剰に押し潰されることを抑制し、耐久性を確保できる。
【0066】
上記実施の形態では、掴持部15aを断面視コの字状に形成し、横シール部材18を掴持する場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、掴持部15aを断面視T字状に形成しても良い。この場合は、横シール部材18の基部18cに、断面視T字状の溝を設け、掴持部15aをT字状の溝に圧入して、横シール部材18を掴持するようにしても良い。
【0067】
上記実施の形態では、横シール保持部材15,115,215を、ボルト16及びナット17によりフランジ14aを介して傾斜板12の下面に固定する場合について説明した。より具体的には、ボルト16は、キー付の皿ボルトを使用したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、ボルト16に代えて植込みボルト、ナット17に代えてハードロックナットにより横シール保持部材15,115,215を、フランジ14aを介して傾斜板12の下面に固定しても良い。この場合、ボルト16及びナット17よりも強固に横シール保持部材15,115,215を固定できる。よって、横シール保持部材15,115,215がずれ、シール性が低下するのを防止できる。
【0068】
以下に、本発明のホッパ貨車および変形例を示す。側板の下方に位置し、その上方が前記側板に回動可能に取着される開閉扉と、その開閉扉が閉扉されると下縁に当接され、その下縁に向けて下降傾斜する底板である傾斜板とを備え、前記開閉扉が閉扉された状態で前記開閉扉と前記傾斜板とに囲まれた空間に積載物を収容し、前記開閉扉が開扉されると形成される排出口から前記積載物を排出するホッパ貨車において、前記傾斜板の下面において前記傾斜板の下縁に沿って延び、前記開閉扉が閉扉されると前記開閉扉の下端部に押圧される横シール部材と、前記傾斜板の下面から突出されると共に前記開閉扉の下端部に対峙し、前記横シール部材の基部を保持する横シール保持部材とを備えていることを特徴とするホッパ貨車A。
【0069】
ホッパ貨車Aによれば、側板に回動可能に取着される開閉扉が閉扉されると、開閉扉は、傾斜板の下縁に当接されると共に横シール部材を押圧する。開閉扉が開扉されると積載物の排出口が形成され、積載物は傾斜板の傾斜に沿って排出口から排出される。ここで、横シール保持部材は、傾斜板から下向きに突出されると共に開閉扉の下端部に対峙する横シール保持部材に、その基部が保持される。これにより、閉扉されたときに、開閉扉と横シール保持部材との間で横シール部材を挟み込むことができ、横シール部材を開閉扉の下端部に強く押圧させることができる。よって、シール性が向上し、輸送中の積載物の漏れを抑制できる効果がある。
【0070】
ホッパ貨車Aにおいて、前記横シール部材は、前記開閉扉の下端部に当接する当接部と、その当接部とは反対側の基部と、その基部と前記当接部との途中であって前記傾斜板の下縁に沿って延びる両側面において内側に切り欠かれた切り欠き部とを備え、前記横シール保持部材は、前記当接部を前記開閉扉側に向けた状態で、前記基部を内包しつつ前記切欠き部と嵌合して前記横シール部材を掴持する掴持部を備えていることを特徴とするホッパ貨車B。
【0071】
ホッパ貨車Bによれば、横シール部材は、当接部を開閉扉側に向けた状態で、掴持部によって、基部が内包されつつ切欠き部と嵌合され、保持されている。よって、ホッパ貨車Aの効果に加え、横シール部材がだれるのが抑制され、一層、シール性を向上できる。また、横シール部材を交換する場合には、掴持部から横シール部材を抜き取れば良いので、横シール部材の交換効率を向上できる効果がある。
【0072】
ホッパ貨車A又はBにおいて、前記開閉扉の下端側に横方向に沿って突設され、前記開閉扉が閉扉されると、前記傾斜板の下面側に位置すると共に前記横シール部材を押圧する突起部を備えていることを特徴とするホッパ貨車C。
【0073】
ホッパ貨車Cによれば、開閉扉が閉扉されると、開閉扉の下端側に横方向に沿って突設される突起部により横シール部材が押圧される。これにより、横シール部材の長手方向に延びる縁部を、突起部の突起量の分だけ、開閉扉から遠ざかるように傾斜板の下縁から後退させておくことができる。そのため、開閉扉が開扉されたときに、排出口から排出される積載物が横シール部材に衝突することを防止でき、排出される積載物によって横シール部材が損傷を受けることを防止できる。その結果、ホッパ貨車A又はBの効果に加え、横シール部材の耐久性を向上させ、輸送中の積載物の漏れを長期間に亘って抑制できる効果がある。
【0074】
ホッパ貨車Cにおいて、前記突起部は、前記傾斜板側の面が前記開閉扉の下端部の内面から下降傾斜して構成されていることを特徴とするホッパ貨車D。
【0075】
ホッパ貨車Dによれば、傾斜板側の面が開閉扉の下端部の内面から下降傾斜して構成されているので、積載物は突起部の下降傾斜した面に沿って排出され、突起部に積載物が載積するのが抑制される。よって、ホッパ貨車Cの効果に加え、突起部に積載された積載物が、輸送中に漏れるのを抑制できる効果がある。
【0076】
ホッパ貨車AからDのいずかにおいて、前記横シール保持部材は、前記傾斜板に沿って少なくとも2箇所以上の位置に固定可能に構成されていることを特徴とするホッパ貨車E。
【0077】
ホッパ貨車Eによれば、前記横シール保持部材は、前記傾斜板に沿って少なくとも2箇所以上の位置に固定可能に構成されているので、前記開閉扉に対する前記横シール部材の位置を調節できる。よって、開閉扉によって横シール部材を押圧する押圧力を調節できる。従って、ホッパ貨車AからDの効果に加え、一層、シール性を向上でき、輸送中の積載物の漏れを抑制できる効果がある。
【0078】
ホッパ貨車AからEのいずれかにおいて、前記開閉扉は、縦方向および横方向に配設される縦枠材および横枠材を備える枠体と、その枠体の一面側に接合されると共に前記傾斜板を臨む平坦な内板と、その内板と対向しつつ前記枠体の他面側に接合される外板とを備えていることを特徴とするホッパ貨車F。
【0079】
ホッパ貨車Fによれば、開閉扉は縦方向および横方向に配設される縦枠材および横枠材を有する枠体と、その枠体の一面側に接合されると共に傾斜板を臨む平坦な内板とを備えている。そのため、内板の下端側を折曲することなく開閉扉を作成できる。これにより、請求項1から5の効果に加え、開閉扉の下端側の表面にうねりが生じることを防止でき、閉扉された開閉扉と傾斜板の下縁とに隙間が生じることを防止できる。また、内板の下端側の表面にうねりが生じることを防止できると、横シール部材が閉扉された開閉扉に密接するので、開閉扉と横シール部材とに隙間が生じることも防止できる。これらの結果、輸送中の積載物の漏れを抑制できる効果がある。
【0080】
ホッパ貨車Fにおいて、前記横枠材は、前記外板の下端側に接合される第1フランジと、その第1フランジから前記内板の下端側へ起立されるウェブと、そのウェブに垂設され前記内板の下端側に接合される第2フランジとを備えていることを特徴とするホッパ貨車G。
【0081】
ホッパ貨車Gによれば、横枠材は、外板の下端側に接合される第1フランジと、その第1フランジから内板の下端側へ起立されるウェブと、そのウェブに垂設され内板の下端側に接合される第2フランジとを備えている。ウェブに第2フランジを垂設する場合は、ウェブに対して略120°や略60°の角度で第2フランジを設ける場合と比較して、第2フランジの長手方向の表面にうねりを生じ難くできる。これにより、請求項6の効果に加え、第2フランジが接合された内板にうねりが生じることを抑制できると共に、第2フランジにより内板を補強できる。その結果、ホッパ貨車Fの効果に加え、内板の機械的強度を向上させ、輸送中の積載物の漏れを長期間に亘って抑制できる効果がある。
【符号の説明】
【0082】
1 ホッパ貨車
2 側板
6a,6b 縦部材
7,107,207 開閉扉
8 枠体
8a 横枠材
8a1 第1フランジ
8a2 ウェブ
8a3 第2フランジ
8b 縦枠材
9 内板
10 外板
11 補強部材
12 傾斜板
12a 下縁
15,215 横シール保持部材
15a 掴持部(横シール保持部材の一部)
18 横シール部材
18b 横シール部材の当接部
18c 横シール部材の基部
18d 横シール部材の切り欠き部
20a,20b,20c,220a,220b,220c 縦シール部材
108,208 突起部
108b 突起部の表面
E 排出口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
側板に回動可能に取着されると共に前記側板の下部に位置し、開扉されると積載物の排出口を形成する開閉扉と、
その開閉扉が閉扉されると下縁に当接されると共に、その下縁に向けて下降傾斜する傾斜板と、
その傾斜板の下縁に沿って前記傾斜板の下面に固定されると共に、前記開閉扉が閉扉されると前記開閉扉に押圧される横シール部材とを備え、
前記開閉扉は、
縦方向および横方向に配設される縦枠材および横枠材を備える枠体と、
その枠体の一面側に接合されると共に前記傾斜板を臨む平坦な内板と、
その内板と対向しつつ前記枠体の他面側に接合される外板とを備えていることを特徴とするホッパ貨車。
【請求項2】
前記開閉扉の下端側に横方向に沿って突設され、閉扉されると、前記傾斜板の下面側に位置すると共に前記横シール部材を押圧する突起部を備えていることを特徴とする請求項1記載のホッパ貨車。
【請求項3】
前記横枠材は、前記外板の下端側に接合される第1フランジと、その第1フランジから前記内板の下端側へ起立されるウェブと、そのウェブに垂設され前記内板の下端側に接合される第2フランジとを備えていることを特徴とする請求項1又は2に記載のホッパ貨車。
【請求項4】
前記傾斜板から下向きに突出されると共に前記開閉扉の下端部に対峙する横シール保持部材を備え、
その横シール保持部材は、前記横シール部材の基部を保持していることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のホッパ貨車。
【請求項5】
互いに所定の間隔をあけて前記側板の下方に配設されると共に、前記開閉扉が閉扉されると前記縦枠材に面する縦部材と、
その縦部材の外面に固定されると共に、前記開閉扉が閉扉されると前記開閉扉に押圧される縦シール部材とを備えていることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のホッパ貨車。
【請求項6】
前記開閉扉は、前記内板から前記外板に向けて前記縦枠材および前記横枠材の間に立設される補強部材を備えていることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載のホッパ貨車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−79065(P2013−79065A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−207624(P2012−207624)
【出願日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【出願人】(000004617)日本車輌製造株式会社 (722)