説明

ホモアリルアルコール誘導体の製造方法

【課題】温和な条件でホモアリルアルコールを高収率で得ることのできる製造方法を提供する。
【解決手段】反応基質としてアルデヒドとアリルシランを用い、MCM−41をAl置換して得られるAl−MCM−41を固体触媒として用いると、穏和な条件下、短時間で対応するホモアリルアルコール誘導体のシリルエーテル体が高収率で得られ、シリルエーテル体から対応するホモアリルアルコール誘導体が簡便に得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、規則性メソポーラスシリカであるAl−MCM−41を固体酸触媒として用いて、アルデヒド化合物とアリルシラン化合物とからホモアリルアルコール誘導体を合成する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ホモアリルアルコール誘導体は、分子内に二重結合とヒドロキシ基をもち、それぞれを官能基変換することにより、多種多様な有機化合物に変換できるので、有機合成化学の分野で極めて有用な化合物である。例えば、二重結合をオゾン分解すればβ−ヒドロキシカルボニル化合物すなわちアルドールへと容易に変換することができる。また、二重結合のジヒドロキシル化やエポキシ化により、ポリヒドロキシ化合物への変換も容易である。
ホモアリルアルコール誘導体は、一般にグリニャール試薬やアリルリチウムなどのアリル金属試薬を、アルデヒドやケトンに作用させて合成する。一方、より反応性の小さなアリルシランでは、TiCl、SnCl、BF・OEt、AlClといった強力なルイス酸を用いて、アルデヒドやケトンとの反応を行うことにより、ホモアリルアルコール誘導体が得られる(桜井−細見反応)。しかし、報告されている例のほとんどは均一系触媒反応であり、触媒の回収再利用は困難である。
一方、有機溶剤に不溶の固体触媒を用いた不均一系での有機反応では、反応終了後にろ過のみで触媒と生成物を分離することができるため、触媒の回収・再利用が容易である。そのため近年、グリーン・ケミストリーの観点から固体触媒は注目を集めており、活発な研究が行われている。
このような反応の例として、不均一系固体酸触媒としてモンモリロナイトを用いて、アセタールやアルデヒドからホモアリルアルコールを合成する例などが報告されている(特許文献1)。また、Alを導入したAl−MCM−41(Mobil's Composition of Matter structure 41)を穏和な液相反応の触媒として用いて、アルデヒドやケトンをシアノシリル化する合成例が報告されている(特許文献2)。
【0003】
【非特許文献1】Chemistry Letters, 381-384, 1986
【非特許文献2】Chem. Commun., 2008, 1002-1004
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来、アリルシランと不均一系固体触媒を用いたホモアリルアルコール誘導体の合成に採用されてきた反応系については、反応条件の最適化、基質適用範囲についての検討などが必ずしも十分行われておらず、収率などに改善するべき課題があった。
そのため、本願発明は、ホモアリルアルコール誘導体の合成を、温和な条件で、高収率で得ることのできる製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、ホモアリルアルコール誘導体を合成するためにAl−MCM−41を固体触媒として用いた場合、アルデヒドとアリルシランを反応基質にした時に特異的に反応が進行し、穏和な条件下、短時間で対応するホモアリルアルコール誘導体のシリルエーテルが高収率で得られることを見いだし、本発明を完成させるに至った。
【0006】
すなわち、本発明は、固体酸触媒Al−MCM−41の存在下で、下式
CHO
(式中、Rは、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、アリール基またはアラルキル基を表す。)で表されるアルデヒド化合物と下式
CR=CR−CR−SiR
(式中、R、R及びRは、それぞれ同じであっても異なってもよく、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、アリール基またはアラルキル基を表し、Rは、それぞれ同一であっても異なってもよく、アルキル基を表す。)で表されるアリルシラン化合物とを反応させることから成る下式
CH(OH)−CR−CR=CR
(式中、R〜Rは、上記と同様に定義される。)で表わされるホモアリルアルコール誘導体の製造方法である。
【発明の効果】
【0007】
本発明の方法は、簡素な工程のみで、シリルエーテル体を経由して、ほぼ純粋なホモアリルアルコール誘導体を高収率で得ることができる。本発明の方法において、反応基質として、アルデヒドに代えて、アセタールやケトンを用いてもホモアリルアルコール誘導体が得られない(比較例1,2)。本発明の方法は、反応基質としてアルデヒドとアリルシランを用いるため、特異的にホモアリルアルコール誘導体を生成することができる。そのため収率が高い。
また、本発明の方法においては、触媒は回収し乾燥することにより、活性が低下することなく再利用することができる。また、通常の合成反応では一般に反応終了後水を用いて有機層を洗浄したり、副生成物を除去するが、本発明の方法では全く水を利用する必要がなく、用いた有機溶剤の回収も容易である。触媒が回収、再利用可能である点、水を用いる必要がない点は、資源の循環、排水汚染の防止の観点から、環境調和型の反応として有用である。
また、一般に分子内に複数の官能基をもつ化合物を合成中間体として利用する際は反応に関与しない官能基を保護する必要がある。本発明の方法では、中間体としてヒドロキシ基がシリルエーテル体となったホモアリルシリルエーテル化合物が得られる。このホモアリルシリルエーテル体は有機合成化学の分野で有用な化合物である。従来、ホモアリルシリルエーテル体は、ホモアリルアルコール誘導体を合成して単離したのち、ヒドロキシ基をシリル化して得ていたが、本発明の方法を用いればホモアリルシリルエーテル体を1工程かつ高収率・高純度で得ることができる。
また、本発明のシリルエーテル体の合成においては、反応前の2つの分子に含まれる元素がすべて生成物に含まれている、原子効率100%の反応であり、グリーン度の高い反応である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
MCM−41(Mobil's Composition of Matter structure 41)は、1992年にモービル社のKresgeらによって報告された規則性メソポーラス物質であり、(1)1000m/g以上の表面積、(2)均一な規則性細孔、(3)細孔径を2〜10nmの範囲で制御可能という特徴を有する(Nature, 359, 710 (1992)、J. Am. Chem. Soc.,114, 10834 (1992))。MCM−41に代表される規則性メソポーラス物質は、細孔径が1nm程度であるゼオライトよりも大きな細孔径を有することから、サイズの大きい有機分子を用いた反応の触媒として期待されている。MCM−41は、明確な酸点を持たないものの、高度な酸特性を有しており、これを固体酸触媒として用いた有機反応が報告されている。
【0009】
本発明で用いる触媒は、このMCM−41にAlを導入したAl−MCM−41である(Micropor. Mater., 2, 17 (1993))。MCM−41は、シリコンアルコキシド、コロイダルシリカ、ケイ酸ソーダ等のシリカ源がセチルトリメチルアンモニウムイオン(CTMA)等の界面活性剤の水溶液中で加熱された後、焼成されることにより界面活性剤が除去されて合成される。このとき、水溶液中の界面活性剤の濃度が臨界ミセル濃度(cmc)より高いある濃度に達すると、界面活性剤はヘキサゴナル構造の液晶を形成する。そして、この液晶を鋳型としてMCM−41が合成されると推定される。細孔の内径は2〜10nmであり、用いる界面活性剤によって異なる。CTMAの場合は3nmである。合成ゲル中にシリカ源の他にアルミニウムアルコキシド等のアルミナ源を適量加えておくと、骨格にアルミを含むAl−MCM−41が合成される。仕込むアルミナ源の量によって、生成するAl−MCM−41のSi/Al比を調節することができる。
【0010】
本発明の反応において、Al−MCM−41のSi/Alの比が重要であり、Si/Alが好ましくは25〜30のときに高収率で目的物が得られる。この比が、この範囲より小さいとアルミが骨格から遊離し、純粋なAl−MCM−41が得られず、大きいと十分な固体酸触媒活性が得られない。
本発明に於て、Si/Al比(原子比)は、誘導結合プラズマ原子発光分析(ICP-AES)により定量する。測定により得られるAlの重さ(mg/L)からSiのモル数と金属のモル数を計算し、Si/Alを算出する。
通常は、処理時間や温度などの条件に対するSi/Al比について予め検量線を作成しておき、その条件を管理することにより所望のSi/Al比のシリケートを得ることができる。
【0011】
本発明の一方の反応基質は下式で表わされるアルデヒド化合物である。
CHO
ここで、Rとしては特に制限はないが、Rは、例えば、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、アリール基またはアラルキル基、好ましくは、置換基を有していてもよいアルキル基、アリール基またはアラルキル基を表す。
このアルキル基としては、シクロアルキル基を含む。このアルキル基の炭素数は好ましくは3〜10であり、直鎖又は分岐を問わない。
アリール基としては、フェニル基、α又はβ−ナフチル基が好ましい。
アラルキル基としては、側鎖として上記アルキル基を持つ上記アリール基の側鎖から1個の水素原子が失われた構造のものであり、具体的にはベンジル基、フェネチル基等が好ましい。
また、置換基としては、ハロゲン原子、炭素数が1〜4の短鎖アルキル基、ニトロ基、アルコキシ基等が挙げられる。
【0012】
本発明のもう一方の反応基質は下式で表わされるアリルシラン化合物である。
CR=CR−CR−SiR
ここでR、R及びRは、それぞれ同じであっても異なってもよく、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、アリール基またはアラルキル基を表す。
このアルキル基としては、シクロアルキル基を含む。このアルキル基の炭素数は好ましくは1〜10であり、直鎖又は分岐を問わない。
アリール基としては、フェニル基、α又はβ−ナフチル基が好ましい。
アラルキル基としては、側鎖として上記アルキル基を持つ上記アリール基の側鎖から1個の水素原子が失われた構造のものであり、具体的にはベンジル基、フェネチル基等が好ましい。
また、置換基としては、ハロゲン原子、アルコキシ基が挙げられる。
とRのうち少なくとも2つ又は全てが水素原子であることが好ましい。
は、それぞれ同一であっても異なってもよく、アルキル基を表す。このアルキル基としては、炭素数が1〜4の直鎖アルキル基が好ましい。
【0013】
本発明の反応は下式で示す2段階から成る。
【化1】

【0014】
以下各反応について説明する。
(1)アルデヒドからシリル化化合物へ、
アルデヒドとアリルシランとの反応は、不活性ガス雰囲気中、ジクロロメタン、トルエンあるいはニトロメタンなどを溶媒として、アルデヒド1当量に対して好ましくは1〜2当量、より好ましくは1.2〜1.5当量のアリルシランを、また1mmolのアルデヒドに対して好ましくは10〜200mg、より好ましくは15〜50mgのAl−MCM−41を用い、好ましくは10〜40℃、より好ましくは15〜30℃の温度で、好ましくは0.5〜3時間反応させる。アルデヒドの濃度は、好ましくは0.01〜5mol/l、より好ましくは0.3〜1mol/lで行う。
【0015】
(2)シリル化化合物からホモアリルアルコール誘導体へ
この反応は極めて一般的であり、通常用いられている方法のいずれを用いてもよい。いずれの方法を用いても、簡便に80%以上の収率でアルコールに変換することができる。例えば、一般的にトリメチルシリルエーテルはメタノール中各種プロトン酸(クエン酸を用いた場合0℃、10分間)(Tetrahedron Lett., 19, 41 (1978))、メタノール中炭酸カリウム(0℃、45分間)(Can. J. Chem., 43, 2004 (1965))、THF中フッ化テトラブチルアンモニウム(0℃、10分間)(J. Am. Chem. Soc., 94, 2549 (1972))により、ほぼ100%でアルコールに変換される。また、tert-ブチルジメチルシリルエーテルは、通常THF中フッ化テトラブチルアンモニウム(25℃、1時間)(J. Am. Chem. Soc., 94, 6190 (1972))、水−THF中酢酸(室温、15?20時間)(Tetrahedron Lett., 29, 6331 (1988))で収率80%程度以上でアルコールに変換される。メタノール中プロトン酸として塩酸を用いる方法の一例を実施例12に示す。
【0016】
このような反応の結果、下式で表わされるホモアリルアルコール誘導体が生成する。
CH(OH)−CR−CR=CR
(式中、R〜Rは、上記と同様に定義される。)
【0017】
このホモアリルアルコール誘導体は、医薬品や農薬、香料その他の化成品の合成原料や合成中間体として有用である。例えば、(3R,4S)-6-tert-ブチルジメチルシロキシ-3-メチル-1-ヘキセン-4-オールは、免疫抑制剤の一種ラパマイシンの合成中間体、(4R,6S)-1-ヘプテン-4,6-ジオールは制がん剤の一種スウィンホリドAの合成中間体、(4S,5R)-1-エトキシ-1-ヘプチン-6-エン-4-オールは鎮痛剤の一種レシニフェラトキシンの合成中間体、(S)-2-メチル-1-(2-メチル-1,3-チアゾリン-4-イル)-1,5-ヘキサジエン-3-オールは制がん剤の一種エポチロンAの合成中間体となる。
【実施例】
【0018】
以下、実施例にて本発明を例証するが本発明を限定することを意図するものではない。
製造例1
本製造例では、Al−MCM−41を合成した(仕込みSi/Al=34)。
蒸留水75.7 gを50℃に加熱した後、この蒸留水を撹拌しながら界面活性剤としてのセチルトリメチルアンモニウムブロミド(CTMA+Br-;東京化成工業製)25.16 g(69.0 mmol)を少しずつ加えて溶液を調製した。ここで、この溶液を溶液Aとする。また、蒸留水60 gに濃硫酸1.8 gを加えて希硫酸を調製し、水ガラス3号(小宗化学薬品製)28.1 g(SiO2 28-30wt%, Na2O 9-10%含有;SiO2として135 mmol)を撹拌しつつ希硫酸を加えて溶液を調製した後、この溶液を5分間撹拌した。ここで、この溶液を溶液Bとする。さらに、硫酸アルミニウム0.68 g(1.98 mmol)を蒸留水(30.1 g)に溶かし、溶液Cとする。
次いで、溶液Bを撹拌しながら少しずつ溶液Aに加えて溶液を調製した後、さらに溶液Cも加える。この溶液を15分間撹拌した。続いて、溶液に蒸留水30 gを徐々に加えた後、1 Mの硫酸を用いて溶液のpHを10.01に調整した。そして、この溶液を250 mlのポリプロピレン(PP)製容器に移した後に容器を100℃の恒温室内に入れ、20分後にエアー抜きを行った。
続いて、恒温室に入れてから8日後に容器を恒温室から取出して室温にて放冷し、さらに吸引濾過して白色固体を得た。この白色固体を50℃の蒸留水300 mlに懸濁させた後に吸引濾過し、この操作を5回繰返した後に白色固体を乾燥し、界面活性剤/シリカ複合体である(CTMA+)-[Al]-MCM-41(12.5 g)を合成した。
この複合体(CTMA+)-[Al]-MCM-41(11.04 g)をアルミナ製のシャーレに入れ、シャーレをマッフル炉内に配置した後、室温から130℃まで50分かけて昇温し、この温度に5時間保った。さらに5時間かけて550℃まで昇温、10時間保持して焼成し、これにより界面活性剤を取除いて(Na+, H+)-[Al]-MCM-41(6.08 g)を合成した。
残存するNa+を除去するために、アンモニウムイオン交換を行った。(Na+,H+)-MCM-41サンプル5.50 gに対して、硝酸アンモニウム11.0 g、蒸留水550 gを加え、80℃の恒温槽に24時間静置した。ろ過後、この操作をもう一度繰り返し、NH4+-[Al]-MCM-41を得た。
この複合体(NH4+)-[Al]-MCM-41をアルミナ製のシャーレに入れ、シャーレをマッフル炉内に配置した後、室温から130℃まで50分かけて昇温し、この温度に5時間保った。さらに5時間かけて550℃まで昇温、10時間保持して焼成(すなわち脱アンモニア処理)を行い、H+-[Al]-MCM-41(4.79 g)を合成した。
生成物をICP-AES(島津製作所製ICP-8000E、以下同様)を用いて定量した結果、生成物のSi/Alは40であった。
粉末X線解析装置(MAC Science社製 MX-Labo粉末X線解析装置)を用いた生成物のX線回折分析結果を下表に示す(以下同様)。
【表1】

【0019】
製造例2
本製造例では、別法で、Al−MCM−41を合成した(仕込みSi/Al=30)。
1000 ml PP容器に有機テンプレートである界面活性剤CTMA+Br- 8.75 g(24.0 mmol)をはかりとった。三角フラスコに蒸留水(449 g)をはかりとり,そのうち約350 gを上記のCTMA+Br-粉末に加えて懸濁させ、50℃で撹拌した。この懸濁液にさらにテトラメチアンモニウムヒドロキシド(TMAOH;アルドリッチ社製)26.25 g,(72.0 mmol)を加え、蒸留水で洗い込んだ。撹拌が止まらないように注意しながらAl(OPr-i)3 1.36 g(6.67 mmol)を加え、次いでTEOS 41.66 g, 200 mmol)をゆっくり加え、蒸留水で洗い込んだ。この混合液を35oCで4時間撹拌した。PP容器の口にフッ素樹脂製テープを巻いた後ふたをし、100℃のオーブンに入れた。30分後にガス抜きを行った。4日後オーブンから取り出し、ふたをゆるめ放冷した。ろ過後、蒸留水で十分に洗浄し、17.8 g の(CTMA+)-[Al]-MCM-41を合成した。
この複合体(CTMA+)-[Al]-MCM-41 17.0 gをアルミナ製のシャーレに入れ、シャーレをマッフル炉内に配置した後、室温から130℃まで50分かけて昇温し、この温度に5時間保った。さらに5時間かけて550℃まで昇温、10時間保持して焼成(すなわち脱アンモニア処理)を行い、H+-[Al]-MCM-41を10.17g合成した。
生成物のSi/Alは26であった。生成物のX線回折分析結果を下表に示す。
【表2】

【0020】
製造例3
本製造例では、別法で、Al−MCM−41を合成した(仕込みSi/Al=20)。
1000 ml PP容器に有機テンプレートである界面活性剤CTMA+Br- 8.82 g(24.2 mmol)をはかりとった。三角フラスコに蒸留水(450 g)をはかりとり,そのうち約350 gを上記のCTMA+Br-粉末に加えて懸濁させ、50℃で撹拌した。この懸濁液にさらにTMAOH 26.07 g,(71.5 mmol)を加え、蒸留水で洗い込んだ。撹拌が止まらないように注意しながらAl(OPr-i)3 2.04 g(10.0 mmol)を加え、次いでTEOS 41.67 g, 200 mmol)をゆっくり加え、蒸留水で洗い込んだ。この混合液を35oCで4時間撹拌した。PP容器の口にフッ素樹脂製テープを巻いた後ふたをし、100℃のオーブンに入れた。30分後にガス抜きを行った。4日後オーブンから取り出し、ふたをゆるめ放冷した。ろ過後、蒸留水で十分に洗浄し、17.13 g の(CTMA+)-[Al]-MCM-41を合成した。
この複合体(CTMA+)-[Al]-MCM-41 12.07 gをアルミナ製のシャーレに入れ、シャーレをマッフル炉内に配置した後、室温から130℃まで50分かけて昇温し、この温度に5時間保った。さらに5時間かけて550℃まで昇温、10時間保持して焼成(すなわち脱アンモニア処理)を行い、H+-[Al]-MCM-41を7.25g合成した。
生成物のSi/Alは18であった。生成物のX線回折分析結果を下表に示す。
【表3】

【0021】
実施例1
この実施例では、ベンズアルデヒドからトリメチル(1-フェニルブタ-3-エニルオキシ)シランを合成した。反応式を下記に示す。
【化2】

アルゴン雰囲気下、30 mL二口ナスフラスコに、製造例2で製造したAl-MCM-41(30 mg)を入れたのち、減圧下120℃で1時間乾燥させた。アルゴンガスを吹き入れて常圧に戻したのち、30℃でベンズアルデヒド(化合物1、和光純薬工業)(106 mg, 1.0 mmol)のジクロロメタン溶液(1.5 mL)とアリルトリメチルシラン(171 mg, 1.5 mmol)のジクロロメタン溶液(0.5 mL)を加え、1時間攪拌した。ろ紙(東洋定性ろ紙No. 1)を用いてAl-MCM-41を取り除くとともに、ジクロロメタン(20 mL)で洗浄した。ろ液を減圧下溶媒留去し、油状物質(化合物2a、トリメチル(1-フェニルブタ-3-エニルオキシ)シラン)(203 mg, 92%)を得た。生成物の分析データを以下に示す。
IR(堀場製作所製HORIBA FT-730、以下同様)(neat): νmax 2957, 1641, 1493, 1454, 1252, 1089, 840 cm-1; 1H NMR (日本電子製 JEOL EX-270、以下同様)(270 MHz, CDCl3): δ (ppm) 7.20-7.35 (m, 5H), 5.69-5.85 (m, 1H), 4.99-5.07 (m, 2H), 4.66 (dd, J = 7.6, 5.3 Hz, 1H), 2.34-2.54 (m, 2H), 0.04 (s, 9H); 13C NMR (日本電子製 JEOL EX-270、以下同様)(67.8 MHz, CDCl3): δ (ppm) 144.7, 135.2, 128.0, 126.9, 125.8, 116.7, 74.9, 45.1, 0.3.
【0022】
実施例2〜3
製造例1及び3で作成した触媒を用いて、実施例1と同様の反応を行った。
その結果、生成物のSi/Al=40,26,18の各触媒について、トリメチル(1-フェニルブタ-3-エニルオキシ)シランの収率は、それぞれ83%、93%、78%であった。この結果、Al-MCM-41触媒の最適Si/Alが25〜35の範囲であることがわかった。
【0023】
実施例4
Al-MCM-41触媒の添加量を5 mgにして、実施例1と同様の反応を行った。その結果、1-フェニルブタ-3-エン-1-オールの収率は1%以下であり、実施例1と比較するとAl-MCM-41触媒の最適添加量は、アルデヒド1mmolに対して15mg以上、好ましくは15mg〜50mgであることがわかった。
【0024】
実施例5
この実施例では、触媒の回収再利用を試験した。
1回目:アルゴン雰囲気下、30 mL二口ナスフラスコにAl-MCM-41(60 mg)を入れたのち、減圧下120℃で1時間乾燥させた。アルゴンガスを吹き入れて常圧に戻したのち、30℃でp-ニトロベンズアルデヒド(アルドリッチ社製,302 mg, 2.0 mmol)のジクロロメタン溶液(3.0 mL)とアリルトリメチルシラン(343 mg, 3.0 mmol)のジクロロメタン溶液(1.0 mL)を加え、30分間攪拌した。ろ紙(東洋定性ろ紙No. 1)を用いてAl-MCM-41を取り除くとともに、ジクロロメタン(20 mL)で洗浄した。ろ液を減圧下溶媒留去し、得られた油状物質をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(関東化学、シリカゲル 60N(球状、中性)、ヘキサン/ジエチルエーテル=20:1)により精製することで、トリメチル[1-(4-ニトロフェニル)ブタ-3-エニルオキシ]シラン(486 mg, 92%)を得た。
IR (neat): νmax 2957, 1607, 1523, 1348, 1253, 1090, 846 cm-1; 1H NMR (270 MHz, CDCl3): δ (ppm) 8.14-8.19 (m, 2H), 7.45-7.49 (m, 2H), 5.65-5.80 (m, 1H), 4.98-5.02 (m, 2H), 4.78 (dd, J = 6.3, 5.9 Hz, 1H), 2.34-2.50 (m, 2H), 0.06 (s, 9H); 13C NMR (67.8 MHz, CDCl3): δ (ppm) 152.2, 146.9, 133.7, 126.5, 123.3, 117.7, 73.8, 44.8, 0.1.
ろ紙に残ったAl-MCM-41は、70℃で15分間乾燥させてから秤量し、53mg回収した。
【0025】
2回目:1回目の反応後に回収したAl-MCM-41(53 mg)を、減圧下120℃で1時間乾燥させたのち、p-ニトロベンズアルデヒド(265 mg, 1.8 mmol)のジクロロメタン溶液(2.6 mL)とアリルトリメチルシラン(300 mg, 2.6 mmol)のジクロロメタン溶液(0.9 mL)を加え、1回目と同様に反応を行い、トリメチル[1-(4-ニトロフェニル)ブタ-3-エニルオキシ]シラン(435 mg, 94%)を得た。Al-MCM-41(38 mg)を回収した。
3回目:2回目の反応後に回収したAl-MCM-41(38 mg)を用い、p-ニトロベンズアルデヒド(189 mg, 1.3 mmol)のジクロロメタン溶液(1.8 mL)とアリルトリメチルシラン(214 mg, 1.9 mmol)のジクロロメタン溶液(0.7 mL)との反応により、トリメチル[1-(4-ニトロフェニル)ブタ-3-エニルオキシ]シラン(311 mg, 94%)を得た。Al-MCM-41(25mg)を回収した。
4回目:3回目の反応後に回収したAl-MCM-41(25 mg)を用い、p-ニトロベンズアルデヒド(125 mg, 0.8 mmol)のジクロロメタン溶液(1.25 mL)とアリルトリメチルシラン(142 mg, 1.3 mmol)のジクロロメタン溶液(0.4 mL) との反応により、トリメチル[1-(4-ニトロフェニル)ブタ-3-エニルオキシ]シラン(204 mg, 93%)を得た。
【0026】
実施例6〜11
表1に示すアルデヒドを反応基質として用いて、実施例1と同様にして反応を行った。結果を、実施例5の結果とともに表4に示す。なお収率はシリルエーテルのものを示す。
【表4】

【0027】
各反応基質であるアルデヒドの入手先と各生成物であるホモアリルアルコール誘導体の分析データを以下に示す。
実施例6:アルデヒドの入手先:和光純薬工業
生成物の分析値: IR (neat): νmax 2957, 1641, 1593, 1488, 1252, 1087, 1011, 842 cm-1; 1H NMR (270 MHz, CDCl3): δ (ppm) 7.42-7.45 (m, 2H), 7.16-7.20 (m, 2H), 5.65-5.81 (m, 1H), 4.98-5.04 (m, 2H), 4.63 (dd, J = 7.1, 5.8 Hz, 1H), 2.33-2.49 (m, 2H), 0.04 (s, 9H); 13C NMR (67.8 MHz, CDCl3): δ (ppm) 143.8, 134.6, 131.0, 127.5, 120.6, 117.1, 74.1, 45.0, 0.2.
実施例7:アルデヒドの入手先:東京化成工業
生成物の分析値:IR (neat): νmax 2958, 1528, 1347, 1253, 1091, 845 cm-1; 1H NMR (270 MHz, CDCl3): δ (ppm) 7.81-7.91 (m, 2H), 7.58-7.64 (m, 1H), 7.35-7.41 (m, 1H), 5.77-5.93 (m, 1H), 5.36 (dd, J = 7.9, 4.0 Hz, 1H), 5.01-5.08 (m, 2H), 2.35-2.55 (m, 2H), 0.03 (s, 9H); 13C NMR (67.8 MHz, CDCl3): δ (ppm) 147.1, 140.4, 134.3, 132.9, 128.5, 127.6, 123.8, 117.5, 69.6, 44.3, -0.04.
実施例8:アルデヒドの入手先:和光純薬工業
生成物の分析値:IR (neat): νmax 2957, 1640, 1508, 1252, 1085, 842, 745 cm-1; 1H NMR (270 MHz, CDCl3): δ (ppm) 7.73-7.84 (m, 4H), 7.41-7.49 (m, 3H), 5.71-5.87 (m, 1H), 5.00-5.08 (m, 2H), 4.83 (dd, J = 7.3, 5.6 Hz, 1H), 2.44-2.62 (m, 2H), 0.05 (s, 9H); 13C NMR (67.8 MHz, CDCl3): δ (ppm) 142.2, 135.0, 133.1, 132.7, 127.8, 127.8, 127.6, 125.8, 125.4, 124.3, 124.2, 116.9, 75.0, 45.1, 0.3.
【0028】
実施例9:アルデヒドの入手先:アルドリッチ社
生成物の分析値:IR (neat): νmax 2957, 1641, 1609, 1251, 1082, 918, 842, 703 cm-1; 1H NMR (270 MHz, CDCl3): δ (ppm) 7.03-7.22 (m, 4H), 5.69-5.84 (m, 1H), 4.99-5.07 (m, 2H), 4.62 (dd, J = 7.9, 5.5 Hz, 1H), 2.35-2.49 (m, 2H), 2.34 (s, 3H), 0.04 (s, 9H); 13C NMR (67.8 MHz, CDCl3): δ (ppm) 144.7, 137.5, 135.3, 127.8, 127.7, 126.5, 122.9, 116.6, 74.9, 45.1, 21.6, 0.3.
実施例10:アルデヒドの入手先:東京化成工業
生成物の分析値:IR (neat): νmax 2956, 1640, 1481, 1362, 1251, 1096, 839 cm-1; 1H NMR (270 MHz, CDCl3): δ (ppm) 5.75-5.90 (m, 1H), 4.98-5.08 (m, 2H), 3.31 (dd, J = 8.9, 2.6 Hz, 1H), 2.23-2.33 (m, 1H), 2.00-2.12 (m, 1H), 0.86 (s, 9H), 0.09 (s, 9H); 13C NMR (67.8 MHz, CDCl3): δ (ppm) 137.7, 116.1, 81.1, 37.6, 35.6, 26.4, 1.1.
実施例11:アルデヒドの入手先:東京化成工業
生成物の分析値:1H NMR (270 MHz, CDCl3): δ (ppm) 5.74-5.90 (m, 1H), 5.00-5.08 (m, 2H), 3.40-3.49 (m, 1H), 2.18-2.24 (m, 2H), 0.87-1.81 (m, 11H), 0.10 (s, 9H)
【0029】
実施例12
この実施例では、実施例1で得られたシリル化化合物をホモアリルアルコール誘導体に変換した。反応式を以下に示す。
【化3】

【0030】
実施例1で得られた化合物2a、トリメチル(1-フェニルブタ-3-エニルオキシ)シランにメタノール(2.0 mL)、1M塩酸(2.0 mL)を加え、30℃で1時間攪拌した。エーテル(5 mL)、水(5 mL)を加え、有機層を分離したのち、水層をエーテル(5 mL)で3回抽出した。有機層を合わせて、水、飽和食塩水で洗浄したのち、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。ろ過により乾燥剤を取り除いたのち、減圧下溶媒留去し、得られた油状物質をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(和光純薬工業、ワコーゲル C-200、ヘキサン/ジエチルエーテル=2:1)により精製することで、1-フェニルブタ-3-エン-1-オール(化合物2b)(134 mg, 90%)を得た。生成物の分析データを以下に示す。
IR (neat): νmax 3369, 1641, 1494, 1454, 1049, 916, 758, 700 cm-1; 1H NMR (270 MHz, CDCl3): δ (ppm) 7.24-7.37 (m, 5H), 5.74-5.89 (m, 1H), 5.12-5.21 (m, 2H), 4.71-4.77 (m, 1H), 2.43-2.58 (m, 2H), 2.05 (d, J = 3.3 Hz, 1H); 13C NMR (67.8 MHz, CDCl3): δ (ppm) 143.7, 134.3, 128.1, 127.2, 125.6, 117.9, 73.2, 43.6.
【0031】
実施例13〜19
シリルエーテルとして実施例5〜実施例11で得られた生成物を反応基質として用いて、実施例12と同様の反応を行った。
実施例13:実施例5(1回目)で得られたシリルエーテルを反応基質として用い、1-(4-ニトロフェニル)ブタ-3-エン-1-オールを得た(収率90%)。生成物の分析データを以下に示す。
生成物の分析値:1H NMR (270 MHz, CDCl3): δ (ppm) 8.18-8.23 (m, 2H), 7.52-7.55 (m, 2H), 5.72-5.86 (m, 1H), 5.16-5.22 (m, 2H), 4.85-4.89 (m, 1H), 2.40-2.61 (m, 2H), 2.36 (br, 1H); 13C NMR (67.8 MHz, CDCl3): δ (ppm) 151.1, 133.2, 126.5, 123.6, 123.6, 119.6, 72.1, 43.9.
【0032】
実施例14:実施例6で得られたシリルエーテルを反応基質として用い、1-(2-ブロモフェニル) ブタ-3-エン-1-オールを得た(収率90%)。生成物の分析データを以下に示す。
生成物の分析値:IR (neat): νmax 3383, 3075, 2980, 2911, 1640, 1564, 1470, 1438, 1199, 1023, 916, 872, 759 cm-1; 1H NMR (270 MHz, CDCl3): δ (ppm) 7.56 (dd, J = 7.6, 1.6 Hz, 2H), 7.52 (dd, J = 8.0, 1.2 Hz, 1H), 7.34 (dt, J = 7.2, 0.8 Hz, 1H), 7.13 (dt, J = 7.6, 2.0 Hz, 1H), 5.82-5.95 (m, 1H), 5.20 (d, J = 17.2 Hz, 1H), 5.18 (d, J = 10.0 Hz, 1H), 5.11 (dt, J = 7.6, 3.6 Hz, 1H), 2.33-2.67 (m, 2H), 2.22 (d, J = 3.6 Hz, 1H); 13C NMR (67.8 MHz, CDCl3): δ (ppm) 142.7, 134.3, 132.7, 128.9, 127.7, 127.4, 121.9, 118.8, 72.0, 42.4.
実施例15:実施例7で得られたシリルエーテルを反応基質として用い、1-(2-ニトロフェニル)ブタ-3-エン-1-オールを得た(収率90%)。生成物の分析データを以下に示す。
生成物の分析値:1H NMR (270 MHz, CDCl3): δ (ppm) 7.94 (d, J = 8.0 Hz, 2H), 7.84 (d, J = 8.0 Hz, 1H), 7.66 (t, J = 8.0 Hz, 1H), 7.43 (t, J = 8.0 Hz, 1H), 5.85-5.96 (m, 1H), 5.31-5.34 (m, 1H), 5.19-5.24 (m, 2H), 2.70-2.74 (m, 1H), 2.35-2.46 (m, 2H), 0.03 (s, 9H); 13C NMR (67.8 MHz, CDCl3): δ (ppm) 148.1, 145.9, 133.2, 132.0, 129.2, 122.3, 120.7, 119.3, 72.0, 43.7.
【0033】
実施例16:実施例8で得られたシリルエーテルを反応基質として用い、1-ナフタレン-2-イルブタ-3-エン-1-オールを得た(収率90%)。生成物の分析データを以下に示す。
生成物の分析値:IR (neat): νmax 3384, 3072, 3033, 2975, 1638, 1490, 1451, 915, 700 cm-1; 1H NMR (270 MHz, CDCl3): δ (ppm) 7.77-7.82 (m, 4H), 7.44-7.48 (m, 3H), 5.75-5.85 (m, 1H), 5.10-5.19 (m, 2H), 4.84-4.89 (m, 1H), 2.54-2.59 (m, 2H), 2.30 (d, J = 3.3 Hz, 1H)
実施例17:実施例9で得られたシリルエーテルを反応基質として用い、1-(m-トリル)ブタ-3-エン-1-オールを得た(収率90%)。生成物の分析データを以下に示す。
生成物の分析値: 1H NMR (270 MHz, CDCl3): δ (ppm) 7.09-7.29 (m, 4H), 5.75-5.89 (m, 1H), 5.14-5.22 (m, 2H), 4.74 (t, J = 6.0 Hz, 1H), 2.49-2.58 (m, 2H), 2.38 (s, 3H), 2.01 (s, 1H); 13C NMR (67.8 MHz, CDCl3): δ (ppm) 144.0, 138.1, 134.8, 128.4, 126.6, 123.0, 118.3, 73.5, 43.9, 21.6.
【0034】
実施例18:実施例10で得られたシリルエーテルを反応基質として用い、2,2-ジメチルヘキサ-5-エン-3-オールを得た(収率82%)。生成物の分析データを以下に示す。
生成物の分析値: 1H NMR (270 MHz, CDCl3): δ (ppm) 5.82-5.87 (m, 1H), 5.11-5.16 (m, 2H), 3.23-3.27 (m, 1H), 2.33-2.38 (m, 1H), 1.94-2.03 (m, 1H), 0.91 (s, 9H); 13C NMR (67.8 MHz, CDCl3): δ (ppm)136.6, 117.7, 78.1, 36.5, 34.6, 25.7.
実施例19:実施例11で得られたシリルエーテルを反応基質として用い、1-シクロヘキシルブタ-3-エン-1-オールを得た(収率85%)。生成物の分析データを以下に示す。
生成物の分析値:νmax 3435, 2928, 1640, 1450, 985, 911 cm-1; 1H NMR (270 MHz, CDCl3): δ (ppm) 5.77-5.92 (m, 1H), 5.11-5.17 (m, 2H), 3.35-3.45 (br m, 1H), 2.29-2.38 (m, 1H), 2.06-2.19 (m, 1H), 1.55-1.90 (m, 6H), 0.99-1.42 (m, 6H); 13C NMR (67.8 MHz, CDCl3): δ (ppm) 135.3, 117.8, 74.7, 43.1, 38.8, 29.1, 28.2, 26.6, 26.3, 26.2.
【0035】
比較例1
この比較例では、実施例1のベンズアルデヒドをアセタール(和光純薬工業製)に代えて、実施例1と同様の反応を行った。この比較例では、一方の反応基質として、アセタールを用いた場合、ホモアリルアルコール誘導体は得られない。
反応式を下記に示す。
【化4】

【0036】
アルゴン雰囲気下、30 mL二口ナスフラスコに製造例2で製造したAl-MCM-41 (30 mg)を入れたのち、減圧下120℃で1時間乾燥させた。アルゴンガスを吹き入れて常圧に戻したのち、30℃でベンズアルデヒドジメチルアセタール(和光純薬工業)(152 mg, 1.0 mmol)のジクロロメタン溶液(1.5 mL)とアリルトリメチルシラン(171 mg, 1.5 mmol)のジクロロメタン溶液(0.5 mL)を加え、1時間攪拌した。ろ紙(東洋定性ろ紙No. 1)を用いてAl-MCM-41を取り除くとともに、ジクロロメタン(20 mL)で洗浄した。ろ液を減圧下溶媒留去し、油状物質、4-メトキシ-4-フェニル-1-ブテン)(126 mg, 78%)と1-フェニル-1,3-ブタジエン(10mg, 8%)を得た。生成物の分析データを以下に示す。
【0037】
(1) 4-メトキシ-4-フェニル-1-ブテン
IR (neat): νmax 2936, 1641, 1494, 1454, 1100, 914, 758, 701 cm-1; 1H NMR (270 MHz, CDCl3): δ (ppm) 7.26-7.39 (m, 5H), 5.69-5.85 (m, 1H), 5.00-5.09 (m, 2H), 4.17 (dd, J = 7.3, 5.9 Hz, 1H), 3.22 (s, 3H), 2.36-2.62 (m, 2H); 13C NMR (67.8 MHz, CDCl3): δ (ppm) 141.4, 134.6, 128.1, 127.4, 126.5, 116.7, 83.5, 56.5, 42.5.
(2) 1-フェニルブタ-1,3-ジエン
IR (neat): 1H NMR (270 MHz, CDCl3): δ (ppm) 7.22-7.42 (m, 5H), 6.79 (dd, J = 15.7, 10.4 Hz, 1H), 6.56 (d, J = 15.7 Hz, 1H), 6.51 (ddd, J = 17.2, 10.4, 10.0 Hz, 1H), 5.33 (m, 1H), 5.17 (m, 1H); 13C NMR (67.8 MHz, CDCl3): δ (ppm).
【0038】
比較例2
この比較例では、実施例1のベンズアルデヒドをアセトフェノン(東京化成工業製)に代えて、実施例1と同様の反応を行った。その結果、アセトフェノンが99%以上で回収された。この比較例では、一方の反応基質として、ケトンを用いた場合、ホモアリルアルコール誘導体は得られない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体酸触媒Al−MCM−41の存在下で、下式
CHO
(式中、Rは、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、アリール基またはアラルキル基を表す。)で表されるアルデヒド化合物と下式
CR=CR−CR−SiR
(式中、R、R及びRは、それぞれ同じであっても異なってもよく、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、アリール基またはアラルキル基を表し、Rは、それぞれ同一であっても異なってもよく、アルキル基を表す。)で表されるアリルシラン化合物とを反応させることから成る下式
CH(OH)−CR−CR=CR
(式中、R〜Rは、上記と同様に定義される。)で表わされるホモアリルアルコール誘導体の製造方法。
【請求項2】
前記固体酸触媒Al−MCM−41のSi/Alが25〜35である請求項1に記載の製造方法。

【公開番号】特開2010−163394(P2010−163394A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−7586(P2009−7586)
【出願日】平成21年1月16日(2009.1.16)
【出願人】(504182255)国立大学法人横浜国立大学 (429)
【Fターム(参考)】