説明

ホモシステインをアッセイするための方法および組成物

本発明は概して、ホモシステイン検出の分野に関連する。特に、本発明は、サンプル中のホモシステイン存在またはホモシステイン濃度を決定するための方法であって、その方法は以下:Hcy変換生成物およびHcy補基質変換生成物を形成するために、Hcy変換反応中で、Hcyを含むサンプルまたはHcyを含むと推測されるサンプルと、Hcy補基質およびHcy変換酵素とを接触させる工程;ならびに上記サンプル中のHcyの、存在、非存在および/または量を決定するために上記Hcy補基質変換生成物を評価する工程を包含する方法を提供する。同じ原理に基づいてホモシステインをアッセイするためのキットもまた、提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、米国仮特許出願番号60/486,865(2003年7月10日出願)、および米国特許出願番号10/801,623(2004年3月15日出願)の優先権の利益を主張し、その内容は、その全てが参考として援用される。
【0002】
(技術分野)
本発明は概して、ホモシステイン検出の分野に関連する。特に、本発明は、サンプル中のホモシステイン(Hcy)の、存在または濃度を決定するための方法を提供し、そのサンプルにおいて、ホモシステインは、Hcy変換酵素によって触媒されるHcy変換反応中で、Hcy補基質と反応し、Hcy変換生成物およびHcy補基質変換生成物を形成し、そしてそのHcy補基質変換生成物は、そのサンプル中のHcyの、存在および/または濃度を決定するために評価される。同じ原理に基づいてホモシステインをアッセイするためのキットもまた、提供される。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
体液(例えば、血漿または血清)中のホモシステインの総濃度は、疾患に対する重要なマーカーである。例えば、ホモシステイン定量は、心血管疾患に対する重要なリスク指標であり得、コバラミン欠乏症および葉酸欠乏症の感応性マーカーであり得、そしてホモシスチン尿症として公知である代謝における先天性異常の診断に使用され得る。ホモシステイン定量はまた、妊婦における出生異常の評価および高齢者における認知障害の評価において有用であると報告されてきた。Frantzenら、Enzyme Conversion Immunoassay for Determining Total Homocysteine in Plasma or Serum,Clinical Chemistry 44:2,311−316(1998)を参照のこと。
【0004】
ホモシステイン(Hcy)は、S−アデノシルメチオニン依存性メチル基転移反応の間に、メチオニンから形成されるチオール含有アミノ酸である。細胞内Hcyは、メチオニンに再メチル化され、またはシステインを形成する一連の反応において不可逆的に異化される。細胞内Hcyは、細胞外液(例えば、血液および尿)に拡散され、そして大部分は酸化型で循環し、そして主に血漿タンパク質に結合される(Refsumら、Annu.Rev.Medicine,49:31−62(1998))。血漿中および尿中におけるHcyの量は、Hcy生成とHcy利用との間のバランスを反映する。このバランスは、Hcyトランス硫化(transsulfuration)ならびにHcy再メチル化(例えば、シスタチオニンβ−シンターゼおよびN5,10−メチレンテトラヒドロ葉酸還元酵素、またはHcy代謝に関連したビタミン(例えば、ビタミンB、ビタミンB12および葉酸)の栄養失調(Baualら、Cleveland Clinic Journal of Medicine,64:543−549(1997))に関する酵素の遺伝病によって特徴付けられる臨床状態によって乱され得る。さらに、血漿Hcyレベルはまた、癌の治療または関節炎の治療のために使用される抗葉酸薬物(例えば、メトトレキサート)のようないくつかの医薬品によって乱され得る(Foodyら、Clinician Reviews,8:203−210(1998))。
【0005】
ホモシステイン血症の重篤な症例は、Hcy代謝に関連した酵素をコードする遺伝子におけるホモ接合性欠失によって引き起こされる。そのような症例において、Hcy再メチル化またはHcyトランス硫化のいずれかに関連した酵素における欠失は、血液中のHcyおよび尿中のHcyの50倍程度の上昇をもたらす。そのような疾患(先天性ホモシステイン血症(Hcyemia))の標準的形態は、シスタチオニンβ−シンターゼ(CBS)をコードする遺伝子におけるホモ接合性欠損によって引き起こされる。これらの患者は、脳卒中、心筋梗塞、腎血管性高血圧症、間欠性跛行、腸間膜虚血、および肺塞栓症を生じる若年期における血栓塞栓性合併症を被る。そのような患者はまた、精神遅滞、ならびに水晶体転位症および骨格変形に類似する他の異常を示す(Perry T.,Homocysteine:Selected aspects in Nyham W.L.ed.Heritable disorders of amino acid metabolism.New York,John Wiley & Sons,pp.419−451(1974))。妊婦において上昇したHcyレベルは、神経細管閉鎖(neurotube closure)を伴う、子供の出生時欠損に関係することも知られている(Graham,I.,Refsum,H.,Rosenberg,I.H.,およびUreland P.M.編「Homocysteine metabolism:from basic science to clinical medicine」Kluwer Academic Publishers,Boston,pp.133−136(1995)中のScottら「The etiology of neural tube defects」)。従って、そのHcy決定の診断的有用性は、これらの臨床条件で良く実証されてきた。
【0006】
軽度または中程度に上昇したHcyのレベルでさえも、冠状動脈、大脳動脈、末梢性動脈のアテローム硬化症のリスク、ならびに心血管の疾患のリスクを増加することが実証されてきた(Bousheyら、JAMA,274:1049−1057(1995))。先天性ホモシステイン血症の罹患率は、それぞれ、脳血管疾患の患者間で42%、末梢血管疾患の患者間で28%、および心血管疾患間で30%であることが示された(Moghadasianら、Arch.Intern.Med.,157:2299−2307(1997))。27の臨床研究のメタ分析は、それぞれのHcyレベルにおける5μMの増加が、冠動脈疾患のリスクを、男性においては60%増加し、女性においては80%増加すると計算し、そのことは血漿コレステロールの20mg/dl−1(0.5mmol/dl−1)の増加と等価であり、Hcyが、リスク因子として、一般的集団においてコレステロールと同程度強いことを示唆する。これらの臨床研究の結果は、高ホモシステイン血症が、心血管疾患について新たに独立のリスク因子を出現させ、そして高ホモシステイン血症は、はっきりした心血管リスク因子(例えば、高血圧症、高コレステロール血症、喫煙、糖尿病、著しい肥満および運動不足)のいずれかを有さない全ての心血管患者の半分を説明し得ると結論付けた。
【0007】
軽度ホモシステイン血症は主に、ヘテロ接合性の酵素欠損によって引き起こされる。メチレンテトラヒドロ葉酸還元酵素についての遺伝子における一般的な多型は、葉酸欠損に対するホモシステインレベルの感受性に影響するようである(Boersら、J.Inher.Metab.Dis.,20:301−306(1997))。さらに、血漿ホモシステインレベルはまた、心臓移植患者および腎臓移植患者(Uelandら、J.Lab.Clin.Med.,114:473−501(1989))、アルツハイマー病患者(Jacobsenら、Clin.Chem.,44:2238−2239(1998))、ならびに非インスリン依存性糖尿病の患者(Duclouxら、Nephrol.Dial.Transplantl,13:2890−2893(1998))において有意に増加される。心血管疾患によって上昇したホモシステインに関連する証拠の蓄積は、血管疾患の進行の、妨害または停止における血漿Hcyの低下の有効性を実証するための、二重盲検の無作為化された、かつプラセボ制御された多施設臨床試験の開始を促進した(Diaz−Arrastiaら、Arch.Neurol.,55:1407−1408(1998))。血漿ホモシステインレベルの決定は、一般的な臨床診療であるべきである。
【0008】
心血管疾患におけるリスク因子として、全血漿Hcyレベル(還元型、酸化型およびタンパク質結合型)の決定は、臨床環境において推奨されてきた(Hornbergerら、American J.of Public Health,88:61−67(1998))。1982年以来、全血漿Hcyを決定するためのいくつかの方法が、記載されてきた(Mansoorら、Anal.BioChem.,200:218−229(1992;Steirら、Arch.Intern.Med.,158:1301−1306(1998);Uelandら、Clin.Chem.,39:1764−1779(1993);およびFrancis,R.B.Jr.編Atherosclerotic Cardiovascular Disease,Hemostasis,and Endothelial Function.New York,Marcel Dokker,pp.183−236(1992)中のUelandら「Plasma homocysteine and cardiovascular disease」;Francis,R.B.Jr.編Atherosclerotic Cardiovascular Disease,Hemostasis,and Endothelial Function.New York,Marcel Dokker,pp.183−236(1992)中のUelandら「Plasma homocysteine and cardiovascular disease」も参照のこと)。血漿中または血清中の全Hcyのアッセイは、70%の血漿Hcyがタンパク質結合型であり、そして20%〜30%の血漿Hcyが、非対称またはほぼ非対称に混合したジスルフィドとして存在するという事実によって困難にされる。遊離した還元型Hcyは、微量にしか存在しない(Stehouwerら、Kidney International,55308−314(1999))。
【0009】
上記方法のほとんどは、直接的または間接的(例えば、次にHPLC分離またはTLC分離される、SAH加水分解酵素によるHcyのSAH(S−アデノシルホモシステイン)への酵素的変換)に、Hcyを測定するために、高度なクロマトグラフ技術(例えば、HPLC、キャピラリーガスクロマトグラフィー、または質量分析(GC/MS))を必要とする。TLC分離前のSAH加水分解酵素によるHcyの放射標識SAHへの放射酵素的変換がまた、使用されてきた。これらのアッセイにおいて、クロマトグラフ分離は、実施するのに、多くの場合、時間が掛かりかつ扱いにくいが、一般的にこれらの方法の重要な工程である。さらに詳しくは、これらの方法は、高度に特化し、かつ高機能化した装置、ならびによく訓練された分析の専門家を必要とする。そのような装置の使用は概して、汎用的な臨床実験室での実施においてはあまり受け入れられない。
【0010】
SAHに対するモノクローナル抗体を使用するHcyについてのイムノアッセイ(Arakiら、J.Chromatog.,422:43−52(1987))はまた、公知である。これらのアッセイは、HcyのSAHへの変換に基づき、次にモノクローナル抗体によって検出される、アルブミン結合Hcyに対するモノクローナル抗体は、全血漿Hcyの主要な画分であるアルブミン結合Hcyの決定のために開発された(Stablerら、J,Clin.Invest.,81:466−474(1988))。他の免疫学的プロトコルもまた、利用可能である(例えば、米国特許番号第5,631,127号、同第5,827,645号、同第5,958,717号、同第6,063,581号、および同第5,885,767号を参照のこと)。イムノアッセイは、時間の掛かるクロマトグラフ分離工程を回避し、そして自動化に適用しやすいが、モノクローナル抗体の生成は高価であり、いくぶん予測不可能であり、そして多くの場合、検出のために、2次抗体または3次抗体さえも必要とする。最近、ホモシステインアッセイのための酵素的方法が、報告されており(Matsuyamaら、Clinical Chemistry,47:2155−2156(2001);Tanら、Clinical Chemistry,49:1029−1030(2003);米国特許第5,885,767号、同第5,998,191号、同第6,046,017号、同第6,174,696号、同第6,436,658号および同第6,664,073B1号)、これらの全ては、ホモシステイン変換酵素によって産生されるホモシステイン変換生成物の評価に基づいたホモシステインアッセイを記載する。
【0011】
サンプル中のホモシステインを決定するための他の方法は、米国特許第6,686,172号および米国特許出願公開番号2002/0119507に記載される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
高度に熟練した人員または複雑な分析化学装置を必要とせずに実施し得る、効率的かつ正確なアッセイが必要とされてきた。本発明は、当該分野に関して、上述および他の関連することに焦点をあてる。
【課題を解決するための手段】
【0013】
(発明の簡単な要旨)
1つの局面において、本発明は、サンプル中のホモシステインについてのアッセイに関する。このアッセイによって、ホモシステイン(Hcy)を含むサンプルまたはHcyを含むと推測されるサンプルは、Hcy変換生成物およびHcy補基質変換生成物を形成するHcy変換反応中で、Hcy補基質およびHcy変換酵素と接触され;そして上記Hcy補基質変換生成物は、上記サンプル中のHcyの、存在、非存在および/または量を決定するために評価される。
【0014】
本発明のいくつかの実施形態において、上記Hcy補基質変換生成物は、クロマトグラフ分離なしで評価される。
【0015】
いくつかの実施形態において、上記Hcy補基質はS−アデノシルメチオニン(SAM)であり、上記Hcy変換酵素はS−アデノシルメチオニン(SAM)依存性ホモシステインS−メチル基転移酵素であり、上記Hcy変換生成物はメチオニン(Met)であり、および上記Hcy補基質変換生成物はS−アデノシル−L−ホモシステイン(SAH)であり、そして上記SAHは、上記サンプル中のHcyの、存在、非存在および/または量を決定するために評価される。
【0016】
上記SAMは、任意の適切な形態で使用され得る。例えば、上記SAMは、上記サンプルに直接添加される。別の例において、上記SAMは、さらなる反応によって生成される(例えば、SAMシンターゼによって、ATPおよびMetから生成される)。
【0017】
上記SAHは、Hcyおよびアデノシン(Ado)に変換され得、そしてAdoは、上記サンプル中のHcyの、存在、非存在および/または量を決定するために評価される。いくつかの実施形態において、上記SAHは、SAMからHcyを産生するためにSAH加水分解酵素と接触され、そのSAMは、SAM依存性ホモシステインS−メチル基転移酵素によって上記Hcy変換反応中に循環され、Hcy補基質ベースの酵素循環反応系、およびアデノシン(Ado)を形成し、上記アデノシンは、上記サンプル中の上記Hcyの、存在、非存在および/または量を決定するために評価される。
【0018】
上記Adoは、当該分野で公知の適切な方法のいずれか(例えば、免疫学的方法または酵素的方法)によって評価され得る。上記Adoは、直接的または間接的に評価され得る。例えば、上記Adoは、アデノシン変換酵素によるアデノシン変換の、補基質または反応生成物を評価することによって、間接的に評価され得る。いくつかの実施形態において、上記アデノシン変換酵素は、アデノシンキナーゼであり、そしてその反応生成物は、アデノシン5’−一リン酸である。他の実施形態において、上記アデノシン変換酵素は、アデノシンデアミナーゼであり、そしてその反応生成物は、アンモニウムおよびイノシンである。
【0019】
1つの局面において、本発明は、サンプル中のホモシステイン(Hcy)をアッセイするための方法に関し、その方法は、以下:a)Hcy変換生成物およびHcy補基質変換生成物を形成するために、Hcy変換反応中で、Hcyを含むサンプルまたはHcyを含むと推測されるサンプルと、Hcy補基質およびHcy変換酵素とを接触させる工程であって、上記Hcy補基質はS−アデノシルメチオニン(SAM)であり、上記Hcy変換酵素はS−アデノシルメチオニン(SAM)依存性ホモシステインS−メチル基転移酵素であり、上記Hcy変換生成物はメチオニン(Met)であり、および上記Hcy補基質変換生成物はS−アデノシル−L−ホモシステイン(SAH)である、工程、ならびにb)上記サンプル中のHcyの、存在、非存在および量を決定するために上記SAHを評価する工程であって、そのSAHが、クロマトグラフ分離せずに評価される、工程を包含する。
【0020】
上記SAMは、任意の適切な形態で使用され得る。例えば、上記SAMは、上記サンプルに直接添加される。別の例において、上記SAMは、さらなる反応によって生成される(例えば、SAMシンターゼによってATPおよびMetから生成される)。
【0021】
上記SAHは、当該分野で公知の適切な方法のいずれか例えば、免疫学的方法または酵素的方法)によって評価され得る。例えば、SAHは、SAHと変異体SAH結合酵素(例えば、Hcy、SAHまたはアデノシンに対する結合親和性を有するが、触媒活性が弱力化された変異体SAH加水分解酵素)との間の結合を評価する工程によって評価され得る。1つの例において、上記SAHの評価は、Hを産生する酵素反応およびHの検出に関連しない。
【0022】
別の例において、上記SAHは、そのSAHに特異的に結合する抗体を使用することによって評価され得る。上記抗体は、モノクローナルまたはポリクローナルであり得る。上記抗体はまた、キャリアーマトリックスに結合され得る。任意の適切なイムノアッセイ型式(例えば、サンドイッチ(sandwich)アッセイ型式および競合アッセイ型式)は、使用され得る。
【0023】
本発明の方法は、任意のサンプル(体液または生物学的組織を含むがこれらに限定されない)中の、ホモシステインをアッセイするために使用され得る。上記体液は、尿、血液、血漿、血清、唾液、精液、糞、痰、脳脊髄液、涙液、粘液および羊水からなる群より選択され得る。いくつかの実施形態において、上記体液は血液である。いくつかの実施形態において、上記血液サンプルはさらに、血漿画分または血清画分に分離される。
【0024】
いくつかの実施形態において、上記サンプルと、上記Hcy補基質および上記Hcy変換酵素との間の接触の前、またはその接触と同時に、そのサンプル中の酸化型Hcyまたは結合型Hcyは、還元型Hcyに変換される。いくつかの実施形態において、上記サンプルは、そのサンプル中で遊離型ホモシステインを生成するのに適切な量の、ジチオスレイトール、トリス(2−カルボキシエチル)−ホスフィンヒドロクロリド(TCEP)または他の還元剤による処置に供される。
【0025】
本発明の方法はさらに、上記サンプルと、上記Hcy補基質および上記Hcy変換酵素とが接触する工程の前、またはその工程と同時に、酸化型Hcyまたは結合型Hcyを還元型Hcyに変換するために使用される上記還元剤を除去する工程を包含し得る。例えば、上記還元剤は、N−エチルマレイミドの添加、または他のチオール還元化合物の添加によって除去され得る。
【0026】
本発明のさらに別の局面は、サンプル中のホモシステインの、存在または濃度を決定するためのキットに関し、そのキットは、以下:a)Hcy変換酵素;b)Hcy補基質;そしてc)Hcy補基質変換生成物を評価するための試薬を備える。
【0027】
いくつかの実施形態において、上記Hcy補基質はS−アデノシルメチオニン(SAM)であり、上記Hcy変換酵素はS−アデノシルメチオニン(SAM)依存性ホモシステインS−メチル基転移酵素であり、上記Hcy補基質変換生成物はS−アデノシル−L−ホモシステイン(SAH)であり、そして上記Hcy補基質変換生成物を評価するための試薬はSAHを評価するための試薬である。いくつかの実施形態において、上記キットはさらに、Hcy補基質ベースの酵素循環反応系、およびアデノシン(Ado)を形成するために、SAM依存性ホモシステインS−メチル基転移酵素によって、上記Hcy変換反応中に循環されるSAMからHcyを産生するための試薬(例えば、SAH加水分解酵素)を含む。
【0028】
本発明はまた、サンプル中のHcyをアッセイするためのキットを提供し、そのキットは、以下:a)S−アデノシルメチオニン(SAM)依存性ホモシステインS−メチル基転移酵素;b)S−アデノシルメチオニン(SAM)またはATP、MetおよびSAMシンターゼ;c)SAH加水分解酵素;ならびにd)アデノシン(Ado)を評価するための試薬を備える。上記Adoを評価するための試薬は、上記SAH加水分解酵素(例えば、アデノシンキナーゼおよびアデノシンデアミナーゼ)以外のアデノシン変換酵素であり得る。
【0029】
本発明はまた、サンプル中のHcyをアッセイするためのキットを提供し、そのキットは、以下:a)S−アデノシルメチオニン(SAM)依存性ホモシステインS−メチル基転移酵素;b)S−アデノシルメチオニン(SAM)またはATP、MetおよびSAMシンターゼ;ならびにc)SAHを評価するための試薬を備え、ここでそのキットは、Hを産生するための酵素または試薬、およびHを検出するための試薬を備えない。
【0030】
いくつかの実施形態において、本発明のキットはさらに、還元剤(例えば、ジチオスレイトール(DTT)またはTCEP)を備える。
【0031】
本発明のキットは、任意の適切なパッケージ中にあり得、そしてまた、本明細書中に記載される方法を実施するための説明書を備え得る。上記キットは、必要に応じて、緩衝液のようなさらなる構成要素を備え得る。
【0032】
本明細書に記載されたアッセイは、任意の適切な目的(例えば、予防目的、診断目的、薬物スクリーニング目的または処置モニタリング目的)のために使用され得る。上記アッセイは、容易に自動化され得る。さらに、上記アッセイは、治療システムおよび在宅検査キットの点での使用に適応され得る。例えば、治療システムに関する血液検査は、本明細書中で提供される方法を使用するホモシステインレベルの測定に適用され得る。在宅検査キットはまた、本明細書中で提供される方法を用いる使用に適合され得る。
【0033】
(発明の詳細な説明)
限定のためではなく開示の明瞭性のために、発明の詳細な説明は、以下の小節に分割される。
【0034】
(A.定義)
他に定義されない限り、本明細書中で使用される全ての、技術用語および科学用語は、本発明の属する分野の当業者によって、通常理解される意味と同じ意味を有する。本明細書中で参照される全ての、特許、出願、公開された出願および他の刊行物は、その全てが参考として援用される。この節に示された定義が、本明細書中で参考として援用される、特許、出願、公開された出願および他の刊行物に示された定義に、反するかまたは矛盾する場合、この節に示された定義は、本明細書中に参考として援用される定義より優先する。
【0035】
本明細書中で使用される場合、「a」または「an」は、「少なくとも1つ(at least one)」または「1つ以上(one or more)」を意味する。
【0036】
本明細書中で使用される場合、「ホモシステイン(Hcy)」は、以下の分子式:HSCHCHCH(NH)COOHを有する化合物を称する。生物学的に、Hcyは、メチオニンの脱メチル化によって生成され、そしてHcyは、メチオニン由来のシステインの生合成における中間体である。用語「Hcy」は、遊離型Hcy(還元型形態である)および結合型Hcy(酸化型形態である)を包含する。Hcyは、タンパク質、ペプチド、Hcy自体または他のチオールと、ジスルフィド結合を介して結合し得る。
【0037】
本明細書中で使用される場合、「ホモシステイン(Hcy)変換反応」は、反応生成物を形成するために化学基(例えば、メチル基)が、化合物からHcy分子に転移される間に、上記化合物が上記Hcy分子と反応する反応を称する。上記Hcy分子と反応し、そして上記化学基を提供する化合物は、「ホモシステイン(Hcy)補基質」と称される。上記反応を触媒する酵素は、「ホモシステイン(Hcy)変換酵素」と称される。最初のHcy分子の、全部または一部を含む反応生成物は、「ホモシステイン(Hcy)変換生成物」と称される。最初のHcy分子由来のいずれの要素も含まない上記反応生成物は、「Hcy補基質変換生成物」と称される。
【0038】
本明細書中で使用される場合、「SAM依存性ホモシステインS−メチル基転移酵素」は、ホモシステインおよびS−アデノシルメチオニン(SAM)からの、メチオニンおよびS−アデノシル−L−ホモシステイン(SAH)の形成を触媒する酵素を称する。SAM依存性ホモシステインS−メチル基転移酵素の活性を、実質的に変えない保存的アミノ酸置換を伴うSAM依存性ホモシステインS−メチル基転移酵素を包含することが、意図される。
【0039】
本明細書中で使用される場合、「SAH加水分解酵素」は、SAHの、アデノシン(Ado)およびHcyへの加水分解を触媒し、いくつかの原核生物においても見出される偏在性真核生物酵素を称する。SAH加水分解酵素はまた、AdoおよびHcyからのSAHの形成を触媒する。上記SAH加水分解酵素の補酵素は、NAD/NADHである。SAH加水分解酵素は、いくつかの触媒活性を有し得る。その加水分解機構において、第1工程は、酵素結合NAD(E−NAD)によるSAHの3’−ヒドロキシル基の酸化(3’−酸化活性)、その後の、3’−ケト−4’,5’−ジデヒドロ−5’−デオキシ−Adoを与える、L−Hcyのβ−脱離を包含する。このしっかりと結合した中間体の5’位への水のMichael付加(5’−加水分解活性)は3’−ケト−Adoを生じ、その後、酵素結合NADH(E−NADH)によってAdoに還元(3’−還元活性)される。SAH加水分解酵素の活性を、実質的に変えない保存的アミノ酸置換を伴うSAH加水分解酵素を包含することが、意図される。
【0040】
本明細書中で使用される場合、用語「評価すること」は、上記サンプル中に存在する検体(例えば、ホモシステインまたはAdo)の、量または濃度についての絶対値を得るという意味の量的決定および質的決定を包含することが意図され、そしてそのサンプル中の検体のレベルを示す、指標、比、パーセンテージ、視覚的な値または他の値を得る意義における、量的決定および質的決定を包含することが意図される。評価は、直接的または間接的であり得、そして実際に検出された化学種は、当然のことながらその検体自体である必要はないが、例えばそれらの誘導体またはいくつかのさらなる物質であり得る。
【0041】
本明細書中で使用される場合、「アデノシンデアミナーゼ」は、イノシンを形成するアデノシンの脱アミノ化を触媒する酵素を称する。アデノシンデアミナーゼの活性を、実質的に変えない保存的アミノ酸置換を伴うアデノシンデアミナーゼを包含することが、意図される。
【0042】
本明細書中で使用される場合、「アデノシンキナーゼ」は、アデノシンおよびATPからのアデノシン5’−一リン酸およびADPの形成を触媒する酵素を称する。アデノシンキナーゼの活性を、実質的に変えない保存的アミノ酸置換を伴うアデノシンキナーゼを包含することが、意図される。
【0043】
本明細書中で使用される場合、「血清」は、循環血液において血漿と区別される、フィブリン凝塊および血球の除去後に得られる血液の流体部分を称する。
【0044】
本明細書中で使用される場合、「血漿」は、凝血後に得られる血清と区別される、血液の、流体の非細胞部分を称する。
【0045】
本明細書中で使用される場合、「組換え手段による生成」は、クローンされた核酸によってコードされるタンパク質を発現するための、分子生物学の周知の方法に依存する組換え核酸方法を使用する生成方法を称する。
【0046】
本明細書中で使用される場合、「流体」は、流動し得る任意の組成物を称する。従って、流体は、半固体の形態、ペーストの形態、溶液の形態、水溶性混合物の形態、ゲルの形態、ローションの形態、クリームの形態および他のそのような組成物である組成物を包含する。
【0047】
本明細書中で使用される場合、「サンプル」は、検体アッセイが所望される検体を含み得る任意のものを称する。上記サンプルは、生物学的流体または生物学的組織のような生物学的サンプルであり得る。生物学的流体の例としては、尿、血液、血漿、血清、唾液、精液、糞、痰、脳脊髄液、涙液、粘液、羊水などが挙げられる。生物学的組織は、細胞の凝集体であり、通常、結合性の上皮、結合性の筋肉および結合性の神経組織を含む、ヒト構造、動物構造、植物構造、細菌構造、真菌構造またはウイルス構造の構成材料の1つを形成する、特定の種類の細胞内物質と一緒になった特定の種類の凝集体である。生物学的組織の例としてはまた、器官、腫瘍、リンパ節、動脈および個々の細胞が挙げられる。
【0048】
本明細書中で使用される場合、「疾患または障害」は、例えば、感染または遺伝的欠損から生じ、そして特定可能な症状によって特徴付けられる、生物における病理学的状態を称する。
【0049】
本明細書中で使用される場合、「抗体」は、インタクトなポリクローナル抗体またはインタクトなモノクローナル抗体だけではなく、またそれらのフラグメント(例えば、Fab、Fab’、F(ab’)、Fv)、単鎖抗体(ScFv)、二重特異性抗体、抗体フラグメントから形成されるマルチ特異的(multi−specific)抗体、これらの変異体、抗体部分を含む融合タンパク質、および必要とされる特異性の抗原認識部位を含む免疫グロブリン分子の立体配置を改変した他の融合タンパク質のいずれかを包含する。抗体としては、任意のクラス(例えば、IgG、IgA、またはIgM(またはそれらのサブクラス))の抗体が挙げられ、そしてその抗体は、特定のクラスのいずれかである必要はない。
【0050】
(B.ホモシステインをアッセイするための方法)
本発明は、サンプル中のホモシステイン(Hcy)をアッセイするための方法を提供し、その方法は、以下:a)Hcy変換生成物およびHcy補基質変換生成物を形成するために、Hcy変換反応中で、Hcyを含むサンプルまたはHcyを含むと推測されるサンプルと、Hcy補基質およびHcy変換酵素とを接触させる工程;ならびにb)当該サンプル中の当該Hcyの、存在、非存在および/または量を決定するために、当該Hcy補基質変換生成物を評価する工程を包含する。
【0051】
いくつかの実施形態において、上記Hcy補基質変換生成物は、クロマトグラフ分離なしで評価される。
【0052】
いくつかの実施形態において、上記Hcy変換酵素は、S−アデノシルメチオニン(SAM)依存性ホモシステインS−メチル基転移酵素である。SAM依存性ホモシステインS−メチル基転移酵素が、Hcy変換酵素として使用される場合、上記Hcy補基質はS−アデノシルメチオニン(SAM)であり、上記Hcy変換生成物はメチオニン(Met)であり、そして上記Hcy補基質変換生成物はS−アデノシル−L−ホモシステイン(SAH)であり、そしてそのSAHは上記サンプル中のHcyの、存在、非存在および/または量を決定するために評価される。
【0053】
メチル基をSAMからHcyに転移する任意のS−アデノシルメチオニン(SAM)依存性ホモシステインS−メチル基転移酵素が、使用され得る。例えば、ShapiroおよびStanley K(Methods Enzymol.17 Pt.B,Sulfur Amino acids,pp.400−405(1971))ならびにShapiro SK(Biochim.Biophys.Acta.29:405−9(1958))に記載される、S−アデノシルメチオニン:L−ホモシステインS−メチル基転移酵素が、使用され得る。以下のGenBank登録番号AF297394を有する核酸、ならびに以下のGenBank登録番号AAG10301、同CAA16035、同NP_856132、同NP_302039、同CAD97346、同T51939、同T51941および同CAC30428を有するアミノ酸配列によってコードされるホモシステインS−メチル基転移酵素(EC 2.1.1.10)もまた、使用され得る。好ましくは、Escherichia coli由来のSAM依存性ホモシステインS−メチル基転移酵素(Thanbichlerら、J.Bacteriol.,181(2):662−5(1999))またはS.cerevisiae(Shapiroら、J.Biol.Chem.,239(5):1551−6(1964)およびThomasら、J Biol.Chem.,275(52):40718−24(2000))が、使用され得る。
【0054】
上記SAMは、任意の適切な形態で使用され得る。例えば、上記SAMは、上記サンプルに直接添加される。別の実施形態において、上記SAMは、さらなる反応によって生成される(例えば、SAMシンターゼによってATPおよびMetから生成される)。
【0055】
SAHは、当該分野で公知の方法のいずれかを使用して評価され得る。例えば、SAHは、SAHに特異的に結合する抗体を使用することによって評価され得る。抗体は、ポリクローナルまたはモノクローナルであり得る。SAHに対して特異的な抗体の例は、米国特許第5,631,127号および同第6,063,581号に記載される。SAHに特異的な抗体はまた、当該分野で公知の方法を使用して産生され得、その方法は、例えば、米国特許第5,631,127号および同第6,063,581号に記載される。
【0056】
任意の免疫学的アッセイは、SAHに対して特異的な抗体(例えば、溶液中または固体支持体上における競合アッセイまたはサンドイッチアッセイ、沈降/凝集アッセイ)を用いてSAHを検出するために使用され得る。いくつかの実施形態において、上記SAHは、SAMの存在下でSAM依存性ホモシステインS−メチル基転移酵素と反応させたサンプルと、SAHに対して特異的な抗体、および抗体に対する上記SAH以外の検出可能なハプテンとを接触させることによって評価され、ここでそのSAHの、存在または量を決定する工程は、上記抗体に、結合した検出可能なハプテンまたは結合しなかった検出可能なハプテンのいずれかの、存在または量を決定することによって間接的に達成される。いくつかの実施形態において、上記抗体は、キャリアーマトリックスに結合される。
【0057】
SAHはまた、SAHに対する結合親和性を有するが触媒活性が弱力化された、変異体SAH加水分解酵素を使用して評価され得る。これらの変異体SAH加水分解酵素、および変異体SAH加水分解酵素を使用するアッセイ方法は、米国特許番号第6,376,210号およびWO 03/060478に記載される。
【0058】
SAHはまた、SAH加水分解酵素によるSAHの、アデノシンおよびHcyへの変換によって評価され得、そして産生されたアデノシンが、評価される。いくつかの実施形態において、上記SAHは、SAMからHcyを産生するためにSAH加水分解酵素と接触され、そのSAMは、上記SAM依存性ホモシステインS−メチル基転移酵素によってHcy変換反応中に循環され、Hcy補基質ベースの酵素循環反応系、およびアデノシン(Ado)を形成し、そのアデノシンは、そのサンプル中のHcyの、存在、非存在および/または量を決定するために評価される。
【0059】
いくつかの実施形態において、本発明は、サンプル中のホモシステインをアッセイするための方法を提供し、その方法は、以下:a)サンプル中にホモシステインが存在する場合、メチル供与体(例えば、S−アデノシルメチオニン(SAM)、ならびにメチオニンおよびS−アデノシル−L−ホモシステイン(SAH)を形成する、SAM依存性ホモシステインS−メチル基転移酵素)を使用してホモシステインをメチル化する工程;b)当該形成されたSAHからアデノシン(Ado)を放出する工程、および酵素S−アデノシル−L−ホモシステイン加水分解酵素を使用してホモシステインを産生する工程;そしてc)当該サンプル中のホモシステインの、存在および/または量を決定するために当該放出されたAdoを評価する工程を包含する。上記方法はさらに、上記Adoの放出された量を長期にわたり測定する工程を包含し得る。好ましくは、工程a)および工程b)は、上記サンプル中のホモシステインの濃度に相関し得る割合で当該Adoを放出するために循環される。また好ましくは、上記Adoの放出の割合は、標準的なホモシステインの濃度値に相関する。任意の適切なメチル供与体および任意の適切なメチル基転移酵素が、使用され得る。例えば、上記メチル供与体は、SAMであり得、そして上記メチル化酵素は、SAM依存性ホモシステインメチル基転移酵素であり得る。好ましくは、上記メチル供与体SAMは、少なくとも約5μMの濃度で提供される。上記Ado形成の割合は、任意の適切な方法を使用して測定され得る。例えば、上記Ado形成の割合は、酵素的に測定され得る。好ましくは、上記Ado形成の割合は、Adoデアミナーゼ、グルタミン酸デヒドロゲナーゼ、プリンヌクレオシドホスホリラーゼ、キサンチンオキシダーゼ、ペルオキシダーゼ、アデノシンキナーゼ、またはこれらの酵素の2種以上の任意の組み合わせを使用して測定される。これらのアッセイ法はさらに、本明細書中に記載される。
【0060】
上記SAMは、任意の適切な形態で使用され得る。例えば、上記SAMは、上記サンプルに直接添加される。別の例において、上記SAMは、さらなる反応によって生成される(例えば、SAMシンターゼによってATPおよびMetから生成される)。
【0061】
任意のSAH加水分解酵素が、使用され得る。例えば、GenBank登録番号M61831〜M61832のヌクレオチド配列を含む核酸分子は、SAH加水分解酵素をコードする核酸を得るために使用され得る(Coulter−KarisおよびHershfield,Ann.Hum.Genet.,53(2):169−175(1989)を参照のこと)。また好ましくは、上記ヌクレオチドの配列を含むか、または米国特許第5,854,023号に記載されるアミノ酸をコードする核酸分子は、SAH加水分解酵素を得るために使用され得る。
【0062】
種々の還元剤(例えば、DTT、TCEP、システイン、メルカプトエタノール、ジチオエリスリトール、水酸化ホウ素ナトリウムなど)が、使用され得るが、DTT(例えば、約5mM濃度の)は、特に適している。DTTそれ自体は、低いpHで保管されるべきであり、従って、上記アッセイキットは都合の良いことに、低いpH(例えば、約3)であるが低い緩衝能およびSAH加水分解酵素の別個の溶液を有するDTTの溶液を含み、そのSAH加水分解酵素は、部分的にまたは完全に不活性であり得、実質的に中性pHであり得、そして好ましくは緩衝され得る。これらの溶液が、混合される場合、上記酵素は、中性pHで再活性化される。この組み合わせは、所望される場合、上記試験サンプルの存在下で生じ得るか、またはすぐその後に添加されるその試験サンプルと一緒に生じ得る。上に記載された他の還元剤は同様に、SAH加水分解酵素の安定化/活性化の両方のために使用される。TCEPは、上記酵素が上記還元剤と一緒に、同じ試薬中に含まれることを可能にする中性pHで保管され得る。
【0063】
上記Adoは、当該分野で公知の適切な方法のいずれか(例えば、免疫学的方法または酵素的方法)によって評価され得る。測光的(例えば、比色定量的、分光光度的または蛍光定量的)検出および免疫学的方法に依存する一般的方法は、臨床検査における使用に特に容易に適用され得るものとして使用され得る。酵素反応、またはモノクローナル抗体もしくはポリクローナル抗体を用いる反応に基づく方法はまた、単純かつ迅速であり、そして実施するのに比較的安価であり得るので使用され得る。例えば、上記Adoは、それを直接的または間接的に、測光的に(例えば、分光光度的に)検出され得る生成物に変換する酵素を用いる反応をモニタリングすることによって評価され得る。当然のことながらホモシステイン変換酵素の他の基質(特に、ホモシステイン)と非反応性であるべきである適切な酵素としては、アデノシンデアミナーゼ(アデノシンをイノシンに変換する)およびアデノシンキナーゼ(アデノシンおよびATPを、ADPおよびリン酸化したアデノシンに変換する)があげられる。そのような酵素はさらに、形成された生成物を、さらに検出可能な生成物に変換するために作用する他の酵素と組み合わせられ得る。
【0064】
従って、本発明のアッセイに有用な、例示的なAdo検出スキームとしては、以下:
【0065】
【化1−1】

【0066】
【化1−2】

が挙げられる。
【0067】
スキーム(1)において、イムノアッセイが行われ、そしてフルオレッセイン標識アデノシンが検出され得る。
【0068】
スキーム(2)において、上記反応は、アデノシンデアミナーゼによって触媒され、そして上記アデノシンデアミナーゼ反応によって産生されたアンモニアは、公知の方法(例えば、比色定量技術)を使用して容易に検出され得る。従って、例えば、上記サンプル中で産生されたアンモニアは、着色された生成物を形成するために反応され得、その形成は、スペクトル光度測定的(spectraphotometrically)に検出され得る。
【0069】
スキーム(2a)において、上記反応は、L−グルタミン酸デヒドロゲナーゼによって触媒され、そして上記NAD(P)は、340nmでスペクトル光度測定的に検出され得る。
【0070】
スキーム(2b1)において、上記反応は、プリンヌクレオシドホスホリラーゼによって触媒される。スキーム(2b2)およびスキーム(2b3)において、上記反応は、キサンチンオキシダーゼによって触媒される。スキーム(2b4)において、上記反応は、ペルオキシダーゼによって触媒される。上記イノシンおよび上記尿酸は、特有のUV吸収特性を有し、従って、反応速度測定によって、スペクトル光度測定的にモニタリングされ得る。しかし、尿酸またはイノシンのUV検出の使用は、その方法の感受性がやや悪く、そしてUV光源およびUV透過性サンプル容器を必要とするというある種の制限を有する。従って、550nmにおけるキノン色素の比色定量検出に頼ることは、より都合が良い。
【0071】
あるいは、スキーム(2b)において;上記キサンチンオキシダーゼ反応は、それ自体を、還元/酸化能力を評価することによってか、またはO消費量、もしくはより詳しくは、H形成を測定することによって(例えば、電子感知器の使用によって)、蛍光発生体または色素体(例えば、酸化還元指示薬)を使用する検出に役立つ。多くの酸化還元指示薬は、この目的のために使用され得、そして幅広い方法が、溶液中のHおよび溶液中のOの、アッセイについての文献に記載される。実際に、Hは臨床アッセイにおいて、頻繁に検出される。例えば、過酸化水素はまた、過酸化シュウ酸(peroxioxalate)およびアクリジニウムエステル(後者は中性pHの水溶液中にある)の、非酵素的化学発光反応を使用して評価され得る。
【0072】
スキーム(3)において、上記反応は、アデノシンキナーゼによって触媒される。スキーム(3a)において、上記反応は、ピルビン酸キナーゼによって触媒される。スキーム(3b)において、上記反応は、乳酸デヒドロゲナーゼによって触媒される。スキーム(3b)中で産生されたNAD(P)は、340nmでスペクトル光度測定的に検出され得る。
【0073】
任意のアデノシンデアミナーゼが、スキーム(2)について使用され得る。例えば、ウシ脾臓由来のアデノシンデアミナーゼ(Sigma−Aldrichカタログ番号A5168、6648および5043)、仔ウシ腸管粘膜由来のアデノシンデアミナーゼ(Sigma−Aldrichカタログ番号01898、A9876およびA1030)、またはヒト赤血球由来のヒトアデノシンデアミナーゼ(Sigma−Aldrichカタログ番号BCR647)が、使用され得る。別の例において、GenBank登録番号U76422(ヒト、Laiら、Mol.Cell.Biol.,17(5):2413−24(1997)も参照のこと)を有する核酸によってコードされるアデノシンデアミナーゼが、使用され得る。
【0074】
任意のプリンヌクレオシドホスホリラーゼが、スキーム(2b)について使用され得る。例えば、以下のGenBank登録番号:U88529(E.coli);U24438(E.coli,CornellおよびRiscoe,Biochim.Biophys.Acta,l396(l):8−l4(1998)も参照のこと);U83703(H.pylori);ならびにM30469(E.coli)を有する核酸によってコードされるプリンヌクレオシドホスホリラーゼが、使用され得る。
【0075】
任意のキサンチンオキシダーゼが、スキーム(2b)について使用され得る。例えば、以下のGenBank登録番号:AF080548(Sinorhizobium meliloti);ならびにU39487(ヒト、SakselaおよびRaivio,Biochem.J.,315(1):235−9(1996)も参照のこと)を有する核酸によってコードされるキサンチンオキシダーゼが、使用され得る。
【0076】
任意のアデノシンキナーゼが、スキーム(3)について使用され得る。例えば、以下のGenBank登録番号:NM_006721(Homo sapiens);NM_001532(Homo sapiens);NM_001123(Homo sapiens);NM_021129(Homo sapiens);およびBC003568(Homo sapiens)を有する核酸によってコードされるアデノシンキナーゼが、使用され得る。米国特許第5,861,294号、McNallyら、Biochem.Biophys.Res.Commun.231:645−650(1997)、およびSinghら、Eur.J.Biochem.241:564−571(1996)に開示されるアデノシンキナーゼがまた、使用され得る。
【0077】
任意のグルタミン酸デヒドロゲナーゼが、スキーム(2a)について使用され得る。例えば、Perez−de la Moraら、Anal.Biochem.,180(2):248−52(1989)およびGore,Int.J.Biochem.,13(8):879−86(1981)に開示されるグルタミン酸デヒドロゲナーゼ(またはグルタミン酸デヒドロゲナーゼ(glutamic acid dehydrogenase))が、使用され得る。
【0078】
任意のピルビン酸キナーゼが、スキーム(3a)について使用され得る。例えば、ブタ由来のピルビン酸キナーゼ(Sigma−Aldrichカタログ番号K4388)、Bacillus stearothermophilus由来のピルビン酸キナーゼ(Sigma−Aldrichカタログ番号P1903)、ニワトリ筋肉由来のピルビン酸キナーゼ(Sigma−Aldrichカタログ番号P5788)、およびウサギ筋肉由来のピルビン酸キナーゼ(Sigma−Aldrichカタログ番号83330)が、使用され得る。
【0079】
任意の乳酸デヒドロゲナーゼが、スキーム(3b)について使用され得る。例えば、ヒト由来の乳酸デヒドロゲナーゼ(Sigma−Aldrichカタログ番号BCR404)、Lactobacillus leichmanii由来の乳酸デヒドロゲナーゼ(Sigma−Aldrichカタログ番号61306)、Lactobacillus sp由来の乳酸デヒドロゲナーゼ(Sigma−Aldrichカタログ番号59023)、およびウサギ筋肉由来の乳酸デヒドロゲナーゼ(Sigma−Aldrichカタログ番号61311)が、使用され得る。
【0080】
本明細書中で記載される方法は、任意のサンプル(例えば、体液または生物学的組織)をアッセイするために使用され得る。典型的な体液としては、尿、血液、血漿、血清、唾液、精液、糞、痰、脳脊髄液、涙液、粘液および羊水が挙げられる。好ましくは、アッセイされる体液は、血液である。上記血液サンプルは、直接アッセイされ得るか、またはアッセイの前に処理され得る。例えば、上記血液サンプルはさらに、血漿画分または血清画分に分離され得る。
【0081】
上記サンプルと、上記Hcy補基質および上記Hcy変換酵素との間の接触の前、またはその接触と同時に、上記サンプル中の、酸化型Hcyまたは結合型Hcyは、還元型Hcyに変換され得る。上記血漿または上記尿において、ホモシステイン存在の有意な比率は、アルブミンのような循環するタンパク質へのジスルフィド結合によって結合され得、そしてホモシステインはまた、他のジスルフィド誘導体(一般的に、ホモシステイン−システイン結合体)の形態で存在し得る。上記サンプル中の全ホモシステイン存在の見積りを得るために、従って、上記サンプルを、上記ジスルフィド結合を切断し、そして遊離型ホモシステインを遊離する還元剤で処理することが好まれ得る。
【0082】
任意の適切な還元剤が、使用され得る。ジスルフィドは、チオール(例えば、トリ−n−ブチルホスフィン(TBP)、ジチオスレイトール(DTT)、ジチオエリスリトール(DTE)、2−メルカプト−エタノール、システイン−チオグリコール酸、チオグリコール酸、トリス(2−カルボキシエチル)ホスフィン、遊離型の金属、グルタチオン、および類似の化合物)によって容易かつ特異的に還元される。直接の化学的還元は、ホウ化水素(例えば、ホウ化水素ナトリウム)、もしくはアマルガム(例えば、アマルガムナトリウム)を使用して達成され得るか、またはより特化した試薬(例えば、ホスフィンもしくはホスホロチオエート)が、使用され得る。ジスルフィド反応は、幅広い適切な還元剤が列挙されるJocelynのMethods of Enzymology 143:243−256(1987)によって概説される。上記還元剤はまた、トリス(2−カルボキシエチル)−ホスフィン塩酸(TCEP)であり得る。好ましくは、上記ジチオスレイトールまたは上記TCEPは、約30mMまでの濃度で提供される。
【0083】
本発明の方法はさらに、上記サンプルと、上記Hcy補基質および上記Hcy変換酵素とを接触させる工程の前、または接触させる工程と同時に、酸化型Hcyまたは結合型Hcyを、還元型Hcyに変換するために使用する還元剤を除去する工程を包含し得る。例えば、上記還元剤は、N−エチルマレイミドの添加または他のチオ−反応化合物の添加によって除去され得る。
【0084】
(C.ホモシステインをアッセイするためのキット)
別の局面において、本発明は、サンプル中のHcyをアッセイするためのキットに関し、そのキットは、以下:a)Hcy変換酵素;b)Hcy補基質;およびc)Hcy補基質変換生成物を評価するための試薬を備える。
【0085】
いくつかの実施形態において、上記Hcy補基質はS−アデノシルメチオニン(SAM)であり、上記Hcy変換酵素はS−アデノシルメチオニン(SAM)依存性ホモシステインS−メチル基変換酵素であり、そして上記Hcy補基質変換生成物はS−アデノシル−L−ホモシステイン(SAH)である。いくつかの実施形態において、Hcy補基質変換生成物SAHを評価するための試薬は、SAHに対して特異的に結合する抗体である。
【0086】
別の局面において、本発明は、サンプル中のHcyをアッセイするためのキットに関し、そのキットは、以下:a)S−アデノシルメチオニン(SAM)依存性ホモシステインS−メチル基転移酵素;b)S−アデノシルメチオニン(SAM)またはATP、MetおよびSAMシンターゼ;c)SAH加水分解酵素;およびd)アデノシン(Ado)を評価するための試薬を備える。
【0087】
さらに別の局面において、本発明は、サンプル中のHcyをアッセイするためのキットに関し、そのキットは、以下:a)S−アデノシルメチオニン(SAM)依存性ホモシステインS−メチル基転移酵素;b)S−アデノシルメチオニン(SAM)またはATP、MetおよびSAMシンターゼ;ならびにc)SAHを評価するための試薬を備え、ここでそのキットは、Hを産生するための、酵素または試薬およびHを検出するための試薬を備えない。
【0088】
いくつかの実施形態において、上記Adoをアッセイするための試薬は、SAH加水分解酵素以外のアデノシン変換酵素を含む。いくつかの実施形態において、上記アデノシン変換酵素は、アデノシンキナーゼである。他の実施形態において、上記アデノシン変換酵素は、アデノシンデアミナーゼである。
【0089】
本明細書中に記載されるキットはさらに、還元剤(例えば、ジチオスレイトールまたはトリス(2−カルボキシエチル)−ホスフィン塩酸(TCEP)を備え得る。
【0090】
本発明のキットは、任意の適切なパッケージ中にあり得る。例えば、本明細書中で診断システムに関連して議論されるパッケージは、診断システムに習慣的に利用されるパッケージである。そのようなパッケージとしては、ガラスおよびプラスチック(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンおよびポリカーボネート)、瓶およびバイアル、プラスチックおよびプラスチック箔を積層した包装材料などが挙げられる。上記パッケージはまた、自動アナライザーにおける使用に適した容器を含み得る。上記パッケージは代表的に、本明細書中に記載されるアッセイを行うための説明書を備える。
【実施例】
【0091】
(D.実施例)
以下の実施例は、例示する目的のみのために含まれ、そして本発明の範囲を限定することを意図しない。
【0092】
(実施例1.精製されたSAMを使用する酵素循環によって産生されたNHを検出するGLDH−NADH共役)
この研究において、以下の共役した酵素循環反応:
【0093】
【化2】

を使用する。
【0094】
スキーム(1)において、上記反応は、SAM依存性ホモシステインS−メチル基転移酵素によって触媒される。スキーム(2)において、上記反応は、SAH加水分解酵素によって触媒される。スキーム(3)において、上記反応は、アデノシンデアミナーゼによって触媒される。スキーム(4)において、上記反応は、L−グルタミン酸デヒドロゲナーゼによって触媒される。上記NAD(P)を、340nmでスペクトル光度測定的に検出する。この研究において使用される試薬の、より詳細な説明を、以下の表1および表2に示す。
【0095】
【表1】

【0096】
【表2】

この研究において、180μlの試薬1を、20μlの、試験する血清サンプルまたは試験する血漿サンプルと混合し、その混合物を、37℃で5分間インキュベートした。その後、60μlの試薬2を、上記混合物に添加し、そしてそれを37℃で、さらに5分間インキュベートした。340nmにおける吸光度の変化を、上記試薬2を添加した後の2分間〜5分間について測定した。1つの例示的な試験結果を図2に示した。
【0097】
(実施例2.ATPおよびメチオニンから、SAMシンターゼによって同時に変換されたSAMを使用する酵素循環によって産生されたNHを検出するGLDH−NADH共役)
この研究において、以下の共役した酵素循環反応:
【0098】
【化3】

を使用する。
【0099】
スキーム(1)において、上記反応は、SAMシンターゼによって触媒される。スキーム(2)において、上記反応は、SAM依存性ホモシステインS−メチル基転移酵素によって触媒される。スキーム(3)において、上記反応は、SAH加水分解酵素によって触媒される。スキーム(4)において、上記反応は、アデノシンデアミナーゼによって触媒される。スキーム(5)において、上記反応は、L−グルタミン酸デヒドロゲナーゼによって触媒される。上記NAD(P)を、340nmでスペクトル光度測定的に検出する。この研究において使用される試薬の、より詳細な説明を、以下の表3および表4に示す。
【0100】
【表3】

【0101】
【表4】

この研究において、270μlの試薬3を、20μlの、試験する血清サンプルまたは試験する血漿サンプルと混合し、そしてその混合物を、37℃で5分間インキュベートする。その後、60μlの試薬4を、上記混合物に添加し、そしてそれを37℃で、もう一度5分間インキュベートした。340nmにおける吸光度の変化を、上記試薬4を添加した後の2分間〜5分間について測定した。
【0102】
(実施例3.酵素循環によって産生されたアデノシンを検出する、アデノシンキナーゼ−ピルビン酸キナーゼ−乳酸デヒドロゲナーゼ−NADH共役)
この研究において、以下の共役した酵素循環反応:
【0103】
【化4】

を使用する。
【0104】
スキーム(1)において、上記反応は、SAM依存性ホモシステインS−メチル基転移酵素によって触媒される。スキーム(2)において、上記反応は、SAH加水分解酵素によって触媒される。スキーム(3)において、上記反応は、アデノシンキナーゼによって触媒される。スキーム(4)において、上記反応は、ピルビン酸キナーゼによって触媒される。スキーム(5)において、上記反応は、乳酸デヒドロゲナーゼによって触媒される。上記NAD(P)を、340nmでスペクトル光度測定的に検出する。この研究において使用される試薬の、より詳細な説明を、以下の表5および表6に示す。
【0105】
【表5−1】

【0106】
【表5−2】

【0107】
【表6】

この研究において、180μlの試薬5を、20μlの、試験する血清サンプルまたは試験する血漿サンプルと混合し、そしてその混合物を、37℃で5分間インキュベートする。その後、60μlの試薬6を、上記混合物に添加し、そしてそれを37℃で、さらに5分間インキュベートした。340nmにおける吸光度の変化を、上記試薬2を添加した後の2分間〜5分間について測定する。
【0108】
(実施例4.例示的なDiazymeホモシステイン酵素的アッセイとCatchホモシステインアッセイとの間の比較)
精度を実証するために、例示的なDiazymeホモシステイン酵素的アッセイを、Cobas Miraアナライザー上、およびBeckman Synchron CX−7アナライザー上の両方におけるCatchホモシステインアッセイに対して比較して個々の血清サンプルを用いて試験した。例示的なDiazymeホモシステイン酵素的アッセイを、実施例1に示される手順によって行った。Catchホモシステインアッセイは、米国特許第6,174,696号および同第6,436,658号に記載される。
【0109】
この研究に使用した個々の患者血清サンプルは、認定された商業的供給源、ProMedDx,LLC由来である。上記血清サンプルは、IRBによって認定された(即ち、サンプルを収集するために使用したプロトコルおよびインフォームドコンセントは、IRBによって認可された)。報告可能なダイナミックレンジを越えて分散したホモシステインの濃度を確定するために、本研究に使用したいくつかのホモシステイン血清サンプルを、標的濃度までホモシステインのストック溶液に混合した。
【0110】
1つの試験において、例示的なDiazymeホモシステイン酵素的アッセイおよびCatchホモシステインアッセイを、Cobas Miraアナライザー上で比較した。47個の血清サンプルの全てを試験した。生じたホモシステイン値の比較結果を、以下の表7に示す。
【0111】
【表7−1】

【0112】
【表7−2】

Diazymeホモシステイン酵素的アッセイによって得られたホモシステイン濃度をまた、Catchホモシステインアッセイによって得られたホモシステイン濃度に対してプロットする。図3に示されるように、その傾きは、1.029であり、そして上記2つの方法の間の相関係数は、0.97であり、そしてy切片は、1.47である。
【0113】
別の試験において、例示的なDiazymeホモシステイン酵素的アッセイおよびCatchホモシステインアッセイを、Beckman Synchron CX−7アナライザー上で比較した。15個の血清サンプルの全てを試験した。ホモシステイン値の比較結果を、以下の表8に示す。
【0114】
【表8−1】

【0115】
【表8−2】

Diazymeホモシステイン酵素的アッセイによって得られたホモシステイン濃度をまた、Catchホモシステインアッセイによって得られたホモシステイン濃度に対してプロットする。図4に示されるように、その傾きは、1.07であり、そして上記2つの方法の間の相関係数は、0.99であり、そしてy切片は、−1.14である。
【0116】
上の実施例は、例示する目的のみのために含まれ、そして発明の範囲を限定することを意図しない。上述された実施例についての多くの変更が可能である。上述された実施例についての改変および変更は、当業者にとって明らかであるので、本発明が特許請求の範囲によってのみ限定されることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0117】
【図1】図1は、ホモシステインについての例示的なアッセイ法を例示する。Hcy:L−ホモシステイン;SAM:S−アデノシルメチオニン;HMTase:SAM依存性ホモシステインS−メチル基転移酵素;およびSAHase:S−アデノシル−L−ホモシステイン加水分解酵素。
【図2】図2は、実施例1に記載される実験で得られた、血清ホモシステイン用量反応曲線を示す。
【図3】図3は、Cobas Miraアナライザー上で行われた、典型的なDiazymeホモシステイン酵素的アッセイとCatchホモシステインアッセイとの間の比較を示す。
【図4】図4は、Beckman Synchron CX−7アナライザー上で行われた、例示的なDiazymeホモシステイン酵素的アッセイとCatchホモシステインアッセイとの間の比較を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプル中のホモシステイン(Hcy)を、クロマトグラフ分離せずにアッセイするための方法であって、該方法は以下:
a)Hcy変換生成物およびHcy補基質変換生成物を形成するために、Hcy変換反応中で、Hcyを含むサンプルまたはHcyを含むと推測されるサンプルと、Hcy補基質およびHcy変換酵素とを接触させる工程であって、ここで該Hcy補基質はS−アデノシルメチオニン(SAM)であり、該Hcy変換酵素はS−アデノシルメチオニン(SAM)依存性ホモシステインS−メチル基転移酵素であり、該Hcy変換生成物はメチオニン(Met)であり、そして該Hcy補基質変換生成物はS−アデノシル−L−ホモシステイン(SAH)である、工程;
b)SAMからHcyを産生するために該SAHとSAH加水分解酵素とを接触させる工程によって、工程(a)で産生された該Hcy補基質変換生成物SAHを評価する工程であって、該SAMは、該SAM依存性ホモシステインS−メチル基転移酵素によってHcy変換反応中に循環され、Hcy補基質ベースの酵素循環反応系、およびアデノシン(Ado)を形成し、該アデノシンは、該サンプル中の該Hcyの、存在、非存在および/または量を決定するために評価される工程
を包含する、方法。
【請求項2】
前記Adoが、前記SAH加水分解酵素以外のアデノシン変換酵素と接触される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記Adoの評価が、前記アデノシン変換酵素によるアデノシン変換の、補基質の評価または反応生成物の評価によって間接的に達成される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記アデノシン変換酵素がアデノシンキナーゼである、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記アデノシン変換酵素がアデノシンデアミナーゼである、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記サンプルが、体液または生物学的組織である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記体液が、尿、血液、血漿、血清、唾液、精液、糞、痰、脳脊髄液、涙液、粘液、羊水からなる群より選択される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記体液が血液である、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記血液サンプルが、さらに血漿画分または血清画分に分離される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記サンプルと前記Hcy補基質および前記Hcy変換酵素との間の接触の前、または接触と同時に、該サンプル中の酸化型Hcyまたは結合型Hcyが還元型Hcyに変換される、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記Adoが、クロマトグラフ分離なしで評価される、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記SAMが、前記サンプルに添加される、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記SAMが、SAMシンターゼによって、ATPおよびMetから生成される、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
サンプル中のホモシステイン(Hcy)をアッセイするための方法であって、該方法は以下:
a)Hcy変換生成物およびHcy補基質変換生成物を形成するために、Hcy変換反応中で、Hcyを含むサンプルまたはHcyを含むと推測されるサンプルと、Hcy補基質およびHcy変換酵素とを接触させる工程であって、ここで該Hcy補基質はS−アデノシルメチオニン(SAM)であり、該Hcy変換酵素はS−アデノシルメチオニン(SAM)依存性ホモシステインS−メチル基転移酵素であり、該Hcy変換生成物はメチオニン(Met)であり、そして該Hcy補基質変換生成物はS−アデノシル−L−ホモシステイン(SAH)である、工程;
b)該サンプル中のHcyの、存在、非存在および/または量を決定するために、該Hcy補基質変換生成物SAHを評価する工程であって、ここで該SAHが、クロマトグラフ分離なしで評価される、工程
を包含する、方法。
【請求項15】
前記SAHの評価が、Hを産生する酵素反応およびHの検出に関連しない、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記SAMが前記サンプルに添加される、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記SAMが、SAMシンターゼによって、ATPおよびMetから生成される、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
サンプル中のHcyをアッセイするためのキットであって、該キットは、以下:
a)S−アデノシルメチオニン(SAM)依存性ホモシステインS−メチル基転移酵素;
b)S−アデノシルメチオニン(SAM)またはATP、MetおよびSAMシンターゼ;
c)SAH加水分解酵素;および
d)アデノシン(Ado)を評価するための試薬
を備える、キット。
【請求項19】
前記Adoを評価するための試薬が、前記SAH加水分解酵素以外のアデノシン変換酵素を含有する、請求項18に記載のキット。
【請求項20】
前記アデノシン変換酵素が、アデノシンキナーゼまたはアデノシンデアミナーゼである、請求項18に記載のキット。
【請求項21】
サンプル中のHcyをアッセイするためのキットであって、該キットは以下:
a)S−アデノシルメチオニン(SAM)依存性ホモシステインS−メチル基転移酵素;
b)S−アデノシルメチオニン(SAM)またはATP、MetおよびSAMシンターゼ;ならびに
c)SAHを評価するための試薬
を備えし、Hを産生するための酵素または試薬、およびHを検出するための試薬を備えない、キット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2007−528714(P2007−528714A)
【公表日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−518957(P2006−518957)
【出願日】平成16年7月9日(2004.7.9)
【国際出願番号】PCT/US2004/022218
【国際公開番号】WO2005/008252
【国際公開日】平成17年1月27日(2005.1.27)
【出願人】(591056259)
【Fターム(参考)】