説明

ホモジナイザ

【課題】 従来よりも短時間で、容器内の試料、試料及び液体又は液体を均一にすることが可能となるホモジナイザを提供する。
【解決手段】 試料、試料及び液体又は液体を収容する容器10と、容器10の内部に配置された円筒状の外刃20と、外刃20の内側に配置され、回転する内刃30と、内刃30を回転させる回転駆動体50とを備え、外刃20と内刃30が回転駆動体50よりも上方に位置するホモジナイザ1により課題を解決した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体試料や固形試料などの試料中に存在する成分を抽出可能に粉砕し、食品、薬品等の液体を攪拌するために用いるホモジナイザに係るものである。
【背景技術】
【0002】
試料に含まれる固形成分を抽出可能に粉砕するホモジナイザには、固定刃(外刃)と固定刃の内部空間に配置された高速回転する回転刃(内刃)による相互作用を利用してホモジナイズ処理を行うローター/ステーター式ホモジナイザ、加圧した試料を隙間から噴出させる際に生じる剪断力を利用してホモジナイズ処理を行う高圧ホモジナイザ、超音波の振盪攪拌力を利用してホモジナイズ処理を行う超音波ホモジナイザ、攪拌したビーズの衝撃と摺り作用を利用してホモジナイズ処理を行うビーズ式ホモジナイザなど、色々な形式がある。
【0003】
ローター/ステーター式ホモジナイザは、高速回転する内刃の外側に配置された外刃が固定されて回転しないため、容器に内刃が衝突する心配がなく、小さな容器であっても容易にホモジナイズでき、どのような容器であっても安心して使えるという特徴がある。
【0004】
ローター/ステーター式ホモジナイザの内刃を高速回転させると、外刃の内部空間に位置する試料に含まれる固形成分は、内刃の先端部で引っ張られると同時に、外刃の開口先端部に留まるため、引きちぎられ砕かれて小さくなり、さらに、外刃のスリット状の穴を通過する際、外刃のスリット状の穴と内刃の相互作用によってより細かく破砕され、外刃の外側に排出される。
【0005】
ローター/ステーター式ホモジナイザにおいては、試料の吐き出しと試料の吸い込みが繰り返して行われる。即ち、外刃の内部空間に存在する試料は、高速回転する内刃の遠心力で放射状に移動し、外刃のスリット状の穴から外側に排出される(試料の吐き出し)。試料を吐き出した後の外刃の内部空間には外刃の開口先端部から試料が入り込む(試料の吸い込み)。内刃の回転数を高くすると、試料の吐き出しと試料の吸い込みは勢いを増す。
【0006】
ローター/ステーター式ホモジナイザは、例えば、特許文献1に記載されている。特許文献1に記載されたホモジナイザは、回転動力源と、回転動力源の下方に配置され、筒状の固定刃(外刃)及び回転動力源に連結され、固定刃の内部に回転可能に保持された可動刃(内刃)を備えた、ジェネレータシャフトとを有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−275808
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
内刃を高速回転させるローター/ステーター式ホモジナイザにおいては、内刃と接続されたジェネレータシャフトの軸部(駆動軸)も高速回転するため、どうしてもジェネレータシャフトの軸部から発熱する。ジェネレータシャフトの軸部の摺動により発生する熱は、小さな容器では非常に大きな問題となる。また、生体試料については、ジェネレータシャフトの軸部の摺動により発生する熱によって、酵素の熱変性により酵素活性が落ちたり、RNAの熱変性によりRNAの抽出に支障を来したりする。生体物質の熱変性(分解や失活)を恐れるあまり、容器内が不均一であっても仕方なくホモジナイズ処理を終えることも少なくなく、不均一であることが原因で、その後の抽出効率が悪くなる。それ故、容器内の試料及び/又は液体の均質化はできるだけ短時間で行うことが望ましい。
【0009】
しかしながら、特許文献1に記載されたホモジナイザは、回転動力源の下方にジェネレータシャフトが配置されているため、外刃の開口先端部が容器の下方に位置するようになることから、ホモジナイズ処理の対象となる試料及び/又は液体は下方から外刃の内部空間に入り込むことになる。それ故、特許文献1に記載されたホモジナイザを用いてホモジナイズ処理を行うと、試料及び/又は液体は、外刃のスリット状の穴から吐き出された後、容器の壁面にぶつかり、下方のみならず、上方にも流れ、特に小さな容器ではランダムになるが、試料及び/又は液体は、上述したように、下方にある外刃の開口先端部から吸い込まれるため、下方に流れた試料及び/又は液体は容易に外刃の開口先端部から吸い込まれるのに対し、上方に流れた試料及び/又は液体の中には容器の上部に漂う場合もあり、容器の上部に漂って下方に流れないものについては、下方にある外刃の開口先端部から吸い込まれにくく、その結果として、外刃の内部空間に到達しにくくなることから、容器内の試料及び/又は液体の均質化に時間がかかってしまうことになる。
【0010】
一方、上にモータ、下に外刃と内刃が付いた状態で、容器を逆さまにした場合には、当然のことながら、試料及び/又は液体がこぼれ、操作する人の手やモータを濡らし、大変危険な状態となる。
【0011】
本発明の目的とするところは、従来よりも短時間で、容器内の試料及び/又は液体を均一にすることが可能となるホモジナイザを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者は、前記課題を解決するため、鋭意検討を重ねた結果、固定される円筒状の外刃と高速回転する内刃が、内刃を回転させる回転駆動体よりも上方に位置するホモジナイザにより上記目的を達成することを見出した。
【0013】
即ち、本発明のホモジナイザは、試料、試料及び液体又は液体を収容する容器と、該容器の内部に配置された円筒状の外刃と、該外刃の内側に配置され、回転する内刃と、該内刃を回転させる回転駆動体とを備えたホモジナイザであって、前記ホモジナイザは、前記外刃と前記内刃が前記回転駆動体よりも上方に位置することを特徴とする。
【0014】
また、本発明の好適形態としては、前記外刃は、上端又は上端付近から長手方向に伸びた直線状のスリット貫通穴を有し、かつ該スリット貫通穴の下方端を前記容器の底面と略面一となるように配置したものであり、前記固定手段は、前記外刃の上端近傍と嵌合する一個の第一の穴と該第一の穴より小さい複数個の第二の穴とを備えた、固定板であり、前記ホモジナイザは、さらに、前記容器を外側から冷却する冷却手段を備えたものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明のホモジナイザは、従来よりも短時間で、ホモジナイズ処理を行い、容器内の試料及び/又は液体を均一にすることが可能となる。その結果、生物試料については、本発明のホモジナイザを使用することにより、熱変性の心配をすることなくホモジナイズ処理を行うことが可能となるため、その後の抽出効率も向上することになる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明のホモジナイザの一実施態様の概略を示す図である。
【図2】本発明のホモジナイザの他の一実施態様の概略を示す図である。
【図3】(a)本発明のホモジナイザに用いる外刃の一例を示す斜視図であり、(b)本発明のホモジナイザに用いる外刃の他の一例を示す斜視図である。
【図4】(a)本発明のホモジナイザに用いる内刃の一例を示す斜視図であり、(b)本発明のホモジナイザに用いる内刃の他の一例を示す斜視図である。
【図5】(a)本発明のホモジナイザに用いる台座の一例を示す縦断面図であり、(b)本発明のホモジナイザに用いる台座の他の一例を示す縦断面図である。
【図6】本発明のホモジナイザにおいて固定手段を設置しなかった場合における容器内の循環流の一例を示す概念図である。
【図7】(a)本発明のホモジナイザに用いる固定板の一例を示す平面図であり、(b)本発明のホモジナイザに用いる固定板の他の一例を示す平面図であり、(c)本発明のホモジナイザに用いる固定板のその他の一例を示す平面図であり、(d)本発明のホモジナイザに用いる固定板のその他の一例を示す平面図である。
【図8】(a)本発明のホモジナイザに用いる固定板の一例を示す斜視図であり、(b)本発明のホモジナイザに用いる固定板の他の一例を示す斜視図である。
【図9】本発明のホモジナイザにおいて固定手段を設置した場合における容器内の循環流の一例を示す概念図である。
【図10】本発明のホモジナイザに用いる冷却手段の他の一例の断面を含む分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を説明する。ホモジナイザ1は、容器10と、外刃20と、内刃30と、台座40と、回転駆動体50と、固定手段60と、冷却手段70とを備える(図1,図2)。
【0018】
容器10は試料及び/又は液体を収容する。容器10の形状は筒状体であれば特に限定されない。容器10の幅方向断面の形状は、円形(図1,図2)、楕円形、三角形、四角形、六角形、八角形のいずれの形状であってもよい。
【0019】
容器10の容積は、生体試料の場合、例えば、0.5〜10ミリリットルが適切であるが、試料及び/又は液体の種類や処理量に応じて適宜変更してもよい。容器10の内径は外刃20の外径より数ミリ程度大きい場合であっても差し支えない。
【0020】
容器10の上端は、図1及び図2のように解放してもよく、解放せずに密閉状態にしてもよい(不図示)。容器10の上端を解放する場合には、容器10の上端部には、容器10の開口12を密閉する蓋80の内側に設けられた第1の雌ねじ部81と螺合する第1の雄ねじ部11を設け、容器10と蓋80を着脱可能にするのが望ましい。容器10の上端を解放しない場合には、容器の内部に試料及び/又は液体を挿入することが可能となる機構や構造体を設置する。
【0021】
容器10の内部壁面には、長手方向に伸び、後述する固定板60aの外周に設置した係止穴63と係合する係合突起13が設けられ、固定板60aが所定の位置に固定される。
【0022】
容器10の底部には、外刃20を埋め込むための貫通穴15が設けられる。
【0023】
容器10の下端部には、後述する台座40に設置した第2の雄ねじ部44に螺合する第2の雌ねじ部14が設けられ、台座40に容器10を強固に固定する一方で、外刃20を交換するときなどには、容器10と台座40を分離できるようになっている。
【0024】
容器10の素材としては、ホモジナイズ処理する対象となる生体試料が感染の可能性があり、一回限りで使い捨てなければならない場合には、ポリスチレン、ポリプロピレン、アクリル、ポリカーボネートなどの樹脂が好ましく、再利用という点を考慮すると、樹脂以外のガラスであってもよい。
【0025】
なお、容器は、後述する固定板を下端又は中途に設置した上部容器と、後述する外刃及び台座と一体化させた下部容器の二部構成にしてもよい(不図示)。容器を二部構成にすることにより、容器の製造が容易になり、容器の取扱いもしやすくなる。容器を二部構成にする場合には、例えば、上部容器に、外刃を押え付けるO−リングと、下部容器の雄ねじ部と係合する雌ねじ部とを設け、下部容器に、上部容器の雌ねじ部と係合する雄ねじ部と、上部容器に設置したO−リングを押す突起部と、外刃を固定する留め具(ストッパー)とを設ける。
【0026】
容器10に収納された試料及び/又は液体は、外刃20と内刃30の相互作用によりホモジナイズ処理される。
【0027】
外刃20は円筒状に形成される(図3(a),同(b))。外刃20の側面には、上端付近から長手方向に伸びた直線状のスリット貫通穴21が複数個配置され、上端(開口端)から長手方向に向かって窪んだ溝部22が複数個配置される(図3(a))。ここで、図3(b)のように、スリット貫通穴21と溝部22は、分離させずに連続させて、上端から長手方向に伸びた直線状のスリット貫通穴23を形成させてもよい。外刃20の上端面25は、水平面25aだけでもよく、水平面25aの他、水平面25aに対して緩やかに傾斜させた傾斜面25bを形成させてもよい(図3(a),同(b))。
【0028】
外刃20のスリット貫通穴21,23の下方端26は、容器10の底面16と略面一になるように配置するのが好ましい。これにより、外刃20のスリット貫通穴21,23から容器10の壁面付近92に移動して、容器10の壁面に沿って外刃20の開口端29の高さまで上昇し、外刃20の開口端29に至るまでの矢示93の循環流(図6及び図9参照)がより効率よく発生する。
【0029】
外刃20は、図5(b)のように、台座40と一体化させてもよく(台座一体形式)、図5(a)のように、容器10と台座40の双方と分離させてもよく(分離形式)、容器10と一体化させてもよい(容器一体形式)。台座一体形式は、使い捨てに適しており、他の形式に比べ、外刃20の使用後の処理をしなくてもよくなるため、ホモジナイザのメンテナンスが楽になり、それに加え、台座40と外刃20を結合させる作業も必要なくなるため、ホモジナイザの組立や分解が簡単になるという利点がある。また、分離形式は、外刃20の交換・洗浄等が容易になるという利点がある。
【0030】
外刃20の素材としては、硬くて強度のあるものであれば特に限定されず、金属、セラミック、エンジニアプラスチックなどが挙げられる。外刃20と台座40を一体化する場合には、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)などのエンジニアプラスチックが適切である。これにより、破砕力の向上、ユーザーコストの削減、循環型社会へ対応させ、環境を配慮した利用が可能である。
【0031】
外刃20の下端方向の内部には上部軸受け27が設置される。上部軸受け27は外刃20と一体成型してもよく、一体成形しなくてもよい。外刃20を台座40と一体化する場合、上部軸受け27には摺動性が必要となる。
【0032】
内刃30の形状としては、例えば、上方部31を矩形とし、下方部32を円筒形にしたものが挙げられる(図4(a),同(b))が、特に限定されず、公知の形状を用いることができる。また、内刃30の上方部分には、凹部33を設けてもよく(図4(a))、突起34,34としてもよい(図4(b))。
【0033】
内刃30は、接続された駆動軸51を介して与えられた回転駆動体50の動力により、1分間に1000回転〜30000回転する。内刃30は、駆動軸51の一端とジョイント52を介して結合させてもよく、加工した駆動軸51の一端に成形して駆動軸51と一体化させてもよい。駆動軸51の他端はジョイント52を介して回転駆動体50と結合される。
【0034】
内刃30は、接続された駆動軸51を外刃20の下端方向の内部に配置した上部軸受け27に貫通させることにより、外刃20の内部空間28に配置される。
【0035】
台座40は容器10を強固に固定して安定させる。台座40を設けて容器10と分離させることにより、外刃20の強度が増加する。台座40には、容器10の下端部に設置された第2の雌ねじ部14と螺合する第2の雄ねじ部44が設けられ、台座40に容器10を強固に固定する一方で、外刃20を交換するときなどには、容器10と台座40を分離できるようになっている。
【0036】
台座40は、図5(a)のように、外刃20と分離させてもよく、図5(b)のように、外刃20と一体化させてもよい。台座40と外刃20を分離させた場合には、外刃20を押圧する弾性体(例えば、O−リング41)と、軸シール42と、外刃20を埋め込むための貫通穴45とが設けられる。容器10の下端16で押圧された弾性体(O−リング41)は、内側に拡がって外刃20を締め付けると同時に、台座40と容器10の隙間がなくなるため、試料及び/又は液体が外刃20の外周部分から漏れなくなる。台座40と外刃20を一体化させた場合には、弾性体(例えば、O−リング41)と、軸シール42と、下部軸受け43が設けられる。容器10の下端17で弾性体(O−リング41)が押圧され、台座40と容器10の隙間がなくなるため、試料及び/又は液体が台座40の外周部分から漏れなくなる。
【0037】
回転駆動体50は、内刃30を高速回転させる。回転駆動体50としては、例として、モータが挙げられるが、内刃30に高速回転させる動力を与えるものであれば特に限定されず、公知の技術を使用することができる。回転駆動体50は、例えば、収納ケース53に収納される。
【0038】
容器10に試料及び/又は液体を入れ、回転駆動体50を起動すると、内刃30が高速回転し、試料に含まれる固形成分が外刃20の開口端29から外刃20の内側に吸い込まれ(吸込)、外刃20の開口端付近において内刃30と外刃20の相互作用で粉砕され、小さくなった固形成分は外刃20のスリット貫通穴21,23から外刃20の外側に排出する際に高速回転する内刃30によって更に細かく砕かれ、外刃20の外側に排出される(排出)。外刃20の外側に排出された固形成分は流れに沿って容器の上方に移動して、再び外刃20の開口端付近に到達し、外刃20の開口端29から外刃20の内側に吸い込まれる(吸込)。それ故、本発明のホモジナイザは、上述した吸込と排出の繰り返しにより、容器10の内部では、ランダムな流れにならないことは勿論のこと、上下に二分する流れもなくなり、外刃20のスリット貫通穴21,23から外刃20の開口端29に至るまでの矢示93の循環流が発生する(図6参照)ことに加え、容器10の上部に漂う固形成分についても効率よく外刃20の開口端29に集めることができるため、従来のホモジナイザと比べ、短時間で均質な破砕が可能となる。
【0039】
固定手段60は、所望により設置する。固定手段60は外刃20の上端近傍24を固定する。高速回転する内刃30の勢いによって吸い込まれた硬い固形成分や筋のある固形成分などは、外刃20と内刃30の間隙に入り込み、外刃20に対して引っ張る力、外側に押し拡げる力などを及ぼすが、固定手段60を設置することにより、外刃20は外側から固定手段60に押え込まれるため、外刃20の上端部分の広がり、曲がり及び折れがなくなり、外刃20の破砕性能を担保する。
【0040】
固定手段60は、外刃20の上端近傍24と嵌合する一個の第一の穴61と第一の穴より小さい複数個の第二の穴62とを備えた固定板60aであるのが好ましい。固定板60aを設置することにより、大きな固形成分91が外刃20の下端側面に沈むことなく、外刃20の上端、即ち開口端29に吸い込まれるため、容器10内の試料及び/又は液体を均一化する時間がより短縮され、加温による生体試料成分の変質も効果的に抑制することができるからである。
【0041】
第一の穴61は固定板60aの縮径した中央部に設けられる。第一の穴61は、外刃20の上端近傍24(例えば、上端から1ミリ程度下方)と嵌合して、外刃20の上端近傍24を固定する。第一の穴61の外周61aには、係合突起61bが配置され、外刃20の上端近傍24の溝部22又はスリット貫通穴23と嵌合して、外刃20の上端近傍24を外側から固定する。
【0042】
第二の穴62は、固定板60aに複数設けられる。第二の穴62により、大きな固形成分91が容器10の下方に沈むことなく、破砕された小さな固形成分も容器10の上側にある外刃20の開口端29に吸い込まれるため、容器10内の試料及び/又は液体を均一化する時間がさらに短縮されるからである。第二の穴62の形は、外刃20と内刃30の相互作用で破砕された小さな固形成分は固定板60aで区切られた容器10の下側から上側に移動することができるが、大きな固形成分91は固定板60aで区切られた容器10の上側から下側に移動することができなければ、特に限定されず、半円穴62a(図7(a))、スリット穴62b(図7(b))、三角穴62c(図7(c))、丸穴62d(図7(d))、楕円などが挙げられる。第二の穴62の位置は、外刃20と内刃30の相互作用で破砕された小さな固形成分は固定板60aで区切られた容器10の下側から上側に移動することができるが、大きな固形成分91は固定板60aで区切られた容器10の上側から下側に移動することができなければ、特に限定されず、固定板60aの外周に、外刃20のスリット貫通穴21,23に対応させた穴であってもよい。なお、第二の穴62の少なくとも一つの内径は、外刃20のスリット貫通穴21,23から排出された固形成分が通過するために、外刃20のスリット貫通穴21,23のスリット幅より大きくする必要がある。
【0043】
固定板60aの形状は、上が拡開し下が縮径した漏斗状に形成するのが好ましい(図1,図2,図8(a),同(b))。容器10に試料及び/又は液体を投入すると、試料中の粉砕対象となる大きい固形成分91は、固定板60aの上側に落ちるが、固定板60aの上側は漏斗状に傾斜しているため、内刃30の高速回転による外刃20の内部空間28からの吸引力と相俟って、非常に簡単に外刃20の開口端29に集まるからである(図9参照)。なお、固定板60aの側面は、図8(a)のように、上方に伸ばしてもよく、図8(b)のように、上方に伸ばさなくてもよい。
【0044】
固定板60aを容器10の所定の位置に配置するため、固定板60aの外周には容器10の内部壁面に設置された係合突起13と嵌合する係止穴63を設ける。
【0045】
容器10の所定の位置に、一個の第一の穴61と複数個の第二の穴62,62,62...とを備え、漏斗状に形成された固定板60aを設置した後、容器10に試料及び/又は液体を投入すると、粉砕対象となる大きい固形成分91は、固定板60aで仕切られた容器10の下側には落ちずに、固定板60aの上側に落ちる。そして、内刃30を高速回転させると、大きい固形成分91は、外刃20の開口端29に集まった後、液体と共に内刃30の方に引かれ、砕かれて小さくなり、外刃20のスリット貫通穴21,23から排出される。小さくなって外刃20のスリット貫通穴21,23から排出された固形成分は、容器10の壁面付近92を通り、固定板60aの外周近くにある第二の穴62から固定板60aで区切られた容器10の上側に移動し、再び容器10の上側であり、かつ幅方向中央部に設置された外刃20の開口端29へ引き寄せられる。即ち、容器10に固定板60aを設置すると、大きい固形成分91は外刃20の開口端29がある容器10の上側で止められる一方で、小さくなって外刃10のスリット貫通穴21,23から排出された固形成分は容器10の下側から上側まで移動するため、粉砕する必要がある固形成分をより効率的に外刃20の開口端29に集めることが可能になる。また、容器10内の全体としては、外刃20の開口端29から吸い込まれた後、容器10の下側に配置された外刃20のスリット貫通穴21,23から排出され、容器10の壁面付近92まで移動した後、容器10の壁面に沿って外刃20の開口端29の高さまで上昇し、再び外刃20の開口端29に流れ込むという、液体の混合や破砕しながら分散均質化する作業において大変効果的な循環流が起こる(図9参照)。
【0046】
冷却手段70は所望により設置する。冷却手段70は容器10の外側から容器10を冷却する。冷却手段70を設置することにより、生体試料をできるだけ変質させずにホモジナイズ処理をすることができるため、その後の抽出効率がより向上する。
【0047】
冷却手段70の冷却性能は、生体試料をホモジナイズ処理する場合には、生体試料の破砕時間がほぼ60秒以内で、長くても120秒にならないため、例えば、120秒の間、容器10の内部を4℃〜6℃に保つことができる程度でよい。
【0048】
冷却手段70としては、例えば、回転駆動体50を収納した収納ケース53の上面の左右に柱71,71を置き、柱71に開閉移動が可能である扉72を取り付け、左右の扉に、容器10の外側を包み込むための保冷剤73を取り付けた冷却ホルダ(図1)、容器10の外径とほぼ同じ径の貫通路74を設け、貫通路74の外側に平板型の保冷剤76を折り曲げた状態で収納可能な突設部75を設置し、容器10の外側を包み込むように矢示77の方法へ差し込む(図10参照)冷却ホルダ(図2)を挙げることができるが、容器10の外側から容器10を冷却することができれば、特に限定されず、公知の技術を使用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は、例えば、診断を含む人・動物棟の組織の臨床検査分野、食品検査分野、医薬品検査分野、少量試料の分散を主とする環境検査分野、稀少試料の乳化などに有用である。
【符号の説明】
【0050】
1 ホモジナイザ
10 容器
11 第1の雄ねじ部
12 開口
13 係合突起
14 第2の雌ねじ部
15 貫通穴
16 底面
17 下端
20 外刃
21,23 スリット貫通穴
22 溝部
24 上端近傍
25 上端面
25a 水平面
25b 傾斜面
26 下方端
27 上部軸受け
28 内部空間
29 開口端
30 内刃
31 上方部
32 下方部
33 凹部
34 突起
40 台座
41 O−リング
42 軸シール
43 下部軸受け
44 第2の雄ねじ部
45 貫通穴
50 回転駆動体
51 駆動軸
52 ジョイント
53 収納ケース
60 固定手段
60a 固定板
61 第1の穴
61a 外周
61b 係合突起
62 第2の穴
62a 半円穴
62b スリット穴
62c 三角穴
62d 丸穴
63 係止穴
70 冷却手段
71 柱
72 扉
73,76 保冷剤
74 貫通路
75 突設部
80 蓋
81 第1の雌ねじ部
91 大きな固形成分
92 壁面付近

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料、試料及び液体又は液体を収容する容器と、該容器の内部に配置された円筒状の外刃と、該外刃の内側に配置され、回転する内刃と、該内刃を回転させる回転駆動体とを備えたホモジナイザであって、
前記ホモジナイザは、前記外刃と前記内刃が前記回転駆動体よりも上方に位置することを特徴とするホモジナイザ。
【請求項2】
前記外刃は、上端又は上端付近から長手方向に伸びた直線状のスリット貫通穴を有し、かつ該スリット貫通穴の下方端を前記容器の底面と略面一となるように配置したことを特徴とする請求項1に記載のホモジナイザ。
【請求項3】
前記ホモジナイザは、さらに、前記外刃の上端近傍を固定する固定手段を備えたものであることを特徴とする請求項1又は2に記載のホモジナイザ。
【請求項4】
前記固定手段は、前記外刃の上端近傍と嵌合する一個の第一の穴と該第一の穴より小さい複数個の第二の穴とを備えた、固定板であることを特徴とする請求項3に記載のホモジナイザ。
【請求項5】
前記ホモジナイザは、さらに、前記容器を外側から冷却する冷却手段を備えたものであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のホモジナイザ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−183285(P2011−183285A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−49897(P2010−49897)
【出願日】平成22年3月5日(2010.3.5)
【出願人】(393005026)株式会社マイクロテック・ニチオン (5)
【Fターム(参考)】