説明

ホモハリングトニンを含むセファロタキシンの製剤および投与方法

【課題】本発明は、ホモハリングトニンを投与するための新規な方法および組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、セファロタキシン(例えば、ホモハリングトニン)を用いる患者の処置のための、組成物および方法を提供する。本発明はまた、癌および他の異常細胞性疾患の処置のためのホモハリングトニンの、純度、製造方法、製剤、および投与における改善をも提供する。本発明はまた、駆虫性、抗真菌性、抗ウイルス性、および抗細菌性の処置のための、方法および組成物をも提供する。

【発明の詳細な説明】
【関連出願】
【0001】
本出願は、米国特許仮出願60/396,926(2002年7月17日出願)の利益を主張する。
【技術分野】
【0002】
本発明は、セファロタキシン(例えば、ホモハリングトニン)を用いる患者の処置のための、組成物および方法に関する。本発明はまた、癌および他の異常細胞性疾患の処置のためのホモハリングトニンの、純度、製造方法、製剤および投与における改善にも関する。本発明はまた、駆虫性、抗真菌性、抗ウイルス性、および抗細菌性の処置のための、方法および組成物をも提供する。
【背景技術】
【0003】
セファロタキシンは、イヌガヤ科(Cephalotaxus fortunei Hook)および他の関連種(例えば、セファロタックス・シネンシス(Cepholotaxus sinensis)Li、C.ハイネンシス(hainanensis)、およびC.ウィルソニアナ(wilsoniana)(これは、C.オリベリ マスト(oliveri mast)およびC.ハリングトニア(harringtonia)を含む)の表皮、茎、葉および種から抽出されるアルカロイドである。セファロタキシンは、図1中で示す特異な構造式を示す。セファロタキシン(図1中のXは、−OHである)はイヌガヤ属C.ハリングトニアに大量に存在するが、それは生物学的な活性がない。C−3位のエステル側鎖の存在は、抗腫瘍効力にとって重要であると考えられる。
【0004】
ホモハリングトニン(4−メチル−2−ヒドロキシ−2−(4−ヒドロキシ−4−メチルペンチル)、「HHT」)は、セファロタキシンのブタンジオケート(butanediocate)エエステルである。HHTは、天然に存在するセファロタキシン化合物であって、そしてこれは、図2中に示す構造式を有する。
【0005】
報告は、99.8%以上の純度を有しそして全ての関連する不純物は0.5%以下であるHHTを化学的に製造することができると提案されている(非特許文献1および特許文献1を参照)。イヌガヤ属アルカロイドの少なくとも50%はセファロタキシンであるが、セファロタキシンのHHTの半合成用供給源としての使用は、これまで経済的であるとは判断されていない。
【0006】
HHTはまた、イヌガヤ属C.ハリングトニア(特許文献2を参照)の培養細胞から製造することもできる。しかしながら、培養細胞からの製品とは違って、全植物由来のHHTは、様々な癌(例えば、多数の形態の白血病および前白血病疾患(例えば、骨髄異形成症候群(MDS)を含む)において臨床的に調べられている。更に、全植物由来のHHTは、急性骨髄性白血病(特に、急性前骨髄球性白血病(APL))の最前線の化学療法として、中国では広く使用されている。化学合成または組織培養由来のHHTの有効性および毒性に関するデータはほとんどない。
【0007】
また、ほとんどの抗癌剤と同様に、HHTは、用量規制毒性(例えば、骨髄抑制、心毒性、および低血圧を含む)を有する。従って、該薬物の投与形態、投与量、および投与計画を改善することが、非常に所望される。従って、効力を改善し、副作用を減少し、生活の質を改善し、そして患者の生存率を増大させるための改善が探求されるべきである。
【0008】
HHTに似た天然に存在する産物の場合には、関連するアナログとは別個のHHT製品の純度を増大し、並びに該薬物をより医薬的に許容し得るようにするために、添加物、保存剤もしくは賦形剤を減少したりもしくは除去することが、所望される。より精製した製品は、望まない不純物および所望しない賦形剤の代謝的なプロセッシングまたはそれらに対する生理学的な応答から生じる生理学的なストレスを減少するであろう。例えば、医薬品において抗酸化剤として使用される添加物(例えば、亜硫酸水素ナトリウム)は、ある患者においてはアレルギー反応または過敏性反応を引き起こすことが知られる。このことはまた、医薬的な希釈物(例えば、クレモフォアEL)の場合にも生じる。その上、マンニトール、医薬的な賦形剤は、ある患者にとって低血圧を引き起こし得る。
【0009】
米国立癌研究所は、凍結乾燥HHT製品(このものは、減菌バイアル(10mg)として供する)を用いる癌化学療法において、臨床的治験を行なっている。マンニトール(50mg)および塩酸が、該バイアル中に含有される。該無処置のバイアルは、凍結保存を必要とした(−10℃〜−20℃)。バイアル中の凍結乾燥HHTは、0.9%塩化ナトリウム注射液(USP)(4.9mL)を用いて再構築され、HHT(2mg/mL)を含有し、そしてpH3〜5を有する溶液を与えるべきである。不適当に実施された場合には、再構築の行為は問題となり得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】国際公開第02/32904号パンフレット
【特許文献2】米国特許第4,152,214号
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】L. Kellerらによる、Tetrahed. Lett., 42, 1911-1913 (2001)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、安定で、治療学的に許容し得て、静脈内注射可能なHHTの投与形態であって、凍結乾燥および再構築を必要とせず、そして二重バイアル包装の代わりに単一バイアルとして包装されおよび輸送され得る、投与形態を提供することである。
【0013】
本発明の別の目的は、現行の投与形態とは異なる期間中、HHTを投与するための新規な方法および組成物を提供し、並びに有効性を改善しそして薬物処置に関係する副作用を減少するための新規な投与計画を提供することである。
【発明が解決するための手段】
【0014】
本明細書中に記載する本発明は、医薬品の開発にとって適当なスケールでのホモハリングトニンの製造方法を包含する。
【0015】
本発明は、セファロタキシン(例えば、ホモハリングトニン)を用いる患者の処置のための、組成物および方法を提供する。本発明はまた、癌および他の異常細胞性疾患の処置のためのホモハリングトニンの、純度、製造方法、製剤、および投与における改善をも提供する。本発明はまた、駆虫性、抗真菌性、抗ウイルス性、および抗細菌性の処置のための、方法および組成物をも提供する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、セファロタキシンの一般的な構造式を示す図面である。3位のXは、置換基であり、これは例えば表1中に示す基である。
【図2】図2は、ホモハリングトニン(4−メチル−2−ヒドロキシ−2−(4−ヒドロキシ−4−メチルペンチル)、「HTT」)の構造式を示す図面である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の別の態様によれば、本明細書中に記載する方法に従って、天然の植物から精製されるHHTの治療学的な量を含む、医薬組成物を提供する。
【0018】
別の態様によれば、本発明により、可溶な液体投与形態としてHHTの使用が可能となり、患者に投与する前に更に希釈するための簡便な形態で2年を超えて室温で安定となり得る。
【0019】
好ましい実施態様において、液体投与形態は更に、注入液として1〜5mg/mの範囲の用量で、静脈内投与のために希釈される。投与は、1ヶ月当たり1〜21日間、間欠的でありまたは連続的である。
【0020】
これらの組成物および方法は、薬物感受性疾患(例えば、癌、白血病、前白血病疾患、他の過剰増殖性疾患、または異常細胞性疾患)を患っている患者にとっての治療学的な利益を改善するために設計する。
【0021】
本発明の1態様は、ホモハリングトニンの製造方法である。
該方法は、
a)イヌガヤ属(Cephalotaxus)植物をクエン酸と接触させて、抽出混合物を得て;
b)a)の抽出混合物のpHをアンモニアを用いて約8〜9の間に調節し;
c)b)の抽出混合物をクロロホルムを用いて抽出し;
d)c)の抽出混合物を減圧として、該クロロホルムを除去し;
e)d)の抽出混合物をシリカゲルカラムと接触させて、そして精製抽出生成物を溶出させて;
f)e)の精製抽出生成物を濃縮し;
g)f)の濃縮精製抽出生成物を乾燥し;
h)g)の乾燥抽出生成物をメタノールと接触させて、沈降物を得て;そして、
i)ホモハリングトニンを含む該沈降物を収集する、
ことを含む。
【0022】
本発明の1態様によれば、工程a)の接触は、少なくとも48時間である。別の態様によれば、工程b)の調節は、pH8.5とする。
【0023】
本発明の方法は更に、工程b)の抽出混合物を減圧下で濃縮し、該濃縮抽出混合物をクエン酸と接触させ、該濃縮抽出混合物をクロロホルムを用いて抽出し、そして該濃縮抽出混合物のpHを約5〜8の間にまで調節することを含む。
【0024】
更なる態様によれば、工程h)の接触は、温度を4℃〜10℃の間とする。別の態様によれば、工程h)の接触は、少なくとも16時間とする。
【0025】
本発明の方法によって得られるホモハリングトニンは、少なくとも98%の純度である。好ましい実施態様によれば、本発明の方法によって得られる該ホモハリングトニンは、少なくとも99%の純度である。
【0026】
1態様によれば、本発明の方法によって得られるホモハリングトニンは、医薬的な賦形剤なしで、水または緩衝化生理食塩水中に溶解する。
【0027】
本発明の方法によって得られる組成物もまた、特許請求する。1態様によれば、該組成物は、マンニトールを含まない。別の態様によれば、該組成物は、医薬的に許容し得る投与形態を得るために、凍結乾燥を必要としない。
【0028】
本発明の組成物を用いる処置方法を、本発明に特許請求する。1態様によれば、該処置方法は、本発明の組成物を1ヶ月当たり5〜25日間、静脈内投与によって投与することを含む。別の態様によれば、該処置方法は、非静脈内経路によって本発明の組成物を投与することを含む。更なる態様によれば、該非静脈内経路としては、筋肉内、皮下、経口または眼内の投与を挙げられる。別法として、本発明の組成物は、デポーとして投与可能である。
【0029】
本発明は、HTTの水溶液をも包含する。1態様によれば、HTTの水溶液は安定であって、1回投与形態であり、そして注射による投与に適当である。このものは、本発明に包含される。ある態様において、該水溶液は、0.1〜50mg/HHTのmLの間の濃度を有する。他の態様によれば、該HTT濃度は、1〜5mg/mLの間である。該水溶液は、pHが約3.0〜5.0の間を有することが好ましい。他の態様によれば、該水溶液はpH約4.0を有する。ある態様において、該水溶液は封した容器中で供される。
【0030】
異常細胞性疾患を有する宿主の処置方法もまた、本発明に包含される。該方法は、宿主を、該異常細胞性疾患をモジュレートするのに十分な量のセファロタキシンと接触させることを含む。該接触は、少なくとも5連続日数の間で行なうことが好ましい。1態様によれば、該セファロタキシンはホモハリングトニンである。ある態様において、該異常細胞性疾患は、癌、白血病、前白血病疾患、または骨髄異形成症候群が挙げられる。1態様によれば、該ホモハリングトニンは1〜5mg/mの間の用量で注入によって投与する。
【0031】
(発明の詳細な記載)
様々なR1およびR2置換基を有するセファロタキシンアナログの構造を、以下の表1に示す。
【表1】

表II
【表2】

【0032】
(HHTの製造)
ホモハリングトニン(HTT)は、イヌガヤ科および他の関連種から抽出する。該方法は、クエン酸または90%エタノールを用いる抽出を含み、次いでpHをアンモニアまたは炭酸ナトリウムを用いて、アルカリ性範囲(pH8.5〜9.5)にまで調節する。該溶液をクロロホルムを用いて抽出し、次いで該クロロホルムを減圧下で除去する。該乾燥物質をクエン酸中に溶解し、そしてこのものをクロロホルムを用いて、pHの勾配範囲(例えば、pHの5〜7)で抽出する。該精製物質をシリカゲルをパックした液体クロマトグラフィーを通してろ過し、そしてTLCによって追跡する。得られた物質をクロロホルムおよびpH5の緩衝液または酒石酸を用いる向流分配によって分離する。クロロホルムの除去後に、該物質をメタノールから再結晶する。使用するプロセスにより、HHT(これは、濃縮物中、約0.002%収率であり、少なくとも98%の純度を有し、そして個々の不純物は0.8%以下である)を得る。
【0033】
(投与様式)
いずれかのある場合における最も適当な経路は処置する疾患の性質および激しさ、並びに活性成分の性質に依存するが、該組成物は、経口、直腸、局所、非経口(例えば、皮下、筋肉内、および静脈内)、眼(眼球)、肺(鼻腔または頬側の吸入)、または鼻投与にとって適当な組成物を含む。それらは、1回投与形態で容易に供することができ、そして製薬の分野においてよく知られる方法のいずれかによって製造することができる。
【0034】
加えて、HHTは、薬物運搬デバイス(例えば、酢酸セルロース膜、浸透圧ポンプなど)によって、また標的運搬システム(例えば、リポソーム)によっても、運搬することができる。該活性化合物はまた、例えば滴剤またはスプレー剤として鼻腔内で投与することもできる。
【0035】
(A.経口投与形態)
投与の容易さのために、錠剤およびカプセル剤は、特に有利な経口投与単位形態であり、この場合に、固体の医薬的な担体を明らかに使用する。所望するならば、錠剤を標準的な水溶液または非水溶液の技術によってコーティングすることができる。それら組成物および製品は、活性化合物の少なくとも0.1%を含むべきである。当然に、これらの組成物中の活性化合物のパーセントは変えることができ、そして容易に、該単位の重量の約2%〜約60%の間であり得る。それら治療学的に有用な組成物中の活性化合物の量は、有効な用量が得られるであろう用量である。経口投与形態を製造する場合には、不活性成分(例えば、デンプン、糖類、微結晶セルロース、希釈物、顆粒化剤、滑沢剤、結合剤、崩壊剤など)を使用することができる。
【0036】
(B.非経口投与形態)
以前のHHT投与形態は、凍結乾燥プロセス、安定性、再構築の性質、投与形態の均一性および溶解度を改善するために、賦形剤としてマンニトールを含有する凍結乾燥を必要とした。
【0037】
本発明によって、封した容器(例えば、アンプルまたはバイアル)中の安定な減菌性のHHTの水溶液を提供する。該溶液は、静脈内投与に適当な1回投与形態で供される。1実施態様によれば、該溶液は、HHTの濃度が約0.1〜約10mg/mLの間を有する。該溶液は、HHTの濃度が約1mg/mLであることが好ましい。好ましい実施態様において、該溶液はpHが3.0〜5.0の間を有する。該溶液はpHが約4.0を有することが、より好ましい。
【0038】
好ましい実施態様において、該HHT溶液は、いずれかの他の添加化学品を含まない。「他の添加化学品を含まない」とは、該溶液が、本発明の方法に従って精製し、水中に溶解した、HHTから構成されることを意味する。他の実施態様において、該HHT溶液はまた、通例の生理学的に許容し得る賦形剤または担体(例えば、保存剤または緩衝化剤)をも含む。
【0039】
該HHT溶液は、安定な溶液であることが好ましい。「安定な」溶液は、60℃で7週間保存後に高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によって測定する際に、5%以下の効力の低下を示すものである。「安定な溶液」は、少なくとも1年間の期間、室温で安定であり、その結果、該活性化合物は該期間中、5%以上は分解しない。
【0040】
静脈内の注射または注入用の組成物を使用する場合には、該HHT溶液は、1個以上の医薬的に許容し得る担体、賦形剤または希釈剤と一緒に、適当な用量で供される。ある実施態様において、静脈内の注射または注入用のHHT溶液は、1個以上の化学療法薬と組み合わせて供される。
【0041】
該液体投与形態は、医薬的な実施において一般的または標準的である範囲で、緩衝液(例えば、酒石酸塩、リン酸塩、クエン酸塩、炭酸塩など)を用いてpHを適当に調節しながら、1mg/希釈物のmL以下から1mg/mL以上まで(濃縮物を可溶化するために、0.1mg/mL以下から1mg/mL以上を含む)の範囲であり得る。
【0042】
別の実施態様において、静脈内投与が有利でない場合には、該薬物投与は、例えばデポー投与として皮下で導入することができる。1実施態様において、デポー投与は、薬物粒子が徐放性放出のためにゆっくりと溶解するように使用する濃縮物中で使用される。
【0043】
液体投与形態、医薬的な賦形剤(例えば、マンニトール)を含まない緩衝化水溶性形態は、好ましくは1ヶ月当たり5〜25日間(7〜21日間がより好ましい)の期間にわたって、1〜5mg/mの間(約2〜4mg/mの間が好ましい)の用量を用いて、注入される。好ましい実施態様において、抗増殖性効果は、癌(例えば、白血病(例えば、急性前骨髄球性白血病(APL)、急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄性白血病(CML)を含む)、前白血病疾患(例えば、骨髄異形成症候群)を含む)を患っている患者、または他の過剰増殖性異常細胞性疾患を有する患者において、液体投与形態として製造されるHHT(これは、室温で賦形剤(例えば、マンニトール)なしで緩衝化した水または生理食塩水中に溶解した、少なくとも98%純度で安定である)を、5日以上の期間にわたって患者に注入することによって、達成される。加えて、該投与形態は、他の化学療法薬(例えば、抗悪性腫瘍薬(例えば、グリーベック(Greevec)、インターフェロン、レチノイン酸などを含む))と一緒に投与することができる。
【0044】
該薬物は、異常細胞性疾患(例えば、固形癌、白血病、前白血病疾患(例えば、骨髄異形成症候群、リンパ腫)、および他の異常性過剰増殖性疾患)をモジュレートするのに十分な量で供される。1実施態様において、異常細胞性疾患のモジュレートとは、腫瘍細胞の数または増殖の減少を含む。別の実施態様において、異常細胞性疾患のモジュレートは、細胞分裂および腫瘍細胞増殖の抑制を含む。他の実施態様において、異常細胞性疾患のモジュレートは、細胞分裂停止を含む。更に他の実施態様において、具体的な用量、血中濃度は、細胞標的または該化合物の作用に特異的な酵素(例えばテロメラーゼ、ヒストンデスアセチラーゼなどの酵素;または、例えばヒストン、Gタンパク質結合性受容体などの細胞標的)などに影響を及ぼすように、患者に運搬される。
【0045】
本発明のある実施態様において、異常細胞性疾患のモジュレートとは、細胞分裂停止または細胞毒性を含む。「細胞分裂停止」とは、細胞を増殖から抑制することであり、一方で「細胞毒性」は、細胞を殺すことと定義される。
【0046】
好ましい実施態様において、治療学的に有効な量の本発明の組成物を、処置が必要な患者に投与する。本明細書中で「治療学的に有効な量」とは、投与される対象にとって効果を与える量を意味する。正確な量は処置の目的に依存し、そして、これは公知の技術を用いて当該分野における当業者によって確認され得る。当該分野において知られる通り、全身対局所の運搬、並びに年齢、体重、通常の健康、性別、食餌、投与時間、薬物の相互作用、および疾患の激しさについての調節が必要なことがあり、そしてこれは、当該分野の当業者による通常の実験を用いて確認し得るであろう。
【0047】
本発明の目的のための「患者」とは、ヒトおよび他の動物(特に、哺乳動物)の両方を含む。従って、該方法は、ヒトの療法および獣医学的な利用法の両方に利用可能である。好ましい実施態様において、該患者は哺乳動物であって、そして最も好ましい実施態様においては、該患者はヒトである。
【0048】
本発明における用語「処置」とは、治療学的な処置、並びに疾患もしくは障害のための予防学的なもしくは抑制的な手法を含むと意味する。従って、例えば、疾患の発症前での本発明の組成物の成功投与により、該疾患の「処置」を与える。該疾患の症状と闘うために該疾患の臨床的な兆候後のHHTの成功投与は、該疾患の「処置」を含む。「処置」とはまた、該疾患を根絶する目的で該疾患の出現後のHHTの投与を含む。臨床的な症状の可能な寛解および事によると該疾患の軽減を伴う、発症後および臨床的な症状後の薬物の成功投与が開発されており、これは、該疾患の「処置」を含む。
【0049】
それら「処置が必要な」とは、既に疾患または障害を有する哺乳動物、並びに該疾患または障害を有する傾向がある哺乳動物(例えば、該疾患または障害が予防されるべきである哺乳動物)を含む。
【0050】
(実施例)
以下の実施例は、限定することを意味しない限り、本発明をどのように実施することができるかを示す。
【0051】
(実施例1:HHTの商業的なスケールでの製造)
イヌガヤ科の小片(90kg)およびトラップ用の水(70L)を布地のバッグ中に加え、そしてこのものを48時間、クエン酸(500L)を用いて2回、続いてトラップ用の水(500L)によって浸漬する。該浸漬溶液のpHを、アンモニアを用いて8.5にまで調節し、次いでこのものをクロロホルムを含有するカラムを用いて300mL/分で抽出する。該クロロホルム溶液を減圧下で濃縮する。該濃縮溶液の3個を合わせて、乾燥する。乾燥物質をクロロホルム(800L)中に溶解し、そしてこのものをクエン酸(2.5L)を用いて中和する。該酸抽出溶液を合わせて、アンモニアを用いてpH5、6、7および8に調節して、クロロホルムを用いて中和する。クロロホルムを真空下で除去し、そして乾燥物質をクロロホルム中に溶解し、シリカゲルカラムを用いて抽出し、薄相クロマトグラフィーによって追跡する。HHTを含有する部分を乾燥し、次いで、このものを5倍容量のクロロホルム中に溶解し、そして酒石酸を用いて4回抽出する。クロロホルムの除去後に、該乾燥物質をメタノール中に溶解し、そして4〜10℃で約16時間沈降させる。該メタノール/水の混合物(1:2)をろ過し、すすぎ、そして乾燥する。該結晶化工程を、色が暗い赤みがかかった褐色からカナリヤ色にまで変わるまで繰り返す。次いで、該結晶をメタノール中で結晶化し、そして活性炭を用いて脱色する。該結晶化工程を、色がオフホワイト色にまで変わるまで数回繰り返す。該精製した物質を40〜60℃で7日間、真空下で乾燥する。
【0052】
本発明のプロセスは、典型的な収量がイヌガヤ科のkg当たりホモハリングトニンの約0.05gであって、そして99%以上の純度を有する、ホモハリングトニンを製造することができる。
【0053】
(実施例2:酒石酸を有する、水性で安定な減菌のHHTの製造)
1.酒石酸を、注射用の水の80%バッチ量中に溶解する。
2.ハリングトニンを溶解し、そして最終的な容量にまで希釈して、最終的な濃度が酒石酸について0.4mg/mL、およびホモハリングトニンについて1mg/mLを得る。
3.必要ならば、NaOHおよび/またはHClを用いて、pHを4.0にまで調節する。
4.該溶液を0.22−μmのフィルターを通してろ過する。
5.該ろ過した溶液を、無菌条件下で予め減菌した容器(バイアルまたはアンプル)中に充填し、そして封する。
6.最後に、該充填したアンプルを121℃で少なくとも15分間、無菌化する。
【0054】
(実施例3:酒石酸を含まない、水性で安定な減菌のHHTの製造)
1.ホモハリングトニンを、注射用の水の約80%バッチ量中に溶解する。
2.NaOHおよび/またはHClを用いて、pHを4.0にまで調節する。
3.該溶液を0.22−μmフィルターを用いてろ過する。
4.該ろ過溶液を、無菌条件下で予め減菌した容器(バイアルまたはアンプル)中に充填し、そして封する。
5.最後に、該充填したアンプルを121℃で少なくとも15分間、無菌化する。
【0055】
(凍結乾燥製品を超える、液体製品の利点)
1.液体形態は、費用が安い。凍結乾燥は、高価な製造プロセス(装置、時間、エネルギーなど)である。
2.液体は、あまり包装を必要としない。凍結乾燥製品は、二重バイアル包装(凍結乾燥バイアルおよび希釈バイアルを含有する)、余分な製造化、包装、およびラベル化の費用、並びに余分な保存用の空間、および輸送を必要とする。
3.液体形態の製品は、時間、費用、廃棄物、および危険が少ない。より多くの製造工程が、凍結乾燥製品の場合には必要とされ、より多量の危険な廃棄物が生成し、そして、混入および安全に関係する危険が増大する。
4.液体形態は、より安全である。不適当な再構築は、不正確な量を与え得る。
【0056】
(実施例4:高速液体クロマトグラフィーの方法)
HHTを、逆相の均一溶媒のHPLCシステム(24%のアセトニトリルおよび76%の酢酸(pHを、0.5%トリエチルアミンを用いて6.5にまで調節する)から構成される移動相を使用する;Keystone BDS Hypersil 5−μmのC18カラムを使用)を用いてクロマトグラフィー精製を行なう。検出は、288nmでのUV吸光度を追跡することによって達成し、そして定量化は、外部校正を用いるピーク面積の測定によって達成する。特異度、直線性、精密度、正確さが実証された。
【0057】
この方法は、バルク散剤および液体投与製剤に利用可能である。
【0058】
(実施例5:水性で安定な減菌性のHHTの投与)
該液体または凍結乾燥した投与形態を、該薬物製品を希釈物中に加えることによる静脈内注入によって投与可能である。該希釈物としては例えば、注射用の減菌水、注射用の静菌水、デキストロース(2.5%、5%、10%)、デキストロース−生理食塩水の組み合わせ、フルクトース(10%)、生理食塩水中のフルクトース、リンガー注射液、乳酸化したリンガー注射液、塩化ナトリウム(0.45%、0.9%)、または1個以上の更なる薬物との組み合わせを含むが、これらに限定されない。
【0059】
(収率および純度を改善するための可能なプロセス工程)
以下の工程の使用は、収率を改善し得る。
1.工程6において、最適なpHの範囲(例えば、5〜7)で抽出する。
2.工程8において、他の酸溶液(例えば、塩酸、酢酸)を用いて、酒石酸に置き換える。
3.工程11において、精製のために、メタノール/水の混合物の代わりにメタノールを使用する。
4.イヌガヤ科由来のハリングトニンを大量に含有する木の特定部分(例えば、葉、根など)を使用する。
【0060】
最終的な製品の純度は、以下の工程によって改善することができる。
1.異なる溶媒(例えば、アセトン、エーテルなど)を用いて抽出して、1.1分の相対的な保持時間を有するHPLCクロマトグラフィー精製において見出される不純物を除去する。
2.工程7において、勾配カラムクロマトグラフィーを使用する。
3.工程5および7において、より純粋な部分を集める(これは、薄相クロマトグラフィーによって追跡する)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホモハリングトニンの製造法であって、
a)イヌガヤ属植物をクエン酸と接触させて、抽出混合物を得て;
b)a)の抽出混合物のpHをアンモニアを用いて約8〜9の間に調節し;
c)b)の抽出混合物をクロロホルムを用いて抽出し;
d)c)の抽出混合物を減圧として、該クロロホルムを除去し;
e)d)の抽出混合物をシリカゲルカラムと接触させて、そして精製抽出生成物を溶出させて;
f)e)の精製抽出生成物を濃縮し;
g)f)の濃縮精製抽出生成物を乾燥し;
h)g)の乾燥抽出生成物をメタノールと接触させて、沈降物を得て;そして、
i)ホモハリングトニンを含む、該沈降物を収集する、
ことを含む、該製造法。
【請求項2】
a)の接触が少なくとも48時間とする、請求項1記載の製造法。
【請求項3】
b)の調節がpH8.5とする、請求項1記載の製造法。
【請求項4】
更に、b)の抽出混合物を減圧下で濃縮し、該濃縮抽出混合物をクエン酸と接触させ、該濃縮抽出混合物をクロロホルムを用いて抽出し、そして、該濃縮抽出混合物のpHを約5〜8の間に調節することを含む、請求項1記載の製造法。
【請求項5】
h)の接触が温度を4℃〜10℃の間とする、請求項1記載の製造法。
【請求項6】
h)の接触が少なくとも16時間とする、請求項1記載の製造法。
【請求項7】
更に、h)の沈降物をメタノールおよび水の混合物を用いてろ過し、そしてすすぐことを含む、請求項1記載の製造法。
【請求項8】
更に、該ろ過しそしてすすいだ沈降物をメタノールと接触させ、そして再度乾燥することを含む、請求項7記載の製造法。
【請求項9】
該ホモハリングトニンが少なくとも98%純度である、請求項1記載の製造法。
【請求項10】
更に、該ホモハリングトニンを緩衝化水または生理食塩水中に溶解することを含む、請求項9記載の製造法。
【請求項11】
該溶解が医薬的な賦形剤なしで行なう、請求項10記載の製造法。
【請求項12】
請求項1記載の方法によって得られる、組成物。
【請求項13】
マンニトールを含まない、請求項13記載の組成物。
【請求項14】
医薬的に許容し得る投与形態を得るのに凍結乾燥を必要としない、請求項13記載の組成物。
【請求項15】
組成物が1ヶ月当たり5〜25日間、静脈内投与によって投与する、請求項12記載の組成物を投与することを含む、処置方法。
【請求項16】
組成物が非静脈内経路によって投与する、請求項12記載の組成物を投与することを含む、処置方法。
【請求項17】
該非静脈内経路が筋肉内、皮下、経口または眼内の投与である、請求項16記載の処置方法。
【請求項18】
組成物がデポーとして投与することができる、請求項12記載の組成物。
【請求項19】
HHTの水溶液であって、該溶液が安定であり、該溶液が1回投与形態であり、そして該溶液が注射による投与に適当である、該水溶液。
【請求項20】
該溶液が0.1〜50mg/mLの間の濃度のHHTを有する、請求項19記載の水溶液。
【請求項21】
該溶液が約1〜5mg/mLの間の濃度を有する、請求項19記載の水溶液。
【請求項22】
該溶液がpHが約3.0〜5.0の間を有する、請求項19記載の水溶液。
【請求項23】
該溶液がpHが約4.0を有する、請求項19記載の水溶液。
【請求項24】
該溶液が封した容器で供される、請求項19記載の水溶液。
【請求項25】
異常細胞性疾患を有する宿主の処置方法であって、該宿主を該異常細胞性疾患をモジュレートするのに十分な量のセファロタキシンと接触させることを含み、ここで、該接触は少なくとも5連続日数の間である、該処置方法。
【請求項26】
該セファロタキシンがホモハリングトニンである、請求項25記載の処置方法。
【請求項27】
該異常細胞性疾患が癌、白血病、前白血病疾患、または骨髄異形成症候群である、請求項25記載の処置方法。
【請求項28】
ホモハリングトニンが1〜5mg/mの間の用量での注入によって投与する、請求項25記載の処置方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−28648(P2013−28648A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−245688(P2012−245688)
【出願日】平成24年11月7日(2012.11.7)
【分割の表示】特願2004−523102(P2004−523102)の分割
【原出願日】平成15年7月10日(2003.7.10)
【出願人】(505011132)ケムジェネックス・ファーマシューティカルズ・リミテッド (2)
【氏名又は名称原語表記】CHEMGENEX PHARMACEUTICALS LIMITED
【Fターム(参考)】