説明

ホモ二量体型のPLGF−1

本発明は、組換え型PlGF−1の新規のホモ二量体型、その調製の方法、及びそれを含有する組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、1鎖間ジスルフィド結合のC末端領域内に存在することを特徴とするPlGFの、新規のホモ二量体型に関する。さらに本出願は、その産生及び精製の方法、同一物を含む組成物、並びに薬剤又は化粧剤としてのその利用に関する。本出願は、他の目的にも関するが、それについては以下の説明から明らかになろう。
【背景技術】
【0002】
胎盤増殖因子(PlGF)は、血管内皮増殖因子(VEGF)ファミリーの1員であり、主に血管内皮細胞、単球、マクロファージだけでなくヒトCD34+骨髄再増殖幹細胞によっても発現するVEGF受容体−1を介したシグナル伝達によって、血管新生の増幅因子として作用する。
【0003】
PlGFは、少なくとも4種のスプライシングアイソフォーム(splicing isoforms)のPlGF−1からPlGF−4となって現れ、これらは大きさ及び結合特性が異なる。
【0004】
PlGF−1の全ペプチド配列及び全ヌクレオチド配列は、特許出願WO92/06194に記載されている。
【0005】
詳細には、PlGF−1配列は、9個のシステイン残基を35、60、66、69、70、77、111、113位及び125位に含有し、これらは鎖内及び鎖間ジスルフィド結合を形成する潜在的な候補である。システイン残基の上記付番号は、天然型PlGF−1中には存在しないN末端メチオニンを含む、大腸菌(Escherichia coli)内で産生される組換え型PlGF−1に関する(例えば、組換え型PlGF−1中のCys35は、PlGF131としても知られる天然型PlGF−1中のCys34に相当する)。
【0006】
ジスルフィド結合の存在は、PlGF−1の結晶構造を2.0Å分解能で解析することによって確認された(IyerS.ら、J.Biol.Chem.、2001、276、12153−12161)。Iyerらによれば、PlGF−1は、Cys60〜Cys69、Cys69〜Cys60間の2つの鎖間ジスルフィド結合、並びにCys35〜Cys77、Cys66〜Cys111及びCys70〜Cys113の3つの鎖内ジスルフィド結合で共有結合した、逆平行配置に編成されたホモ二量体分子として記述されている。
【0007】
結晶解析によって証明された最も関連深い特色は、シスチン−ノットモチーフの存在である。114位に続くPlGF−1のC末端配列は、組織的構造を示しておらず、したがって、関連する結晶構造が確定していない。
【0008】
しかし、ホモ二量体の125位の2個のシステイン残基間の距離からすると、分子の歪みが必要と思われるので、これら2位間に鎖間共有結合の存在は考えにくい。
【0009】
ホモ二量体型は、PlGFの生物活性型であることが示されているが、単量体のPlGFは不活性である。
【0010】
いくつもの研究により、PlGF−1の薬理活性が証明されてきた。
【0011】
例えば、予備的な観察では、5−フルオロウラシル抑制マウスの初期及び後期の骨髄造血に対して、並びに血流中への幹細胞/前駆細胞の動員において、hPLGF(ヒト胎盤増殖因子)を発現するアデノウイルスベクターによって得られる正の効果が示された。
【0012】
さらにPlGF−1は、in vivoで血管新生を誘導し、in vitroで内皮細胞の遊走及び増殖を刺激することが示された(Ziche M.ら、Lab.Invest.、1997、76、517−531)。虚血状態に対するPlGFタンパク質又は遺伝子治療の有益な効果は、例えばWO−A−01/56593及びUS−2007/0027100中で開示された。虚血状態には、脳虚血、急性心筋梗塞及び虚血後肢を含める。
【0013】
参考として本明細書に添付した特許出願WO−A−03/066676は、遺伝子組換え細菌細胞から組換え型PlGF−1を抽出及び精製する方法を記載する。得られた産物は、以後[DIM1/2]PlGF−1と称するが、少なくとも98.5%の二量体及び多量体の活性型、少なくとも70%の二量体型、並びに1.5%未満の不活性な単量体型を含む。
【0014】
この方法によれば、PlGF−1は、組換え型DNA技術によって大腸菌中に封入体として発現する。次いで、変性バッファー内で封入体の可溶化によって抽出され、酸化還元系の存在下でリフォールディングされ、続いて2段階のクロマトグラフィー手順(アニオン交換クロマトグラフィーの次に逆相クロマトグラフィー)によって精製される。
【0015】
WO−A−03/066676に開示された方法で得られたPlGF−1タンパク質は、高純度な活性型であるが、本発明者らは、この産物が水溶液中で最適な安定性を示さず、時々バッチ間不均質を示すことを発見した(質量分析法、SDS−PAGE及びIEF分析による)。
【0016】
WO−A−03/097688は、PlGF−1分子の125位にあるシステインが、ジスルフィド結合を形成できない別のアミノ酸で置き換えられた、PlGF−1分子の変異タンパク質の調製を開示している。
【0017】
上記変異タンパク質は、水溶液中で野生型PlGF−1より良い安定性を示す。
【0018】
本発明の範囲は、活性PLGFの新規の安定した型を提供することである。
【発明の概要】
【0019】
本発明者らは、再現性及び安定性の予期せぬ特性を示す新規の活性なPLGFホモ二量体、及びその調製のための新規の方法を生み出した。
【0020】
したがって、本発明の一実施形態の目的は、PlGFの新規のホモ二量体型が、各単量体タンパク質のC末端領域で2個のシステイン残基間に1つの鎖間ジスルフィド結合を有することである。C末端鎖間結合の外では、二量体は1又は2つの追加の鎖間結合を有する可能性がある。本目的を実現した形として、前記C末端ジスルフィド架橋は、組換え型PLGF−1の125位、wtPLGF131の124位、組換え型PLGF−2の146位、wtPLGF152の145位、組換え型PLGF−3の197位、wtPLGF203の196位、組換え型PLGF−4の218位、wtPLGF224の217位から選択された各単量体の位置にある、2個のシステイン残基の間にある。
【0021】
本目的を特異的に実現した形として、3つの鎖間ジスルフィド結合を有することが可能な組換え型PLGF−1二量体があり、[DIM3]PLGF−1と称される。さらにより特異的に本目的を実現した形として、鎖間ジスルフィド結合は、残基間Cys60〜Cys69、Cys69〜Cys60及びCys125〜Cys125にある。
【0022】
本発明の別の実施形態の目的は、前記PlGFホモ二量体の調製のための方法が、PlGF単量体タンパク質を得るステップを含み、前記単量体をバッファー中でインキュベートすることによって酸化させ、還元剤がある場合はいずれも除去することによって所望のPLGFホモ二量体を得、任意選択で前記PLGFホモ二量体を精製することである。
【0023】
本実施形態を実現した形として、PlGF単量体は、還元剤を含有し且つpHが中性から弱塩基性であるバッファー中で、3つ未満のジスルフィド鎖間架橋を含有するPlGFホモ二量体をインキュベートするステップによって得られる。
【0024】
本発明の他の実施形態の目的は、本発明に記載のPlGFホモ二量体が、治療を必要としている対象の血液幹細胞の動員促進、虚血性疾患、皮膚強皮症又は進行性全身性強皮症、皮膚潰瘍、創傷、熱傷、術後処置、自然又は早期の皮膚組織老化、及び病理学的脱毛の治療などの医学的処置で使用されることである。
【0025】
本発明のさらに他の実施形態の目的は、本発明のPLGFを含む医薬組成物である。
【0026】
本発明の他の目的は、以下の詳細な説明を踏まえて明らかになるであろう。
【0027】
PlGF二量体分子の鎖間ジスルフィド結合の3つ以上の存在は、そのうちひとつが2個のC末端システイン残基間に位置するが、これまで記述されることがなかった。この発見は、公表されている結晶構造の二量体タンパク質が逆平行に配置されていることを考慮すると、特に驚異的で予想外のものである。こうした理由から、2個のC末端システイン間の距離は、ジスルフィド架橋を形成するには、分子立体配座の劇的歪みが必要になると思われるほどである。それ故、3番目のジスルフィド架橋の形成は、単量体の好ましくない立体配座に基づいていることからも、まったく予測不可能である。
【0028】
しかしながら、実験項で示したとおり、得られた産物の全構造的及び全機能的特性決定は、その可能性だけでなく、3つ未満のジスルフィド結合を有する既知のホモ二量体、すなわち[DIM1/2]PlGF−1と比較して、その高い安定性及び高いバッチ間再現性も証明した。さらに、PlGF−1の新規の型は、既知の二量体と比較して生物活性の向上を予想外に表している。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】[DIM1/2]PlGF−1のRP−LC−MSクロマトグラムを示す図である。
【図2】[DIM1/2]PlGF−1のマルチチャージMSスペクトルを示す図である。
【図3】[DIM1/2]PlGF−1のデコンボリューションした(deconvoluted)質量スペクトルを示す図である。
【図4】[DIM3]PlGF−1のRP−LC−MSクロマトグラムを示す図である。
【図5】[DIM3]PlGF−1のマルチチャージMSスペクトルを示す図である。
【図6】[DIM3]PlGF−1のデコンボリューションした質量スペクトルを示す図である。
【図7】レーンLが分子量標準に相当し、レーン1が[DIM1/2]PlGF−1、及びレーン2が[DIM3]PlGF−1に相当する、SDS−PAGEを示す図である。
【図8】[DIM1/2]PlGF−1又は[DIM3]PlGF−1の濃度増加性の走化活性を示すヒストグラムである。
【図9】G−CSF単独、又は[DIM1/2]PlGF−1若しくは[DIM3]PlGF−1と組み合わせたG−CSFで得られた12日間の動員の効果を示す図である。
【図10】ニワトリ絨毛尿膜血管新生試験(CAM)を用いた、[DIM3]PlGF−1、[DIM1/2]PLGF−1、及び陽性参照として塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)の血管新生活性の比較を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明によるPLGFホモ二量体は、既知のPLGFタイプ、すなわちPLGF−1、PLGF−2、PLGF−3又はPLGF−4のいずれの1種でもよい。
【0031】
単量体のPlGFタンパク質2個のC末端システイン残基は、単量体間ジスルフィド結合に関与している。
【0032】
「単量体間」及び「鎖間」という表現は、同意義であり、入替え可能と考えられる。
【0033】
「ジスルフィド架橋」及び「ジスルフィド結合」という表現も、同意義であり、入替え可能と考えられる。
【0034】
本発明による「C末端の」という表現は、唯一で最後のシステイン残基を含む単量体C末端領域という意味である。鎖間結合に関与した、こうした残基は、組換え型PLGF−1の125位(wtPlGF131の124位に相当)、組換え型PlGF−2の146位(wtPlGF152の145位に相当)、組換え型PlGF−3の197位(wtPlGF203の196位に相当)、及び組換え型PlGF−4の218位(wtPlGF224の217位に相当)にある。したがって、本発明のホモ二量体は、PLGF−1のCys125〜Cys125、PLGF−2のCys146〜Cys146、PLGF−3のCys197〜Cys197又はPLGF−4のCys218〜Cys218に1つの鎖間ジスルフィド結合を含む。本発明の例示的な一実施形態では、ホモ二量体は、3つの鎖間ジスルフィド架橋を有する単離したPlGF−1タンパク質ホモ二量体である。本発明の特異的な形によれば、架橋は2個の単量体間、好ましくはCys60〜Cys69、Cys69〜Cys60及びCys125〜Cys125にある。こうした新規のPlGF−1タンパク質は、以後[DIM3]PlGF−1と称する。
【0035】
本発明によると「PlGFの単量体」という用語は、天然型の単量体タンパク質(w.t.)すなわち単量体PlGF131、単量体PlGF152、単量体PlGF203若しくは単量体PlGF224、又は修正された宿主細胞に発現した組換え型単量体タンパク質の、どちらかの意味である。PlGF単量体は、WO−A−92/06194又はWO−A−03/066676に開示されているとおり、バクテリアなどの原核細胞に発現した場合は非グリコシル化であり、酵母又は哺乳類細胞などの真核細胞に発現した場合は少なくとも部分的グリコシル化である可能性がある。
【0036】
付加的鎖間ジスルフィド結合の存在は、本発明のホモ二量体に、既知のPLGF二量体に対して新規の予測できない特性を与える。
【0037】
例えば、より詳細に実験項で実証すると、本発明の産物は、既知の[DIM1/2]PlGF−1と比較して、より高い安全性が賦与され、実質的により均一であり、Cys60及びCys69に係る鎖間ジスルフィド結合を2つだけ有している。
【0038】
さらに、新規のホモ二量体は、in vitro走化性アッセイで驚くほど高い固有活性を示すが、このアッセイは[DIM1/2]PlGF−1と比較して、向上したin vivo有効性に相関している。
【0039】
本発明のさらなる態様は、PlGFホモ二量体、例として[DIM3]PlGF−1を調製する方法である。
【0040】
こうした方法は、下記のステップを含む:
I.PlGF単量体タンパク質を得るステップ、
II.PLGFホモ二量体を得るために前記単量体を酸化させる、又は酸化するステップ、及び任意選択で
III.PLGFホモ二量体を精製するステップ。
【0041】
ステップI:
いくつかの異なる手順が、単量体PlGF、好ましくは鎖内ジスルフィド結合の全ての保持されている天然構造を得るために、ステップIに続くことができる。
【0042】
本発明の一実施形態によれば、ステップIは、C末端システイン残基間に鎖間ジスルフィド架橋を欠いたPlGFのホモ二量体型からの、単量体PlGFの調製を含む。こうした場合、ステップIは下記のステップ:
pHが中性から塩基性、例えば範囲が7から9.5であり且つ還元剤を含有するバッファー中で、PlGFのホモ二量体型をインキュベートし、次いで以下に記載の手順に従って還元剤を除去又は不活性化するステップを含む。
【0043】
出発産物がPlGF−1のホモ二量体型である場合、出発産物は鎖間ジスルフィド結合を3つ未満含有することになろう。例えば、ジスルフィド結合を1つ若しくは2つ、又はその混合物を有するホモ二量体が使用できる。好ましい出発産物は、WO−A−03/066676に記載の方法によって得られるホモ二量体型[DIM1/2]PlGF−1である。
【0044】
タンパク質化学で一般に利用されるいずれのタイプの還元剤も、該方法の上記ステップで使用できる。例えば、トリス(2−カルボキシエチル)ホスフィン塩酸塩(TCEP*HCl)、ジチオスレイトール(DTT)若しくは同等の薬剤、又はその混合物である。
【0045】
還元剤は、還元剤/PLGFタンパク質のモル比が5:1〜100:1の範囲で使用されることが好ましく、前記還元剤のインキュベーションは、10分から30時間の間、好ましくは30分から2時間の間に含まれる時間で行われることが好ましい。
【0046】
代替の一実施形態によれば、ステップIは、組換え型DNA技術によってバクテリア宿主細胞で得られた、PlGF−1分子を含有する封入体からの、単量体PlGFの調製を含む。封入体は、好ましくは、WO−A−03/066676に記載の方法によって得られる。こうした場合、ステップIは下記のステップ:
pHが中性から塩基性、例えば範囲が7から9.5、好ましくはトリスバッファー(pH8)であり、且つ変性剤として例えば8Mの尿素又は6Mのグアニジンをカオトロピック剤(例えばエチレンジアミン、アルギニン、他)の存在下で任意に含有するバッファー中で、PlGFを含有する封入体をインキュベートするステップと、
こうして還元剤で得られたタンパク質溶液を還元するステップを含み、
タンパク質化学で一般に利用されるいずれのタイプの還元剤も、該方法の上記ステップで使用できる。例えば、トリス(2−カルボキシエチル)ホスフィン塩酸塩(TCEP*HCl)、ジチオスレイトール(DTT)若しくは同等の薬剤、又はその混合物である。
【0047】
還元剤は、還元剤/PLGFタンパク質のモル比が5:1〜100:1の範囲で使用されることが好ましく、前記還元剤のインキュベーションは、10分から30時間の間、好ましくは30分から2時間の間に含まれる時間で行われることが好ましい。
【0048】
こうして得られた単量体は、完全な還元型でもよく、又は好ましくは、全ての鎖内ジスルフィド結合を保持することによって天然のフォールディングを維持する。
【0049】
還元後、得られた単量体は、いかなる予備的な精製もなしに直接ステップIIの酸化にかけることができる。
【0050】
この場合、精製ステップIIIは、精製された最終的なホモ二量体PlGFを得るために行われることが望ましい。
【0051】
精製されていないPLGF単量体とは、本発明によれば、50%から90%までの単量体を含有するタンパク質混合物という意味である。
【0052】
或いは、得られた単量体は、酸化前に予備的な精製にかけることができる。精製された型の単量体のPlGF−1とは、本発明によれば、少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、及び、より好ましくは少なくとも98%、又はそれ以上のPlGF単量体を含有するタンパク質混合物である。
【0053】
精製された単量体、例としてPlGF−1単量体に酸化ステップが行われた場合、酸化は通常、精製されたホモ二量体、例えば[DIM3]PlGF−1という結果になり、それ以上の精製ステップIIIを必要としない。
【0054】
ステップII
還元後、得られた単量体は、還元剤、及び/又は変性剤を適した技法で除去又は不活性化することによって、ステップIIの酸化にかけることができる。技法は透析など、例えば10〜100倍での適切な希釈、又はクロマトグラフィーといったその他の手段である。
【0055】
最初の選択肢では、酸化は精製されていない単量体のPlGFで行われる。通常、溶液は、充分に希釈されて、還元剤及び存在する場合は変性剤が、システイン残基のチオール基と反応すること及び/又はタンパク質フォールディングを妨害することを妨げる。
【0056】
こうしたケースに該当しない場合、ステップIIを実施する前に、還元剤及び存在する場合は変性剤は、以後記述するとおり、遊離システインとの反応及びタンパク質フォールディングの妨害に向けて、上記溶液から取り出されるか、或いは不活性化されなくてはならない。
【0057】
タンパク性物質を精製するのに適した既知の任意の技術を、該方法のこの段階で使用することができる。使用される可能性のある技法は、例えば濾過、イオン交換クロマトグラフィーを含むクロマトグラフィー精製、及び/又はゲル排除クロマトグラフィーである。よく知られているように、これらの技法の中には、低分子のみの除去を引き起こすものがあり、例えば還元剤だが、他のものではタンパク性混入物の除去も発生する。
【0058】
所望のホモ二量体PlGFタンパク質を得るため、単量体は、単量体PlGFのシステイン残基の酸化を妨害する能力がある任意の変性剤の非存在下、及び任意の還元剤の非存在下で、及びpH範囲が中性から塩基性の値であるバッファー中で、インキュベートによって酸化される。PlGFがPlGF−1である場合には、その酸化の産物すなわちホモ二量体は、普通、3つの鎖間ジスルフィド結合すなわち[DIM3]PlGF−1を含む。
【0059】
本発明による「還元剤の非存在」とは、還元剤の完全な欠如、又はPlGF単量体のシステイン残基のチオール基の酸化を妨害できない量若しくは状態での還元剤の存在、のいずれかを意味する。
【0060】
本発明による「変性剤の非存在」とは、変性剤の完全な欠如、又はタンパク質のフォールディングを妨害できないような量若しくは状態の変性剤の存在、のいずれかを意味する。
【0061】
C末端ジスルフィド結合を含む、全ての鎖間ジスルフィド結合の完全形成のためには、酸化は、単純に大気中で行われることが好ましい。或いは、少量の酸化剤を加えて、酸化をより早めることもできる。後者の場合、タンパク質多量体の形成は、酸化剤の量の単純制御で簡単に避けることができる。酸化時間は、通常12から48時間までの間で変動する。反応は、15℃から30℃の間の温度で、好ましくは室温で行われる。酸化プロセスが起こるバッファーは、pHが中性から塩基性の任意のバッファーでもよく、具体的にはpH7からpH9.5、例えばpH7.2、pH8.3又はpH9でもよい。適切なバッファーは、リン酸ナトリウムバッファー、トリス塩酸バッファー、リン酸アンモニウムバッファー又は任意の同等のバッファーから選択される。最終的に、単量体のPlGFは、初濃度範囲3から10mg/mL溶液で反応する。
【0062】
PLGF単量体を得るステップが還元剤の使用に関与する場合、こうした薬剤は、酸化溶液から完全に、又は少なくとも酸化を妨げない程度に、除去又は不活性化されなくてはならない。
【0063】
還元剤の除去は、該バッファーを、pHが中性から塩基性、例えば7〜9.5の間で、還元剤を全く含有しないバッファーで置換することにより行われる。或いは還元剤の除去は、1つ又は複数のクロマトグラフィー精製ステップを経由して、少なくとも部分的に達成され、例えば任意のタイプのイオン交換クロマトグラフィー、ゲル濾過クロマトグラフィー及び疎水性相互作用クロマトグラフィーで、順序は任意である。例えば、1陰イオン又は陽イオン交換クロマトグラフィーに、ゲル濾過、及び/又は疎水性相互作用クロマトグラフィーが続く。
【0064】
クロマトグラフィーの還元剤除去法は、任意のその他のタンパク性物質からのPLGF単量体タンパク質の、付随物精製又は追加精製を可能にするという、追加の利点を提供する。
【0065】
最終的に還元剤は、タンパク質溶液の希釈によって、及び/又は前記溶液に、タンパク質の存在下で使用するのに適する、当技術分野で知られた任意の酸化剤を過剰に加えることによって、不活性化できる。
【0066】
ステップIII:
ステップIIIの目的は、純度90%以上、好ましくは少なくとも95%、及び、より好ましくは少なくとも98%の最終的なホモ二量体を有することである。
【0067】
通常、ステップIIIの精製は、1つ又は複数のクロマトグラフィー精製からなる。好ましくは、前記クロマトグラフィー精製は、イオン交換クロマトグラフィーを含み、任意に、サイズ排除クロマトグラフィー及び/又は疎水性相互作用クロマトグラフィーがそれに続く。
【0068】
精製ステップIIIが行われる機会は、ステップIで得られた単量体のPlGFの純度、及び、達成が望まれた最終生成物の純度次第である。
【0069】
実験項で示すように、本発明の方法は、PLGF−1で行われる場合、純粋で、安定し、活性の高いホモ二量体を導き、このホモ二量体は、単量体残基Cys60〜Cys69、Cys69〜Cys60及びCys125〜Cys125間に主に3つの鎖間ジスルフィド結合を有する。
【0070】
得られた産物の生物活性/薬理活性の存在は、ヒト単球及び動物モデル、BALB/cマウス(例9及び10を参照)で実施された走化性の実験によって評価された。[DIM3]PlGF−1は、上記両方の実験で[DIM1/2]PlGF−1と比較された。
【0071】
図8及び図9及び図10に示す得られた結果は、[DIM3]PlGF−1が血管新生活性、走化活性、及び細胞コロニー形成活性を発揮するだけでなく、生物学的刺激を活性化する能力である固有活性が[DIM1/2]PlGF−1で観察されるよりも高いことも実証する。
【0072】
これらの生物学的効果は、野生型PLGF並びに初期のWO−A−2003/066676及びWO−A−2003/097688で産生された組換え型PLGFとして、当技術分野で知られた全ての薬理学的特性及び治療への適用に反映する。
【0073】
本発明は、患者又は治療を必要としている対象の血液幹細胞の動員を促進する調製薬のための、新規のホモ二量体PlGFの使用にも関する。本発明の薬物の使用から恩恵を受け得る患者の例は、化学療法を受けている患者である。
【0074】
さらに、血管新生活性を有する新規のホモ二量体PlGFは、虚血性疾患の治療措置に使用される。心筋組織の虚血、心筋梗塞、虚血発作性及び慢性虚血性心筋疾患、脳虚血及び虚血性発作、腸管虚血、四肢の末梢性虚血などである。加えて、強皮症の治療、皮膚潰瘍、創傷、熱傷、術後処置の治療、自然及び早期の皮膚組織老化の治療、並びに自然又は病的脱毛の治療に使用される。
【0075】
その安定性及び純度特性を鑑みると、本発明の二量体は、医薬産業での製造に高い適合性がある。
【0076】
したがって、よりさらなる本発明の目的は、本発明のホモ二量体PlGFを、少なくとも1種の薬学的に許容される担体、賦形剤、希釈剤、又は補助剤との混合物中に含む組成物に関する。
【0077】
治療薬の全身又は局所投与に適切な任意の製剤を、本発明に従って使用することができる。局所使用のための製剤は、化粧用途の分野で使用される。
【0078】
具体的には、新規のホモ二量体は、全身的若しくは局所的効果を有する場合は非経口経路で投与することができ、又は主に局所的効果を有する場合は皮膚若しくは粘膜に外用経路で投与することができる。全身的効果は、主に静脈投与によって達成されるが、腹腔内投与又は筋肉内投与も適している。局所的効果は、外用経由、又は非経口で筋肉内投与、皮下投与、関節間投与によって達成される。同様に、PLGF−1因子を、電気輸送又はイオン泳動経由で局所的に投与できる。因子の経口投与は、活性産物の性質が変わりやすいことを鑑みると、あまり勧められない。
【0079】
全身的又は局所的非経口使用の組成物は、溶液、懸濁液、リポソーム懸濁液、W/O型又はO/W型エマルションを含む。外用使用の組成物は、溶液、ローション、懸濁液、リポソーム懸濁液、W/O型又はO/W型エマルション、ゲル、軟膏、クリーム、ポマード及びペーストを含む。好ましい実施形態では、活性物質は、適切な凍結乾燥添加剤と混合した凍結乾燥体として製剤化し、治療上許容される希釈剤による再溶解に備える。有益な凍結乾燥添加剤は、バッファー、多糖類、スクロース、マンニトール、イノシトール、ポリペプチド、アミノ酸及び活性物質と両立するその他の添加剤である。本発明の好ましい実施形態では、活性物質を、凍結乾燥後のPLGF1/ホスフェート比が1:1〜1:2の間に含まれるような量で、ホスフェートバッファー(NaHPO/HO−NaHPO/2HO)に溶解させる。非経口使用に適した希釈剤は、水、生理溶液、糖溶液、含水アルコール溶液、油性希釈剤、ポリオール(グリセロール、エチレン若しくはポリプロピレングリコールなど)又は、無菌性、pH、イオン強度及び粘度の点で投与方法と両立する他の任意の希釈剤である。
【0080】
エマルション又は懸濁液の場合、組成物は、薬物の製剤に一般に使用される非イオン、双性イオン、陰イオン又は陽イオンタイプの適切な界面活性剤を含有することができる。油/水(O/W型)親水性エマルションは、非経口で全身的使用に好ましく、水/油(W/O型)親油性エマルションは、局所又は外用使用に好ましい。
【0081】
さらに本発明の組成物は、糖類又はポリアルコール類などの等張剤、バッファー、キレート剤、酸化防止剤、抗菌薬といった任意の添加剤を含有することができる。
【0082】
外用使用の組成物は、液体形状、又は半流動の形状を含む。液体形状は、溶液又はローションを含む。これらは、水溶性、エタノール/水などの含水アルコール性、又はアルコール性であってよく、凍結乾燥物質を可溶化して得られる。
【0083】
或いは、活性物質溶液は、デンプン、グリセリン、ポリエチレングリコール又はポリプロピレングリコール、ポリ(メタ)アクリレート、イソプロピルアルコール、ヒドロキシステアレートなどの既知のゲル化剤の添加によってゲル形態に製剤化することができる。
【0084】
外用使用用の他のタイプの組成物は、ポマード、ペースト、クリーム状のエマルション又は懸濁液である。W/O型エマルションは、吸収が早いので好ましい。親油性賦形剤の例は、流動パラフィン、無水ラノリン、白色ワセリン、セチルアルコール、ステアリルアルコール、植物油、鉱物油である。吸収を促進するために皮膚浸透性を増大させる薬剤を有利に使用することができる。こうした薬剤の例は、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ジメチルスルホキシド(DMSO)などの生理学的に許容される添加剤である。
【0085】
外用組成物に使用される他の添加剤は、糖類又はポリアルコール類などの等張剤、バッファー、キレート剤、酸化防止剤、抗菌薬、増粘剤、分散剤である。
【0086】
同様に、局所的又は全身的使用のための徐放性組成物は有用であり、ポリ乳酸、ポリ(メタ)アクリレート、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースなどのポリマー、及び当分野で既知の他の物質を含むことができる。例えば、ポリ乳酸又は他の生分解性ポリマーに基づく皮下埋込体の形状の徐放性組成物も有用であり得る。
【0087】
活性物質は、凍結乾燥し故に安定した形でパッケージされるのが好ましいが、医薬組成物は、活性な二量体の形にホモ二量体を安定化させる物質を有利に含む。
【0088】
実験項
(例1)[DIM1/DIM2]PlGFの特性決定
WO03/066676に記載の手順で得られた試料[DIM1/2]PlGF−1を、NaHPOバッファー溶液(pH7.2)中、1mg/mL濃度で、グラジエント条件のC18分析カラムに注入し、次いでESI−MS分析を行った。
【0089】
分析条件:下記を搭載したThermoFinnigan製LTQイオントラップ
マイクロHPLCシステム;
C18HPLCカラム;
溶出システム:システムA:HO/CHCN/HCOOH 97:2:1
システムB:HO/CHCN/HCOOH 2:97:1
溶出グラジエント:
t=0 システムA/システムB 80:20
t=12分 システムA/システムB 50:50
t=15分 システムA/システムB 50:50
t=16分 システムA/システムB 80:20
【0090】
得られたTICクロマトグラムを図1に示す。
【0091】
クロマトグラムは、[DIM1/2]PlGF−1のメインピークをrt=7.91分に示す。関連するマルチチャージMSスペクトル及びデコンボリューションしたMSスペクトル(それぞれ図2及び図3)は、異なる種の複数のPlGF−1が試料中に存在していることを立証する。
【0092】
図2は、広い一団のタンパク質の存在を図示する。
【0093】
図3は、[DIM1/2]PlGF−1の化学種が、実際は29.7〜30.5KDaの範囲に分子量を有するタンパク質の混合物である詳細を示す。
【0094】
得られたデータは、分子量29690の予期された二量体のタンパク質の存在を、より大きな分子量を有する、より大量の変異体と共に実証し、そのうちいくつかは該分子のシステイン残基に共有結合する有機低分子の存在を説明する。
【0095】
(例2)[DIM3]PlGF−1の産生
WO−A−03/066676に記載の精製したDIM1/2PlGF−1(濃度0.9mg/mL、pH7.2)2.5mLを、バッファー交換を行うためにPD−10脱塩カラムにロードした。試料は、50mMのNHPOバッファー(pH9、タンパク質濃度0.75mg/mL)3mLで溶出した。得られた溶液2.5mLは、ジチオスレイトール(DTT)(4mg/mL)12μLで還元し、したがって還元剤/タンパク質のモル比5/1(還元時間:30分)を確立した。こうした反応の結果として鎖間ジスルフィド架橋を還元したが、鎖内ジスルフィド架橋は変化せず、単量体型のPlGFを得た。次いで還元型タンパク質溶液(2.5mL)を、還元剤を除去するためPD−10カラムにロードし、50mMのNHPOバッファー(pH9)3mLで溶出した。得られた溶出液を、室温で18時間インキュベートした。
【0096】
産物の特性決定
上記方法で得られた試料0.62mg/mLの[DIM3]PlGF−1に、LC−MS分析を実施した。詳細には、試料を、例1の[DIM1/2]PlGF−1で使用されたのと同じ手順で、HPLC−MS分析によって実施されるグラジエント条件でC18分析カラムに注入した。
【0097】
この分析結果は図4に示され、精製された単一タンパク質種を生じる実質的に完全な再酸化を示す(クロマトグラフィーのシャープなピーク滞留時間を参照:9.88分)。さらに、関連するマルチチャージスペクトル(図5)は、唯一の高純度タンパク質の絶対的な普及を強調している。分子量29690±15Da(理論的分子量=29702)を有するPlGF−1ホモ二量体としてのこうした単一種の識別性は、さらに、産物のデコンボリューションした質量スペクトルによって確認した(図6)。
【0098】
HPLC−MS分析の結果を要約すると、産物[DIM3]PlGF−1は、流行性の種からなり、[DIM1/2]PlGF−1とは異なっている。主な差異は、下記により推測されている:
a)HPLC分析は、2つの産物の異なる滞留時間([DIM3]PlGF−1、rt=9.88分)対([DIM1/2]PlGF−1、rt=7.91分)の定量を認めた;
b)[DIM3]PlGF−1のHPLC−MSスペクトルは、理論的重量(29700Da)に相当する分子量の単一ホモ二量体タンパク質種の獲得を確定した。これは、異型遺伝子のタンパク質混合物(19.7〜30.5kDa)からなる[DIM1/2]PlGF−1と対照をなしている。
【0099】
二量体タンパク質の鎖間ジスルフィド架橋の存在、すなわち、遊離システインチオール基の欠如は、エルマン試薬の手段で検証された。[DIM3]PlGF−1中に遊離システイン−チオールは全く検出されなかった。
【0100】
こうした結果はさらに、ヨードアセトアミドでアルキル化した[DIM3]PlGF−1の質量分析によって確定された。アルキル化の非存在は、[DIM3]PlGF−1中の遊離システイン−チオール残基の完全な欠如を表した。
【0101】
最終的に、SDS−PAGE分析(図7)が、内在的に高純度の[DIM3]PlGF−1を確定した。[DIM3]PlGF−1並びに[DIM1/2]PlGF−1のSDS−PAGE分析は、自動チップシステム(Bio−Rad Experion)を使用して実施された。図7に示すように、[DIM3]PlGF−1は、[DIM1/2]PlGF−1より有意により純度が高い。精製プロトコルの後に産生される新規の産物に起因するバンドは検出されなかった。
【0102】
3番目の鎖間ジスルフィド架橋の存在は、非還元条件及び下記の古典的手順のもとで実施されたトリプシンマッピングによっても確定された。
【0103】
これらすべてのデータが一緒になって、高純度タンパク質[DIM3]PlGF−1における3つの鎖間ジスルフィド架橋の存在を確定する。
【0104】
(例3)[DIM3]PlGF−1の産生
WO−A−03/066676に記載の精製したDIM1/2PlGF−1(濃度4.5mg/mL、pH7.2)2.5mLを、ジチオスレイトール(DTT)(30.7mg/mL)20.8μLで還元し、還元剤/タンパク質のモル比11/1(還元時間:120分)を得た。こうした反応に続いて鎖間ジスルフィド架橋を還元したが、鎖内ジスルフィド架橋は変化せず、したがって単量体型のPlGFを得た。次いで還元型タンパク質溶液(2.5mL)を、還元剤を除去するためPD−10カラムにロードし、50mMのNAHPOバッファー(pH7.2)3mLで溶出した。得られた溶液を、室温で48時間インキュベートした。
【0105】
得られた産物は、二量体の形成が3つの鎖間ジスルフィド結合を含有することを立証すると等価の結果を得ることで、例2に記載のとおり特徴づけられた。
【0106】
(例4)[DIM3]PlGF−1の産生
WO−A−03/066676に記載の精製したDIM1/2PlGF−1(濃度0.9mg/mL、pH7.2)1mLを、ジチオスレイトール(DTT)(30.7mg/mL)5μLで還元し、還元剤/タンパク質のモル比33/1(還元時間:60分)を得た。こうした反応に続いて鎖間ジスルフィド架橋を還元したが、鎖内ジスルフィド架橋は変化せず、単量体型のPlGFを得た。タンパク質溶液から酸化還元種をすべて除去するため、並びに該バッファーを100mMのTRISバッファー(pH8.3)に交換するため、バッファー交換を行った。詳細には、バッファー交換は、10,000のカットオフを有するAmicon MicroconYM−10の遠心分離濾過システムを介して行った。Eppendorfの遠心分離機を使用して、10000×gで濾過を5サイクル行い、次いで分子量10,000Da未満の分子を98〜99%除去した。得られた溶液を、室温で48時間インキュベートした。
【0107】
得られた産物は、二量体の形成が3つの鎖間ジスルフィド結合を含有することを立証すると等価の結果を得ることで、例2に記載のとおり特徴づけられた。
【0108】
(例5)[DIM3]PlGF−1の産生
精製したDIM1/2PlGF−1(濃度4.5mg/mL、pH7.2)1mLを、ジチオスレイトール(DTT)(61.7mg/mL)15μLで還元し、還元剤/タンパク質のモル比40/1(還元時間:60分)を得た。こうした反応に続いて鎖間ジスルフィド架橋を還元したが、鎖内ジスルフィド架橋は変化せず、単量体型のPlGFを得た。タンパク質溶液から酸化還元種をすべて除去するため、並びに該バッファーを100mMのTRISバッファー(pH8.3)に交換するため、バッファー交換を行った。バッファー交換は、10,000のカットオフを有するAmicon MicroconYM−10の遠心分離濾過システムを介して行った。Eppendorfの遠心分離機を使用して、10000×gで濾過を5サイクル行い、次いで分子量10,000Da未満の分子を98〜99%除去した。得られた溶液を、室温で48時間インキュベートした。
【0109】
得られた産物は、二量体の形成が3つの鎖間ジスルフィド結合を含有することを立証すると等価の結果を得ることで、例2に記載のとおり特徴づけられた。
【0110】
(例6)[DIM3]PlGF−1の産生
精製したDIM1/2PlGF−1(濃度0.9mg/mL、pH7.2)3mLを、ジチオスレイトール(DTT)(13.3mg/mL)10μLで還元し、還元剤/タンパク質のモル比10/1(還元時間:100分)を得た。こうした反応に続いて鎖間ジスルフィド架橋を還元したが、鎖内ジスルフィド架橋は変化せず、単量体型のPlGFを得た。還元型タンパク質溶液2.5mLを、還元剤を除去するため並びにバッファー交換を行うために、PD−10カラムにロードし、試料は、50mMのNHPO(pH9)3mLで溶出した。得られた溶液を、室温で24時間インキュベートした。
【0111】
得られた産物は、二量体の形成が3つの鎖間ジスルフィド結合を含有することを立証すると等価の結果を得ることで、例2に記載のとおり特徴づけられた。
【0112】
(例7)封入体からの[DIM3]PlGF−1の産生
充分な量の封入体を、尿素8M及びエチレンジアミン20mMを含有する、50mMのTris*HClバッファー(pH8)で溶解し、約1mg/mLの終濃度でPlGF−1を得た。上記の溶液3mLを、ジチオスレイトール(DTT)(13.3mg/mL)10μLで還元し、還元剤/タンパク質のモル比10/1(還元時間:100分)を得た。こうした反応に続いて、可溶化した単量体型のPlGFを得た。還元型タンパク質溶液2.5mLは、還元剤及び変性剤を除去するため、50mMのNHPO(pH9.2)20容量で、室温で16時間透析した。
【0113】
得られた産物は、二量体の形成が3つの鎖間ジスルフィド結合を含有することを立証すると等価の結果を得ることで、例2に記載のとおり特徴づけられた。
【0114】
(例8)封入体からの[DIM3]PlGF−1の産生
充分な量の封入体を、尿素8M及びエチレンジアミン20mMを含有する、50mMのTris*HClバッファー(pH8)で溶解し、約1mg/mLの終濃度でPlGF−1を得た。上記の溶液3mLを、ジチオスレイトール(DTT)(13.3mg/mL)10μLで還元し、還元剤/タンパク質のモル比10/1(還元時間:100分)を得た。こうした反応に続いて、可溶化した単量体型のPlGF−1を得た。還元型タンパク質溶液2.5mLを、還元剤及び変性剤を除去するため並びにバッファー交換を行うために、PD−10カラムにロードし、試料は、50mMのNHPO(pH9.2)3mLで溶出した。得られた溶液を、室温で24時間さらにインキュベートした。
【0115】
得られた産物は、二量体の形成が3つの鎖間ジスルフィド結合を含有することを立証すると等価の結果を得ることで、例2に記載のとおり特徴づけられた。
【0116】
(例9)封入体からの[DIM3]PlGF−1の産生
WO−A−03/066676に記載の精製したDIM1/2PlGF−1(濃度4.5mg/mL、pH7.2)2.5mLを、ジチオスレイトール(DTT)(30.7mg/mL)20.8μLで還元し、還元剤/タンパク質のモル比11/1(還元時間:120分)を得た。こうした反応に続いて鎖間ジスルフィド架橋を還元したが、鎖内ジスルフィド架橋は変化せず、単量体型のPlGFを得た。還元型タンパク質溶液2.5mLを、還元剤を除去するため、及びバッファー交換を行うため、PD−10カラムにロードし、試料は、50mMのNHPO(pH9)3mLで溶出した。得られた溶液を、室温で24時間インキュベートした。
【0117】
得られた産物は、二量体の形成が3つの鎖間ジスルフィド結合を含有することを立証すると等価の結果を得ることで、例2に記載のとおり特徴づけられた。
【0118】
(例10)安定性評価
例2から7までのいずれか一項に記載のとおり得られた[DIM3]PlGF−1の試料、及びDIM1/2の試料を、室温で1カ月間貯蔵した。試料は、HPLC−UV(溶液中のタンパク質濃度検証用)及び、HPLC−MS(試料の整合性検証用)で分析した。得られた結果は、[DIM3]PlGF−1が試験の条件下では安定していることを示し、事実、タンパク質の沈殿と修飾のどちらも構造中に検出されなかった。それに反して、DIM1/2タンパク質試料には、部分的な沈殿が観察された。
【0119】
(例11)
走化性アッセイ
[DIM1/2]PLGF−1及び[DIM3]PlGF−1の有効性を試験するために使用される細胞を、Centro Trasfusionale、Ospedale S.Salvatore、L’Aquila、Italyの厚意を介して、健常志願者のヘパリン処置された血液のバフィーコートから得た。単核細胞は、Ficoll/Hipaqueの遠心分離によって得た。細胞生存率は、トリパンブルー色素排除で測定したところ、全ての実験で95%以上だった。単球の遊走は、以前記述されたとおり(Bizzarri C.ら、Biochem.PHarm.、2001、61、1429〜1437)48ウェルのマイクロケモタキシスチャンバーを使用して評価した。手短に言うと、制御媒体(PBS+0.2%BSA)29μl又は、濃度増加性タンパク質溶液を、ケモタキシスチャンバーの下方区画に播種した。細胞懸濁液(3x10PBMCs/mL)50μlは、上方区画に播種した。ケモタキシスチャンバーの2つの区画を、5−μmのポリカーボネートフィルターで区分した。チャンバーを、COが5%の大気中で37℃で2時間インキュベートした。インキュベーションの最後に、フィルターを取り出して、固定し、Diff−Quikで染色し、試料符号化の後に高倍率(100X)の油浸視野(oil immersion fields)5つをカウントした。
【0120】
[DIM3]PlGF−1を、用量反応実験で[DIM1/2]PLGF−1と比較した。
【0121】
図8に表したとおり、結果は、走化性が濃度依存性であることを示している。事実、[DIM3]PlGF−1及び[DIM1/2]PlGF−1(0.11nM対0.15nM)の両方のEC50が同じような値であるにもかかわらず、このin vitroアッセイでの高い固有活性は、[DIM3]PlGF−1に明らかである。こうした高い活性は、[DIM1/2]PlGF−1に比較して、より高い、生物学的走化性効果を産生する能力を実証している。
【0122】
(例12)動員及びコロニー形成細胞アッセイ
[DIM3]PlGF−1の向上した生物活性の、さらにとても重要な確証を、ある動物モデル(BALB/cマウス)で、臨床的状況でのPBMC動員をシミュレーションして得た。
【0123】
動員プロトコルは、生後6週間から8週間のメスのBALB/cマウス(体重20〜25g)への組換え型ヒト顆粒球コロニー刺激因子の腹腔内注射(rhG−CSF;10μg/日、1〜5日)からなる。組み合わせ処置は、rhG−CSF(10μg/日)に[DIM1/2]PlGF−1(5、10又は15μg/日)又は[DIM3]PlGF−1(1.7、3.3、又は5μg/日)のどちらかをプラスした5日間の処置からなる。組み合わせ調査で使用するPlGF−1の用量範囲は、予備的な実験において同定した。各実験は、少なくとも3回実施し、動物は最終処置の2〜3時間後に屠殺した。末梢血は、ヘパリン含有チューブに収集して白血球数算定後にPBSで希釈し、単核細胞はFicollの不連続勾配遠心分離で分離した。コロニー形成細胞(CFCs)の総量は、(Carlo−Stella C.ら、Cancer Res.、2002、62、6152〜6157)に記載のメチルセルロース培養液中で査定した。
【0124】
得られた結果は、[DIM3]PlGF−1がG−CSFと協同して、循環する造血前駆細胞の、関連コロニー形成細胞(CFCs)、高増殖能コロニー形成細胞(HPP−CFCs)、原始的な長期培養開始細胞(LTC−ICs)及び放射能防護細胞を含めた、広域スペクトルの絶対数及び頻度を亢進することを示した。詳細には、G−CSFと[DIM3]PlGF−1の組み合わせの効果を、G−CSFと[DIM1/2]PlGF−1の組み合わせとの比較で、1mLあたりのCFC数の増加について造血活性を描写するパラメータで図9に示した。
【0125】
観察できるとおり、[DIM1/2]又は[DIM3]PlGF−1との組み合わせはどちらも、G−CSF効果と強力に協同して、1mLあたりのCFC数を、G−CSF単体と比較して少なくとも3倍に増加させている。しかしながら驚いたことに、こうした効果は、[DIM1/2]PlGFと比較して、有意に低い濃度の[DIM3]PlGF−1で得られた。([DIM3]PlGF−1/[DIM1/2]PlGF−1、用量比1:3)。このことは、どちらもG−CSFと組み合わせたときに、[DIM1/2]PlGF−1に比較して[DIM3]PlGF−1の造血活性がより高いことを明確に示している。
【0126】
(例13)[DIM3]PlGF−1の血管新生活性の評価
[DIM3]PlGF−1、[DIM1/2]PLGF−1因子、及び陽性参照としての塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)の血管新生活性を、Maglioneら(「Il Farmaco」に前掲)によって既に記述されているニワトリ絨毛尿膜血管新生試験(CAM)を使用して比較した。異なる量の[DIM3]PlGF−1及び[DIM1/2]PlGF−1(0〜3mcg/スポンジ)を、1mmゼラチンスポンジに吸収させ、続いてCAMの表面に植え込んだ。12日後、試料と接触しているCAM領域を切片にし、着色して、「ポイントカウント法」として知られる形態計測技法を使用して血管新生効果を定量化した。具体的には、144個の交点を有するグリッド上でCAM切片を顕微鏡で分析し、結果を、横断面上で毛細血管が占める交点の割合(血管新生した面積の割合)として表した。示した結果(図10)では、[DIM3]PlGF−1及び[DIM1/2]PlGF−1の血管新生活性は本質的に同じである。
【0127】
(例14)[DIM3]PlGF−1のイソプレナリン誘発性心臓虚血に対する効果の評価
心臓の虚血及び梗塞に対する[DIM3]PlGF−1の効果は、野生型因子に関してMaglioneら(前掲)によって記述されたように、動物モデルにイソプレナリンを利用して誘発された虚血で評価できる。実験はウサギで行い、1日1回の用量160mcg/Kgの[DIM3]PlGF−1、又は同量の賦形剤のみを1〜5日間、静脈内投与した。イソプレナリンは、1日目及び2日目に皮下投与した。T波の反転、S波の拡幅、Q波の突出など、主な虚血性損傷を示す典型的な特徴の心電図(ECG)をモニターした。処置動物及び未処置動物のECGの変化を、以下説明するように0〜6の範囲のポイントで段階評価した。
0、病変無し;1、S波の突出;2、T波の突出;3、T波下降部の低下;4、S波の拡幅;5、T波の反転;6、Q波の突出。5日間の試験中のECGポイントによって定義される曲線下の全面積を、処置動物及び未処置動物について計算した。心電図の特性によって明らかになった結果は、虚血性組織の巨視的観察及び微視的観察によって確認できる。前記検査は、賦形剤のみで処置した動物の心臓組織で観察されるものに関して、重症度は中程度の組織学的変化及び虚血性病変が存在することを示した。
【0128】
(例15)[DIM3]PlGF−1のネオマイシン誘発性強皮症に対する効果の評価
ネオマイシン誘発性強皮症に対する[DIM3]PlGF−1の効果は、Yamamotoら(前掲)によって記述された動物の強皮症モデルで研究できる。第1のC3Hマウス群は、3週間毎日皮下注射したブレオマイシン(100mcg/mL)で処置する。他の3つのC3Hマウス群に、それぞれ0.1、1及び10mcg/mLのPlGF−1CG変異タンパク質を毎日の注射に添加した以外は上記と同様に処置した。3週間の処置後、動物を屠殺し、処置部位から皮膚試料を採取して組織学的分析に供した。[DIM3]PlGF−1処置の効果は、ブレオマイシンに誘発される皮膚の硬化に起因し得るヒドロキシプロリンレベル及び皮膚肥厚といった、組織学的な特異現象の減少を明確に示した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
単離した胎盤増殖因子(PlGF)ホモ二量体であって、前記ホモ二量体を形成する単量体タンパク質2個のC末端システイン残基が、単量体間ジスルフィド結合に関与することを特徴とする上記ホモ二量体。
【請求項2】
単量体間ジスルフィド架橋を2つ又は3つ含有するホモ二量体を特徴とする、請求項1に記載のPlGFホモ二量体。
【請求項3】
前記C末端ジスルフィド架橋が、組換え型PLGF−1の125位、wtPLGF131の124位、組換え型PLGF−2の146位、wtPLGF152の145位、組換え型PLGF−3の197位、wtPLGF203の196位、組換え型PLGF−4の218位、wtPLGF224の217位から選択された各単量体の位置にある、システイン残基2個の間にあることを特徴とする、請求項1又は2に記載のPlGFホモ二量体。
【請求項4】
PlGFが組換え型PLGF−1であり、前記ジスルフィド架橋がCys60〜Cys69、Cys69〜Cys60及びCys125〜Cys125間にあることを特徴とする、請求項1又は3に記載のPlGFホモ二量体。
【請求項5】
請求項1から4までのいずれか一項に記載のPlGFホモ二量体の調製のための方法であって、下記のステップ、
I.PlGF単量体タンパク質を得るステップ;
II.前記単量体を、pHが中性から塩基性であるバッファー中でインキュベートすること、及び/又は還元剤がある場合は、酸化を妨げない程度に還元剤を除去又は不活性化することによって、酸化させて、PLGFホモ二量体を得るステップ;及び任意選択で
III.PLGFホモ二量体を精製するステップ
を含む上記方法。
【請求項6】
前記ステップIが、還元剤を含有し且つpHが中性から塩基性であるバッファー中で、鎖間ジスルフィド架橋を3つ未満含有するPlGFホモ二量体をインキュベートして、PLGF単量体タンパク質を得るステップを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記ステップIが、変性剤を含有するバッファー中で、PLGFを含有する細菌封入体をインキュベートするステップと、こうして得られたタンパク質溶液を還元剤で還元するステップとを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記還元剤がトリス(2−カルボキシエチル)ホスフィン塩酸塩(TCEP*HCl)及びジチオスレイトール(DDT)、又はそれらの混合物を含むグループから選択される、請求項5から7までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記還元剤が、還元剤/PLGFタンパク質のモル比5:1〜100:1の範囲で使用される、請求項5から8までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記還元剤のインキュベーションが10から30時間の範囲で行われる、請求項5から9までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
請求項5から10までのいずれか一項に記載の方法であって、さらにPLGF単量体タンパク質の精製を含む上記方法。
【請求項12】
ステップIIの酸化が、温度が15℃から30℃の間に構成されたバッファー中でインキュベートすることによって行われる、請求項5に記載の方法。
【請求項13】
前記酸化が、12から48時間の間に含まれる時間で行われる、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
ステップIIの還元剤の除去又は不活性化が、バッファーを、還元剤を全く含有していないバッファーで希釈、透析又は置換することによって行われる、請求項5から13までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
還元剤の除去が、単量体を精製することによって行われる、請求項5から13までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
ステップIIIの前記精製が、クロマトグラフィーの精製によって行われる、請求項5に記載の方法。
【請求項17】
請求項1から4までのいずれか一項に記載の、医学的処置に利用するための単離したPlGFホモ二量体。
【請求項18】
治療を必要としている対象の血液幹細胞の動員促進に利用するための、請求項17に記載のPlGFホモ二量体。
【請求項19】
前記対象が化学療法を受けている患者である、請求項18に記載のPlGFホモ二量体。
【請求項20】
医学的処置が虚血性疾患の治療である、請求項17に記載のPlGFホモ二量体。
【請求項21】
虚血性疾患が、心筋組織虚血、心筋梗塞、虚血性発作、及び慢性虚血性心筋疾患、脳虚血、及び虚血性発作、腸管虚血、四肢の末梢性虚血である、請求項20に記載のPLGFホモ二量体。
【請求項22】
医学的処置が皮膚強皮症又は進行性全身性強皮症の治療である、請求項17に記載のPlGFホモ二量体。
【請求項23】
強皮症が心筋強皮症である、請求項22に記載のPlGFホモ二量体。
【請求項24】
医学的処置が皮膚潰瘍、創傷、熱傷、術後処置の治療である、請求項17に記載のPlGFホモ二量体。
【請求項25】
医学的処置が自然又は早期の皮膚組織老化の治療である、請求項17に記載のPlGFホモ二量体。
【請求項26】
医学的処置が病理学的脱毛の治療である、請求項17に記載のPlGFホモ二量体。
【請求項27】
少なくとも薬学的に許容される賦形剤との混合物中に、請求項1から4までのいずれか一項に記載のPlGFホモ二量体を含む医薬組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2013−503914(P2013−503914A)
【公表日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−528356(P2012−528356)
【出願日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際出願番号】PCT/EP2010/063217
【国際公開番号】WO2011/029861
【国際公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【出願人】(512059752)ドンペ ソシエタ ペル アチオニ (1)
【出願人】(504297423)ジェイモナト ソシエテ ペル アチオニ (3)
【Fターム(参考)】