説明

ホルダ部材

【課題】 製品たる筒型となる車両用の油圧緩衝器を搬送するための梱包に際してのコストの低減化を可能にする。
【解決手段】 折り曲げ成形されて内側に筒型の油圧緩衝器Dを収容するホルダ部材Pであって、油圧緩衝器Dの軸線方向に沿う任意の長さを有するベース部1と、このベース部1の軸線方向の基端に起立する後方起立部2と、ベース部1の軸線方向の先端に起立する前方起立部3とを有し、後方起立部2は、上端部に油圧緩衝器Dにおけるボトム端部あるいはボトム端部近傍の挿通を許容する凹部2cを有し、前方起立部3は、上端部に油圧緩衝器Dにおけるヘッド端部D4あるいはヘッド端部近傍の挿通を許容する凹部3cを有してなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、筒型となる車両用の油圧緩衝器を搬送する際の利用に向くホルダ部材に関し、また、このホルダ部材を利用する保持方法に関し、さらには、このホルダ部材に保持された油圧緩衝器に関する。
【背景技術】
【0002】
筒型となる車両用の油圧緩衝器を搬送する際には、搬送性を良くする見地から複数本の油圧緩衝器を纏めて搬送する集合梱包が利用される一方で、個々の製品については、化粧箱に入れられてエンドユーザーに届けられる。
【0003】
一方、集合梱包に際しては、先ずは、油圧緩衝器において、ロッド体をシリンダ体内に押し込むようにして収縮状態にし、この収縮状態を、たとえば、バンド掛けなどで維持する。
【0004】
それゆえ、集合梱包にあって、一つの函内に複数本の油圧緩衝器を効率良く収容できると共に、エンドユーザーに届けるために化粧箱に入れるのにあって、製品が収縮状態のままに維持されているから、化粧箱をいたずらに大きく形成する必要がなく、いわゆる梱包コストのいたずらな高騰化を招かない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開昭54−60089号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記したバンド掛けした製品を化粧箱に入れる方策にあっては、梱包コストの高騰化を回避できなくする危惧があると指摘される可能性がある。
【0007】
すなわち、製品が化粧箱に入れられた状態で搬送に時間が掛かるなどすると、製品が化粧箱内で未固定であることもあって、前後左右に移動したりあるいは転がったりすることがあり、そのため、化粧箱が損傷して、製品に傷付現象などを招来させる危惧がある。
【0008】
そこで、この化粧箱の損傷を回避するために、化粧箱を構成する段ボールの板厚を大きくしたり、化粧箱内に破損防止用の補強段ボールを入れたりすることを要し、材料コストの低減化を図れない。
【0009】
また、化粧箱内での製品の移動を阻止するために、いわゆる詰め物を入れる場合には、これまた材料コストの低減化を図れないことになる。
【0010】
そして、補強段ボールを入れたり詰め物を入れたりする場合には、梱包作業に際しての手間が増えると共に、作業効率も低下し、結果的にコストアップに繋がる。
【0011】
この発明は、上記した事情を鑑みて、創案されたものであって、製品たる筒型となる車両用の油圧緩衝器を搬送するための梱包に際してのコストの低減化を可能にするホルダ部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記した目的を達成するために、この発明によるホルダ部材の構成を、折り曲げ成形されて内側に筒型の油圧緩衝器を保持するホルダ部材であって、上記油圧緩衝器の軸線方向に沿う任意の長さを有するベース部と、このベース部の軸線方向の基端に起立する後方起立部と、上記ベース部の軸線方向の先端に起立する前方起立部とを有し、上記後方起立部は、上端部に上記油圧緩衝器におけるボトム端部あるいはボトム端部近傍の挿通を許容する凹部を有し、上記前方起立部は、上端部に上記油圧緩衝器におけるヘッド端部あるいはヘッド端部近傍の挿通を許容する凹部を有してなるとする。
【0013】
それゆえ、この発明によるホルダ部材にあっては、ベース部の基端から起立する後方起立部が上端部に有する凹部に油圧緩衝器におけるボトム端部あるいはボトム端部近傍の挿通を許容すると共に、ベース部の先端から起立する前方起立部が上端部に有する凹部に油圧緩衝器におけるヘッド端部あるいはヘッド端部近傍の挿通を許容するから、油圧緩衝器がホルダ部材における後方起立部と前方起立部とに架け渡すような態勢に保持される。
【0014】
したがって、ホルダ部材に保持された油圧緩衝器、つまり、荷姿品は、ホルダ部材の内側にあって、この油圧緩衝器における軸線方向を横切る方向となる横方向に移動できない、つまり、横方向への移動、さらには、横方向への転がりがホルダ部材によって規制されることになる。
【0015】
このことから、荷姿品が、たとえば、化粧箱に入れられるとき、化粧箱内にあって、油圧緩衝器における軸線方向を横切る方向となる横方向への移動および横方向への転がりが阻止されるのはもちろんのこと、油圧緩衝器の軸線方向への移動も阻止されることになる。
【0016】
そして、油圧緩衝器の化粧箱内での前後方向や横方向の移動および横方向への転がりが阻止されるから、この移動や転がりに起因する化粧箱の破損を危惧しなくて済み、段ボールの板厚を大きくしたり、補強用段ボールを入れたり、詰め物を入れたりしなくても良いことになる。
【0017】
また、化粧箱内に補強段ボールを入れたり詰め物を入れたりしないから、化粧箱内に似姿品を入れる梱包作業に手間を要しなくなり、梱包作業における作業効率が低下されず、結果的にコストアップを回避できる。
【0018】
さらに、油圧緩衝器を保持するホルダ部材にあって、後方起立部および前方起立部が上方からの荷重を受けても変形などしないように設定される場合には、荷姿品を複数纏めて梱包する集合梱包に際しても、補強部材を併用することを要せず、いわゆる使い捨てされる部材をいたずらに多く発生させないことが可能になる。
【発明の効果】
【0019】
その結果、この発明によれば、製品たる筒型となる車両用の油圧緩衝器を搬送するための梱包に際してのコストの低減化を可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】この発明によるホルダ部材で保持された状態の油圧緩衝器たる荷姿品を示す斜視図である。
【図2】図1の荷姿品の平面図である。
【図3】図1の荷姿品の正面図である。
【図4】この発明によるホルダ部材を展開して示す平面図である。
【図5】図1の荷姿品を外箱内に集合梱包した状態を示す平面図である。
【図6】図1の荷姿品を複数段に積み上げた状態を示す部分断面正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、図示した実施形態に基づいて、この発明を説明する。図1,図2および図3に示すように、この発明によるホルダ部材Pは、利用時に、内側に製品たる車両用の油圧緩衝器Dを保持し、ホルダ部材Pの外側からの結束バンドBの巻装で油圧緩衝器Dたる荷姿品Wを作る。
【0022】
そして、このホルダ部材Pは、油圧緩衝器Dにおける言わば下端側部となるシリンダ部D1部分を内側に収容して、このシリンダ部D1部分を保持する。
【0023】
これにより、ホルダ部材Pにあって、油圧緩衝器Dをシリンダ部D1部分だけでなく、油圧緩衝器Dにおける言わば上端側部となるロッド部D2部分まで含めて保持する場合に比較して、ホルダ部材Pにおける部材量を少なくできる。
【0024】
また、油圧緩衝器Dにあって、シリンダ部D1におけるヘッド端部D3(図1および図2参照)から突出するロッド部D2は、図示するところにあって、シリンダ部D1に押し込まれて、油圧緩衝器Dを収縮状態にする。
【0025】
そして、油圧緩衝器Dにあって、ロッド部D2がシリンダ部D1に押し込まれた状態は、図示するところでは、シリンダ部D1を保持するホルダ部材Pの外周に巻装されたループ状の結束バンドBにロッド部D2の先端が係止されることで維持される。
【0026】
この油圧緩衝器Dを保持するホルダ部材Pに対する結束バンドBの巻装位置については、基本的には任意で良いが、図示するところでは、油圧緩衝器Dのボトム端部に連結されたナックルブラケットNにかけ回されながら、ロッド部D2の先端にかけ回される。
【0027】
これにより、ホルダ部材Pに保持された油圧緩衝器Dにおける全体長さを、ロッド部D2をシリンダ部D1から大きく突出させた状態のままホルダ部材Pに保持される場合に比較して短くでき、荷姿品Wにおける全長を小さくできる。
【0028】
なお、ロッド部D2の先端と結束バンドBとの間には、ロッド部D2の先端保護のための軟質樹脂材などからなる保護材B1が結束バンドBに保持された状態で配設されている。この保護材B1については、その配設が省略されても良い。
【0029】
ちなみに、結束バンドBは、ポリプロピレン樹脂製のテープからなり、ホルダ部材Pに巻装された状態で専用治具の利用下に加熱接着されてループ状にされ、このとき、油圧緩衝器Dは、ホルダ部材Pに保持された状態で強制的に収縮状態にされている。
【0030】
また、油圧緩衝器Dを収縮状態にするのについては、図示するところでは、結束バンドBの利用によるとするが、基本的には任意の手段が利用されて良く、図示しないが、たとえば、ロッド部D2の先端とバネ受D4とに掛け渡されて、ロッド体D2がシリンダ部D1に押し込まれた収縮状態を維持する治具類が利用されるとしても良い。
【0031】
一方、油圧緩衝器Dにあっては、ホルダ部材Pの内側に収容される際に、斜め配置とされ、図示するところでは、シリンダ部D1のボトム端部(符示せず)の下端、すなわち、ボトム端部に保持されたナックルブラケットNの下端が下方の水平面(符示せず)、つまり、このホルダ部材Pが配置される水平面に着座する(図3参照)。
【0032】
また、この油圧緩衝器Dにあっては、ボトム端部近傍が後述する後方起立部2の上端部(符示せず)を挿通し、ヘッド端部D3が同じく後述する前方起立部3の上端部(符示せず)を挿通する。
【0033】
このとき、図示するところにあっては、油圧緩衝器Dにおけるバネ受D4の下端がこのホルダ部材Pを構成する後述のベース部1に着座し、これによって、バネ受D4の下端が、すなわち、バネ受D4における塗装の保護が可能とされる。
【0034】
油圧緩衝器Dがホルダ部材Pの内側に位置決めされるのにあって、油圧緩衝器Dが斜めに配置される場合には、油圧緩衝器Dがいわゆる水平に配置される場合に比較して、この油圧緩衝器Dが占有する平面視での全体長さを小さくすることが可能になる。
【0035】
ところで、ホルダ部材Pは、折り曲げ成形される前は、図4に示すように、いわゆる型紙状態に段ボールから打ち抜きなどで成形され、この成形の際には、あるいは、その後に、所定の山折り線および谷折り線さらにはカット線が形成される。
【0036】
すなわち、この発明によるホルダ部材Pは、両面段ボールあるいは複両面段ボールからなり、この段ボールの厚さが任意とされて、ライナと中しんの波形が出る言わば切断面に所定荷重が作用しても、折れ曲がったり歪んだりしない強度を有する。
【0037】
このことから、このホルダ部材Pにあっては、後述するが、起立部が強度部材として機能するのはもちろんのこと、保護部がいわゆる保護機能を発揮する際に、この保護部と協働して上方からの荷重を受ける。
【0038】
なお、後述する保護部は、この荷姿品Wが複数整列されるなどして相互に隣接するとき、油圧緩衝器D同士の直接の接触を回避させて、油圧緩衝器Dを傷付きなどから保護するようにも機能する。
【0039】
そして、このホルダ部材Pは、図4に示すように、基本的には、ベース部1と、後方起立部2と、前方起立部3とを有してなり、図示するところでは、ベース部1は、山折り部4を有し、後方起立部2は、後方保護部5を有し、前方起立部3は、前方保護部6を有してなる。
【0040】
ベース部1は、図4中で左右方向となる軸線方向の長さ寸法を図4中で上下方向となる幅方向の長さ寸法より任意に大きくするほぼ矩形に形成されてなる。
【0041】
そして、このベース部1は、軸線方向の中央部に幅方向に設けられる山折り線1aを有し、この山折り線1aを図4中の左右方向から挟むようにこの山折り線1aに平行する二本の谷折り線1b,1cを有する。
【0042】
また、このベース部1は、山折り線1aの中央部に架り、このベース部1の軸線方向に同じ長さに延びるほぼ楕円形の穴1dを有する。
【0043】
それゆえ、このベース部1にあっては、山折り線1aおよび二本の谷折り線1b,1cに沿ってベース部1を折り曲げるとき、ベース部1の軸線方向の中央部に山折り部4を形成することが可能になる。
【0044】
そして、この山折り部4の上端部(符示せず)には、上記の穴1dを半折りしてなる凹部4aが形成される。
【0045】
したがって、このベース部1にあっては、山折り部4を形成する二本の谷折り線1b,1cの間隔を調整することで、ベース部1における軸線方向の長さを収容される油圧緩衝器Dの長さに応じるように調整できる。
【0046】
そして、山折り部4の上端部に形成される凹部4aは、油圧緩衝器Dにおけるシリンダ部D1の挿通を許容して、シリンダ部D1と山折り部4との間の干渉を回避させる。
【0047】
ちなみに、ベース部1における山折り部4は、図示する一箇所とされるのに代えて、図示しないが、複数とされても良く、また、反対に、山折り部4の形成が省略されても良い。
【0048】
後方起立部2は、ベース部1における軸線方向の基端、つまり、図4中で右側端となる基端に谷折り線2aを境にして連設され、後述する後方保護部5を形成するための谷折り線2bを有し、この後方起立部2が起立されたときに、上方側部(符示せず)に油圧緩衝器Dのボトム端部あるいはボトム端部近傍の挿通を許容する凹部2c(図1,図2参照)を有する。
【0049】
そして、この後方起立部2は、ベース部1の軸線方向に沿うことになる長さ寸法、すなわち、起立されたときの高さ寸法を後述する前方起立部3と同じにする。
【0050】
前方起立部3は、ベース部1における軸線方向の先端、つまり、図4中で左側端となる先端に谷折り線3aを境にして連設され、後述する前方保護部6を形成するための谷折り線2bを有し、この前方起立部3が起立されたときに、上方側部(符示せず)に油圧緩衝器Dのヘッド端部D2あるいはヘッド端部D2近傍の挿通を許容する凹部3c(図1,図2参照)を有する。
【0051】
ところで、この前方起立部3におけるベース部1の軸線方向に沿うことになる長さ寸法、すなわち、起立されたときの高さ寸法についてであるが、図示する実施形態にあっては、このホルダ部材Pの内側に収容された油圧緩衝器Dの上端が上方の対向する他部に干渉しないようにするのに充分となる高さ寸法を有するとしている。
【0052】
つまり、このホルダ部材Pにあって、前方起立部3は、上記した後方起立部2と協働して上方からの荷重を負担するいわゆる支柱として機能するとしている。
【0053】
このことから、前方起立部3および後方起立部2の上端位置は、前方起立部3および後方起立部2の下端位置と平行でありながら面一にするとしている。
【0054】
それゆえ、このホルダ部材Pにあっては、ベース部1の基端に後方起立部2を起立させると共にベース部1の先端に前方起立部3を起立させることで、油圧緩衝器Dを収容させる内側を出現させることが可能になる。
【0055】
そして、このホルダ部材Pにおける内側に油圧緩衝器Dが収容されるとき、後方起立部2の凹部2cが油圧緩衝器Dにおけるボトム端部あるいはボトム端部近傍の挿通を許容し、前方起立部3の凹部3cが油圧緩衝器Dにおけるヘッド端部D3あるいはヘッド端部D3近傍の挿通を許容する。
【0056】
一方、このホルダ部材Pにあっては、後方起立部2および前方起立部3は、それぞれ保護部を有し、この保護部は、いわゆる保護機能を発揮すると共に、図示するところにあっては、起立部と協働して、上方からの荷重を負担し、また、このホルダ部材Pにおける自立性を向上させるように機能する。
【0057】
すなわち、後方保護部5は、後方起立部2の側端に谷折り線2bおよび谷折り線5aを境にして連設され、前方保護部6は、前方起立部3の側端に谷折り線3bおよび谷折り線6aを境にして連設される。
【0058】
なお、図示するところでは、後方起立部2と後方保護部5との境に二本の谷折り線2b,5aを有し、前方起立部3と前方保護部6との境に二本の谷折り線3b,6aを有するが、この各二本の谷折り線については、いずれか一本の谷折り線の形成が省略されても良い。
【0059】
そして、後方保護部5は、後方起立部2の側端に連設されて前方起立部3に向けて延設され、前方保護部6は、前方起立部3の側端に連設されて後方起立部2に向けて延設される。
【0060】
それゆえ、後方保護部5は、後方起立部2に連続した状態で折り曲げられるから、後方起立部2との横断面形状をL字状にすることになり、また、前方保護部6も、前方起立部3に連続した状態で折り曲げられるから、前方起立部3との横断面形状をL字状にすることになる。
【0061】
このことから、後方保護部5は、油圧緩衝器Dにおけるシリンダ部D1を外側から覆うことになり、また、前方保護部6は、油圧緩衝器Dにおけるバネ受D4を外側から覆うことになる。
【0062】
ちなみに、油圧緩衝器Dにおけるシリンダ部D1が外周に外装部品たる、たとえば、ホースブラケットを有してなる場合には、後方保護部5がこのホースブラケットをも保護することになる。
【0063】
また、後方保護部5は、後方起立部2に対して横断面形状をL字状にするように連続され、また、前方保護部6も、前方起立部3に対して横断面形状をL字状にするように連続されるから、後方起立部2,後方保護部5,前方起立部3および前方保護部6の下端が面一にされるとき、これらが協働してこのホルダ部材Pにおける自立性を向上させることになる。
【0064】
そして、後方保護部5は、後方起立部2に対して横断面形状をL字状にするように連続され、また、前方保護部6も、前方起立部3に対して横断面形状をL字状にするように連続されるから、後方起立部2,後方保護部5,前方起立部3および前方保護部6が高さ寸法を同じにするとき、これらが協働して上方からの荷重を負担することが可能になる。
【0065】
このことからすると、後方起立部2,後方保護部5,前方起立部3および前方保護部6が所定の機械的強度を具有する、すなわち、たとえば、所定の厚さを有する場合には、上方からの荷重を負担する支柱として機能することになる。
【0066】
ところで、前方保護部6は、図4中で左右方向となる軸線方向に沿う谷折り線6bを形成し、また、この谷折り線6bに架るように割り部7(図1,図3参照)を有する。
【0067】
このように、前方保護部6が谷折り線6bを有することで、この前方保護部6を横方向に折り曲げるように湾曲させることが可能になり、その分、バネ受D4を包み込むように保護することが可能になる。
【0068】
一方、割り部7は、カット線7a,7bと山折り線7c,7dとで形成され、内側に折れ曲がって、いわゆる凹みを形成し、この凹みへの結束バンドBの入り込みを許容する。
【0069】
ホルダ部材Pの外周に巻装された状態の結束バンドBの一部が割り部7に入り込むと、結束バンド7は、割り部7から脱落しなくなり、したがって、ホルダ部材Pの外周でのいわゆるズレ落ちが阻止される。
【0070】
以上のように形成されたこの発明によるホルダ部材Pにあっては、その使用に際して、先ずは、ベース部1における山折り線1aでベース部1を山折りすると共に二本の谷折り線1b,1cでベース部1を谷折りして山折り部4を折り曲げ成形する。
【0071】
ついで、各谷折り線2a,3aで谷折りしてベース部1に対して後方起立部2および前方起立部3を起立させる、すなわち、折り曲げ成形する。
【0072】
そして、起立された後方起立部2に対して、谷折り線2b,5aで谷折りして後方保護部5を折り曲げ成形し、起立された前方起立部3に対して、谷折り線3b,6aで谷折りして前方保護部6を折り曲げ成形する。
【0073】
以上のようにして折り曲げ成形されたホルダ部材Pの内側に油圧緩衝器Dを保持するのにあっては、以下の手順による。
【0074】
すなわち、先ず、油圧緩衝器Dにおけるシリンダ部D1のボトム端部に保持されているナックルブラケットNの下端を後方起立部2,後方保護部5,前方起立部3および前方保護部6の各下端が着座する水平面に着座させる。
【0075】
このとき、後方支持部2における凹部2cには、油圧緩衝器Dにおけるボトム端部が挿通するが、このボトム端部の挿通に不具合があるときには、ボトム端部近傍が挿通されるとしても良い。
【0076】
そして、上記の態勢から、油圧緩衝器Dにおけるバネ受D4の下端をベース部1に着座させる。これによって、バネ受D4の下端がベース部1の下方の水平面に直接接触しなくなり、たとえば、バネ受D4における塗装の保護が可能になる。
【0077】
油圧緩衝器Dにおけるバネ受D4の下端をベース部1に着座させるとき、前方起立部3の凹部3cには、油圧緩衝器Dにおけるヘッド端部D3が挿通する。これによって、図3に示すように、油圧緩衝器Dが斜め配置となる。
【0078】
油圧緩衝器Dを上記のようにして配置するとき、上記したように、油圧緩衝器Dにおけるボトム端部が後方起立部2の上端部、すなわち、この上端部に形成の凹部2cに挿通されるが、支持されない。
【0079】
つまり、油圧緩衝器Dにおけるシリンダ部D1のボトム端部に保持されているナックルブラケットNの下端が水平面に着座するから、油圧緩衝器Dにおけるシリンダ部D1のボトム端部近傍を後方起立部2の上端部に支持させる必要がない。
【0080】
このことから、この後方起立部2は、後方保護部5と共に油圧緩衝器Dからの荷重を受けることなく、したがって、上方から受ける荷重を設計基準にできる利点がある。
【0081】
そして、前方起立部3についてだが、この前方起立部3も上端部たる凹部3cに油圧緩衝器Dにおけるシリンダ部D1のヘッド端部D2を挿通させるとして、油圧緩衝器Dからの荷重を受けず、したがって、この前方起立部3につても上方から受ける荷重を設計基準にできる利点がある。
【0082】
この点に関し、前記した従前の集合梱包にあっては、支柱として機能する中仕切りが併せて油圧緩衝器を支持するから、たとえば、中仕切りの構成を複雑にしたり、大きい荷重に対処し得るように形成されたりすることに比較して、ホルダ部材Pにおける構成を簡素化できる点で有利となる。
【0083】
以上のようにしてホルダ部材Pの内側に位置決めされた油圧緩衝器Dにあっては、シリンダ部D1にロッド部D2が押し込まれて収縮状態にされると共に、この状態でホルダ部材Pの外周に結束バンドBが巻装され、ホルダ部材Pで保持された荷姿品Wになる。
【0084】
このとき、結束バンドBは、図3に示すように、油圧緩衝器Dのボトム端部に連結されたナックルブラケットNにかけ回されながら、ロッド部D2の先端にかけ回されるから、正面視において、いわゆる斜めに位置決めされる。
【0085】
一方、ホルダ部材Pにおける前方保護部6は、前記したように、油圧緩衝器Dに設けたバネ受D4を外側から覆う態勢になり、バネ受けD4を保護する(図1および図2参照)。
【0086】
このとき、前方保護部6は、横方向の中間部に縦に設けられる谷折り線6b(図4参照)を有してなるから、この谷折り線6bでわずかに内側に折れ曲がるようになり、同じく前記したように、油圧緩衝器Dのシリンダ部D1に設けられたバネ受D4を外側から包み込むように覆うことになる。
【0087】
これにより、前方保護部6がバネ受D4に巻付くような態勢になってバネ受D4から簡単にずれないようにすることが可能になり、この態勢を維持するように結束バンドBがホルダ部材Pの外周に巻装される。
【0088】
そして、結束バンドBは、前方保護部6がバネ受D4を外側から覆う態勢を維持し得るように、つまり、いわゆるずれて結束バンドBによる前方保護部6のバネ受D4への押し付け状態が解除されないようにする。
【0089】
そのため、結束バンドBは、前方保護部6が有する前記した割り部7で形成される凹みに入り込まされて、ここからの脱出が阻止され、いわゆるズレが阻止される。
【0090】
なお、油圧緩衝器Dが結束バンドBの利用によらずして、たとえば、前記した治具類、すなわち、ロッド部D2の先端とバネ受D4とに掛け渡されて、ロッド体D2がシリンダ部D1に押し込まれた収縮状態を維持する治具類が利用される場合には、図示しないが、結束バンドBが後方保護部5を含めた後方起立部2と前方保護部6を含めた前方起立部3とに掛け回されるようになって、内側に油圧緩衝器Dを保持するとしても良い。
【0091】
以上のようにしてホルダ部材Pで保持された油圧緩衝器D、すなわち、荷姿品Wにあっては、図5に示すように、複数とされて外箱H内に収容される集合梱包にも適する。
【0092】
この集合梱包にあって、外箱Hは、図6に示すように、たとえば、荷姿品Wを間にパッドたるスペーサSを有して5段重ねにして積み重ねることを許容する。
【0093】
このとき、荷姿品Wにあって、ホルダ部材Pを構成する後方起立部2,後方保護部5,前方起立部3および前方保護部6は、上端位置を内側に収容される油圧緩衝器Dにおける上端、つまり、大きい径を有するバネ受D4の上端位置より高くなるとしているから、いわゆる段重ねするときに、上方のスペーサPに油圧緩衝器Dが干渉することはない。
【0094】
また、荷姿品Wにあって、ホルダ部材Pを構成する後方起立部2,後方保護部5,前方起立部3および前方保護部6は、上下端の間隔、つまり、高さを同一にするから、下方のスペーサSあるいは外箱Hにおける底板H1と、上方のスペーサSとの間隔を同一にできる。
【0095】
したがって、外箱Hにおける底板H1が水平であると仮定するとき、上方のスペーサSが傾斜することなくホルダ部材Pの上端に載置され、それゆえ、この上方のスペーサを介しての上方からの荷重がいわゆる偏ることなく均等にホルダ部材Pに作用することになる。
【0096】
以上のことから、荷姿品Wにあっては、図6に示すように、外箱H内でスペーサSを挟んで複数段に重ねられても歪んだり変形したりしない。
【0097】
なお、荷姿品Wは、外箱H内にあって、ホルダ部材Pを構成する後方起立部2,後方保護部5,前方起立部3および前方保護部6の上下端がスペーサSなどに挟持される態勢になるから、各段で横方向のズレを阻止するための仕切り板を不要にする。
【0098】
また、外箱Hにあっては、この外箱Hが上下方向からの荷重を受ける強度部材とされることを要しないことになり、5段重ねにされた荷姿品Wをいわゆる軽包装することで足り、集合梱包に要する部材量を少なくする。
【0099】
それゆえ、図示しないが、外箱Hがパレットに載せられたり、外箱Hの底板H1がパレットに連結されたりすることで、パレットごとの複数となる荷姿品Wの搬送が可能とされることになる。
【0100】
以上のように、この発明にあって、ホルダ部材Pは、外周への結束バンドBの巻装で油圧緩衝器Dの単品となる荷姿品Wの形成を可能にするから、油圧緩衝器Dを化粧箱に入れて搬送することを要しないことになるが、化粧箱に入れて搬送すること自体を妨げるものではない。
【0101】
つまり、油圧緩衝器Dをエンドユーザーに届ける際には、図示しないが、化粧箱に入れて搬送する。
【0102】
この搬送の際に、製品が化粧箱内で移動したりすると、化粧箱が損傷して、製品に傷付現象などを招来させる危惧があることは、前述した。
【0103】
そこで、従前では、化粧箱の損傷を回避するために、化粧箱を構成する段ボールの板厚を大きくしたり、化粧箱内に破損防止用の補強段ボールを入れたりしたが、そのため、材料コストの低減化を図れなかった。
【0104】
また、化粧箱内での製品の移動を阻止するために、いわゆる詰め物を入れることがあり、この場合にも材料コストの低減化を図れなかった。
【0105】
それに対して、この発明のホルダ部材Pにあっては、先ず、段ボールの板厚を大きくすることを要しないし、また、補強段ボールを入れたり詰め物を入れたりすることを必要としないし、さらには、梱包作業の工程数を増やさない。
【0106】
このことから、この発明のホルダ部材Pを利用する場合には、梱包作業の作業効率を低下させず、しかも、材料コストのいたずらな高騰化を招来させず、化粧箱を利用した個別梱包を容易に実現可能にする利点がある。
【0107】
のみならず、集合梱包の際の荷姿そのままで化粧箱に入れられるから、販社でエンドユーザー向けに個別梱包するのに際して、新たに補強材などを利用する必要がなく、また、販社に納品されるまでの途中で排出される産業廃棄物の量を大幅に少なくでき、近年のエコ思想にも沿うことになる。
【0108】
前記したところでは、後方起立部2および前方起立部3は、上端部に形成の凹部2c,3cを挿通する油圧緩衝器Dをこの凹部2c,3cで支持しないとしたが、この発明よるホルダ部材Pにあっては、後方起立部2および前方起立部3が上端部に形成の凹部2cを挿通する油圧緩衝器Dをこの凹部2c,3cで支持するとしても良い。
【0109】
つまり、たとえば、油圧緩衝器Dにおけるボトム端部を形成するナックルブラケットNが、たとえば、ホースブラケット(符示せず)を有し、しかも、このホースブラケットが下方の水平面に干渉する可能性がある場合に、ベース部1における山折り部4のいわゆる開度を変更して、後方起立部2が対向する油圧緩衝器Dにおける部分を選択して、その部分に後方支持部2を位置決めさせ、そこを支持するようにしても良い。
【0110】
そして、油圧緩衝器Dに設けられるバネ受D4が、外径を小さくする場合には、バネ受D4の下端をベース部1に着座させるのが困難になることもあるので、この場合には、前方起立部3の上端部に形成の凹部3cに油圧緩衝器Dにおけるヘッド端部D3あるいはヘッド端部近傍を支持させるとしても良い。
【0111】
また、図示しないが、この種の油圧緩衝器Dにあっては、ロッド部D2の先端部が螺条部B1とされることがあり、この場合には、部品としてのナットが併せて搬送される。
【0112】
そこで、このホルダ部材Pにあっては、同じく図示しないが、たとえば、後方補強部5あるいは前方補強部6の内側面にいわゆるポケットを設け、このポケット内にナットなどの部品を収容して、併せて搬送できるようにしても良い。
【産業上の利用可能性】
【0113】
製品たる車両用の油圧緩衝器を荷姿品にするのに適すると共に、この荷姿品を搬送するための梱包に際してのコストの低減化を可能にする。
【符号の説明】
【0114】
1 ベース部
1a,7c,7d 山折り線
1b,1c,2a,2b,3a,3b,5a,6a,6b 谷折り線
1d 孔
2 後方起立部
2c,3c 凹部
3 前方起立部
4 山折り部
5 後方保護部
6 前方保護部
7 割り部
7a,7b カット線
B 結束バンド
B1 保護材
D 油圧緩衝器
D1 シリンダ部
D2 ロッド部
D3 ヘッド端部
D4 バネ受
H 外箱
H1 底板
N ナックルブラケット
P ホルダ部材
S スペーサ
W 荷姿品

【特許請求の範囲】
【請求項1】
折り曲げ成形されて内側に筒型の油圧緩衝器を保持するホルダ部材であって、
上記油圧緩衝器の軸線方向に沿う任意の長さを有するベース部と、
このベース部の軸線方向の基端に起立する後方起立部と、
上記ベース部の軸線方向の先端に起立する前方起立部とを有し、
上記後方起立部は、上端部に上記油圧緩衝器におけるボトム端部あるいはボトム端部近傍の挿通を許容する凹部を有し、
上記前方起立部は、上端部に上記油圧緩衝器におけるヘッド端部あるいはヘッド端部近傍の挿通を許容する凹部を有してなることを特徴とするホルダ部材。
【請求項2】
上記後方起立部は、側端に連設されて上記前方起立部に向けて延設され上記油圧緩衝器におけるシリンダ部を外側から覆う後方保護部を有し、
上記前方起立部は、側端に連設されて上記後方起立部に向けて延設され上記油圧緩衝器におけるバネ受を外側から覆う前方保護部を有してなる請求項1に記載のホルダ部材。
【請求項3】
上記後方起立部,上記前方起立部,上記後方保護部および上記前方保護部は、上記ベース部に対して起立した際の上下方向の長さを同一にしてなる請求項1または請求項2に記載のホルダ部材。
【請求項4】
上記後方起立部,上記前方起立部,上記後方保護部および上記前方保護部は、上記ベース部に対して起立した際の上端位置を内側に保持する上記油圧緩衝器の上端位置より高くしてなる請求項1,請求項2または請求項3に記載のホルダ部材。
【請求項5】
上記ベース部は、軸線方向の中間部にこのベース部における軸線方向の長さを可変にする山折り部を有してなる請求項1,請求項2,請求項3または請求項4に記載のホルダ部材。
【請求項6】
折り曲げ成形されたホルダ部材の内側に保持された筒型の油圧緩衝器であって、
上記ホルダ部材は、上記請求項1,請求項2,請求項3,請求項4または請求項5のいずれかに記載のホルダ部材とされ、
上記油圧緩衝器は、下端側部材とされるシリンダ部と、このシリンダ部に入出自在に挿通されて上端側部材とされるロッド部とを有し、
上記シリンダ部は、ボトム端部とヘッド端部との間の任意位置にバネ受を有してなることを特徴とする油圧緩衝器。
【請求項7】
上記ホルダ部材は、上記油圧緩衝器におけるボトム端部と上記油圧緩衝器におけるロッド部の先端とに掛け回されるループ状の結束バンドで巻装されてなる請求項6に記載の油圧緩衝器。
【請求項8】
折り曲げ成形されたホルダ部材の内側に筒型の油圧緩衝器を保持する保持方法であって、
上記ホルダ部材は、上記請求項1,請求項2,請求項3,請求項4または請求項5のいずれかに記載のホルダ部材とされてなることを特徴とする保持方法。
【請求項9】
上記ホルダ部材は、上記油圧緩衝器におけるボトム端部と上記油圧緩衝器におけるロッド部の先端とに掛け回されるループ状の結束バンドで巻装されてなる請求項8または請求項9に記載の保持方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−206753(P2012−206753A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−74079(P2011−74079)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(000000929)カヤバ工業株式会社 (2,151)
【Fターム(参考)】