説明

ホルムアルデヒドを含まないリグノセルロース接着剤およびその接着剤から作製される複合材

リグノセルロース基材を一緒に接着することによるリグノセルロース複合材の作製方法。方法の第一の変形は、(i)大豆タンパク質またはリグニンから選択される第一の成分と、(ii)大豆タンパク質の少なくとも1つの官能基と反応することができる、少なくとも1つのアミン、アミド、イミン、イミド、または窒素含有複素環官能基を包含する、少なくとも1つの実質的にホルムアルデヒドを含まない硬化剤との反応生成物を含む接着剤組成物を使用することを含む。方法の第二の変形は、(i)タンパク質またはリグニンと、(ii)タンパク質の少なくとも1つの官能基と反応することができる、少なくとも1つのアミン、アミド、イミン、イミド、または窒素含有複素環官能基を包含する第一の化合物と、(iii)硬化剤との反応生成物を含む接着剤組成物を使用することを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
分野
本発明の開示は、リグノセルロース複合材を作製する接着剤に関する。
【背景技術】
【0002】
背景
リグノセルロースに基づいた複合材は、接着剤(すなわち、結合剤)により結合している寸法の小さいセルロース系材料片から形成される。一般に堅固な木材は、より糸、線維、およびチップのようなより小さな片に断片化される。次に接着剤組成物は、木材成分に添加される。得られた混合物は、熱および圧力に曝されて、複合材をもたらす。接着剤ミックスは、典型的には唯一の非リグノセルロース成分である。
【0003】
最も慣例的に使用される木材用接着剤は、フェノール-ホルムアルデヒド樹脂(PF)および尿素-ホルムアルデヒド樹脂(UF)である。PFおよびUF樹脂に関して少なくとも二つの問題がある。第一に、揮発性有機化合物(VOC)が、リグノセルロースに基づいた複合材の製造時および使用時に発生する。放出性VOC、特にホルムアルデヒドの、ヒトの健康に対する作用について高まる懸念は、より環境的に許容可能な接着剤の必要性を促している。第二に、PFおよびUF樹脂は、石油由来生成物から作製される。石油の埋蔵量は、当然ながら有限である。複合木材産業は、再生可能な天然資源から作製されるホルムアルデヒドを含まない接着剤の開発によって、大きな恩典を受けると考えられる。
【0004】
1930年代から1960年代まで、合板の製造に木材用の接着剤として大豆タンパク質が使用された。大豆タンパク質接着剤の比較的に低い結合力および耐水性のため、石油由来接着剤が大豆タンパク質接着剤に取って代わった。しかし、大豆タンパク質は、環境的に許容可能である、安価で、豊富な、再生可能な物質である。
【発明の開示】
【0005】
開示の概要
本明細書で開示されているものは、リグノセルロース基材を一緒に接着することによるリグノセルロース複合材の作製方法である。方法の第一の変形は、(i)大豆タンパク質またはリグニンから選択される第一の成分と、(ii)大豆タンパク質またはリグニンの少なくとも1つの官能基と反応することができる、少なくとも1つのアミン、アミド、イミン、イミド、または窒素含有複素環官能基を包含する、少なくとも1つの実質的にホルムアルデヒドを含まない硬化剤との反応生成物を含む接着剤組成物を使用することを含む。エポキシドと、ポリアミン、ポリアミドアミン、またはポリアミド樹脂との付加物が、実質的にホルムアルデヒドを含まない硬化剤の特定の例である。方法の第二の変形は、(i)タンパク質またはリグニンと、(ii)タンパク質の少なくとも1つの官能基と反応することができる、少なくとも1つのアミン、アミド、イミン、またはイミド官能基を包含する第一の化合物と、(iii)硬化剤との反応生成物を含む接着剤組成物を使用することを含む。
【0006】
幾つかの態様の詳細な記載
理解を容易にするために、本明細書において使用される以下の用語が下記でより詳細に記載される。
【0007】
「リグニン」は、一般に、植物性材料に強度および硬さを与えるフェノール性ポリマーの群を意味する。リグニンは、多くのランダムカップリングをもつ非常に複雑なポリマーであり、したがってより一般的な用語として参照される傾向がある。リグニンは、例えば、ブラウン(Brauns)リグニン、セルロース分解性酵素リグニン、ジオキサン酸分解リグニン、摩砕木材リグニン、Klasonリグニン、および過ヨウ素酸リグニン、ならびにクラフトリグニンおよびリグノスルフォネートのような産業用のリグニン調製物を包含することができる。
【0008】
上記の用語の説明は、ただ単に読者を助けるために提供されており、当業者によって理解されるものよりも少ない範囲を有する、または添付された特許請求項の範囲を限定するものと考慮されるべきではない。
【0009】
接着剤組成物は、少なくとも1つのタンパク質、特に大豆タンパク質および/またはリグニンと、少なくとも1つの接着促進剤とを反応させることによって、作製することができる。タンパク質とリグニンの混合物が使用されてもよい。第一の変形において、タンパク質またはリグニンは、接着剤組成物の硬化とリグノセルロース基材への接着の両方をもたらすことができる、実質的にホルムアルデヒドを含まない化合物と反応する。換言すると、実質的にホルムアルデヒドを含まない化合物は、1つの化合物が二重機能を提供できるという意味では、二官能性接着促進剤である。第二の変形において、タンパク質またはリグニンは、2つの異なる接着促進剤と反応する。第一の接着促進剤は、追加の窒素含有官能基をタンパク質またはリグニンポリマー構造の内部、末端および/または突出の位置に導入することによって、タンパク質又はリグニンを修飾し、アミノおよび/またはイミノ増加タンパク質をもたらす。第二の接着促進剤は、硬化剤である。接着剤組成物の第一と第二の両方の変形は、典型的には、タンパク質またはリグニンが一つの部分または包装を含み、硬化剤(すなわち、第一変形の二官能性接着促進剤または第二変形の別個の硬化剤)が第二の部分または包装を含む、二成分系(two-part system)として提供される。第一と第二の両方の変形において、組成物の全ての部分または成分は、水溶液または分散体の形態であることができる。したがって、担体流体としての揮発性有機溶媒を避けることができる。これらの2つの変形は下記でより詳細に記載される。
【0010】
タンパク質は、典型的には再生可能な供給源から容易に入手可能な任意のタンパク質である。そのようなタンパク質の例には、大豆タンパク質、ケラチン、ゼラチン、コラーゲン、グルテン、およびカゼインが挙げられる。タンパク質は、当技術分野において公知である、水溶性または分散性である物質を得るために、前処理されてもよい。
【0011】
大豆タンパク質は、本記載の接着剤での使用において例示的なタンパク質である。大豆は、約38重量%のタンパク質を含有し、残りの部分は、炭水化物、油類、および水分を含む。大豆は、加工製品において大豆タンパク質の量を増加するために加工される。大豆タンパク質生成物の任意の形態を開示される接着剤組成物で使用することができる。3つの最も慣用的な大豆タンパク質生成物は、大豆粉、大豆タンパク質濃縮物、および大豆タンパク質分離物(SPI)である。これらの生成物間の一つの違いは、大豆タンパク質の量である。大豆粉は、約50重量%のタンパク質を包含し、大豆タンパク質濃縮物は、少なくとも約65重量%のタンパク質(乾燥重量)を包含し、SPIは、少なくとも約85重量%のタンパク質(乾燥重量)を包含する。接着剤組成物の特定の態様によると、大豆タンパク質はSPIである。
【0012】
先に述べたように、リグニンはクラフトリグニンのような産業用リグニン調製物を含んでもよい。現在、クラフトリグニンは、限定された商業的有用性を有するが、大量の廃棄クラフトリグニンが紙の商業生産の副産物として毎年生み出される。具体的には、クラフトリグニンは、典型的にはNaOHとNa2Sとの反応による木質材料から生み出される。
【0013】
タンパク質またはリグニンは、接着剤組成物で用いるために任意の方法で調製することができる。典型的には、タンパク質またはリグニンは、水または同様の溶媒のような、担体または送達用の液体に含まれる。具体的には、タンパク質またはリグニンを水に溶解し、得られた水溶液を接着促進剤と混合してもよい。接着剤水溶液は、例えば、最初にタンパク質またはリグニンを水中で混合し、混合物のpHを所望の範囲に調整することによって、調製してもよい。タンパク質またはリグニンが二官能性接着促進剤と混合される場合、タンパク質またはリグニン部分のpHは、得られたタンパク質/二官能性接着促進剤混合物が非酸性、またはより詳細にはアルカリ性となるように、十分にアルカリ性であるべきである。例えば、タンパク質またはリグニン部分のpHは、約7〜約11であることができ、それによって、合わせた二成分混合物に6を超えて約10までのpHをもたらす。例えばアルカリ金属水酸化物、水酸化アンモニウム、アミン、またはピリジンのような塩基性物質を添加することにより、pHを調整してもよい。水に溶解されたタンパク質またはリグニンの量を調整して、二成分系のタンパク質またはリグニン部分に所望の固形分を提供してもよい。タンパク質またはリグニン固形分は、例えば、約10〜約60重量%であることができる。タンパク質またはリグニン溶液は、この配合段階で凍結乾燥されてもよいか、または溶液のままであってもよい。タンパク質またはリグニン溶液が凍結乾燥される場合、水(または適切な担体流体)が使用前に凍結乾燥物質に単に添加される。凍結乾燥は接着剤の輸送費用を低減する。接着促進剤を大豆タンパク質またはリグニンの水溶液と混合して、木材基材に適用される最終接着剤組成物を形成する。
【0014】
理論に拘束されるものではないが、先に述べたように、二官能性接着促進剤の分子構造は、(1)接着剤組成物を硬化することができる反応部位、および(2)リグノセルロース基材への接着を提供する反応部位を包含すると考えられる。硬化反応部位および接着反応部位は、二官能性接着促進剤の同じ部位に位置していてもよい。換言すると、二官能性接着促進剤分子の使用可能な反応部位の第一の部分は、他の二官能性接着促進剤分子と反応することができるか、またはタンパク質の官能基(特にカルボン酸およびアミノ)と反応することができる。二官能性接着促進剤分子の使用可能な反応部位の第二の部分は、リグノセルロース基材と共有および/または水素結合を形成することができる。
【0015】
適切な二官能性接着促進剤化合物の例には、エポキシドと、ポリアミン樹脂、ポリアミドアミン樹脂、またはポリアミド樹脂との付加物が挙げられる。そのような樹脂は、典型的にはポリアルキレンポリアミンのグリシジルエーテルまたはエピクロロヒドリン縮合物から作製され、紙の湿潤強度増強剤(wet-strength agent)として使用される。樹脂は水溶性または水分散性であってもよい。これらの樹脂は、典型的には、タンパク質官能基に共有結合する、他の樹脂分子の窒素含有素複素環官能基に共有結合する、ならびにリグノセルロース基材中のカルボン酸および/またはヒドロキシル基に共有結合する反応部位である、窒素含有複素環官能基を包含する。
【0016】
エポキシドと、ポリアミン樹脂、ポリアミドアミン樹脂、またはポリアミド樹脂との例示的な市販の付加物には、Hercules Inc.から入手可能なKymene(登録商標)樹脂、Houghtonより入手可能なRezosol樹脂、Bordenより入手可能なCascamid樹脂、およびGeorgia-Pacific Corporationより入手可能なAmres(登録商標)樹脂が挙げられる。Kymene(登録商標)557H樹脂は、ポリ(アジピン酸-コ-ジエチレントリアミン)とエピクロロヒドリンとの反応生成物に基づく、特定の1つの例である。Kymene(登録商標)557H樹脂は、下記で示されている、窒素含有4員環官能基を包含する構造を有すると考えられる。

過剰量のエピクロロヒドリンは、製造プロセス時の架橋速度を制御するため、および保存安定性に役立つために使用される。そのような組成物およびその製造方法は、例えば、米国特許第2,926,116号および同第2,926,154号で開示されている。
【0017】
所望の硬化およびアミン、アミド、イミン、又はイミド官能基をもたらす別の手法は、最初にタンパク質またはリグニン構造を、これが追加のアミン、アミド、イミン、またはイミド官能基を包含するように修飾し、次いで修飾タンパク質またはリグニンを硬化することを含む。「追加の」アミン、アミド、イミン、又はイミド官能基という用語は、得られる修飾タンパク質またはリグニン構造(すなわち、タンパク質またはリグニン残基)が、未修飾タンパク質構造で既に存在しているよりも多い、追加の数の、共有結合しているアミン、アミド、イミン、またはイミド官能基を包含することを示す。具体的には、追加のアミド、アミン、イミド、および/またはイミン基が、タンパク質またはリグニン残基構造の内部、末端、および/または突出の位置に導入される。第一工程は、タンパク質またはリグニンを、アミン、アミド、イミン、またはイミド官能基をタンパク質またはリグニン構造に導入することができる第一の化合物と反応させることを包含する。硬化は、得られた修飾タンパク質またはリグニンを、修飾タンパク質またはリグニンを硬化することができる第二の化合物と反応させることを含む。修飾タンパク質またはリグニンを接着剤系の第一の部分として提供することができ、第二の化合物(すなわち、硬化剤)を接着剤系の第二の部分として提供することができる。
【0018】
タンパク質修飾工程またはリグニン修飾工程は、タンパク質またはリグニンと窒素供与化合物とを、少なくとも1つのアミン、アミド、イミン、またはイミド基をタンパク質またはリグニン構造と共有結合するのに十分な条件下で反応させることを包含する。実例によると、窒素供与化合物を、タンパク質またはリグニンのカルボン酸、アミド、および/またはヒドロキシル基と反応させる。反応条件は、特定のタンパク質またはリグニン、および窒素供与化合物に応じて変わることができるが、一般に反応温度は、約4〜約200℃の範囲であることができる。pHは約3〜約11の範囲であることができる。触媒は、アルカリ金属水酸化物、水酸化アンモニウム、アミン、およびピリジンのような塩基性物質、ならびにトランスグルタミナーゼおよびリパーゼのような酵素を包含することができる。タンパク質またはリグニンと窒素含有化合物の反応体モル比は、1:10〜1:5000であることができる。
【0019】
例示的な窒素供与化合物には、アルキルアミン(例えば、1,3-ジアミノプロパン、1,6-ヘキサンジアミン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン)、不飽和炭化水素アミン(例えば、アリルアミン)、ヒドロキシルアミン(例えば、エタノールアミン、ヒドロキシルアミン)、アミジン(例えば、メラミン)、イミン(例えば、ポリエチレンイミン)、アミノ酸(例えば、4-アミノ酪酸、6-アミノカプロン酸)、ポリアミン、ポリイミン、ポリアミド、およびこれらの混合物が挙げられる。窒素供与化合物は、水溶性又は水分散性であってもよい。
【0020】
先に述べたように、接着剤組成物は、典型的には、タンパク質またはリグニン(修飾または未修飾のいずれか)が一つの部分を含み、硬化剤が第二の部分を含む、二成分系として用いられる。硬化剤は、第一の変形では上記の二官能性接着促進剤であり、第二の変形では第二の化合物であることができる。第二の変形で例示的な硬化剤には、エポキシド(例えば、エピクロロヒドリン)、アルカノール(例えば、1、3-ジクロロプロパン-2-オール)、アルデヒド(例えば、グルオキサール、酸化デンプンおよびジアルデヒドデンプンのような高分子ジアルデヒド、ならびにグルタルアルデヒド)、ならびにこれらの混合物が挙げれらる。硬化剤は水溶性または水分散性であってもよい。2つの部分は使用直前に一緒に混合される。組成物は約9または10時間までの風乾時間(open time)を有してもよい。本明細書で使用される場合、「風乾時間」は、2つの部分を混合する時間から混合された組成物がそれ以上反応しない時点まで硬化する時間を示す。
【0021】
硬化剤と混合するタンパク質またはリグニンの相対量は、例えば、使用可能な反応部位の数および硬化剤の分子量に応じた範囲であることができる。例えば、タンパク質またはリグニンと硬化剤の混合比は、乾燥重量に基づいた約1:1〜約1000:1、より詳細には約1:1〜約100:1の範囲であることができる。一つの特定の態様において、大豆タンパク質分離物と二官能性接着促進剤の混合比は、乾燥重量に基づいた約1:1〜約1:0.05である。別の特定の態様において、リグニンと二官能性接着促進剤の混合比は、乾燥重量に基づいた約1:1〜約5:1である。タンパク質および硬化剤は、標準温度および圧力(すなわち、約25℃および約1気圧)で一緒に混合することができる。得られる最終接着剤混合物の固形分は、約10〜約60重量%、より詳細には約20〜約60重量%であることができる。接着剤系のそれぞれの(または唯一の)部分が、最終使用者により適切な混合比および固形分に希釈される濃縮物の形態で、最終使用者に提供される。
【0022】
接着剤組成物は、また、殺菌剤、殺虫剤、シリカ、小麦粉、樹皮粉、および堅果殻粉などのような、リグノセルロース接着剤で見られる添加剤および充填剤を包含してもよい。
【0023】
接着剤組成物は熱硬化性である。換言すると、二成分接着剤混合を加熱することによって、接着剤組成物の個々の分子間に共有結合を、接着剤混合物とリグノセルロース粒子の間に共有および水素結合を形成する。そのような硬化は、典型的には複合材形成のホットプレス工程の間に起こる。したがって、接着剤組成物の硬化温度を、複合材形成に使用される加熱温度と一致するように適合させる。そのような硬化温度は、例えば、約100〜約200℃、より詳細には約120〜約170℃の範囲であることができる。
【0024】
本明細書で記載される接着剤により製造できるリグノセルロース複合材は、パーティクルボード、配向性ストランドボード(OSB)、ウエハーボード、ファイバーボード(中密度および高密度ファイバーボードを含む)、パラレルストランドランバー(PSL)、ラミネーテッドストランドランバー(laminated strand lumber)(LSL)、および同様の製品を包含する。一般に、これらの複合材は、最初に粉砕リグノセルロース物質を、粉砕リグノセルロース物質を接着して一体圧縮塊にする結合剤の役割を果たす接着剤と混ぜ合わせることによって、作製される。適切なリグノセルロース物質の例には、木材、わら(米、小麦および大麦を含む)、アマ、麻、およびバガスが挙げられる。粉砕リグノセルロース物質は、チップ、フレーク、ファイバー、ストランド、ウエハー、トリミング屑、削り屑、のこ屑、わら、茎、および薄切れ(shive)のような任意の加工形態となることができる。得られた混合物は、マットのような所望の形状に形成され、次に通常圧力下で熱を用いて最終製品に加工される。加工は、一般に、リグノセルロース物質からの飛沫同伴水分を放出することによって発生する様々な量の蒸気の存在下、約120〜225℃の温度で実施される。したがって、接着剤との混ぜ合わせられる前、リグノセルロース物質の含水量は約2〜約20重量%であることができる。
【0025】
リグノセルロース粒子と混合する接着剤の量は、例えば、複合材の所望の種類、リグノセルロース物質の種類および量、ならびに特定の接着剤組成物に応じて変わることができる。一般に、接着剤とリグノセルロース物質を合わせた総重量に基づいて約1〜約12、より詳細には約3〜約10重量%の接着剤を、リグノセルロース物質と混合することができる。リグノセルロース粒子をブレンダーまたは同様のミキサーで混転または撹拌している間、混合接着剤組成物を噴霧または同様の技術により粉砕リグノセルロース粒子に添加することができる。例えば、粉砕リグノセルロース粒子の流れを混合接着剤組成物の流れと混ぜ合せ、次に機械式撹拌に供することができる。
【0026】
接着剤組成物は、また、合板または単板積層材(LVL)の製造に使用されてもよい。接着剤組成物を、ロール塗布法、ナイフ塗布法、流し塗り、または噴霧により単板の表面に適用することができる。次に複数枚の単板を積み重ねて必要な厚さのシートを形成する。次にマットまたはシートを加熱圧搾機(例えば、熱盤)に置いて、圧縮して圧密を実施し、物質を硬化して、ボードにする。ファイバーボードは、湿式フェルト化/湿式プレス法、乾式フェルト化/乾式プレス法、または湿式フェルト化/乾式プレス法によって、作製することができる。
【0027】
本開示の接着剤は、リグノセルロース粒子または断片間に強力な結合を提供する。接着剤は、また、高い機械的強度をもつ構造複合材を提供する。加えて接着剤組成物は、実質的に(分解してホルムアルデヒドを形成する可能性があるあらゆる化合物を含めた)ホルムアルデヒドを含まない。例えば、接着剤組成物は、従来の方法で検出可能なホルムアルデヒド(およびホルムアルデヒド発生化合物)をいずれも含有しないか、あるいはホルムアルデヒド(およびホルムアルデヒド発生化合物)の量は、環境上および仕事場での規制の観点から無視できるものである。
【0028】
下記で記載されている具体例は、説明の目的のためであり、添付されている特許請求項の範囲を限定するものとして考慮されるべきではない。
【0029】
実施例1-アルカリ修飾大豆タンパク質分離物の調製
SPI粉末(30g)を蒸留水400mlと室温で混合し、次に120分間撹拌した。次に混合物のpH値を、水酸化ナトリウム(1M)を使用して10に調整した。続いて混合物を振とう機において50℃、180rpmで120分間混合した。次に混合物を膜濃縮(膜は10KDa分子量制限を有した)により元の容量の2/3に濃縮し、凍結乾燥した。
【0030】
実施例2-木材用タンパク質接着剤混合物の調製
実施例1のアルカリ修飾SPI(5g)をアミノポリアミド-エピクロロヒドリン樹脂(Hercules Inc.から入手可能なKymene(登録商標)557H)30mlに加え、次に室温で撹拌した。得られた水溶液を、下記に記載されるカエデ単板用の接着剤として使用した。
【0031】
実施例3-木材複合材の調製および試験
実施例2で記載されたように調製された接着剤混合物、Kymene(登録商標)557H樹脂単独、およびGeorgia-Pacificから市販されているフェノール-ホルムアルデヒド(PF)接着剤ミックスでは、2片のカエデ単板を一緒に結合するそれらの能力を評価した。結合面積は1cm2であった。試験用の接着剤調製物を、カエデ単板切片(1cm×10cm)の一面および末端部に適用した。カエデ単板切片の2片を一緒に重ねて、250F°で5分間ホットプレスした。適用された圧力は200psiであった。重ね剪断強度はInstronの機器で測定した。
【0032】
接着剤組成物(水に曝される場合もある複合材で用いる)の耐水性も試験した。上記で記載されたようにして得られた木材複合材試験片を室温で48時間水に浸漬して、次に換気フード中、室温で48時間乾燥した。浸漬と乾燥のサイクルを3回繰り返し、試験片のあらゆる剥離(すなわち、外力を適用することのない剥離)を各サイクルの後で記録した。いずれの試験片にも剥離は起こらなかった。
【0033】
重ね剪断強度の結果を図1に示す。全ての場合において、SPI/Kymene(登録商標)557H接着剤は、PF接着剤およびKymene(登録商標)557H接着剤の単独と比較して、より大きい重ね剪断強度を提供した。最も驚くべきことに、いずれのSPI/Kymene(登録商標)557H結合複合材にも剥離を見ることがなく、接着強度は、試験片が水浸漬/乾燥試験に供された後では低下しなかった(図1で示される耐水性の結果は、1サイクルの水浸漬/乾燥の後のものである)。SPI/Kymene(登録商標)557H接着剤で結合している全ての試験片は、100%が接着層破壊ではなく木材破壊を示したが、PF接着剤またはKymene(登録商標)557H接着剤の単独で結合された試験片は、100%の木材破壊を示さなかった。図1は、また、重ね剪断強度に対する、Kymene(登録商標)557HとSPIの間の反応時間の影響を示す(図1のグラフのx軸を参照すること)。反応時間は、Kymene(登録商標)557HとSPIを最初に混合した時間から混合物が単板に適用された時間までである。重ね剪断強度は、試験した全ての時間でPF接着剤よりも高かった。アルカリ修飾されていないKymene(登録商標)557HとSPIの混合物(反応時間150分)は、約7.3MPaの重ね剪断強度を生じた。図1で示されるデータは、各試験の時点における13個の個別の試験片の平均であり、エラー・バーは標準偏差を示す。
【0034】
加えて、SPI/Kymene(登録商標)557H接着剤の接着層は、色が非常に薄い。対照的に、市販のPF接着剤は、特定の木材複合材製品の外観にとって問題である、暗色の接着層をもたらした。
【0035】
実施例4-リグニン溶液の調製
クラフトリグニン粉末(20g)を水100mlに溶解し、リグニン溶液のpH値を、1N NaOH溶液で10.0〜10.5に調整した。リグニン溶液の固形分を17.0%と測定した。リグニン保存液を、下記で記載される接着剤を調製するために使用した。
【0036】
実施例5-接着剤を調製する混合時間の影響
実施例4に従って調製したリグニン保存液(10g、すなわち、絶乾固形分(oven-dry solids)1.7g)を、Kymene(登録商標)557H(2.72g、すなわち、絶乾固形分0.34g)と、10〜180分の様々な時間の範囲で混合した。得られた接着剤は、16重量%の固形分を有した。各混合時間での接着剤を、切片の木目が縦方向と平行である2枚のカエデ単板切片(7.6×17.8cm)の末端部にはけ塗りした。各単板のはけ塗り領域は1×17.8cmであった。2枚の接着剤被覆単板切片を一緒に重ね、277psiおよび120℃で5分間ホットプレスした。得られた2枚重ねの木材複合材パネルを、これらの剪断強度を評価する前に室温で一晩保存した。
【0037】
乾燥剪断強度は、2枚重ねの木材複合材パネルそれぞれを6個の試験片に切断することによって決定し、各切片は1×2.54cmの結合領域を有した。剪断強度は、Instronの機器により1mm/分のクロスヘッド速度で測定した。カエデ単板切片の2片間の最大破断剪断強度を、乾燥剪断強度として記録した。
【0038】
結果を図2に示す。データは、6回の反復の平均であり、エラー・バーは一つの標準偏差を示す。
【0039】
実施例6-剪断強度に対するホットプレス条件の影響
実施例4に従って調製したリグニン保存液(10g、絶乾固形分1.7g)を、Kymene(登録商標)557H(2.72g、すなわち、絶乾固形分0.34g)と、25分間混合した。得られた接着剤を実施例5で記載された2片の単板切片に適用した。剪断強度に対するホットプレス時間の影響を決定するために、2枚の接着剤被覆単板切片を一緒に重ね、277psiおよび120℃で、1〜9分間の様々な時間の範囲でホットプレスした。剪断強度に対するホットプレス温度の影響を決定するために、2枚の接着剤被覆単板切片を一緒に重ね、277psiで5分間、それぞれ100℃、120℃、140℃、および160℃でホットプレスした。得られた2枚重ねの木材複合材パネルを、剪断強度を評価する前に室温で一晩保存した。
【0040】
乾燥剪断強度の結果を図3および4に示す。データは、6回の反復の平均であり、エラー・バーは一つの標準偏差を示す。ホットプレス時間が1分間から5分間に増加した場合、木材複合材の剪断強度も増加した(図3)。ホットプレス時間の5分間から9分間への更なる延長は、剪断強度に有意な増加を生じなかった。剪断強度は、ホットプレス温度が100℃から140℃に増加した場合に有意に増加した(図4)。しかし、温度が140℃から160℃に増加した場合では、剪断強度の更なる増加は見られなかった。
【0041】
実施例7-リグニンと硬化剤の重量比の影響
実施例4に従って調製したリグニン保存液(10g、すなわち、絶乾固形分1.7g)を別個にKymene(登録商標)557Hと25分間混合し、リグニンとKymene(登録商標)557Hの重量比は1:1〜9:1の範囲であった。得られた接着剤の総固形分を16%に保った。各接着剤を実施例5で記載された単板切片の2片にはけ塗りした。2枚の接着剤被覆単板切片を一緒に重ね、277psiおよび140℃で5分間ホットプレスした。各接着剤を用いて、4枚の2枚重ねの木材複合材パネルを準備した。全ての2枚重ねの木材複合材パネルを、これらの乾燥剪断強度および耐水性を評価する前に室温で一晩保存した。
【0042】
接着剤で結合している2枚重ねの木材複合材試験片を、水浸漬乾燥(WSAD)試験および沸騰水試験(BWT)に供した。WSAD試験では、試験片を室温で24時間水に浸漬し、換気フード中、室温で24時間乾燥し、次に剪断強度を評価した。BWTは、U.S. Voluntary Product Standard PS 1-95 for Construction and Industrial Plywood(APA-The Engineered Wood Association, Tacoma, WAを介してU.S. Department of Commerceにより出版)に従って、実施した。試験片を水中で4時間沸騰し、63±3℃で24時間乾燥し、水中で再び4時間沸騰し、次に水道水で冷却した。試験片がまだ濡れている間に、剪断強度を評価し、BWT/湿潤強度を定義した。また、試験片を換気フード中、室温で24時間乾燥した後、剪断強度を測定し、この強度をBWT/乾燥強度と定義した。
【0043】
リグニンと硬化剤の3:1重量比が、最高の乾燥剪断強度、および木材複合材がWSADサイクルを受けた後で最高の剪断強度をもたらした(図5)。3:1重量比でのBWT/乾燥剪断強度は、1:1重量比に匹敵した。3:1比でのBWT/湿潤剪断強度は、1:1重量比よりも僅かに低かった。リグニンと硬化剤の重量比が3:1から5:1に増加した場合、対応する剪断強度は全て低下した(図5)。接着剤で結合している木材複合材は、リグニンと硬化剤の重量比が7:1またはそれ以上である場合には、BWTの間に剥離した。
【0044】
実施例8-総固形分の影響
実施例4に従って調製されたリグニン保存液を最初に総固形分21.8%に濃縮した。濃縮リグニン保存液(5g、すなわち、絶乾固形分1.09g)を、脱イオン水4.23g、2.48g、1.18g、および0.17gでそれぞれ総固形分12%、14%、16%、および18%に希釈した。各希釈リグニン保存液をKymene(登録商標)557H(2.91g、すなわち、絶乾固形分0.36g)と25分間混合した。各接着剤を実施例5で記載された2片の単板切片の末端部にはけ塗りした。2枚の接着剤被覆単板切片を一緒に重ね、277psiおよび140℃で5分間ホットプレスした。各接着剤を用いて、4枚の2枚重ねの木材複合材パネルを準備した。全ての2枚重ねの木材複合材パネルを、これらの剪断強度および耐水性を評価する前に室温で一晩保存した。 結果を図6に示す。
【0045】
総固形分12%の接着剤で結合されている木材複合材の乾燥剪断強度および耐水性は、総固形分14%のものに匹敵した。総固形分が14%から16%に増加した場合、全ての剪断強度(乾燥剪断強度、WSAD剪断強度、BWT/乾燥剪断強度、およびBWT/湿潤剪断強度)が増加した。しかし、総固形分の16%から18%への更なる増加では、全ての剪断強度が低下した。
【0046】
実施例9-保存時間の影響
図7で示されているように、リグニン/Kymene(登録商標)557H接着剤の室温での2日間までの保存は、乾燥剪断強度にほとんど影響を与えなかった。しかし、接着剤の5日間の保存は、2日間と比較して、乾燥剪断強度を低下させた。
【0047】
開示された方法、組成物、および複合材の原理を、幾つかの態様を参照して例示し、説明してきたが、これらの方法、組成物、および複合材を、そのような原理から逸脱することなく配列においておよび詳細に改変できることが明白であるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0048】
特定の態様が以下の図面を参照してより詳細に記載される。
【図1】本記載の接着剤組成物と先行技術の接着剤組成物の例の重ね剪断強度を示すグラフである。
【図2】本記載の接着剤組成物の例の剪断強度を示すグラフである。
【図3】本記載の接着剤組成物の例の剪断強度を示すグラフである。
【図4】本記載の接着剤組成物の例の剪断強度を示すグラフである。
【図5】本記載の接着剤組成物の例の剪断強度を示すグラフである。
【図6】本記載の接着剤組成物の例の剪断強度を示すグラフである。
【図7】本記載の接着剤組成物の例の剪断強度を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
大豆粉と、
大豆粉の少なくとも1つの官能基と反応することができる、少なくとも1つのアミン、アミド、イミン、イミド、または窒素含有複素環官能基を包含する、少なくとも1つの実質的にホルムアルデヒドを含まない硬化剤
との反応生成物を含む、接着剤組成物。
【請求項2】
小麦粉を更に含む、請求項1記載の接着剤組成物。
【請求項3】
硬化剤が、エポキシドと、ポリアミン、ポリアミドアミン、またはポリアミド樹脂との付加物を含む、請求項1または2記載の接着剤組成物。
【請求項4】
硬化剤が、ポリアルキレンポリアミンのエピクロロヒドリン縮合物を含む、請求項1または2記載の接着剤組成物。
【請求項5】
(a)(i)大豆タンパク質またはリグニンと、(ii)大豆タンパク質またはリグニンの少なくとも1つの官能基と反応することができる、少なくとも1つのアミン、アミド、イミン、イミド、または窒素含有複素環官能基を包含する第一の化合物との反応生成物を包含する第一の部分;および
(b)硬化剤を包含する第二の部分
を含む二成分接着剤系(two-part adhesive system)。
【請求項6】
第1の化合物が、少なくとも1つのアルキルアミン、不飽和炭化水素アミン、ヒドロキシルアミン、アミジン、イミン、またはアミド酸から選択される、請求項5記載の接着剤系。
【請求項7】
硬化剤が、少なくとも1つのエポキシド、アルカノール、またはアルデヒドから選択される、請求項5または6記載の接着剤系。
【請求項8】
リグノセルロース複合材を作製する方法であって、以下の段階を含む方法:
(i)大豆粉と、(ii)大豆粉の少なくとも1つの官能基と反応することができる、少なくとも1つのアミン、アミド、イミン、イミド、または窒素含有複素環官能基を包含する、少なくとも1つの実質的にホルムアルデヒドを含まない硬化剤との反応生成物を含む接着剤組成物を、少なくとも1つのリグノセルロース基材に適用する段階;および
接着剤が適用されたリグノセルロース基材を少なくとも1つの別のリグノセルロース基材と結合する段階。
【請求項9】
接着剤組成物が小麦粉を更に含む、請求項8記載の方法。
【請求項10】
硬化剤が、エポキシドと、ポリアミン、ポリアミドアミン、またはポリアミド樹脂との付加物を含む、請求項8または9記載の方法。
【請求項11】
硬化剤が、ポリアルキレンポリアミンのエピクロロヒドリン縮合物を含む、請求項8または9記載の方法。
【請求項12】
結合が、熱および圧力を、接着剤が適用されたリグノセルロース基材と別のリグノセルロース基材の集合体(assembly)に適用することを含む、請求項8〜11のいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
リグノセルロース基材が、粉砕木材粒子を含み、
重量%が接着剤組成物と粉砕木材粒子とを合わせた重量に基づく、約1〜約12重量%の接着剤組成物を、粉砕木材粒子の混合物と混ぜ合わせる段階、
接着剤/木材粒子の混ぜ合わせ物を所定の形状に形成する段階;および
熱および圧力を、形成された混ぜ合わせ物に適用する段階を含む、請求項8〜11のいずれか1項記載の方法。
【請求項14】
請求項8〜13のいずれか1項記載の方法により作製されるリグノセルロース複合材。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公表番号】特表2007−533817(P2007−533817A)
【公表日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−509434(P2007−509434)
【出願日】平成16年4月20日(2004.4.20)
【国際出願番号】PCT/US2004/012307
【国際公開番号】WO2005/113700
【国際公開日】平成17年12月1日(2005.12.1)
【出願人】(506253388)ステイト オブ オレゴン アクティング バイ アンド スルー ザ ステイト ボード オブ ハイヤー エデュケーション オン ビハーフ オブ オレゴン ステイト ユニバーシティー (9)
【Fターム(参考)】