説明

ホルムアルデヒドを含有しない段ボール用耐水接着剤

【課題】耐水性能及び粘度安定性に優れ、初期接着力の改良された環境にやさしいホルムアルデヒドを含有しない段ボール用耐水接着剤を提供する。
【解決手段】ノーキャリア方式で調製される接着剤において、エポキシ系架橋剤及び含水イノケイ酸塩鉱物を含有し、ホルムアルデヒドを含有しない段ボール用耐水接着剤;並びに前記耐水接着剤を用いて製造した耐水段ボールシート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、段ボール製造に用いられる段ボール用耐水接着剤、更に詳しくは、環境にやさしく、耐水性能及び粘度安定性に優れ、生産性を向上させるホルムアルデヒドを含有しない段ボール用耐水接着剤に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、段ボール箱を使用した物流の拡大が進み、青果物、鮮魚物、海産物、冷凍食品等の搬送にも段ボール箱が多用されている。これら用途に使われる段ボール箱は、内容物の箱詰め作業から搬送、積み置き貯蔵等の各場面において、内容物自体からの水分滲出や作業環境からの湿潤により、常に水気に曝される状況にあるため、段ボールを構成する原紙及び接着剤には、耐水性能が要求される。
【0003】
段ボールの製造に使われる接着剤には、安価で安全性の高い天然物の澱粉が使用される。澱粉は耐水性に乏しく、澱粉接着剤で貼合した段ボールを水に浸すと、ライナーと中芯の接着部より容易に自然剥離を起こしてしまう。したがって、耐水性が求められる耐水段ボールの製造には、澱粉接着剤に耐水性能を付与した接着剤が使われる。
【0004】
段ボール用澱粉接着剤に耐水性能を付与する方法としては、従来から澱粉接着剤に尿素・ホルムアルデヒド樹脂、フェノール・ホルムアルデヒド樹脂、レゾルシノール・ホルムアルデヒド樹脂、ケトン・ホルムアルデヒド樹脂などの熱硬化性樹脂であるホルムアルデヒド系樹脂を添加して耐水性を付与してきた。
【0005】
しかし、近年シックハウス症候群に見るようにホルムアルデヒドが健康、環境に与える影響が大きな社会問題となっており、社会的に脱ホルムアルデヒド化が加速的に進んでいるのが現実である。段ボール用接着剤においてもこの傾向は例外ではなく、段ボール製造現場のホルムアルデヒドによる環境汚染や接着層から発生するホルムアルデヒドによる汚染などが危惧され、早急な対策が待たれている。
【0006】
こうした問題を解決するために、ホルムアルデヒドを含有しない接着剤の報告が幾つかなされている。例えば、特許文献1、特許文献2などがある。これらについては、段ボール用澱粉接着剤にホルムアルデヒドを含有しないスチレン−ブタジエン共重合体樹脂(SBR)ラテックス、及び架橋剤を添加してなるものとして報告されている。しかし、これら接着剤は未だ十分に実用化されていないのが現状である。その理由として、(i)脱ホルムアルデヒド化した場合、十分な耐水性能が得られない、(ii)耐水性能を発現させる目的で、反応性の高い架橋剤を使用するため、粘度安定性に欠け使用に耐えられない、(iii)SBRラテックスの使用により従来の耐水接着剤と比べ高価なものになる、(iv)ノーキャリア方式にあっては、他の製糊方式と比べ初期接着力が劣るため貼合速度が低く生産性が悪いなどのことが指摘されている。
【0007】
環境意識の高まりから、前述の問題を解決して汎用性の高いホルムアルデヒドを含有しない接着剤の開発が求められている。
【0008】
【特許文献1】特開2000−108231号公報
【特許文献2】特開2002−322446号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、耐水性能及び粘度安定性に優れ、初期接着力の改良された環境にやさしいホルムアルデヒドを含有しない段ボール用耐水接着剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、前記課題を解決するために種々検討を加えた結果、糊化した澱粉を含有しない、澱粉成分が未糊化澱粉及び部分膨潤澱粉からなるノーキャリア方式で調製された接着剤に特定の架橋剤及び含水イノケイ酸塩鉱物を加えることにより、前記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、キャリア成分と呼ばれる糊化した澱粉と架橋剤が反応して粘度不安定を引起すこと、更に含水イノケイ酸塩鉱物が接着剤の保水力を改善し初期接着力を発現させることを見出すことにより完成されたものである。
【0011】
すなわち、本発明の要旨は以下のとおりである。
(1)ノーキャリア方式で調製される接着剤において、エポキシ系架橋剤及び含水イノケイ酸塩鉱物を含有し、ホルムアルデヒドを含有しない段ボール用耐水接着剤。
(2)ノーキャリア方式で調製される接着剤が未糊化澱粉及び部分膨潤澱粉を含む前記(1)に記載の耐水接着剤。
(3)エポキシ系架橋剤の添加割合が澱粉固形分量に対し、0.5〜30質量%である前記(1)又は(2)に記載の耐水接着剤。
(4)含水イノケイ酸塩鉱物の添加割合が澱粉固形分量に対し、0.1〜10質量%である前記(1)〜(3)のいずれかに記載の耐水接着剤。
(5)前記(1)〜(4)のいずれかに記載の耐水接着剤を用いて製造した耐水段ボールシート。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、耐水性能及び粘度安定性に優れ、初期接着力の改良された環境にやさしいホルムアルデヒドを含有しない段ボール用耐水接着剤を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明のホルムアルデヒドを含有しない耐水接着剤について詳細に説明する。
本明細書において、「ホルムアルデヒドを含有しない」とは、本発明の耐水接着剤の原料である澱粉、エポキシ系架橋剤、含水イノケイ酸塩鉱物等にホルムアルデヒドが含有されないか、接着剤の調製時又は調製後にホルムアルデヒドが副次的に発生しないことをいう。また、外部よりホルムアルデヒドが混入した場合でも、含水イノケイ酸塩鉱物にホルムアルデヒドの吸着・捕捉効果がある。
【0014】
「未糊化澱粉」とは、澱粉が物理的・化学的な影響を受けた状況又は受けない状況において、顕微鏡で覗いた時にその澱粉粒形と偏光十字が鮮明に確認できる澱粉で、加熱を受けたときに水分を吸収して、膨潤・糊化工程を経て段ボール用接着剤のメイン澱粉の機能を発現する澱粉をいう。
【0015】
「部分膨潤澱粉」とは、澱粉が物理的・化学的な影響を受けて、結晶構造の一部が壊れるなどして、水に分散・溶解すると吸水して澱粉粒形が膨らみ、偏光十字が不鮮明に薄れ、加熱されると膨潤・糊化工程を経てメイン澱粉の機能を果たす能力を持つが、「未糊化澱粉」より膨潤する力が弱い澱粉をいう。
【0016】
「糊化した澱粉」とは、前記「未糊化澱粉」、「部分膨潤澱粉」が加熱されて水分を吸収し、膨潤・糊化工程を経て、偏光十字が消失し、澱粉粒が完全に崩壊し消失するか、崩壊粒形の残骸が存在し、澱粉を構成する成分であるアミロース、アミロペクチンが溶出した状態の糊液を構成する澱粉をいう。
【0017】
「ノーキャリア方式」とは、生澱粉又はその化工澱粉、場合によっては、これら澱粉の一部としてα澱粉を含んだ澱粉を原料とし、これを水に分散させ懸濁液にして、この懸濁液に水酸化ナトリウム水溶液を滴下し、生澱粉又はその化工澱粉等を希薄な水酸化ナトリウム水溶液のアルカリ環境に曝し、更に水酸化ナトリウム水溶液滴下添加時の懸濁液面の不均一な濃度接触により「未糊化澱粉」と「部分膨潤澱粉」状態に膨潤させ、「未糊化澱粉」、「部分膨潤澱粉」の膨潤工程において、発現する粘度が適性粘度になった時点で、過剰の水酸化ナトリウムを中和する目的で硼酸又は硼砂を添加して、段ボール用接着剤を調製する方式をいう。
【0018】
ノーキャリア方式で調製した接着剤は、遠心分離に掛けた場合、特徴的な分離をするため、分離状態を調べることにより、他の方式で調製した接着剤と判別することができる。
【0019】
例えば、ノーキャリア方式で調製した接着剤を50ml容のメモリ遠沈管に50ml取り、これを1500〜3000rpmの回転数で15分間処理すると、3層に分離するが、ノーキャリア方式で調製した接着剤は、中間層の占める容積割合が20〜50%である。一方、アルカリ成分で糊化させたキャリア成分を含むワンタンクキャリア方式、ツータンクキャリア方式、及びα化した澱粉をキャリア成分として予め混合した澱粉を用い調製するプレミックス方式では、キャリア成分が溶液化しており、遠心分離を掛けた場合に中間層の容積割合がノーキャリア方式と比べ小さく、上層部の容積割合が大きくなる。
【0020】
本発明の耐水接着剤はノーキャリア方式で調製され、糊化した澱粉を含有しない。
本発明に用いられる澱粉は、コーンスターチ、ハイアミロースコーンスターチ、タピオカ澱粉、小麦澱粉、馬鈴薯澱粉、甘藷澱粉等及びこれら澱粉を酸化、酸処理、エーテル、エステル、グラフト化等の化工処理したものを単独又は2種以上組み合わせたものが使用できる。
【0021】
本発明の接着剤に用いるエポキシ系架橋剤とは、水溶性エポキシ化合物をいい、例えばエチレングリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、トリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ジプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、グリセロールジグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、ジグリシジルジメチルヒダントイン、ソルビトールポリジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、ポリアミドエピクロロヒドリン樹脂等のエポキシ化合物が使用できる。これらエポキシ系架橋剤の添加割合は、耐水性能及び経済性の点で、澱粉固形分量に対し、通常0.5〜30質量%、好ましくは1.5〜20質量%である。
【0022】
これらエポキシ系架橋剤の働きは、澱粉のOH基と反応して、澱粉分子間を架橋することで澱粉分子を高分子化させ耐水性を付与するものである。しかし、澱粉が粒状態(β澱粉)であるか、糊化した状態(α澱粉)であるかにより、エポキシ系架橋剤との反応性が全く異なる。エポキシ系架橋剤は、糊化した状態の澱粉と反応し、澱粉分子を高分子化し、増粘やゲル化を起す。一方、糊化していない結晶構造を持った澱粉粒(β澱粉)とは、増粘やゲル化を引き起さない。これまでは、キャリア成分(α澱粉)を含む澱粉接着剤に上述エポキシ系架橋剤を添加して耐水接着剤を調製すると、ゲル化等の粘度不安定を生じるため、澱粉接着剤への単独使用が避けられてきた。これら架橋剤を使用するにしても、SBRラテックスとの併用使用に限られていた。
【0023】
本発明は、α澱粉を含まないノーキャリア方式で調製される段ボール用澱粉接着剤にエポキシ系架橋剤を配合することで、粘度安定性を向上させるものである。本発明の接着剤は、β澱粉で構成されるため、エポキシ系架橋剤を添加しても反応しづらく、増粘、ゲル化等の挙動を起さない。しかし、一方、この接着剤が塗布されて、接着剤に熱がかかり、β澱粉がα澱粉に変化する際に、β澱粉の結晶構造が壊れ、反応性OH基が多数生成してエポキシ系架橋剤と反応し、優れた耐水性を発現するものである。
【0024】
また、ノーキャリア方式で調製される接着剤はキャリア成分を含まないため接着剤の保水性が極端に悪い。従って、貼合時に原紙への吸水が勝り未糊化澱粉(メイン澱粉)が十分に糊化するに足る水分が不足するため初期接着力の低下を招き、貼合速度を上げることができない。本発明の接着剤では、セピオライトに代表される含水イノケイ酸塩鉱物を配合することで接着剤の保水性が改善され、初期接着力が大幅に改善できる。これは、セピオライトに代表される含水イノケイ酸塩鉱物の分子構造に由来するものであり、その構造は水分の出し入れを容易に行える三次元的空洞を取っていることが特徴である。これまでの接着剤では、段ボール原紙に接着剤が塗布されると、保水力に欠ける接着剤では原紙側に水分が吸収されてしまい接着剤のメイン澱粉が糊化するに必要な水分が消失してしまうため、糊化不良を起こし接着が十分行われず生産性を上げることができなかった。セピオライトに代表される含水イノケイ酸塩鉱物は、このような場合、原紙への水分吸収を阻止するとともに、メイン澱粉が糊化する時に、三次元的空洞に溜めておいた水分を放出するために澱粉が糊化して、初期接着力の発現が十分に行われる。
【0025】
含水イノケイ酸塩鉱物を主成分とする粘土鉱物には、含水イノケイ酸マグネシウム、含水イノケイ酸アルミニウム・マグネシウムを主成分とする粘土鉱物があり、これらは通称「セピオライト」、「アタパルジャイト」「パリゴルスカイト」とよばれ、これらの粘土鉱物が使用できる。含水イノケイ酸塩鉱物の添加割合は、澱粉固形分量に対し、保水性改善効果、並びに経済性及び粘性発現を伴うため、製糊上問題の点で、通常0.1〜10質量%、好ましくは0.3〜7質量%である。
【0026】
更に、含水イノケイ酸塩鉱物を主成分とする粘土鉱物の製造法には、乾式粉砕法と湿式粉砕法の2通りあり、本発明には、いずれの粉砕方法で製造した含水イノケイ酸塩鉱物を主成分とする粘土鉱物も使用できるが、粘土鉱物の微細繊維構造を解繊/分散させる能力が高く、含水イノケイ酸塩鉱物の機能をより引き出すことができる点で、湿式粉砕法が好ましい。
【0027】
本発明の段ボール用耐水接着剤においては、前記の成分以外に、必要に応じ金属酸化物、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム等の各種増粘剤、あるいはSBRラテックス、合成樹脂エマルジョン等の、ホルムアルデヒドを含有しない耐水化剤を配合してもよいが、コスト面を考慮すると、価格が高いSBRラテックスは使用しない方が好ましい。
【0028】
本発明の耐水段ボールシートは、本発明の接着剤を用いて製造されるものであり、波形に成形された中芯と、澱粉系接着剤によって前記中芯の片面又は両面に貼合されたライナーとを有し、前記中芯及びライナーの貼合に、前述した本発明の接着剤が用いられていることを特徴とする。
【0029】
本発明の耐水段ボールシートは、段ボールの製造で通常使用されるコルゲーターを用いて製造することができる。すなわち、本発明の耐水段ボールシートは、糊ロール及び糊ロールに澱粉系接着剤を付着させる手段を少なくとも有するコルゲーターを用い、波形に成形された中芯の頂縁と糊ロールとを当接させて頂縁に澱粉系接着剤を塗布する工程と、中芯の、澱粉系接着剤が塗布された両面にライナーを貼り合わせる工程と、を含む段ボールの製造方法において、前述した本発明の接着剤を用いることにより製造することができる。
【0030】
本発明の耐水段ボールシートは、中芯及びライナーの貼合に本発明の接着剤を用いるものであれば特に制限はなく、片面段ボール、両面段ボール、複両面段ボール、複複両面段ボールのいずれのシートも包含する。
【0031】
本発明の段ボール用耐水接着剤にはホルムアルデヒドを全く含有しない樹脂を使用するため当該接着剤及び当該接着剤で貼合した段ボール接着剤層からはホルムアルデヒドが発生することはなく、青果物や鮮魚の包装資材として安全である。
【実施例】
【0032】
以下に、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明の範囲は、これらの実施例に限定されるものではない。
【0033】
[実施例1]
40℃に加温した水を8L容のバケツに2650g取り、コーンスターチ(王子コーンスターチ(株)製)1125g、セピオライト(PANGEL−AD、楠本化成(株)製、湿式粉砕法による製品)5.6g(全澱粉固形分量に対し0.5質量%)を加え、特殊機化工業(株)製の撹拌機ロボミックス(4500rpm)で分散させ調製した澱粉スラリーに15%濃度の水酸化ナトリウム水溶液191gを加え、ノークロス粘度計で粘度管理を行い、スラリー粘度が5秒になったところで硼酸14.6gを加え、撹拌1分後、これにエポキシ系架橋剤WS−4020(星光PMC(株)製ポリアミドエピクロロヒドリン樹脂)を67.5g(全澱粉固形分量に対し6質量%)添加し15分撹拌を続けて、ホルムアルデヒドを含まずキャリア成分も含まない耐水接着剤を調製した。得られた接着剤は、20℃の水で10秒の値を示すフォードカッブ(FC)粘度計で粘度を測定後、耐水接着強度を測定した。
【0034】
耐水接着強度は以下のようにして測定した。50mm×85mmの大きさの片面段ボール(原紙構成:王子板紙SK280g/SP200g)に、絶乾10g/m−片面の前記ホルムアルデヒドを含有しない耐水接着剤をロールコーターで塗布した。185℃のプレヒーター上にライナー(原紙:王子板紙SK280g)を置き、ホルムアルデヒドを含有しない耐水接着剤を塗布した前記片面段ボールをこのライナーの上に重ね、2kgf/42.5cmの荷重をかけて5秒間加熱圧着した。加熱圧着後、温度23℃、相対湿度50%の状態に24時間放置し、次いで20℃の水に1時間浸した後、接着試験測定器(日本TMC(株)製)でその強度を測定した。更に、耐水接着剤は、40℃に保温、撹拌しながら24時間後のFC粘度を測定して、粘度安定性を調べた。測定結果を表1に示す。
【0035】
[実施例2]
実施例1のエポキシ系架橋剤WS−4020の添加量を22g(全澱粉固形分量に対し2質量%)にした以外は、実施例1と同様の手順で耐水接着剤を調製した。得られた接着剤のFC粘度を測定後、耐水接着強度を測定した。更に、この耐水接着剤は、40℃に保温、撹拌しながら24時間後のFC粘度を測定して、粘度安定性を調べた。測定結果を表1に示す。
【0036】
[実施例3]
実施例1のエポキシ系架橋剤WS−4020の添加量を146g(全澱粉固形分量に対し13質量%)にした以外は、実施例1と同様の手順で耐水接着剤を調製した。得られた接着剤のFC粘度を測定後、耐水接着強度を測定した。更に、この耐水接着剤は、40℃に保温、撹拌しながら24時間後のFC粘度を測定して、粘度安定性を調べた。測定結果を表1に示す。
【0037】
[実施例4]
実施例1のエポキシ系架橋剤WS−4020の添加量を225g(全澱粉固形分量に対し20質量%)にした以外は、実施例1と同様の手順で耐水接着剤を調製した。得られた接着剤のFC粘度を測定後、耐水接着強度を測定した。更に、この耐水接着剤は、40℃に保温、撹拌しながら24時間後のFC粘度を測定して、粘度安定性を調べた。測定結果を表1に示す。
【0038】
[比較例1]
40℃に加温した水を8L容のバケツに1440g取り、コーンスターチ(王子コーンスターチ(株)製)96gを加え、特殊機化工業(株)製の撹拌機ロボミックス(4500rpm)で分散させ調製した澱粉スラリーに25%濃度の水酸化ナトリウム水溶液91.7gを加え、15分撹拌してキャリア成分を調製した。直ちに、このキャリア成分中に40℃の水を1490g加えキャリア成分を分散させた後、コーンスターチ(王子コーンスターチ(株)製)1104gを加え、更にセピオライト(PANGEL−AD、楠本化成(株)製、湿式粉砕法による製品)6g(全澱粉固形分量に対し0.5質量%)、硼砂を24g加えてキャリア成分を含むワンタンク方式の段ボール接着剤を調製した。この接着剤に実施例1同様、エポキシ系架橋剤WS−4020を72g(全澱粉固形分量に対し6質量%)添加し15分撹拌を続けて、ホルムアルデヒドを含有しないキャリア成分を含んだ耐水接着剤を調製した。実施例1同様、得られた接着剤のFC粘度を測定後、耐水接着強度を測定した。更に、この耐水接着剤は、40℃に保温、撹拌しながら24時間後のFC粘度を測定して、粘度安定性を調べた。測定結果を表1に示す。
【0039】
[比較例2]
市販の耐水接着剤用プレミックス澱粉OPM−W100(王子コーンスターチ(株)製)を用いて実施例1と同様の測定を行った。このプレミックス澱粉は、キャリア成分としてα澱粉を含んでいる。すなわち、40℃に加温した水を8L容のバケツに3330gを取り、これにプレミックス澱粉OPM−W100を1400g加え、特殊機化工業(株)製の撹拌機ロボミックス(4500rpm)で分散させ澱粉スラリーを調製した。この澱粉スラリーに15%濃度の水酸化ナトリウム水溶液197gを定量ポンプで15分かけて添加しプレミックス方式の接着剤を調製した。この接着剤に実施例1同様、エポキシ系架橋剤WS−4020を84g(全澱粉固形分量に対し6質量%)添加し15分撹拌を続けて、ホルムアルデヒドを含有しないキャリア成分を含んだ耐水接着剤を調製した。実施例1同様、得られた接着剤のFC粘度を測定後、耐水接着強度を測定した。更に、この耐水接着剤は、40℃に保温、撹拌しながら24時間後のFC粘度を測定して、粘度安定性を調べた。測定結果を表1に示す。
【0040】
[比較例3]
実施例1のセピオライトを添加しなかった以外は、実施例1と同様の手順で耐水接着剤を調製した。得られた接着剤のFC粘度を測定後、耐水接着強度を測定した。更に、この耐水接着剤は、40℃に保温、撹拌しながら24時間後のFC粘度を測定して、粘度安定性を調べた。測定結果を表1に示す。
【0041】
[実施例5]
40℃に加温した水を8L容のバケツに2592g取り、更にSBRラテックス(A−7534、旭化成ケミカルズ(株)製)112gを加えた後、コーンスターチ(王子コーンスターチ(株)製)1125g、セピオライト(PANGEL−AD、楠本化成(株)製、湿式粉砕法による製品)5.6g(全澱粉固形分量に対し0.5質量%)を加え、特殊機化工業(株)製の撹拌機ロボミックス(4500rpm)で分散させ調製した澱粉スラリーに15%濃度の水酸化ナトリウム水溶液191gを加え、ノークロス粘度計で粘度管理を行い、スラリー粘度が5秒になったところで硼酸14.6gを加え、撹拌1分後、これにエポキシ系架橋剤WS−4020(星光PMC(株)製ポリアミドエピクロロヒドリン樹脂)を67.5g(全澱粉固形分量に対し6質量%)添加し15分撹拌を続けて、ホルムアルデヒドを含まずキャリア成分も含まない耐水接着剤を調製した。実施例1同様、得られた接着剤のFC粘度を測定後、耐水接着強度を測定した。更に、この耐水接着剤は、40℃に保温、撹拌しながら24時間後のFC粘度を測定して、粘度安定性を調べた。測定結果を表1に示す。
【0042】
[比較例4]
実施例5のセピオライトを添加しなかった以外は、実施例5と同様の手順で耐水接着剤を調製した。得られた接着剤のFC粘度を測定後、耐水接着強度を測定した。更に、この耐水接着剤は、40℃に保温、撹拌しながら24時間後のFC粘度を測定して、粘度安定性を調べた。測定結果を表1に示す。
【0043】
[実施例6]
実施例1のセピオライトをPANGEL−FF(楠本化成(株)製、湿式粉砕法による製品)に変えた以外は、実施例1と同様の手順で耐水接着剤を調製した。得られた接着剤のFC粘度を測定後、耐水接着強度を測定した。更に、この耐水接着剤は、40℃に保温、撹拌しながら24時間後のFC粘度を測定して、粘度安定性を調べた。測定結果を表1に示す。
【0044】
[実施例7]
実施例6のセピオライトを全澱粉固形分量に対し3質量%に変えた以外は、実施例6と同様の手順で耐水接着剤を調製した。得られた接着剤のFC粘度を測定後、耐水接着強度を測定した。更に、この耐水接着剤は、40℃に保温、撹拌しながら24時間後のFC粘度を測定して、粘度安定性を調べた。測定結果を表1に示す。
【0045】
[比較例5]
実施例1のエポキシ系架橋剤WS−4020の代わりに、ホルムアルデヒドを含有する熱硬化性樹脂、耐水化剤A(王子コーンスターチ(株)製)42g(全澱粉固形分量に対し3質量%)、耐水化剤B(王子コーンスターチ(株)製)42g(全澱粉固形分量に対し3質量%)を加えた以外は、実施例1と同様の手順で耐水接着剤を調製した。得られた接着剤は、実施例1同様、FC粘度を測定後耐水接着強度を測定した。更に、この耐水接着剤は、40℃に保温、撹拌しながら24時間後のFC粘度を測定して、粘度安定性を調べた。測定結果を表2に示す。
【0046】
【表1】

【0047】
【表2】

【0048】
表1より、本発明のホルムアルデヒドを含有しない耐水接着剤は、キャリア成分を含有する製糊方式の耐水接着剤と比べ接着剤の保存安定性に優れ、初期接着力に優れ生産性の向上に寄与できることがわかる。表2より耐水性能についても、熱硬化性樹脂を使用する従来の耐水接着剤と遜色のない性能が得られている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノーキャリア方式で調製される接着剤において、エポキシ系架橋剤及び含水イノケイ酸塩鉱物を含有し、ホルムアルデヒドを含有しない段ボール用耐水接着剤。
【請求項2】
ノーキャリア方式で調製される接着剤が未糊化澱粉及び部分膨潤澱粉を含む請求項1記載の耐水接着剤。
【請求項3】
エポキシ系架橋剤の添加割合が澱粉固形分量に対し、0.5〜30質量%である請求項1又は2記載の耐水接着剤。
【請求項4】
含水イノケイ酸塩鉱物の添加割合が澱粉固形分量に対し、0.1〜10質量%である請求項1〜3のいずれか1項に記載の耐水接着剤。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の耐水接着剤を用いて製造した耐水段ボールシート。

【公開番号】特開2009−138128(P2009−138128A)
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−316947(P2007−316947)
【出願日】平成19年12月7日(2007.12.7)
【出願人】(000122243)王子コーンスターチ株式会社 (17)
【Fターム(参考)】