説明

ホルムアルデヒドを捕捉できる薬剤を含むプラスター系の材料

本発明はホルムアルデヒドを捕捉できる薬剤を含むプラスター系の材料、特に住宅用建築物の屋内建具用プラスターボードに関する。ホルムアルデヒドを捕捉できる薬剤は、エチレン尿素とその誘導体、活性メチレンを含む化合物、亜硫酸塩、タンニンおよびこれらの混合物から選択される。本発明の別の主題は、住宅用建築物内の雰囲気中に存在するホルムアルデヒドの量を減少させるための、前記材料の使用である。

【発明の詳細な説明】
【発明の概要】
【0001】
本発明は、ホルムアルデヒドを捕捉できる薬剤を含むプラスター系の材料(plaster-based material)、特に住宅用建築物の屋内建具用プラスターボードに関する。
【0002】
建築物一般、特に住宅用建築物またはオフィスおよび公共建築物(美術館、映画館、コンサートホールなど)の建築や設備の分野では非常に多様な複合材料が用いられている。これらの材料の幾つか、例えば防音材および/または断熱材、ウッドパネル、家具ユニット、装飾品などは、ホルムアルデヒド系樹脂を含む接着剤、ペンキおよびワニスを用いている。
【0003】
これらの樹脂は安価であり優れた性能を有するので非常に有利である。それらの主要な短所は、それらが遊離したホルムアルデヒドを含んでおり、それらが長時間にわたってホルムアルデヒドを放出できるという事実にある。
【0004】
近年、個々人の健康に危険を示すかも知れない揮発性有機製品の望ましくない放出からの保護に関する一層厳しい規制の適用により、樹脂中のホルムアルデヒドの割合はかなり減少している。しかし、上述した樹脂を他のホルムアルデヒドを含まない樹脂に置き換える試みは、非常に高いコストと得られる製品の悪い品質のために成功していない。
【0005】
それにも拘らず、住宅用建築物の周囲空気中のホルムアルデヒドの含有量は可能な限り低いことが依然として望まれている。
【0006】
この目的を達成するための手段が知られている。
【0007】
光触媒酸化チタンの粒子をペンキまたはプラスター材料に含有させること(US−A−2005/0226761)、または紙または織物、プラスチックまたは木製の材料に含有させること(EP−A−1 437 397)が提案されている。
【0008】
JP−A−11128329は、プラスターボードのような室内の建築材料にアンモニウム塩を使用することを記載している。
【0009】
JP−A−2002145655は、プラスターボードに尿素および/またはメラミンを含有させることを示している。
【0010】
JP−A−10337803は、プラスターボードへのヒドラジン誘導体の組み込みを記載している。また、この提案は、少なくとも一つのヒドラジドを、(a)無機吸収剤と組み合わせてプラスターボードまたは木材の装飾層に含ませる(JP−A−2000103002)、(b)シリカゲルと組み合わせてプラスターボードに含ませる(JP−A−2004115340)、または(c)有機カーバイドと組み合わせて室内建築材料に含ませる(US−A−20040101695)。
【0011】
本発明の目的は、建築物、特に、住宅用建築物または公共建築物の内部のホルムアルデヒドの含有量を減少させて周囲空気の質を改善することである。
【0012】
この目的を達成するために、本発明は、エチレン尿素とその誘導体、活性メチレンを含む化合物、亜硫酸塩、タンニンおよびこれらの混合物から選択される、ホルムアルデヒドを捕捉できる薬剤を含む、プラスター系の材料、特にプラスターボードを提供する。
【0013】
本発明の別の主題は、建築物内の空気中のホルムアルデヒドの量を減少させるための、前記プラスター系の材料の使用である。
【0014】
本発明によるエチレン尿素誘導体は、好ましくはN−ヒドロキシエチレン尿素、N−アミノエチルエチレン尿素、N−[(3−アリルオキシ−2−ヒドロキシプロピル)アミノエチル]エチレン尿素、N−アクリロイルオキシエチルエチレン尿素、N−メタクリロイルオキシエチルエチレン尿素、N−アクリロイルアミノエチルエチレン尿素、N−メタクリロイルアミノエチルエチレン尿素、N−メタクリロイルオキシアセトキシエチレン尿素、N−メタクリロイルオキシアセトアミノエチルエチレン尿素、およびN−ジ(3−アリルオキシ−2−ヒドロキシプロピル)アミノエチルエチレン尿素から選択される。エチレン尿素が好ましい。
【0015】
本発明による活性メチレンを含む化合物は、好ましくは、次式(I)に相当する。
【化1】

【0016】
ここでRおよびRは、同一または異なり、水素原子、C−C20アルキル基好ましくはC−Cアルキル基、アミノ基または次式の基を表し、
【化2】

【0017】
ここで、Rは次式の基を表し、
【化3】

【0018】
ここで、R=Hまたは−CHであり、
pは1から6まで変化する整数であり、
は水素原子、C−C10アルキル基、フェニル基またはハロゲン原子を表し、
aは0または1に等しく、
bは0または1に等しく、
nは1または2に等しい。
【0019】
特に好ましい式(I)の化合物はアセトアセトアミド(R=−CH;R=−NH;R=H;a=0;b=0;n=1)である。
【0020】
本発明による硫化物は、例えば、重亜硫酸アンモニウム、重亜硫酸カリウム、重亜硫酸ナトリウム、およびアルカリ金属(特にナトリウム)またはアルカリ土類金属のメタ重亜硫酸塩である。重亜硫酸ナトリウムが好ましい。
【0021】
本発明によるタンニンは、非縮合タンニンまたは縮合タンニン、例えばアカシア(カテキュ)、ミモザ、ケブラチョ、マツ、ペカンナッツ、ヘムロックウッド、ウルシのタンニンでありうる。アカシアタンニンが好ましい。
【0022】
ホルムアルデヒドと反応できる薬剤はホルムアルデヒドに共有結合する化合物である。このために、ホルムアルデヒドは、プラスター系の材料に永久的に捕捉されて周囲空気に再放出されることはない。
【0023】
用いられるホルムアルデヒドを捕捉できる薬剤の量は、大きな範囲まで、例えば、100重量部の石膏あたり0.001から5重量部まで、好ましくは0.01から1重量部まで、有利には0.02から0.2重量部まで変化しうる。
【0024】
プラスター系の材料は、最終製品の物理化学特性を改善し、良好な使用状態を与えることを可能にする添加物をさらに含んでいてもよい。したがって、前記材料は100重量部の石膏あたりで表して、以下の重量割合で以下の添加物を含むことができる:
0.1〜15重量部の粘着剤(その役割はプラスターによる紙被覆の接着性を増大させることである)、例えば澱粉、特に酸で前処理したもの、またはデキストリン、
0.001〜5重量部の硬化促進剤、例えば硫酸カルシウム水和物または硫酸カリウム、
0.0001ないし1重量部の発泡剤(その役割は、気孔を形成して、最終製品、特にプラスターボードの密度を減少させることである)。例としてラウリル硫酸ナトリウムを挙げることができる。
【0025】
プラスターパネル、特に、プラスターボードの製造は、それ自体で知られている。
【0026】
本発明をプラスターパネルとの関連でより具体的に述べているが、この種の材料に限定される訳ではなく、その形態(粉末、モルタル、マスチック)に無関係にプラスター系の材料を含む。
【0027】
プラスターボードは、粉末状の焼き石膏(硫酸カルシウム半水塩)を水と混合してペーストを形成し、これを紙シートの間に連続的に付着させる連続工程によって形成される。形成された製品を成形または整形して、所望の厚さを得た後、これをある距離にわたってコンベア上で連続的に搬送し、ペーストを所定の長さのボードに切断できるのに十分な硬さのレベルに達するようにする。その後、ボードはオーブンで乾燥して過剰な水分を取り除く。
【0028】
通常、ペーストの粉末成分は、硫酸カルシウム半水塩(CaSO・0.5HO;焼き石膏)および上に述べた任意の添加物を含む。焼き石膏は、水の存在下で水和反応を受けて硫酸カルシウム二水和物(CaSO・2HO;石膏)に変換される。
【0029】
ペーストを形成するために使用される焼き石膏の量は製造するパネルの性質によって変わり、一般に100重量部の水あたり30から100重量部まで、好ましくは60から80重量部までである。
【0030】
パネルの厚さは大きな範囲まで、例えば6から25mmまで変わりうる。
【0031】
ホルムアルデヒドを捕捉できる薬剤は様々な方法でプラスターボードに導入することができる。
【0032】
第1の実施態様によれば、ホルムアルデヒドを捕捉できる薬剤を焼き石膏のペーストに添加してから、後者を紙の間に付着させる。
【0033】
ホルムアルデヒドを捕捉できる薬剤の添加は、ペーストの製造中に、例えば焼き石膏および前記薬剤を同時にまたは連続的に水に導入することによって、またはペーストを得てから行うことができる。上述した成分の同時添加は、実施するのが容易なので好ましい。
【0034】
この実施態様は、プラスター本体中でのホルムアルデヒドを捕捉できる薬剤の一様な分布、したがってボードの厚さ全体にわたる均一な内容物を与えることを可能にする。
【0035】
第2の実施態様によれば、ホルムアルデヒドを捕捉できる薬剤を、被覆として用いられる1または複数の紙シートに添加する。この添加は、紙の製造中に、例えばセルロース繊維の懸濁液に対して、またはシートを得た後に行うことができる。
【0036】
本発明によるプラスター系の材料は、粉末(プラスター、モルタル)、ペースト(マスチック、目地仕上材料)、またはプラスターパネルの形態で与えられうる。とりわけプラスターパネルに関しては、後者はベアボードまたは少なくとも一方の表面が紙シートで被覆されたボード、穿孔を有する吸音パネル、プラスターと鉱物もしくは木材のウールとのパネル、または繊維もしくは織物で補強されたボードでありうる。
【0037】
本発明による、プラスター系の材料は、壁、天井および床の上に、特に被覆プラスターもしくは目地仕上プラスターまたはセメントパネルとして使用することができ、または、パネルに関しては、化粧面、仕切りおよび吊天井を形成するのに使用することができる。
【0038】
建築物の内部でプラスター系の材料を用いることは、雰囲気中に存在するホルムアルデヒドの量を減少させることを可能にし、このため雰囲気が除染される。
【0039】
以下の例は、本発明を説明することを可能にするが、本発明を限定するものではない。
【0040】
例1ないし4
(a)プラスター系の材料の製造
600gの硫酸カルシウム半水塩、ホルムアルデヒドを捕捉できる薬剤、3gの澱粉、1.8gの粉砕石膏(促進剤)、630gの水をミキサに入れる。
【0041】
ホルムアルデヒドを捕捉できる薬剤は以下の通りである。
【0042】
エチレン尿素(14mg):例1
アセトアセトアミド(15mg):例2
重亜硫酸ナトリウム(16mg):例3
アカシアタンニン(115mg):例4
混合物を30分攪拌してペーストを得る。
【0043】
このペーストを内側の底が紙シートで覆われた真鍮製のモールド(150mm×100mm)に流し込み、モールドの寸法に切断した第2の紙シートをペーストにつける。2枚の紙シートを、90%の相対湿度に維持した雰囲気のチャンバー内で24時間予備調整した。
【0044】
固化後にプラスターボードをモールドから取り出す。これを以下の条件下においてオーブン中で乾燥させる:80%の水分を取り除くまで180℃で、60℃で12時間、および40℃で24時間。
【0045】
ホルムアルデヒドを捕捉できる薬剤を含まないプラスターボードを同じ条件の下で準備する(参照例)。
【0046】
(b)ホルムアルデヒドを捕捉する能力
ホルムアルデヒドを捕捉する能力を気密試験チャンバーで測定した。
【0047】
プラスターボードのサンプル(2.5g)を試験チャンバーに入れた後、このチャンバーを気密に閉じた。次に、2.4μlの37重量%ホルムアルデヒド水溶液を、チャンバー内に入れた容器に堆積させた。
【0048】
3時間後に、ホルムアルデヒド測定装置(参照番号RAE 10−121−05としてGastecにより販売されている反応管;測定範囲:0.1ないし5ppmv)に接続したポンプを用いて試験チャンバー内に存在している空気を抽出する。
【0049】
次の表に示した結果は、同じプラスターボードの一連の3つのサンプルに基づく平均値に対応している。
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレン尿素とその誘導体、活性メチレンを含む化合物、亜硫酸塩、タンニンおよびこれらの混合物から選択される、ホルムアルデヒドを捕捉できる薬剤を含むことを特徴とするプラスター系の材料。
【請求項2】
前記エチレン尿素誘導体は、N−ヒドロキシエチレン尿素、N−アミノエチルエチレン尿素、N−[(3−アリルオキシ−2−ヒドロキシプロピル)アミノエチル]エチレン尿素、N−アクリロイルオキシエチルエチレン尿素、N−メタクリロイルオキシエチルエチレン尿素、N−アクリロイルアミノエチルエチレン尿素、N−メタクリロイルアミノエチルエチレン尿素、N−メタクリロイルオキシアセトキシエチレン尿素、N−メタクリロイルオキシアセトアミノエチルエチレン尿素、およびN−ジ(3−アリルオキシ−2−ヒドロキシプロピル)アミノエチルエチレン尿素から選択されることを特徴とする請求項1に記載の材料。
【請求項3】
前記活性メチレンを含む化合物は次式(I)に相当し、
【化1】

ここでRおよびRは、同一または異なり、水素原子、C−C20アルキル基好ましくはC−Cアルキル基、アミノ基または次式の基を表し、
【化2】

ここで、Rは次式の基を表し、
【化3】

ここで、R=Hまたは−CHであり、
pは1から6まで変化する整数であり、
は水素原子、C−C10アルキル基、フェニル基またはハロゲン原子を表し、
aは0または1に等しく、
bは0または1に等しく、
nは1または2に等しいことを特徴とする請求項1に記載の材料。
【請求項4】
アセトアセトアミドが当該のものであることを特徴とする請求項3に記載の材料。
【請求項5】
前記亜硫酸塩は重亜硫酸アンモニウム、重亜硫酸カリウム、重亜硫酸ナトリウム、およびアルカリ金属またはアルカリ土類金属のメタ重亜硫酸塩から選択されることを特徴とする請求項1に記載の材料。
【請求項6】
重亜硫酸ナトリウムが当該のものであることを特徴とする請求項5に記載の材料。
【請求項7】
前記タンニンは非縮合タンニンまたは縮合タンニンから選択されることを特徴とする請求項1に記載の材料。
【請求項8】
前記タンニンはアカシア、ミモザ、ケブラチョ、マツ、ペカンナッツ、ヘムロックウッド、およびウルシのタンニンであることを特徴とする請求項7に記載の材料。
【請求項9】
前記タンニンはアカシアタンニンであることを特徴とする請求項8に記載の材料。
【請求項10】
ホルムアルデヒドと反応できる薬剤の量は、100重量部の石膏あたり0.001から5重量部まで、好ましくは0.01から1重量部まで、有利には0.02から0.2重量部まで変化することを特徴とする請求項1ないし9のいずれか1項に記載の材料。
【請求項11】
100重量部の石膏あたりで表して、以下の重量割合で以下の添加物:
0.1〜15重量部の粘着剤、例えば澱粉、特に酸で前処理したもの、またはデキストリン、
0.0001〜5重量部の硬化促進剤、例えば硫酸カルシウム水和物または硫酸カリウム、
0.0001ないし1重量部の発泡剤、例えば、ラウリル硫酸ナトリウム
をさらに含むことを特徴とする請求項1ないし10のいずれか1項に記載の材料。
【請求項12】
粉末、ペースト、プラスターパネルのいずれかの形態で与えられることを特徴とする請求項1ないし11のいずれか1項に記載の材料。
【請求項13】
プラスターボードが当該のものであることを特徴とする請求項12に記載の材料。
【請求項14】
建築物内の空気中のホルムアルデヒドの量を減少させるための、請求項1ないし13のいずれか1項に記載の材料の使用。

【公表番号】特表2013−510797(P2013−510797A)
【公表日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−539287(P2012−539287)
【出願日】平成22年11月15日(2010.11.15)
【国際出願番号】PCT/EP2010/067475
【国際公開番号】WO2011/058172
【国際公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【出願人】(512127970)ビーピービー・リミテッド (2)
【Fターム(参考)】