説明

ホルムアルデヒド含有アミノプラスト樹脂および触媒化合物を含む接着剤組成物

本発明は、ホルムアルデヒド含有アミノプラスト樹脂と触媒化合物とを含む接着剤組成物であって、触媒化合物が酸であるか、またはpKaが4未満の酸を放出可能であり、ホルムアルデヒド含有アミノプラスト樹脂のF/(NH比が1未満または1に等しい接着剤組成物に関する。触媒化合物は最大で11重量%のアンモニウム塩を含む。本発明は、本発明による接着剤組成物を用いてボード材料を製造する方法、およびこのようにして得られるボード材料にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホルムアルデヒド含有アミノプラスト樹脂および触媒化合物を含む接着剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
かかる接着剤組成物は、例えば、EP−436.485−A2に開示されている。この特許公開には、アミノプラスト接着剤の加速硬化方法、およびそれで製造された木質系材料が記載されている。この特許出願に記載された接着剤組成物は、モルF/U比が1.11のウレア−ホルムアルデヒド(UF)樹脂を含む。硫酸アンモニウムは触媒化合物として適用される。これらのアミノプラスト接着剤の加速硬化については、加速剤スカベンジャー系を適用して、促進剤およびホルムアルデヒドスカベンジャーとしてウレアホルムアルデヒド混合物を接着剤に添加する。ホルムアルデヒドスカベンジャーを添加すると、この接着剤で製造されたボード材料からのホルムアルデヒド発散の増大を防ぐ。
【0003】
環境に関する規制を考慮すると、ボード材料の製造中および製造後のホルムアルデヒド発散は非常に重要である。例えば、NEN EN312−1は、パーティクルボードについて、100gの乾燥セルロース含有材料当たりホルムアルデヒドポテンシャルが8mgを超えないように保持する等級1ボードを定義している。ホルムアルデヒドポテンシャルとは、穿孔試験としても知られているDIN NEN120に記載された抽出方法により得られるホルムアルデヒドの量のことを指す。材料のホルムアルデヒドポテンシャルは、そのホルムアルデヒド発散を表すものである。パーティクルボードについての等級1ボードの要件は、パーティクルボード材料のホルムアルデヒドポテンシャルが従わなければならない厳しい要件であり、厳しくすべき発散要件の傾向を示している。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0004】
意外にも、本発明による接着剤組成物をボード材料の製造に適用すると、ホルムアルデヒドの発散が非常に低いということを知見した。例えば、パーティクルボードについては、DIN NEN120によるホルムアルデヒドポテンシャルは、10未満であり得、多くの場合、乾燥セルロース含有材料100g当たりさらに8mg未満であり得る。同時に、ボード材料の硬化時間および最終特性は悪影響を受けない。
【0005】
本発明による接着剤組成物は、触媒化合物が酸であるか、または触媒化合物が最大で11重量%のアンモニウム塩を含むという条件でpKaが6未満の酸を放出可能であり、ホルムアルデヒド含有アミノプラスト樹脂のF/(NH比が1未満または1に等しいことを特徴としている。
【0006】
欧州特許出願公開第107260A1号明細書には、モルF/(NH比が0.50〜1.25の接着剤組成物を用いるシートの製造方法が開示されている。欧州特許出願公開第107260A1号明細書には、触媒化合物としてアンモニウム塩と強酸の混合物が開示されている。欧州特許出願公開第107260A1号明細書に開示された触媒化合物混合物は、11重量%を超えるアンモニウム塩を含む。
【0007】
本発明による触媒化合物は、pKaが6未満の酸、またはpKaが6未満の酸を放出可能な化合物とすることができる。酸のpKaは25℃で求められる。
【0008】
pKaが6未満の酸自体は公知である。かかる酸としては、ギ酸、乳酸、グリオキシル酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸(o、mおよびp)、サリチル酸、p−トルエンスルホン酸、硫酸、リン酸、酒石酸、尿酸、塩酸溶液、酢酸、安息香酸、コハク酸およびフランカルボン酸が例示される。
【0009】
酸を放出可能な化合物とは、接着剤組成物の製造および/または適用において、例えば、化合物が分解するため、酸が形成されるようなやり方で反応する化合物のことを指す。pKaが6未満の酸を放出可能な化合物としては、メチルエステルのようなアルキルエステル、メラミンまたは1種類以上の該酸のウレア塩および1種類以上の該酸でエステル化されたメチロール化ウレアまたはメラミン化合物が例示される。メチルエステルとしては、グリオキシル酸メチル、クエン酸メチル、ギ酸メチル、リン酸メチルおよび尿酸メチルウレエートが例示される。一般的に、pKaが6未満の酸のメチルエステルを適用することができる。
【0010】
メラミン塩またはウレア塩としては、ギ酸メラミン、クエン酸メラミン、乳酸ウレアおよびウレエートウレアが例示される。一般的に、pKaが6未満の酸のメラミン塩またはウレア塩を適用することができる。
【0011】
メチロール化ウレアまたはメラミン化合物のエステルは、以下の反応に従って合成することができる。
【化1】


式中、R−NHは、メラミンまたはウレアから生じ、HO−XはpKaが6未満の酸から生じ、YはHまたはCHOXであり、zは1または2である。
【0012】
化合物は、90℃の水中で1分以内に酸の少なくとも50%の酸放出を放出できるのが好ましい。
【0013】
本発明による触媒化合物は、11重量%を超えるアンモニウム塩を含んではならない。本発明において、「アンモニウム塩」という用語にはまた、様々なアンモニウム塩の混合物も含まれる。公知のアンモニウム塩としては、塩化アンモニウムおよび硫酸アンモニウムが例示される。これらの塩は、特に、接着剤組成物の硬化中に、ホルムアルデヒドと反応して、ヘキサメチレンテトラミン(HMTA)などの比較的不安定な化合物を形成し得ることを見出した。この反応によって、意図した通り、硬化中の三次元接着剤網目の形成が低減し、耐化学性の低減、耐加水分解性の低減、内部結合強さの低減から明らかな通り、最終生成物の特性が低減し、または水との接触により膨潤が膨大する。さらに、HMTAなどの化合物は分解可能で、これにより、NEN−EN120(穿孔試験)に従ったホルムアルデヒドポテンシャル試験において明らかな通り、短期および/または長期にわたるホルムアルデヒド発散につながる。従って、アンモニウム塩を用いると、ホルムアルデヒド発散が減少して、本発明の主たる目的に悪影響を与える可能性がある。接着剤組成物をモルF/(NH比1以下で用いるときはとりわけである。好ましくは、本発明による触媒化合物は、最大で10重量%または8重量%のアンモニウム塩を含む。より好ましくは、本発明による触媒化合物は、最大で6重量%または4重量%のアンモニウム塩を含む。特に、本発明による触媒化合物は、最大で2重量%または1重量%のアンモニウム塩を含む。最も好ましくは、本発明による触媒化合物は、最大で0.5重量%または0.1重量%のアンモニウム塩を含む、またはさらにはアンモニウム塩は全く含まない。
【0014】
本発明による接着剤組成物の好ましい実施形態において、触媒化合物は最大で11重量%の一級アミン(一級アミンはR−NH構造を有する化合物である)の塩または二級アミン(二級アミンはRR’−NH構造を有する化合物であり、RとR’は水素ではない)の塩を含む。他のより好ましい実施形態において、一級または二級アミンのこれらの塩は、アンモニウム塩について上述したような量よりもさらに少ない量で存在している。
【0015】
当然のことながら、触媒化合物は、酸を放出可能な上述した1種類以上の化合物と共に、上述した酸の1種類以上を含むことができる。触媒化合物はまた、2種類以上の酸または酸を放出可能な2種類以上の化合物を含んでいてもよい。
【0016】
酸を放出可能な化合物は、例えば、接着剤組成物を室温でしばらくの間保管するのが望ましいときに適用することができる。その場合は、室温より高い温度でのみ分解して、触媒効果がボード材料の製造中にのみ生じるように、化合物を選択するのが好ましい。
【0017】
好ましくは、触媒化合物は、pKaが5未満の酸、またはpKaが5未満の酸を放出可能な化合物である。これには、接着剤組成物のpHを、通常7、または6などのこれよりさらに低い所望のレベルまでの減少をより容易に達成できるという利点がある。さらなる利点は、pKaを低減すると、より短いゲル時間を達成することができることである。ゲル時間は、5グラムの触媒樹脂を試験管内の水に入れ、中身を沸騰水中で攪拌した後にゲル化するのに要する時間と定義される。
【0018】
なおより好ましくは、触媒化合物は、pKaが4未満の酸、またはpKaが4未満の酸を放出可能な化合物である。これには、pKaが4〜6の酸−または酸を放出可能な化合物−よりも低いpH値を接着剤組成物において得るのを容易に達成できるという利点がある。さらなる利点は、測定される触媒の量が、pKaが4〜6の酸−または酸を放出可能な化合物−の場合よりも少ないということである。この触媒は、通常、水溶液の形態で処方されるため、接着剤組成物に最終的に残る水がより少なく、このことは、接着剤組成物はできる限り固体含量が多いほうが有利であるため望ましい。
【0019】
好ましくは、触媒化合物が一塩基酸またはメチルエステル、pKaが4未満の1種類以上の一塩基酸のメラミン塩またはウレア塩、あるいはpKaが4未満の1種類以上の一塩基酸でエステル化されたメチロール化ウレアまたはメラミン化合物である。一塩基酸は、1個のみの水素イオン(プロトン)を放出できる酸である。
【0020】
特に好ましい触媒化合物はギ酸またはメチルエステル、ギ酸のメラミン塩またはウレア塩、またはギ酸でエステル化したメチロール化ウレアまたはメラミン化合物である。
【0021】
最も好ましい触媒化合物はギ酸である。しかしながら、さらに他の好ましい実施形態においては、触媒化合物は酢酸である。
【0022】
本発明による、酸またはpKaが6未満の酸を放出可能な化合物である触媒化合物を、かなりの程度、または僅かの程度まで接着剤組成物中で、硫酸アンモニウムなどの公知の触媒と配合することができるが、それによって、上述した通り、触媒化合物の総量で、11重量%を超えるアンモニウム塩を含んではならない。しかしながら、本発明の好ましい実施形態においては、これは実際的ではなく、他の触媒は添加しない。
【0023】
理論的な説明はまだ知られていないが、pKaの非常に低い(放出された)酸の限定された緩衝効果が、本発明による接着剤組成物の性能に不利となるものと仮定される。従って、好ましくは、触媒化合物は、pKaが−14より大きな酸、またはpKaが−14より大きい、より好ましくは前記pKaが−10より大きい、さらにより好ましくは−6より大きい、最も好ましくは−3より大きな酸を放出可能な化合物である。
【0024】
本発明において、少なくともアミノ化合物と遊離ホルムアルデヒド状化合物のアミノプラスト樹脂縮合生成物として適用される。
【0025】
これらのアミノプラスト樹脂中のアミノ化合物としては、非環式と複素環式アミノ化合物の両方が適用可能である。非環式アミノ化合物としては、ウレア、チオウレアまたはエチルウレアが例示される。複素環式アミノ化合物としては、例えば、メラミンなどのトリアジン構造、メラム、メラミンの高級縮合生成物、アンメリン、アンメリド、シアヌル酸およびウレイドメラミンを有する化合物が適用される。好ましくは、ウレアおよび/またはメラミンを用いる。さらに特に、ウレアとメラミンの混合物のメラミン/ウレアモル比は、0.01〜2、特に0.02〜1で変化する可能性がある。
【0026】
ホルムアルデヒド状化合物としては、ホルムアルデヒドと同じやり方で反応する化合物を適用することができる。ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒドおよびトリオキサンが例示される。パラホルムアルデヒドは、解重合反応がホルムアルデヒドを分離するホルムアルデヒドのポリマーまたはオリゴマー形態である。重合度nのパラホルムアルデヒドは、n個のホルムアルデヒド分子、ひいてはn個のホルムアルデヒド等量を生成し得る。
【0027】
アミノプラスト樹脂としては、メラミン/ホルムアルデヒド樹脂、ウレア/ホルムアルデヒド樹脂、メラミン/ウレア/ホルムアルデヒド樹脂、ウレア/フェノール/ホルムアルデヒド樹脂およびメラミン/ウレア/フェノール/ホルムアルデヒド樹脂が例示される。
【0028】
特に、最終ボード材料からのホルムアルデヒド発散が、F/(NH比が1未満または1に等しいアミノプラスト樹脂を含む接着剤組成物によりかなり低減するということを知見した。F/(NH比は、好ましくは0.98未満、より好ましくは0.96未満、さらにより好ましくは0.95未満、特に好ましくは0.94未満、最も好ましくは0.92未満である。F/(NH比はホルムアルデヒド当量と存在するNH基のモル比である。
【0029】
アミノプラスト樹脂のF/(NH比は、好ましくは0.7より大きい、または0.7に等しい、より好ましくは0.75より大きい、さらにより好ましくは078より大きい、特に好ましくは0.8より大きい、または0.8に等しい、最も好ましくは0.82より大きい。
【0030】
本発明はさらに、セルロース含有材料を本発明による接着剤組成物と混合および硬化することによるボード材料の製造に関する。かかる硬化は、本発明によるアミノプラスト樹脂と触媒化合物とを含む本発明による接着剤組成物を含む接着剤を用いて高温および高圧でボード材料をプレスで製造することによりプレスで達成される。接着剤は、本発明による接着剤組成物から本質的になる、さらには殆んど完全にそれからなる、または完全にそれからなるのが好ましい。合板パネルを製造する場合には、通常、事前に接着剤組成物に増粘剤を添加する。この増粘剤は、接着剤中に容易に分散し、かつ接着剤の充填効果を向上させ、接着剤の大半が用いるベニアの表面に確実に残るようにする役割を主に果たす任意の材料を含んでいてよい。
【0031】
好ましくは、本発明の方法は、合板、パーティクルボード、MDFボード(中密度ファイバーボード)、HDFボード(高密度ファイバーボード)、OSBボード(配向ストランドボード)またはボール紙パネル(ボール紙)の製造に適用される。
【0032】
触媒を樹脂に添加することによる本発明による接着剤の製造は、通常、ボード製造の直前に行う。樹脂は、数週間にわたって保管可能な安定性を室温で十分に有している。
【0033】
アミノプラスト樹脂のpHは通常8以上である。本発明による触媒化合物を添加する場合には、接着剤組成物のpHによって、添加する触媒化合物の量が決まるのが好ましい。本発明による触媒化合物は、添加後、pH7.5または7.0または7.0未満となるように添加するのが好ましい。触媒化合物の添加後、混合物のpHは6.5〜5.5であるのが好ましい。変形実施形態において、0.5〜7重量%の触媒化合物をアミノプラスト樹脂に対して添加する(乾燥触媒化合物/乾燥アミノプラスト樹脂として測定)。指針としては、pHの減少を保持すると、本発明による接着剤組成物によって、一般的に、ゲル時間の減少、さらに貯蔵安定性の減少にもつながる。
【0034】
合板パネルの製造については、触媒酸化合物の添加後、接着剤混合物のpHは7.0〜6.5であるのが好ましい。あるいは、合板製造については、0.2〜1重量%の本発明による触媒化合物をアミノプラスト樹脂に対して添加する(ここでも乾燥触媒化合物/乾燥アミノプラスト樹脂として測定)。
【0035】
触媒化合物の添加後、10秒〜4時間、好ましくは30秒〜120分、ボード材料の製造に接着剤を用いる。
【0036】
用いる触媒化合物が酸を放出可能な化合物でできている場合には、接着剤はボード材料の製造に長い期間にわたって用いることができる。接着剤は30秒後〜30時間後に用いる。
【0037】
接着剤を用いることができる期間は、多くの因子に応じて異なり、当業者であれば、容易に判断することができる。その期間は、適用した触媒化合物、温度およびpHに応じて特に異なる。
【0038】
ボード材料の製造中の加圧条件は、ボード材料の種類に応じて異なる。例えば、合板の製造においては、1〜2MPa、パーティクルボードについては1〜5MPa、好ましくは2〜4MPa、MDFについては2〜7MPa、好ましくは3〜6MPaの圧力を印加する。ボード材料を製造する温度は、合板については通常80〜140℃、パーティクルボードおよびOSBについては通常180〜230℃、MDFについては通常170〜230℃である。パーティクルボード、MDFおよびOSBについては、ボード厚さmm当たり秒数で表される加圧時間を適用する。OSBボードについては、加圧時間は、通常4〜12秒/mm、好ましくは6〜10秒/mmである。パーティクルボードについては、通常4〜12秒/mm、好ましくは5〜10秒/mmの加圧時間が適用される。MDFボードは、通常5〜17秒/mm、特に6〜14秒/mmの加圧時間で製造される。合板パネルは、通常、30〜70秒/mm、特に40〜60秒/mmの加圧時間で製造される。
【0039】
接着剤製造中、ワックスを通常、接着剤組成物に添加して、さらに耐吸湿性のある最終ボード材料を製造する。ワックスは、通常、乳化ワックスまたは固体ワックスであり、例えば、石油化学工業で製造されるものである。
【0040】
本発明はさらに、本発明による接着剤組成物を圧縮することにより得られるボード材料およびセルロース含有化合物に関する。
【0041】
本発明によるこのボード材料、特にパーティクルボード材料の、いわゆる穿孔試験(DIN NEN120)により測定されるホルムアルデヒドポテンシャルは100g当たり10mg未満であり得、好ましくはホルムアルデヒドポテンシャルは100g当たり8mg未満であり、これは、本発明による(パーティクル)ボード材料が、NEN EN312−1による等級1のホルムアルデヒドポテンシャルを有するという利点を示す。より好ましくは、ホルムアルデヒドポテンシャルは100g当たり7mg未満、特に好ましくは100g当たり6.5mg未満、またはさらには100g当たり6mg未満である。最も好ましくは、本発明によるボード材料のホルムアルデヒドポテンシャルは100g当たり5mg未満である。
【0042】
本発明によるボード材料は良好な機械的特性を有している。本発明によるボード材料の、通常、内部結合強さまたはIBと呼ばれる内部破壊強度は、通常、NEN−EN1087−1のV100試験に合格する。
【0043】
合板の製造には、公知の合板製造方法に適用される接着剤組成物中のアミノプラスト樹脂のモルF/(NH比は、パーティクルボード、MDFボード、HDFボードまたはOSBなどの他の種類のボード材料の製造の場合よりも通常は高いという点で本発明の枠組み内で特定の位置を採る。同様に、合板ボードのホルムアルデヒド発散は、異なる基準で求められることが多い。従って、本発明はまた、硬化した接着剤組成物を適用する工程を含む合板ボード材料の製造方法にも関し、接着剤組成物はホルムアルデヒド含有アミノプラスト樹脂と触媒化合物とを含み、触媒化合物は酸であるか、またはpKaが6未満の酸を放出可能であり、ホルムアルデヒド含有アミノプラスト樹脂は1.2未満または1.2に等しい、好ましくは1.1未満または1.1に等しいF/(NH比を有している。
【0044】
合板の製造について本発明により適用された接着剤組成物は、さらに、上述した好ましい実施形態を含んでいてもよい。特に、接着剤組成物中の触媒化合物は、最大で11重量%、より好ましくは、好ましい実施形態で示した通り、最大でこれより少ない量のアンモニウム塩を含むのが好ましい。
【0045】
本発明はまた、本発明による方法により得られる合板材料にも関する。本発明による合板材料は、接着剤組成物のアミノプラスト樹脂中のF/(NH比が高く、および/または触媒としてpKaが6未満の酸を含まない公知のやり方で製造された合板材料よりもホルムアルデヒド発散が低いという利点を有している。同時に、本発明による合板材料は、優れた機械的特性も示すことができ、例えば、NEN314−1による引張強さは、少なくとも7kg/cmの値を必要とする厳しい基準に従うことができる。
【0046】
これに限定されるものではない以下の実施例を参照して本発明をさらに説明する。
【実施例】
【0047】
実施例1
パーティクルボード製造用樹脂の製造
50%ホルムアルデヒド水溶液26.6重量部を50℃まで予熱しておいたリアクタに添加した。2モルの水酸化ナトリウムによりホルムアルデヒド溶液のpHを8.0〜8.5にした。その後、ウレア13.1重量部を添加し、混合物の温度を99℃まで上げた。所望の温度に達したら、2モルの酢酸またはギ酸によりpHを4.5〜5.0まで下げた。粘度が200〜300センチポイズに上がるまで、この温度およびpHを維持した。その後、2モルの水酸化ナトリウムによりpHを9.0〜9.5まで上げ、混合物の温度を90℃まで下げた。メラミン26.5重量部と50%ホルムアルデヒド溶液17.6重量部を添加した。反応混合物をこの温度およびpHで1時間保持し、次にウレア16.3重量部を添加した。混合物の温度を次に50℃まで下げ、接着剤を流し落とした。
【0048】
MUF樹脂を0.9のF/(NHで得た。
【0049】
実施例2〜4および比較実験A〜B
実施例1で記載した手順に従って製造されたMUF樹脂に、pH6に達するまで異なる触媒を添加し、ゲル時間、沸騰後のエイブス(Abes)引張強さ、沸騰後のパーティクルボードの内部結合強さおよびパーティクルボードのホルムアルデヒドポテンシャルを測定した。パーティクルボードを次のようにして製造した。100℃で約60秒のゲル時間が得られるように触媒量を樹脂に添加した。触媒樹脂を、10%の乾燥樹脂が乾燥木材に存在するような量のチップ(スプルース)とブレンダにより激しく混合した。用いた木材の含水率は2.2%であった。混合後、樹脂化チップを成形プレスに移し、そこで均一に分配し、軽く圧縮して、チップと樹脂からなる一種のケークを形成した。鋳型の側部を取り出した後、ケークを、鋳型のベースプレートに配置し、190℃の温度とし、650kg/mの密度が得られるような特定の厚さまでさらに圧縮した。11秒/mmの加圧因子を16mmの厚さのパネルに用いた。加圧後、パネルを冷やし、ホルムアルデヒドポテンシャルおよび内部破壊強度を求めるのに必要な寸法まで切った。
【0050】
測定値を以下の表に示してある。
【0051】
【表1】



【0052】
1) ホルムアルデヒドの添加量を所望のモルF/(NH比が得られるように調整した以外は実施例1と同様に樹脂を製造することにより1.1の比が得られた。
2) ゲル時間を求めるために、水中5グラムの触媒樹脂を試験管に移した。ゲルが形成されるまで、内容物を沸騰水中で攪拌した。関連する時間はゲル時間である。
3) 3%の硫酸アンモニウムを5グラムの樹脂(乾燥/乾燥)に添加し、その後ゲル時間を2)に従って測定した。
4) 引張強さを求めるために、2mgの触媒樹脂をブナベニアの2本のロッド(0.75×20×117mm)の間に入れ、140℃で60秒間硬化した(エイブス(ABES)法(自動ボンディング評価(Automated Bonding Evaluation)))後、沸騰後の引張強さを米国特許第5176028号明細書に記載されたE.ハンフリー教授(Prof.Ph.E. Humphrey)により開発された手段に従って測定した。
5) NEN−EN1087−1(V100試験)による2時間の沸騰後、EN319に従って、内部結合強さを測定した。ここでは、少なくとも0.14N/mmまでの量で製造したパーティクルボードについての湿潤条件で用いる耐荷ボード材料については、EN312−5に仕様が言及されていた。
6) ホルムアルデヒドポテンシャルをNEN−EN120(穿孔機試験)に従って求めた。
【0053】
比較実験Aは、標準F/(NHが1.1、触媒として硫酸アンモニウムの参照材料であり、ホルムアルデヒドポテンシャルは100g当たり11mgで高く望ましくない。
【0054】
比較実験Bは、パーティクルボードにおいて、1.1の通常のF/(NHと触媒としてギ酸との組み合わせの結果、かかる樹脂系にとって通常よりもさらに高いホルムアルデヒドポテンシャルとなることを示している。
【0055】
実施例2は、酸のpKa値が4〜5であると、ゲル時間が、この種の樹脂にとって通常よりもやや高い値まで増大するが、この接着剤組成物を用いて製造された最終製品の得られる機械的特性は、エイブス(ABES)引張強さにより示される通り、1未満の低F/(NH比にも係らず、非常に良好となり得ることを示している。
【0056】
実施例3は、一塩基酸ギ酸と1未満のF/(NH比との組み合わせにより、高引張強さ、良好なIBおよび非常に低いホルムアルデヒドポテンシャルを備えたボード材料が得られることを示している。実施例3の低ホルムアルデヒドポテンシャルは、比較実験Bを鑑みると特に意外なものである。
【0057】
実施例4から、実施例3に比べて、一塩基酸ギ酸により、二酸シュウ酸よりも高い引張強さとなることが分かる。
【0058】
実施例5および比較実験
合板製造用樹脂の製造
ガラスリアクタに、593重量部の37.6%のホルムアルデヒド水溶液を添加した。2モルの水酸化(ナトリウム)により、ホルムアルデヒド溶液のpHを7.5〜8.1にした後、ウレア194重量部とメラミン41重量部を計量した。
【0059】
温度を90℃まで上げた。所望の温度に達した後5分で、2モルのギ酸によりpHを4.8〜5.2まで下げた。室温で曇り点に達した後、2モルの水酸化(ナトリウム)によりpHを8.5まで上げ、反応混合物の温度を88℃まで下げた。次に、メラミン380重量部と37.6%ホルムアルデヒド溶液396重量部を添加した。反応混合物をこの温度およびpHで1時間保持し、その後78℃まで冷やした。次に、ウレア152重量部を添加し、50センチポイズの粘度まで凝縮させた。この混合物を次に30℃まで冷やした。
【0060】
MUF樹脂を1.1のF/(NHで得た。
【0061】
合板ボード(5層)の製造
100℃で160秒の所望のゲル時間が得られるまで触媒を上述した樹脂に添加した。次に、小麦粉を添加して、粘度を約2000cPとした。この接着剤混合物を5層合板の製造に適用した。その最後までに、含水率10%まで調湿したレッドメランチベニアを用いた。各ボードについて、厚さ3.7mmの3層のコア層と2層の表層の1.8mmのベニアを用いた。200g/mの量で中間シームによく分配された接着剤混合物により互いに横方向にベニアを積み重ねた。
【0062】
接着剤の適用および積み重ね後、パッケージを10バールの圧力で30分間冷圧縮した。プレス加熱後、120℃の温度で12分間圧縮/硬化を行った。次にパネルをプレスから取り出し冷却した。
【0063】
ホルムアルデヒド発散およびIBを、日本農林規格JAS(構造用合板についてJAS987 2000)に従って、ボード製造後できる限り速やかに求めた。
【0064】
【表2】



【0065】
1)所望のモルF/(NH比が得られるようにホルムアルデヒドの添加量を増加させた以外は実施例5と同様に樹脂を製造することにより1.2の比が得られた。
2)ゲル時間を求めるために、水中5グラムの触媒樹脂を試験管に移した。ゲルが形成されるまで、内容物を沸騰水中で攪拌した。関連する時間はゲル時間である。
3)エイブス(ABES)引張強さを求めるために、2mgの触媒樹脂をブナベニアの2本のロッド(0.75×20×117mm)の間に入れ、140℃で60秒間硬化した(エイブス(ABES)法(自動ボンディング評価(Automated Bonding Evaluation)))後、沸騰後の引張強さを米国特許第5176028号明細書に記載されたE.ハンフリー教授(Prof.Ph.E. Humphrey)により開発された手段に従って測定した。
4)内部結合強さ(引張強さIB)を、以下の周期的沸騰試験後に5層合板試験試料で測定した。
1.沸騰水に4時間浸漬
2.60±3℃で換気オーブンにて16〜20時間乾燥
3.沸騰水に再び4時間浸漬
4.20℃の水中で冷却
ステップ3の後4時間以内の湿潤条件で剪断引張強さとして横方向でIBを測定した。JAS(構造用合板についてJAS987 2000)に従って、耐湿性合板パネルについてのタイプIの仕様値は最低で7.0kg/cmである。
5)JAS(構造用合板についてJAS987 2000)に記載された乾燥方法に従ってホルムアルデヒド発散を測定した。ここで150×50mmの10枚の試験パネルを24時間にわたって300ml超の水が入っているデシケータに入れた。この期間の後、水相でホルムアルデヒドを測定する。
6)ゲル時間を得るために、参照の場合に、固体塩化アンモニウムか、または50%ギ酸溶液のいずれかを樹脂に添加した。後者の場合、酸性化樹脂のpHは約6.6である。
【0066】
実施例5によれば、本発明による合板のホルムアルデヒド(F)発散は、すなわち100ml当たり0.3mgで、比較実験に示される通り、公知の合板のF発散より大幅に少なく、一方、本発明による合板の機械的特性、特に水中で沸騰させた後のIBはそれでもJAS規格に適合するものであることが示されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホルムアルデヒド含有アミノプラスト樹脂と触媒化合物とを含む接着剤組成物であって、前記触媒化合物が酸であるか、または前記触媒化合物が最大で11重量%のアンモニウム塩を含むという条件でpKaが6未満の酸を放出可能であり、前記ホルムアルデヒド含有アミノプラスト樹脂のF/(NH比が1未満または1に等しいことを特徴とする接着剤組成物。
【請求項2】
前記触媒化合物が酸であるか、またはpKaが5未満の酸を放出可能であることを特徴とする請求項1に記載の接着剤組成物。
【請求項3】
前記触媒化合物が一塩基酸またはメチルエステル、pKaが4未満の1種類以上の一塩基酸のメラミン塩またはウレア塩、あるいはpKaが4未満の1種類以上の一塩基酸でエステル化されたメチロール化ウレアまたはメラミン化合物であることを特徴とする請求項1に記載の接着剤組成物。
【請求項4】
前記触媒化合物がギ酸またはメチルエステル、ギ酸のメラミン塩またはウレア塩、あるいはギ酸でエステル化したメチロール化ウレアまたはメラミン化合物であることを特徴とする請求項3に記載の接着剤組成物。
【請求項5】
前記触媒化合物がギ酸であることを特徴とする請求項4に記載の接着剤組成物。
【請求項6】
前記触媒化合物が酢酸であることを特徴とする請求項1に記載の接着剤組成物。
【請求項7】
前記接着剤組成物のpHが7未満または7に等しいことを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の接着剤組成物。
【請求項8】
前記接着剤組成物のpHが6.5〜5.5であることを特徴とする請求項7に記載の接着剤組成物。
【請求項9】
セルロース含有化合物を請求項1〜8のいずれか一項に記載の前記接着剤組成物と混合し、これを硬化することによりボード材料を製造する方法。
【請求項10】
請求項9により得られるボード材料。
【請求項11】
DIN NEN120によるホルムアルデヒドポテンシャルが100g当たり8mg未満である請求項10に記載のボード材料。
【請求項12】
DIN NEN120によるホルムアルデヒドポテンシャルが100g当たり6.5mg未満である請求項11に記載のボード材料。
【請求項13】
内部結合強さが、NEN−EN1087−1(V100)に従って測定される湿潤条件で用いる荷重付きボード材料についてEN312−5に規定された仕様に適合する請求項10〜12のいずれか一項に記載のボード材料。
【請求項14】
F/(NH比が1.2未満のホルムアルデヒド含有アミノプラスト樹脂と共に請求項1〜8のいずれか一項に記載の接着剤組成物を適用することを特徴とする硬化した接着剤組成物を適用する工程を含む合板ボード材料の製造方法。
【請求項15】
請求項14に記載の方法により得られる合板材料。
【請求項16】
JASに従った引張強さが少なくとも7kg/cmである請求項15に記載の合板材料。
【請求項17】
JASに従ったホルムアルデヒド発散が100mlの水で0.3mg以下である請求項15または16に記載の合板材料。

【公表番号】特表2007−500261(P2007−500261A)
【公表日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−521799(P2006−521799)
【出願日】平成16年7月27日(2004.7.27)
【国際出願番号】PCT/NL2004/000540
【国際公開番号】WO2005/010119
【国際公開日】平成17年2月3日(2005.2.3)
【出願人】(503220392)ディーエスエム アイピー アセッツ ビー.ブイ. (873)
【Fターム(参考)】