説明

ホルムアルデヒド捕捉剤を含む鉱物繊維マット及びその製造方法

本発明は、特に住宅用又は事務所用建物における及び運搬用車両における、ホルムアルデヒドを捕捉することが可能な薬剤を含む鉱物繊維マットに関する。このホルムアルデヒド捕捉剤は、活性メチレンを含有する化合物、ヒドラジド、タンニン、アミド、アミノ酸及び亜硫酸塩の中から選択される。本発明はまた、該鉱物繊維マットを製造するための方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホルムアルデヒドを捕捉することが可能な薬剤を含む鉱物繊維のマット及びそれを製造することを可能にする方法に関する。
【背景技術】
【0002】
住宅及び事務所の建築及び装備の分野において、また運搬用車両の分野においても、非常に多様な複合材料が使用されている。これらの材料の一部、例えば、防音材及び/又は断熱材、木製パネル、家具部品ならびに装飾部品などは、ホルムアルデヒド系樹脂を含む接着剤、塗料及びワニスを使用している。
【0003】
これらの材料におけるホルムアルデヒドの割合はすでに非常に低くなっている。しかしながら、個人の健康に対し危険性を示す可能性があるホルムアルデヒドなどの製品の望ましくない放出から保護することに関する規制は厳しくなってきており、遊離ホルムアルデヒド又は経時的に材料から放出され得るホルムアルデヒドの量を更に減らす必要がある。
【0004】
建物内部のホルムアルデヒド含有量を減らすための手段は知られている。
【0005】
塗料もしくはプラスター製材料(米国特許出願公開第2005/0226761号明細書)、紙又は織物、プラスチックもしくは木材(ヨーロッパ特許出願公開第1437397号明細書)に、光触媒の酸化チタン粒子を含める提案がなされている。
【0006】
また、プラスター又はセメントを基礎材料とする建築材料でヒドラジドを使用することも知られている(米国特許出願公開第2004/0101695号明細書及び特開2004−1l5340号公報)。
【0007】
また、ホルムアルデヒド及びアセトアルデヒドを捕捉し分解するためにファイバーボードでカルボジヒドラジドを使用することも知られている(ヨーロッパ特許出願公開第1905560号明細書)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許出願公開第2005/0226761号明細書
【特許文献2】ヨーロッパ特許出願公開第1437397号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2004/0101695号明細書
【特許文献4】特開2004−1l5340号公報
【特許文献5】ヨーロッパ特許出願公開第1905560号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、建物、特に住宅、及び運搬用車両の内部に存在するホルムアルデヒドの量を減らすことである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的を達成するために、本発明は、ホルムアルデヒドを捕捉することが可能な薬剤を含む鉱物繊維のマットを提供する。
【0011】
もう1つの発明対象は、前記鉱物繊維のマットを製造するのを可能にする方法である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】「乾式」法による鉱物フィラメントのマットの製造を可能にするプラントの概略図である。
【図2】「湿式」法による鉱物繊維のマットの製造を可能にするプラントの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
「ホルムアルデヒドと反応することが可能な化合物」という用語は、ホルムアルデヒドと共有結合によって結合する有機化合物を意味すると理解される。
【0014】
好ましくは、ホルムアルデヒドと反応することが可能な化合物は、以下のものから選択される。
【0015】
1.活性メチレンを含む化合物、好ましくは、下式(I)〜(IV)に相当する化合物。
・式(I):
【化1】

(式中、
・R1及びR2は、同一であるか又は異なり、水素原子、C1〜C20、好ましくはC1〜C6アルキル基、アミノ基又は下式の基を表し、
【化2】

(式中のR4は、次の基、
【化3】

又は次の基、
【化4】

(式中、R5=H又は−CH3
を表し、pは1〜6の整数である)、
・R3は、水素原子、C1〜C10アルキル基、フェニル基又はハロゲン原子を表し、
・aは0又は1に等しく、
・bは0又は1に等しく、
・nは1又は2に等しい)
【0016】
式(I)の好ましい化合物は、以下のものである。
【0017】
・2,4−ペンタンジオン:
1=−CH3、R2=−CH3、R3=H、a=0、b=0、n=1
【0018】
・2,4−ヘキサンジオン:
1=−CH2−CH3、R2=−CH3、R3=H、a=0、b=0、n=1
【0019】
・3,5−ヘプタンジオン:
1=−CH2−CH3、R2=−CH2−CH3、R3=H、a=0、b=0、n=1
【0020】
・2,4−オクタンジオン:
1=−CH3、R2=−(CH23−CH3、R3=H、a=0、b=0、n=1
【0021】
・アセトアセトアミド:
1=−CH3、R2=−NH2、R3=H、a=0、b=0、n=1
【0022】
・アセト酢酸:
1=−CH3、R2=H、R3=H、a=0、b=1、n=1
【0023】
・アセト酢酸メチル:
1=−CH3、R2=−CH3、R3=H、a=0、b=1、n=1
【0024】
・アセト酢酸エチル:
1=−CH3、R2=−CH2−CH3、R3=H、a=0、b=1、n=1
【0025】
・アセト酢酸n−プロピル:
1=−CH3、R2=−(CH22−CH3、R3=H、a=0、b=1、n=1
【0026】
・アセト酢酸イソプロピル:
1=−CH3、R2=−CH(CH32、R3=H、a=0、b=1、n=1
【0027】
・アセト酢酸イソブチル:
1=−CH3、R2=−CH2−CH(CH32、R3=H、a=0、b=1、n=1
【0028】
・アセト酢酸t−ブチル:
1=−CH3、R2=−C(CH33、R3=H、a=0、b=1、n=1
【0029】
・アセト酢酸n−ヘキシル:
1=−CH3、R2=−(CH25−CH3、R3=H、a=0、b=1、n=1
【0030】
・マロンアミド:
1=−NH2、R2=−NH2、R3=H、a=0、b=0、n=1
【0031】
・マロン酸:
1=H、R2=H、R3=H、a=1、b=1、n=1
【0032】
・マロン酸ジメチル:
1=−CH3、R2=−CH3、R3=H、a=1、b=1、n=1
【0033】
・マロン酸ジエチル:
1=−CH2−CH3、R2=−CH2−CH3、R3=H、a=1、b=1、n=1
【0034】
・マロン酸ジ(n−プロピル):
1=−(CH22−CH3、R2=−(CH22−CH3、R3=H、a=1、b=1、n=1
【0035】
・マロン酸ジイソプロピル:
1=−CH(CH32、R2=−CH(CH32、R3=H、a=1、b=1、n=1
【0036】
・マロン酸ジ(n−ブチル):
1=−(CH23−CH3、R2=−(CH23−CH3、R3=H、a=1、b=1、n=1
【0037】
・アセトンジカルボン酸:
1=H、R2=H、R3=H、a=1、b=1、n=2
【0038】
・アセトンジカルボン酸ジメチル:
1=−CH3、R2=−CH3、R3=H、a=1、b=1、n=2
【0039】
・二酢酸1,4−ブタンジオール:
1=−CH3、R2=−(CH24−O−CO−CH2−CO−CH3、R3=H、a=0、b=1、n=1
【0040】
・二酢酸1.6−ヘキサンジオール:
1=−CH3、R2=−(CH26−O−CO−CH2−CO−CH3、R3=H、a=0、b=1、n=1
【0041】
・アセト酢酸メタクリロイルオキシエチル:
1=−CH3、R2=−(CH22−O−CO−C(CH3)=CH2、R3=H、a=0、b=1、n=1
【0042】
・式(II):
【化5】

(式中、
・R6は、シアノ基又は次の基、
【化6】

(式中のR8は、水素原子、C1〜C20、好ましくはC1〜C6アルキル基、又はアミノ基を表し、cは0又は1に等しい)
を表し、
・R7は、水素原子、C1〜C10アルキル基、フェニル基又はハロゲン原子を表す)
【0043】
式(II)の好ましい化合物は、以下のものである。
【0044】
・2−シアノ酢酸メチル:
6=−CO−O−CH3、R7=H
【0045】
・2−シアノ酢酸エチル:
6=−CO−O−CH2−CH3、R7=H
【0046】
・2−シアノ酢酸n−プロピル:
6=−CO−O−(CH22−CH3、R7=H
【0047】
・2−シアノ酢酸イソプロピル:
6=−CO−O−CH(CH32、R7=H
【0048】
・2−シアノ酢酸n−ブチル:
6=−CO−O−(CH23CH3、R7=H
【0049】
・2−シアノ酢酸イソブチル:
6=−CO−O−CH2−CH(CH32、R7=H
【0050】
・2−シアノ酢酸tert−ブチル:
6=−CO−O−C(CH33、R7=H
【0051】
・2−シアノアセトアミド:
6=−CO−NH2、R5=H
【0052】
・プロパンジニトリル:
6=−C≡N、R5=H
【0053】
・式(III):
【化7】

(式中、
・R9は−C≡N基又は−CO−CH3基を表し
・qは1〜4の整数である)
【0054】
式(III)の好ましい化合物は、以下のものである。
【0055】
・トリメチロールプロパントリアセトアセテート:
9=−CO−CH3、q=1
・トリメチロールプロパントリシアノアセテート:
9=−C≡N、q=1
【0056】
・式(IV):
【化8】

(式中、
・Aは、−(CH23−基又は−C(CH32−基を表し、
・rは、0又は1に等しい)
【0057】
式(IV)の好ましい化合物は、以下のものである。
【0058】
・1,3−シクロヘキサンジオン:
A=−(CH23−、r=0
【0059】
・メルドルム酸:
A=−C(CH32−、r=1
【0060】
2.ヒドラジド、例えば以下のa)〜c)。
【0061】
a)式R1CONHNH2のモノヒドラジド(この式のR1は、アルキル基、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基もしくはtert−ブチル基、又はアリール基、例えばフェニル基、ビフェニル基もしくはナフチル基を表し、該アルキル基又はアリール基の水素原子はヒドロキシル基又はハロゲン原子に置き換えられていてもよく、また該アリール基はアルキル基、例えばメチル基、エチル基又はn−プロピル基、によって置換されていてもよいと理解される)。
【0062】
b)式H2NHN−X−NHNH2のジヒドラジド(この式のXは−CO−基又は−CO−Y−CO−基を表し、Yはアルキレン基、例えばメチレン基、エチレン基もしくはトリメチレン基、又はアリーレン基、例えばフェニレン基、ビフェニレン基もしくはナフチチレン基であり、該アルキレン基又はアリーレン基の水素原子はヒドロキシル基又はハロゲン原子に置き換えられていてもよく、また該アリール基はアルキル基、例えばメチル基、エチル基又はn−プロピル基、によって置換されていてもよいと理解される)。例として、シュウ酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、マレイン酸ジヒドラジド、フマル酸ジヒドラジド、ジグリコール酸ジヒドラジド、酒石酸ジヒドラジド、リンゴ酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、テレフタル酸ジヒドラジド及びカルボヒドラジドを挙げることができる。
【0063】
c)ポリヒドラジド、例えば、トリヒドラジド(特に、クエン酸トリヒドラジド、ピロメリット酸トリヒドラジド、1,2,4−ベンゼントリヒドラジド、ニトリロ三酢酸トリヒドラジド、及びシクロヘキサントリカルボン酸トリヒドラジド)、テトラヒドラジド(特に、エチレンジアミン四酢酸テトラヒドラジド又は1,4,5,8−ナフトエ酸テトラヒドラジド)、及び重合性基を含むヒドラジドモノマーから生成されるポリヒドラジド(例えば、ポリ(アクリル酸ヒドラジド)又はポリ(メタクリル酸ヒドラジド))、など。
【0064】
3.タンニン、特に縮合型タンニン、例えばミモザ、ケブラコ、マツ、ピーカンナッツ、ツガ及びウルシのタンニンなど。
【0065】
4.アミド、例えば、尿素、1,3−ジメチル尿素、エチレン尿素及びその誘導体、例としてN−ヒドロキシエチレン尿素、N−アミノエチルエチレン尿素、N−(3−アリルオキシ−2−ヒドロキシプロピル)アミノエチルエチレン尿素、N−アクリロキシエチルエチレン尿素、N−メタクリロキシエチルエチレン尿素、N−アクリルアミノエチルエチレン尿素、N−メタクリルアミノエチルエチレン尿素、N−メタクリロイルオキシアセトキシエチレン尿素、N−メタクリロイルオキシアセトアミノエチルエチレン尿素、及びN−ジ(3−アリルオキシ−2−ヒドロキシプロピル)アミノエチルエチレン尿素など、二尿素、ビウレット、トリウレット、アクリルアミド、メタクリルアミド、ポリアクリルアミド及びポリメタクリルアミド。
【0066】
5.アミノ酸、特にグリシン。
【0067】
6.亜硫酸塩、例えば重亜硫酸アンモニウム、カリウム又はナトリウム、及びメタ重亜硫酸アルカリ金属、特にナトリウム、又はメタ重亜硫酸アルカリ土類金属。
【0068】
ホルムアルデヒドを捕捉することが可能な薬剤の使用すべき量は、大幅に、例えば、1m2のマット当たり0.1gから500gまで、好ましくは0.5g/m2から100g/m2まで、有利にはlg/m2から50g/m2まで変化し得る。
【0069】
該当する場合には、ホルムアルデヒドを捕捉することが可能な薬剤を、揮発性有機化合物、特に芳香族化合物、例えばキシレン、ベンゼン及びトルエンなど、を吸着する少なくとも1種の多孔性物質と組み合わせて使用することができる。
【0070】
この多孔性物質は、10nm〜100μm、好ましくは500nm〜50μm、有利には1μm〜10μmの大きさを有する粒子の形で提供される。好ましくは、それらの粒子は、1〜5000m2/g、有利には5〜2000m2/g、特に100m2/gより大きい比表面積を示し、1〜50nm、好ましくは1〜20nmの平均孔径を示す。
【0071】
多孔性物質は、
・酸化物、水酸化物、水和物又はポリオキソメタレートの金属錯体のナノ粒子を含むことができる発熱性又は非発熱性、沈降性又は非沈降性、及びミクロポーラス又はメソポーラスのシリカ、
・酸化物、水酸化物、水和物又はポリオキソメタレートの金属錯体のナノ粒子を含むことができるカーボンブラック、
・活性酸化アルミニウム及び過マンガン酸カリウム、
・天然又は合成ゼオライト、
・ポリマー、例えばポリアミド、
であることができる。
【0072】
本発明によるマットは、鉱物繊維を基礎材料としており、所望により、有機材料、例えばオレフィン、例としてポリエチレン及びポリプロピレンなど、又はポリアルキレンテレフタレート、例としてポリエチレンテレフタレートなど、からなる繊維を含んでもよい。
【0073】
「繊維」という用語は、フィラメントと、一緒に結合している、特にサイズ剤によって一緒に結合している、多数のフィラメントからなる糸及びそのような糸の集合体との両方を意味すると理解される。
【0074】
上述の繊維を構成する鉱物材料は、好ましくはガラス又は岩石、具体的に言うと玄武岩、である。
【0075】
よって、第1の実施形態によれば、鉱物繊維のマットは、長さが150mmに及び得る、好ましくは20〜100mm、有利には50〜70mmであり、直径が広い範囲内でよく、例えば5〜30μmの、不連続の鉱物フィラメントで構成される。
【0076】
第2の実施形態によれば、鉱物繊維のマットは鉱物繊維で構成される。
【0077】
鉱物の糸は、多数の鉱物フィラメントからなる糸(すなわちベースヤーン)もしくはロービングの形をしたこれらのベースヤーンの集合体であってもよく、均質に混合された、鉱物フィラメントと上述の有機材料のフィラメントとから構成された「混繊」糸であってもよく、あるいは多数の鉱物フィラメントからなる少なくとも1種の糸と多数の上述の熱可塑性有機材料のフィラメントからなる少なくとも1種の糸とを含む混紡糸であってもよい。
【0078】
上述の糸は、無撚糸であっても撚糸(すなわち織編用糸)であってもよく、好ましくは無撚糸である。
【0079】
鉱物糸、特にガラス糸は、一般的に切断され、その長さは100mm以下の範囲、好ましくは6〜30mm、有利には8〜20mmでよく、10〜18mmであるのが更によい。
【0080】
糸を構成するガラスフィラメントの直径は、大幅に、例えば5μmから30μmまで、変えることができる。同様に、糸の線密度も幅広く変えることができ、34〜1500テックスの範囲でよい。
【0081】
フィラメントの組成に関係するガラスは、いかなる種類のものであってもよく、例えばE、C、R又はAR(耐アルカリ性))でよい。Eガラスが好ましい。
【0082】
いずれか1つの実施形態による鉱物繊維のマットは、10〜1100g/m2、好ましくは20〜300g/m2の単位面積当たりの重量を示す。
【0083】
鉱物繊維のマットは、通常、前記繊維を結合し所望の用途に適したマットの機械的特性、特に容易な取り扱いを可能にするのに十分な剛性をマットに与える結合剤を含む。
【0084】
結合剤は、一般的に、鉱物繊維を結合することが可能な少なくとも1種のポリマーを含む。このポリマーは、熱可塑性ポリマー、例えば、スチレン/アクリロニトリル、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン、セルロース(トリ)アセテート、発泡ポリスチレン、ポリオレフィン、例えばポリエチレン及びポリプロピレンなど、ポリ(メタ)アクリレート、ポリ酢酸ビニル、又はポリオキシメチレンや、熱硬化性ポリマー、例えば、不飽和ポリエステル、エポキシド、フェノール樹脂、例としてノボラック又はレゾールなど、特に、遊離アルデヒドレベルが0.05%未満であるもの、ポリイミド、ポリウレタン、フェノプラスト、又は生体高分子、例えば多糖類又はタンパク質や、弾性ポリマー、例えば、フルオロポリマー、特にフッ化ビニリデンに基づくもの、ネオプレン、ポリアクリル酸、ポリブタジエン、ポリ(エーテルアミド)、シリコーン、天然もしくはスチレン/ブタジエン(SBR)ゴム、又は生体高分子、例えば多糖類もしくはタンパク質、でよい。
【0085】
結合剤は、一般的に、鉱物繊維マットのl〜1000重量%、好ましくは5〜350%、有利には10〜100%に相当する。
【0086】
鉱物繊維のマットの製造方法及び鉱物糸のマットの製造方法は、本発明の他の対象を構成する。
【0087】
図1は、「乾式」法による鉱物フィラメントのマットの製造を可能にする従来のプラントの概略図である。
【0088】
炉(2)内に存在する溶融鉱物材料(1)を一連の数個のブッシュ(3a〜d)に送り、それらから重力によってフィラメント(4)を流し出し、ガス状流体によって引き出す。フィラメント(4)は矢印で示した方向に移動するコンベヤー(5)上に集められ、そこで絡み合わされ又はマット(6)の形態になる。
【0089】
スプレーすることによって機能する装置(8)を用いてマット(6)に結合剤(7)を適用し、その後マットは熱風乾燥装置(9)に入る。熱風乾燥装置の温度は、水を除去し、場合により結合剤を架橋させるように調整される。
【0090】
その他の乾燥装置、例えば赤外線放射によって機能するか又は1以上の加熱ローラーを備えた装置、を使用してもよい。
【0091】
マット(6)は、乾燥装置(9)の出口で、巻き物(10)の形で収集される。
【0092】
本発明によれば、この従来のプラントに、ホルムアルデヒドを捕捉することが可能な薬剤を用いる処理の段階が追加される。
【0093】
第1の実施形態によれば、ホルムアルデヒドを捕捉することが可能な薬剤は、結合剤(7)中に導入される。この実施形態は、ホルムアルデヒドを捕捉することが可能な薬剤の適用のための追加の装置を必要とせず、これは経済的観点から有利であることから、好ましい。
【0094】
第2の実施形態によれば、ホルムアルデヒドを捕捉することが可能な薬剤は、マット(6)上に結合剤(7)を被着させてから、そのマットが乾燥装置(9)に入る前に適用される。
【0095】
前記薬剤は、任意の公知の手段によって、好ましくはスプレーすることによって機能する装置を用いて、適用することができる。
【0096】
例えば、この装置は、ホルムアルデヒドを捕捉することが可能な薬剤の水溶液が供給される複数のスプレーノズルで構成することができ、スプレーノズルによってマット(6)の上面に達して接触する前に分散流が生み出されて浸透する。
【0097】
ホルムアルデヒドを捕捉することが可能な薬剤は、マットを巻き物(10)の形で収集した後の段階での吸収によって、例えば前記薬剤が入った浴内にマットを通すことによって、適用することもできる。しかしながら、このようにすると、マットを巻きほどく追加の段階や、ホルムアルデヒドを捕捉することが可能な薬剤を水溶液の形で適用するための、そして水を除去するための、特別な手段が必要であることから、前述の方法よりも費用がかかる。
【0098】
図2は、「湿式」法による鉱物繊維のマットの製造を可能にする従来のプラントの概略図である。
【0099】
切断した鉱物糸の水中分散液(11)を、孔の開いたコンベヤー(13)上に成形ヘッド(12)を用いて被着させる。コンベヤー(13)と接触すると、分散液(11)中に存在する水がサクションボックス(14)によって引き出され。コンベヤー上では、切断した鉱物糸がマット(15)を形成し、その上にスプレー装置(17)を用いて結合剤(16)が被着される。その後、マット(15)は熱風乾燥装置(18)に入る。熱風乾燥装置の温度は、残留水を除去し、場合により結合剤を架橋するように、調整される。
【0100】
「乾式」法と同様に、乾燥装置(18)を、赤外線によって機能するか又は1以上の加熱ローラーを備えた装置に置き換えることができる。
【0101】
その後、マット(15)は巻き物(19)の形で収集される。
【0102】
該当する場合には、マットの前進方向に位置してマットの幅の全体又は一部にわたって分布する連続繊維(20)でマットを補強することができる。これらの繊維(20)は、一般的に、結合剤(16)の適用前にマット(15)上に配置される。
【0103】
繊維(20)は、合成繊維であっても又は天然繊維であってもよい。
【0104】
合成繊維の例としては、無機繊維、特にガラス、又は玄武岩などの岩石の繊維、及び有機繊維、特にポリアミド、ポリエステル又はポリオレフィン、例えばポリエチレン及びポリプロピレンなどの繊維を挙げることができる。ガラスが好ましい。
【0105】
天然繊維の例としては、植物繊維、特に綿、ココナツ、サイザル、麻又は亜麻、及び動物繊維、特に絹又は羊毛を挙げることができる。
【0106】
本発明によれば、この従来のプラントに、ホルムアルデヒドを捕捉することが可能な薬剤を用いる処理の段階が追加される。
【0107】
その処理段階は、「乾式」法に関して既に示した条件下で、つまり、ホルムアルデヒドを捕捉することが可能な薬剤を結合剤(16)中に導入することによって、結合剤をマット(15)上に被着後マットが乾燥装置(18)に入る前に薬剤を適用することによって、あるいはまた巻き物(19)の形でマットを収集した後の段階での吸収によって、行うことができる。
【0108】
本発明はホルムアルデヒドに関して説明してはいるが、この化合物を捕捉することが可能な前述の薬剤はアセトアルデヒドを捕捉することも可能であると思われる。
【0109】
本発明に従う鉱物繊維マットは、数多くの用途に、例えば、壁及び/又は天井に利用することができる、塗装した又は塗装しない被覆材、石膏ボード又はセメントボード用の表面被覆材又はシーリング被覆材、あるいは断熱製品及び/又は防音製品用の表面被覆材、例えばミネラルウール又は特に屋根の断熱用発泡体など、あるいは床被覆材、例えば敷き詰めカーペット又はビニル材料などとして、使用することができる。
【実施例】
【0110】
次の例によって本発明を例示することができるが、それらの例は本発明を限定するものではない。
【0111】
(例1及び2)
a)ガラスマットの製造
250gのヒドロキシエチルセルロース(増粘剤、HerculesよりNatrosol(登録商標)250 HHRという表示で販売されている)及び0.3gのエトキシル化オクタデシルアミン/オクタデシルグアニジン複合体(表面剤、CytecよりAerosol(登録商標) C−61という表示で販売されている、固形分70%)を含む水溶液2リットルを調製する。
【0112】
切断したEガラスの糸(長さ8mm)(...テックス、フィラメントの直径13μm)2.54gを上述の溶液に加える。
【0113】
得られたガラス糸の懸濁液を、マットの製造を可能にする装置において使用する。その装置は、液漏れしないボックスを載せたスクリーンとそのスクリーンの下に位置する吸引ボックスを備えている。
【0114】
懸濁液を液漏れしないボックスに入れ、激しく攪拌して均質化し、その後吸引ボックスを作動させて水を除去する。スクリーン上に、30cm×30cmの寸法で表面積当たりの重量が28.2g/m2であるガラス繊維マットを回収する。
【0115】
アクリル樹脂を含む結合剤(Acrodur(登録商標)950L、BASFより販売されている)とホルムアルデヒドを捕捉することが可能な薬剤、すなわちアセトアセトアミド(例1)又はアジピン酸ジヒドラジド(例2)の水溶液にマットを1分間浸漬する。
【0116】
マット中の余分な結合剤を吸引により除去し、その後210℃で1分間加熱してマットを固める。
【0117】
最終的に、マットはアクリル樹脂を5g/m2及びのホルムアルデヒドを捕捉することが可能な薬剤を2.5g/m2含む。
【0118】
それは、良好な寸法安定性と良好な機械的強度を示す。
【0119】
b)ホルムアルデヒド捕捉能力
比換気流量を1.48m3/(m2・h)に等しくし負荷レベルを0.27m2/m3に等しくして一部変更した標準規格ISO 16000−9による装置に、マットのサンプルを入れる。
【0120】
1.第1工程において、装置の試験室に、ほぼ50μg/m3程度のホルムアルデヒドを含む連続空気流を7日間供給する。試験室に入って出ていく空気中のホルムアルデヒドの量を7日間にわたって測定し、単位体積の空気当たりのホルムアルデヒドの減少量を計算する。
【0121】
標準規格ISO 16000−3の条件下で液体クロマトグラフィー(HPLC)によりホルムアルデヒドを測定する。
【0122】
ホルムアルデヒドを捕捉することが可能な薬剤を含むマット(例1及び例2)を用いて達成されたホルムアルデヒドの減少量を、ホルムアルデヒドを捕捉することが可能な薬剤を含まない、a)で説明した条件下で製造したマット(対照)と比較して表1に示す。
【0123】
【表1】

【0124】
2.第2工程において、ホルムアルデヒドを含まない空気を7日間試験室に供給する。試験室の出口において空気中に存在するホルムアルデヒドの量を測定する。
【0125】
上記1と同じ条件下でホルムアルデヒドを測定する。
【0126】
例1及び例2によるマットより放出されたホルムアルデヒドの量は、試験室にマットを入れていないときに測定したそれと同等である。これから、ホルムアルデヒドはホルムアルデヒドを捕捉することが可能な薬剤と強く且つ持続的に結合するということが結論づけられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホルムアルデヒドを捕捉することが可能な薬剤を含むことを特徴とする、鉱物繊維の、特にガラス又は岩石の、マット。
【請求項2】
ホルムアルデヒドを捕捉することが可能な前記薬剤が、活性メチレンを含む化合物、ヒドラジド、タンニン、アミド、アミノ酸及び亜硫酸塩から選択されることを特徴とする請求項1に記載のマット。
【請求項3】
活性メチレンを含む前記化合物が、下式(I)〜(IV)の1つに相当していることを特徴とする請求項2に記載のマット。
・式(I):
【化1】

(式中、
・R1及びR2は、同一であるか又は異なり、水素原子、C1〜C20、好ましくはC1〜C6アルキル基、アミノ基又は下式の基を表し、
【化2】

(式中のR4は、次の基、
【化3】

又は次の基、
【化4】

(式中、R5=H又は−CH3
を表し、pは1〜6の整数である)、
・R3は、水素原子、C1〜C10アルキル基、フェニル基又はハロゲン原子を表し、
・aは0又は1に等しく、
・bは0又は1に等しく、
・nは1又は2に等しい)
・式(II):
【化5】

(式中、
・R6は、シアノ基又は次の基、
【化6】

(式中のR8は、水素原子、C1〜C20、好ましくはC1〜C6アルキル基、又はアミノ基を表し、cは0又は1に等しい)
を表し、
・R7は、水素原子、C1〜C10アルキル基、フェニル基又はハロゲン原子を表す)
・式(III):
【化7】

(式中、
・R9は−C≡N基又は−CO−CH3基を表し
・qは1〜4の整数である)
・式(IV):
【化8】

(式中、
・Aは、−(CH23−基又は−C(CH32−基を表し、
・rは、0又は1に等しい)
【請求項4】
式(I)の前記化合物が2,4−ペンタンジオン、2,4−ヘキサンジオン、3,5−ヘプタンジオン、2,4−オクタンジオン、アセトアセトアミド、アセト酢酸、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸n−プロピル、アセト酢酸イソプロピル、アセト酢酸イソブチル、アセト酢酸t−ブチル、アセト酢酸n−ヘキシル、マロンアミド、マロン酸、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、マロン酸ジ(n−プロピル)、マロン酸ジイソプロピル、マロン酸ジ(n−ブチル)、アセトンジカルボン酸及びアセトンジカルボン酸ジメチルであることを特徴とする請求項3に記載のマット。
【請求項5】
式(II)の前記化合物が2−シアノ酢酸メチル、2−シアノ酢酸エチル、2−シアノ酢酸n−プロピル、2−シアノ酢酸イソプロピル、2−シアノ酢酸n−ブチル、2−シアノ酢酸イソブチル、2−シアノ酢酸tert−ブチル、2−シアノアセトアミド及びプロパンジニトリルであることを特徴とする請求項3に記載のマット。
【請求項6】
式(III)の前記化合物がトリメチロールプロパントリアセトアセテート及びトリメチロールプロパントリシアノアセテートであることを特徴とする請求項3に記載のマット。
【請求項7】
式(IV)の前記化合物が1,3−シクロヘキサンジオン及びメルドルム酸であることを特徴とする請求項3に記載のマット。
【請求項8】
前記ヒドラジドが、
a)式R1CONHNH2のモノヒドラジド(式中、R1はアルキル基又はアリール基を表し、該アルキル基又は該アリール基の水素原子はヒドロキシル基又はハロゲン原子に置き換えられていることが可能であり、該アリール基はアルキル基によって置換されていることが可能である)、
b)式H2NHN−X−NHNH2のジヒドラジド(式中、Xは−CO−基又は−CO−Y−CO−基を表し、Yはアルキレン基又はアリーレン基であり、該アルキレン基又は該アリーレン基の水素原子はヒドロキシル基又はハロゲン原子に置き換えられていることが可能であり、該アリール基はアルキル基によって置換されていることが可能である)、
c)ポリヒドラジド、例えばトリヒドラジド、テトラヒドラジド、及び重合性基を含むヒドラジドモノマーから生成されるポリヒドラジドなど、
から選択されることを特徴とする請求項2に記載のマット。
【請求項9】
前記ヒドラジドがシュウ酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、マレイン酸ジヒドラジド、フマル酸ジヒドラジド、ジグリコール酸ジヒドラジド、酒石酸ジヒドラジド、リンゴ酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、テレフタル酸ジヒドラジド、カルボヒドラジド、クエン酸トリヒドラジド、ピロメリット酸トリヒドラジド、1,2,4−ベンゼントリヒドラジド、ニトリロ三酢酸トリヒドラジド、シクロヘキサントリカルボン酸トリヒドラジド、エチレンジアミン四酢酸テトラヒドラジド、1,4,5,8−ナフトエ酸テトラヒドラジド、ポリ(アクリル酸ヒドラジド)又はポリ(メタクリル酸ヒドラジド)であることを特徴とする請求項8に記載のマット。
【請求項10】
前記タンニンがミモザ、ケブラコ、マツ、ピーカンナッツ、ツガ又はウルシのタンニンであることを特徴とする請求項2に記載のマット。
【請求項11】
前記アミドが尿素、1,3−ジメチル尿素、エチレン尿素又はその誘導体、二尿素、ビウレット、トリウレット、アクリルアミド、メタクリルアミド、ポリアクリルアミド及びポリメタクリルアミドであることを特徴とする請求項2に記載のマット。
【請求項12】
ホルムアルデヒドを捕捉することが可能な化合物の含有量が0.1〜500g/m2、好ましくは0.5〜100g/m2、有利には1〜50g/m2であることを特徴とする請求項1〜11の一項に記載のマット。
【請求項13】
鉱物フィラメント又は鉱物糸及び、所望により、熱可塑性有機材料からなる繊維、を基礎材料としていることを特徴とする請求項1〜11の一項に記載のマット。
【請求項14】
前記鉱物糸が、多数の鉱物フィラメントからなる糸(又はベースヤーン)もしくはロービングの形をしたこれらのベースヤーンの集合体であるか、均質に混合された、鉱物フィラメントと有機材料のフィラメントとからなる「混繊」糸であるか、又は多数の鉱物フィラメントからなる少なくとも1種の糸と多数の熱可塑性有機材料フィラメントからなる少なくとも1種の糸とを含む混紡糸であることを特徴とする請求項13に記載のマット。
【請求項15】
前記フィラメント又は前記糸が、ガラス製、好ましくはEガラス製であることを特徴とする請求項13又は14に記載のマット。
【請求項16】
10〜1100g/m2、好ましくは20〜300g/m2の単位面積当たりの重量を示すことを特徴とする請求項1〜15の一項に記載のマット。
【請求項17】
溶融鉱物材料(1)からフィラメント(4)を作り、該フィラメントをマット(6)の形で集め、該マットに結合剤(7)を適用し、該マットを乾燥装置(9)内を通過させ、そして集める、請求項1〜16の一項に記載のマットの製造方法であって、ホルムアルデヒドを捕捉することが可能な薬剤を用いる処理の段階を含むことを特徴とするマット製造方法。
【請求項18】
前記処理が前記薬剤を前記結合剤(7)中に導入するものであることを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記処理が、前記結合剤(7)をマット上に被着後、そのマットが乾燥装置(9)に入る前に、前記薬剤を適用するものであることを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記適用を前記薬剤の水溶液をスプレーすることによって行うことを特徴とする請求項19に記載の方法。
【請求項21】
切断した鉱物糸の水中分散液(11)を孔の開いたコンベヤー(13)上に成形ヘッド(12)を用いて被着させ、サクションボックス(14)によって水を除去し、該糸をマット(15)の形で集め、該マットに結合剤(16)を適用し、該マットを乾燥装置(18)内を通過させ、そして集める、請求項1〜16の一項に記載のマットの製造方法であって、ホルムアルデヒドを捕捉することが可能な薬剤を用いる処理の段階を含むことを特徴とするマット製造方法。
【請求項22】
前記処理が前記薬剤を前記結合剤(16)中に導入するものであることを特徴とする請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記処理が、前記結合剤(16)をマット上に被着後、そのマットが乾燥装置(18)に入る前に、前記薬剤を適用するものであることを特徴とする請求項21に記載の方法。
【請求項24】
前記適用を前記薬剤の水溶液をスプレーすることによって行うことを特徴とする請求項23に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2012−528711(P2012−528711A)
【公表日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−513658(P2012−513658)
【出願日】平成22年6月2日(2010.6.2)
【国際出願番号】PCT/FR2010/051073
【国際公開番号】WO2010/139897
【国際公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【出願人】(507392897)
【Fターム(参考)】