説明

ホログラムおよび色シフト・インクによって形成されるセキュリティ・デバイス

【課題】物体の上にラベルを形成する方法を提供する。
【解決手段】物体の表面を光学的可変インクでコーティングするステップと、パターン化された構造を光学的可変インクの上から光透過接着剤を使用して物体に結合するステップとを含む、物体の上にラベルを形成する方法が提供される。パターン化された構造が該構造を介した光の伝搬を可能にしている。パターン化された構造は、半透明反射層、高屈折率層およびパターン化された反射コーティングのうちの1つを備えた回折構造であってもよい。一実施形態では、色シフト・インクを使用して印刷された銀行券または紙文書にホログラムがホット・スタンプされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物体への光学的可変インクの印刷、および、たとえばホット・スタンプ(hot stamping)を使用した光学的可変インクへのホログラムなどのパターン化された構造の接着結合による物体の表面へのラベルの形成に関する。
【背景技術】
【0002】
光セキュリティ・デバイスとも呼ばれているセキュリティ・ラベルは、様々な物体をその偽造から保護するために使用されている。このような物体には、紙文書、銀行券、商品、包装などがある。従来、セキュリティ・ラベルは、物体または包装の表面に接着結合またはホット・スタンプされている。
【0003】
ある種のセキュリティ・ラベルは、英数字、バー・コードまたは図形デザインあるいは画像デザインなどのパターンと共に、ホログラムまたは回折格子などのスタンプ表面またはエッチ表面レリーフ・パターンの効果を示し、また、このようなパターンの周囲の領域に追加光学効果を示す光学構造である。Argoitiaら名義で2006年4月13日に公開された米国特許出願第20060077496号に、このような構造が記載されている。
【0004】
クロマグラムとも呼ばれているもう1つの種類のセキュリティ・ラベルは、パターン化またはウインドウ化された基板を特殊効果コーティングと共に有する光学構造、もしくはパターン化またはウインドウ化された基板に支持された層、あるいはパターン化またはウインドウ化された基板を支持している層を有する光学構造を備えている。本発明者らによるいくつかの特許および特許出願によって様々な設計のクロマグラムが知られており、セキュリティおよび製品の美観を改善するために使用されている。
【0005】
「パターン化された」層という用語の使用は、反射性または非反射性の不透明または部分的に透過性の層が、平らであってもよく、あるいは表面レリーフ・パターンをその中に有することができる基板の上に、所望の「パターン」すなわちデザインが形成される方法で加えられていることを意味している。非制限の例によれば、パターン化された反射層を、文字、数字、バー・コードおよび/または図形デザインあるいは画像デザインの形で形成することができる。
【0006】
Phillipsら名義の米国特許第6,987,590号に、ホログラムの形態の表面レリーフ・パターンが加えられた光透過基板を備えた光デバイスが開示されている。この光デバイスの製造に際しては、パターン化された反射材料の層が表面レリーフ・パターンの一部に加えられ、英数字、バー・コードまたは画像デザインあるいは図形デザインが形成される。望ましい光学効果を表面レリーフ・パターンの露出部分に提供するために、光学的活性コーティングが、インクまたはペイントとして、パターン化された反射材料の層の上および表面レリーフ・パターンの露出部分に付着または塗布される。いくつかの実施形態では、光学的活性コーティングは、色シフト薄膜であるか、あるいは色シフト・フレークを含有している。任意選択で、光学的活性コーティングの材料は、反射材料で覆われていない表面レリーフ・パターン部分における表面レリーフ・パターンの効果を光学的に無効にするために、光透過基板と屈折率整合している。上で言及したこの特許出願は、表面レリーフ・パターンが形成された光透過基板と、パターン化された反射材料の層であって、表面レリーフ・パターンの一部が反射材料で覆われ、表面レリーフ・パターンの他の部分が露出するように光透過基板の表面レリーフ・パターンの一部に加えられた反射材料の層とを有する光学構造を提供している。この構造は、さらに、パターン化された層および表面レリーフ・パターンの露出部分の下を覆っている光学的活性コーティングを有している。この構造は、一種のクロマグラムである。
【0007】
Phillipsら名義の米国特許出願第20050128543号に、もう1つのクロマグラム・タイプの構造が記載されている。この公報によれば、それを通して見ることができるウインドウ化された領域を有するパターン化された基板が、ウインドウを通して見ることができる光学的可変コーティングまたは光学的可変インクでコーティングされている。事実上、上で説明した参考文献または以下で説明する参考文献はすべて、参照により本明細書に組み込まれている。
【0008】
光学的可変(Optically Variable:OV)コーティングは、光学的可変効果、たとえば入射する光の角度または観察角度が変化する際の観察可能な色シフトを提供するコーティングとして理解されている。たとえば、光学コーティングは、吸収体−誘電体−反射体の3層光学スタックなどの多層光干渉膜であっても、あるいは屈折率が小さい誘電体層と屈折率が大きい誘電体層が交番する層であってもよい。また、光学コーティングは、色シフト・インクなどの重合体媒体中に分散した複数の多層光干渉フレークから形成することも可能である。OVコーティングのもう1つの例は、反射フレークが分散した着色媒体である。しかしながら、このタイプのコーティングは、色シフト・コーティングではない。このタイプのコーティングの可変効果は、着色媒体の色の明るい色およびより暗い色として出現する。
【0009】
前述のクロマグラムは、保護を強化するために、ホログラムと光学的可変コーティングのセキュリティ特徴(security feature(s))を組み合わせたものである。しかしながら、高度のセキュリティ特徴は、保護される物体をより複雑にし、そのコストを高くしている。したがって、同じ高度のセキュリティ特徴を提供しつつ、従来のクロマグラムのアプリケーションより単純で、かつ、より安価なセキュリティ・ラベルを使用して物体を保護する、単純で、かつ、費用有効性の高い方法が提供されることが望ましい。
【0010】
クロマグラムを始めとする、ホログラフィ効果およびOV効果を提供するセキュリティ・デバイスは、製造方法によって2つのグループに分類することができる。第1のグループには、OVコーティング、たとえば薄膜スタックまたは重合体コーティング中の色シフト・フレークでホログラフィ構造を覆うことによって形成されたデバイスが包含されている。第2のグループのデバイスは、OVコーティングが形成された第2の基板に好ましくはホット・スタンプによって接着結合された、その中またはその上にホログラムが形成された第1の基板を有している。
【0011】
ホット・スタンプ、より詳細には、1つの光学コーティングまたは基板に他の光学コーティングまたは基板をホット・スタンプする分野については良く知られている。たとえば、イメージ、ロゴまたは他の印が書かれたコーティング基板が、宝くじカード、パスポート、銀行券、運転免許証、ポーカー・チップにホット・スタンプされており、また、様々な他の物品および基板が良く知られている。
【0012】
Phillipsら名義の米国特許第5,002,312号、米国特許第5,059,245号、米国特許第5,135,812号、米国特許第5,171,363号、米国特許第5,186,787号、米国特許第5,279,657号および米国特許第7005178号に、ホット・スタンプが記載または言及されている。基板にイメージをホット・スタンプするための商用的に入手可能なマシンの1つは、Malahide Design and Manufacturing社が製造しているMalahide E4−PKである。インタネット上のwww.hotstamping.comに、このタイプのマシンが示され、かつ、説明されている。要約すると、ホット・スタンプ・プロセスでは、ホット・スタンプ・ホイルのロード・ロールに押し付けられる加熱プレートにダイが取り付けられ、物品または基板にホイルが貼り付けられる。
【0013】
たとえばPhillipsらによるWO0153113号出願、およびHolmesらに対する米国特許第7,054,042号に、両方のグループのデバイスが開示されている。
【0014】
WO0153113号出願には、レーザによってイメージ化された光学コーティング構造をエンボス基板に積層することによって形成された様々なセキュリティ物品が開示されている。積層される物品には、ホログラフィ・イメージの下側の背景として使用することができる色シフト・ホイルまたはインクのいずれかが含まれている。‘042号特許には、反射層、1つまたは複数の誘電体層、および半透明金属層からなる製造済み薄膜反射構造に、光学的に透明な接着剤と共に積層されたレリーフ構造を備えた光学的減結合(decoupled)デバイスが開示されている。
【0015】
従来、いずれかのタイプのセキュリティ・デバイスを使用して、文書、銀行券などの価値の高い物体、あるいは他の任意の物体を保護する場合、デバイスは、外部接着層によって物体に接着結合される。したがって、第2のグループのデバイスは、OV構造にホログラフィ構造を結合するための内部接着層と、得られたデバイスを物体に結合するための外部接着層の2つの接着層を有している。
【特許文献1】米国特許第6,987,590号
【特許文献2】米国特許第5,002,312号
【特許文献3】米国特許第5,059,245号
【特許文献4】米国特許第5,135,812号
【特許文献5】米国特許第5,171,363号
【特許文献6】米国特許第5,186,787号
【特許文献7】米国特許第5,279,657号
【特許文献8】米国特許第7005178号
【特許文献9】WO0153113号
【特許文献10】米国特許第7,054,042号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明の目的は、第2のグループのセキュリティ・デバイスによって提供されるセキュリティ特徴と同じセキュリティ特徴を可能にしつつ、2つの接着層のうちの一方および2つの基板のうちの一方を除去することによって、物体を保護するためのコストを低減することである。本発明の目的は、第1または第2のタイプのデバイスより単純なセキュリティ・ラベルを使用して、ホログラフィ効果と色シフト効果を組み合わせた効果を有するイメージとしてこのようなセキュリティ特徴を可能にすることである。また、本発明の目的は、物体の表面に外部接着層を加えるステップ、および物体の表面にセキュリティ・ラベルを形成するステップを除去することによって、物体を保護する方法を単純化することである。
【0017】
ホログラムなどの回折構造にOVコーティングを施すことによって予め製造され、次に、物体に接着結合される第2のグループのセキュリティ・デバイスは、ホログラム領域にのみOVコーティングを有している。しかしながら、物体、たとえば銀行券の表面の、インク・デザインが銀行券の一部分から他の部分へ及ぶよう、ホログラム・ラベルの境界を越えて展開しているOVインク・パターンによって追加のセキュリティ特徴を提供することも可能である。たとえば、アヒルのイメージが色シフト・インクで銀行券に印刷されているが、ホログラフィで出現しているのは頭のみである。ホログラムである頭はスタンプされている。この構造は、OVインクで覆われた製造済みホログラムを使用して作製することが困難であり、OVインクの塗布には、ホログラムへの塗布と物体への塗布の2つのステップが必要である。また、これらの2つのイメージを正確に位置決めしなければならない。本発明の目的は、物体にセキュリティ・ラベルを形成するための方法であって、OVパターンが、ラベルによって形成される回折イメージを越えて展開する方法を提供することである。本発明の他の目的は、物体に形成されるセキュリティ・ラベルと共に物体を製造する方法であって、物体上のOVパターンおよびセキュリティ・ラベルのOV背景が1つのステップで形成される方法を提供することである。
【0018】
個別に製造され、物体に取り付けられるラベルに関連する可能なセキュリティ侵害は、本物の文書から偽造文書へのラベルの転写、あるいは不法に入手したセキュリティ・ラベルの偽造製品への取付けに関連している。このような問題は、取り付けられたラベルによってではなく、物体自体の基板によって特殊な光学効果が提供されるセキュリティ基板を使用することによって除去することができる。セキュリティ基板の例については、色シフトセキュリティ・スレッドを内蔵したプラスチック基板が開示されている、Caporalettiら名義の米国特許第6,686,027号を参照されたい。
【0019】
米国特許第6,686,027号に開示されているような基板は、より高レベルの偽造防止を提供しているが、詳細には物体サイズの基板全体を真空カメラの中で処理しなければならないため、小さいセキュリティ・ラベルより製造コストが著しく高い。また、このような基板を製造する方法は、重合体として米国特許第6,686,027号に明記されている基板材料にもう1つの制限を強制している。
【0020】
本発明の目的は、作製材料に制限のない、費用有効性の高いセキュリティ基板を提供することである。詳細には、本発明の目的は、銀行券または紙文書に使用するための紙基板を提供することである。
【0021】
紙文書に印刷される特殊インクをセキュリティ特徴として使用することができることは当分野で知られている。特殊インクの特定のタイプの1つは、観察角度に応じて光学効果を提供する光学的可変(OV)インクである。たとえば、Mehtaに対する米国特許第7,029,525号は、水をベースとする色シフト・インクを使用して、紙文書を印刷する方法を教示している。
【0022】
OVインクの塗布は、便利で、かつ、安価であるが、それ自体によって提供されるセキュリティのレベルは、並のレベルにすぎない。したがって、本発明によれば、OVインクによって提供されるセキュリティ特徴と回折構造が結合される。
【0023】
また、OVインクを銀行券に直接印刷することにより、インクが銀行券の繊維に押し込められ、したがって、インクの浸透を分析手法によって観察することができるため、銀行券がより安全になる。ホット・スタンプ接着は、銀行券の繊維とOVコーティングの間で生じるため、このような浸透は、OVインクを使用した製造済みホログラムでは生じ得ない。本発明のもう1つの目的は、それぞれ別の場所で2つの個別のセキュリティ特徴を作製し、次に、安全確保されるべき製品が製造される場所での一体結合を可能にすることである。これにより、OVコーティングを備えたホログラムなどの製造済みセキュリティ・ラベルを輸送中に押収することができ、したがって保護すべき物品を処理することができるため、追加のセキュリティが提供される。
【0024】
本発明によるセキュリティ・ラベルを形成する一方で、様々なタイプの回折構造を使用することができる。デメタライズ化(demetallization)・ホログラムまたはウインドウ化(windowed)ホログラムによるパターン化は、色シフト・コーティングと共に、ホログラムに衝突する光の、下側の色シフト・コーティングへの到達を可能にし、そしてまた回折効果と色シフト光学効果の共同作用を可能にしている。
【0025】
パターン化された反射材料の層をホログラフィ基板の所定の部分の上に加え、英数字、バー・コード、画像デザインまたは図形デザインを形成することができる。ホログラフィ基板の表面にアルミニウムなどの高反射材料が蒸着され、基板の所定の部分がエッチ除去される。デメタライズの結果、金属がエッチ除去された基板領域が本質的に透明になり、その部分のホログラフィ効果がほぼ目には見えなくなる。一方、反射金属が異なる所定の形状で表面上に残留した基板部分は、目で見ることができるホログラフィ特性を維持している。
【0026】
本発明の他の目的は、接着層によって下側のOVコーティングに光学的に結合されたデメタライズ化(demetallized)またはウインドウ化ホログラムを使用することによって、回折効果とOV効果の共同作用を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0027】
本発明の一態様によれば、物体の上にラベルを形成する方法であって、物体の表面を光学的可変インクでコーティングするステップを含み、かつパターン化された構造を光学的可変インクの上から光透過接着剤を使用して物体に結合するステップを含むことを特徴とし、パターン化された構造が該構造を介した光の伝搬を可能にし、それにより、光が照射されると、上記ラベルが光学的可変背景を有するイメージを形成する方法が提供される。
【0028】
本発明の他の態様によれば、本発明による方法に利用されるパターン化された構造が提供され、この構造は回折構造であり、半透明反射層、高屈折率層およびパターン化された反射コーティングのうちの1つを備えている。ラベルによって形成されるイメージは、回折構造によって提供されるホログラフィ効果および光学的可変インクによって提供される光学的可変効果を有している。
【0029】
本発明のさらに他の態様によれば、基板と、基板に塗布された光学的可変インクのコーティングと、光学的可変インクのコーティング上の基板に接着結合された回折構造と、回折構造を基板に結合するための接着層とを備えた物品が提供される。この物品は、回折構造が反射層を備えており、物品に光が照射されると、光の第1の部分が反射層で反射し、光の第2の部分が反射層を介して光学的可変インクのコーティングまで伝搬し、反射層および光学的可変インクのコーティングでそれぞれ反射した後の光の第1および第2の部分が、光学的可変の特徴を有する鏡のような(specular)イメージを形成することを特徴としている。
【0030】
本発明の一実施形態では、最初に光学的可変インクが銀行券または紙文書に印刷され、次にホット・スタンプ・プロセスによって、光学的可変インク層とウインドウ化ホログラムを有する基板が一体に結合される。
【0031】
本発明の一態様では、デメタライズ化ホログラムの一部を通して光学的可変インクを見ることができ、あるいは両方を同時に見ることができる。
【0032】
本発明によれば、光学的可変ホイルの上にデメタライズ化ホログラムがホット・スタンプされる光学構造が提供される。
【0033】
本発明の上記および他の利点ならびに特徴をさらに明確にするために、本発明について、添付の図面に示す本発明の特定の実施形態を参照してより詳細に説明する。これらの図面は、本発明の典型的な実施形態を示したものにすぎず、したがってこれらを本発明の範囲を制限するものと見なしてはならないことを理解されたい。以下、本発明について、添付の図面を使用して、追加の特有点および細部を示し、かつ、説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
本発明によれば、物体の表面に光学的可変インクを印刷し、次に、パターン化された構造を物体の表面に接着結合することによって物体の表面にセキュリティ・ラベルすなわちクロマグラムが形成される。
【0035】
光学的可変インクは、OVフレークが分散したキャリヤ媒体を備えている。キャリヤ媒体には、様々なタイプのものを使用することができることを理解されたい。たとえば、水をベースとするOVインクが、Mehta名義の米国特許第7,029,525号に開示されており、また、重合体をベースとするOVインクが、Phillipsら名義の米国特許第5,279,657号に教示されている。一例として、OVインクのキャリヤは、アクリルまたはウレタンをベースとするインクである。OVペイントとも呼ばれている、中にOVフレークを備えたより分厚いキャリヤは、本出願においては一種のOVインクと見なされることを理解されたい。いくつかの実施形態では、キャリヤは、着色されており、および/または磁気粒子を含有している。
【0036】
OVフレークは、Phillips名義の米国特許第6,751,022号、およびArgoitiaら名義の米国特許第6,749,777号に開示されているような色シフト・フレークであっても、Phillipsに対する米国特許第6,818,299号、およびCoulterらに対する米国特許第6,586,098号に開示されているような反射フレーク、磁気反射フレークまたは磁気色シフト・フレークであってもよい。
【0037】
アプリケーションによっては、反射フレークは着色媒体中で使用されることが好ましい。色シフト・フレークおよび反射フレークは、いずれも観察角度によって変化する光学効果を提供している。
【0038】
光学的可変インクは、リソグラフィ印刷、フレキソ印刷、凸版印刷、凹版印刷、グラビア印刷、スクリーン印刷、インク・ジェット印刷などの様々な印刷プロセス、および静電印刷によるプロセスに利用することができる。
【0039】
本発明の教示によれば、物体に直接OVインクが塗布されるが、これは物体の表面がインク、ペイントまたはラッカーで覆われ得ることを意味しており、それは物体の一部であると理解される。「物体に直接塗布される」という表現は、物体とは別の基板にOVインクを塗布し、その後このインクで覆われた基板を物体に結合することと対立する意味を有している。「直接塗布される」という表現は、OVコーティングと、本発明による方法によって保護または装飾すべき物体の基板との間に、他の基板が配置されないことを意味している。
【0040】
本発明による方法によれば、サイズの大きい物体および紙、プラスチック、金属などでできた物体を始めとする広範囲にわたる様々な物体の上にセキュリティ・ラベルを形成することができる。これは、上で説明した、重合体基板の上にセキュリティ・ラベルを形成し、次に、物体にラベルを結合する従来の方法と比較すると、著しい発展である。
【0041】
本発明によれば、パターン化された構造を接着剤を使用してOVインクのコーティングに接着結合することによって、物体の表面にセキュリティ・ラベルが形成される。接着剤は、エネルギー活性化接着剤であってもよい。
【0042】
本出願においては、「エネルギー活性化接着剤」という用語は、硬化させるためのエネルギー源を必要とする結合物質を意味している。エネルギー活性化接着剤には、それらに限定されないが、ホット・スタンプ接着剤、UVまたは電子ビーム活性化接着剤、熱可塑性および熱硬化性接着剤、ペイント・ベース重合体合成物、ワニスおよび着色合成物がある。一例として、接着剤は、ポリメタクリレート、ポリアクリレート、ポリアミド、ニトロセルロース、アルキド樹脂、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセテートおよびポリウレタンのグループから選択される。
【0043】
接着剤を活性化させる方法には、ホット・スタンプ、UV硬化、熱、圧力または電子ビームの印加がある。簡潔にするために、エネルギー活性化接着剤、場合によっては特殊な粒子を含有したエネルギー活性化接着剤を、以下、「接着剤」と呼ぶ。
【0044】
接着剤は、表面全体にわたってパターンで印刷することができ、あるいはフラッド・コートすることができる。パターン化される場合、製品を無傷で物理的に除去することができないため、製品が改竄される恐れがますますなくなる。また、溶剤を使用した接着剤の溶解によるデバイスの除去を試行しても、溶剤によってハードコート/リリースが同様に冒され、延いてはデバイスが破壊され、改竄が明らかになるため、その行為は不利益となろう。
【0045】
接着剤は、パターン化された構造に塗布されることが好ましいが、本発明の異なる実施形態では、2つの表面を一体に結合する前に、パターン化された構造またはOVインクのいずれか一方または両方に接着剤を塗布し、硬化させることも可能である。
【0046】
本出願で開示される方法には、パターン化された構造が利用されている。パターン化された構造は、本発明の一実施形態では、基板上のパターン化コーティングからなっている。基板は、任意選択で、OVインクを使用して印刷された物体の表面にセキュリティ・ラベルを形成するプロセスで除去することができる。
【0047】
他の実施形態では、パターン化された構造は、回折格子などの回折パターン、屈折パターン、二次元および三次元ホログラフィ・イメージなどのホログラフィ・パターン、デメタライズ化ホログラム、屈折率が変化するコーティング、その中またはその上に屈折フレークを備えた光透過誘電体コーティング、Kinegramデバイス、Pixelgramデバイス、コーナ・キューブ・リフレクタ、ゼロ次数回折構造、モアレ・パターン、および約0.1μmから約10μmまでの寸法を有する微細構造に基づく光干渉パターンを始めとする従来の回折構造の様々な形態を取ることができる。
【0048】
本発明の一実施形態では、ポリ塩化ビニルまたはポリメタクリレートなどの材料でできたエンボス可能樹脂層に回折構造がエンボスされている。エンボス可能層は、ハードコート/リリース層の機能を提供することも可能である。エンボスは、パターン化されたエンボスまたは連続エンボスのいずれかであってもよい。
【0049】
本発明の他の実施形態では、回折構造は、光透過性の基板または本質的に透明な基板であることが好ましい基板に形成された回折格子を備えている。基板は、タイプG PET、ポリカーボネート・オリエンテッド・ポリプロピレン(OPP)、ポリ塩化ビニルまたは他の適切なプラスチック材料を使用して作製することができる。一例として、PET層は、6〜25ミクロンの厚さを有している。
【0050】
別法としては、パターン化された構造は、Miekkaらに対する特許第5,624,076号および第5,672,410号に開示されているエンボス金属粒子または光学スタック・フレークによって形成されたホログラフィ・パターンを備えている。別法としては、エンボス粒子は、金属−誘電体顔料であってもよい。
【0051】
上記の構造は、ホログラフィ効果の可視度を改善するために、任意選択で、Alまたは他の金属などの高反射金属であるか、あるいはZnS、TiO2またはZrO2でできた高屈折率層のいずれかである何らかの形態の反射材料を下側に有している。
【0052】
物体の表面に形成されるセキュリティ・ラベルは、パターン化された構造の側面から見えるように設計されるため、下を覆っているOVコーティングによって提供されるOV効果を目で見ることができるようにするためには、パターン化された構造は、光透過領域を有していなければならない。
【0053】
本発明の一実施形態では、回折構造は、1つまたは複数の光透過領域すなわちウインドウを有する、パターン化された不透明層を備えており、回折構造の側面からデバイスを見ると、光学的可変コーティングによって提供される光学効果を前記ウインドウを通して目で見ることができる。光学的可変の背景を備えた高反射ホログラフィ・イメージを提供するためには、ウインドウ化されたコーティングは、反射性であることが好ましい。
【0054】
回折構造の下方の反射層は、当業者に知られているように、デメタライズ化によってパターン化することができる。デメタライズ化層は、Al、Cu、Niおよび他の金属ならびにデメタライズ化によってパターン化済みの金属合金を使用して作製することができる。いずれもレリーフ・イメージと重畳した状態で実施されることが好ましい真空中での化学エッチングまたはオイル・アブレーションなどの様々な技法を使用して金属層をパターン化することができる。
【0055】
デメタライズ化方式により、複雑なレース様パターンならびに比較的幅の広いウインドウを備えたパターンを作製することができる。レース様パターンは、たとえば金属ペンによる再現がより困難であるが、よりサイズの大きいウインドウ、一例として少なくとも1mm幅、好ましくは少なくとも5mm幅のウインドウによってOV背景の大部分を目で見ることができる。
【0056】
図1に示す本発明の一実施形態では、セキュリティ・ラベルを形成するために使用されるパターン化された構造は、ウインドウ化された反射層を備えた回折構造である。図1に示す構造は、接着層62を備えた物体24に回折構造を接着結合したものである。物体24は、基板64の表面に加えられた、中にOVフレーク35が懸濁したキャリヤ34のOVコーティングを有している。回折構造は、樹脂/ハードコート層であってもよい基板12の上に形成されている。基板12は、その上に、高反射コーティング16のパターンが部分的にコーティングされた回折格子14を有している。高反射コーティング16は、回折格子14の一部と接触しており、光の通過を阻止している。樹脂層12は、任意選択で、不透明な印(indicia)19が印刷された保護光透過層28で覆われている。好ましくは、回折格子14は、基板12にエンボスされ、パターン化されたデメタライズ化アルミニウム16で覆われ、次に、そのデメタライズ化ホログラムが透明ホット・スタンプ接着剤62を使用して物体24にホット・スタンプまたはホット・ロール・ニップされる。ホログラムの非コーティング部分は、実質的に光透過性である。
【0057】
反射層16は、エンボスされ、かつ、反射材料で覆われた1つまたは複数の領域100を基板12がその上に有するよう、ウインドウ化されていることが好ましい。前記領域は、図2に示す、アルミニウムで覆われていない、エンボスすることができる領域であっても、あるいはエンボスすることができない領域であってもよい領域17によって分離されている。
【0058】
図1に示す構造を上から見ると、この構造は、色シフト背景が見えるウインドウを有する高反射ホログラフィ・イメージを提供する。印刷された印によって結合光学効果が強化される。
【0059】
容易に領域全体をエンボスし、反射層をパターン化し、続いて光整合接着剤を塗布することができるため、反射層16はパターン化されることが好ましい。別法としては、連続反射コーティングが一方の側へシフトされる。得られる構造は、イメージの高反射ミラー様部分を追加光学効果として提供する平らな反射コーティングを非エンボス領域の上に有している。
【0060】
図3を参照すると、本発明の他の実施形態では、物体または基板68は、銀行券または他の任意のタイプのセキュリティ文書である。セキュリティ構造は、色シフト・インクを背景色として銀行券68に印刷し、次に、好ましくは樹脂/ハードコート層12にエンボスされ、かつ、キャリヤ・シート66によって支持されたデメタライズ化ホログラムを透明ホット・スタンプ接着剤62を使用してインクの上にホット・スタンプすることによって形成される。
【0061】
接着剤62は、色シフト・インクの色を修正するために、あるいは秘密のセキュリティ特徴として、任意選択で他の粒子またはフレークを含有している。一例として、接着剤62は、Argoitiaらによる米国特許出願第20050037192号に開示されているような蛍光物質、つまり秘密のチャーム、マイカをベースとする干渉フレークなどのアップシフト蛍光体、干渉顔料、および非シフト顔料または染料を含有することができる。隠されたフレークは、顕微鏡で検出することができるが、蛍光物質およびりん光体の場合、UV光またはIR光によるデバイスの照射が、それらの特性を活性化させる必要がある。樹脂/ハードコート層12は極めて薄く、3ミクロン未満であることが好ましいため、UV光またはIR光は、接着剤62中の粒子まで侵入することができる。図3には、リリース層、樹脂層およびハードコートは、これらの3つの層の各々の機能を提供する1つの層12として示されている。他の実施形態では、層12は、エンボスのための樹脂層、キャリヤ・シート66からデメタライズ化ホログラムを解放するためのリリース層、および転送デバイスの耐久性を維持するためのハードコート層の個々の層の任意の組合せに置き換えられる。
【0062】
図4に示す本発明の他の実施形態では、上で説明した実施形態の場合と同様、2つの構造を一体に結合するために使用されるホット・スタンプ接着剤40に、肉眼では見ることができない隠されたフレーク45が混入されている。隠されたフレークの例は、以下のものに限定されないが、参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2006/0035080号に教示されているチャーム(charm)またはタガント(taggant)、米国特許出願公開第20060035080号に開示されている整形顔料、磁気フレーク、蛍光顔料、可視光を形成するために活性化される標準UV、または可視光を形成するために活性化される専用反ストークス材料UVを含む。
【0063】
これらの隠されたフレークは認証手段として機能している。隠されたフレークが、この構造によって提供されるホログラフィ効果以外に、たとえば顕微鏡の下で、あるいは活性化されたIRの下で光学効果を提供する場合、Alコーティングがないウインドウを通して、色シフト背景上で隠されたフレーク45を見ることができる。他の実施形態では、上から見るとOVホイル・カラーが修正されるよう、低濃度の光学的可変フレークが接着剤40に添加されている。
【0064】
図4に示す構造は、上から見ると、パターン14によって形成される高反射ホログラフィ・イメージ、およびウインドウの中で見ることができる色シフト背景を提供している。隠されたフレーク45は、UV光またはIR光中で見ることができ、あるいは顕微鏡で見ることができる。隠されたフレークは、色シフト背景上のウインドウ内に出現する。基板64が透明であるかあるいは光透過性である場合、基板64を通して、アルミニウム16が存在している部分では弱い反射ホログラムを伴う色シフトを、また、アルミニウム16が存在していない部分では印19を見ることができる。
【0065】
図5に示す本発明の一実施形態では、回折構造は、光透過ハードコート/樹脂層70にエンボスされたレリーフ・パターン14によって形成される光透過ホログラム、および接着層62とエンボス・レリーフ・パターン14の間に配置された、接着剤62と樹脂70の間の屈折率整合を防止するための高屈折率層50を備えている。高屈折率層50は、屈折率が1.65以上の材料でできており、一例として高屈折率層は、ZnS、TiO2、ZrO2などを使用して作製することができる。
【0066】
セキュリティ・ラベルを形成する場合、高屈折率コーティング50および接着剤62で覆われたレリーフ14を備えた樹脂層70でできた回折構造が、OVインク、たとえば色シフト・インクのコーティングを有する物体24に結合される。任意選択で、除去可能基板の上に回折構造を形成することができ、あるいは樹脂/ハードコート層70を回折構造のための基板として機能させることができる。回折構造は、ホット・スタンプによって物体に結合されることが好ましく、また、接着剤62は、ドライ・ホット・スタンプ接着剤であることが好ましい。
【0067】
動作としては、この実施形態に従って形成されたセキュリティ・ラベルが光で照射されると、樹脂層70と高屈折率層50を分けている表面で光の一部が反射し、非OVホログラフィ・イメージが形成される。光の他の部分は、高屈折率層50および接着剤62を透過してOVコーティングまで伝搬し、樹脂層70の頂部表面に向かって反射して戻る。その際に、OVコーティングから色シフト効果ならびにホログラフィ・イメージを運ぶ。したがって、セキュリティ・ラベルは、光学的可変構造の効果と回折構造の効果を結合することによって色シフト・ホログラフィ・イメージを提供しており、視覚効果は、光学的可変インクで反射する光と回折構造で回折する光の間の相互作用によって生成される。
【0068】
本発明の他の実施形態では、回折構造は、図5に示す高屈折率層50と置き換わった半透明反射層を備えている。この実施形態によって提供される光学効果は、図5に示す、高屈折率層を備えた実施形態による前述の効果と極めて類似している。
【0069】
図6に示す本発明の他の実施形態では、回折構造は、ハードコート/樹脂層70によって支持された、あるいはハードコート/樹脂層70中に形成された回折格子14、パターン化された反射層16および高屈折率材料50の層を備えている。セキュリティ・ラベルは、OVインクで覆われた物体24の上にこの回折構造をホット・スタンプすることによって形成される。図7は、物体、たとえば印刷された銀行券の表面にこのようなセキュリティ・ラベルを形成するプロセスを略図で示したものである。
【0070】
この構造は、上から見ると、図6に示すように、光学効果の組合せを備えたイメージを提供する。イメージの一部は、不透明金属層16で反射する光によって形成される鏡のようなホログラフィ・イメージである。イメージのこの部分と、反射層16がウインドウを有している領域で反射する光によって形成される色シフトする鏡のようなホログラフィ・イメージは互いに相補をなしており、したがってイメージの対応する部分は、光学的可変インクで反射する光と高屈折率層を有する回折構造で回折する光の間の相互作用によって生成され、回折構造とOVコーティングの両方によって提供される光学効果を示す。
【0071】
図6に示す構造と類似した、高屈折率コーティングのない構造では、反射層16がウインドウを有している領域は、ホログラフィ効果が極めて微弱であるか、あるいはホログラフィ効果がない。接着剤62と樹脂層70の屈折率が完全に整合している場合、ホログラフィ効果を見ることはできない。これは、ホログラムの非アルミニウム部分の下を覆っているコーティングと接着剤の間の屈折率整合の度合いに大いに依存している。屈折率の実部の屈折率差が少なくとも0.2である場合、若干のホログラフィ効果を見ることができる。屈折率差が大きいほど、より鮮明なホログラムを見ることができる。一例として、n=1.5の基板とn=2.3の高屈折率コーティングの間の屈折率差0.8は、透明ホログラムの輝度を提供している。
【0072】
図5および6を参照すると、高屈折率コーティング50は、1.65以上の屈折率を有している。このような高屈折率透明層の適切な例には、TiOまたはZnSがある。
【0073】
上で説明した、回折構造が半透明反射層または高屈折率層を備えている実施形態では、ラベルによって形成されるホログラフィ・イメージの少なくとも一部は、色シフト・ホログラフィ・イメージである。ホログラフィ・イメージの色シフト部分は、回折構造で回折する光とOVコーティングで反射する光の相互作用によって形成される。したがって、イメージのこの部分は、ホログラフィ効果と光学的可変効果の共同作用を示す。回折光と薄膜干渉光の相互作用によって得られる色を回折色に加え、あるいは回折色から減じることができ、観察角度を関数とする固有の光スペクトルが得られる。
【0074】
本発明の他の実施形態では、2つの構造を一体に結合するために、ホット・スタンプの代替としてUV活性化接着剤が使用される。一例として、色シフト・インクが印刷され、かつ、インクの上に接着剤が印刷された物体または基板と、デメタライズ化ホログラムを含んだ積層シートが一体にされ、次に、積層シートにUV光または電子ビームを照射することによって接着剤が硬化される。積層シートは、透明または少なくともUV透過性の基板を有している。ホログラムを覆っている反射金属によってもたらされるUV光に対する障害を解決する方法の1つは、UV光を一定の角度で入射させることによって接着剤を硬化させることができるよう、金属で覆われた領域が極めて狭く、2ミクロン未満であると推定される、パターン化またはウインドウ化された反射層を使用することである。もう1つの方法は、電子ビーム硬化を使用することである。別法としては、半透明反射層または高屈折率層は、UV光の一部を接着層を透過させることができる。
【0075】
本発明の一実施形態では、パターン化された構造が、物体または基板上の光学的可変コーティングに結合されない領域を有するよう、接着層がパターン化されている。
【0076】
本発明の他の実施形態では、物体の表面の異なる領域に接着剤およびOVインクが印刷される。また、パターン化された構造が接着剤を使用して物体に結合され、OVコーティングの周りにフレームまたはその一部が形成される。
【0077】
本発明の一実施形態では、光透過性基板をOVインクで覆い、次に、好ましくはホット・スタンプによって回折構造に接着結合することによって物品が形成される。回折構造はホログラムであり、その下を、光を反射し、かつ、光を透過させる反射層が覆っており、OVコーティングとホログラムの間に光結合を提供している。OVインクは、基板に印刷される色シフト・インクであり、結合方法はホット・スタンプであり、また、反射層は、デメタライズ化によってパターン化されたアルミニウムであることが好ましい。別法としては、反射層は、半透明金属層であるか、あるいは高屈折率誘電体コーティングである。基板は、不透明であるか、あるいは光透過性のいずれかである。
【0078】
PETでできていることが好ましい光透過性基板により、両側から観察するためのデバイスが提供される。これは、光学的可変コーティングが光透過性である場合、つまり、たとえば低密度の光学的可変フレークが組み込まれた不透明ファブリー・ペロ・フィルタを有する光透過性OVインク、または全誘電体透明光学的可変フレークに基づく光透過性OVインク、あるいはPhillipsら名義の米国特許第5,278,590号に開示されている、吸収体−スペーサ−吸収体フレークを備えたインクによって形成されている場合に有利である。OVインクで覆われた基板を通してこの構造を見ると、ホログラフィ効果と光学的可変効果の重ね合わせを目で見ることができる。つまり、アルミニウムが存在している部分では反射ホログラムが弱い色シフトを見ることができる。本質的に、最初のホログラムに存在した色の虹がOV構造によって修正されており、したがっていくつかの色が協調され、いくつかの色が抑制されている。この構造を回折構造の側から見ると、高反射ホログラフィ・イメージを見ることができ、ホログラムを覆っている反射層のウインドウの中に色シフト背景を目で見ることができる。この構造は、とりわけ、両側を見ることができる透明プラスチック基板を使用している銀行券に適合されている。
【0079】
本発明の他の実施形態では、OVインク・コーティングを備えた光学的可変ホイルがデメタライズ化ホログラムにホット・スタンプされるか、あるいは他の方法で接着結合される。別法としては、上で説明したように、半透明反射層、パターン化された高屈折率材料またはパターン化されていない高屈折率材料、あるいは高屈折率材料のコーティングでホログラムをコーティングすることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】本発明の一実施形態に従って形成されたクロマグラムの横断面図である。
【図2】図1に示すクロマグラム中のパターン化された構造の横断面図である。
【図3】銀行券の上に形成されたクロマグラムの横断面図である。
【図4】接着剤が隠されたフレークもしくは低濃度の光学的可変フレークまたは光学的可変磁気フレークを含有したクロマグラムの横断面図である。
【図5】回折格子が高屈折率材料の層によって支持されるか、あるいは高屈折率材料の層の中に形成されるクロマグラムの横断面図である。
【図6】デメタライズ化ホログラムが高屈折率材料の層によって支持されたクロマグラムの横断面図である。
【図7】図6に示すクロマグラムの形成を示す略図である。
【符号の説明】
【0081】
12、70 基板
14 回折格子
16 高反射コーティング
17 領域
19 印
24 物体
28 保護光透過層
34 キャリヤ
35 OVフレーク
40、62 接着層
45 隠されたフレーク
50 高屈折率層
64 基板
66 キャリヤ・シート
68 物体または基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体の上にラベルを形成する方法であって、前記物体の表面を光学的可変インクでコーティングするステップを含み、かつパターン化された構造を前記光学的可変インクの上から光透過接着剤を使用して前記物体に結合するステップを特徴とし、前記パターン化された構造が前記構造を介して光の伝搬を可能にし、それにより、光が照射されると、前記ラベルが光学的可変背景を有するイメージを形成する方法。
【請求項2】
前記パターン化された構造が回折構造であり、それにより、前記ラベルによって形成されるイメージが、前記回折構造によって提供される回折効果および前記光学的可変インクによって提供される光学的可変効果を示すことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記回折構造が、
半透明反射層と、
屈折率が約1.65より大きい材料でできた高屈折率層と、
前記回折構造に入射する光を前記光学的可変インクまで伝搬させるために、反射領域および前記反射領域と反射領域の間の光透過ウインドウを有するパターン化された反射コーティング
のうちの1つを備えたことを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記回折構造が、ホログラム、デメタライズ化ホログラム、回折格子、屈折パターン、Kinegramデバイス、Pixelgramデバイス、コーナ・キューブ・リフレクタ、ゼロ次数回折構造、モアレ・パターン、約0.1μmから約10μmまでの範囲の寸法を有する微細構造に基づく光干渉パターン、およびエンボス粒子または光学スタック・フレークによって形成されるホログラフィ・パターンのうちの1つを備えたことを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記物体が、紙文書、銀行券および容器のうちの1つであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記光透過接着剤が、
透明接着剤と、
その中またはその上に隠されたフレークを有する接着剤と、
顔料粒子を備えた接着剤と、
ホット・スタンプ接着剤と、
熱、紫外光または電子ビームによって活性化される接着剤と、
ポリメタクリレート、ポリアクリレート、ポリアミド、ニトロセルロース、アルキド樹脂、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセテートおよびポリウレタンのグループから選択される接着剤
のうちの1つであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記光透過接着剤のコーティングが、前記回折構造と光学的可変構造の間の少なくとも1つの領域に接着材料が存在しないようにパターン化されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記光学的可変インクが前記物体の上に印刷されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記光学的可変インクが、本質的に、その中に光学的可変フレークを有するキャリヤからなることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記光学的可変フレークが、色シフト・フレーク、反射フレーク、磁気反射フレークおよび磁気色シフト・フレークのうちの1つであることを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記キャリヤが着色されたキャリヤであることを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記光学的可変インクが磁気光学的可変フレークまたは磁気粒子を含有していることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項13】
基板と、
前記基板に塗布された光学的可変インクのコーティングと、
光学的可変インクの前記コーティング上の前記基板に接着結合された回折構造と、
前記回折構造を前記基板に結合するための接着層とを備えた物品であって、
前記回折構造が反射層を備え、前記物品に光が照射されると、光の第1の部分が前記反射層で反射し、光の第2の部分が前記反射層を介して光学的可変インクの前記コーティングまで伝搬し、
前記反射層および光学的可変インクの前記コーティングでそれぞれ反射した後の光の前記第1および第2の部分が、光学的可変の特徴を有する鏡のようなイメージを形成することを特徴とする物品。
【請求項14】
前記反射層が、
半透明反射層と、
デメタライズ化によってパターン化された反射層と、
1つまたは複数の領域に反射材料を有しないセグメント化された反射層
のうちの1つであり、前記回折構造が光で照射されると、前記1つまたは複数の領域が光を前記光学的可変インクの前記コーティングまで通過させ、一方、前記回折構造の他の領域が光を反射して光の通過を阻止することを特徴とする請求項13に記載の物品。
【請求項15】
前記回折構造が、ホログラム、回折格子、屈折パターン、Kinegramデバイス、Pixelgramデバイス、コーナ・キューブ・リフレクタ、ゼロ次数回折構造、モアレ・パターン、約0.1μmから約10μmまでの範囲の寸法を有する微細構造に基づく光干渉パターン、エンボス粒子または光学スタック・フレークによって形成されるホログラフィ・パターン、および前記回折構造と前記接着層の間に配置された、屈折率が約1.65より大きい材料でできた高屈折率層のうちの1つを備えたことを特徴とする請求項13に記載の物品。
【請求項16】
前記基板が、紙基板、プラスチック基板、厚紙基板および金属基板であることを特徴とする請求項13に記載の物品。
【請求項17】
光透過接着剤が、
透明接着剤と、
その中またはその上に隠されたフレークを有する接着剤と、
顔料粒子を備えた接着剤と、
ホット・スタンプ接着剤と、
熱、紫外光または電子ビームによって活性化される接着剤と、
ポリメタクリレート、ポリアクリレート、ポリアミド、ニトロセルロース、アルキド樹脂、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセテートおよびポリウレタンのグループから選択される接着剤
のうちの1つであることを特徴とする請求項13に記載の物品。
【請求項18】
光透過接着剤のコーティングが、前記回折構造と光学的可変構造の間の少なくとも1つの領域に接着材料が存在しないようにパターン化されることを特徴とする請求項13に記載の物品。
【請求項19】
前記接着層が前記光学的可変インクのない領域のみで前記基板と隣接し、前記回折構造が圧力によって光学的可変インクの前記コーティングに結合されることを特徴とする請求項18に記載の物品。
【請求項20】
光学的可変インクの前記コーティングが前記基板に直接塗布されることを特徴とする請求項13に記載の物品。
【請求項21】
光学的可変インクの前記コーティングの下方の前記基板の上に追加コーティングが配置され、前記追加コーティングが、インク、ペイントまたはラッカーのコーティングであることを特徴とする請求項13に記載の物品。
【請求項22】
前記光学的可変インクが、本質的に、その中に色シフト・フレークを有するキャリヤからなることを特徴とする請求項13に記載の物品。
【請求項23】
前記光学的可変インクが、本質的に、その中に反射フレークを有する着色キャリヤからなることを特徴とする請求項13に記載の物品。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2007−304601(P2007−304601A)
【公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−127435(P2007−127435)
【出願日】平成19年5月11日(2007.5.11)
【出願人】(502151820)ジェイディーエス ユニフェイズ コーポレーション (90)
【氏名又は名称原語表記】JDS Uniphase Corporation
【住所又は居所原語表記】1768 Automation Parkway,San Jose,California,USA,95131
【Fターム(参考)】