説明

ホログラムラベル

【課題】土壌中に埋め立て処理することにより、容易に生分解処理できる生分解性ホログラムシールであり、使用済みのシールを廃棄処理する際の美観上の問題に加えて生態系への悪影響を解消するためのものであるが、粘着剤に生分解性のない樹脂を使用していたため、ホログラム画像がいつまでも残存するという課題があった。
【解決手段】生分解性を有するプラスチックフィルム1(又はシート)上に、反射性薄膜及びホログラムレリーフ、その上に生分解性粘着層をこの順序で形成することにより、いつまでもホログラム画像が残らず、ラベル全体が速やかに分解する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鮮明なホログラム画像が形成でき、しかも使用済みとなった後の廃棄処理が容易であって廃棄処理による公害の心配が無く、自然環境に悪影響のない環境にやさしいホログラムラベルにに関し、さらに詳しくは、ホログラムラベルを構成する基材、粘着剤いずれもが生分解性を有し、廃棄処理後速やかに全てが分解するホログラムラベルに関するものである。
【0002】
本明細書において、配合を示す「部」は質量基準である。また、「ホログラム」はホログラムと、回折格子などの光回折性機能を有するものも含む。
【背景技術】
【0003】
(主なる用途)本発明のホログラムラベルの主なる用途としては、偽造防止分野や意匠用途などに使用されるホログラムラベルであって、具体的には、商品券、金券、カード類、景品、製造メーカー純正品であることを証明する真正証明ラベルなど、もしくは、ラベルを貼付することで意匠性を高めたり、商品が高価であることを示すなど、その商品の付加価値を高める分野などに関し、特に、使用済み後の廃棄処理に環境への影響を配慮すべき、もしくは配慮している分野に好適である。
【0004】
(背景技術)光の干渉を利用して立体画像を再生するホログラムは、高度な製造技術を要するすると共に、様々な形態、例えば、ラベル、シールや箔状に形成可能なことから、これを応用した偽造防止手段として、商品券、ギフト券、各種証明書、身分証明書などの各種カード類、書籍、デジタルビデオディスクなどの著作物、スポーツ用品、ブランド品や、トナーカセットなどの純正材料に使用を限定している製品などの各種商品に貼着して使用されている。
【0005】
このようにホログラムは一見して本物か偽造であるかの判定に好適であり、しかも製造が困難であることから偽造防止用として、またセキュリティ性付与のために広く利用されている。また、上記のようにホログラムは立体的な画像が表示でき、また高級感も得られるため、一般の商品にも広く使用されている。
【0006】
これらのホログラムを利用した製品、特にラベルやシールなどとして使用されているホログラム製品は、当該ホログラムが貼着される対象商品が使用済みになると、この商品と共に廃棄処理される。ホログラムを貼着する対象商品そのものが環境を配慮して、環境にやさしい素材へとその構成を改良してきている。そのため、ホログラム製品も環境に配慮した素材とする必要が生じている。
【0007】
(先行技術)
これらの要求に応えるため、ホログラムを形成する基材・フィルムに、生分解性と透明性を有するプラスチックフィルム又はシートを使用し、そのホログラム製品が土壌中に埋め立てられた際に、自然に分解していくように作られているものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0008】
しかし、このプラスチックフィルム又はシート上に形成するホログラム形成材料そのものには、ホログラム性能を考慮して、紫外線や電子線硬化性樹脂などの熱硬化性樹脂が使用されており、土壌中に埋め立てられても、そのプラスチックフィルム又はシートのみが分解し、ホログラム形成材料は分解しない。すなわち、ホログラム画像は分解せず残るという欠点がある。
【0009】
この問題に対応するため、ホログラム形成材料そのものを、生分解性とすべく、生分解性プラスチックそのものにホログラムレリーフを形成し、土壌中に埋め立てた際、ホログラム画像が分解するホログラムラベルが開発されている。(例えば、特許文献2参照。)。
【0010】
しかしながら、このホログラムラベルも、粘着剤が生分解性でないため、土壌中に埋め立てられても、そのホログラム形成層であるプラスチックフィルム又はシートのみが分解し、粘着剤及び、その粘着剤に密着しているホログラム反射性薄膜層は分解しない。すなわち、依然として、ホログラム画像は分解せずいつまでも残るという欠点がある。
【0011】
【特許文献1】特開2007−79299号公報
【特許文献2】特開平8−211266号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
そこで、本発明はこのような問題点を解消するためになされたもので、その目的は、土壌中に埋め立てられた時、ホログラムラベルを構成する反射性薄膜層を担持する全ての材料が速やかに分解し、ホログラム画像が速やかに消滅する、環境配慮性に優れ、且つ、偽造防止性や、高い意匠性を有するホログラムラベルを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の課題を解決するために、
本発明のホログラムラベルの第1の態様は、透明な生分解性を有するプラスチックフィルム又はシートのその一方の面にホログラムレリーフ及び、そのホログラムレリーフに接して反射性薄膜が形成され、さらにその上もしくは、透明な生分解性を有するプラスチックフィルム又はシートのその反対の面に、生分解性を有する樹脂からなる粘着剤が形成されていることを特徴とするものである。
【0014】
上記第1の態様のホログラムラベルによれば、土壌中に埋め立てられた時、透明な生分解性を有するプラスチックフィルム又はシート(以後「ホログラム形成層)ともいう。)が生分解を開始し、これと同時に、粘着剤も生分解を開始する。この分解は、ホログラム形成層及び粘着剤が土壌と接している面(露出面及び側面)から、層の中心に向かって進むとともに、両層と反射性薄膜との界面に沿っても進行する。粘着剤は、被貼着体に接しているため、主としてこの界面に沿って分解が進行する。
【0015】
なお、反射性薄膜は生分解性を持たないものの、薄膜そのものだけでは、そのレリーフ形状を維持することができないため、その薄膜に接しているホログラム形成層や、粘着剤の表面部分が分解するだけで、ホログラムが劣化する。すなわち、ホログラム形成層や、粘着剤全体がまだ分解していない段階であっても、両層が薄膜に接している界面の分解が進むことによって、反射性薄膜のホログラムレリーフ形状が損なわれる。これにより、ホログラムの再現性が損なわれ、ホログラム画像が消失することになる。
【0016】
また本発明のホログラムラベルの第2の態様は、上記第1の態様のホログラムラベルにおいて、ホログラム形成層と、粘着剤とが、生分解性を有する同一の樹脂系からなることを特徴とするものである。
【0017】
上記第2の態様のホログラムラベルによれば、土壌中に埋め立てられた時、ホログラム形成層と粘着剤とが同一の樹脂系であるため、その土壌のバクテリア種等がいかなるものであっても、同様の生分解が始まり、同様の速さで生分解が進行する。
【0018】
ここで、ホログラム形成層と粘着剤との樹脂系が異なることにより、埋められた土壌中のバクテリア種等による生分解の状況が、ホログラム形成層と粘着剤とで大きく異なると、一方の層が生分解を完了しても他方の層がいつまでも残り、ホログラムを再現する反射性薄膜がいつまでもその形状を維持し続けるという現象が発生する。また、反射性薄膜の一方の面のみの樹脂が無くなった後、劣化していないレリーフ形状が剥き出しになることで、ここからホログラムレリーフを複製するような不正行為を招くことにもなる。
【0019】
この現象を解消するため、ホログラム形成層と、粘着剤を同一の生分解性樹脂系とし、その分解性を同質のものとして、両層の生分解を同時に開始させるだけでなく、同様の速やかさとした。この分解は、反射性薄膜の上下の界面に沿っても進行し、樹脂層全体の分解を待つことなくホログラムレリーフ形状の変形・劣化が進行する。
【0020】
反射性薄膜そのものは、生分解性を持たないが、薄膜そのものだけでは、そのレリーフ形状を維持することができず、薄膜の上下の層が劣化することにより、そのレリーフ形状の変形・劣化が進行するため、この変形・劣化は、各層の厚さ方向の分解速度より、各層の表面(界面)に沿った分解速度に左右される。このことより各層に用いられる樹脂の重合度や厚さの調節でなく、組成そのものを同一系とすることによりその目的を達成できる。
【発明の効果】
【0021】
本発明のホログラムラベルの第1の態様によれば、土壌中に埋め立てられた時、ホログラムラベルを構成する反射性薄膜層を担持する全ての材料が速やかに分解し、ホログラム画像が速やかに消滅するので、環境配慮性に優れ、且つ、偽造防止性や、高い意匠性を有するホログラムラベルが提供されるという効果がある。
【0022】
また本発明のホログラムラベルの第2の態様によれば、ホログラム形成層と粘着剤とが同一の生分解性プラスチックなので、第1の態様の効果に加えて、全ての材料が速やかに、且つ同様に分解し、ホログラム画像が速やかに消滅するという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら、詳細に説明する。
図1は、本発明の実施形態の一例を示すホログラムラベルAの断面図である。
図2は、本発明の実施形態の別の例を示すホログラムラベルA´の断面図である。
【0024】
(透明な生分解性を有するプラスチックフィルム又はシート)本発明のホログラムラベルA、A´で使用される透明な生分解性を有するプラスチックフィルム又はシート1は、
化学合成系として、ラクトン系樹脂:εーカプロラクトン、4−メチルカプロラクトン、3,5,5−トリメチルカプロラクトン、3,3,5−トリメチルカプロラクトン、βープロピオラクトン、γーブチロラクトン、δーバレロラクトン、エナントラクトンの単独重合体またはこれら2種以上のモノマーの共重合体、これらの混合物、ポリカプロラクトンが好適である。
【0025】
もしくは、ポリブチレンサクシネート系樹脂:ポリブチレンサクシネート・アジペート、ポリブチレンサクシネートとポリカプロラクトンとの混合物、ポリブチレンサクシネートとポリブチレンサクシネート・アジペートとの混合物、ポリブチレンサクシネート・アジペートとポリ乳酸との混合物、もしくは、ポリ乳酸、ポリ乳酸とD−乳酸との混合物など、もしくは、低分子量脂肪族ジカルボン酸と低分子量脂肪族ジオールより合成したポリエステル樹脂、例えばコハク酸とブタンジオール、エチレングリコールとの組み合わせや、シュウ酸とネオペンチルグリコール、ブタンジオール、エチレングリコールとの組み合わせなど、変性ポリビニルアルコールと脂肪族ポリエステル樹脂と澱粉の混合物、低分子量脂肪族ポリエステルに脂肪族イソシアネートを添加して重合させたものなどが好適である。
【0026】
天然物系としては、ゼラチンなどの動物性天然物質、セルロースなどの植物性天然物質など:澱粉脂肪酸エステル、澱粉キトナン・セルロースなど、微生物生産系として、ポリヒドロキシブチレートや、ポリエステル系:炭素源として3−ヒドロキシプロピオン酸、4−ヒドロキシ酪酸、γ―ブチロラクトンをベースとするP(3HB−CO―4HB)、炭素源としてプロピオン酸、吉草酸をベースとしたP(3HB−CO―3HV)などが好適である。
【0027】
また、ポリ乳酸、ポリブチレンサクシネート・テレフタレート共重合体、分子量が数十万を越えるポリエステル系樹脂、菌体内にポリ(3−ヒドロキシ酪酸)ホモポリマーを顆粒状態で蓄積しこれを取り出した高結晶性ポリエステルなども使用される。
【0028】
透明な生分解性を有するプラスチックフィルム又はシート1の厚さは、10μm〜200μm、特に、20μm〜40μmが好適。厚さが大きくなるとそれだけ廃棄処理量が多きくなることに加え、光学的なロス(光透過率の減少、光散乱性の増大)も増えてしまうため、可能な限り厚さを小さくすることが望ましい。
【0029】
(反射性薄膜)本発明のホログラムラベルA、A´では、透明な生分解性を有するプラスチックフィルム又はシート1の一方面に、反射性薄膜2を形成する。この薄膜は、入射した光を反射する必要があるため、透明な生分解性を有するプラスチックフィルム又はシート1よりも高い屈折率を有する薄膜であれば、特に限定されない。
反射性薄膜2としては、真空薄膜法などにより形成される金属薄膜などの金属光沢反射層、又は透明反射層のいずれでもよいが、金属光沢反射層を部分的に設けたり、透明反射層を設けた場合は、ラベル貼着後にそのラベルに覆われた被貼着体上の画像などがホログラムを通して観察できるので好ましい。
【0030】
透明反射層としては、ほぼ無色透明な色相で、その光学的な屈折率がホログラム形成層のそれとは異なることにより、金属光沢が無いにもかかわらず、ホログラムなどの光輝性を視認できることから、透明なホログラムを作製することができる。例えば、ホログラム形成層(本発明では、透明な生分解性を有するプラスチックフィルム又はシート1に該当する)よりも光屈折率の高い薄膜、例として、ZnS、TiO2、Al23、Sb23、SiO、SnO2、ITOなどがある。好ましくは、金属酸化物又は窒化物であり、具体的には、Be、Mg、Ca、Cr、Mn、Cu、Ag、Al、Sn、In、Te、Ti、Fe、Co、Zn、Ge、Pb、Cd、Bi、Se、Ga、Rb、Sb、Pb、Ni、Sr、Ba、La、Ce、Auなどの酸化物又は窒化物他はそれらを2種以上を混合したものなどが例示できる。またアルミニウムなどの一般的な光反射性の金属薄膜も、厚みが20nm以下になると、透明性が出て使用できる。
【0031】
透明金属化合物の形成は、金属の薄膜と同様、透明な生分解性を有するプラスチックフィルム又はシート1の一方面に、10〜2000nm程度、好ましくは20〜1000nmの厚さになるよう、蒸着、スパッタリング、イオンプレーティング、CVD(化学蒸着法)などの真空薄膜法などにより設ければよい。特にCVD法は透明な生分解性を有するプラスチックフィルム又はシート1への熱的ダメージが少ない。また、他の薄膜形成法を用いても、形成する薄膜層を薄くしておくと、その熱的ダメージを少なくすることができる。例えば、AL蒸着層であれば、形成条件によるが、ほぼ20nmが透明性が無くなり全反射性を出現する臨界点である。この厚さは薄膜材料、形成方法、金属加熱温度・真空度等の形成条件により異なる。
【0032】
(ホログラム)次に、この反射性薄膜形成層及び、透明な生分解性を有するプラスチックフィルム又はシート1に、ホログラムなどの光回折効果の発現する所定の微細な凹凸(レリーフ構造)を賦型する。ホログラムは物体光と参照光との光の干渉による干渉縞を凹凸のレリーフ形状で記録されたもので、例えば、フレネルホログラムなどのレーザ再生ホログラム、及びレインボーホログラムなどの白色光再生ホログラム、さらに、それらの原理を利用したカラーホログラム、コンピュータジェネレーティッドホログラム(CGH)、ホログラフィック回折格子などがある。また、マシンリーダブルホログラムのように、
その再生光を受光部でデータに変換し所定の情報として伝達したり、真偽判定を行うものであってもよい。
【0033】
微細な凹凸を精密に作成するため、光学的な方法だけでなく、電子線描画装置を用いて、精密に設計されたレリーフ構造を作り出し、より精密で複雑な再生光を作り出すものであってもよい。このレリーフ形状は、ホログラムを再現もしくは再生する光もしくは光源の波長(域)と、再現もしくは再生する方向、及び強度によってその凹凸のピッチや、深さ、もしくは特定の周期的形状が設計される。凹凸のピッチ(周期)は再現もしくは再生角度に依存するが、通常0.1μm〜数μmであり、凹凸の深さは、再現もしくは再生強度に大きな影響を与える要素であるが、通常0.1μm〜1μmである。
【0034】
単一回折格子のように、全く同一形状の凹凸の繰り返しであるものは、隣り合う凹凸が同じ形状であればある程、反射する光の干渉度合いが増しその強度が強くなり、最大値へと収束する。回折方向のぶれも最小となる。立体像のように、画像の個々の点が焦点に収束するものは、その焦点への収束精度が向上し、再現もしくは再生画像が鮮明となる。
さらに、透明金属化合物薄膜の場合は、その薄膜の上下の面が、同一レリーフ形状であり且つ、その面と面の距離(すなわち膜厚さ)が均一であればあるほど、再現もしくは再生強度が大きくなる。また、レリーフ面にホログラム画像の凹凸とは異なる周期、形状の凹凸が存在すると、それはホログラムもしくは回折格子の再現もしくは再生時のノイズとなり、画像を不鮮明にする要因となる。
【0035】
レリーフ形状を賦形(複製ともいう)する方法は、回折格子や干渉縞が凹凸の形で記録された原版をプレス型(スタンパという)として用い、上記透明な生分解性を有するプラスチックフィルム又はシート1及び反射性薄膜2上に、前記原版を重ねて加熱ロールなどの適宜手段により、両者を加熱圧着することにより、原版の凹凸模様を複製することができる。形成するホログラムパターンは単独でも、複数でもよい。
【0036】
上記の極微細な形状を精密に再現するため、また、複製後の熱収縮などの歪みや変形を最小とするため、原版は金属を使用し、低温・高圧下で複製を行う。
原版は、Niなどの硬度の高い金属を用いる。光学的撮影もしくは、電子線描画などにより形成したガラスマスターなどの表面にCr、Ni薄膜を真空蒸着法、スパッタリングなどにより5〜50nm形成後、Niなどを電着法(電気めっき、無電解めっき、さらには複合めっきなど)により50〜1000μm形成した後、金属を剥離することで作ることができる。高圧回転式の複製に用いるためには、このNi層の厚み精度を高くする必要があり、通常±10μm、好ましくは、±1μmとする。このため、裏面の研磨や、平坦化方法を用いてもよい。
【0037】
複製方式は、高圧とするため、平板式でなく、回転式を用い、線圧0.1トン/m〜10トン/m、好ましくは、5トン/m以上とする。複製用シリンダーは、その直径が小さいとレリーフの再現性が低下するため、複製シリンダー直径は大きい方が好ましく、通常、直径0.1m〜2.0m、好ましくは、1.0m以上の弧を使用する。反射性薄膜2を有する透明な生分解性を有するプラスチックフィルム又はシート1の反射性薄膜2をこの複製用シリンダーに沿って押し当て、裏面より金属製シリンダーにより上記圧力にて複製を実施する。複製後の熱収縮などの歪みや変形を最小限とするためには、透明な生分解性を有するプラスチックフィルム又はシート1全体を加熱するのではなく、反射性薄膜2面側の一部のみを加熱する方法が望ましい。通常60℃〜110℃、好ましくは、透明な生分解性を有するプラスチックフィルム又はシート1の融点〜+10℃に加熱する。さらには、裏面の金属製シリンダーを常温に保つ、もしくは冷却することで、さらにその精度を向上させることができる。
【0038】
透明な生分解性を有するプラスチックフィルム又はシート1は、通常のホログラム基材として使用される光学用透明フィルムより、その光学特性に劣るため、優れたホログラム品質を得るために、原版のレリーフはより深く、より複雑なものとなり、高いリレーフ再現性が要求される。
【0039】
(粘着層)本発明のホログラムラベルに用いられる粘着層4としては、
ラクトン系樹脂:εーカプロラクトン、4−メチルカプロラクトン、3,5,5−トリメチルカプロラクトン、3,3,5−トリメチルカプロラクトン、βープロピオラクトン、γーブチロラクトン、δーバレロラクトン、エナントラクトンの単独重合体またはこれら2種以上のモノマーの共重合体、これらの混合物、ポリカプロラクトン、もしくは、ポリブチレンサクシネート系樹脂:ポリブチレンサクシネート・アジペート、ポリブチレンサクシネートとポリカプロラクトンとの混合物、ポリブチレンサクシネートとポリブチレンサクシネート・アジペートとの混合物、ポリブチレンサクシネート・アジペートとポリ乳酸との混合物、もしくは、ポリ乳酸、ポリ乳酸とD−乳酸との混合物などが好適である。
【0040】
もしくは、低分子量脂肪族ジカルボン酸と低分子量脂肪族ジオールより合成したポリエステル樹脂、例えばコハク酸とブタンジオール、エチレングリコールとの組み合わせや、シュウ酸とネオペンチルグリコール、ブタンジオール、エチレングリコールとの組み合わせなど、変性ポリビニルアルコールと脂肪族ポリエステル樹脂と澱粉の混合物、低分子量脂肪族ポリエステルに脂肪族イソシアネートを添加して重合させたものなどが好適である。
【0041】
天然物系として、ゼラチンなどの動物性天然物質、セルロースなどの植物性天然物質など:澱粉脂肪酸エステル、澱粉キトナン・セルロースなど、微生物生産系として、ポリヒドロキシブチレートや、ポリエステル系:炭素源として3−ヒドロキシプロピオン酸、4−ヒドロキシ酪酸、γ―ブチロラクトンをベースとするP(3HB−CO―4HB)、炭素源としてプロピオン酸、吉草酸をベースとしたP(3HB−CO―3HV)などが好適である。また、イソプレン系天然ゴムに、天然ロジン(ガムロジン、ウッドロジン、トール油ロジン)、ロジンエステル(カルボン酸変性ロジンエステル等)、テルペン、ポリカプロラクトン等の粘着付与剤を加えたものなどが好適である。
【0042】
さらに、上述の脂肪酸ポリエステルに、ロジン系樹脂:ロジン、重合ロジン、水添ロジン、ロジンエステル、水添ロジンエステル、ロジンフェノール樹脂等。米国ハーキュレス社製ウッドロジン、ダイマレックスロジン、荒川化学社製エステルガムA、AAV、タマノル、播磨化成社製ハリエスターS、T、住友デュレス社製スミライトレジン等や、テルペン系樹脂:テルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂、芳香族変性テルペン樹脂等。ヤスハラケミカル社製YSレジンPx、マイティエースG、米国ハーキュレス社製ピッコライトA等を添加したものなどが挙げられる。
【0043】
これらに、多官能イソシアネート:HMDI(ヘキサメチレンジイソシアネート)等を添加し、粘着力の安定性と、反射性薄膜への高い接着力を得ることができるものを用いても良い。
【0044】
これらの粘着剤を、本発明の透明な生分解性を有するプラスチックフィルム又はシートに用いたものと同一系のものとすることにより、ホログラムラベルが廃棄処理された環境が種々異なっても、それらの二つの層の生分解性が同一であり、透明な生分解性を有するプラスチックフィルム又はシートはその表面及び断面から、また、粘着剤はその断面から同様の生分解が始まる。生分解性の異なる樹脂系とした場合には、廃棄環境により、片方の層のみの生分解が進み、反射性薄膜がその形状を留めたままとなる不具合が生じる。
【0045】
粘着剤の塗工量は、約8〜30g/m2(固形分)が一般的であり、従来公知の方法、すなわち、グラビアコート、ロールコート、コンマコートなどの方法で、塗布し乾燥して粘着剤を形成する。また、粘着剤の粘着力は、透明な生分解性を有するプラスチックフィルム又はシート1もしくは反射性薄膜2と粘着剤との剥離強度で、JIS Z0237準拠の180°による剥離方法において、5〜1,000g程度の範囲にすることが望ましい。以上の如き粘着剤の種類や、塗工量は、前記透明な生分解性を有するプラスチックフィルム又はシート1もしくは反射性薄膜2上に粘着剤を形成する際に、その剥離強度が前記範囲になるように、選択して使用することが好ましい。特に、反射性薄膜への接着性を5,00g〜1,000gとするためには、0.1%〜1%のイソシアネート添加が必要となる。
【0046】
実施形態は、上記のものに限定されず、透明な生分解性を有するプラスチックフィルム又はシート上にホログラムレリーフを形成し、その後反射性薄膜を形成してもく、また、粘着剤を、反射性薄膜と反対側に設けた場合には、その反射性薄膜が剥き出しとなることを避けるため、一般的な樹脂層からなる保護層を設けてもよい。
【実施例】
【0047】
以下、実施例及び比較例により、本発明を更に詳細に説明するが、これに限定されるものではない。なお、溶媒を除き、各層の各組成物は固形分換算の質量部である。
【0048】
(実施例1)透明な生分解性を有するプラスチックフィルム又はシート1として、ラクトン系樹脂(カプロラクトン、メチルカプロラクトン、プロピオラクトン及びブチロラクトン共重合体、数平均分子量60,000:融点95℃)厚さ40μmを使用し、この一方面に株式会社アルバック製真空蒸着機を用いて、AL薄膜50nmを形成する。並行して、レーザ光学系を用いて撮影した意匠性の高いホログラムと、複製精度評価用回折格子(ピッチ0.8μm、深さ0.3μm)10mm四方とを備えたNi原版(300μm±10μm)を用意し、そのAL薄膜面と、Ni原版のレリーフ面を合わせて、回転式レリーフホログラム形成装置(原版シリンダー径1.0m・原版面温度100℃、加圧シリンダー径0.3m水冷式、圧力10トン/m、複製速度10m/分)にてホログラム及び回折格子をAL薄膜及び透明な生分解性を有するプラスチックフィルム又はシート1に形成した。
【0049】
このAL薄膜形成面に、次の組成物をグラビアコーターで乾燥後の塗布量が20μmになるように、塗工し70℃で乾燥させて、粘着剤4を形成し、実施例1のホログラムラベルAを得た。
・<粘着剤組成物>
天然ゴム(イソプロピレン) 20部
ロジンエステル 5部
トルエン 50部
イソプロピルアルコール 25部
【0050】
(実施例2)株式会社アルバック製電子線加熱方式真空蒸着機を用いて、TiOx薄膜200nmを形成する以外は全て実施例1と同一とし、実施例2のホログラムラベルを得た。
【0051】
(実施例3)透明な生分解性を有するプラスチックフィルム又はシート1として、東セロ製パルシール(ポリ乳酸、融点110℃)厚さ40μmを使用し、以下の粘着剤組成物をグラビアコーターで乾燥後の塗布量が20μmになるように、塗工し70℃で乾燥させて、粘着剤4を形成した以外は全て実施例1と同一とし、実施例3のホログラムラベルを得た。
・<粘着剤組成物>
ポリ乳酸樹脂 「バイロエコールHYD」(東洋紡績株式会社製)
39部
ロジンエステル「スーパーエステル A100」(荒川化学社製) 1部
トルエン 40部
酢酸エチル 20部
【0052】
(実施例4)粘着剤組成を以下とし、グラビアコーターで乾燥後の塗布量が20μmになるように、塗工し70℃で乾燥させて、粘着剤4を形成した以外は、実施例3と同一とし、実施例4のホログラムラベルを得た。
・<粘着剤組成物>
ポリ乳酸樹脂 「バイロエコールHYD」(東洋紡績株式会社製)
39部
ロジンエステル「スーパーエステル A100」(荒川化学社製) 1部
トルエン 40部
酢酸エチル 19.9部
イソホロンジイソシアネート 0.1部
【0053】
(実施例5)粘着剤組成を以下とし、グラビアコーターで乾燥後の塗布量が20μmになるように、塗工し70℃で乾燥させて、粘着剤4を形成した以外は、実施例3と同一とし、実施例5のホログラムラベルを得た。
・<粘着剤組成物>
ポリ乳酸樹脂 「バイロエコールHYD」(東洋紡績株式会社製)
39部
ロジンエステル「スーパーエステル A100」(荒川化学社製) 1部
トルエン 40部
酢酸エチル 19.9部
ヘキサメチレンジイソシアネート 0.1部
【比較例】
【0054】
(比較例1)粘着剤組成を以下とし、グラビアコーターで乾燥後の塗布量が20μmになるように、塗工し70℃で乾燥させて、粘着剤4を形成した以外は、実施例1と同一とし、比較例1のホログラムラベルを得た。
・<粘着剤組成物>
酢酸ビニル−アクリル共重合体 30質量部
トルエン 40質量部
酢酸ビニル 40質量部
【0055】
(比較例2)粘着剤組成を以下とし、グラビアコーターで乾燥後の塗布量が20μmになるように、塗工し70℃で乾燥させて、粘着剤4を形成した以外は、実施例2と同一とし、比較例2のホログラムラベルを得た。
・<粘着剤組成物>
酢酸ビニル−アクリル共重合体 30質量部
トルエン 40質量部
酢酸ビニル 40質量部
【0056】
(比較例3)透明な生分解性を有するプラスチックフィルム又はシート1として、三菱ガス化学製 ビオグリーン(ポリヒドロキシブチレート)厚さ40μmを使用した以外は、実施例3と同一とし、比較例3のホログラムラベルを得た。
【0057】
(評価試験)ホログラムの再現性の評価は、意匠性については、ハロゲンランプ光原下にて目視判定した。ホログラムの変化については、生分解性評価後の回折格子の回折率で評価した。劣化が進んでいる程、低い回折効率を示す。
ハロゲンランプ:ローボルトハロゲンランプ35mm径ミラー付き
:電圧12V・光度2300cd(キャンデラ)
目視判定基準 :○ 画像がくっきりと見え、周辺ノイズが気にならない。
:△ 画像はくっきり見えるが、周辺ノイズが気になる。
:× 画像がややぼけており、周辺ノイズが目立つ。
回折効率測定:光源:半導体レーザー:キコー技研 MLX標準コリメートレーザー
:電圧DC4.8〜6.5V・平行光時ビーム径拡大6mm
:効率:反射光強度/入射光強度*100(%)
:判定基準:× 回折効率 15%以上(劣化が進んでいない)
:△ 〃 5%〜15%(劣化がやや進んでいる)
:○ 〃 5%未満(劣化が進んでいる)
【0058】
生分解性の評価は、屋外コンポスト(容量100リットル)に生ゴミ5kgを入れ、その上に 「100mm四方の粘着ラベル」を置いた。更に、50mm厚さの生ゴミを乗せて1ヶ月間放置し、ラベルの状態を目視評価した。
生分解性の基準 :○ 著しく変形、白化し、形状の維持が困難。
:△ 変形、白化しているが、試験前の状態を維持している。
:× 変形、白化がなく試験前の状態を維持している。
【0059】
粘着力の評価は、ホログラムラベルを、JIS−Z0237に従い、ステンレス板に加重2kgのゴムロールで圧着し張り合わせ、24時間後に、引っ張り速度300mm/分で、180度引き剥がし法で粘着力を測定した。引き剥がし始めてから、20mm剥がした時点から80mmまでの間の力の平均値を積分法により求めた。
【0060】
(評価結果)
図3に評価結果を記載する。
※透明な生分解性を有するプラスチックフィルム又はシート1を「透明基材」とした。
実施例1〜5は、生分解性に優れ、高いホログラム再現性を兼ね備えていた。
しかし、粘着剤側からの観察において、実施例1,2は、粘着剤の生分解性が透明基材よりやや遅く、回折格子がまだその形状を留めていた。
比較例1、2は、粘着剤が全く変化しておらず、その影響で、透明基材の劣化が遅くなっている。
比較例3は、今回の生分解性を評価する条件では透明基材の劣化が遅れていた。
実施例3〜5では、多官能イソシアネートの添加により、粘着力の改善がみられている。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の実施形態の一例を示すホログラムラベルの断面図である。
【図2】本発明の実施形態の別の例を示すホログラムラベルの断面図である。
【図3】実施例及び比較例の評価結果である。
【符号の説明】
【0062】
A、A´ ホログラムラベル
1 生分解性プラスチックフィルム又はシート
2 反射性薄膜層
2−a 薄膜とプラスチックフィルム又はシートとの境界面
2−b 薄膜と粘着剤との境界面
3 生分解性粘着剤


【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明な生分解性を有するプラスチックフィルム又はシートにホログラムが形成されたホログラムラベルであって、前記プラスチックフィルム又はシートの一方の面にホログラムレリーフが形成され、前記ホログラムレリーフの上の少なくとも一部に当該レリーフに追従するように反射性薄膜が形成され、前記ホログラムレリーフ又は前記反射性薄膜の上もしくは、前記プラスチックフィルム又はシートの他方の面のいずれかの面に、生分解性を有する樹脂からなる粘着剤が形成されていることを特徴とするホログラムラベル。
【請求項2】
前記生分解性を有する樹脂からなる粘着剤と、前記透明な生分解性を有するプラスチックフィルム又はシートとが、生分解性を有する同一の樹脂系からなることを特徴とする請求項1項記載のホログラムラベル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−282407(P2009−282407A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−135877(P2008−135877)
【出願日】平成20年5月23日(2008.5.23)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】