説明

ホログラム作製方法及び作製されたホログラム

【課題】10μmオーダの微細で目視不可能な文字等のパターンが記録されたホログラムとその作製方法を提供する。
【解決手段】任意の物体像が再生可能に記録された反射型の体積型ホログラム2であって、少なくとも一部がホログラム記録面に略平行に並んでなる干渉縞からなるパターン15が多重記録されており、パターン15は、ホログラム記録面に垂直上方から白色照明光を入射させた場合に、記録面に沿う特定方向ではパターンの両端17でその中央16の再生色と異なり、記録面に沿ったその特定方向と直交する方向ではパターン全体で同じ再生色で観察可能になっているホログラム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホログラム作製方法及び作製されたホログラムに関し、特に、通常の体積型ホログラムの中に微細な文字等のパターンが記録されセキュリティ用ホログラムとして使用可能なマイクロテキストホログラムの作製方法とその方法で作製されたマイクロテキストホログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、体積型ホログラムとして記録されている微細パターンは100μm程度のパターンであった。また、レリーフホログラムでは30μm程度の微細パターンをホログラムとして記録している例もある。
【0003】
また、従来、マイクロ文字等の目視不可能なパターンを記録する場合、被写体として製版フィルム等で作成したパターンを使用しホログラムとして記録を行う(特許文献1)か、製版フィルム等で作成したパターンをホログラム記録材料に密着させ、ホログラム記録材料をパターン形状に失活させホログラムパターンを形成(特許文献2)していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−29607号公報
【特許文献2】特開平11−24538号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来、体積型ホログラムで形成される微細パターンは100μm程度のパターンであり、ルーペ等の簡易な拡大鏡を使用することにより、微細パターンを確認することができた。
【0006】
レリーフホログラムで描画パターンとして微細パターンを形成する場合は数μmのパターンも形成可能であるが、ホログラムとして記録されているものではなく、物理的に記録されているものであった。
【0007】
また、従来の方法でパターン形状を体積型ホログラムとして記録した場合、ホログラム記録時にホログラム記録材料とパターン形状の間にフィルム若しくはガラス等の透明基材を挟むことになり、パターン形状の最小サイズは100μm程度であった。
【0008】
このように、従来の体積型ホログラムに記録再生される微細パターンは十分には微細でなく、必ずしも目視不可能なものではなく、セキュリティ用ホログラムとしては不十分なものであった。
【0009】
本発明は従来技術のこのような状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、10μmオーダの微細で目視不可能な文字等のパターンが記録されたマイクロテキストホログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成する本発明のホログラム作製方法は、反射型の体積型ホログラム原版の複製照明光入射側に体積型ホログラム記録材料を配置して、体積型ホログラム記録材料に入射した複製照明光と反射型の体積型ホログラム原版からの回折光とを体積型ホログラム
記録材料中で干渉させることで、反射型の体積型ホログラム原版を複製するホログラム作製方法において、
前記反射型の体積型ホログラム原版と前記体積型ホログラム記録材料の間に、正反射部を有する反射板を挟み込み、前記体積型ホログラム記録材料に入射した前記複製照明光と前記反射板の正反射部からの正反射光とを前記体積型ホログラム記録材料中で干渉させることで、前記反射型の体積型ホログラム原版が複製されたホログラム中に前記正反射部をホログラムとして多重記録することを特徴とする方法である。
【0011】
また、本発明のホログラムは、任意の物体像が再生可能に記録された反射型の体積型ホログラムであって、少なくとも一部がホログラム記録面に略平行に並んでなる干渉縞からなるパターンが多重記録されており、前記パターンは、ホログラム記録面に垂直上方から白色照明光を入射させた場合に、記録面に沿う特定方向ではパターンの両端でその中央の再生色と異なり、記録面に沿ったその特定方向と直交する方向ではパターン全体で同じ再生色で観察可能になっていることを特徴とするものである。
【0012】
この場合、前記パターンの一辺又は径の寸法が50μm以下であることが望ましい。
【0013】
また、前記パターンがホログラムの複数の領域に記録されており、前記領域間の間隔が前記パターン1個の寸法の50倍以上であることが望ましい。
【0014】
また、前記パターンがホログラムの面積に対して1/10000以下の領域に記録されていることが望ましい。
【0015】
本発明のもう1つのホログラム作製方法は、反射型の体積型ホログラム原版の複製照明光入射側に体積型ホログラム記録材料を配置して、体積型ホログラム記録材料に入射した複製照明光と反射型の体積型ホログラム原版からの回折光とを体積型ホログラム記録材料中で干渉させることで、反射型の体積型ホログラム原版を複製するホログラム作製方法において、
前記反射型の体積型ホログラム原版と前記体積型ホログラム記録材料の間に、正反射部を有する反射板を挟み込み、前記反射板の正反射部を有する領域に前記複製照明光とは別の正反射部複製照明光を前記体積型ホログラム記録材料に略垂直に入射し、前記体積型ホログラム記録材料に入射した前記正反射部複製照明光と前記反射板の正反射部からの正反射光とを前記体積型ホログラム記録材料中で干渉させることで、前記反射型の体積型ホログラム原版が複製されたホログラム中に前記正反射部をホログラムとして多重記録することを特徴とする方法である。
【0016】
さらに、本発明の別のホログラム作製方法は、反射型の体積型ホログラム原版の複製照明光入射側に体積型ホログラム記録材料を配置して、体積型ホログラム記録材料に入射した複製照明光と反射型の体積型ホログラム原版からの回折光とを体積型ホログラム記録材料中で干渉させることで、反射型の体積型ホログラム原版を複製するホログラム作製方法において、
前記体積型ホログラム記録材料とは別の体積型ホログラム記録材料を正反射部を有する反射板上に配置して、前記別の体積型ホログラム記録材料側から前記複製照明光とは別の正反射部複製照明光を前記別の体積型ホログラム記録材料に入射し、前記別の体積型ホログラム記録材料に入射した前記正反射部複製照明光と前記反射板の正反射部からの正反射光とを前記別の体積型ホログラム記録材料中で干渉させることで、前記別の体積型ホログラム記録材料中に前記正反射部をホログラムとして記録し、
その後、前記体積型ホログラム記録材料中に前記反射型の体積型ホログラム原版が複製されたホログラムと、前記別の体積型ホログラム記録材料中に前記正反射部がホログラムとして記録されたホログラムとを積層することを特徴とする方法である。
【0017】
さらに、本発明は、任意の物体像が再生可能に記録された反射型の体積型ホログラムであって、少なくとも一部がホログラム記録面に略平行に並んでなる干渉縞からなるパターンが多重記録されており、前記パターンの一辺又は径の寸法が50μm以下であることを特徴とするホログラムを含むものである。
【0018】
この場合、前記パターンの一辺又は径の寸法が50μm以下であることが望ましい。
【0019】
また、前記パターンがホログラムの複数の領域に記録されており、前記領域間の間隔が前記パターン1個の寸法の50倍以上であることが望ましい。
【0020】
また、前記パターンがホログラムの面積に対して1/10000以下の領域に記録されていることが望ましい。
【発明の効果】
【0021】
本発明においては、正反射部を有する反射板の複製を何度も繰り返さずに、ホログラム複製時に直接ホログラフィックに記録するので、解像力の劣化が起こらず、10μmオーダの微細で目視不可能な文字等のパターンがホログラム記録像に重畳してホログラフィックに記録可能になり、セキュリティ用ホログラムとして十分なものが得られる。また、得られるホログラムは、パターンの両端がカラーシフトしているホログラムと通常のホログラムが多重又は多層化して混在しているので、この特徴から偽造防止性に優れたものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明のマイクロテキストホログラム作製方法の1実施例を説明するための断面図である。
【図2】体積型ホログラム記録材料中に記録された正反射パターンからの正反射光が形成する干渉縞の図1の断面と同じ断面内の形状を模式的に示した図である。
【図3】図2の場合の記録された微細なパターンの再生像を示す正面図である。
【図4】図1の実施例の変形例の図1と同様の図である。
【図5】本発明のマイクロテキストホログラム作製方法の別の実施例を説明するための断面図である。
【図6】図5の場合の図2と同様の図である。
【図7】図5の実施例の変形例の図5と同様の図である。
【図8】本発明のマイクロテキストホログラム作製方法のさらに別の実施例を説明するための断面図である。
【図9】本発明のホログラムに記録されている微細なパターンとして用いるマイクロ文字の高さを説明するための図である。
【図10】本発明のホログラムの複数領域に微細なパターンを記録することを説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に、本発明のホログラム作製方法及び作製されたホログラムを実施例に基づいて説明する。
【0024】
本発明の基本原理は、任意の被写体の像が反射型ホログラムとして記録されている体積型ホログラム原版からホログラム複製方法によりその原版と同様の体積型ホログラムを作製(複製)する際に、微細で目視不可能な文字等の正反射パターンが形成されているパターン板を体積型ホログラム記録材料と体積型ホログラム原版の間に介在させ、ホログラムミラーパターンとして複製されたホログラムに重畳記録することである。微細な正反射パ
ターンが体積型ホログラム記録材料に密着するか、極近接して配置されるため、10μmオーダの微細なパターンがホログラフィックに記録することができるものである。
【0025】
図1は、本発明のマイクロテキストホログラム作製方法の1実施例を説明するための断面図である。反射型の体積型ホログラム原版1からホログラム複製方法によりその原版と同様の体積型ホログラムを作製するために、体積型ホログラム原版1の複製照明光11の入射側にフォトポリマー等の体積型ホログラム記録材料2を配置する。その体積型ホログラム原版1と体積型ホログラム記録材料2の間に、本発明に従って、クロム等の反射膜からなる微細で目視不可能な文字等の正反射パターン3をガラス板等の透明基板4の体積型ホログラム記録材料2側の表面に設けたパターン板5を挟み込み、屈折率マッチング液を間に介在させるか、直接密着するように、体積型ホログラム原版1、パターン板5、体積型ホログラム記録材料2を重ね合わせる。この状態で、体積型ホログラム記録材料2側から複製照明光11を斜めに入射させる。この複製照明光11の斜めの入射角θは、通常、体積型ホログラム原版1を記録する際の参照光入射角に等しいか、若干異なる角度である。体積型ホログラム記録材料2に入射した複製照明光11は体積型ホログラム記録材料2を透過し、パターン板5の正反射パターン3のない透明領域を通った複製照明光11は体積型ホログラム原版1に入射して記録物体像を再生する回折光12を複製照明光11の入射側に生じさせる。パターン板5の透明領域を通った回折光12と入射した複製照明光11が体積型ホログラム記録材料2中で干渉してホログラム干渉縞を体積型ホログラム記録材料2中に形成する。一方、パターン板5の正反射パターン3の存在する反射領域に入射した複製照明光11は正反射パターン3の形状を保持したまま正反射光13として反射され、この正反射光13と入射した複製照明光11は体積型ホログラム記録材料2中で干渉して体積型ホログラム記録材料2の記録層の面に平行に並んでなる干渉縞14を、体積型ホログラム原版1の記録物体像を再生する干渉縞に重畳して形成する。この干渉縞14が形成される領域は、複製照明光11と斜めの正反射光13の重なる領域であるので、複製照明光11と記録層の法線を含む断面内では、図1のように平行四辺形をしており、図1の面に垂直な断面内では長方形をしている。
【0026】
図2は、体積型ホログラム記録材料2中に記録された正反射パターン3からの正反射光13が形成する干渉縞14の図1の断面と同じ断面内の形状を模式的に示した図、図3は、その場合の記録された微細なパターンの再生像15を示す正面図である。この場合、微細なパターンの再生像15は複製照明光11の方向に直交する細長い長方形とする。干渉縞14は、体積型ホログラム原版1の記録物体像を再生する干渉縞に重畳して記録されているものであり、体積型ホログラム記録材料2の記録層の面に平行に一定間隔で並んでなるものである。この干渉縞14はホログラムミラーとも呼ばれ、例えば体積型ホログラム記録材料2の垂直上方から白色照明光21を入射させた場合、干渉縞14が記録されている領域、すなわち、パターン板5の正反射パターン3と同じ形状の領域からはその干渉縞14のピッチに対応する波長の光が垂直上方へ反射(回折)されるので、正反射パターン3が微細で目視不可能な文字等の場合、複製された体積型ホログラム(体積型ホログラム記録材料2)からも、そのような微細で目視不可能な文字等のパターン15が顕微鏡等を用いて読み取ることができ、セキュリティ用ホログラムとして使用できる。
【0027】
正反射パターン3の大きさ(分解能)としては、記録波長の半分程度、好ましくは記録波長の10分の1以下が望ましい。より実際的には、正反射パターン3の一辺又は径の寸法が50μm以下であることが望ましい。
【0028】
ところで、この干渉縞14が形成される領域は、上記のように複製照明光11と記録層の法線を含む断面内(図2の面)では、図示のように平行四辺形をしており、体積型ホログラム記録材料2の記録層の表面から裏面まで記録層の面に平行に干渉縞が並んだ領域16と、その両端の干渉縞が上から下へあるいは下から上へ徐々に若干短くなる領域17と
からなる。この両端の領域17では、記録層の表面側あるいは裏面側に干渉縞の記録がないため、干渉縞14端部の間隔がモノマー等の記録がない周辺からの拡散等により若干広くなる。そのため、例えば体積型ホログラム記録材料2の垂直上方から干渉縞14の領域に白色照明光21を入射させた場合、領域16で例えば緑の波長の光22が反射されるとすると、領域17からはそれより若干波長の長い例えばオレンジの光23が反射される。すなわち、複製照明光11と記録層の法線を含む断面内では、記録パターンのパターン部の両端でパターン部の中央の再生色と異なりそれより長い波長の再生色で観察される記録パターンが記録されることになる。複製照明光11と記録層の法線を含む断面に垂直な方向では、干渉縞14が形成される断面の領域は長方形をしており、図2の断面の領域17のような端部はないので、図3から明らかなように、記録パターンのパターン部のその方向(複製照明光11に直交する方向)ではパターン部の中央の再生色と両端の再生色は同じに観察されるように記録パターンが記録されている。
【0029】
ところで、図1のような配置で体積型ホログラム原版1から体積型ホログラム記録材料2にホログラム複製方法によりその原版と同様の体積型ホログラムを複製する場合に、体積型ホログラム記録材料2の体積型ホログラム原版1に面している面にカバーフィルムを配置する場合もあり、また、パターン板5の正反射パターン3を設けた面上にカバーフィルムを配置する場合もある。そのような場合、正反射パターン3と体積型ホログラム記録材料2の間にそのカバーフィルムの分間隔が介在することになり、正反射パターン3のエッジからの散乱光の影響が出てきて、記録されるパターンの再生像15の解像力が低下する。その点を図4を参照にして説明する。この場合、体積型ホログラム記録材料2の体積型ホログラム原版1に向いて面にカバーフィルム6が積層されており、カバーフィルム6に正反射パターン3が密着するようにパターン板5を向けて、体積型ホログラム記録材料2、パターン板5、体積型ホログラム原版1を重ね合わせ、それらの間に屈折率マッチング液を間に介在させるか、直接密着するようする。この状態で、体積型ホログラム記録材料2側から複製照明光11を斜めに入射させ、体積型ホログラム記録材料2を透過し、パターン板5の正反射パターン3のない透明領域を通った複製照明光11は体積型ホログラム原版1に入射して記録物体像を再生する回折光12を複製照明光11の入射側に生じさせる。パターン板5の透明領域を通った回折光12と入射した複製照明光11が体積型ホログラム記録材料2中で干渉してホログラム干渉縞を体積型ホログラム記録材料2中に形成する。この点は図1の場合と同様である。一方、パターン板5の正反射パターン3の存在する反射領域に入射した複製照明光11は正反射光13として反射され、カバーフィルム6を介して体積型ホログラム記録材料2中に入射し、複製照明光11と干渉して体積型ホログラム記録材料2の記録層の面に平行に並んでなる干渉縞14を、体積型ホログラム原版1の記録物体像を再生する干渉縞に重畳して形成する。ただし、カバーフィルム6の厚さ分正反射パターン3と体積型ホログラム記録材料2の間に距離があるため、正反射パターン3のエッジから発生する散乱光18も複製照明光11と干渉して正反射パターン3のエッジ近傍の干渉縞14を乱すことになる。したがって、図2のように、例えば体積型ホログラム記録材料2の垂直上方から白色照明光21を入射させた場合、干渉縞14のエッジの境界が若干不明瞭になり、記録されるパターンの再生像15(図2、図3)の解像力が低下する。実際上、カバーフィルム6の厚さが500μm以下であれば、そのような影響は小さい。
【0030】
以上の方法で作製したマイクロテキストホログラムにおいては、図2と図3を用いて説明したように、干渉縞14で構成された微細なパターンの再生像15は、記録面に沿う特定方向(複製照明光11と記録層の法線を含む断面内の方向)では、パターン部の両端でその中央の再生色と異なり、その特定方向と直交する方向では、パターン部全体で同じ色となっているので、マイクロテキストホログラムに記録された微細なパターンの再生像15を顕微鏡等を用いて読み取ることで、そのマイクロテキストホログラムが真正なものか偽造されたものかの判別をすることができる。
【0031】
ところで、干渉縞14を図1のような斜めに入射する複製照明光11と斜めに反射する正反射光13との干渉により記録するのではなく、体積型ホログラム記録材料2に垂直に入射する複製照明光と垂直に反射する正反射光との干渉により記録するようにしてもよい。この場合のマイクロテキストホログラムの解像力は図1の方法による場合より高くなる。この場合の作製方法の実施例を図5〜図8を用いて説明する。
【0032】
図5の場合は、体積型ホログラム原版1のホログラム複製と、正反射パターン3のホログラムミラーとしての複製を別々の複製照明光を用いて行い多重記録する場合であり、図1の場合と同様に、体積型ホログラム記録材料2、パターン板5、体積型ホログラム原版1を重ね合わせ、それらの間に屈折率マッチング液を間に介在させるか、直接密着するようして、体積型ホログラム原版1のホログラム複製のために、図1の場合と同様に、体積型ホログラム記録材料2側から複製照明光11を斜めに入射させ、体積型ホログラム記録材料2に入射された複製照明光11が体積型ホログラム記録材料2を透過し、パターン板5の正反射パターン3のない透明領域を通って体積型ホログラム原版1に入射して、記録物体像を再生する回折光12を反射側に生じさせる。パターン板5の透明領域を通った回折光12と入射した複製照明光11が体積型ホログラム記録材料2中で干渉して体積型ホログラム原版1と同様のホログラム干渉縞を体積型ホログラム記録材料2中に形成し、体積型ホログラム原版1が体積型ホログラム記録材料2中にホログラム複製される。
【0033】
一方、パターン板5の正反射パターン3が存在する領域に複製照明光11と同じ側から垂直に別の複製照明光31を同時にあるいは前後して体積型ホログラム記録材料2に入射すると、体積型ホログラム記録材料2を透過し、パターン板5の正反射パターン3でそのパターンの形状を保持したまま垂直に正反射光32として反射され、この正反射光32と入射した複製照明光31が体積型ホログラム記録材料2中で干渉して、体積型ホログラム記録材料2の記録層の面に平行に並んでなる干渉縞14が体積型ホログラム原版1の記録物体像を再生する干渉縞に重畳して形成される。
【0034】
この作製方法の場合は、記録される干渉縞14は、複製照明光31、正反射光32は何れも記録面に垂直であるので、図6に示すように、何れの断面内でも長方形をしており、例えば体積型ホログラム記録材料2の垂直上方から白色照明光21を入射させた場合、干渉縞14が記録されている領域、すなわち、パターン板5の正反射パターン3と同じ形状の領域からはその干渉縞14のピッチに対応する波長の光、例えば緑の波長の光22が垂直上方へ反射(回折)されるので、正反射パターン3が微細で目視不可能な文字等の場合、複製された体積型ホログラム(体積型ホログラム記録材料2)からも、そのような微細で目視不可能な文字等のパターン15が顕微鏡等を用いて読み取ることができ、セキュリティ用ホログラムとして使用できる。この作製方法で記録される干渉縞14には図2に示す端部領域17のような部分は存在しないので、図3のように、特定方向でパターン部の両端がその中央の再生色と異なって再生されるようなことは起こらず、正反射パターン3に対応する領域全体が同じ色で再生される。
【0035】
図5の場合は、体積型ホログラム原版1のホログラム複製と、正反射パターン3のホログラムミラーとしての複製を別々の複製照明光を用いて多重記録する方法であったが、体積型ホログラム記録材料2上で、体積型ホログラム原版1の複製領域と、正反射パターン3のホログラムミラーとしての複製領域とを領域分けして作製することもできる。図7がその例を示す図であり、同一の体積型ホログラム記録材料2上での、体積型ホログラム原版1の複製用の複製照明光11と体積型ホログラム原版1からの回折光12の入射領域と、パターン板5の正反射パターン3複製用の複製照明光31とその正反射光32の入射領域とを分離して、前者の領域には体積型ホログラム原版1の複製ホログラムが、後者の領域には正反射パターン3と同一形状の微細なパターンを再生するホログラムミラーがそれ
ぞれ記録される。
【0036】
また、体積型ホログラム原版1の複製ホログラムと、パターン板5の正反射パターン3の複製ホログラムとを別々に作製して、作製後に両者を重畳するようにしてもよい。その例を図8に示す。この場合は、2枚の体積型ホログラム記録材料2A、2Bを用い、図8(a)に示すように、一方の体積型ホログラム記録材料2Aをパターン板5の正反射パターン3側に直接密着させるか屈折率マッチング液を介して密着させ、体積型ホログラム記録材料2A側からパターン板5の正反射パターン3複製用の複製照明光31を垂直に入射させ、その複製照明光31は体積型ホログラム記録材料2Aを透過し、パターン板5の正反射パターン3が存在する反射領域に入射した複製照明光31は正反射パターン3の形状を保持したまま垂直に正反射光32として反射され、この正反射光32と入射した複製照明光31が体積型ホログラム記録材料2A中で干渉し正反射パターン3と同一形状の微細なパターンを再生するホログラムミラーが記録される。
【0037】
他方の体積型ホログラム記録材料2Bは、図8(b)に示すように、体積型ホログラム原版1に密着されるか、間に屈折率マッチング液、スペーサー等を介して密着され、図1の場合と同様に、体積型ホログラム記録材料2B側から複製照明光11が斜めに入射され、体積型ホログラム記録材料2Bを透過し、体積型ホログラム原版1に入射し、そこで記録物体像を再生する回折光12を反射側に生じさせ、回折光12と入射した複製照明光11が体積型ホログラム記録材料2B中で干渉させて体積型ホログラム原版1の複製ホログラムが作製される。
【0038】
その後、図8(c)に示すように、正反射パターン3と同一形状の微細なパターンのホログラムが記録された体積型ホログラム記録材料2Aと、体積型ホログラム原版1の複製ホログラムが記録された体積型ホログラム記録材料2Bとを一体に積層することで、セキュリティ用のマイクロテキストホログラムが重畳されたホログラムができあがる。
【0039】
ところで、以上の本発明の作製方法で作製されるホログラムの目視不可能な文字等を再生するパターン15の寸法について検討すると、パターン15はパターン板5における正反射パターン3をホログラムミラーとしてホログラフィックに複製して得られるものであるので、パターン板5の正反射パターン3をフォトマスク作製プロセス等により如何に微細に作製しても、複製工程である程度ボケたパターン15となってしまう。実際には、目視不可能な文字等として再生されるパターン15の一辺の寸法あるいは径は10μm以上になってしまうが、従来技術では困難であった50μm以下にすることが可能である。例えば図9に示すように、パターン15がマイクロ文字であるとき、文字領域15’の高さaを10〜50μmになるようにすることができる。このようなマイクロ文字をルーペ等の簡易な拡大鏡で拡大観察しようとするとき、そのような拡大鏡の倍率は通常×10〜×20であるので、高さaが50μmとしても0.5〜1.0mm程度にしかならず、マイクロ文字の記録が発見し難く、セキュリティ用ホログラムとして適したものとなる。
【0040】
また、このようなマイクロ文字等の微細なパターン15を記録したホログラムを図10に示すようなホログラム10とするとき、パターン15がホログラム10の中に1箇所にだけ記録されている場合、傷や汚れ等により観察不可能となる場合も有り得るため、図10に示すように2か所以上、好ましくは3か所記録されていることが望ましい。
【0041】
また、その場合、複数箇所記録されたパターン15間の間隔bをパターン15の一辺の寸法aの50倍以上とすることで、顕微鏡を用いて拡大観察しようとするとき、顕微鏡視野の中に2つのパターン15が入ることがなくなり、発見が極めて困難となると共に、傷や汚れの影響でマイクロ文字等の微細なパターン15が観察不可能な状態になることを防ぐことができる。
【0042】
また、ホログラム10にマイクロ文字等の微細なパターン15を記録してセキュリティ用にする場合、微細なパターン15の記録領域を限定することが望ましく、ホログラムの面積に対して微細なパターン15の領域は1/10000以下、好ましくは1/20000以下とすることにより、そのようなセキュリティ用の微細なパターン15の発見が困難となり、よりセキュリティ性が高まる。
【0043】
以上、本発明のホログラム作製方法及び作製されたホログラムを実施例に基づいて説明してきたが、本発明はこれらに限定されず種々の変形が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0044】
以上のように、本発明のホログラム作製方法及び作製されたホログラムによると、正反射部を有する反射板の複製を何度も繰り返さずに、ホログラム複製時に直接ホログラフィックに記録するので、解像力の劣化が起こらず、10μmオーダの微細で目視不可能な文字等のパターンがホログラム記録像に重畳してホログラフィックに記録可能になり、セキュリティ用ホログラムとして十分なものが得られる。また、得られるホログラムは、パターンの両端がカラーシフトしているホログラムと通常のホログラムが多重又は多層化して混在しているので、この特徴から偽造防止性に優れたものとなる。
【符号の説明】
【0045】
1…体積型ホログラム原版
2…体積型ホログラム記録材料
2A、2B…体積型ホログラム記録材料
3…正反射パターン
4…透明基板
5…パターン板
6…カバーフィルム
10…ホログラム(本発明)
11…複製照明光
12…回折光
13…正反射光
14…干渉縞
15…微細なパターンの再生像
15’…文字領域
16…中心領域
17…端部領域
18…散乱光
21…白色照明光
22…緑の波長の光(中心領域からの反射光)
23…オレンジの光(端部領域からの反射光)
31…別の複製照明光
32…正反射光

【特許請求の範囲】
【請求項1】
任意の物体像が再生可能に記録された反射型の体積型ホログラムであって、少なくとも一部がホログラム記録面に略平行に並んでなる干渉縞からなるパターンが多重記録されており、前記パターンは、ホログラム記録面に垂直上方から白色照明光を入射させた場合に、記録面に沿う特定方向ではパターンの両端でその中央の再生色と異なり、記録面に沿ったその特定方向と直交する方向ではパターン全体で同じ再生色で観察可能になっていることを特徴とするホログラム。
【請求項2】
前記パターンの一辺又は径の寸法が50μm以下であることを特徴とする請求項2記載のホログラム。
【請求項3】
前記パターンがホログラムの複数の領域に記録されており、前記領域間の間隔が前記パターン1個の寸法の50倍以上であることを特徴とする請求項1又は2記載のホログラム。
【請求項4】
前記パターンがホログラムの面積に対して1/10000以下の領域に記録されていることを特徴とする請求項1から3の何れか1項記載のホログラム。
【請求項5】
反射型の体積型ホログラム原版の複製照明光入射側に体積型ホログラム記録材料を配置して、体積型ホログラム記録材料に入射した複製照明光と反射型の体積型ホログラム原版からの回折光とを体積型ホログラム記録材料中で干渉させることで、反射型の体積型ホログラム原版を複製するホログラム作製方法において、
前記反射型の体積型ホログラム原版と前記体積型ホログラム記録材料の間に、正反射部を有する反射板を挟み込み、前記反射板の正反射部を有する領域に前記複製照明光とは別の正反射部複製照明光を前記体積型ホログラム記録材料に略垂直に入射し、前記体積型ホログラム記録材料に入射した前記正反射部複製照明光と前記反射板の正反射部からの正反射光とを前記体積型ホログラム記録材料中で干渉させることで、前記反射型の体積型ホログラム原版が複製されたホログラム中に前記正反射部をホログラムとして多重記録することを特徴とするホログラム作製方法。
【請求項6】
反射型の体積型ホログラム原版の複製照明光入射側に体積型ホログラム記録材料を配置して、体積型ホログラム記録材料に入射した複製照明光と反射型の体積型ホログラム原版からの回折光とを体積型ホログラム記録材料中で干渉させることで、反射型の体積型ホログラム原版を複製するホログラム作製方法において、
前記体積型ホログラム記録材料とは別の体積型ホログラム記録材料を正反射部を有する反射板上に配置して、前記別の体積型ホログラム記録材料側から前記複製照明光とは別の正反射部複製照明光を前記別の体積型ホログラム記録材料に入射し、前記別の体積型ホログラム記録材料に入射した前記正反射部複製照明光と前記反射板の正反射部からの正反射光とを前記別の体積型ホログラム記録材料中で干渉させることで、前記別の体積型ホログラム記録材料中に前記正反射部をホログラムとして記録し、
その後、前記体積型ホログラム記録材料中に前記反射型の体積型ホログラム原版が複製されたホログラムと、前記別の体積型ホログラム記録材料中に前記正反射部がホログラムとして記録されたホログラムとを積層することを特徴とするホログラム作製方法。
【請求項7】
任意の物体像が再生可能に記録された反射型の体積型ホログラムであって、少なくとも一部がホログラム記録面に略平行に並んでなる干渉縞からなるパターンが多重記録されており、前記パターンの一辺又は径の寸法が50μm以下であることを特徴とするホログラム。
【請求項8】
前記パターンがホログラムの複数の領域に記録されており、前記領域間の間隔が前記パタ
ーン1個の寸法の50倍以上であることを特徴とする請求項7記載のホログラム。
【請求項9】
前記パターンがホログラムの面積に対して1/10000以下の領域に記録されていることを特徴とする請求項7又は8記載のホログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−33267(P2013−33267A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−210327(P2012−210327)
【出願日】平成24年9月25日(2012.9.25)
【分割の表示】特願2009−9471(P2009−9471)の分割
【原出願日】平成21年1月20日(2009.1.20)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】