説明

ホログラム再生画像処理装置および処理方法

【課題】ホログラム再生画像に存在する輝度ムラを除いてホログラム再生画像中の情報を取り出す。
【解決手段】先鋭化処理部11は、画像のぼけを軽減するための処理を行う。ホログラム記録媒体の再生に先立って、同一の再生装置によって校正用ホログラム画像を再生し、ぼけ関数が求められる。ぼけのある画像をぼけ関数の逆の特性のフィルタを通すことによって、ぼけのある画像をぼけのない画像に変換することができる。ブラー処理部13は、記録に使用した空間変調器の画素の境界を目立たなくする。閾値算出部14は、2値化部15において使用される閾値をライン毎に算出する。2値化部15において、各画素が閾値算出部14で算出された閾値によって2値化される。後処理部16は、2値画像の例えば白の領域に存在する黒部分を除去する穴埋め処理を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願開示は、ホログラム再生画像処理装置および処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
立体表示が可能なホログラムは、クレジットカード、身分証明書等の真贋判定のために使用されている。現状では、干渉膜を表面の凹凸として記録したエンボス型ホログラムが多く使用されている。しかしながら、エンボス型ホログラムは、偽造されやすい問題があった。これに対して、干渉膜を膜内部の屈折率の差として記録するリップマン型ホログラムは、偽造が極めて困難である。その理由は、記録画像を制作するのに高度な技術が必要とされ、また、記録材料が入手困難なことによる。リップマン型ホログラムの制作方法としては、被写体にレーザを照射する実写ホログラムと、多視点からの視差画像をもとに記録するホログラフィックステレオグラムとがある。
【0003】
リップマン型ホログラフィックステレオグラムを制作する過程は、概略的には、画像の取得と、取得した画像の編集等の処理からなるコンテンツ製作工程と、ホログラム原版作成工程と、複製(量産)工程とからなる。画像は、撮像、またはコンピュータグラフィックスにより取得される。画像編集工程で得られた複数の画像のそれぞれが例えば円筒状レンズによって短冊状の画像に変換される。画像の物体光と参照光との干渉縞が短冊状の要素ホログラムとしてホログラム記録媒体に順次記録されることによって原版が作製される。原版に対してホログラム記録媒体が密着され、レーザ光が照射され、ホログラムが複製される。
【0004】
このホログラムでは、例えば横方向の異なる観察点から順次撮影することにより得られた画像情報が短冊状の要素ホログラムとして横方向に順次記録されている。このホログラムを観察者が両目で見たとき、その左右の目にそれぞれ写る2次元画像は若干異なるものとなる。これにより、観察者は視差を感じることとなり、3次元画像が再生されることとなる。
【0005】
さらに、本願の発明者は、ホログラムを複製する際に、複製と同時に付加情報を記録することができるホログラム複製装置および複製方法を提案している。この方法により複製されたホログラムは、見る角度に応じてホログラフィックに記録された文字情報、バーコード情報を再生することができる。例えばホログラム画像が記録されたラベルを製品に貼り付け、ラベルから再生されたホログラム画像を読み取り、再生ホログラム画像を処理して真贋判定を行うことが考えられる。ホログラム画像としては、シリアル番号、バーコード等の2値データとして読み取られる情報が記録されることが多い。ホログラム再生画像は、人の目によって認識されるだけでなく、撮像装置によって光電変換し、機械読み取りを行いたいという要請が多い。
【0006】
しかしながら、レーザの安定性、材料の収縮等に起因してホログラム再生画像が輝度ムラを有し、読み取り時にエラーが発生する。かかる問題を解決するために、特許文献1に開示の技術では、参照光の入射角を含むある範囲の角度に連続的に再生時の参照光を変化させると共に、連続的に再生ホログラム画像を撮像する。このようにして得られた複数枚の再生信号を使用して画素毎にピークを集めて1枚の再生画像を合成するようになされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−343702号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に記載の方法は、再生参照光を種々変化させた時の再生画像を撮像し、複数枚の撮像画像を処理して1枚の再生画像を得るものである。そのため、処理に要する時間が長くなり、処理が複雑となる問題があり、短時間で多数のホログラム画像を処理するのに不向きであった。
【0009】
したがって、処理を短時間で行うことができ、ホログラム画像を輝度ムラの影響を軽減して読み取ることができるホログラム再生画像処理装置および処理方法が提供される。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決するために、本願開示の装置は、ホログラム再生画像の輝度ムラが発生する方向とほぼ直交する方向のエリアに存在する複数画素の輝度を検出する検出部と、
検出部からの輝度情報によって、輝度ムラを補正する画像処理部と
を備えるホログラム再生画像処理装置である。
【0011】
本願開示の方法は、ホログラム再生画像の輝度ムラが発生する方向とほぼ直交する方向のエリアに存在する複数画素の輝度を検出する検出ステップと、
検出ステップにより検出された輝度情報によって、輝度ムラを補正する画像処理ステップと、
を備えるホログラム再生画像処理方法である。
【発明の効果】
【0012】
本願では、ホログラム再生画像の輝度ムラを補正してから2値化を行う。したがって、2値化の処理を正しく行うことができる。さらに、複数枚の画像の情報を処理して1枚の画像を合成する必要がないので、処理を高速で行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】この発明を適用できる撮像装置の一例の構成を示す略線図である。
【図2】ホログラム再生画像の説明に使用する略線図である。
【図3】ホログラム再生画像処理装置の一例のブロック図である。
【図4】ホログラム画像のぼけの説明に用いる略線図である。
【図5】後処理の一例の説明に用いる略線図である。
【図6】後処理の一例の説明に用いる略線図である。
【図7】処理後のホログラム再生画像の説明に使用する略線図である。
【図8】ホログラム再生画像処理装置の一例のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、この発明を実施するための形態について説明する。なお、説明は、以下の順序で行う。
<1.第1の実施の形態>
<2.第2の実施の形態>
<3.変形例>
なお、以下に説明する実施の形態は、この発明の好適な具体例であり、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、この発明の範囲は、以下の説明において、特にこの発明を限定する旨の記載がない限り、これらの実施の形態に限定されないものとする。
【0015】
<1.第1の実施の形態>
「ホログラム撮像装置」
図1に示すように、ホログラム記録媒体(例えばリップマン型ホログラム)1に対して光源2例えばLED(Light Emitting Diode)からの参照光が照射される。ホログラム記録媒体1に記録されている画像が再生され、再生画像が撮像装置3によって撮像される。例えばホログラム記録媒体1は、水平面に置かれており、法線に対する参照光の入射角、並びに法線に対して撮像装置の光軸がなす角度が記録時の関係と等しい関係とされている。矢印Yは、ホログラム再生画像の垂直方向を示す。なお、図1に示す配置は、最小限の構成を概略的に示すもので、光源2として複数のLEDを使用したり、レンズ等の光学素子を設けるようにしても良い。
【0016】
一例として、ホログラム記録媒体1に情報を符号化した画像例えば1次元バーコード、2次元バーコード(例えばQRコード(登録商標))、シリアル番号等の数字、文字等が記録されている。光源2の安定性、材料の収縮等に起因して撮像装置3により取得されたホログラム再生画像に輝度ムラが存在する。図2は、撮像装置3によって取得されたQRコード(登録商標)のホログラム再生画像を示す。QRコード(登録商標)は、水平方向Xおよび垂直方向Yの画素数が等しい正方形である。画素数、パターン等は、規格で規定されている。図2は、1枚の撮像画像中でQRコード(登録商標)が存在する一部の領域を示している。
【0017】
図1の再生条件におけるホログラム再生画像の場合、図2に示すように、Y方向にホログラムの再生条件に起因する輝度ムラが発生する特徴を有している。言い換えると、水平方向に延長する1ライン上に存在する複数の画素の間では、照明光の照度分布が一様であれば、輝度ムラが少ない。この特徴に注目して、1ライン毎に複数の画素の輝度の分布を調べ、輝度の分布から2値化のためのしきい値が1ライン毎に設定される。そして、設定されたしきい値によって、当該ラインの複数の画素が2値化される。エリアとしては、1ラインに限らず、複数画素×1ライン、1枚の画像を細分化したブロック等を使用して、照明光の照度分布を同時に補正しても良い。
【0018】
「画像処理装置の一例」
図3を参照して画像処理装置の一例を説明する。撮像装置3により取得されたホログラム再生画像11が先鋭化処理部12に供給される。ホログラム再生画像11は、1画素が例えば8ビットのデジタル画像データを意味する。8ビットの画像データは、0のレベルから255のレベルを有する。例えば2値(白/黒)で構成されたQRコード(登録商標)の印刷物を適正な露出で撮影した場合、黒の画素が0よりやや大きなレベル(暗いグレーに相当するレベル)となり、白の画素が255よりやや小さなレベル(明るいグレーに相当するレベル)となる。しかしながら、ホログラム再生画像11の場合は、ホログラム特有の輝度ムラ、ぼけ等によって、必ずしもこのようなレベルを有していない。
【0019】
ホログラム再生画像を画像処理装置に供給する場合、例えばリムーバブルな記録メディアにホログラム再生画像が記録され、この記録メディアが画像処理装置に対して装着される。画像処理装置は、個々のブロックをハードウェアによって実現しても良いし、マイクロコンピュータに対してプログラムをインストールしてソフトウェア処理によって画像処理装置を実現しても良い。さらに、ハードウェアの処理とソフトウェアの処理とを混在させても良い。なお、撮像装置3においてRAW画像を取得し、画像処理装置においてRAW画像に対する処理をしても良いし、撮像装置3においてJPEG等により圧縮が施された画像信号を、画像処理装置において復号した上で処理をしても良い。さらに、図示しないが、画像処理に必要な表示と、処理結果の表示のために、液晶表示装置等のディスプレイが設けられている。
【0020】
先鋭化処理部11は、画像のぼけを軽減するための処理を行う。例えばQRコード(登録商標)が記録されたホログラム記録媒体1の再生に先立って、同一の再生装置によって校正用ホログラム画像を再生する。校正用ホログラム画像は、ホログラム記録媒体1と同一の特性を有するホログラム記録媒体に対して、QRコード(登録商標)が記録されるエリア内にQRコード(登録商標)の代わりに点画像が記録されたものである。点画像は、例えば1画素の明るい輝度(例えば最大値255)の画像である。なお、QRコード(登録商標)が記録されたホログラム上に校正用の点画像の記録エリアを設けて同時に記録しても良い。点画像のホログラム記録を行う際には、ホログラム記録光学系中の空間変調器(SLM)の1画素を明るい輝度(例えばSLMが表示できる最大輝度)で表示を行えば良い。
【0021】
かかる校正用ホログラムが図1に示す再生(読取)装置によって再生される。校正用ホログラム再生画像は、ぼけのために点画像が記録位置の画素の周辺の複数の画素に拡大したものとなる。図4は、ぼけが存在する時のPSF(Point Spread Function)の一例であ
る。PSFは、点画像の像面上での広がりとレベルを表わすので、ぼけ関数(伝達関数)そのものである。このぼけには、ホログラムの再生条件に関わるホログラム特有のぼけと撮像レンズのぼけが含まれる。
【0022】
ぼけのない点画像は、予め作製されているので、その位置とレベルが既知のものである。ぼけのない点画像とぼけのある画像との間に存在するぼけ関数を求めることができる。ぼけ関数は、例えば2次元デジタルフィルタで表される。したがって、ぼけのある画像をこのデジタルフィルタの逆フィルタを通すことによって、ぼけのある画像をぼけのない画像に変換することができる。このように求められた逆フィルタの係数が先鋭化処理部12に設けられている記憶装置(好ましくは不揮発性メモリ)に記憶される。再生システムまたはホログラム記録媒体を変更した場合には、上述した調整がやり直される。
【0023】
点画像が記録された校正用ホログラム画像を使用することによって、実際に使用されるホログラム再生システムに則して高精度にぼけ関数を求めることができる。さらに、ぼけ関数を2次元等方ガウス関数等の関数にて近似する方法を使用しても良い。
【0024】
先鋭化処理部12によってホログラム再生画像中のぼけを低減することができる。先鋭化処理部12の出力信号がブラー処理部13に供給される。ブラー処理部13は、1次元または2次元のデジタルローパスフィルタである。先鋭化処理後のホログラム再生画像中に、記録に使用した空間変調器の画素の境界が目立つことがある。この境界を目立たなくするために、ブラー処理がなされる。
【0025】
ブラー処理部13の出力信号が閾値算出部14に供給される。閾値算出部14は、後段の2値化部15において使用される閾値を算出する。ホログラム再生画像は、上述したように、Y方向に輝度ムラが存在するので、Y方向と直交するX方向の例えば1ライン毎に閾値が算出される。
【0026】
最初に、1ライン上に存在する複数画素の値の頻度の分布が調べられる。得られた複数画素の値の頻度の分布(ヒストグラム)は、黒または濃いグレーのレベルに対応する低いレベルと、白または明るいグレーのレベルに対応する高いレベルとの二つのピークを有する。このヒストグラムを用いていわゆる判別分析法による方法などにより、各輝度値を閾値としたときの白レベルおよび黒レベルの分布内での分散と分布間での分散の比率(各分布内分散/分布間分散)を最小とする輝度値を最適な閾値として決定する。この処理を1ラインごとに行い、ラインごとに適応的に自動的に閾値を決定する。なお、閾値の決定には、判別分析法のみならず他の手法を用いても良い。1ライン毎に同様に閾値が算出され、ライン毎の閾値が記憶部に記憶される。
【0027】
1ラインに限らず、輝度ムラの差が大きくなければ、数ラインの領域毎に閾値を算出するようにしても良い。さらに、記録されている画像が1次元バーコードの場合では、水平方向のみに画像が変化するので、数ライン程度の領域毎に閾値を算出しても良い。さらに、水平方向が1ラインを分割したサイズで、垂直方向が数ラインのブロックを単位として閾値を算出しても良い。水平方向にも領域分割を行うことで、例えば照明光の照度ムラが顕著な場合にも対応することができる。
【0028】
閾値算出部14に対して2値化部15が接続される。2値化部15において、各画素が閾値算出部14で算出された閾値によって2値化される。2値化部15からは、各画素がハイレベルとローレベルとの何れかの値を有する2値化信号が出力される。2値化信号が後処理部16に供給される。後処理部は、モルフォロジ処理により2値画像の例えば白の領域に存在する黒部分を穴埋めするための処理を行う。
【0029】
図5および図6を参照して後処理部16の処理について説明する。ここでの処理は、膨張処理(ダイレーション)と、収縮処理(エロージョン)と呼ばれるものである。図5の中央に示すように、矩形の高輝度の画像P1の中心部分に黒いエリアQ1(斜線領域で示す)が存在する画像を想定する。
【0030】
この画像P1を図面に向かって右方向に1画素膨らませた画像P2および左方向に1画素膨らませた画像P3を形成する。さらに、この画像P1を図面に向かって上方向に1画素膨らませた画像P4および下方向に1画素膨らませた画像P5を形成する。
【0031】
次に、これらの移動後の4枚の画像P2〜P5の論理和を計算する。図6Aに示すように、論理和の画像P11が得られる。さらに、元の画像P1の境界の外側の画素を内側へ収縮させることによって、図6Bに示すような黒い領域Q1が埋められた処理後の画像P12が形成される。このようにして、ホログラム再生画像の高輝度の画素からなるエリアに含まれる低輝度の点等が除去される。
【0032】
上述した画像処理によって、図2に示すような輝度ムラを有するQRコード(登録商標)の画像が図7に示すような輝度ムラが除去された画像へ変換される。後処理部16から出力される画像データがデコード処理部17に供給される。デコード処理部17は、ホログラム再生画像の情報を復号して出力端子18へ出力するものである。デコード処理部17が例えばQRコード(登録商標)の復号処理を行い、出力端子18に復号データが出力される。デコード処理部17は、輝度ムラが除去されたホログラム再生画像の2値データを形成し、2値データを復号する。したがって、復号エラーを少なくすることができる。以上、QRコード(登録商標)を例にとって説明してきたが、1次元バーコードや数字やアルファベットから構成されるシリアルナンバなどをホログラム記録し、それらを撮像した画像データを機械読み取りに用いる場合にも本手法は有効である。
【0033】
<2.第2の実施の形態>
図8を参照して画像処理装置の他の例(第2の実施の形態)について説明する。図1に示すような再生装置が使用され、撮像装置3によってホログラム再生画像が得られる。ホログラム再生画像11が先鋭化処理部12に供給され、ぼけが軽減される。先鋭化処理部12の出力データがブラー処理部13に供給される。
【0034】
先鋭化処理部12は、上述した一実施の形態と同様に、点画像が記録された校正用ホログラム画像(点画像)を使用してぼけ関数(フィルタ)を求め、ぼけを補正する逆フィルタを求める。ホログラム再生画像が逆フィルタを通ることによって、ぼけが補正される。ブラー処理部13は、ホログラムの記録時に使用した空間変調器の画素の境界を目立たなくするローパスフィルタ処理を行う。
【0035】
ブラー処理部13の出力信号がゲイン算出部21に供給され、ゲイン算出部21の出力信号がゲイン処理部22に供給される。ゲイン処理部22の出力信号が後処理部16を介してデコード処理部17に供給される。デコード処理部17から出力端子18に復号後のデータが出力される。上述した第1の実施の形態と同様に、後処理部16は、2値画像の例えば白の領域に存在する黒部分の穴埋め処理を行う。デコード処理部17は、ホログラム再生画像の情報を復号して例えばQRコード(登録商標)のデータを出力端子18へ出力する。
【0036】
ゲイン算出部21は、輝度ムラが少ない1ラインに存在する複数画素の輝度を適正な値とするためのゲインを1ライン毎に決定する。上述した第1の実施の形態と同様に、数ラインの領域毎にゲインを算出しても良く、ブロックを単位としてゲインを算出しても良い。適正な値とは、適正露出で撮像された場合と同様の輝度を意味する。適正露出は、デコード処理部17の処理との関係で規定される。
【0037】
すなわち、デコード処理部17には、入力画像信号を2値化する2値化回路が設けられており、その2値化回路が対象とするデジタル画像信号の値として、適正な範囲が存在する。例えばデコード処理部17の2値化回路は、撮影された画像が8ビットの輝度情報を持つ場合、高輝度の画像信号が、例えば8ビットの最大階調である255に対し、80%程度の値として200程度の値を持つことがいわゆる適正露出の撮影条件とされている。ゲイン算出部21およびゲイン処理部22は、デコード処理部17の入力画像信号の値を適正露出の条件とするために設けられている。
【0038】
ゲイン算出部17では、1ライン上に存在する複数画素の値に対していわゆる判別分析法などにより、高いレベルの値の分布と低いレベルの値の分布にクラスわけがされる。クラス分けのしきい値は、デコード処理部17の2値化回路のしきい値と同一とされる。そして、高いレベル(白または明るいグレーのレベル)の平均値が求められる。この平均値を適正露出時の高いレベル(例えば200)とするためのゲインが算出される。ライン毎に算出されたゲインが記憶部に記憶される。
【0039】
ゲイン処理部22では、各画素に対してゲイン算出部21で算出されたゲインが乗じられる。この場合、低いレベルの画素の値が高くなることを防止するために、2値化によって分けられた高いレベルの画素の値のみにゲインを乗じる。さらに、低いレベルの画素の平均値を算出し、平均値を低いレベルの適正な値とするゲインを算出し、低いレベルの画素に対しても、ゲインを乗じるようにしても良い。さらに、1ライン上の全画素の平均値を計算し、平均値を適正な値とするゲインを算出し、このゲインを全画素の値に乗じるようにしても良い。
【0040】
上述した画像処理によって、輝度ムラが存在するホログラム再生画像から輝度ムラが除去される。したがって、デコード処理部17は、輝度ムラが除去されたホログラム再生画像の2値データを形成し、2値データを復号した時に、復号エラーを少なくすることができる。
以上、機械読み取りを前提に説明を行ってきたが、ホログラム記録されたシリアルナンバ等の文字情報を人間が読み取る場合にもホログラムの再生条件に起因する輝度ムラを補正することができる本手法は有効である。
【0041】
<3.変形例>
以上、この発明を適用した具体的な実施形態について説明してきたが、この発明は、これに限定されるものではなく、種々の変形が可能である。例えば再生ホログラム画像が水平方向に輝度ムラを有する場合には、垂直方向に整列する複数画素毎に閾値を設定したり、ゲインを算出するようにしても良い。
【符号の説明】
【0042】
1・・・ホログラム記録媒体
2・・・光源
3・・・撮像装置
11・・・ホログラム再生画像
12・・・先鋭化処理部
14・・・閾値算出部
15・・・2値化部
17・・・デコード処理部
21・・・ゲイン算出部
22・・・ゲイン処理部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホログラム再生画像の輝度ムラが発生する方向とほぼ直交する方向のエリアに存在する複数画素の輝度を検出する検出部と、
前記検出部からの輝度情報によって、前記輝度ムラを補正する画像処理部と
を備えるホログラム再生画像処理装置。
【請求項2】
前記検出部が前記エリアに存在する複数画素の輝度の分布から2値化のためのしきい値を前記エリア毎に決定し、
前記画像処理部が前記しきい値によって2値化を行う請求項1記載のホログラム再生画像処理装置。
【請求項3】
前記検出部が前記エリアに存在する複数画素の輝度を適正な値にするゲインを前記エリア毎に算出し、
前記画像処理部が前記エリアに存在する複数画素に対して前記ゲインを乗じることによって前記輝度ムラを補正する請求項1記載のホログラム再生画像処理装置。
【請求項4】
前記ゲインは、前記輝度ムラの補正後のホログラム再生画像が適正露出で撮影された画像となるように設定される請求項3記載のホログラム再生画像処理装置。
【請求項5】
先鋭化処理部を備え、
点画像を記録した調整用のホログラム画像を作成し、該調整用ホログラム画像を再生し、再生された調整用ホログラム画像から前記先鋭化処理部が先鋭化のための処理を予め決定する請求項1,2または3記載のホログラム再生画像処理装置。
【請求項6】
前記先鋭化処理部に対して、記録に用いた空間変調器の画素の境界を目立たなくする平滑処理部が接続された請求項5記載のホログラム再生画像処理装置。
【請求項7】
ホログラム再生画像の輝度ムラが発生する方向とほぼ直交する方向のエリアに存在する複数画素の輝度を検出する検出ステップと、
前記検出ステップにより検出された輝度情報によって、前記輝度ムラを補正する画像処理ステップと、
を備えるホログラム再生画像処理方法。
【請求項8】
前記検出ステップにおいて、前記エリアに存在する複数画素の輝度の分布から2値化のためのしきい値が前記エリア毎に決定され、
前記画像処理ステップにおいて、前記しきい値によって2値化が行われる請求項7記載のホログラム再生画像処理方法。
【請求項9】
前記検出ステップにおいて、前記エリアに存在する複数画素の輝度を適正な値にするゲインが前記エリア毎に算出され、
前記画像処理ステップにおいて、前記エリアに存在する複数画素に対して前記ゲインを乗じることによって前記輝度ムラを補正する請求項7記載のホログラム再生画像処理方法。

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−13901(P2012−13901A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−149571(P2010−149571)
【出願日】平成22年6月30日(2010.6.30)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【出願人】(594064529)株式会社ソニーDADC (88)
【Fターム(参考)】