説明

ホログラム記録媒体

【課題】ホログラムのセキュリティ性を高くする。
【解決手段】ホログラム記録層51には、ホログラムが記録されている。ホログラム記録層51よりも観察者側に、直線偏光フィルム56およびλ/4位相差フィルム58がこの順に被着され、直線偏光フィルム56の吸収軸と、λ/4位相差フィルム58の遅相軸とのなす角が略45度または略135度とされる。ホログラム記録媒体50への真正な複製時には、ホログラム記録層51に入射する参照光と再生光の偏光方向を同一とできるため、記録される干渉縞の鮮明度が最大となる。ホログラム記録媒体50を原版とした違法なコピーを試みた場合には、参照光の入射側から見たときの参照光および再生光の円偏光の回転方向が互いに逆となる。その結果、複製用ホログラム記録媒体の記録層にホログラム画像は記録されず、コンタクトコピーを防止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、真贋判定目的に使われるホログラムのセキュリティ性を高めることができるホログラム記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
CDカード、プリペイドカード、定期券、通帳、パスポート、身分証明書、商品等が真実なもので偽造されたものでないことを保証するために、立体表示が可能なホログラムが使用されている。現状では、干渉膜を表面の凹凸として記録したエンボス型ホログラムからなるラベル、シール等を対象物に貼着することが広く行われている。しかしながら、エンボス型ホログラムは、偽造されやすい問題があった。これに対して、干渉膜を膜内部の屈折率の差として記録するリップマン型ホログラムは、偽造が極めて困難である。その理由は、記録画像を制作するのに高度な技術が必要とされ、また、記録材料が入手困難なことによる。
【0003】
体積型(リップマン型、ボリューム型ともいう)ホログラムの制作方法としては、被写体にレーザを照射する実写ホログラムと、多視点からの視差画像をもとに記録するホログラフィックステレオグラムとがある。体積型ホログラフィックステレオグラムを制作する過程は、概略的には、画像の取得と、取得した画像の編集等の処理からなるコンテンツ制作工程と、ホログラム原版作成工程と、複製(量産)工程とからなる。画像は、撮像、またはコンピュータグラフィックスにより取得される。画像編集工程で得られた複数の画像のそれぞれが例えば円筒状レンズによって短冊状の画像に変換される。画像の物体光と参照光との干渉縞が短冊状の要素ホログラムとしてホログラム記録媒体に順次記録されることによって原版が作製される。原版を使用したコンタクトプリントによってホログラムが複製(量産)される。すなわち、原版に対してホログラム記録媒体が密着され、レーザ光が照射され、ホログラムが複製される。
【0004】
上述したように、体積型ホログラムは、未露光のホログラム用記録材料を原版に近接させ、記録波長と近い波長のレーザを照射することにより、複製することができる。ホログラム用記録材料は、製作や入手が困難であり、違法な複製を作ることは容易ではない。しかしながら、二重三重にセキュリティ性を向上させるために、適法に複製された真正なホログラムをさらに原版とする違法な複製ができない、または違法に複製したものがオリジナルと違うことが分かる、というような対策が望まれている。
【0005】
真贋判定技術には、一見してわかるオバート(Overt)と呼ばれる技術要素の他、器具な
どを使わないと判定しにくいコバート(Covert)と呼ばれる技術要素も望まれている。ホログラム記録媒体の場合、ホログラムの観察の邪魔となるので、記録済みのホログラムを観察する時に真贋判定のために付加された情報が見えないことが望ましい。
【0006】
コンタクトプリントによる違法な複製を防止する手段として、ホログラムに直線偏光板または1/4波長板を被着することが提案されている(特許文献1参照)。
【0007】
また、ホログラムが違法に複製されたものであるかどうかを判定する技術として、ホログラムの反射層をコレステリック液晶で形成し、直線偏光板と1/4波長板を積層したビューアを用いてホログラムを観察することが提案されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許3342056号公報
【特許文献2】特許3652487号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1に記載の複製防止手段を講じた場合であっても、条件によっては複製が可能となるため、違法な複製を完全に防止することは困難である。すなわち、ホログラムに直線偏光板が被着されている場合においては、コンタクトコピー時の照射レーザ光の振動面を直線偏光板の吸収軸に垂直とすれば、ホログラムからの回折光が十分に得られ、複製が可能となる。また、ホログラムに1/4波長板が被着されている場合においては、照射レーザ光の振動面を1/4波長板の光学軸(遅相軸または進相軸)と平行とすれば、照射レーザ光とホログラムからの回折光の偏光状態は同じとなり、複製が可能となってしまう。
【0010】
一方、特許文献2に記載のホログラムの真贋判定方法は、コレステリック液晶が反射光の偏光状態を制御するものであるということから、干渉膜を膜内部の屈折率の差として記録する体積型ホログラムには、応用ができない。
【0011】
したがって、この発明の目的は、複製による偽造を防止することができ、さらに、真贋判定にコバート要素を提供することが可能なホログラム記録媒体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述した課題を解決するために、この発明は、体積型ホログラムにおいて、ホログラム記録層よりも観察者側に、直線偏光フィルムおよびλ/4位相差フィルムがこの順に被着され、
直線偏光フィルムの吸収軸と、λ/4位相差フィルムの遅相軸とのなす角が略45度または略135度であるホログラム記録媒体である。
【0013】
λ/4位相差フィルムには、パターンニングが施され、
パターンニングされた部分を通過する光の振動成分に生じる位相差およびその光学軸方向が、パターンニングされていない部分を通過する光の振動成分に生じる位相差およびその光学軸方向と異なる。
さらに、パターンニングされた部分は、λ/4位相差フィルムが部分的にくり抜かれたものであり、
くり抜かれた部分には、λ/4位相差フィルムと外観が略同一の等方性材料が充填される。
または、パターンニングされた部分は、λ/4位相差フィルムの厚さが部分的に異なるようにされたものであり、
λ/4位相差フィルムの厚さが部分的に異なるようにされた部分には、λ/4位相差フィルムと外観が略同一の等方性材料が充填される。
【0014】
λ/4位相差フィルムは、ナノインプリントで形成された微細構造である。
【0015】
ホログラム記録層と直線偏光フィルムとの接着力および直線偏光フィルムとλ/4位相差フィルムとの接着力は、ホログラム記録層の自己結集力よりも強くされている。
【0016】
パターンニングは、ナノインプリントによりパターンニングされた微細構造である。
【0017】
ここでいうλ/4位相差フィルムとは、1/4波長板と同じく、振動面が遅相軸に平行な振動成分と振動面が遅相軸に垂直な振動成分との間に、1/4波長(λ/4)の位相差を生じさせる機能を持ったフィルムのことを指す。また、直線偏光フィルムの吸収軸とλ/4位相差フィルムの遅相軸とのなす角とは、直線偏光フィルムの上にλ/4位相差フィルムを重ねたとき、直線偏光フィルムの吸収軸を基準として反時計回りに測ったときの角のことを指している。
【0018】
この発明の構成によれば、この発明にかかる記録媒体への真正な複製時には、ホログラムの記録層に入射する参照光と再生光の偏光方向を同一とできるため、記録される干渉縞の鮮明度が最大となる。さらに、この発明にかかる記録媒体を原版とした違法な複製を試みた場合には、参照光の入射側から見たときの参照光および再生光の円偏光の回転方向が互いに逆となり、光学的に作用をしない。したがって、違法コピーの記録層には、干渉縞が記録されない。
【0019】
また、この発明の構成によれば、この発明にかかる記録媒体に自然光をあてると、反射光は円偏光となる。そのため、直線偏光板と1/4波長板を積層したビューア(以下、ビューアと適宜称する)を用いてこの発明にかかる記録媒体を観察すると、反射光の偏光状態が右回りか左回りかに応じてホログラムが観察できるかどうかが切り替わる。したがって、上述のビューアを用いてホログラムを観察したときに、上述したような切り替わりがなければ、当該ホログラムは、この発明にかかる記録媒体に真正な複製がなされたものではないと判断される。すなわち、当該ホログラムは、違法に複製されたものと判断される。
【発明の効果】
【0020】
この発明では、ホログラム記録層より観察者側に、直線偏光フィルムおよびλ/4位相差フィルムがこの順に被着されるので、オリジナル原版からの複製時には干渉縞の鮮明度を最大としつつ、真正な複製品をさらに原版とした違法コピーを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】この発明を適用できるホログラフィックステレオグラム作成システムの一構成例を示す略線図である。
【図2】ホログラフィックステレオグラム作成時の画像処理の一例の説明に用いる略線図である。
【図3】ホログラム記録媒体の一例を示す断面図である。
【図4】光重合型フォトポリマの感光プロセスを示す略線図である。
【図5】この発明の第1の実施の形態にかかるホログラム記録媒体の断面を示す模式図である。
【図6】直線偏光フィルムの吸収軸とλ/4位相差フィルムの遅相軸のなす角の説明に用いる略線図である。
【図7】コンタクトプリントによる複製装置の概略図である。
【図8】この発明の実施の形態にかかるホログラム記録媒体へコンタクトコピーを行う場合の構成を説明するための略線図である。
【図9】この発明によるホログラム記録媒体の第1の実施の形態の複製防止効果を説明するための略線図である。
【図10】ホログラムが違法に複製されたホログラムでないかどうかを判定する場合の概略図である。
【図11】この発明の第2の実施の形態にかかるホログラム記録媒体の一構成例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、この発明を実施するための形態(以下実施の形態とする)について説明する。なお、説明は、以下の順序で行う。
1.ホログラム原版(オリジナル原版)の作成
2.第1の実施の形態
3.第2の実施の形態
なお、以下に説明する実施の形態は、この発明の好適な具体例であり、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、この発明の範囲は、以下の説明において、特にこの発明を限定する旨の記載がない限り、これらの実施の形態に限定されないものとする。
【0023】
<1.ホログラム原版(オリジナル原版)の作成>
「ホログラフィックステレオグラム作成システム」
先ず、短冊状の複数の要素ホログラムを1つの記録媒体上に記録することにより、水平方向の視差情報を持たせたホログラフィックステレオグラムを構成するための装置について説明する。なお、この発明は、ホログラフィックステレオグラムに限らず、被写体にレーザを照射する実写ホログラムに対しても適用できる。
【0024】
このホログラフィックステレオグラム作成システムは、物体光と参照光との干渉縞が記録されたホログラム記録媒体をそのままホログラフィックステレオグラムとする、いわゆるワンステップホログラフィックステレオグラムを作成するシステムである。図1に示すように、記録対象の画像データの処理を行うデータ処理部1と、このシステム全体の制御を行う制御用コンピュータ2と、ホログラフィックステレオグラム作成用の光学系を有するホログラフィックステレオグラムプリンタ装置3とから構成されている。
【0025】
データ処理部1は、多眼式カメラや移動式カメラ等を備えた視差画像列撮影装置13から供給される視差情報を含む複数の画像データD1に基づいて、視差画像列D3を生成する。他のデータとして、画像データ生成用コンピュータ14によって生成された視差情報を含む複数の画像データD2に基づいて、視差画像列D3を生成する。
【0026】
ここで、視差画像列撮影装置13から供給される視差情報を含む複数の画像データD1は、複数画像分の画像データである。かかる画像データは、例えば、多眼式カメラによる同時撮影、または移動式カメラによる連続撮影等によって、実物体を水平方向の異なる複数の観察点から撮影することにより得られる。
【0027】
また、画像データ生成用コンピュータ14によって視差情報を含む複数の画像データD2が生成される。画像データD2は、例えば、水平方向に順次視差を与えて作成された複数のCAD(Computer Aided Design)画像やCG(Computer Graphics)画像等の画像データである。
【0028】
そして、データ処理部1は、視差画像列D3に対して画像処理用コンピュータ11によってホログラフィックステレオグラム用の所定の画像処理を施す。そして、所定の画像処理が施された画像データD4を、メモリまたはハードディスク等の記憶装置12に記録する。
【0029】
また、データ処理部1は、ホログラム記録媒体に画像を記録する際に、記憶装置12に記録された画像データD4から、1画像分毎にデータを順番に読み出し、この画像データD5を制御用コンピュータ2に送出する。
【0030】
一方、制御用コンピュータ2は、ホログラフィックステレオグラムプリンタ装置3を駆動する。データ処理部1から供給された画像データD5に基づく画像がホログラフィックステレオグラムプリンタ装置3内にセットされたホログラム記録媒体30に、シリンドリカルレンズ43を介して短冊状の要素ホログラムとして順次記録される。
【0031】
このとき、制御用コンピュータ2は、ホログラフィックステレオグラムプリンタ装置3に設けられたシャッタ32、表示装置41および記録媒体送り機構等の制御を行う。すなわち、制御用コンピュータ2は、シャッタ32に制御信号S1を送出してシャッタ32の開閉を制御する。また、表示装置41に画像データD5を供給して表示装置41に当該画像データD5に基づく画像を表示させる。さらに、記録媒体送り機構に制御信号S2を送出して記録媒体送り機構によるホログラム記録媒体30の送り動作を制御する。
【0032】
画像処理は、図2に示すように、視差情報を含む複数の画像データD1のそれぞれを視差方向、例えば、横(幅)方向にスリット状に分割し、分割後のスライスを寄せ集めて処理後の画像D5を再構成するものである。この画像D5が表示装置41に表示される。
【0033】
このホログラムでは、横方向の異なる観察点から順次撮影することにより得られた画像情報が短冊状の要素ホログラムとして横方向に順次記録される。このホログラムを観察者が両目で見たとき、その左右の目にそれぞれ写る2次元画像は若干異なるものとなる。これにより、観察者は視差を感じることとなり、3次元画像が再生されることとなる。
【0034】
上述したように、短冊状の要素ホログラムを順次記録する場合には、水平方向のみに視差を持つHPO(Horizontal Parallax Only)ホログラフィックステレオグラムが作成される。HPO型は、プリントにかかる時間が短く、高画質記録が実現できる。さらに、記録方式において上下視差も入れることもできる。水平方向および垂直方向の両方向に視差を持つホログラムは、FP(Full Parallax) 型のホログラムと称される。
【0035】
「ホログラム記録媒体の一例」
ここで、上述したホログラフィックステレオグラム作成システムにおいて使用されるホログラム記録媒体30の一例について説明する。このホログラム記録媒体30は、図3に示すように、テープ状に形成されたフィルムベース材30a上に光重合型フォトポリマからなるフォトポリマ層30bが形成される。さらに、当該フォトポリマ層30b上にカバーシート30cが被着されることにより形成された、いわゆるフィルム塗布タイプの記録媒体である。
【0036】
光重合型フォトポリマは、初期状態では、図4Aに示すように、モノマMがマトリクスポリマに均一に分散している。これに対して、図4Bに示すように、10〜400mJ/cm2程度のパワーの光LAを照射すると、露光部においてモノマMが重合する。そして、ポリマ化するにつれて周囲からモノマMが移動してモノマMの濃度が場所によって変化し、これにより、屈折率変調が生じる。この後、図4Cに示すように、1000mJ/cm2程度のパワーの紫外線または可視光LBを全面に照射することにより、モノマMの重合が完了する。このように、光重合型フォトポリマは、入射された光に応じて屈折率が変化するので、参照光と物体光との干渉によって生じる干渉縞を、屈折率の変化として記録することができる。
【0037】
このような光重合型フォトポリマを用いたホログラム記録媒体30は、露光後に特別な現像処理を施す必要が無い。したがって、光重合型フォトポリマを感光部に用いたホログラム記録媒体30を使用するこの発明の実施の形態に係るホログラフィックステレオグラムプリンタ装置3は、構成を簡略化することができる。なお、感光材料としては、他の材料を使用することができる。
【0038】
<2.第1の実施の形態>
上述したプリンタ装置によって原版が作成される。以下、このようにして得られたホログラム原版を、オリジナル原版と適宜称する。オリジナル原版に対してホログラム記録媒体が密着され、レーザ光が照射されることによって、オリジナル原版が複製される。
【0039】
「ホログラム記録媒体の積層構造」
この発明の実施の形態にかかるホログラム記録媒体は、画像記録媒体であって、オリジナル原版からの真正な複製を作成する場合に使用される。オリジナル原版としては、上述したホログラム記録媒体30が使用される。フィルム状ベース材に代えてガラス板によってホログラム感光性材料を挟んだ構造を採用しても良い。一方、偽造を目的とする複製の場合には、この発明の実施の形態にかかるホログラム記録媒体を原版としての複製がなされることになる。
【0040】
図5は、この発明の第1の実施の形態にかかるホログラム記録媒体の断面を示す模式図である。
【0041】
図5に示すように、この発明の第1の実施の形態による複製防止機能を有するホログラム記録媒体50は、フォトポリマ等の厚さの厚いホログラム感光材料からなるホログラム記録層51を有する。ホログラム記録層51の観察者側(図5において上部)から反対側には粘着層(接着層とも呼ばれる)52を介在させてセパレータ53が配される。セパレータ53は、PET(ポリエチレン・テレフタレート)等の樹脂からなる剥離フィルムである。粘着層52は、黒色であることが好ましい。黒色とするのは、商品等に貼り付けた場合に、背景が透けて見えると、ホログラムの画像が見にくくなることを防止するためである。なお、ホログラム記録層51と粘着層52との間にブロッキング層54を設けるようにしても良い。
【0042】
ホログラム記録層51の観察者側には、透明な接着層55を介して、直線偏光フィルム56が被着されている。直線偏光フィルム56の上部には、透明な接着層57を介して、λ/4位相差フィルム58が被着されている。さらに、λ/4位相差フィルム58の上部にはハードコートなどによる透明な保護層59が形成されている。
【0043】
図6に示すように、直線偏光フィルムの吸収軸61とλ/4位相差フィルムの遅相軸62のなす角ξが略45度または略135度をなすように、直線偏光フィルム56およびλ/4位相差フィルム58が配される。直線偏光フィルム56およびλ/4位相差フィルム58は、ホログラム記録媒体50からの違法な複製防止のために配されている。
【0044】
直線偏光フィルム56としては、例えば、ヨウ素で染色したPVA(ポリビニルアルコール)フィルムを一軸延伸加工したもの等を使用することができる。透明性が高く、所望の偏光状態を得られるものであれば、その他の材料を用いても構わない。
【0045】
λ/4位相差フィルム58の素材としては、例えば、PC(ポリカーボネート)、PVA(ポリビニルアルコール)、PA(ポリアリレート)、Psu(ポリサルフォン)、PO(ポリオレフィン)、COP(シクロオレフィンポリマー)等を使用することができる。透明性が高く、所望の偏光状態を得られるものであれば、その他の材料を用いても構わない。
【0046】
また、高アスペクトで微細構造を形成するいわゆるナノインプリントで、この位相差フィルム機能を持たせることもできる。ナノインプリントは、金型に刻み込んだ数十nm〜数百nmの凹凸を基板上の樹脂材料に押し付けて形状を転写する加工方法である。一例として、透明基材に対し、レーザ光の波長等に応じた寸法の微細構造をナノインプリントで形成する。
【0047】
これら直線偏光フィルム56およびλ/4位相差フィルム58は、フィルムとして配されることに限られるものではなく、シート状であってもよい。
【0048】
接着層55および57としては、例えば透明で、紫外線の照射によって硬化し、大きな剥離強度を有する紫外線硬化樹脂(UV(UltraViolet)レジンと称する)を用いることができる。接着層55および57の接着力は、ホログラム記録層51の自己結集力または破断強度に対して、強くされていることが望ましい。その理由は、コピー防止効果を無くそうとして、直線偏光フィルム56またはλ/4位相差フィルム58を剥がそうとすると、ホログラム記録層51が破壊され、複製できなくなるからである。
【0049】
ホログラム記録層51は、感光性材料として例えば屈折率Nが1.52のフォトポリマを使用し、入射される光の明暗を屈折率の差として記録することができる。ホログラム記録層51として要求される特性は、下記のものである。
高回折効率(例えば90%以上)、回折波長半値幅:5〜30nm、高感度(例えば20mJ/cm2以下)、収縮率が低いこと
【0050】
保護層59は、傷の防止、帯電防止、フィルム形状形成、並びにホログラム形状の安定化のために設けられている。保護層59は、例えばUVレジンによって形成される。保護層59に要求される特性は、下記のものである。
高い表面硬度(傷つき防止のため)、低い表面抵抗、耐熱性(例えば100〜120°C)、低い吸湿性、良好な接着性および材料密着性、感光性材料にほぼ等しい光学屈折率(例えば1.52)、低い複屈折性(例えば±15nm(波長が633nmに対して))、低いヘイズ(表面または内部の不明瞭なくもり(外観上)の度合いのことをヘイズという)、高い透明性、表面の平滑性が良好なこと、薄い膜厚とできること(例えば20μm以下)
【0051】
ブロッキング層54は、材料透過防止とホログラム形状の安定化のために設けられている。感光性材料が粘着層52に対して化学反応を起こすために、ブロッキング層54が設けられる。ブロッキング層54に要求される特性は、下記のものである。
耐溶剤性(感光性材料を液状とするための溶剤によって化学的ダメージを受けない)、耐熱性(例えば100〜120°C)、低い吸湿性、良好な接着性および材料密着性、薄い膜厚とできること(例えば20μm以下)
【0052】
上述したホログラム記録媒体は、塗布、接着等によって各層を形成することによって製造される。該ホログラム記録媒体に対し、コンタクトプリントによってオリジナル原版のホログラムが複製される。または、製造過程において、コンタクトプリントによってオリジナル原版のホログラムを複製し、複製後に、直線偏光フィルム56およびλ/4位相差フィルム58をホログラム記録層51に貼り合わせるようにしてもよい。
【0053】
「コンタクトプリント」
図7は、コンタクトプリントによる複製装置の概略図である。図7に示すように、コンタクトプリントによる複製装置は、レーザ光源70からのレーザ光が空間フィルタ71によって拡大され、コリメーションレンズ72に入射される。コリメーションレンズ72によって平行光とされたレーザ光が感光性材料を含むホログラム記録媒体73およびホログラム原版74に照射される。
【0054】
ホログラム原版74は、上述したように制作され、観察時に水平方向に視差を有する反射型ホログラム例えば体積型ホログラムである。感光性材料の層を有するホログラム記録媒体73およびホログラム原版74は、直接密着されるか、屈折率調整液(インデックスマッチング液と称される)を介して密着される。ホログラム記録媒体73には、ホログラム原版74によって回折した光(S偏光)と、入射レーザ光とによって形成される干渉縞が記録される。
【0055】
「オリジナル原版の複製」
図8を参照して、オリジナル原版300を、この発明の実施の形態にかかるホログラム記録媒体50にコンタクトプリントにより複製する場合の構成の一例を説明する。
【0056】
まず、図8に示すように、オリジナル原版300およびこの発明にかかるホログラム記録媒体が配置される。オリジナル原版300は、上述したように反射型ホログラム、例えば体積型ホログラムである。この発明にかかるホログラム記録媒体のλ/4位相差フィルム58、直線偏光フィルム56および記録層51と、オリジナル原版300とが、参照光の入射する側からこの順に配置される。なお、図8では、各層間における偏光状態を分かりやすくするため、λ/4位相差フィルム58、直線偏光フィルム56および記録層51と、オリジナル原版300とを互いに離して図示しており、記録に直接関与しない接着層などは除いて図示してある。この例においては、後述するように、ホログラム記録層51に十分なレーザ光を照射するために、記録媒体およびオリジナル原版300に入射させるレーザ光は円偏光であることが望ましい。
【0057】
λ/4位相差フィルム58の遅相軸62と直線偏光フィルム56の吸収軸61とが、参照光81の入射側からみたときに、図6Aのように設定されており、かつ直線偏光フィルム56の吸収軸61が図8の紙面と平行方向に設定されていたとする。この場合、参照光81のほとんどをホログラム記録層51に照射するためには、参照光81として、右回りの円偏光を入射させる必要がある。以下、本明細書においては、光の進行方向と逆方向を向いたときに、電場ベクトルの変化が光軸に関して時計回り(光の進行方向を向いたときには反時計回り)となる円偏光を「右回り」円偏光として説明する。
【0058】
次に、各層における偏光状態について詳しく説明する。まず、図8の左側から右回り円偏光とされたレーザ光が参照光81として入射される。図8では、円弧状の矢印により、入射レーザ光が右回り円偏光であることを示している。この入射レーザ光は、λ/4位相差フィルム58を通過すると、λ/4位相差フィルム58の遅相軸62と平行な方向の振動成分の位相がπ/2だけ遅れ、直線偏光として出射される。図8では、内側の円が黒く塗りつぶされた二重丸の印により、λ/4位相差フィルム58を通過した入射レーザ光が紙面と垂直な方向に振動する直線偏光となっていることを示している。このとき、直線偏光とされた参照光の振動面は、λ/4位相差フィルム58の遅相軸62と、略45°の角度をなす。λ/4位相差フィルム58の遅相軸62と直線偏光フィルム56の吸収軸61とのなす角度が略45°とされていることから、直線偏光とされた参照光81の振動面は直線偏光フィルム56の吸収軸61と垂直になる。したがって、直線偏光とされた参照光81は直線偏光フィルム56を透過する。すなわち、右回り円偏光として入射した参照光81は、直線偏光に変換されたのちにホログラム記録層51を透過して、オリジナル原版300に到達することになる。
【0059】
オリジナル原版300に到達した参照光81は、オリジナル原版300によって回折され、再生光82として反射される。図8に示すように、オリジナル原版300によって回折された再生光82はS偏光であり、ホログラム記録層51に入射する参照光81と再生光82の偏光方向は同一となるので、干渉縞の鮮明度が最大となる。
【0060】
なお、再生光82は直線偏光フィルム56を通過したのちにλ/4位相差フィルム58をさらに通過するが、λ/4位相差フィルム58の通過後は右回りの円偏光として出射される。
【0061】
「この発明にかかる記録媒体を原版としての複製」
次に、図9を参照して、この発明にかかるホログラム記録媒体50を原版として、コンタクトプリントにより複製する場合を説明する。言い換えれば、オリジナル原版の複製からさらに複製を得ようとする違法な複製を試みた場合について説明する。
【0062】
図9Aは、違法な複製を行う場合の構成を示す模式図である。複製用ホログラム記録媒体90は、例えば透明なベース部材90aに対して、ホログラム記録層90bが塗布等により形成されたものである。ホログラム記録層90bが、この発明の実施の形態にかかるホログラム記録媒体50に密着された状態で、レーザ光91がベース部材90aを通じて照射される。レーザ光91の偏光状態は、ホログラム記録媒体50からの再生光を十分得るためには、オリジナル原版300からの複製時と同じ円偏光であることが望ましい。
【0063】
図9Bに、この発明にかかるホログラム記録媒体50をさらにコンタクトコピーしようとした場合の構成の一例を示す。なお、説明の便宜上、この発明にかかるホログラム記録媒体50については、λ/4位相差フィルム58、直線偏光フィルム56およびホログラム記録層51のみを図示している。
【0064】
この場合においては、オリジナル原版からの真正な複製時と異なり、図9Bに示すように、違法コピーに用いる複製用ホログラム記録媒体90の記録層と、この発明にかかるホログラム記録媒体50のλ/4位相差フィルム58、直線偏光フィルム56および記録層51とが、参照光92の入射する側からこの順に配置されることになる。違法コピーに用いる記録媒体90の記録層と、この発明の実施の形態にかかるホログラム記録媒体50の記録層との間に、λ/4位相差フィルム58および直線偏光フィルム56が介在した配置となる点で、オリジナル原版の複製時とは異なっている。
【0065】
このとき、λ/4位相差フィルム58の遅相軸62と、直線偏光フィルム56の吸収軸61とは、参照光92の入射側からみたときに、図6Aに示す関係となり、かつ直線偏光フィルム56の吸収軸が図9Bの紙面と平行方向であるとする。この場合には、ホログラム記録媒体50からの再生光を十分得るためには、参照光92は右回りの円偏光でなければならない。
【0066】
右回りの円偏光の参照光92は、λ/4位相差フィルム58および直線偏光フィルム56をこの順に通過し、直線偏光となってホログラム記録層51に到達する。ホログラム記録層51に到達した参照光92は、ホログラム記録層51で回折され、S偏光の再生光93として反射される。この再生光93は、直線偏光フィルム56およびλ/4位相差フィルム58をこの順に通過し、複製用ホログラム記録媒体90に到達する。このとき、複製用ホログラム記録媒体90に到達した再生光93は右回り円偏光となっている。
【0067】
すなわち、複製用ホログラム記録媒体90を参照光入射側から見たときに参照光92は反時計回りの円偏光であるが、再生光93は時計回りとなっていて、回転方向が互いに逆となっている。したがって、参照光92と再生光93の干渉性が著しく悪くなるため、複製用ホログラム記録媒体90の記録層にホログラム画像は記録されず、コンタクトコピーを防止することができる。
【0068】
上述したように、この発明によれば、真正な複製(量産)時には干渉縞の鮮明度が最大
としながらも、コンタクトコピーを防止することができる。さらに、この発明の実施の形態によれば、ホログラムの観察に何ら不具合を生じさせないため、一見しただけではこのような違法コピー防止手段が講じられていることが判別できないという特長がある。
【0069】
「ビューアを用いたホログラムの真正性の判定」
次に、この発明の実施の形態によれば、コンタクトコピーを防止するだけではなく、直線偏光板と1/4波長板を積層したビューアを用いてホログラムの真正性を判定することが可能である点について説明する。
【0070】
図10は、観察しているホログラムがこの発明にかかるホログラム記録媒体であるかどうか、すなわち、違法に複製されたホログラムでないかどうかを判定する場合の概略図である。いま、観察者100は、ビューア110を通してこの発明にかかるホログラム記録媒体50を観察しているとする。
【0071】
ビューア110は、観察者100に近い側から順に直線偏光板106と1/4波長板108が積層されたものであり、直線偏光板106の吸収軸と、1/4波長板108の遅相軸とのなす角は、略45度または略135度とされる。そのため、直線偏光板106の吸収軸と、1/4波長板108の遅相軸とのなす角が、略45度であるか略135度であるかに応じて、ビューア110は右回りか左回りのどちらかの円偏光のみを透過するフィルタとして作用する。
【0072】
いま、ホログラム記録媒体50におけるλ/4位相差フィルム58の遅相軸62と、直線偏光フィルム56の吸収軸61が、図6Aのように設定されたホログラム記録媒体50に、自然光101が入射されたとする。このとき、直線偏光フィルム56の吸収軸61と垂直な方向に振動面を持つ直線偏光がホログラム記録媒体50の記録層に到達し、回折および反射する。これは、自然光がλ/4位相差フィルム58を通過しても、ランダムな偏光がそれぞれに位相が変化するだけで全体としては自然光のままであり、結果として直線偏光フィルム56だけが被着された場合と同じになるからである。反射光(直線偏光)は、直線偏光フィルム56を透過し、λ/4位相差フィルム58をさらに通過する。このとき、λ/4位相差フィルム58の遅相軸62と、直線偏光フィルム56の吸収軸61が図6Aのように設定されているため、観察者へは右回り円偏光102が出射されてくることになる。
【0073】
仮に、観察者100が右回り円偏光のみを透過するビューアと、左回り円偏光のみを透過するビューアを持っていたとする。まず、右回り円偏光のみを透過するビューアを用いて、自然光101をあてたホログラム記録媒体50を観察したとすると、観察者100は、ホログラム記録媒体50に記録されたホログラムを観察することができる。次に、左まわり円偏光のみを透過するビューアを用いて、同じホログラム記録媒体50を観察したとすると、反射してきた再生光102はビューアに遮られ、観察者100はホログラム記録媒体50に記録されたホログラムを見ることができない。ホログラム記録媒体50におけるλ/4位相差フィルム58の遅相軸62と、直線偏光フィルム56の吸収軸61が、図6Bのように設定されていた場合には、反射光は左回り円偏光として出射されるので、この関係は逆になる。このことから、右回り円偏光のみを透過するビューアと、左回り円偏光のみを透過するビューアのどちらかを通してのみホログラムが観察できるホログラム記録媒体は、λ/4位相差フィルムおよび直線偏光フィルムが被着されていると判断される。すなわち、観察しているホログラムが真正に記録されたものであると判定される。
【0074】
上述したように、第1の実施形態によれば、ホログラムの観察の邪魔にならないようにしながらも、ビューアのような器具を用いて、一見してこのホログラムが複製防止手段の施された真正品であることが判別可能とできる。すなわち、複製による偽造を防止する手段と、コバート要素を同時に提供することができる。
【0075】
<2.第2の実施の形態>
「位相差フィルムへのパターンニング」
図11に、この発明の第2の実施の形態にかかるホログラム記録媒体の一構成例を示す。図11Aは、この発明の第2の実施の形態にかかるホログラム記録媒体の一構成例を示した上面図であり、図11Bは、この発明の第2の実施の形態にかかるホログラム記録媒体の一構成例を示した断面の模式図である。
【0076】
第2の実施の形態においては、ホログラム記録媒体50が直線偏光フィルム56およびλ/4位相差フィルム58を備えている点で、第1の実施の形態と共通する。しかし、第2の実施の形態においては、図11Aに示すように、λ/4位相差フィルム58の一部がパターン例えば「COPY」という文字のパターンが予めくり抜かれている。
【0077】
λ/4位相差フィルム58は、ホログラム記録層51に対して空気を介さずに(例えば等方性のある透明なUVレジン層57によって)直線偏光フィルム56に密着されている。このとき、直線偏光フィルム56の吸収軸61とλ/4位相差フィルム58の遅相軸62とのなす角が略45度または略135度となるように、直線偏光フィルム56にλ/4位相差フィルム58が被着される。λ/4位相差フィルム58とUVレジン層57とは、屈折率も透過率も近いもので空気無く充たされているため、一見したところ、この「COPY」の文字は見えない。したがって、ホログラムを観察する上で文字が邪魔とならない。さらに、半硬化状態のUVレジン層57に対してλ/4位相差フィルム58を貼り合わせることによって、切り抜き部分に対してUVレジンが入り込んだ状態とすることができる。UVレジン層57のUVレジンに限らず、UVレジン層57の材質以外のλ/4位相差フィルム58と色、透過度がほぼ同一の材質をくり抜かれた部分に充填しても良い。
【0078】
ホログラム記録媒体50を原版としてコンタクトコピーしようとした場合、第1の実施の形態に関する説明と同様に、参照光の偏光状態は円偏光であることが望ましい。しかしながら、このように構成されたホログラム記録媒体50を原版としてコンタクトプリントによる複製を行うと、λ/4位相差フィルム58を通過する部分とUVレジン層57しか通過しない部分とでは複製に寄与する偏光成分が異なったものとなる。すなわち、ホログラム記録媒体50の「COPY」というパターン以外の部分からの再生光は、第1の実施の形態における場合と同様に、参照光の入射する側から見たときの円偏光の回転方向が参照光の円偏光の回転方向と逆となる。したがって、この部分のホログラム画像はコンタクトコピーされない。一方、UVレジン層が充填された「COPY」というパターンの部分の再生光の偏光状態は直線偏光となるため、円偏光である参照光の一部と干渉が起きる。よって、ホログラム記録媒体50をコンタクトコピーしようとすると、「COPY」というパターンがウォーターマークのように記録される。
【0079】
このように、この発明の第2の実施形態にかかるホログラム記録媒体を原版として複製を行った場合には、UVレジン層が充填されたパターン以外の部分は、複製後のホログラムに記録されない。
【0080】
真贋判定目的に使われるホログラムとしては、同じものが違法に複製されては困るため、上述のようなパターニングを形成することで、原版と同じものができないようにしておくことは意義がある。
【0081】
λ/4位相差フィルム58に切り抜かれるパターンとしては、「COPY」のような文字である必要は無く、模様等でも良い。さらに、レーザ加工や放電加工、電子線ビーム加工などによりマイクロ文字やマイクロ模様を記録することも可能である。さらに、個別ID、個人の顔写真、指紋等の個別情報を記録しても良い。
【0082】
パターンニングは、完全にフィルムを切り抜く必要はない。パターンニングされた部分とそれ以外の部分とで、λ/4位相差フィルム58の厚さを変えるようにしておいてもよい。また、ナノインプリントで、このパターンニングされた位相差フィルム機能を持たせることもできる。さらに、部分的にこの微細構造を面内直交方向に変化させることによってパターニングした材料を使うことができる。すなわち、パターンニングされた部分とそれ以外の部分とで、遅相軸が直交するようにしても良い。さらに、ナノインプリントによってマイクロ文字を刻み込むようにしても良い。
【0083】
なお、接着層55および57の接着力は、ホログラム記録層51の自己結集力または破断強度に対して強くなるようにされる。したがって、直線偏光フィルム56またはλ/4位相差フィルム58を剥がそうとすると、λ/4位相差フィルム58または直線偏光フィルム56が剥がれる前にホログラム自体が脆弱破壊する。このために、違法コピーをしようと該パターニングされたフィルムを剥がそうとしても先にホログラム自体が破壊される。
【0084】
第2の実施の形態にかかるホログラム記録媒体を、第1の実施の形態と同様に、右まわりまたは左回り円偏光のみを透過するビューアを通して、自然光の下でホログラム記録媒体50を観察したとする。直線偏光はビューア110を透過するため、再生光と逆回りの円偏光のみを透過するビューアで観察した場合には、「COPY」というパターンのみが出現して観察されることになる。したがって、観察しているホログラム記録媒体に、違法複製防止の手段が講じられていることが一見して判別できる。
【0085】
第2の実施の形態によれば、ホログラムの観察の邪魔にならないようにしながらも、コンタクトコピーを行った場合には、UVレジン層が充填されたパターン以外の部分は複製されず、したがって違法な複製を防止することができる。さらに、ビューアのような器具を用いて、一見してこのホログラムが複製防止手段の施されたオリジナルの真正品であることが判別可能とできる。すなわち、第1の実施形態と同様に、複製による偽造を防止する手段と、コバート要素を同時に提供することができる。
【0086】
以上、この発明の実施の形態について説明したが、この発明は、上述したこの発明の実施の形態に限定されるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲内で様々な変形や応用が可能である。
【0087】
例えば、ビューアを用いたホログラムの真正性の判定には、目視ではなく、撮像部と画像処理部を組み合わせた認識手段によっても良い。
【0088】
以上に述べたように、この発明にかかるホログラム記録媒体によれば、オリジナル原版からの複製時には干渉縞の鮮明度を最大としつつ、真正な複製品をさらに原版とした違法コピーを防止することができる。さらに、ビューアを用いて、観察している記録媒体の真贋判定を容易に行うことができる。
【符号の説明】
【0089】
300 ・・・オリジナル原版
51 ・・・ホログラム記録層
52 ・・・粘着層
53 ・・・セパレータ
54 ・・・ブロッキング層
55、57・・・UVレジン層
56 ・・・直線偏光フィルム
58 ・・・λ/4位相差フィルム
59 ・・・保護層
61 ・・・吸収軸
62 ・・・遅相軸
106 ・・・直線偏光板
108 ・・・1/4波長板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
体積型ホログラムにおいて、ホログラム記録層よりも観察者側に、直線偏光フィルムおよびλ/4位相差フィルムがこの順に被着され、上記直線偏光フィルムの吸収軸と、上記λ/4位相差フィルムの遅相軸とのなす角が略45度または略135度であるホログラム記録媒体。
【請求項2】
上記λ/4位相差フィルムには、パターンニングが施され、
上記パターンニングされた部分を通過する光の振動成分に生じる位相差およびその光学軸方向が、上記パターンニングされていない部分を通過する光の振動成分に生じる位相差およびその光学軸方向と異なる請求項1に記載のホログラム記録媒体。
【請求項3】
上記パターンニングされた部分は、上記λ/4位相差フィルムが部分的にくり抜かれたものであり、
上記くり抜かれた部分には、上記λ/4位相差フィルムと外観が略同一の等方性材料が充填されていることを特徴とする請求項2に記載のホログラム記録媒体。
【請求項4】
上記パターンニングされた部分は、上記λ/4位相差フィルムの厚さが部分的に異なるようにされたものであり、
上記λ/4位相差フィルムの厚さが部分的に異なるようにされた部分には、上記λ/4位相差フィルムと外観が略同一の等方性材料が充填されていることを特徴とする請求項2に記載のホログラム記録媒体。
【請求項5】
上記λ/4位相差フィルムは、ナノインプリントで形成された微細構造である請求項1または2に記載のホログラム記録媒体。
【請求項6】
上記ホログラム記録層と上記直線偏光フィルムとの接着力および上記直線偏光フィルムと上記λ/4位相差フィルムとの接着力は、上記ホログラム記録層の自己結集力よりも強くされた請求項1または2に記載のホログラム記録媒体。
【請求項7】
上記パターンニングは、ナノインプリントによりパターンニングされた微細構造である請求項2に記載のホログラム記録媒体。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2011−174978(P2011−174978A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−37140(P2010−37140)
【出願日】平成22年2月23日(2010.2.23)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【出願人】(594064529)株式会社ソニーDADC (88)
【Fターム(参考)】