ホログラム記録材料及びホログラム記録媒体
【課題】記録層の形態を安定的に維持でき、高い回折効率が達成されるホログラム記録材料及びホログラム記録媒体を提供する。
【解決手段】光ラジカル重合性化合物(A)と光重合開始剤(B)と分散媒(C)とを含むホログラム記録材料。前記分散媒(C)は、一般式(I)及び一般式(IIの化合物からなる群より選ばれるビニル基含有化合物である。
【解決手段】光ラジカル重合性化合物(A)と光重合開始剤(B)と分散媒(C)とを含むホログラム記録材料。前記分散媒(C)は、一般式(I)及び一般式(IIの化合物からなる群より選ばれるビニル基含有化合物である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、体積型ホログラム記録に適したホログラム記録材料、及び前記ホログラム記録材料からなるホログラム記録層を有するホログラム記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
感光性樹脂を用いた体積型ホログラム記録材料が数多く提案され、実用化されているものもある。感光性樹脂は一般にフォトポリマーと呼ばれ、フォトポリマーからなるホログラム記録材料は、従来のハロゲン化銀感光材料などと比較し、現像処理を必要としないことが大きな利点となっている。
【0003】
ホログラム記録用の典型的なフォトポリマー材料は、例えば、光重合性モノマー(a) 、バインダーポリマー(b) 、可塑剤(c) 及び光重合開始剤(d) からなる。層状に形成されたフォトポリマー材料からなるホログラム記録材料に、干渉パターンが重畳された記録光を照射することにより、該干渉パターンが記録材料中に屈折率差(屈折率変調:Δn)として記録される。このときの記録材料における反応機構は以下のように考えられている。すなわち、露光により、干渉パターンの明部で光重合開始剤(d) が開裂し、それをトリガーとして、近傍に存在する光重合性モノマー(a) が重合する。これに伴い、明部では未反応モノマーの濃度が減少し、暗部との間にモノマーの濃度勾配が生じる。生じた濃度勾配を補償するため、暗部から明部に未反応モノマーが拡散し、明部でさらにモノマーの重合反応が進行する。結果として、明部では光重合性モノマー(a) の重合体が多く存在するようになる。このとき、光重合性モノマー(a) (及びその重合体)と他の成分との間で屈折率差が大きくなるように各成分を選んでおけば、光の明暗に応じたパターンが屈折率変調(Δn)として記録される。
【0004】
可塑剤(c) は、ホログラム記録材料中の光重合性モノマー(a) の拡散を促すために必要である。より具体的には、ホログラム記録材料の粘度の低減により、モノマー(a) の拡散が促進されると考えられる。モノマーの拡散は、Fickの法則からモノマーの拡散係数Dに比例するが、拡散係数Dは系の粘度ηの逆数に比例することが知られている(Stokes-Einstein の関係)。従って、低粘度の可塑剤を系中に多量に添加することにより、モノマーの拡散係数Dを大きくし、記録時のモノマー移動を促進することができる。しかしながら、実際に多量の可塑剤を添加することは難しい。記録層は数10μm〜数100μm程度の膜厚で用いられることが多いが、多量の可塑剤により記録材料の粘度が極端に低下すると、記録層の形態を維持することが困難になる。また、可塑剤としては光重合性を有しないものを用いることが一般的であるが、このような可塑剤は記録後も液状のまま記録材料層中に残留する。従って、適切な封止処理を施しておかなければ、記録後に徐々に可塑剤がブリードアウトする(染み出す)といった不具合を生じる恐れがある。
【0005】
例えば、特開2001−282082号公報には、アリル系プレポリマー(A)とラジカル重合性化合物(B)と粘度低下剤(C)と光重合開始剤(D)とを含むホログラム記録材料組成物が開示されている。粘度低下剤(C)は、アリル系プレポリマー(A)及び/又はラジカル重合性化合物(B)とは非反応性の化合物(C1)であるか、又は分子内に(メタ)アリル基を有する化合物(C2)であることが開示されている(段落[0083])。
非反応性の粘度低下剤(C1)として、同公報には、ジメチルフタレート、ジエチルフタレートに代表されるフタル酸エステル類; ジメチルアジペート、ジブチルアジペート、ジメチルセバケート、ジエチルサクシネートに代表される脂肪族二塩基酸エステル類; グリセリルトリアセテート、2−エチルヘキシルアセテートに代表される酢酸エステル類; アルキレングリコールアルキルエーテル等が開示されている(段落[0084])。
(メタ)アリル基を有する化合物(C2)として、同公報には、(メタ)アリルアルコール等のモノ(メタ)アリル化合物; アジピン酸ジ(メタ)アリル、セバシン酸ジ(メタ)アリル、フタル酸ジ(メタ)アリル、イソフタル酸ジ(メタ)アリル、テレフタル酸ジ(メタ)アリル等のジ(メタ)アリル化合物が開示されている(段落[0087])。
【0006】
また、特許第4232001号公報、及び特許第4325404号公報においても、可塑剤として、上記の非反応性の粘度低下剤(C1)と同様のものが開示されている(特許第4232001号公報の7頁46行〜8頁23行、特許第4325404号公報の7頁39行〜8頁19行)。
【0007】
一方、特開平3−36582号公報、及び特開平3−249685号公報には、光重合性モノマーの分散剤の役割を兼ねるマトリクスとして、アリルジグリコールカーボネート(ADC)を用いたホログラム記録材料が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2001−282082号公報
【特許文献2】特許第4232001号公報
【特許文献3】特許第4325404号公報
【特許文献4】特開平3−36582号公報
【特許文献5】特開平3−249685号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記特許文献1に開示されているような非反応性の粘度低下剤(C1)や、特許文献2、3の非反応性の可塑剤では、記録露光時における光重合性モノマーの拡散促進作用が十分ではなく、高い回折効率は達成されない。十分な光重合性モノマーの拡散促進作用を得るためには、多量の前記可塑剤を用いて、ホログラム記録材料の粘度を低くする必要がある。そうすると、上述したような弊害(記録層の形態維持が困難であること、ブリードアウト)が生じる。
【0010】
一方、特許文献4、5に開示されているアリルジグリコールカーボネート(ADC):CH2=CH-CH2-OCO-O-CH2CH2-O-CH2CH2-O-COO-CH2-CH=CH2 (ADC)
はラジカル重合性を有するが、光重合性モノマーとして用いられている3−フェノキシ−2−ヒドロキシプロピルアクリレートよりも反応性が低く、且つ屈折率が低い。従って、上記ホログラム記録材料を干渉露光することにより、ADCと光重合性モノマーとの反応速度差に基づくミクロ相分離が生じ、結果として干渉縞を材料中に屈折率変調として記録することができる。しかしながら、ADCと光重合性モノマーとの反応速度差や相分離能は必ずしも十分ではないため、高い回折効率を得ることはできない。この点については、後述の比較例2に実証されている。上記特許文献1に開示されているような(メタ)アリル基を有する化合物(C2)についても同様である。
【0011】
本発明の目的は、記録層の形態を安定的に維持でき、高い回折効率が達成されるホログラム記録材料及びホログラム記録媒体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは鋭意検討し、光ラジカル重合性モノマーを分散する分散媒として、ビニル基を含有する特定構造の化合物を用いると、従来の可塑剤を多量に用いて記録材料の粘度を低くすることなく、記録露光時における光重合性モノマーの十分な拡散移動促進作用が得られ、且つ、記録露光後に前記ビニル基含有化合物をポストキュアさせることにより記録層に固定できることを見出した。
【0013】
本発明には、以下の発明が含まれる。
(1) (メタ)アクリロイル基を有する光ラジカル重合性化合物(A)と、光重合開始剤(B)と、前記光ラジカル重合性化合物(A)及び前記光重合開始剤(B)を分散する分散媒(C)とを少なくとも含むホログラム記録材料であって、
前記分散媒(C)は、一般式(I):
【化1】
[式中、R11は、炭素数1〜12の2価の炭化水素基、又は
−(L11O)e −L12−基(ここで、L11及びL12は、同一又は異なっていてもよく、炭素数1〜6の2価の炭化水素基を表し、L11及びL12の炭素数の合計は2〜12であり、eは(L11O)単位の繰り返し数を表し、L11は(L11O)単位によって異なっていてもよい。)、又は
−O(L13O)f −(L14O)g −基(ここで、L13及びL14は、同一又は異なっていてもよく、炭素数1〜6の2価の炭化水素基を表し、L13及びL14の炭素数の合計は2〜12であり、fは(L13O)単位の繰り返し数を表し、L13は(L13O)単位によって異なっていてもよく、gは(L14O)単位の繰り返し数を表し、L14は(L14O)単位によって異なっていてもよい。)を表す。
R12及びR13は、同一又は異なっていてもよく、炭素数2〜16の炭化水素基であって、且つR12及びR13のうちの少なくとも1つは、2つ以上のsp3 炭素を介して孤立しているビニル基を有する。]
で表される化合物、及び
一般式(II):
【化2】
[式中、R21は、炭素数1〜12の2価の炭化水素基、又は
−(L21O)i −L22−基(ここで、L21及びL22は、同一又は異なっていてもよく、炭素数1〜6の2価の炭化水素基を表し、L21及びL22の炭素数の合計は2〜12であり、iは(L21O)単位の繰り返し数を表し、L21は(L21O)単位によって異なっていてもよい。)を表す。
R22及びR23は、同一又は異なっていてもよく、炭素数2〜16の炭化水素基であって、且つR22及びR23のうちの少なくとも1つは、2つ以上のsp3 炭素を介して孤立しているビニル基を有する。]
で表される化合物
からなる群より選ばれるビニル基含有化合物を含む、ホログラム記録材料。
【0014】
(2) 前記一般式(I)におけるR11が、炭素数1〜12の2価の鎖状飽和炭化水素基又は鎖状不飽和炭化水素基であり、及び/又は
前記一般式(II)におけるR21が、炭素数1〜12の2価の鎖状飽和炭化水素基又は鎖状不飽和炭化水素基である、上記(1) に記載のホログラム記録材料。
【0015】
(3) 前記分散媒(C)としてさらに、一般式(III) :
【化3】
(式中、R31は炭素数2〜4の2価の炭化水素基を表し、R32及びR33は、同一又は異なっていてもよく、炭素数1〜10の炭化水素基を表す。l及びmはエチレンオキシド単位の繰り返し数を表し、k及びnはプロピレンオキシド単位の繰り返し数を表し、k、l、m及びnは、互いに独立して0以上5以下の数である。前記エチレンオキシド単位及び前記プロピレンオキシド単位は、ランダム配列されていても、又はブロック配列されていてもよい。)
で表される化合物、及び
一般式(IV):
【化4】
(式中、R41は炭素数1〜6の2価の炭化水素基を表し、R42及びR43は、同一又は異なっていてもよく、炭素数1〜12の炭化水素基であって、且つR42及びR43のうちの少なくとも1つは炭素数5〜12の炭化水素基を表す。)
で表される化合物
からなる群より選ばれる非反応性化合物を含む、上記(1) 又は(2) に記載のホログラム記録材料。
【0016】
(4) 前記一般式(III) におけるR31が、2価のアセチレンユニット(−C≡C−)である、上記(3) に記載のホログラム記録材料。
【0017】
(5) 前記一般式(IV)におけるR41が、炭素数1〜6の2価の鎖状飽和炭化水素基又は鎖状不飽和炭化水素基である、上記(3) 又は(4) に記載のホログラム記録材料。
【0018】
(6) 前記光ラジカル重合性化合物(A)は、一般式(V):
【化5】
(式中、R51及びR52は、同一又は異なっていてもよく、(ベンゼン環側)−OCH2 CH2 −基、又は(ベンゼン環側)−OCH2 CH(OH)CH2 −基を表し、R53及びR54は、同一又は異なっていてもよく、水素原子又はメチル基を表す。)
で表される化合物、
一般式(VI):
【化6】
(式中、R61は、単結合、又はヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数5以下の2価の有機基を表し、R62は、水素原子又はメチル基を表す。Xは、Cl原子、Br原子又はI原子を表し、pは0〜5の整数である。)
で表される化合物、
一般式(VII) :
【化7】
(式中、R71は、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数5以下の2価の有機基を表し、R72は、水素原子又はメチル基を表す。)
で表される化合物、及び
一般式(VIII):
【化8】
(式中、R81及びR82は、同一又は異なっていてもよく、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数10以下の2価の有機基を表し、R83及びR84は、同一又は異なっていてもよく、水素原子又はメチル基を表す。Xは、Cl原子、Br原子又はI原子を表し、q及びrは互いに独立して0〜4の整数である。)
で表される化合物
からなる群から選ばれる化合物を含む、上記(1) 〜(5) のうちのいずれかに記載のホログラム記録材料。
【0019】
(7) 前記光ラジカル重合性化合物(A)、前記光重合開始剤(B)、及び前記分散媒(C)の配合重量比が、
前記光ラジカル重合性化合物(A)10〜70重量部、
前記光重合開始剤(B)3〜20重量部、
前記分散媒(C)25〜80重量部、
である、上記(1) 〜(6) のうちのいずれかに記載のホログラム記録材料。
【0020】
(8) 前記ホログラム記録材料はさらに、バインダーポリマー(D)を含んでいる、上記(1) 〜(7) のうちのいずれかに記載のホログラム記録材料。
【0021】
(9) 前記光ラジカル重合性化合物(A)、前記光重合開始剤(B)、前記分散媒(C)及び前記バインダーポリマー(D)の配合重量比が、
前記光ラジカル重合性化合物(A)10〜70重量部、
前記光重合開始剤(B)3〜20重量部、
前記分散媒(C)5〜30重量部、
前記バインダーポリマー(D)20〜80重量部、
である、上記(8) に記載のホログラム記録材料。
【0022】
(10) 基材と、前記基材上に形成された上記(1) 〜(9) のうちのいずれかに記載のホログラム記録材料からなるホログラム記録層とを有している画像記録用ホログラム記録媒体。
【発明の効果】
【0023】
本発明のホログラム記録材料は、(メタ)アクリロイル基を有する光ラジカル重合性化合物(A)及び光重合開始剤(B)を分散する分散媒(C)として、上記一般式(I)で表される化合物、及び一般式(II)で表される化合物からなる群より選ばれる特定構造のビニル基含有化合物を含んでいる。
【0024】
前記特定構造のビニル基含有化合物は、分子内に2つのエステル結合(−O−CO−)基[場合によっては、カーボネート結合(−O−CO−O−)基]と炭化水素基を有しており、記録露光時における光ラジカル重合性化合物(A)の拡散移動促進が得られ、また、高い相分離性も得られる。また、前記特定構造のビニル基含有化合物は、2つ以上のsp3 炭素を介して孤立しているビニル基(すなわち、アリル基ではない)を有しており、アリル基(特にアリルエステル基)含有化合物よりも反応性が低い。このため、記録露光時において、光ラジカル重合性モノマーである(メタ)アクリル酸エステル(A)との反応速度差は十分に大きくなる。このため、本発明のホログラム記録材料によれば、高い回折効率が達成される。
【0025】
さらに、前記特定構造のビニル基含有化合物は、アリル基含有化合物よりも反応性が低いものであるが、記録露光後に後露光して前記ビニル基含有化合物をポストキュアさせることにより記録層に固定できる。そのため、記録層の経時による劣化は非常に少ない。ホログラム記録材料において従来より用いられていたような可塑剤を多量に用いる必要がないので、従来の可塑剤に起因する弊害はない。
【0026】
このようにして、本発明によれば、記録層の形態を安定的に維持でき、高い回折効率が達成されるホログラム記録材料及びホログラム記録媒体が提供される。ホログラム記録媒体は各種データの記録用のみならず、画像記録用として好適である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】実施例で用いられたホログラム記録光学系の概略を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明のホログラム記録材料は、(メタ)アクリロイル基を有する光ラジカル重合性化合物(A)と、光重合開始剤(B)と、前記光ラジカル重合性化合物(A)及び前記光重合開始剤(B)を分散する分散媒(C)とを少なくとも含む組成物である。本発明のホログラム記録媒体は、基材と、前記基材上に形成された前記本発明のホログラム記録材料からなるホログラム記録層とを有している。本明細書において、ホログラム記録層をホログラム記録材料層ということもある。
【0029】
前記光ラジカル重合性化合物(A)は、分子中に少なくとも1つの芳香環と少なくとも1つの(メタ)アクリロイル基とを有する化合物である。分子中への芳香環の導入により、屈折率は高くなる。ここで、(メタ)アクリロイル基とは、メタクリロイル基及びアクリロイル基を総称する意味である。
【0030】
光ラジカル重合性化合物(A)としては、分子中に芳香環を有する単官能又は多官能の(メタ)アクリル酸エステルモノマーから選択するとよい。また、(メタ)アクリル酸エステルモノマーの2量体、3量体などのオリゴマーであってもよい。
【0031】
光ラジカル重合性化合物(A)として、一般式(V)〜(VIII)のいずれかで表される化合物を用いることができる。
【0032】
【化9】
【0033】
一般式(V)において、R51及びR52は、同一又は異なっていてもよく、(ベンゼン環側)−OCH2 CH2 −基、又は(ベンゼン環側)−OCH2 CH(OH)CH2 −基を表す。R53及びR54は、同一又は異なっていてもよく、水素原子又はメチル基を表す。具体的には、9,9−ビス[4−(2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン等が挙げられる。
【0034】
【化10】
【0035】
一般式(VI)において、R61は、単結合、又はヘテロ原子(例えば酸素原子、硫黄原子)を含んでいてもよい炭素数5以下の2価の有機基を表す。R62は、水素原子又はメチル基を表す。Xは、Cl原子、Br原子又はI原子を表し、pは0〜5の整数である。ハロゲン原子(Cl、Br又はI)が導入されると、化合物の屈折率が高くなる。
【0036】
R61の具体例としては、単結合、−CH2 −、−CH2 CH2 −、(ベンゼン環側)−OCH2 CH2 −、(ベンゼン環側)−(OCH2 CH2 )n −、(ベンゼン環側)−(OCH(CH3 )CH2 )n −、(ベンゼン環側)−OCH2 CH(OH)CH2 )−、(ベンゼン環側)−SCH2 CH2 −等が挙げられる。
【0037】
上記R61の具体例に対応する式(VI)の化合物を例示すると、2,4,6−トリブロモフェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェネチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、EO変性フェニル(メタ)アクリレート、PO変性フェニル(メタ)アクリレート、エピクロルヒドリン(ECH)変性フェノキシ(メタ)アクリレート、フェニルチオエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0038】
【化11】
【0039】
一般式(VII) において、R71は、ヘテロ原子(例えば酸素原子)を含んでいてもよい炭素数5以下の2価の有機基を表す。R72は、水素原子又はメチル基を表す。R71の具体例としては、−CH2 CH2 −、(カルバゾール環のN側)−CH2 CH2 −(OCH2 CH2 )n −等が挙げられる。具体的には、2−(9−カルバゾリル)エチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0040】
【化12】
【0041】
一般式(VIII)において、R81及びR82は、同一又は異なっていてもよく、ヘテロ原子(例えば酸素原子、硫黄原子)を含んでいてもよい炭素数10以下の2価の有機基を表す。R83及びR84は、同一又は異なっていてもよく、水素原子又はメチル基を表す。Xは、Cl原子、Br原子又はI原子を表し、q及びrは互いに独立して0〜4の整数である。ハロゲン原子(Cl、Br又はI)が導入されると、化合物の屈折率が高くなる。
【0042】
R81及びR82の具体例としては、−CH2 −、−CH2 CH2 −、(ベンゼン環側)−OCH2 CH2 −、(ベンゼン環側)−(OCH2 CH2 )n −、(ベンゼン環側)−(OCH(CH3 )CH2 )n −、(ベンゼン環側)−OCH2 CH(OH)CH2 )−、(ベンゼン環側)−SCH2 CH2 −等が挙げられる。具体的には、EO変性テトラブロモビスフェノールA(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0043】
上記の他に、一般式(V)〜(VIII)で表される化合物には属しないものとして、フルフリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0044】
上記の光ラジカル重合性モノマーの1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。本発明において、光ラジカル重合性モノマー(及びそれの重合体)を高屈折率成分とするために、上記の光ラジカル重合性化合物の屈折率は、例えば1.50以上が好ましく、1.55以上がより好ましい。屈折率の上限は特に定められないが、1.70以下程度である。2種以上の光ラジカル重合性モノマーを併用する場合には、それらの屈折率の加重平均が上記のようになるように用いるとよい。なお、屈折率とは、Na D線での20℃における屈折率n20/Dである。
【0045】
光重合開始剤(B)としては、記録光の波長に対応するもの、すなわち、記録レーザ光を吸収してラジカルを発生するものを用いる。例えば、
ベンゾインエチルエーテル、ベンゾフェノン、ジエトキシアセトフェノン等のカルボニル化合物;
トリブチルベンジル錫等の有機錫化合物;
テトラブチルアンモニウム・トリフェニルブチルボレート、トリフェニル−n−ブチルボレート等のアルキルアリールホウ素塩;
ジフェニルヨードニウム塩等のオニウム塩類;
η5−シクロペンタジエニル−η6−クメニル−アイアン(1+)−ヘキサフルオロフォスヘェイト(1−)等の鉄アレーン錯体;
トリス(トリクロロメチル)トリアジン等のトリハロゲノメチル置換トリアジン化合物;3,3’−ジ(tert−ブチルパーオキシカルボニル)−4,4’−ジ(メトキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’,4,4’−テトラ(tert−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、ジ−tert−ブチルパーオキシイソフタレート、2,5−ジメチル−2,5−ビス(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、tert−ブチルパーオキシベンゾエート等の有機過酸化物;
2,2’−ビス(o−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニル−1,1’−ビスイミダゾール等のビスイミダゾール誘導体
等が挙げられる。
【0046】
光重合開始剤の市販のものとしては、例えば、ダロキュア1173、イルガキュア784 、イルガキュア651 、イルガキュア184 、イルガキュア907 (いずれもチバスペシャルティ・ケミカルズ社製)、BT−2(チッソ(株)製)等を用いてもよい。
【0047】
上記の光重合開始剤の1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。光重合開始剤(B)の含有量は、ホログラム記録材料組成物の不揮発分を基準として、例えば3〜20重量%程度、好ましくは3〜10重量%程度である。
【0048】
ホログラム記録材料組成物は、光重合開始剤の他に記録光波長に対応した光増感剤として機能する色素などを含有してもよい。光増感剤としては、例えば、チオキサンテン−9−オン、2,4−ジエチル−9H−チオキサンテン−9−オン等のチオキサントン類、キサンテン類、シアニン類、メロシアニン類、チアジン類、アクリジン類、アントラキノン類、及びスクアリリウム類等が挙げられる。光増感剤の1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。光増感剤の使用量は、光重合開始剤(B)の0.5〜50重量%程度、好ましくは0.5〜10重量%程度とするとよい。
【0049】
分散媒(C)は、前記光ラジカル重合性化合物(A)及び前記光重合開始剤(B)を分散するものであり、一般式(I)で表されるビニル基含有化合物、及び一般式(II)で表されるビニル基含有化合物からなる群より選ばれる。
【0050】
【化13】
【0051】
一般式(I)において、R11は、炭素数1〜12の2価の炭化水素基、又は
−(L11O)e −L12−基(ここで、L11及びL12は、同一又は異なっていてもよく、炭素数1〜6の2価の炭化水素基を表し、L11及びL12の炭素数の合計は2〜12であり、eは(L11O)単位の繰り返し数を表し、L11は(L11O)単位によって異なっていてもよい。)、又は
−O(L13O)f −(L14O)g −基(ここで、L13及びL14は、同一又は異なっていてもよく、炭素数1〜6の2価の炭化水素基を表し、L13及びL14の炭素数の合計は2〜12であり、fは(L13O)単位の繰り返し数を表し、L13は(L13O)単位によって異なっていてもよく、gは(L14O)単位の繰り返し数を表し、L14は(L14O)単位によって異なっていてもよい。)を表す。R11は置換基としてアリル基を有することはない。
【0052】
R11が表す炭素数1〜12の2価の炭化水素基としては、メチレン基[−CH2 −]、エチレン基[−(CH2 )2 −]、プロピレン基[−(CH2 )3 −]、ブチレン基[−(CH2 )4 −]、ペンチレン基[−(CH2 )5 −]、ヘキシレン基[−(CH2 )6 −]、ヘプチレン基[−(CH2 )7 −]、オクチレン基[−(CH2 )8 −]、デシレン基[−(CH2 )10−]、ウンデシレン基[−(CH2 )11−]、ドデシレン基[−(CH2 )12−]等の鎖状飽和炭化水素基が挙げられる。また、−CH=CH−(cis体、trans体)、−CH=C(CH3 )−(cis体、trans体)等の鎖状不飽和炭化水素基が挙げられる。
【0053】
R11が表す−(L11O)e −L12−基において、L11及びL12が表す炭素数1〜6の2価の炭化水素基としては、上記のうちから炭素数1〜6の2価の炭化水素基が挙げられる。−(L11O)e −L12−基として、例えば、−(CH2 )2 O(CH2 )2 −、−(CH2 )2 O(CH2 )2 O(CH2 )2 −等が例示される。
【0054】
R11が表す−O(L13O)f −(L14O)g −基において、L13及びL14が表す炭素数1〜6の2価の炭化水素基としては、上記のうちから炭素数1〜6の2価の炭化水素基が挙げられる。−O(L13O)f −(L14O)g −基として、例えば、−O(CH2 )2 O(CH2 )2 O−、−O(CH2 )2 O(CH2 )2 O(CH2 )2 O−等が例示される。
【0055】
R12及びR13は、同一又は異なっていてもよく、炭素数2〜16の炭化水素基であって、且つR12及びR13のうちの少なくとも1つは、2つ以上のsp3 炭素を介して孤立しているビニル基(すなわち、アリル基ではない)を有する。R12及び/又はR13がビニル基を有する場合には、炭素数4〜16となる。R12及びR13はいずれも、アリル基を有することはない。
【0056】
R12及びR13が表す炭素数2〜16の炭化水素基としては、前記ビニル基を有しない場合、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、 sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基等の脂肪族炭化水素基が挙げられる。炭素数が2未満であると、十分な相分離性が得られなくなる。一方、炭素数が16を超えると、他の成分との相溶性が悪化し、ホログラム記録材料層の白濁などを招く恐れがある。
【0057】
前記ビニル基を有するR12及び/又はR13は、炭素数4〜16のビニル基含有炭化水素基:
−R14−CH=CH2
として表される。ここで、R14は、2つ以上のsp3 炭素を含んでいる炭素数2〜14の2価の脂肪族炭化水素基であり、例えば、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、ヘプチレン基、オクチレン基、デシレン基、ウンデシレン基、ドデシレン基、トリデシレン基、テトラデシレン基等の2価の鎖状飽和炭化水素基が挙げられる。R12及び/又はR13が2つ以上のsp3 炭素を介して孤立しているビニル基を有する場合の炭素数は4以上必要であるし、これにより十分な相分離性が得られる。一方、炭素数が16を超えると、他の成分との相溶性が悪化し、ホログラム記録材料層の白濁などを招く恐れがある。
【0058】
R12及びR13の両者が、−R14−CH=CH2 であれば、記録露光後のポストキュアにより記録層への固定化がより確実となるので好ましい。また、R12及びR13が共に同一の−R14−CH=CH2 であることが、次に示す合成反応の観点からも好ましい。
【0059】
一般式(I)のビニル基含有化合物は、例えば、ジカルボン酸HOOC−R11−COOH、又はその無水物、又はジカルボン酸クロライドCl−OC−R11−CO−Cl、又はジカルボン酸ブロマイドBr−OC−R11−CO−Brと、R12OH及びR13OHとのエステル化反応により、合成することができる。
【0060】
また、一般式(I)のビニル基含有化合物においてR11が−O(L13O)f −(L14O)g −である場合(カーボネート縮合である場合)、同化合物は、例えば、ホスゲンとアルコールとの反応によって合成するか、あるいは、炭酸ジフェニルとアルコールとのエステル交換反応によって合成することができる。
【0061】
一般式(I)のビニル基含有化合物の具体例としては、
ジ(3−ブテン−1−イル)マロネート
CH2=CH-CH2CH2-OCO-CH2-COO-CH2CH2-CH=CH2
ジ(4−ペンテン−1−イル)マロネート
CH2=CH-(CH2)3-OCO-CH2-COO-(CH2)3-CH=CH2
ジ(5−ヘキセン−1−イル)マロネート
CH2=CH-(CH2)4-OCO-CH2-COO-(CH2)4-CH=CH2
ジ(3−ブテン−1−イル)スクシネート
CH2=CH-CH2CH2-OCO-(CH2)2-COO-CH2CH2-CH=CH2
ジ(4−ペンテン−1−イル)スクシネート
CH2=CH-(CH2)3-OCO-(CH2)2-COO-(CH2)3-CH=CH2
ジ(5−ヘキセン−1−イル)スクシネート
CH2=CH-(CH2)4-OCO-(CH2)2-COO-(CH2)4-CH=CH2
ジ(3−ブテン−1−イル)セバケート
CH2=CH-CH2CH2-OCO-(CH2)8-COO-CH2CH2-CH=CH2
ジ(4−ペンテン−1−イル)セバケート
CH2=CH-(CH2)3-OCO-(CH2)8-COO-(CH2)3-CH=CH2
ジ(5−ヘキセン−1−イル)セバケート
CH2=CH-(CH2)4-OCO-(CH2)8-COO-(CH2)4-CH=CH2
【0062】
ジ(3−ブテン−1−イル)マレエート(cis) 又はフマレート(trans)
CH2=CH-CH2CH2-OCO-CH=CH-COO-CH2CH2-CH=CH2
ジ(3−ブテン−1−イル)シトラコネート(cis) 又はメサコネート(trans)
CH2=CH-CH2CH2-OCO-CH=C(CH3)-COO-CH2CH2-CH=CH2
等が挙げられる。
【0063】
【化14】
【0064】
一般式(II)において、R21は、炭素数1〜12の2価の炭化水素基、又は
−(L21O)i −L22−基(ここで、L21及びL22は、同一又は異なっていてもよく、炭素数1〜6の2価の炭化水素基を表し、L21及びL22の炭素数の合計は2〜12であり、iは(L21O)単位の繰り返し数を表し、L21は(L21O)単位によって異なっていてもよい。)を表す。R21は置換基としてアリル基を有することはない。
【0065】
R21が表す炭素数1〜12の2価の炭化水素基としては、メチレン基[−CH2 −]、エチレン基[−(CH2 )2 −]、プロピレン基[−(CH2 )3 −]、ブチレン基[−(CH2 )4 −]、ペンチレン基[−(CH2 )5 −]、ヘキシレン基[−(CH2 )6 −]、ヘプチレン基[−(CH2 )7 −]、オクチレン基[−(CH2 )8 −]、デシレン基[−(CH2 )10−]、ウンデシレン基[−(CH2 )11−]、ドデシレン基[−(CH2 )12−]等の鎖状飽和炭化水素基が挙げられる。
【0066】
また、これらアルキレン基のC−C単結合の一部が、C=C二重結合に置き換えられた炭素数4〜12の2価の鎖状不飽和炭化水素基が挙げられる。炭素数4〜12の2価の鎖状不飽和炭化水素基としては、
2−ブテン−1,4−ジイル基[−CH2 −CH=CH−CH2 −]、
2−ペンテン−1,5−ジイル基[−CH2 −CH=CH−(CH2 )2 −]、
3−ヘキセン−1,6−ジイル基[−(CH2 )2 −CH=CH−(CH2 )2 −]、
2−ヘプテン−1,7−ジイル基[−CH2 −CH=CH−(CH2 )4 −]、
3−ヘプテン−1,7−ジイル基[−(CH2 )2 −CH=CH−(CH2 )3 −]、
2−オクテン−1,8−ジイル基[−CH2 −CH=CH−(CH2 )5 −]、
3−オクテン−1,8−ジイル基[−(CH2 )2 −CH=CH−(CH2 )4 −]、
4−オクテン−1,8−ジイル基[−(CH2 )3 −CH=CH−(CH2 )3 −]、
2−ノネン−1,9−ジイル基[−CH2 −CH=CH−(CH2 )6 −]、
3−ノネン−1,9−ジイル基[−(CH2 )2 −CH=CH−(CH2 )5 −]、
4−ノネン−1,9−ジイル基[−(CH2 )3 −CH=CH−(CH2 )4 −]、
等が挙げられる。
【0067】
R21が表す−(L21O)i −L22−基において、L21及びL22が表す炭素数1〜6の2価の炭化水素基としては、上記のうちから炭素数1〜6の2価の炭化水素基が挙げられる。例えば、−(CH2 )2 O(CH2 )2 −、−(CH2 )2 O(CH2 )2 O(CH2 )2 −等が例示される。
【0068】
R22及びR23は、同一又は異なっていてもよく、炭素数2〜16の炭化水素基であって、且つR22及びR23のうちの少なくとも1つは、2つ以上のsp3 炭素を介して孤立しているビニル基(すなわち、アリル基ではない)を有する。R22及び/又はR23がビニル基を有する場合には、炭素数4〜16となる。R22及びR23はいずれも、アリル基を有することはない。
【0069】
R22及びR23が表す炭素数2〜16の炭化水素基としては、前記ビニル基を有しない場合、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、 sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基等の脂肪族炭化水素基が挙げられる。炭素数が2未満であると、十分な相分離性が得られなくなる。一方、炭素数が16を超えると、他の成分との相溶性が悪化し、ホログラム記録材料層の白濁などを招く恐れがある。
【0070】
前記ビニル基を有するR22及び/又はR23は、次式の炭素数4〜16のビニル基含有炭化水素基:
−R24−CH=CH2
として表される。ここで、R24は、2つ以上のsp3 炭素を含んでいる炭素数2〜14の2価の脂肪族炭化水素基であり、例えば、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、ヘプチレン基、オクチレン基、デシレン基、ウンデシレン基、ドデシレン基、トリデシレン基、テトラデシレン基等の2価の鎖状飽和炭化水素基が挙げられる。R22及び/又はR23が2つ以上のsp3 炭素を介して孤立しているビニル基を有する場合の炭素数は4以上必要であるし、これにより十分な相分離性が得られる。一方、炭素数が16を超えると、他の成分との相溶性が悪化し、ホログラム記録材料層の白濁などを招く恐れがある。
【0071】
R22及びR23の両者が、−R24−CH=CH2 であれば、記録露光後のポストキュアにより記録層への固定化がより確実となるので好ましい。また、R22及びR23が共に同一の−R24−CH=CH2 であることが、次に示す合成反応の観点からも好ましい。
【0072】
一般式(II)のビニル基含有化合物は、例えば、ジオールHO−R21−OHと、カルボン酸R22COOH及びR23COOH、又はカルボン酸クロライドR22COCl及びR23COCl、又はジカルボン酸ブロマイドR22COBr及びR23COBrとのエステル化反応により、合成することができる。
【0073】
一般式(II)のビニル基含有化合物の具体例としては、
エチレングリコール二(10−ウンデセン酸)エステル
CH2=CH-(CH2)8-CO-OCH2CH2O-CO-(CH2)8-CH=CH2
ジエチレングリコール二(10−ウンデセン酸)エステル
CH2=CH-(CH2)8-CO-O(CH2CH2O)2-CO-(CH2)8-CH=CH2
トリエチレングリコール二(10−ウンデセン酸)エステル
CH2=CH-(CH2)8-CO-O(CH2CH2O)3-CO-(CH2)8-CH=CH2
エチレングリコール二(7−オクテン酸)エステル
CH2=CH-(CH2)5-CO-OCH2CH2O-CO-(CH2)5-CH=CH2
ジエチレングリコール二(7−オクテン酸)エステル
CH2=CH-(CH2)5-CO-O(CH2CH2O)2-CO-(CH2)5-CH=CH2
トリエチレングリコール二(7−オクテン酸)エステル
CH2=CH-(CH2)5-CO-O(CH2CH2O)3-CO-(CH2)5-CH=CH2
等が挙げられる。
【0074】
分散媒として、上記一般式(I)又は(II)のビニル基含有化合物の1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0075】
上記分散媒の屈折率は、例えば1.50以下がよく、1.50未満が好ましい。屈折率の下限は特に定められないが、1.40以上程度である。2種以上の分散媒を併用する場合には、それらの屈折率の加重平均が上記のようになるように用いるとよい。また、より大きい屈折率変調を得るために、用いる光ラジカル重合性モノマー(A)の屈折率の加重平均が、用いる分散媒(C)の屈折率の加重平均よりも大きくなるようにする必要がある。
【0076】
上記一般式(I)又は(II)の特定構造のビニル基含有化合物は、分子内に2つのエステル結合(−O−CO−)基[場合によっては、カーボネート結合(−O−CO−O−)基]と炭化水素基を有しており、記録露光時における光ラジカル重合性化合物(A)の拡散移動促進が得られ、また、高い相分離性も得られる。また、前記特定構造のビニル基含有化合物は、2つ以上のsp3 炭素を介して孤立しているビニル基(すなわち、アリル基ではない)を有しており、アリル基(特にアリルエステル基)含有化合物よりも反応性が低い。このため、記録露光時において、光ラジカル重合性モノマーである(メタ)アクリル酸エステル(A)との反応速度差は十分に大きくなる。このため、本発明のホログラム記録材料によれば、高い回折効率が達成される。
【0077】
さらに、前記特定構造のビニル基含有化合物は、アリル基含有化合物よりも反応性が低いものであるが、記録露光後に後露光して前記ビニル基含有化合物をポストキュアさせることにより記録層に固定できる。そのため、記録層の経時による劣化は非常に少ない。
【0078】
このように、上記一般式(I)又は(II)の特定構造のビニル基含有化合物は、記録露光時においては光ラジカル重合性化合物(A)の拡散移動促進作用を有し、且つ、記録露光後においては後露光によってビニル基がラジカル反応しポストキュアする反応性を有する。従って、上記一般式(I)又は(II)のビニル基含有化合物を、以下に述べる一般式(III) 又は(IV)の非反応性化合物との対比において、反応性分散剤(Creactive)ということがある。
【0079】
本発明において、分散媒(C)として、さらに、一般式(III) で表される化合物、及び一般式(IV)で表される化合物からなる群より選ばれる非反応性化合物を用いることができる。これら化合物(III) 又は(IV)は、末端C=C二重結合を有しておらず、記録露光後における後露光によっても反応性がない。従って、非反応性分散剤(Cnon-reactive)ということがある。
【0080】
【化15】
【0081】
一般式(III) において、R31は炭素数2〜4の2価の炭化水素基を表す。R31が表す炭化水素基としては、アセチレンユニット(−C≡C−)、ジアセチレンユニット(−C≡C−C≡C−)、エチレンユニット(−CH=CH−)、−CH2 CH2 −、−CH2 CH2 CH2 CH2 −等が挙げられる。これらのうち、アセチレンユニット(−C≡C−)が好ましい。
【0082】
R32及びR33は、同一又は異なっていてもよく、炭素数1〜10の炭化水素基を表す。R32及びR33が表す炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、 sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、デシル基等のアルキル基(鎖状飽和脂肪族炭化水素基)が挙げられる。
【0083】
l及びmはエチレンオキシド単位の繰り返し数を表し、k及びnはプロピレンオキシド単位の繰り返し数を表し、k、l、m及びnは、互いに独立して0以上5以下の数である。前記エチレンオキシド単位及び前記プロピレンオキシド単位は、ランダム配列されていても、又はブロック配列されていてもよい。エチレンオキシド単位の繰り返し数、及び/又はプロピレンオキシド単位の繰り返し数を増加させることによって、より親水的になり、親水親油バランスHLBが大きくなる。
【0084】
一般式(III) の化合物の具体例としては、2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール、2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール エトキシレート(重量平均分子量Mw=395、l=m=1.92に相当)、2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール エトキシレート(重量平均分子量Mw=700、l=m=5.39に相当)等が挙げられる。
【0085】
【化16】
【0086】
一般式(IV)において、R41は炭素数1〜6の2価の脂肪族炭化水素基を表す。R41が表す炭化水素基としては、メチレン基[−CH2 −]、エチレン基[−(CH2 )2 −]、プロピレン基[−(CH2 )3 −]、ブチレン基[−(CH2 )4 −]、ペンチレン基[−(CH2 )5 −]、ヘキシレン基[−(CH2 )6 −]等の鎖状飽和炭化水素基が挙げられる。また、−CH=CH−(cis体、trans体)、−CH=C(CH3 )−(cis体、trans体)等の鎖状不飽和炭化水素基が挙げられる。
【0087】
R42及びR43は、同一又は異なっていてもよく、炭素数1〜12の炭化水素基であって、且つR42及びR43のうちの少なくとも1つは炭素数5〜12の炭化水素基を表す。R42及びR43が表す炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、 sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基等のアルキル基(鎖状飽和脂肪族炭化水素基)が挙げられる。
【0088】
一般式(IV)の化合物の具体例としては、マロン酸ジペンチル、マロン酸ジヘキシル、コハク酸ジドデシル、コハク酸ビス(2−エチルヘキシル)、グルタル酸ジドデシル、アジピン酸ビス(2−エチルヘキシル)、アジピン酸ジデシル、スベリン酸ジドデシル等の飽和脂肪族ジカルボン酸エステル類; マレイン酸ビス(2−エチルヘキシル)、フマル酸ビス(2−エチルヘキシル)、シトラコン酸ジドデシル、メサコン酸ジドデシル等の不飽和脂肪族ジカルボン酸エステル類が挙げられる。
【0089】
上記一般式(III) 又は(IV)の非反応性分散媒の1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0090】
上記非反応性分散媒の屈折率は、例えば1.50以下がよく、1.50未満が好ましい。屈折率の下限は特に定められないが、1.40以上程度である。非反応性分散剤を用いる場合には、反応性分散媒(Creactive)と非反応性分散剤(Cnon-reactive)との屈折率の加重平均が上記のようになるように用いるとよい。また、より大きい屈折率変調を得るために、用いる光ラジカル重合性モノマー(A)の屈折率の加重平均が、用いる分散媒(C)の屈折率の加重平均よりも大きくなるようにする必要がある。
【0091】
本発明において、分散媒(C)として、一般式(III) 又は(IV)の化合物を含んでいると、記録露光時において、光ラジカル重合性化合物(A)のより高い拡散移動促進が得られ、より高い回折効率が達成される。
【0092】
上記一般式(III) の化合物、及び一般式(IV)の化合物によって、光重合性化合物のより高い拡散促進が得られる理由は次のように考えられる。
これら分散媒化合物は、非イオン性界面活性剤の機能を有している。すなわち、一般式(III) の化合物では、2つのOH基(またはOH基末端を有するポリエチレンオキシド/ポリプロピレンオキシド鎖)が親水基であり、該2つの親水基が所定鎖長の炭化水素基(−C−R31−C−)によって結合されている。一般式(IV)の化合物では、2つのエステル結合が親水基として作用し、該2つのエステル結合が所定鎖長の炭化水素基(−R41−)によって結合されている。このように両化合物は、2つの親水基が所定鎖長の炭化水素基によって結合される構造を有しており、親水基と疎水基の立体的及び極性的なバランスによって、(メタ)アクリロイル基を有するラジカル重合性化合物(A)の拡散移動が促進されると考えられる。
【0093】
ホログラム記録材料はさらに、バインダーポリマー(D)を含んでいることが好ましい。バインダーポリマー(D)は、ホログラム記録材料において、マトリクスとしての機能を有する。
【0094】
バインダーポリマー(D)としては、前記光ラジカル重合性モノマー(A)、前記光重合開始剤(B)、及び前記分散媒(C)のいずれとも相溶性がよく有機溶剤に可溶なポリマーを用いる。ここでのポリマーとは、オリゴマー(低重合度で分子量の小さい高分子)をも含む概念である。
【0095】
バインダーポリマー(D)としては、例えば、エチレン性不飽和二重結合を有するモノマーの単独重合体、又は該モノマーと共重合可能な他のモノマーとの共重合体、ジオールとジカルボン酸との縮合重合体、ヒドロキシカルボン酸の重合体、セルロース誘導体等の熱可塑性樹脂を用いることができる。
【0096】
熱可塑性樹脂の具体例としては、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルブチラート、ポリビニルホルマール、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリアクリル酸又はポリメタクリル酸のエステル、セルロースアセテート、セルローストリアセテート、セルロースアセテートブチラート、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン−酢酸ビニル共重合体等、種々のものが挙げられる。
【0097】
また、バインダーポリマー(D)として、(メタ)アリル基を有する化合物を用いてもよい。ここで、(メタ)アリル基とは、メタリル基(2−メチル−2−プロペニル基)及びアリル基を総称する意味である。具体例としては、トリ(メタ)アリルイソシアヌレートのプレポリマー、ジ(メタ)アリルフタレートのプレポリマー、ジ(メタ)アリルイソフタレートのプレポリマー等が挙げられる。
【0098】
バインダーポリマーの1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。バインダーポリマーとして、ラジカル重合反応性を有していない熱可塑性樹脂と(メタ)アリル基を有する化合物とを適宜比率で併用してもよい。
【0099】
上記バインダーポリマーの屈折率は、例えば1.58以下が好ましい。屈折率の下限は特に定められないが、1.40以上程度である。2種以上のバインダーポリマーを併用する場合には、それらの屈折率の加重平均が上記のようになるように用いるとよい。また、より大きい屈折率変調を得るために、用いる光ラジカル重合性モノマー(A)の屈折率の加重平均が、用いる分散媒(C)の屈折率とバインダーポリマー(D)の屈折率の加重平均よりも大きくなるようにする必要がある。
【0100】
ホログラム記録材料はさらに、可塑剤(E)を含んでいてもよい。可塑剤(E)は、前記光ラジカル重合性化合物(A)、前記分散媒(C)及び前記バインダーポリマー(D)のいずれとも異なるものであり、且ついずれとも非反応性のものである。
【0101】
可塑剤(E)としては、ホログラム記録材料において用いられている可塑剤を用いることができる。例えば、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル等のフタル酸エステル類; コハク酸ジエチル、アジピン酸ジメチル、アジピン酸ジエチル、アジピン酸ジブチル、セバシン酸ジメチル、セバシン酸ジエチル等の脂肪族ジカルボン酸エステル類; グリセリルトリアセテート、酢酸2−エチルヘキシル等の酢酸エステル類; 等を用いることができる。ただし、上記脂肪族ジカルボン酸エステル類は、前記一般式(IV)の化合物とは異なるものである。可塑剤(E)としての脂肪族ジカルボン酸エステルは、一般式(IV)において、R41は炭素数1〜8の2価の炭化水素基を表し、R42及びR43は、同一又は異なっていてもよく、炭素数1〜4の炭化水素基を表す化合物である。これらのうち、セバシン酸ジメチル、セバシン酸ジエチルが好ましい。
【0102】
可塑剤の1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。可塑剤(E)を用いることにより、バインダーポリマー及び/又は記録時のモノマーの重合体であるポリマーと、その他の成分との相溶性が向上しやすい。ただし、可塑剤(E)を多量に用いることはできない。多量の可塑剤は、記録材料の粘度をかなり低下させるので、記録層の形態を維持することが困難になる。また、可塑剤が記録後も液状のまま記録材料層中に残留するので、可塑剤がブリードアウトの問題が生じる。可塑剤(E)を用いる場合の配合量は、後述する。
【0103】
上記可塑剤の屈折率は、例えば1.50以下がよく、1.50未満が好ましい。屈折率の下限は特に定められないが、1.40以上程度である。また、より大きい屈折率変調を得るために、用いる光ラジカル重合性モノマー(A)の屈折率の加重平均が、用いる分散媒(C)の屈折率とバインダーポリマー(D)の屈折率と可塑剤(E)の屈折率の加重平均よりも大きくなるようにする必要がある。
【0104】
本発明のホログラム記録材料における各成分の配合重量の上限値及び/又は下限値については、
前記光ラジカル重合性化合物(A)10〜70重量部、
前記光重合開始剤(B)3〜20重量部、
前記分散媒(C)5〜30重量部、
前記バインダーポリマー(D)20〜80重量部、
とすることが好ましく、
前記光ラジカル重合性化合物(A)20〜60重量部、
前記光重合開始剤(B)3〜10重量部、
前記分散媒(C)5〜20重量部、
前記バインダーポリマー(D)20〜70重量部、
とすることがより好ましい。上記分散媒(C)の量は、記録露光時の光ラジカル重合性化合物(A)の拡散移動を十分に行わせるのに必要な量である。前記分散媒(C)の量が5重量部未満であると、光ラジカル重合性化合物(A)の拡散促進効果が弱くなる傾向にある。一方、前記分散媒(C)を30重量部を超えて用いると、膜の取扱い性や記録後の信号安定性の低下を招く恐れがある。
【0105】
ただし、バインダーポリマー(D)を用いない場合には、
前記光ラジカル重合性化合物(A)10〜70重量部、
前記光重合開始剤(B)3〜20重量部、
前記分散媒(C)25〜80重量部、
とすることが好ましく、
前記光ラジカル重合性化合物(A)20〜60重量部、
前記光重合開始剤(B)3〜10重量部、
前記分散媒(C)25〜50重量部、
とすることがより好ましい。
【0106】
前記分散媒(C)として、上記一般式(I)又は(II)の反応性分散剤(Creactive)に追加して補助的に上記一般式(III) 又は(IV)の非反応性分散剤(Cnon-reactive)を用いる場合には、前記非反応性分散剤の添加量は、前記反応性分散剤及び前記非反応性分散剤の合計量を基準として、80重量%までの量、例えば5〜80重量%の量、好ましくは10〜70重量%の量とするとよい。前記非反応性分散剤の添加量が80重量%よりも多くなると、前記反応性分散剤の量が少なくなるので、前記反応性分散剤による効果、特にポストキュアによる記録層への固定及び記録層の経時安定性効果が得られにくくなる。一方、前記非反応性分散剤の添加量が5重量%以上とすることにより、記録露光時における光ラジカル重合性化合物(A)のより高い拡散移動促進が得られ、より高い回折効率が達成される。
【0107】
また、可塑剤(E)を用いる場合には、前記分散媒(C)と前記バインダーポリマー(D)との合計重量部に対して、例えば3〜80重量%、好ましくは5〜15重量%程度とするとよい。
【0108】
本発明のホログラム記録材料は、各成分を混合して、均一な組成物として製造することができる。混合方法は、公知の各種方法によればよい。
【0109】
得られたホログラム記録材料液を例えばPET等の樹脂製透明基板上に塗布し、乾燥して、フィルム状のホログラム記録材料層が得られる。このようにして分散媒(必要に応じてマトリクスとしてのバインダーポリマー)中に光ラジカル重合性化合物が均一に含有されたホログラム記録材料層が作製される。
【0110】
本発明のホログラム記録媒体は、基材と、前記基材上に形成されたホログラム記録材料層とを有している。ホログラム記録材料層の上に、さらに基材を被せて3層構成とすることもできる。また、ホログラム記録材料層の厚さは、限定されるものではなく、記録媒体の設計上から適宜決定するとよく、例えば5〜500μm程度とするとよい。
【0111】
ホログラム記録媒体の記録材料層に干渉性のある光を照射すると、露光部(明部)では光重合開始剤が開裂し、それをトリガーとして、近傍に存在する光ラジカル重合性化合物(モノマー)が重合反応を起こしポリマー化する。これに伴い、明部では未反応モノマーの濃度が減少し、非露光部(暗部)との間にモノマーの濃度勾配が生じる。生じた濃度勾配を補償するため、暗部から明部に未反応モノマーが拡散移動し、明部でさらにモノマーの重合反応が進行する。結果として、明部では光重合性モノマーの重合体が多く存在するようになる。このとき、光重合性モノマー(及びその重合体)と他の成分との間で屈折率差があれば、光の明暗に応じたパターンが屈折率変調(Δn)として記録される。
【0112】
本発明のホログラム記録材料は、上述した特定構造の反応性分散媒化合物を含んでいる。このため、記録露光時における光ラジカル重合性化合物の拡散移動促進が得られ、高い回折効率が達成される。それと共に、記録後の記録層の優れた経時安定性が得られる。
【実施例】
【0113】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0114】
[合成例1:セバシン酸ジ(3−ブテニル)の合成]
100mLナスフラスコに3−ブテン−1−オール21.38g(0.213モル、Mw=100.16)を入れ、氷冷下、滴下ロートからセバシン酸ジクロライド25.25g(0.107モル、Mw=239.14)を注意深く滴下した。滴下終了後、混合物を室温に戻した。その後、混合物を100℃で一晩加熱し、塩酸ガスを発生させた。グラスチューブオーブンを用いて、内温250℃にて減圧蒸留し、32.54gのセバシン酸ジ(3−ブテニル)を得た。収率:98%。Mw=310.43。
【0115】
ClCO-(CH2)8-COCl + HO-CH2CH2-CH=CH2 →
CH2=CH-CH2CH2-OCO-(CH2)8-COO-CH2CH2-CH=CH2
【0116】
セバシン酸ジ(5−ヘキセニル)、アジピン酸ジ(5−ヘキセニル)も同様の反応により合成した。
【0117】
[合成例2:エチレングリコール二(10−ウンデセン酸)エステルの合成]
100mLナスフラスコにエチレングリコール4.5g(0.0725モル、Mw=62.07)を入れ、氷冷下、滴下ロートから10−ウンデセン酸ジクロライド29.5g(0.146モル、Mw=202.72)を注意深く滴下した。滴下終了後、混合物を室温に戻した。その後、混合物を100℃で一晩加熱し、塩酸ガスを発生させた。グラスチューブオーブンを用いて、内温250℃にて減圧蒸留し、27.2gのエチレングリコール二(10−ウンデセン酸)エステルを得た。収率:95%。Mw=394.59。
【0118】
CH2=CH-(CH2)8-COCl + HO-CH2CH2-OH →
CH2=CH-(CH2)8-CO-OCH2CH2O-CO-(CH2)8-CH=CH2
【0119】
[実施例1]
(ホログラム記録媒体サンプルの作製)
以下の手順に従って、表1に示す配合組成の記録材料組成物溶液を調製した。
マトリクスとして酢酸ビニルポリマー(和光純薬工業(株)製、酢酸ビニルポリマー、数平均分子量Mn=1400〜1600、50重量%メタノール溶液)10gに、光重合性モノマーとして9,9−ビス[4−(2−アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン(新中村工業(株)製、NKエステル A−BPEF)3g、及び分散媒としてアジピン酸ジ(5−ヘキセニル)1.6gを加え、次いで過酸化物系光重合開始剤(チッソ(株)製、BT−2、3,3’−ジ(tert−ブチルパーオキシカルボニル)−4,4’−ジ(メトキシカルボニル)ベンゾフェノンほか位置異性体混合物の40%アニソール溶液)2.4gを加えた。この混合物に、さらに、10mgの増感色素(3−ブチル−2−[3−(3−ブチル−5−フェニル−1,3−ベンゾオキサゾール−2(3H)−イリデン) プロパ−1−エン−1−イル]−5−フェニル−1,3−ベンゾオキサゾール−1−イウム=ヘキサフルオロ−λ5−ホスファヌイド,下記の化学式)を溶解させた6gのアセトン溶液(アセトン 5.99g)を添加し、撹拌して溶解させた。このようにして記録材料組成物溶液を得た。
【0120】
【化17】
【0121】
得られた記録材料組成物溶液を、バーコーターを用いて100μm厚のPETフィルム上に塗布し、室温で一晩減圧乾燥させた。乾燥後の記録材料層の膜厚は20μmであった。これを1.0mm厚のスライドガラスに記録材料層がガラス面に接するように貼り付け、ホログラム記録媒体サンプルとした。
【0122】
(特性評価)
実施例1のホログラム記録媒体サンプルについて、図1に示すようなホログラム記録光学系において、特性評価を行った。図1の紙面の方向を便宜的に水平方向とする。
【0123】
図1において、ホログラム記録媒体サンプル(1) は、記録材料層が水平方向と垂直となるようにセットされている。
【0124】
図1のホログラム記録光学系において、記録用の光源(11)としてNd:YAGレーザ(波長532nm)を用い、この光源(11)から発振した光を、シャッター(12)、凸レンズ(13)、ピンホール(14)、及び凸レンズ(15)によって空間的にフィルタ処理及びコリメートし、ミラー(16)及び1/2波長板(17)を介してビームスプリッタ(18)で2つの光束に分割し、分割された各光束それぞれが、ミラー(19,20) 及びアパーチャ(21,22) を介して、ホログラム記録媒体サンプル(1) の記録材料層に対して垂直に対向して入射するように調整した。
【0125】
この光学系を用いて、ホログラム記録媒体サンプル(1) に対して反射型ホログラムを記録した。記録条件は、光強度30mW/cm2 で露光時間5秒(150mJ/cm2 )とした。その後、記録媒体サンプル(1) を蛍光灯(27W)下(サンプル(1) までの距離30cm)に6時間放置し、未反応成分を反応させるとともに、増感色素に由来する着色を完全に消失させた(ポストキュアと呼ぶ)。
【0126】
ポストキュア後の記録媒体サンプルを、分光光度計(日本分光(株)製V−660)にセットし、透過スペクトルを測定し、そのピーク強度及びピーク波長から反射型ホログラムの初期における回折効率及び回折波長を求めた。
【0127】
次いで、ポストキュア後の記録媒体サンプルを、80℃のオーブン内に24時間放置し、その後取り出した。この記録媒体サンプルについて、上記と同様にして回折効率及び回折波長を求めた。これを80℃/24時間加熱試験後の回折効率及び回折波長とする。
【0128】
回折効率は、分光光度計の処理ソフト上で求めたピーク波長及びそのピークにおける透過率Tp (%)、及びベースライン透過率T0 (%)から、以下の式により算出した。
回折効率(%)=[(T0 −Tp )/T0 ]×100
【0129】
実施例1のホログラム記録媒体サンプルの回折効率は84%(初期)、85%(加熱試験後)であり、回折波長は528nm(初期)、527nm(加熱試験後)であり、いずれも良好であった。
【0130】
[実施例2〜9、比較例1〜2]
マトリクス、光重合性モノマー、及び分散媒を、表1に示すような化合物及び配合組成とした以外は、実施例1と同様にしてホログラム記録媒体サンプルをそれぞれ作製し、その特性評価を行った。結果を併せて表1〜2に示す。
【0131】
[用いた成分の説明]
2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール エトキシレート(重量平均分子量Mw=395、一般式(III) のl=m=1.92に相当、シグマ・アルドリッチ社製、淡黄色粘稠液体、HLB値=8)
【0132】
なお、表1〜2において、各成分の配合量(g)は、不揮発分としての量を表示している。例えば、実施例1において用いられた酢酸ビニルポリマー(50重量%メタノール溶液)10gは、不揮発分の量5gに相当する。
【0133】
【表1】
【0134】
【表2】
【0135】
実施例1〜9のホログラム記録媒体サンプルでは、分散媒として本発明による特定の分子構造を有する反応性化合物を用いたので、記録時に光ラジカル重合性モノマーの拡散が促進され、高い回折効率が得られた。それと共に、加熱試験後においても、高い回折効率が維持されており、回折波長の変動も認められなかった。また、実施例5〜6のホログラム記録媒体サンプルでは、分散媒として非反応性化合物が併用されたので、より高い回折効率が得られた。
【0136】
一方、比較例1〜2では、本発明による分散媒を用いることなく、可塑剤として従来から用いられてきたセバシン酸ジブチル(比較例1)、又はアリルジグリコールカーボネート(比較例2)を用いたので、回折効率に劣っていた。
【符号の説明】
【0137】
(1) :ホログラム記録媒体サンプル
(11):光源
(12):シャッター
(13),(15) :凸レンズ
(14):ピンホール
(16),(19),(20):ミラー
(17):1/2波長板
(18):ビームスプリッタ
(21),(22) :アパーチャ
【技術分野】
【0001】
本発明は、体積型ホログラム記録に適したホログラム記録材料、及び前記ホログラム記録材料からなるホログラム記録層を有するホログラム記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
感光性樹脂を用いた体積型ホログラム記録材料が数多く提案され、実用化されているものもある。感光性樹脂は一般にフォトポリマーと呼ばれ、フォトポリマーからなるホログラム記録材料は、従来のハロゲン化銀感光材料などと比較し、現像処理を必要としないことが大きな利点となっている。
【0003】
ホログラム記録用の典型的なフォトポリマー材料は、例えば、光重合性モノマー(a) 、バインダーポリマー(b) 、可塑剤(c) 及び光重合開始剤(d) からなる。層状に形成されたフォトポリマー材料からなるホログラム記録材料に、干渉パターンが重畳された記録光を照射することにより、該干渉パターンが記録材料中に屈折率差(屈折率変調:Δn)として記録される。このときの記録材料における反応機構は以下のように考えられている。すなわち、露光により、干渉パターンの明部で光重合開始剤(d) が開裂し、それをトリガーとして、近傍に存在する光重合性モノマー(a) が重合する。これに伴い、明部では未反応モノマーの濃度が減少し、暗部との間にモノマーの濃度勾配が生じる。生じた濃度勾配を補償するため、暗部から明部に未反応モノマーが拡散し、明部でさらにモノマーの重合反応が進行する。結果として、明部では光重合性モノマー(a) の重合体が多く存在するようになる。このとき、光重合性モノマー(a) (及びその重合体)と他の成分との間で屈折率差が大きくなるように各成分を選んでおけば、光の明暗に応じたパターンが屈折率変調(Δn)として記録される。
【0004】
可塑剤(c) は、ホログラム記録材料中の光重合性モノマー(a) の拡散を促すために必要である。より具体的には、ホログラム記録材料の粘度の低減により、モノマー(a) の拡散が促進されると考えられる。モノマーの拡散は、Fickの法則からモノマーの拡散係数Dに比例するが、拡散係数Dは系の粘度ηの逆数に比例することが知られている(Stokes-Einstein の関係)。従って、低粘度の可塑剤を系中に多量に添加することにより、モノマーの拡散係数Dを大きくし、記録時のモノマー移動を促進することができる。しかしながら、実際に多量の可塑剤を添加することは難しい。記録層は数10μm〜数100μm程度の膜厚で用いられることが多いが、多量の可塑剤により記録材料の粘度が極端に低下すると、記録層の形態を維持することが困難になる。また、可塑剤としては光重合性を有しないものを用いることが一般的であるが、このような可塑剤は記録後も液状のまま記録材料層中に残留する。従って、適切な封止処理を施しておかなければ、記録後に徐々に可塑剤がブリードアウトする(染み出す)といった不具合を生じる恐れがある。
【0005】
例えば、特開2001−282082号公報には、アリル系プレポリマー(A)とラジカル重合性化合物(B)と粘度低下剤(C)と光重合開始剤(D)とを含むホログラム記録材料組成物が開示されている。粘度低下剤(C)は、アリル系プレポリマー(A)及び/又はラジカル重合性化合物(B)とは非反応性の化合物(C1)であるか、又は分子内に(メタ)アリル基を有する化合物(C2)であることが開示されている(段落[0083])。
非反応性の粘度低下剤(C1)として、同公報には、ジメチルフタレート、ジエチルフタレートに代表されるフタル酸エステル類; ジメチルアジペート、ジブチルアジペート、ジメチルセバケート、ジエチルサクシネートに代表される脂肪族二塩基酸エステル類; グリセリルトリアセテート、2−エチルヘキシルアセテートに代表される酢酸エステル類; アルキレングリコールアルキルエーテル等が開示されている(段落[0084])。
(メタ)アリル基を有する化合物(C2)として、同公報には、(メタ)アリルアルコール等のモノ(メタ)アリル化合物; アジピン酸ジ(メタ)アリル、セバシン酸ジ(メタ)アリル、フタル酸ジ(メタ)アリル、イソフタル酸ジ(メタ)アリル、テレフタル酸ジ(メタ)アリル等のジ(メタ)アリル化合物が開示されている(段落[0087])。
【0006】
また、特許第4232001号公報、及び特許第4325404号公報においても、可塑剤として、上記の非反応性の粘度低下剤(C1)と同様のものが開示されている(特許第4232001号公報の7頁46行〜8頁23行、特許第4325404号公報の7頁39行〜8頁19行)。
【0007】
一方、特開平3−36582号公報、及び特開平3−249685号公報には、光重合性モノマーの分散剤の役割を兼ねるマトリクスとして、アリルジグリコールカーボネート(ADC)を用いたホログラム記録材料が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2001−282082号公報
【特許文献2】特許第4232001号公報
【特許文献3】特許第4325404号公報
【特許文献4】特開平3−36582号公報
【特許文献5】特開平3−249685号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記特許文献1に開示されているような非反応性の粘度低下剤(C1)や、特許文献2、3の非反応性の可塑剤では、記録露光時における光重合性モノマーの拡散促進作用が十分ではなく、高い回折効率は達成されない。十分な光重合性モノマーの拡散促進作用を得るためには、多量の前記可塑剤を用いて、ホログラム記録材料の粘度を低くする必要がある。そうすると、上述したような弊害(記録層の形態維持が困難であること、ブリードアウト)が生じる。
【0010】
一方、特許文献4、5に開示されているアリルジグリコールカーボネート(ADC):CH2=CH-CH2-OCO-O-CH2CH2-O-CH2CH2-O-COO-CH2-CH=CH2 (ADC)
はラジカル重合性を有するが、光重合性モノマーとして用いられている3−フェノキシ−2−ヒドロキシプロピルアクリレートよりも反応性が低く、且つ屈折率が低い。従って、上記ホログラム記録材料を干渉露光することにより、ADCと光重合性モノマーとの反応速度差に基づくミクロ相分離が生じ、結果として干渉縞を材料中に屈折率変調として記録することができる。しかしながら、ADCと光重合性モノマーとの反応速度差や相分離能は必ずしも十分ではないため、高い回折効率を得ることはできない。この点については、後述の比較例2に実証されている。上記特許文献1に開示されているような(メタ)アリル基を有する化合物(C2)についても同様である。
【0011】
本発明の目的は、記録層の形態を安定的に維持でき、高い回折効率が達成されるホログラム記録材料及びホログラム記録媒体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは鋭意検討し、光ラジカル重合性モノマーを分散する分散媒として、ビニル基を含有する特定構造の化合物を用いると、従来の可塑剤を多量に用いて記録材料の粘度を低くすることなく、記録露光時における光重合性モノマーの十分な拡散移動促進作用が得られ、且つ、記録露光後に前記ビニル基含有化合物をポストキュアさせることにより記録層に固定できることを見出した。
【0013】
本発明には、以下の発明が含まれる。
(1) (メタ)アクリロイル基を有する光ラジカル重合性化合物(A)と、光重合開始剤(B)と、前記光ラジカル重合性化合物(A)及び前記光重合開始剤(B)を分散する分散媒(C)とを少なくとも含むホログラム記録材料であって、
前記分散媒(C)は、一般式(I):
【化1】
[式中、R11は、炭素数1〜12の2価の炭化水素基、又は
−(L11O)e −L12−基(ここで、L11及びL12は、同一又は異なっていてもよく、炭素数1〜6の2価の炭化水素基を表し、L11及びL12の炭素数の合計は2〜12であり、eは(L11O)単位の繰り返し数を表し、L11は(L11O)単位によって異なっていてもよい。)、又は
−O(L13O)f −(L14O)g −基(ここで、L13及びL14は、同一又は異なっていてもよく、炭素数1〜6の2価の炭化水素基を表し、L13及びL14の炭素数の合計は2〜12であり、fは(L13O)単位の繰り返し数を表し、L13は(L13O)単位によって異なっていてもよく、gは(L14O)単位の繰り返し数を表し、L14は(L14O)単位によって異なっていてもよい。)を表す。
R12及びR13は、同一又は異なっていてもよく、炭素数2〜16の炭化水素基であって、且つR12及びR13のうちの少なくとも1つは、2つ以上のsp3 炭素を介して孤立しているビニル基を有する。]
で表される化合物、及び
一般式(II):
【化2】
[式中、R21は、炭素数1〜12の2価の炭化水素基、又は
−(L21O)i −L22−基(ここで、L21及びL22は、同一又は異なっていてもよく、炭素数1〜6の2価の炭化水素基を表し、L21及びL22の炭素数の合計は2〜12であり、iは(L21O)単位の繰り返し数を表し、L21は(L21O)単位によって異なっていてもよい。)を表す。
R22及びR23は、同一又は異なっていてもよく、炭素数2〜16の炭化水素基であって、且つR22及びR23のうちの少なくとも1つは、2つ以上のsp3 炭素を介して孤立しているビニル基を有する。]
で表される化合物
からなる群より選ばれるビニル基含有化合物を含む、ホログラム記録材料。
【0014】
(2) 前記一般式(I)におけるR11が、炭素数1〜12の2価の鎖状飽和炭化水素基又は鎖状不飽和炭化水素基であり、及び/又は
前記一般式(II)におけるR21が、炭素数1〜12の2価の鎖状飽和炭化水素基又は鎖状不飽和炭化水素基である、上記(1) に記載のホログラム記録材料。
【0015】
(3) 前記分散媒(C)としてさらに、一般式(III) :
【化3】
(式中、R31は炭素数2〜4の2価の炭化水素基を表し、R32及びR33は、同一又は異なっていてもよく、炭素数1〜10の炭化水素基を表す。l及びmはエチレンオキシド単位の繰り返し数を表し、k及びnはプロピレンオキシド単位の繰り返し数を表し、k、l、m及びnは、互いに独立して0以上5以下の数である。前記エチレンオキシド単位及び前記プロピレンオキシド単位は、ランダム配列されていても、又はブロック配列されていてもよい。)
で表される化合物、及び
一般式(IV):
【化4】
(式中、R41は炭素数1〜6の2価の炭化水素基を表し、R42及びR43は、同一又は異なっていてもよく、炭素数1〜12の炭化水素基であって、且つR42及びR43のうちの少なくとも1つは炭素数5〜12の炭化水素基を表す。)
で表される化合物
からなる群より選ばれる非反応性化合物を含む、上記(1) 又は(2) に記載のホログラム記録材料。
【0016】
(4) 前記一般式(III) におけるR31が、2価のアセチレンユニット(−C≡C−)である、上記(3) に記載のホログラム記録材料。
【0017】
(5) 前記一般式(IV)におけるR41が、炭素数1〜6の2価の鎖状飽和炭化水素基又は鎖状不飽和炭化水素基である、上記(3) 又は(4) に記載のホログラム記録材料。
【0018】
(6) 前記光ラジカル重合性化合物(A)は、一般式(V):
【化5】
(式中、R51及びR52は、同一又は異なっていてもよく、(ベンゼン環側)−OCH2 CH2 −基、又は(ベンゼン環側)−OCH2 CH(OH)CH2 −基を表し、R53及びR54は、同一又は異なっていてもよく、水素原子又はメチル基を表す。)
で表される化合物、
一般式(VI):
【化6】
(式中、R61は、単結合、又はヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数5以下の2価の有機基を表し、R62は、水素原子又はメチル基を表す。Xは、Cl原子、Br原子又はI原子を表し、pは0〜5の整数である。)
で表される化合物、
一般式(VII) :
【化7】
(式中、R71は、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数5以下の2価の有機基を表し、R72は、水素原子又はメチル基を表す。)
で表される化合物、及び
一般式(VIII):
【化8】
(式中、R81及びR82は、同一又は異なっていてもよく、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数10以下の2価の有機基を表し、R83及びR84は、同一又は異なっていてもよく、水素原子又はメチル基を表す。Xは、Cl原子、Br原子又はI原子を表し、q及びrは互いに独立して0〜4の整数である。)
で表される化合物
からなる群から選ばれる化合物を含む、上記(1) 〜(5) のうちのいずれかに記載のホログラム記録材料。
【0019】
(7) 前記光ラジカル重合性化合物(A)、前記光重合開始剤(B)、及び前記分散媒(C)の配合重量比が、
前記光ラジカル重合性化合物(A)10〜70重量部、
前記光重合開始剤(B)3〜20重量部、
前記分散媒(C)25〜80重量部、
である、上記(1) 〜(6) のうちのいずれかに記載のホログラム記録材料。
【0020】
(8) 前記ホログラム記録材料はさらに、バインダーポリマー(D)を含んでいる、上記(1) 〜(7) のうちのいずれかに記載のホログラム記録材料。
【0021】
(9) 前記光ラジカル重合性化合物(A)、前記光重合開始剤(B)、前記分散媒(C)及び前記バインダーポリマー(D)の配合重量比が、
前記光ラジカル重合性化合物(A)10〜70重量部、
前記光重合開始剤(B)3〜20重量部、
前記分散媒(C)5〜30重量部、
前記バインダーポリマー(D)20〜80重量部、
である、上記(8) に記載のホログラム記録材料。
【0022】
(10) 基材と、前記基材上に形成された上記(1) 〜(9) のうちのいずれかに記載のホログラム記録材料からなるホログラム記録層とを有している画像記録用ホログラム記録媒体。
【発明の効果】
【0023】
本発明のホログラム記録材料は、(メタ)アクリロイル基を有する光ラジカル重合性化合物(A)及び光重合開始剤(B)を分散する分散媒(C)として、上記一般式(I)で表される化合物、及び一般式(II)で表される化合物からなる群より選ばれる特定構造のビニル基含有化合物を含んでいる。
【0024】
前記特定構造のビニル基含有化合物は、分子内に2つのエステル結合(−O−CO−)基[場合によっては、カーボネート結合(−O−CO−O−)基]と炭化水素基を有しており、記録露光時における光ラジカル重合性化合物(A)の拡散移動促進が得られ、また、高い相分離性も得られる。また、前記特定構造のビニル基含有化合物は、2つ以上のsp3 炭素を介して孤立しているビニル基(すなわち、アリル基ではない)を有しており、アリル基(特にアリルエステル基)含有化合物よりも反応性が低い。このため、記録露光時において、光ラジカル重合性モノマーである(メタ)アクリル酸エステル(A)との反応速度差は十分に大きくなる。このため、本発明のホログラム記録材料によれば、高い回折効率が達成される。
【0025】
さらに、前記特定構造のビニル基含有化合物は、アリル基含有化合物よりも反応性が低いものであるが、記録露光後に後露光して前記ビニル基含有化合物をポストキュアさせることにより記録層に固定できる。そのため、記録層の経時による劣化は非常に少ない。ホログラム記録材料において従来より用いられていたような可塑剤を多量に用いる必要がないので、従来の可塑剤に起因する弊害はない。
【0026】
このようにして、本発明によれば、記録層の形態を安定的に維持でき、高い回折効率が達成されるホログラム記録材料及びホログラム記録媒体が提供される。ホログラム記録媒体は各種データの記録用のみならず、画像記録用として好適である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】実施例で用いられたホログラム記録光学系の概略を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明のホログラム記録材料は、(メタ)アクリロイル基を有する光ラジカル重合性化合物(A)と、光重合開始剤(B)と、前記光ラジカル重合性化合物(A)及び前記光重合開始剤(B)を分散する分散媒(C)とを少なくとも含む組成物である。本発明のホログラム記録媒体は、基材と、前記基材上に形成された前記本発明のホログラム記録材料からなるホログラム記録層とを有している。本明細書において、ホログラム記録層をホログラム記録材料層ということもある。
【0029】
前記光ラジカル重合性化合物(A)は、分子中に少なくとも1つの芳香環と少なくとも1つの(メタ)アクリロイル基とを有する化合物である。分子中への芳香環の導入により、屈折率は高くなる。ここで、(メタ)アクリロイル基とは、メタクリロイル基及びアクリロイル基を総称する意味である。
【0030】
光ラジカル重合性化合物(A)としては、分子中に芳香環を有する単官能又は多官能の(メタ)アクリル酸エステルモノマーから選択するとよい。また、(メタ)アクリル酸エステルモノマーの2量体、3量体などのオリゴマーであってもよい。
【0031】
光ラジカル重合性化合物(A)として、一般式(V)〜(VIII)のいずれかで表される化合物を用いることができる。
【0032】
【化9】
【0033】
一般式(V)において、R51及びR52は、同一又は異なっていてもよく、(ベンゼン環側)−OCH2 CH2 −基、又は(ベンゼン環側)−OCH2 CH(OH)CH2 −基を表す。R53及びR54は、同一又は異なっていてもよく、水素原子又はメチル基を表す。具体的には、9,9−ビス[4−(2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン等が挙げられる。
【0034】
【化10】
【0035】
一般式(VI)において、R61は、単結合、又はヘテロ原子(例えば酸素原子、硫黄原子)を含んでいてもよい炭素数5以下の2価の有機基を表す。R62は、水素原子又はメチル基を表す。Xは、Cl原子、Br原子又はI原子を表し、pは0〜5の整数である。ハロゲン原子(Cl、Br又はI)が導入されると、化合物の屈折率が高くなる。
【0036】
R61の具体例としては、単結合、−CH2 −、−CH2 CH2 −、(ベンゼン環側)−OCH2 CH2 −、(ベンゼン環側)−(OCH2 CH2 )n −、(ベンゼン環側)−(OCH(CH3 )CH2 )n −、(ベンゼン環側)−OCH2 CH(OH)CH2 )−、(ベンゼン環側)−SCH2 CH2 −等が挙げられる。
【0037】
上記R61の具体例に対応する式(VI)の化合物を例示すると、2,4,6−トリブロモフェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェネチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、EO変性フェニル(メタ)アクリレート、PO変性フェニル(メタ)アクリレート、エピクロルヒドリン(ECH)変性フェノキシ(メタ)アクリレート、フェニルチオエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0038】
【化11】
【0039】
一般式(VII) において、R71は、ヘテロ原子(例えば酸素原子)を含んでいてもよい炭素数5以下の2価の有機基を表す。R72は、水素原子又はメチル基を表す。R71の具体例としては、−CH2 CH2 −、(カルバゾール環のN側)−CH2 CH2 −(OCH2 CH2 )n −等が挙げられる。具体的には、2−(9−カルバゾリル)エチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0040】
【化12】
【0041】
一般式(VIII)において、R81及びR82は、同一又は異なっていてもよく、ヘテロ原子(例えば酸素原子、硫黄原子)を含んでいてもよい炭素数10以下の2価の有機基を表す。R83及びR84は、同一又は異なっていてもよく、水素原子又はメチル基を表す。Xは、Cl原子、Br原子又はI原子を表し、q及びrは互いに独立して0〜4の整数である。ハロゲン原子(Cl、Br又はI)が導入されると、化合物の屈折率が高くなる。
【0042】
R81及びR82の具体例としては、−CH2 −、−CH2 CH2 −、(ベンゼン環側)−OCH2 CH2 −、(ベンゼン環側)−(OCH2 CH2 )n −、(ベンゼン環側)−(OCH(CH3 )CH2 )n −、(ベンゼン環側)−OCH2 CH(OH)CH2 )−、(ベンゼン環側)−SCH2 CH2 −等が挙げられる。具体的には、EO変性テトラブロモビスフェノールA(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0043】
上記の他に、一般式(V)〜(VIII)で表される化合物には属しないものとして、フルフリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0044】
上記の光ラジカル重合性モノマーの1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。本発明において、光ラジカル重合性モノマー(及びそれの重合体)を高屈折率成分とするために、上記の光ラジカル重合性化合物の屈折率は、例えば1.50以上が好ましく、1.55以上がより好ましい。屈折率の上限は特に定められないが、1.70以下程度である。2種以上の光ラジカル重合性モノマーを併用する場合には、それらの屈折率の加重平均が上記のようになるように用いるとよい。なお、屈折率とは、Na D線での20℃における屈折率n20/Dである。
【0045】
光重合開始剤(B)としては、記録光の波長に対応するもの、すなわち、記録レーザ光を吸収してラジカルを発生するものを用いる。例えば、
ベンゾインエチルエーテル、ベンゾフェノン、ジエトキシアセトフェノン等のカルボニル化合物;
トリブチルベンジル錫等の有機錫化合物;
テトラブチルアンモニウム・トリフェニルブチルボレート、トリフェニル−n−ブチルボレート等のアルキルアリールホウ素塩;
ジフェニルヨードニウム塩等のオニウム塩類;
η5−シクロペンタジエニル−η6−クメニル−アイアン(1+)−ヘキサフルオロフォスヘェイト(1−)等の鉄アレーン錯体;
トリス(トリクロロメチル)トリアジン等のトリハロゲノメチル置換トリアジン化合物;3,3’−ジ(tert−ブチルパーオキシカルボニル)−4,4’−ジ(メトキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’,4,4’−テトラ(tert−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、ジ−tert−ブチルパーオキシイソフタレート、2,5−ジメチル−2,5−ビス(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、tert−ブチルパーオキシベンゾエート等の有機過酸化物;
2,2’−ビス(o−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニル−1,1’−ビスイミダゾール等のビスイミダゾール誘導体
等が挙げられる。
【0046】
光重合開始剤の市販のものとしては、例えば、ダロキュア1173、イルガキュア784 、イルガキュア651 、イルガキュア184 、イルガキュア907 (いずれもチバスペシャルティ・ケミカルズ社製)、BT−2(チッソ(株)製)等を用いてもよい。
【0047】
上記の光重合開始剤の1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。光重合開始剤(B)の含有量は、ホログラム記録材料組成物の不揮発分を基準として、例えば3〜20重量%程度、好ましくは3〜10重量%程度である。
【0048】
ホログラム記録材料組成物は、光重合開始剤の他に記録光波長に対応した光増感剤として機能する色素などを含有してもよい。光増感剤としては、例えば、チオキサンテン−9−オン、2,4−ジエチル−9H−チオキサンテン−9−オン等のチオキサントン類、キサンテン類、シアニン類、メロシアニン類、チアジン類、アクリジン類、アントラキノン類、及びスクアリリウム類等が挙げられる。光増感剤の1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。光増感剤の使用量は、光重合開始剤(B)の0.5〜50重量%程度、好ましくは0.5〜10重量%程度とするとよい。
【0049】
分散媒(C)は、前記光ラジカル重合性化合物(A)及び前記光重合開始剤(B)を分散するものであり、一般式(I)で表されるビニル基含有化合物、及び一般式(II)で表されるビニル基含有化合物からなる群より選ばれる。
【0050】
【化13】
【0051】
一般式(I)において、R11は、炭素数1〜12の2価の炭化水素基、又は
−(L11O)e −L12−基(ここで、L11及びL12は、同一又は異なっていてもよく、炭素数1〜6の2価の炭化水素基を表し、L11及びL12の炭素数の合計は2〜12であり、eは(L11O)単位の繰り返し数を表し、L11は(L11O)単位によって異なっていてもよい。)、又は
−O(L13O)f −(L14O)g −基(ここで、L13及びL14は、同一又は異なっていてもよく、炭素数1〜6の2価の炭化水素基を表し、L13及びL14の炭素数の合計は2〜12であり、fは(L13O)単位の繰り返し数を表し、L13は(L13O)単位によって異なっていてもよく、gは(L14O)単位の繰り返し数を表し、L14は(L14O)単位によって異なっていてもよい。)を表す。R11は置換基としてアリル基を有することはない。
【0052】
R11が表す炭素数1〜12の2価の炭化水素基としては、メチレン基[−CH2 −]、エチレン基[−(CH2 )2 −]、プロピレン基[−(CH2 )3 −]、ブチレン基[−(CH2 )4 −]、ペンチレン基[−(CH2 )5 −]、ヘキシレン基[−(CH2 )6 −]、ヘプチレン基[−(CH2 )7 −]、オクチレン基[−(CH2 )8 −]、デシレン基[−(CH2 )10−]、ウンデシレン基[−(CH2 )11−]、ドデシレン基[−(CH2 )12−]等の鎖状飽和炭化水素基が挙げられる。また、−CH=CH−(cis体、trans体)、−CH=C(CH3 )−(cis体、trans体)等の鎖状不飽和炭化水素基が挙げられる。
【0053】
R11が表す−(L11O)e −L12−基において、L11及びL12が表す炭素数1〜6の2価の炭化水素基としては、上記のうちから炭素数1〜6の2価の炭化水素基が挙げられる。−(L11O)e −L12−基として、例えば、−(CH2 )2 O(CH2 )2 −、−(CH2 )2 O(CH2 )2 O(CH2 )2 −等が例示される。
【0054】
R11が表す−O(L13O)f −(L14O)g −基において、L13及びL14が表す炭素数1〜6の2価の炭化水素基としては、上記のうちから炭素数1〜6の2価の炭化水素基が挙げられる。−O(L13O)f −(L14O)g −基として、例えば、−O(CH2 )2 O(CH2 )2 O−、−O(CH2 )2 O(CH2 )2 O(CH2 )2 O−等が例示される。
【0055】
R12及びR13は、同一又は異なっていてもよく、炭素数2〜16の炭化水素基であって、且つR12及びR13のうちの少なくとも1つは、2つ以上のsp3 炭素を介して孤立しているビニル基(すなわち、アリル基ではない)を有する。R12及び/又はR13がビニル基を有する場合には、炭素数4〜16となる。R12及びR13はいずれも、アリル基を有することはない。
【0056】
R12及びR13が表す炭素数2〜16の炭化水素基としては、前記ビニル基を有しない場合、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、 sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基等の脂肪族炭化水素基が挙げられる。炭素数が2未満であると、十分な相分離性が得られなくなる。一方、炭素数が16を超えると、他の成分との相溶性が悪化し、ホログラム記録材料層の白濁などを招く恐れがある。
【0057】
前記ビニル基を有するR12及び/又はR13は、炭素数4〜16のビニル基含有炭化水素基:
−R14−CH=CH2
として表される。ここで、R14は、2つ以上のsp3 炭素を含んでいる炭素数2〜14の2価の脂肪族炭化水素基であり、例えば、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、ヘプチレン基、オクチレン基、デシレン基、ウンデシレン基、ドデシレン基、トリデシレン基、テトラデシレン基等の2価の鎖状飽和炭化水素基が挙げられる。R12及び/又はR13が2つ以上のsp3 炭素を介して孤立しているビニル基を有する場合の炭素数は4以上必要であるし、これにより十分な相分離性が得られる。一方、炭素数が16を超えると、他の成分との相溶性が悪化し、ホログラム記録材料層の白濁などを招く恐れがある。
【0058】
R12及びR13の両者が、−R14−CH=CH2 であれば、記録露光後のポストキュアにより記録層への固定化がより確実となるので好ましい。また、R12及びR13が共に同一の−R14−CH=CH2 であることが、次に示す合成反応の観点からも好ましい。
【0059】
一般式(I)のビニル基含有化合物は、例えば、ジカルボン酸HOOC−R11−COOH、又はその無水物、又はジカルボン酸クロライドCl−OC−R11−CO−Cl、又はジカルボン酸ブロマイドBr−OC−R11−CO−Brと、R12OH及びR13OHとのエステル化反応により、合成することができる。
【0060】
また、一般式(I)のビニル基含有化合物においてR11が−O(L13O)f −(L14O)g −である場合(カーボネート縮合である場合)、同化合物は、例えば、ホスゲンとアルコールとの反応によって合成するか、あるいは、炭酸ジフェニルとアルコールとのエステル交換反応によって合成することができる。
【0061】
一般式(I)のビニル基含有化合物の具体例としては、
ジ(3−ブテン−1−イル)マロネート
CH2=CH-CH2CH2-OCO-CH2-COO-CH2CH2-CH=CH2
ジ(4−ペンテン−1−イル)マロネート
CH2=CH-(CH2)3-OCO-CH2-COO-(CH2)3-CH=CH2
ジ(5−ヘキセン−1−イル)マロネート
CH2=CH-(CH2)4-OCO-CH2-COO-(CH2)4-CH=CH2
ジ(3−ブテン−1−イル)スクシネート
CH2=CH-CH2CH2-OCO-(CH2)2-COO-CH2CH2-CH=CH2
ジ(4−ペンテン−1−イル)スクシネート
CH2=CH-(CH2)3-OCO-(CH2)2-COO-(CH2)3-CH=CH2
ジ(5−ヘキセン−1−イル)スクシネート
CH2=CH-(CH2)4-OCO-(CH2)2-COO-(CH2)4-CH=CH2
ジ(3−ブテン−1−イル)セバケート
CH2=CH-CH2CH2-OCO-(CH2)8-COO-CH2CH2-CH=CH2
ジ(4−ペンテン−1−イル)セバケート
CH2=CH-(CH2)3-OCO-(CH2)8-COO-(CH2)3-CH=CH2
ジ(5−ヘキセン−1−イル)セバケート
CH2=CH-(CH2)4-OCO-(CH2)8-COO-(CH2)4-CH=CH2
【0062】
ジ(3−ブテン−1−イル)マレエート(cis) 又はフマレート(trans)
CH2=CH-CH2CH2-OCO-CH=CH-COO-CH2CH2-CH=CH2
ジ(3−ブテン−1−イル)シトラコネート(cis) 又はメサコネート(trans)
CH2=CH-CH2CH2-OCO-CH=C(CH3)-COO-CH2CH2-CH=CH2
等が挙げられる。
【0063】
【化14】
【0064】
一般式(II)において、R21は、炭素数1〜12の2価の炭化水素基、又は
−(L21O)i −L22−基(ここで、L21及びL22は、同一又は異なっていてもよく、炭素数1〜6の2価の炭化水素基を表し、L21及びL22の炭素数の合計は2〜12であり、iは(L21O)単位の繰り返し数を表し、L21は(L21O)単位によって異なっていてもよい。)を表す。R21は置換基としてアリル基を有することはない。
【0065】
R21が表す炭素数1〜12の2価の炭化水素基としては、メチレン基[−CH2 −]、エチレン基[−(CH2 )2 −]、プロピレン基[−(CH2 )3 −]、ブチレン基[−(CH2 )4 −]、ペンチレン基[−(CH2 )5 −]、ヘキシレン基[−(CH2 )6 −]、ヘプチレン基[−(CH2 )7 −]、オクチレン基[−(CH2 )8 −]、デシレン基[−(CH2 )10−]、ウンデシレン基[−(CH2 )11−]、ドデシレン基[−(CH2 )12−]等の鎖状飽和炭化水素基が挙げられる。
【0066】
また、これらアルキレン基のC−C単結合の一部が、C=C二重結合に置き換えられた炭素数4〜12の2価の鎖状不飽和炭化水素基が挙げられる。炭素数4〜12の2価の鎖状不飽和炭化水素基としては、
2−ブテン−1,4−ジイル基[−CH2 −CH=CH−CH2 −]、
2−ペンテン−1,5−ジイル基[−CH2 −CH=CH−(CH2 )2 −]、
3−ヘキセン−1,6−ジイル基[−(CH2 )2 −CH=CH−(CH2 )2 −]、
2−ヘプテン−1,7−ジイル基[−CH2 −CH=CH−(CH2 )4 −]、
3−ヘプテン−1,7−ジイル基[−(CH2 )2 −CH=CH−(CH2 )3 −]、
2−オクテン−1,8−ジイル基[−CH2 −CH=CH−(CH2 )5 −]、
3−オクテン−1,8−ジイル基[−(CH2 )2 −CH=CH−(CH2 )4 −]、
4−オクテン−1,8−ジイル基[−(CH2 )3 −CH=CH−(CH2 )3 −]、
2−ノネン−1,9−ジイル基[−CH2 −CH=CH−(CH2 )6 −]、
3−ノネン−1,9−ジイル基[−(CH2 )2 −CH=CH−(CH2 )5 −]、
4−ノネン−1,9−ジイル基[−(CH2 )3 −CH=CH−(CH2 )4 −]、
等が挙げられる。
【0067】
R21が表す−(L21O)i −L22−基において、L21及びL22が表す炭素数1〜6の2価の炭化水素基としては、上記のうちから炭素数1〜6の2価の炭化水素基が挙げられる。例えば、−(CH2 )2 O(CH2 )2 −、−(CH2 )2 O(CH2 )2 O(CH2 )2 −等が例示される。
【0068】
R22及びR23は、同一又は異なっていてもよく、炭素数2〜16の炭化水素基であって、且つR22及びR23のうちの少なくとも1つは、2つ以上のsp3 炭素を介して孤立しているビニル基(すなわち、アリル基ではない)を有する。R22及び/又はR23がビニル基を有する場合には、炭素数4〜16となる。R22及びR23はいずれも、アリル基を有することはない。
【0069】
R22及びR23が表す炭素数2〜16の炭化水素基としては、前記ビニル基を有しない場合、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、 sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基等の脂肪族炭化水素基が挙げられる。炭素数が2未満であると、十分な相分離性が得られなくなる。一方、炭素数が16を超えると、他の成分との相溶性が悪化し、ホログラム記録材料層の白濁などを招く恐れがある。
【0070】
前記ビニル基を有するR22及び/又はR23は、次式の炭素数4〜16のビニル基含有炭化水素基:
−R24−CH=CH2
として表される。ここで、R24は、2つ以上のsp3 炭素を含んでいる炭素数2〜14の2価の脂肪族炭化水素基であり、例えば、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、ヘプチレン基、オクチレン基、デシレン基、ウンデシレン基、ドデシレン基、トリデシレン基、テトラデシレン基等の2価の鎖状飽和炭化水素基が挙げられる。R22及び/又はR23が2つ以上のsp3 炭素を介して孤立しているビニル基を有する場合の炭素数は4以上必要であるし、これにより十分な相分離性が得られる。一方、炭素数が16を超えると、他の成分との相溶性が悪化し、ホログラム記録材料層の白濁などを招く恐れがある。
【0071】
R22及びR23の両者が、−R24−CH=CH2 であれば、記録露光後のポストキュアにより記録層への固定化がより確実となるので好ましい。また、R22及びR23が共に同一の−R24−CH=CH2 であることが、次に示す合成反応の観点からも好ましい。
【0072】
一般式(II)のビニル基含有化合物は、例えば、ジオールHO−R21−OHと、カルボン酸R22COOH及びR23COOH、又はカルボン酸クロライドR22COCl及びR23COCl、又はジカルボン酸ブロマイドR22COBr及びR23COBrとのエステル化反応により、合成することができる。
【0073】
一般式(II)のビニル基含有化合物の具体例としては、
エチレングリコール二(10−ウンデセン酸)エステル
CH2=CH-(CH2)8-CO-OCH2CH2O-CO-(CH2)8-CH=CH2
ジエチレングリコール二(10−ウンデセン酸)エステル
CH2=CH-(CH2)8-CO-O(CH2CH2O)2-CO-(CH2)8-CH=CH2
トリエチレングリコール二(10−ウンデセン酸)エステル
CH2=CH-(CH2)8-CO-O(CH2CH2O)3-CO-(CH2)8-CH=CH2
エチレングリコール二(7−オクテン酸)エステル
CH2=CH-(CH2)5-CO-OCH2CH2O-CO-(CH2)5-CH=CH2
ジエチレングリコール二(7−オクテン酸)エステル
CH2=CH-(CH2)5-CO-O(CH2CH2O)2-CO-(CH2)5-CH=CH2
トリエチレングリコール二(7−オクテン酸)エステル
CH2=CH-(CH2)5-CO-O(CH2CH2O)3-CO-(CH2)5-CH=CH2
等が挙げられる。
【0074】
分散媒として、上記一般式(I)又は(II)のビニル基含有化合物の1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0075】
上記分散媒の屈折率は、例えば1.50以下がよく、1.50未満が好ましい。屈折率の下限は特に定められないが、1.40以上程度である。2種以上の分散媒を併用する場合には、それらの屈折率の加重平均が上記のようになるように用いるとよい。また、より大きい屈折率変調を得るために、用いる光ラジカル重合性モノマー(A)の屈折率の加重平均が、用いる分散媒(C)の屈折率の加重平均よりも大きくなるようにする必要がある。
【0076】
上記一般式(I)又は(II)の特定構造のビニル基含有化合物は、分子内に2つのエステル結合(−O−CO−)基[場合によっては、カーボネート結合(−O−CO−O−)基]と炭化水素基を有しており、記録露光時における光ラジカル重合性化合物(A)の拡散移動促進が得られ、また、高い相分離性も得られる。また、前記特定構造のビニル基含有化合物は、2つ以上のsp3 炭素を介して孤立しているビニル基(すなわち、アリル基ではない)を有しており、アリル基(特にアリルエステル基)含有化合物よりも反応性が低い。このため、記録露光時において、光ラジカル重合性モノマーである(メタ)アクリル酸エステル(A)との反応速度差は十分に大きくなる。このため、本発明のホログラム記録材料によれば、高い回折効率が達成される。
【0077】
さらに、前記特定構造のビニル基含有化合物は、アリル基含有化合物よりも反応性が低いものであるが、記録露光後に後露光して前記ビニル基含有化合物をポストキュアさせることにより記録層に固定できる。そのため、記録層の経時による劣化は非常に少ない。
【0078】
このように、上記一般式(I)又は(II)の特定構造のビニル基含有化合物は、記録露光時においては光ラジカル重合性化合物(A)の拡散移動促進作用を有し、且つ、記録露光後においては後露光によってビニル基がラジカル反応しポストキュアする反応性を有する。従って、上記一般式(I)又は(II)のビニル基含有化合物を、以下に述べる一般式(III) 又は(IV)の非反応性化合物との対比において、反応性分散剤(Creactive)ということがある。
【0079】
本発明において、分散媒(C)として、さらに、一般式(III) で表される化合物、及び一般式(IV)で表される化合物からなる群より選ばれる非反応性化合物を用いることができる。これら化合物(III) 又は(IV)は、末端C=C二重結合を有しておらず、記録露光後における後露光によっても反応性がない。従って、非反応性分散剤(Cnon-reactive)ということがある。
【0080】
【化15】
【0081】
一般式(III) において、R31は炭素数2〜4の2価の炭化水素基を表す。R31が表す炭化水素基としては、アセチレンユニット(−C≡C−)、ジアセチレンユニット(−C≡C−C≡C−)、エチレンユニット(−CH=CH−)、−CH2 CH2 −、−CH2 CH2 CH2 CH2 −等が挙げられる。これらのうち、アセチレンユニット(−C≡C−)が好ましい。
【0082】
R32及びR33は、同一又は異なっていてもよく、炭素数1〜10の炭化水素基を表す。R32及びR33が表す炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、 sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、デシル基等のアルキル基(鎖状飽和脂肪族炭化水素基)が挙げられる。
【0083】
l及びmはエチレンオキシド単位の繰り返し数を表し、k及びnはプロピレンオキシド単位の繰り返し数を表し、k、l、m及びnは、互いに独立して0以上5以下の数である。前記エチレンオキシド単位及び前記プロピレンオキシド単位は、ランダム配列されていても、又はブロック配列されていてもよい。エチレンオキシド単位の繰り返し数、及び/又はプロピレンオキシド単位の繰り返し数を増加させることによって、より親水的になり、親水親油バランスHLBが大きくなる。
【0084】
一般式(III) の化合物の具体例としては、2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール、2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール エトキシレート(重量平均分子量Mw=395、l=m=1.92に相当)、2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール エトキシレート(重量平均分子量Mw=700、l=m=5.39に相当)等が挙げられる。
【0085】
【化16】
【0086】
一般式(IV)において、R41は炭素数1〜6の2価の脂肪族炭化水素基を表す。R41が表す炭化水素基としては、メチレン基[−CH2 −]、エチレン基[−(CH2 )2 −]、プロピレン基[−(CH2 )3 −]、ブチレン基[−(CH2 )4 −]、ペンチレン基[−(CH2 )5 −]、ヘキシレン基[−(CH2 )6 −]等の鎖状飽和炭化水素基が挙げられる。また、−CH=CH−(cis体、trans体)、−CH=C(CH3 )−(cis体、trans体)等の鎖状不飽和炭化水素基が挙げられる。
【0087】
R42及びR43は、同一又は異なっていてもよく、炭素数1〜12の炭化水素基であって、且つR42及びR43のうちの少なくとも1つは炭素数5〜12の炭化水素基を表す。R42及びR43が表す炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、 sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基等のアルキル基(鎖状飽和脂肪族炭化水素基)が挙げられる。
【0088】
一般式(IV)の化合物の具体例としては、マロン酸ジペンチル、マロン酸ジヘキシル、コハク酸ジドデシル、コハク酸ビス(2−エチルヘキシル)、グルタル酸ジドデシル、アジピン酸ビス(2−エチルヘキシル)、アジピン酸ジデシル、スベリン酸ジドデシル等の飽和脂肪族ジカルボン酸エステル類; マレイン酸ビス(2−エチルヘキシル)、フマル酸ビス(2−エチルヘキシル)、シトラコン酸ジドデシル、メサコン酸ジドデシル等の不飽和脂肪族ジカルボン酸エステル類が挙げられる。
【0089】
上記一般式(III) 又は(IV)の非反応性分散媒の1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0090】
上記非反応性分散媒の屈折率は、例えば1.50以下がよく、1.50未満が好ましい。屈折率の下限は特に定められないが、1.40以上程度である。非反応性分散剤を用いる場合には、反応性分散媒(Creactive)と非反応性分散剤(Cnon-reactive)との屈折率の加重平均が上記のようになるように用いるとよい。また、より大きい屈折率変調を得るために、用いる光ラジカル重合性モノマー(A)の屈折率の加重平均が、用いる分散媒(C)の屈折率の加重平均よりも大きくなるようにする必要がある。
【0091】
本発明において、分散媒(C)として、一般式(III) 又は(IV)の化合物を含んでいると、記録露光時において、光ラジカル重合性化合物(A)のより高い拡散移動促進が得られ、より高い回折効率が達成される。
【0092】
上記一般式(III) の化合物、及び一般式(IV)の化合物によって、光重合性化合物のより高い拡散促進が得られる理由は次のように考えられる。
これら分散媒化合物は、非イオン性界面活性剤の機能を有している。すなわち、一般式(III) の化合物では、2つのOH基(またはOH基末端を有するポリエチレンオキシド/ポリプロピレンオキシド鎖)が親水基であり、該2つの親水基が所定鎖長の炭化水素基(−C−R31−C−)によって結合されている。一般式(IV)の化合物では、2つのエステル結合が親水基として作用し、該2つのエステル結合が所定鎖長の炭化水素基(−R41−)によって結合されている。このように両化合物は、2つの親水基が所定鎖長の炭化水素基によって結合される構造を有しており、親水基と疎水基の立体的及び極性的なバランスによって、(メタ)アクリロイル基を有するラジカル重合性化合物(A)の拡散移動が促進されると考えられる。
【0093】
ホログラム記録材料はさらに、バインダーポリマー(D)を含んでいることが好ましい。バインダーポリマー(D)は、ホログラム記録材料において、マトリクスとしての機能を有する。
【0094】
バインダーポリマー(D)としては、前記光ラジカル重合性モノマー(A)、前記光重合開始剤(B)、及び前記分散媒(C)のいずれとも相溶性がよく有機溶剤に可溶なポリマーを用いる。ここでのポリマーとは、オリゴマー(低重合度で分子量の小さい高分子)をも含む概念である。
【0095】
バインダーポリマー(D)としては、例えば、エチレン性不飽和二重結合を有するモノマーの単独重合体、又は該モノマーと共重合可能な他のモノマーとの共重合体、ジオールとジカルボン酸との縮合重合体、ヒドロキシカルボン酸の重合体、セルロース誘導体等の熱可塑性樹脂を用いることができる。
【0096】
熱可塑性樹脂の具体例としては、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルブチラート、ポリビニルホルマール、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリアクリル酸又はポリメタクリル酸のエステル、セルロースアセテート、セルローストリアセテート、セルロースアセテートブチラート、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン−酢酸ビニル共重合体等、種々のものが挙げられる。
【0097】
また、バインダーポリマー(D)として、(メタ)アリル基を有する化合物を用いてもよい。ここで、(メタ)アリル基とは、メタリル基(2−メチル−2−プロペニル基)及びアリル基を総称する意味である。具体例としては、トリ(メタ)アリルイソシアヌレートのプレポリマー、ジ(メタ)アリルフタレートのプレポリマー、ジ(メタ)アリルイソフタレートのプレポリマー等が挙げられる。
【0098】
バインダーポリマーの1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。バインダーポリマーとして、ラジカル重合反応性を有していない熱可塑性樹脂と(メタ)アリル基を有する化合物とを適宜比率で併用してもよい。
【0099】
上記バインダーポリマーの屈折率は、例えば1.58以下が好ましい。屈折率の下限は特に定められないが、1.40以上程度である。2種以上のバインダーポリマーを併用する場合には、それらの屈折率の加重平均が上記のようになるように用いるとよい。また、より大きい屈折率変調を得るために、用いる光ラジカル重合性モノマー(A)の屈折率の加重平均が、用いる分散媒(C)の屈折率とバインダーポリマー(D)の屈折率の加重平均よりも大きくなるようにする必要がある。
【0100】
ホログラム記録材料はさらに、可塑剤(E)を含んでいてもよい。可塑剤(E)は、前記光ラジカル重合性化合物(A)、前記分散媒(C)及び前記バインダーポリマー(D)のいずれとも異なるものであり、且ついずれとも非反応性のものである。
【0101】
可塑剤(E)としては、ホログラム記録材料において用いられている可塑剤を用いることができる。例えば、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル等のフタル酸エステル類; コハク酸ジエチル、アジピン酸ジメチル、アジピン酸ジエチル、アジピン酸ジブチル、セバシン酸ジメチル、セバシン酸ジエチル等の脂肪族ジカルボン酸エステル類; グリセリルトリアセテート、酢酸2−エチルヘキシル等の酢酸エステル類; 等を用いることができる。ただし、上記脂肪族ジカルボン酸エステル類は、前記一般式(IV)の化合物とは異なるものである。可塑剤(E)としての脂肪族ジカルボン酸エステルは、一般式(IV)において、R41は炭素数1〜8の2価の炭化水素基を表し、R42及びR43は、同一又は異なっていてもよく、炭素数1〜4の炭化水素基を表す化合物である。これらのうち、セバシン酸ジメチル、セバシン酸ジエチルが好ましい。
【0102】
可塑剤の1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。可塑剤(E)を用いることにより、バインダーポリマー及び/又は記録時のモノマーの重合体であるポリマーと、その他の成分との相溶性が向上しやすい。ただし、可塑剤(E)を多量に用いることはできない。多量の可塑剤は、記録材料の粘度をかなり低下させるので、記録層の形態を維持することが困難になる。また、可塑剤が記録後も液状のまま記録材料層中に残留するので、可塑剤がブリードアウトの問題が生じる。可塑剤(E)を用いる場合の配合量は、後述する。
【0103】
上記可塑剤の屈折率は、例えば1.50以下がよく、1.50未満が好ましい。屈折率の下限は特に定められないが、1.40以上程度である。また、より大きい屈折率変調を得るために、用いる光ラジカル重合性モノマー(A)の屈折率の加重平均が、用いる分散媒(C)の屈折率とバインダーポリマー(D)の屈折率と可塑剤(E)の屈折率の加重平均よりも大きくなるようにする必要がある。
【0104】
本発明のホログラム記録材料における各成分の配合重量の上限値及び/又は下限値については、
前記光ラジカル重合性化合物(A)10〜70重量部、
前記光重合開始剤(B)3〜20重量部、
前記分散媒(C)5〜30重量部、
前記バインダーポリマー(D)20〜80重量部、
とすることが好ましく、
前記光ラジカル重合性化合物(A)20〜60重量部、
前記光重合開始剤(B)3〜10重量部、
前記分散媒(C)5〜20重量部、
前記バインダーポリマー(D)20〜70重量部、
とすることがより好ましい。上記分散媒(C)の量は、記録露光時の光ラジカル重合性化合物(A)の拡散移動を十分に行わせるのに必要な量である。前記分散媒(C)の量が5重量部未満であると、光ラジカル重合性化合物(A)の拡散促進効果が弱くなる傾向にある。一方、前記分散媒(C)を30重量部を超えて用いると、膜の取扱い性や記録後の信号安定性の低下を招く恐れがある。
【0105】
ただし、バインダーポリマー(D)を用いない場合には、
前記光ラジカル重合性化合物(A)10〜70重量部、
前記光重合開始剤(B)3〜20重量部、
前記分散媒(C)25〜80重量部、
とすることが好ましく、
前記光ラジカル重合性化合物(A)20〜60重量部、
前記光重合開始剤(B)3〜10重量部、
前記分散媒(C)25〜50重量部、
とすることがより好ましい。
【0106】
前記分散媒(C)として、上記一般式(I)又は(II)の反応性分散剤(Creactive)に追加して補助的に上記一般式(III) 又は(IV)の非反応性分散剤(Cnon-reactive)を用いる場合には、前記非反応性分散剤の添加量は、前記反応性分散剤及び前記非反応性分散剤の合計量を基準として、80重量%までの量、例えば5〜80重量%の量、好ましくは10〜70重量%の量とするとよい。前記非反応性分散剤の添加量が80重量%よりも多くなると、前記反応性分散剤の量が少なくなるので、前記反応性分散剤による効果、特にポストキュアによる記録層への固定及び記録層の経時安定性効果が得られにくくなる。一方、前記非反応性分散剤の添加量が5重量%以上とすることにより、記録露光時における光ラジカル重合性化合物(A)のより高い拡散移動促進が得られ、より高い回折効率が達成される。
【0107】
また、可塑剤(E)を用いる場合には、前記分散媒(C)と前記バインダーポリマー(D)との合計重量部に対して、例えば3〜80重量%、好ましくは5〜15重量%程度とするとよい。
【0108】
本発明のホログラム記録材料は、各成分を混合して、均一な組成物として製造することができる。混合方法は、公知の各種方法によればよい。
【0109】
得られたホログラム記録材料液を例えばPET等の樹脂製透明基板上に塗布し、乾燥して、フィルム状のホログラム記録材料層が得られる。このようにして分散媒(必要に応じてマトリクスとしてのバインダーポリマー)中に光ラジカル重合性化合物が均一に含有されたホログラム記録材料層が作製される。
【0110】
本発明のホログラム記録媒体は、基材と、前記基材上に形成されたホログラム記録材料層とを有している。ホログラム記録材料層の上に、さらに基材を被せて3層構成とすることもできる。また、ホログラム記録材料層の厚さは、限定されるものではなく、記録媒体の設計上から適宜決定するとよく、例えば5〜500μm程度とするとよい。
【0111】
ホログラム記録媒体の記録材料層に干渉性のある光を照射すると、露光部(明部)では光重合開始剤が開裂し、それをトリガーとして、近傍に存在する光ラジカル重合性化合物(モノマー)が重合反応を起こしポリマー化する。これに伴い、明部では未反応モノマーの濃度が減少し、非露光部(暗部)との間にモノマーの濃度勾配が生じる。生じた濃度勾配を補償するため、暗部から明部に未反応モノマーが拡散移動し、明部でさらにモノマーの重合反応が進行する。結果として、明部では光重合性モノマーの重合体が多く存在するようになる。このとき、光重合性モノマー(及びその重合体)と他の成分との間で屈折率差があれば、光の明暗に応じたパターンが屈折率変調(Δn)として記録される。
【0112】
本発明のホログラム記録材料は、上述した特定構造の反応性分散媒化合物を含んでいる。このため、記録露光時における光ラジカル重合性化合物の拡散移動促進が得られ、高い回折効率が達成される。それと共に、記録後の記録層の優れた経時安定性が得られる。
【実施例】
【0113】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0114】
[合成例1:セバシン酸ジ(3−ブテニル)の合成]
100mLナスフラスコに3−ブテン−1−オール21.38g(0.213モル、Mw=100.16)を入れ、氷冷下、滴下ロートからセバシン酸ジクロライド25.25g(0.107モル、Mw=239.14)を注意深く滴下した。滴下終了後、混合物を室温に戻した。その後、混合物を100℃で一晩加熱し、塩酸ガスを発生させた。グラスチューブオーブンを用いて、内温250℃にて減圧蒸留し、32.54gのセバシン酸ジ(3−ブテニル)を得た。収率:98%。Mw=310.43。
【0115】
ClCO-(CH2)8-COCl + HO-CH2CH2-CH=CH2 →
CH2=CH-CH2CH2-OCO-(CH2)8-COO-CH2CH2-CH=CH2
【0116】
セバシン酸ジ(5−ヘキセニル)、アジピン酸ジ(5−ヘキセニル)も同様の反応により合成した。
【0117】
[合成例2:エチレングリコール二(10−ウンデセン酸)エステルの合成]
100mLナスフラスコにエチレングリコール4.5g(0.0725モル、Mw=62.07)を入れ、氷冷下、滴下ロートから10−ウンデセン酸ジクロライド29.5g(0.146モル、Mw=202.72)を注意深く滴下した。滴下終了後、混合物を室温に戻した。その後、混合物を100℃で一晩加熱し、塩酸ガスを発生させた。グラスチューブオーブンを用いて、内温250℃にて減圧蒸留し、27.2gのエチレングリコール二(10−ウンデセン酸)エステルを得た。収率:95%。Mw=394.59。
【0118】
CH2=CH-(CH2)8-COCl + HO-CH2CH2-OH →
CH2=CH-(CH2)8-CO-OCH2CH2O-CO-(CH2)8-CH=CH2
【0119】
[実施例1]
(ホログラム記録媒体サンプルの作製)
以下の手順に従って、表1に示す配合組成の記録材料組成物溶液を調製した。
マトリクスとして酢酸ビニルポリマー(和光純薬工業(株)製、酢酸ビニルポリマー、数平均分子量Mn=1400〜1600、50重量%メタノール溶液)10gに、光重合性モノマーとして9,9−ビス[4−(2−アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン(新中村工業(株)製、NKエステル A−BPEF)3g、及び分散媒としてアジピン酸ジ(5−ヘキセニル)1.6gを加え、次いで過酸化物系光重合開始剤(チッソ(株)製、BT−2、3,3’−ジ(tert−ブチルパーオキシカルボニル)−4,4’−ジ(メトキシカルボニル)ベンゾフェノンほか位置異性体混合物の40%アニソール溶液)2.4gを加えた。この混合物に、さらに、10mgの増感色素(3−ブチル−2−[3−(3−ブチル−5−フェニル−1,3−ベンゾオキサゾール−2(3H)−イリデン) プロパ−1−エン−1−イル]−5−フェニル−1,3−ベンゾオキサゾール−1−イウム=ヘキサフルオロ−λ5−ホスファヌイド,下記の化学式)を溶解させた6gのアセトン溶液(アセトン 5.99g)を添加し、撹拌して溶解させた。このようにして記録材料組成物溶液を得た。
【0120】
【化17】
【0121】
得られた記録材料組成物溶液を、バーコーターを用いて100μm厚のPETフィルム上に塗布し、室温で一晩減圧乾燥させた。乾燥後の記録材料層の膜厚は20μmであった。これを1.0mm厚のスライドガラスに記録材料層がガラス面に接するように貼り付け、ホログラム記録媒体サンプルとした。
【0122】
(特性評価)
実施例1のホログラム記録媒体サンプルについて、図1に示すようなホログラム記録光学系において、特性評価を行った。図1の紙面の方向を便宜的に水平方向とする。
【0123】
図1において、ホログラム記録媒体サンプル(1) は、記録材料層が水平方向と垂直となるようにセットされている。
【0124】
図1のホログラム記録光学系において、記録用の光源(11)としてNd:YAGレーザ(波長532nm)を用い、この光源(11)から発振した光を、シャッター(12)、凸レンズ(13)、ピンホール(14)、及び凸レンズ(15)によって空間的にフィルタ処理及びコリメートし、ミラー(16)及び1/2波長板(17)を介してビームスプリッタ(18)で2つの光束に分割し、分割された各光束それぞれが、ミラー(19,20) 及びアパーチャ(21,22) を介して、ホログラム記録媒体サンプル(1) の記録材料層に対して垂直に対向して入射するように調整した。
【0125】
この光学系を用いて、ホログラム記録媒体サンプル(1) に対して反射型ホログラムを記録した。記録条件は、光強度30mW/cm2 で露光時間5秒(150mJ/cm2 )とした。その後、記録媒体サンプル(1) を蛍光灯(27W)下(サンプル(1) までの距離30cm)に6時間放置し、未反応成分を反応させるとともに、増感色素に由来する着色を完全に消失させた(ポストキュアと呼ぶ)。
【0126】
ポストキュア後の記録媒体サンプルを、分光光度計(日本分光(株)製V−660)にセットし、透過スペクトルを測定し、そのピーク強度及びピーク波長から反射型ホログラムの初期における回折効率及び回折波長を求めた。
【0127】
次いで、ポストキュア後の記録媒体サンプルを、80℃のオーブン内に24時間放置し、その後取り出した。この記録媒体サンプルについて、上記と同様にして回折効率及び回折波長を求めた。これを80℃/24時間加熱試験後の回折効率及び回折波長とする。
【0128】
回折効率は、分光光度計の処理ソフト上で求めたピーク波長及びそのピークにおける透過率Tp (%)、及びベースライン透過率T0 (%)から、以下の式により算出した。
回折効率(%)=[(T0 −Tp )/T0 ]×100
【0129】
実施例1のホログラム記録媒体サンプルの回折効率は84%(初期)、85%(加熱試験後)であり、回折波長は528nm(初期)、527nm(加熱試験後)であり、いずれも良好であった。
【0130】
[実施例2〜9、比較例1〜2]
マトリクス、光重合性モノマー、及び分散媒を、表1に示すような化合物及び配合組成とした以外は、実施例1と同様にしてホログラム記録媒体サンプルをそれぞれ作製し、その特性評価を行った。結果を併せて表1〜2に示す。
【0131】
[用いた成分の説明]
2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール エトキシレート(重量平均分子量Mw=395、一般式(III) のl=m=1.92に相当、シグマ・アルドリッチ社製、淡黄色粘稠液体、HLB値=8)
【0132】
なお、表1〜2において、各成分の配合量(g)は、不揮発分としての量を表示している。例えば、実施例1において用いられた酢酸ビニルポリマー(50重量%メタノール溶液)10gは、不揮発分の量5gに相当する。
【0133】
【表1】
【0134】
【表2】
【0135】
実施例1〜9のホログラム記録媒体サンプルでは、分散媒として本発明による特定の分子構造を有する反応性化合物を用いたので、記録時に光ラジカル重合性モノマーの拡散が促進され、高い回折効率が得られた。それと共に、加熱試験後においても、高い回折効率が維持されており、回折波長の変動も認められなかった。また、実施例5〜6のホログラム記録媒体サンプルでは、分散媒として非反応性化合物が併用されたので、より高い回折効率が得られた。
【0136】
一方、比較例1〜2では、本発明による分散媒を用いることなく、可塑剤として従来から用いられてきたセバシン酸ジブチル(比較例1)、又はアリルジグリコールカーボネート(比較例2)を用いたので、回折効率に劣っていた。
【符号の説明】
【0137】
(1) :ホログラム記録媒体サンプル
(11):光源
(12):シャッター
(13),(15) :凸レンズ
(14):ピンホール
(16),(19),(20):ミラー
(17):1/2波長板
(18):ビームスプリッタ
(21),(22) :アパーチャ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(メタ)アクリロイル基を有する光ラジカル重合性化合物(A)と、光重合開始剤(B)と、前記光ラジカル重合性化合物(A)及び前記光重合開始剤(B)を分散する分散媒(C)とを少なくとも含むホログラム記録材料であって、
前記分散媒(C)は、一般式(I):
【化1】
[式中、R11は、炭素数1〜12の2価の炭化水素基、又は
−(L11O)e −L12−基(ここで、L11及びL12は、同一又は異なっていてもよく、炭素数1〜6の2価の炭化水素基を表し、L11及びL12の炭素数の合計は2〜12であり、eは(L11O)単位の繰り返し数を表し、L11は(L11O)単位によって異なっていてもよい。)、又は
−O(L13O)f −(L14O)g −基(ここで、L13及びL14は、同一又は異なっていてもよく、炭素数1〜6の2価の炭化水素基を表し、L13及びL14の炭素数の合計は2〜12であり、fは(L13O)単位の繰り返し数を表し、L13は(L13O)単位によって異なっていてもよく、gは(L14O)単位の繰り返し数を表し、L14は(L14O)単位によって異なっていてもよい。)を表す。
R12及びR13は、同一又は異なっていてもよく、炭素数2〜16の炭化水素基であって、且つR12及びR13のうちの少なくとも1つは、2つ以上のsp3 炭素を介して孤立しているビニル基を有する。]
で表される化合物、及び
一般式(II):
【化2】
[式中、R21は、炭素数1〜12の2価の炭化水素基、又は
−(L21O)i −L22−基(ここで、L21及びL22は、同一又は異なっていてもよく、炭素数1〜6の2価の炭化水素基を表し、L21及びL22の炭素数の合計は2〜12であり、iは(L21O)単位の繰り返し数を表し、L21は(L21O)単位によって異なっていてもよい。)を表す。
R22及びR23は、同一又は異なっていてもよく、炭素数2〜16の炭化水素基であって、且つR22及びR23のうちの少なくとも1つは、2つ以上のsp3 炭素を介して孤立しているビニル基を有する。]
で表される化合物
からなる群より選ばれるビニル基含有化合物を含む、ホログラム記録材料。
【請求項2】
前記一般式(I)におけるR11が、炭素数1〜12の2価の鎖状飽和炭化水素基又は鎖状不飽和炭化水素基であり、及び/又は
前記一般式(II)におけるR21が、炭素数1〜12の2価の鎖状飽和炭化水素基又は鎖状不飽和炭化水素基である、請求項1に記載のホログラム記録材料。
【請求項3】
前記分散媒(C)としてさらに、一般式(III) :
【化3】
(式中、R31は炭素数2〜4の2価の炭化水素基を表し、R32及びR33は、同一又は異なっていてもよく、炭素数1〜10の炭化水素基を表す。l及びmはエチレンオキシド単位の繰り返し数を表し、k及びnはプロピレンオキシド単位の繰り返し数を表し、k、l、m及びnは、互いに独立して0以上5以下の数である。前記エチレンオキシド単位及び前記プロピレンオキシド単位は、ランダム配列されていても、又はブロック配列されていてもよい。)
で表される化合物、及び
一般式(IV):
【化4】
(式中、R41は炭素数1〜6の2価の炭化水素基を表し、R42及びR43は、同一又は異なっていてもよく、炭素数1〜12の炭化水素基であって、且つR42及びR43のうちの少なくとも1つは炭素数5〜12の炭化水素基を表す。)
で表される化合物
からなる群より選ばれる非反応性化合物を含む、請求項1又は2に記載のホログラム記録材料。
【請求項4】
前記一般式(III) におけるR31が、2価のアセチレンユニット(−C≡C−)である、請求項3に記載のホログラム記録材料。
【請求項5】
前記一般式(IV)におけるR41が、炭素数1〜6の2価の鎖状飽和炭化水素基又は鎖状不飽和炭化水素基である、請求項3又は4に記載のホログラム記録材料。
【請求項6】
前記光ラジカル重合性化合物(A)は、一般式(V):
【化5】
(式中、R51及びR52は、同一又は異なっていてもよく、(ベンゼン環側)−OCH2 CH2 −基、又は(ベンゼン環側)−OCH2 CH(OH)CH2 −基を表し、R53及びR54は、同一又は異なっていてもよく、水素原子又はメチル基を表す。)
で表される化合物、
一般式(VI):
【化6】
(式中、R61は、単結合、又はヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数5以下の2価の有機基を表し、R62は、水素原子又はメチル基を表す。Xは、Cl原子、Br原子又はI原子を表し、pは0〜5の整数である。)
で表される化合物、
一般式(VII) :
【化7】
(式中、R71は、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数5以下の2価の有機基を表し、R72は、水素原子又はメチル基を表す。)
で表される化合物、及び
一般式(VIII):
【化8】
(式中、R81及びR82は、同一又は異なっていてもよく、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数10以下の2価の有機基を表し、R83及びR84は、同一又は異なっていてもよく、水素原子又はメチル基を表す。Xは、Cl原子、Br原子又はI原子を表し、q及びrは互いに独立して0〜4の整数である。)
で表される化合物
からなる群から選ばれる化合物を含む、請求項1〜5のうちのいずれかに記載のホログラム記録材料。
【請求項7】
前記光ラジカル重合性化合物(A)、前記光重合開始剤(B)、及び前記分散媒(C)の配合重量比が、
前記光ラジカル重合性化合物(A)10〜70重量部、
前記光重合開始剤(B)3〜20重量部、
前記分散媒(C)25〜80重量部、
である、請求項1〜6のうちのいずれかに記載のホログラム記録材料。
【請求項8】
前記ホログラム記録材料はさらに、バインダーポリマー(D)を含んでいる、請求項1〜7のうちのいずれかに記載のホログラム記録材料。
【請求項9】
前記光ラジカル重合性化合物(A)、前記光重合開始剤(B)、前記分散媒(C)及び前記バインダーポリマー(D)の配合重量比が、
前記光ラジカル重合性化合物(A)10〜70重量部、
前記光重合開始剤(B)3〜20重量部、
前記分散媒(C)5〜30重量部、
前記バインダーポリマー(D)20〜80重量部、
である、請求項8に記載のホログラム記録材料。
【請求項10】
基材と、前記基材上に形成された請求項1〜9のうちのいずれかに記載のホログラム記録材料からなるホログラム記録層とを有している画像記録用ホログラム記録媒体。
【請求項1】
(メタ)アクリロイル基を有する光ラジカル重合性化合物(A)と、光重合開始剤(B)と、前記光ラジカル重合性化合物(A)及び前記光重合開始剤(B)を分散する分散媒(C)とを少なくとも含むホログラム記録材料であって、
前記分散媒(C)は、一般式(I):
【化1】
[式中、R11は、炭素数1〜12の2価の炭化水素基、又は
−(L11O)e −L12−基(ここで、L11及びL12は、同一又は異なっていてもよく、炭素数1〜6の2価の炭化水素基を表し、L11及びL12の炭素数の合計は2〜12であり、eは(L11O)単位の繰り返し数を表し、L11は(L11O)単位によって異なっていてもよい。)、又は
−O(L13O)f −(L14O)g −基(ここで、L13及びL14は、同一又は異なっていてもよく、炭素数1〜6の2価の炭化水素基を表し、L13及びL14の炭素数の合計は2〜12であり、fは(L13O)単位の繰り返し数を表し、L13は(L13O)単位によって異なっていてもよく、gは(L14O)単位の繰り返し数を表し、L14は(L14O)単位によって異なっていてもよい。)を表す。
R12及びR13は、同一又は異なっていてもよく、炭素数2〜16の炭化水素基であって、且つR12及びR13のうちの少なくとも1つは、2つ以上のsp3 炭素を介して孤立しているビニル基を有する。]
で表される化合物、及び
一般式(II):
【化2】
[式中、R21は、炭素数1〜12の2価の炭化水素基、又は
−(L21O)i −L22−基(ここで、L21及びL22は、同一又は異なっていてもよく、炭素数1〜6の2価の炭化水素基を表し、L21及びL22の炭素数の合計は2〜12であり、iは(L21O)単位の繰り返し数を表し、L21は(L21O)単位によって異なっていてもよい。)を表す。
R22及びR23は、同一又は異なっていてもよく、炭素数2〜16の炭化水素基であって、且つR22及びR23のうちの少なくとも1つは、2つ以上のsp3 炭素を介して孤立しているビニル基を有する。]
で表される化合物
からなる群より選ばれるビニル基含有化合物を含む、ホログラム記録材料。
【請求項2】
前記一般式(I)におけるR11が、炭素数1〜12の2価の鎖状飽和炭化水素基又は鎖状不飽和炭化水素基であり、及び/又は
前記一般式(II)におけるR21が、炭素数1〜12の2価の鎖状飽和炭化水素基又は鎖状不飽和炭化水素基である、請求項1に記載のホログラム記録材料。
【請求項3】
前記分散媒(C)としてさらに、一般式(III) :
【化3】
(式中、R31は炭素数2〜4の2価の炭化水素基を表し、R32及びR33は、同一又は異なっていてもよく、炭素数1〜10の炭化水素基を表す。l及びmはエチレンオキシド単位の繰り返し数を表し、k及びnはプロピレンオキシド単位の繰り返し数を表し、k、l、m及びnは、互いに独立して0以上5以下の数である。前記エチレンオキシド単位及び前記プロピレンオキシド単位は、ランダム配列されていても、又はブロック配列されていてもよい。)
で表される化合物、及び
一般式(IV):
【化4】
(式中、R41は炭素数1〜6の2価の炭化水素基を表し、R42及びR43は、同一又は異なっていてもよく、炭素数1〜12の炭化水素基であって、且つR42及びR43のうちの少なくとも1つは炭素数5〜12の炭化水素基を表す。)
で表される化合物
からなる群より選ばれる非反応性化合物を含む、請求項1又は2に記載のホログラム記録材料。
【請求項4】
前記一般式(III) におけるR31が、2価のアセチレンユニット(−C≡C−)である、請求項3に記載のホログラム記録材料。
【請求項5】
前記一般式(IV)におけるR41が、炭素数1〜6の2価の鎖状飽和炭化水素基又は鎖状不飽和炭化水素基である、請求項3又は4に記載のホログラム記録材料。
【請求項6】
前記光ラジカル重合性化合物(A)は、一般式(V):
【化5】
(式中、R51及びR52は、同一又は異なっていてもよく、(ベンゼン環側)−OCH2 CH2 −基、又は(ベンゼン環側)−OCH2 CH(OH)CH2 −基を表し、R53及びR54は、同一又は異なっていてもよく、水素原子又はメチル基を表す。)
で表される化合物、
一般式(VI):
【化6】
(式中、R61は、単結合、又はヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数5以下の2価の有機基を表し、R62は、水素原子又はメチル基を表す。Xは、Cl原子、Br原子又はI原子を表し、pは0〜5の整数である。)
で表される化合物、
一般式(VII) :
【化7】
(式中、R71は、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数5以下の2価の有機基を表し、R72は、水素原子又はメチル基を表す。)
で表される化合物、及び
一般式(VIII):
【化8】
(式中、R81及びR82は、同一又は異なっていてもよく、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数10以下の2価の有機基を表し、R83及びR84は、同一又は異なっていてもよく、水素原子又はメチル基を表す。Xは、Cl原子、Br原子又はI原子を表し、q及びrは互いに独立して0〜4の整数である。)
で表される化合物
からなる群から選ばれる化合物を含む、請求項1〜5のうちのいずれかに記載のホログラム記録材料。
【請求項7】
前記光ラジカル重合性化合物(A)、前記光重合開始剤(B)、及び前記分散媒(C)の配合重量比が、
前記光ラジカル重合性化合物(A)10〜70重量部、
前記光重合開始剤(B)3〜20重量部、
前記分散媒(C)25〜80重量部、
である、請求項1〜6のうちのいずれかに記載のホログラム記録材料。
【請求項8】
前記ホログラム記録材料はさらに、バインダーポリマー(D)を含んでいる、請求項1〜7のうちのいずれかに記載のホログラム記録材料。
【請求項9】
前記光ラジカル重合性化合物(A)、前記光重合開始剤(B)、前記分散媒(C)及び前記バインダーポリマー(D)の配合重量比が、
前記光ラジカル重合性化合物(A)10〜70重量部、
前記光重合開始剤(B)3〜20重量部、
前記分散媒(C)5〜30重量部、
前記バインダーポリマー(D)20〜80重量部、
である、請求項8に記載のホログラム記録材料。
【請求項10】
基材と、前記基材上に形成された請求項1〜9のうちのいずれかに記載のホログラム記録材料からなるホログラム記録層とを有している画像記録用ホログラム記録媒体。
【図1】
【公開番号】特開2012−78673(P2012−78673A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−225264(P2010−225264)
【出願日】平成22年10月4日(2010.10.4)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年10月4日(2010.10.4)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】
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