説明

ホログラム記録装置

【課題】参照光が物体光光学系側へ進入した際に空間光変調器上への損傷を防止できるホログラム記録装置を提供する。
【解決手段】ホログラム記録装置は、光源から射出される可干渉性光から、参照光を平行光として生成する参照光光学系と、可干渉性光から、記録情報に応じて空間光変調器64により可干渉性光を空間光変調した物体光を生成する物体光光学系と、を含み、参照光および物体光の光学干渉縞を記録媒体33に保存する。物体光光学系は、物体光を記録媒体33に集光する対物レンズ68を含む。参照光光学系は、参照光を記録媒体33に照射することにより参照光の光路と物体光の光路を交差させ記録媒体33に要素ホログラムを記録する。物体光光学系は記録媒体から対物レンズ68の有効径内を通過する参照光の光路を遮断する保護領域PRを物体光の光路内に備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホログラフィックステレオグラム画像またはホログラム画像を記録媒体に記録するホログラム記録装置に関し、特に、ホログラフィックステレオグラム作成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ホログラムは、一般的に、レーザ光(コヒーレント光)を2つに分け、一方を物体の被写体に照射してその拡散反射光(物体光)を感光シートに当てると同時に、他方の光を所定角度で参照光として感光シート全体に直接照射して、この2つの光の干渉による光学干渉縞を感光シートへ記録したものとして知られている。このホログラムに所定角度で記録時の参照光を照明することで、記録時と同一の強度と方向の物体光が再生され、被写体の3次元像が得られる。
【0003】
ホログラフィックステレオグラムは、ホログラムにステレオグラム(人間の左右目の視点位置に対応して物体を撮影した1組の平面画像(視差画像)を目視して、立体視を可能とするもの)を適用したものである。ホログラフィックステレオグラムは、多数の視点(観察位置)から撮影した複数の2次元画像をドット状(または短冊状)の微小なホログラム(要素ホログラム)として敷き詰めるように感光シート(ホログラフィック記録材料)へ記録したものである。よって、ホログラフィックステレオグラムでは、多数の視差画像の組が再生されるので、運動視差をも利用可能で、観察者の視点変化や多数の観察者に応じた3次元像が再現できる。
【0004】
ホログラフィックステレオグラムでは、物体を様々な角度から見た視差画像を再生時に感光シート上に合成するので、裸眼で3次元像が観察可能である。実際の露光記録は要素ホログラムを記録媒体上に順次並べて記録するので、小型の光学系でも大きなホログラフィックステレオグラムの記録を行うことができる。
【0005】
従来、一般的なホログラフィックステレオグラム作成の光学系に関して、感光シートに対して物体光を対物レンズで集光し、参照光を感光シート反対面側から平行光で入射させる構成となっている。
【0006】
図1は、従来のホログラフィックステレオグラムを作成するための対物レンズおよび記録板に対する物体光および参照光の関係を示すパルスレーザを用いたホログラフィックステレオグラム作成装置の概略図である。
【0007】
図1に示すように、物体光は、ディフューザBLD上に画像を形成し、画像は次にフーリエ変換レンズFTLを通過し、それによって、記録板RP上に位置決めされたホログラフィック記録材料に所望の物体光波面を生成する。参照光は、参照光はミラーM5によって曲げられ、次に記録板RPに照射される。記録板RPにおける記録板RPの面法線に対する参照光の入射角は好適には斜角であり、更に好適には約45°であることが提案されている(特許文献1、参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第4344612号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来、ホログラム再生時の再生像の視認可能範囲を拡げるために、開口数の大きな対物レンズを使用する状況では、対物レンズが記録媒体と非常に近接して配置されるために、従来のホログラフィックステレオグラム作成装置では参照光の物体光側へ進入に対して配慮されていないことに問題がある。実際に、特許文献1では記録板RPを通過した後の参照光については触れていない。
【0010】
従来構成のホログラム作成装置では記録板を通過した参照光は空間光変調器SLMの表示面上に集光し、空間光変調器SLMの表示面が損傷してしまう問題がある。
【0011】
そこで本発明は、参照光が物体光光学系側へ進入した際に、空間光変調器上への損傷を防止することができるホログラム記録装置を提供することが課題の一例として挙げられる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明によるホログラム記録装置は、光源から射出される可干渉性光から、参照光を平行光として生成する参照光光学系と、可干渉性光から、記録情報に応じて空間光変調器により可干渉性光を空間光変調した物体光を生成する物体光光学系と、を含み、参照光および物体光の光学干渉縞を記録媒体に保存するホログラム記録装置であって、物体光光学系は、物体光を記録媒体に集光する対物レンズを含む。参照光光学系は、参照光を記録媒体に照射することにより参照光の光路と物体光の光路を交差させ記録媒体に要素ホログラムを記録する。物体光光学系は記録媒体から対物レンズの有効径内を通過する参照光の光路を遮断する保護領域を物体光の光路内に備える。
【0013】
上記の本発明の構成によれば、参照光を物体光の光路中に戻していても、光学部品の無理のないレイアウトや実用的な参照光の角度設定が可能となる。物体光光学系の既存光学部品に保護領域を付けることで、新たな光学部品を追加する必要がない利点がある。よって、無理のない光学部品レイアウトと部品点数の削減効果が得られる。さらに、参照光の集光点付近に保護領域を設けることで、保護領域の大きさを最小限度にとどめることができるので、物体光への影響を最小にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】従来のホログラム記録装置の一例を示す模式図である。
【図2】本発明による実施形態のホログラフィックステレオグラム作成装置の構成を説明するための模式図である。
【図3】本発明による実施形態のホログラフィックステレオグラム作成装置の構成における物体光の光路を説明するための模式図である。
【図4】本発明による実施形態のホログラフィックステレオグラム作成装置の構成における参照光の光路を説明するための模式図である。
【図5】本発明による実施形態のホログラフィックステレオグラム作成装置における記録媒体と参照光および物体光との関係を説明するための概略断面図である。
【図6】本発明による実施形態のホログラフィックステレオグラム作成装置における記録媒体と参照光および物体光との関係を説明するための概略斜視図である。
【図7】本発明による実施形態のホログラフィックステレオグラム作成装置における対物レンズおよび記録媒体と参照光および物体光との関係を説明するための概略斜視図である。
【図8】本発明による実施形態のホログラフィックステレオグラム作成装置の物体光光学系における物体光および参照光の光束の断面と保護領域の位置関係を説明するため線図である。
【図9】本発明による他の実施形態のホログラム記録装置における物体光光学系の構成を説明するための模式図である。
【図10】本発明による他の実施形態のホログラム記録装置における物体光光学系の構成を説明するための模式図である。
【図11】本発明による他の実施形態のホログラム記録装置における物体光光学系の構成を説明するための模式図である。
【図12】本発明による他の実施形態のホログラム記録装置における物体光光学系の構成を説明するための模式図である。
【図13】本発明による他の実施形態のホログラム記録装置における物体光光学系の構成を説明するための模式図である。
【図14】本発明による他の実施形態のホログラム記録装置における物体光光学系の構成を説明するための模式図である。
【図15】本発明による実施形態のホログラフィックステレオグラム作成装置の構成を説明するための模式図である。
【図16】本発明による実施形態のホログラフィックステレオグラム作成装置の記録動作を説明するためのフローチャートである。
【図17】本発明による実施形態のホログラフィックステレオグラム作成装置により得られたホログラフィックステレオグラムを説明するための概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、ホログラム記録装置の一例として、記録媒体上に微小な要素ホログラム列を順次記録することにより、ホログラフィックステレオグラムを作成するホログラフィックステレオグラム作成装置を、図面を参照しつつ説明する。
【0016】
図2は、かかるホログラフィックステレオグラム作成装置の全体構造を示す概略模式図であり、図3は物体光の光路を説明する図であり、図4は参照光の光路を説明する図である。図2〜図4に示すように、ホログラフィックステレオグラム作成装置は、可干渉性光を射出するレーザ光光源21、コリメータレンズ22、シャッター23、1/2波長板24、偏光ビームスプリッタ25、アパーチャ26、縮小光学系27、ミラー28、ミラー31、記録媒体33、ステージ35、2軸ステッピングモータ41、メインコントローラ51、ミラーM、拡散板62、空間光変調器64、リレーレンズ65,66、ナイキストフィルタ67、および対物レンズ68を備える。
【0017】
メインコントローラ51は、シャッター23、ステージ35を駆動する2軸ステッピングモータ41を駆動するためにこれらに接続されている。メインコントローラ51からの信号により、シャッター23が開けられると参照光および物体光が記録媒体33へ照射される。
【0018】
偏光ビームスプリッタ25、拡散板62、および空間光変調器64は、光源21の可干渉性光から記録情報に応じて可干渉性光を変調した物体光を生成する物体光光学系に含まれる。偏光ビームスプリッタ25は、光源21の可干渉性光から参照光を生成する参照光光学系にも含まれる。
【0019】
ステージ35および2軸ステッピングモータ41は、参照光および物体光の光路の交差する記録位置に記録媒体33を供給し支持する支持部に含まれる。
【0020】
図3を用いて、ホログラフィックステレオグラム作成装置における物体光の光路を説明する。干渉性の良い光源21から出射されたレーザ光はコリメータレンズ22で平行光とされた後、シャッター23および1/2波長板24を透過して、偏光ビームスプリッタ25により参照光と物体光用の光ビームに分けられる。ここで、物体光用のビーム光は図示しないエキスパンダレンズなどにより適切な平行光束径に変換されてもよい。平行光とされた物体光用のレーザ光ビームは、ミラーM、拡散板62を経て空間光変調器64に入射する。
【0021】
空間光変調器64は、通常、入射光を選択的に透過することができるアドレス可能な画素(ピクセル)の領域または2次元アレイからなる。メインコントローラ51からの画素を制御する画像パターン信号は、まず付随した制御回路によって処理され、次いで画素マトリクスアレイ中に、1フレーム同時にロードされる。なお、ここでの画像パターンは複数の視差画像から合成されるもので、画像パターン信号に基づいてディスプレイに表示しても画像は認識できない。空間光変調器64は、例えば、アクティブマトリクス駆動回路が形成され液晶デバイスであるが、例えば、所定の画素数、例えば、VGAタイプ(640×480画素)やXGAタイプ(1024×768画素)の画素配列を有する。
【0022】
図3に示すように、空間光変調器64の画像パターンに応じた空間光変調された物体光は、結像光学系(リレーレンズ65、ナイキストフィルタ67、リレーレンズ66)を経て対物レンズ68に入射する。対物レンズ68は物体光を記録媒体33の所定位置に球面波として集光する。結像光学系は2つのリレーレンズ65,66を用いた4f光学系などが用いられる。また、2つのリレーレンズ65,66の共焦点位置に配置された矩形の開口部を持つナイキストフィルタ67は、空間光変調器64による不要な回折光を除去すると共に、記録される要素ホログラムの大きさも制限する。メインコントローラ51からの制御信号により空間光変調器64にはあらかじめコンピュータなどにより計算された視差画像合成に基づく画像パターンが表示され、その表示パターンは結像光学系により対物レンズ68の直前の面Aに一旦結像した後、記録媒体33の感光シート面上へと集光される。このとき結像面Aと対物レンズ68の前側主点の距離と、対物レンズ68の後側主点と媒体面の距離が共に対物レンズ68の焦点距離foに等しくなるように配置される。
【0023】
図5に示すように、記録媒体33は、感光シート33aがガラス基板33bとPET基材33cに挟まれた構造となっている。物体光はガラス基板側から入射し、感光シート33aの界面上に集光する。物体光は空間光変調器64に入射する前に拡散板62を通過しているため、感光シート33aの界面上でのビームプロファイルはピーク強度が落ち、横方向に拡がりを持つ形状となる。ピーク強度が落ちることにより、一つの要素ホログラム内で均一な記録が行えると共に、感光シートの感度を有効に利用することが可能となる。また、集光点での横方向の拡がりについてはナイキストフィルタ67により制限され、図6に示すように、所定の大きさを持つ矩形領域のみに物体光が照射されることになる。記録媒体33は、少なくとも感光シートと樹脂基材層を含み、物体光が感光シート側より入射され、参照光が樹脂基材層側より入射される。
【0024】
次に、図4を用いて、ホログラフィックステレオグラム作成装置における参照光の光路を説明する。光源21からシャッター23および1/2波長板24を透過して、偏光ビームスプリッタ25により物体光用の光から分離されたレーザ平行光の参照光は、適切な大きさを持つ矩形のアパーチャ26や、縮小光学系27などにより、細い矩形光束断面の平行光へと変換された後、ミラー28およびミラー31を介して、記録媒体33の感光シート上における物体光の集光点(記録位置)へ、物体光の入射面とは反対面側より照射される。このとき参照光のスポットは感光シート面上での物体光のスポットと同じ大きさとなるようにされる。このように、参照光光学系では、参照光の光束から横断面積のより小なる部分参照光光束を生成する縮小光学系を含み、記録媒体33上に微小な要素ホログラム列を順次記録することにより、ホログラフィックステレオグラムを作成するようにしている。これにより、ラスタスキャン記録することが容易となる。
【0025】
この実施形態において、参照光光学系および物体光光学系は、記録媒体を透過した参照光を、物体光の光路に沿って空間光変調器64へ導く光路、すなわち、図4に示すように、記録媒体33を透過した参照光を、物体光の光路にて結像光学系(リレーレンズ65、ナイキストフィルタ67、リレーレンズ66)を経て空間光変調器64へ導く構成としてある。そのために、図5に示すように、対物レンズの開口数をNA=sinθとするとき、記録媒体上における対物レンズ光軸に対する参照光の傾きがθ以下とする。すなわち、ミラー31で反射され参照光を透過する参照光は、対物レンズ68の開口数NAの範囲内(開口角θ以内)の角度で集光点(記録位置)へ入射させる。なお、記録媒体33の感光シート面を物体光の集光面(フーリエ面)付近に配置することが必要である。このようなホログラムでは像の視認性を良くするために参照光(照明光)を斜め方向から照射することが一般的であるが、その角度範囲は物体光の対物レンズ68の開口数NAにより制約される。なお、図5においては、記録媒体33を透過した参照光を対物レンズ68の開口角で対物レンズへ入射させている。これにより、参照光が再び対物レンズ68に戻って参照光同士で干渉しても、記録された参照光の再生された光は、後の照明光の照射方向に一致して現れるので、観察者の影になり、再生された立体像の観察には影響が少なくなる。
【0026】
図4に示すように、記録媒体33の一方の表面側から対物レンズ68で物体光を記録位置に向け集光し、対物レンズの開口角θ以内で、その他方の表面側から参照光を記録媒体記録位置に照射して、透過した参照光が入射するように構成してある。換言すれば、記録媒体33を透過した参照光は、物体光の光路に沿って空間光変調器64へ導かれている。
【0027】
空間光変調器64に平行光として入射した物体光が記録媒体33の記録位置に集光するように光学系が配置されているため、記録位置に平行光で入射した参照光は、一旦物体光光学系の有効径内に入射してしまえば、その入射角度に拘わらず空間光変調器64上に集光することになる。一般に空間光変調器64の表示面に照射するレーザ光のパワー密度には上限値があり、集光点におけるレーザ光のパワー密度はその上限値を遥かに超えたものとなるため、空間光変調器64の表示面上への集光は避ける必要がある。
【0028】
これを避けるために、図7(a)に示すように、非常に大きな入射角度から参照光を入射させることで、物体光の光学系に戻さないという方法が考えられる。通過した参照光を適当な遮光物で遮光すれば完全な遮光となる。しかし記録に使われる対物レンズ68は顕微鏡対物レンズのように高NAで焦点距離の短いものが用いられる。必然的に作動距離も短くなるため、図7(a)に示すように対物レンズ68の鏡筒部分まで避けて通過させるのは実際には困難である。また図7(b)に示すように有効径から僅かに外れるような配置では、対物レンズ68の鏡筒や内壁などによる散乱光が生じ、無用な迷光を増やす原因にもなる。これはホログラムの記録品質を低下させる要因となり好ましくない。むしろ図7(c)に示すように、対物レンズ68の有効径内に戻し、適切な場所で遮光する方が現実的と言える。
【0029】
本実施形態においては、図2に示すように空間光変調器64上の参照光の集光点に保護領域PRを設けることで、対物レンズ66の有効径内を通過した参照光が空間光変調器64表示面に集光することを避けることができる。この保護領域PRは空間光変調器と一体として形成され得る。保護領域PRは光を通さない素材からなり、大きなレーザーパワー密度に対する耐性もある金属などが好ましいが、参照光のレーザーパワーに応じて樹脂やガラス、紙などで保護領域PRを空間光変調器上に張りつけて用いても良い。この保護領域PRは必ずしも空間光変調器64上に設ける必要はなく、記録媒体33から空間光変調器64に至るまでの物体光の光束(光路)の断面範囲内における参照光の光路上であればどこでもよい。ただし保護領域PRを設けた部分は物体光も遮光されることを考えると、図8(a)に示すように、物体光の光束の断面範囲内で参照光の光束を覆うように保護領域PRはできるだけ小さい領域とする方が好ましい。実際には、図8(b)に示すように、物体光の光束の断面範囲外にも広がるが同心円開口周縁部で参照光の光束を覆うように参照光の光束系よりも大きめに保護領域PRを設ける方が、調整誤差のことを考慮すると現実的と言える。また、図8(c)に示すように、保護領域PRの開口周縁部は矩形でもよい。さらに、図8(d)に示すように、物体光の光束を2カ所に分けて条帯状で覆う保護領域PRでもよい。
【0030】
他の実施例のホログラム記録装置における物体光光学系を図9〜図15に示す。
【0031】
図9に示すように、空間光変調器64上でなく、物体光光学系の物体光光路の光束内の対物レンズ68上に保護領域PRを設け、記録媒体33を通り抜けた参照光の光束を保護領域PRで遮断する構成とした以外、図2に示したホログラム記録装置の構成と同一とすることができる。
【0032】
図10および図11に示すように、空間光変調器64上でなく、物体光光学系の物体光光路の光束内のリレーレンズ65または66上に保護領域PRを設け、記録媒体33を通り抜けた参照光の光束を保護領域PRで遮断する構成とした以外、図2に示したホログラム記録装置の構成と同一とすることができる。
【0033】
図12に示すように、物体光の集光面(記録媒体33面上)におけるエネルギーの集中を避けるために、空間光変調器64上でなく、空間光変調器64の表示面またはその近傍に新たに配置された拡散板SC(物体光光学系の物体光光路の光束内)上に保護領域PRを設け遮断する構成とした以外、図2に示したホログラム記録装置の構成と同一とすることができる。
【0034】
同様に、図13に示すように、空間光変調器64上でなく、空間光変調器64の表示面の結像面(面A)またはその近傍に新たに配置された拡散板SC(物体光光学系の物体光光路の光束内)上に保護領域PRを設け参照光の光束を遮断する構成とした以外、図2に示したホログラム記録装置の構成と同一とすることができる。これは、参照光が集光している空間光変調器64上(図2)の結像位置である面A上に保護領域PRを設けることで最大の遮光効果を発揮することができる。
【0035】
同様に、図14に示すように、空間光変調器64上でなく、空間光変調器64の表示面の結像面(面A)から離れて新たに配置された透明基板TP(物体光光学系の物体光光路の光束内)上に保護領域PRを設け参照光の光束を遮断する構成とした以外、図2に示したホログラム記録装置の構成と同一とすることができる。
【0036】
これらの図9〜図14に示す実施形態のホログラム記録装置における物体光光学系における保護領域PRの2つ以上を組み合わせて、その物体光光路の光束内の参照光光路の光束を遮るように形成することもできる。これにより、保護領域PRを半透明の材料で構成しても、参照光の光束が複数の保護領域PRを通過するごとに減衰して参照光を遮断することができる。
【0037】
さらに、図15に示すように、透過型の空間光変調器64でなく、ミラーMに代えてその位置に配置した第2の偏光ビームスプリッタ25aの一面(物体光光学系の物体光光路の光束内)上に反射型の空間光変調器64aを設け、反射型の空間光変調器64a上に保護領域PRを設け遮断する構成とした以外、図2に示したホログラム記録装置の構成と同一とすることができる。
【0038】
次に、ホログラフィックステレオグラム作成装置の動作、要素ホログラム書き込み記録動作について図16に示すフローチャートに基づいて説明する。
【0039】
まず、1番目に記録する要素ホログラムの画像パターンを図2に示すメインコントローラ51の画像生成部により生成し(ステップS1)、メインコントローラ51からの制御によりシャッター23を開ける(ステップS2)。これは元の3次元画像の視差画像から、対象の要素ホログラム位置に表示すべき微小な視差画像を表し、逐次計算を行うかあらかじめ計算されて記憶装置などに保存して置いたものを使用する。この画像データを空間光変調器64のXY軸方向の駆動回路に転送することで空間光変調器64に2次元の画像パターンが表示され、すなわち所定時間で露光記録される(ステップS3)。
【0040】
次に、露光時間が規定値か否か判断し(ステップS4)、否であればステップS3に戻り、満たされていれば両シャッターを閉じる(ステップS5)。ここでは露光記録に必要な露光エネルギー量、露光時間および露光パターンとなるようにメインコントローラ51により適切なシャッターの開閉タイミングをシャッター開閉機構に指示することで露光が行われる。空間光変調器64の表示とシャッターの開閉はメインコントローラ51で制御され、両者のタイミングが適切に同期するように処理が行われる。
【0041】
次に、各要素ホログラムの露光が完了したら、露光回数が規定値か否か判断し(ステップS6)、否であればステップS2に戻り、満たされていれば空間光変調器64に2次元の記録パターンが表示を停止する(ステップS7)。
【0042】
次に、要素ホログラムが最終記録位置か否か判断し(ステップS8)、否であれば次の記録位置へと記録媒体を移送して(ステップS9)から、ステップS1に戻り繰り返し、満たされていれば終了する。
【0043】
ここで、通常、図6に示す要素ホログラムを記録媒体の平面方向に繰り返しラスタスキャン記録するように、要素ホログラムが隙間無く整列するように要素ホログラムの一辺の長さと同じだけXY軸方向に参照光および物体光の光路の交差する記録位置(参照光および物体光の光路の交差する領域)を移動するが、要素ホログラム同士がオーバーラップしたり、要素ホログラム間に隙間があるように記録しても良い。記録媒体の移動が完了して記録媒体の振動が収まると、次の要素ホログラムの記録となる。以下、この動作を繰り返すことにより記録媒体上に要素ホログラム列が形成され、ホログラフィックステレオグラムが作成される。すなわち、記録媒体に記録される要素ホログラムは、再生用参照光が照射されることにより3次元画像が再生されるホログラムの一部であり、要素ホログラムを記録媒体の平面方向に繰り返しラスタスキャン記録することにより、全体として一つの3次元画像が再生されるホログラムを記録する。
【0044】
図17のように、完成したホログラフィックステレオグラム33は参照光と同じ角度から白色光で照明することで、照明した面側に3次元像を観察することができる。
【符号の説明】
【0045】
21 光源
22 コリメータレンズ
23 シャッター
24 1/2波長板
25 偏光ビームスプリッタ
26 アパーチャ
27 縮小光学系
28 ミラー
31 ミラー
35 ステージ
33 記録媒体
41 2軸ステッピングモータ
51 メインコントローラ
62 拡散板
64 空間光変調器
65,66 リレーレンズ
67 ナイキストフィルタ
68 対物レンズ
PR 保護領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源から射出される可干渉性光から、参照光を平行光として生成する参照光光学系と、前記可干渉性光から、記録情報に応じて空間光変調器により前記可干渉性光を空間光変調した物体光を生成する物体光光学系と、を含み、参照光および物体光の光学干渉縞を記録媒体に保存するホログラム記録装置であって、
前記物体光光学系は、前記物体光を記録媒体に集光する対物レンズを含むこと、
前記参照光光学系は、前記参照光を前記記録媒体に照射することにより前記参照光の光路と前記物体光の光路を交差させ前記記録媒体に要素ホログラムを記録すること、
前記物体光光学系は前記記録媒体から前記対物レンズの有効径内を通過する前記参照光の光路を遮断する保護領域を前記物体光の光路内に備えること、を特徴とするホログラム記録装置。
【請求項2】
前記物体光光学系の前記対物レンズは、前記記録媒体の一方の表面側から前記物体光を集光するとともに、前記参照光光学系は、前記記録媒体の他方の表面側から前記参照光を照射して前記記録媒体を透過した前記参照光を前記対物レンズの開口角以内で前記対物レンズへ入射させることを特徴とする請求項1記載のホログラム記録装置。
【請求項3】
前記記録媒体を透過した前記参照光を前記対物レンズの開口角で前記対物レンズへ入射することを特徴とする請求項2記載のホログラム記録装置。
【請求項4】
前記保護領域が前記空間光変調器の表示面またはその結像面に形成されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1に記載のホログラム記録装置。
【請求項5】
前記保護領域が前記空間光変調器と一体として形成されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1に記載のホログラム記録装置。
【請求項6】
前記保護領域が前記対物レンズに形成されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1に記載のホログラム記録装置。
【請求項7】
前記物体光の光路中に拡散板が配置され、前記保護領域が前記拡散板に形成されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1に記載のホログラム記録装置。
【請求項8】
前記拡散板が前記空間光変調器の表示面、またはその結像面に配置されていることを特徴とする請求項7に記載のホログラム記録装置。
【請求項9】
前記保護領域が前記物体光光学系の中の前記参照光の光路に1つ以上形成されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1に記載のホログラム記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2012−212052(P2012−212052A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−78159(P2011−78159)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000005016)パイオニア株式会社 (3,620)
【Fターム(参考)】