説明

ホワイトナーおよびその製造方法

【課題】脂肪含量を増やすことなく、脂肪感・コク味等の風味を向上させたホワイトナーおよびその製造方法を提供する。
【解決手段】脂肪、タンパク質および炭水化物を含有するエマルションからなるホワイトナー、または前記エマルションを乾燥して得られる粉末からなるホワイトナーを製造する方法であって、前記脂肪、タンパク質および炭水化物を含有するエマルションに乳発酵物から分離した水溶性画分を配合する工程、を含むホワイトナーの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホワイトナーおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コーヒー、紅茶等の飲料に添加して用いられるホワイトナーとしては、液状のエマルションや、該エマルションを乾燥させた粉末状のもの(クリーミングパウダー)が用いられている(たとえば特許文献1)。ホワイトナーは、通常、脂肪、タンパク質、炭水化物等から構成されており、脂肪源として生クリーム、バター等の乳脂肪か、やし、パーム等の植物油脂を使用したものが一般的である。
上記のうち、クリーミングパウダーは、保存性に優れている。そのため、カップ式の飲料自動販売機のホワイトナーとしてはクリーミングパウダーが汎用されている。また、牛乳や生クリームの代替品として、食品にも用いられている。
しかし、クリーミングパウダーは、飲料や食品に添加したときのコク(ボディ感)が、クリームを用いる場合に比べて劣る問題がある。そのため、コクを改善するために種々の検討が行われている。
【0003】
特許文献2では、クリーミングパウダーに乳清ミネラルを添加した改良クリーミングパウダーが開示されている。該改良クリーミングパウダーによれば、湯に溶かしても水っぽくなくコクがある飲料が得られるとされている。
特許文献3では、粉乳、ホエー固形分および添加糖をそれぞれ所定量有してなる粉末状飲料用ホワイトナー組成物が開示されている。該粉末状飲料用ホワイトナー組成物は、脱脂粉乳に匹敵する官能性を示し、泡立ち飲料に加えたときに、脱脂粉乳を加えた時と同様のクリーミーさが得られるとされている。
特許文献4では、食用油脂、乳蛋白、糖質、乳化剤、溶融塩を含む水中油型乳化物を乾燥粉末化してなる粉末油脂であって、食用油脂、乳蛋白としてホエー、バターミルク、カゼインをそれぞれ所定量含有する牛乳様粉末油脂が開示されている。該牛乳様粉末油脂は、コク味のある牛乳風味を食品に付与することができるとされている。
【0004】
近年、消費者の低脂肪志向から、ホワイトナーにおいても低脂肪のものが求められるようになっている。しかし、脂肪含量が少なくなると、ホワイトナーを飲料に添加したときの脂肪感・コク味が低下する傾向がある。したがって、ホワイトナーの脂肪含量を増やすことなく、脂肪感・コク味等の風味を向上させることが求められる。
特許文献2〜4記載の技術は、コク味の向上にある程度の効果は奏するものの、このような低脂肪化に伴うコク味の低下の問題に対する効果は不十分である。特に、特許文献2のようにクリーミングパウダーに対して乳清ミネラルを添加する場合、添加量が増えると苦味が強くなる傾向があり、そのため風味も悪くなる傾向がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3889382号公報
【特許文献2】特開2003−33135号公報
【特許文献3】特表2005−508645号公報
【特許文献4】特開2009−278896号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、脂肪含量を増やすことなく、脂肪感・コク味等の風味を向上させたホワイトナーおよびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
フレッシュチーズ、ヨーグルト等の製造においては、乳原料を発酵させた後、得られた発酵物(乳発酵物)を、限外ろ過膜、精密ろ過膜あるいはカードセパレーター等を使用して水溶性画分を分離させることにより、脂肪やタンパク質等を濃縮することがある。本発明者らは、鋭意検討の結果、この乳発酵物を濃縮する際に分離される水溶性画分(膜透過液、セパレーター分離液等)をホワイトナーの原料として使用することにより上記課題が解決されることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち本発明は以下の態様を有する。
[1]脂肪、タンパク質および炭水化物を含有するエマルションからなるホワイトナー、または前記エマルションを乾燥して得られる粉末からなるホワイトナーを製造する方法であって、
前記脂肪、タンパク質および炭水化物を含有するエマルションに、乳発酵物から分離した水溶性画分を配合する工程、を含むホワイトナーの製造方法。
[2]前記乳発酵物から分離した水溶性画分が、乳発酵物から分離した限外ろ過膜透過液、乳発酵物から分離した精密ろ過膜透過液、および乳発酵物から分離したセパレーター分離液から選ばれる少なくとも1種である、[1]に記載のホワイトナーの製造方法。
[3]前記乳発酵物から分離した限外ろ過膜透過液が、発酵乳製品の製造において、乳原料を乳酸菌で発酵させた後、得られた乳発酵物を、限外ろ過膜を用いた膜処理により濃縮した際に、限外ろ過膜を透過したものである、[2]に記載のホワイトナーの製造方法。
[4]前記水溶性画分の脂肪含量が2質量%以下、タンパク質含量が5質量%以下、[炭水化物+酸]含量が5〜15質量%、灰分含量が0.2〜3.0質量%、水分含量が70〜95質量%である、[1]〜[3]のいずれか一項に記載のホワイトナーの製造方法。
[5]前記エマルションの総固形分に対する前記水溶性画分の固形分の割合が1.0質量%以上7.5質量%以下である、[1]〜[4]のいずれか一項に記載のホワイトナーの製造方法。
[6]前記水溶性画分中の[炭水化物+酸]/灰分の質量比が3〜10/1である、[1]〜[5]のいずれか一項に記載のホワイトナーの製造方法。
[7]脂肪、タンパク質および炭水化物を含有するエマルションからなるホワイトナー、または前記エマルションを乾燥して得られる粉末からなるホワイトナーであって、
前記エマルションが、乳発酵物から分離した水溶性画分を含有することを特徴とするホワイトナー。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、脂肪含量を増やすことなく、脂肪感・コク味等の風味を向上させたホワイトナーおよびその製造方法を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明のホワイトナーの製造方法は、脂肪、タンパク質および炭水化物を含有するエマルションからなるホワイトナー、または前記エマルションを乾燥して得られる粉末からなるホワイトナーを製造する方法であって、前記脂肪、タンパク質および炭水化物を含有するエマルションに、乳発酵物から分離した水溶性画分を配合する工程、を含むことを特徴とする。
乳発酵物から分離した水溶性画分をエマルションに含有させることで、得られるホワイトナーを飲料等に添加した際の脂肪感・コク味等の風味を向上させることができる。なお、乳発酵物自体を含有させても同様の風味向上効果は得られるが、ホワイトナーに必要とされる溶解性などの諸品質を維持するためには、凝集したタンパク質等は含まないことが望ましい。そのため、乳発酵物から、限外ろ過膜、精密ろ過膜、カードセパレーター等を使用して水溶性画分を回収し、これを添加することが望ましい。特に、限外ろ過膜の透過液として得られる水溶性画分は、それ自体は脂肪・タンパク質をほとんど含まないにもかかわらず、脂肪感・コク味等の風味を向上させることができる点でより好ましい。
【0010】
乳発酵物から分離した水溶性画分(以下、「分離ホエイ」ということがある。)は、乳発酵物から非水溶性の成分を分離したもので、主に、水および水溶性の成分から構成される。非水溶性の成分としては、脂肪、不溶性のタンパク質、および不溶性のペプチド等が挙げられる。また、水溶性の成分としては、糖質等の炭水化物、有機酸、リン酸等の酸、ペプチド、遊離アミノ酸等のタンパク質分解物、灰分等が挙げられる。
分離ホエイは、乳発酵物を限外ろ過膜もしくは精密ろ過膜処理した際の透過液、またはカードセパレーターで分離処理した際のセパレーター分離液として得られる。
乳発酵物の限外ろ過膜透過液又は精密ろ過膜透過液は、フレッシュチーズ、ヨーグルト等の発酵乳製品の製造において、乳原料を乳酸菌、又は乳酸菌及びビフィズス菌等(以下、「乳酸菌等」ということがある。)で発酵させた後、得られた発酵物(乳発酵物)を、限外ろ過膜又は精密ろ過膜を用いた膜処理により濃縮した際に、限外ろ過膜又は精密ろ過膜を透過したものである。また、セパレーター分離液は、フレッシュチーズ等の発酵乳製品の製造において、乳原料を乳酸菌等で発酵させた後、得られた発酵物(乳発酵物)に含まれる成分の比重差を利用して、遠心分離により分離した際の水溶性画分のことをいう。
限外ろ過膜又は精密ろ過膜を用いた膜処理においては、乳発酵物に含まれる水分や低分子量の成分(乳糖、灰分、有機酸やリン酸、遊離アミノ酸など)は限外ろ過膜又は精密ろ過膜を透過する。また、限外濾過膜や精密濾過膜の種類(分画分子量等の違い)によって、一部の蛋白質やペプチドについても膜を通過する。そのため、該膜処理の膜不透過物として、水分や、前記の低分子成分等が減少した濃縮物が得られ、膜透過物として、水分や、前記の低分子成分等を含む限外ろ過膜透過液又は精密ろ過膜透過液が得られる。また、カードセパレーターを用いた場合も同様に、水分、低分子量の成分(乳糖、灰分、有機酸やリン酸、遊離アミノ酸など)等、一部の蛋白質(例えばホエイ蛋白質や低分子量蛋白質)やペプチド等を含む水溶性画分としてのカードセパレーター分離液が得られる。
発酵乳製品としては、その製造プロセス中に、乳原料を乳酸菌等で発酵する発酵工程と、発酵工程で得られた乳発酵物を限外ろ過膜、精密ろ過膜、又はカードセパレーターにより濃縮する膜処理工程を備えるものであれば特に限定されず、たとえばフレッシュチーズ、ヨーグルト等が挙げられる。ヨーグルトは、ハードヨーグルト、ソフトヨーグルト、ドリンクヨーグルトのいずれであってもよい。
【0011】
分離ホエイは、乳酸発酵による特有の風味と強い発酵臭を有している。その組成は、大部分が水分である。固形分の大半は乳糖であり、その他、ミネラル、発酵により生じた乳酸等の有機酸、リン酸、遊離アミノ酸等を含む。有機酸としては、クエン酸、乳酸、コハク酸、酢酸、ギ酸等が挙げられる。遊離アミノ酸としては、グルタミン酸、アスパラギン酸、プロリン、リジン、チロシン等が挙げられる。
また、分離ホエイはpHが低く、乳酸菌の種類や発酵の程度によっても異なるが、通常、4.0〜5.0程度である。
分離ホエイの標準的な組成、pH、ミネラル含量、有機酸およびリン酸の総含量、遊離アミノ酸含量を以下に示す。
[組成]脂肪:2%以下、タンパク質:5%以下、炭水化物+酸:5〜15%、灰分:0.2〜3.0%、水分:70〜95%
[pH]4.0〜5.0
[ミネラル含量]Na:10〜300mg/100g、K:20〜1000mg/100g、Ca:20〜1000mg/100g、Mg:5〜200mg/100g、P:20〜300mg/100g
[有機酸およびリン酸の総含量]5mg/g以上
[遊離アミノ酸含量]10mg/100g以上
【0012】
分離ホエイの組成は、分離ホエイの全量を100%としたときの各成分の含量で、「%」は質量%である。タンパク質含量には遊離アミノ酸含量が含まれる。
ここで、本発明における炭水化物としては、乳糖等の糖質が含まれ、酸としては有機酸、リン酸等が含まれる。
なお、ミネラル含量は、分離ホエイ100g中の含量(mg)である。有機酸含量は、分離ホエイ1g中の含量(mg)である。リン酸含量は、分離ホエイ1g中の含量(mg)である。
分離ホエイ中、[炭水化物+酸]/灰分の質量比は、1.6〜75/1が好ましく、3〜10/1がより好ましい。[炭水化物+酸]の比率が灰分の1.6倍以上75倍以下であると風味の向上効果に優れ、特に3倍以上10倍以下であると脂肪感やコク味が増して極めて良好な風味が得られるのである。
【0013】
分離ホエイの組成は、以下の方法により測定できる。例えば、
脂肪は、レーゼ・ゴットリーブ法により測定できる。
タンパク質は、ケルダール法により測定できる。
灰分は、直接灰化法により測定できる。
水分は、直接加熱乾燥法により測定できる。
[炭水化物+酸]は、全ての成分の合計から上記4成分の合計を減じて決定できる(算出式:100%−(脂肪・タンパク質・灰分・水分の4成分の合計値))。
pHは、25℃における値である。
ミネラル含量は、誘導結合プラズマ(ICP)発光分析法により測定できる。
有機酸含量は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)法により測定できる。
リン酸含量は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)法により測定できる。
遊離アミノ酸含量は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により測定できる。
【0014】
分離ホエイは、発酵乳製品を製造する際の副産物として得ることができる。
発酵乳製品の製造方法としては、その製造プロセス中に、乳原料を乳酸菌、又は乳酸菌及びビフィズス菌等で発酵させる工程と、該工程で得られた乳発酵物から水溶性画分を分離する工程(たとえば限外ろ過膜又は精密ろ過膜による膜処理を行う工程や、セパレーターによる分離処理を行う工程)を含むものであれば特に限定されず、製造しようとする発酵乳製品に応じて公知の方法が利用できる。
乳原料としては、製造しようとする発酵乳製品に応じて、公知の乳原料を用いることができる。
乳酸菌としては、製造しようとする発酵乳製品に応じて、スターター菌として公知の乳酸菌を用いることができる。たとえばフレッシュチーズの場合、ラクトコッカス・クレモリス、ラクトトコッカス・ジアセチラクチス、ロイコノストック・クレモリス、ベタコッカス・クレモリス等が挙げられる。また、ヨーグルトの場合、ストレプトコッカス・サーモフィルス、ラクトコッカス・ラクティス、ラクトバチルス・ブルガリクス、ラクトバチルス・カゼイ、ラクトバチルス・ガセリ等が挙げられる。
発酵の際、乳酸菌と、他のスターター菌、たとえばビフィドバクテリウム・シュードカテヌラータム、ビフィドバクテリウム・カテヌラータム、ビフィドバクテリウム・ビフィダム、ビフィドバクテリウム・ロンガム、ビフィドバクテリウム・インファンティス、ビフィドバクテリウム・アドレスセンティス等のビフィズス菌等を併用してもよい。
スターター菌の接種量、発酵温度、発酵時間等の発酵条件は、スターター菌の種類、得ようとする発酵乳製品の種類や性状等に応じて適宜設定することができる。
限外ろ過膜、精密ろ過膜としては、それぞれ発酵乳製品の製造に用いられている公知の限外ろ過膜、精密ろ過膜を使用できる。セパレーターとしては、公知のカードセパレーターを使用できる。
限外ろ過膜又は精密ろ過膜による膜処理条件、セパレーターによる分離条件は、それぞれ、所望の濃縮倍率等に応じて適宜設定することができる。
【0015】
フレッシュチーズの製造方法の一例を以下に示す。
まず、乳源に任意に脂肪源を配合した標準化乳ベースを均質化して原料ミックスを調製し、加熱殺菌する。
次に、加熱殺菌した原料ミックスにスターターを添加し、発酵を行う。
発酵が進むにつれてpHが低下する。pHが4.0〜5.0に達した時点で速やかに冷却して発酵を終了させ、乳発酵物を得る。発酵後、必要に応じてpH調整を行う。
次に、得られた乳発酵物を限外ろ過膜による膜処理(限外ろ過)を行って濃縮物と分離ホエイとに分離する。
得られた濃縮物に、さらに他の任意成分(塩、安定剤等)を添加、混合する。得られた混合物に対し、加熱殺菌、均質化等の処理を施し、冷却することで、フレッシュチーズが得られる。
【0016】
分離ホエイは、上記のように、脂肪およびタンパク質をほとんど含まないが、これをホワイトナーに用いることで、意外にも、飲料等に添加した際の脂肪感・コク味が向上する。その理由は、明らかではないが、ミネラルや、乳酸発酵により生じる様々な発酵成分、たとえば乳酸等の有機酸や遊離アミノ酸、香気成分が相乗的に作用しているものと推測される。
なお、分離ホエイは上記のようにpHが低い。pHの低下はカゼイン等のタンパク質を凝集させるおそれがあるため、従来、ホワイトナーの製造において、あえてこのような低pHの液体を添加することは行われていない。
【0017】
エマルションに対する分離ホエイの配合量は、エマルションの総固形分に対する分離ホエイの固形分の割合が、0.5質量%以上10質量%以下となる量が好ましく、1.0質量%以上7.5質量%以下となる量がより好ましい。該割合が0.5質量%以上であると風味の向上効果が充分に得られる。該割合が10質量%以下であると発酵臭が強すぎず、風味バランスが良好である。
また、エマルションに対する分離ホエイの配合量は、ホワイトナーの総固形分中の分離ホエイ由来のミネラルの割合が、0.06質量%以上1.3質量%以下となる量が好ましく、0.12質量%以上0.96質量%以下となる量がより好ましい。該割合が0.06質量%以上であると風味の向上効果に優れる。1.3質量%以下であると、ホワイトナーを添加した飲料等の風味がマイルドでバランスの良好なものとなる。
【0018】
エマルションを構成する成分としては、通常、脂肪、タンパク質および炭水化物が含まれる。
脂肪原料としては、生クリーム、バター、バターオイル等の乳脂肪原料;やし、パーム等の植物油脂原料が挙げられる。これらは1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
エマルションの総固形分中の脂肪含量は、通常、3.0〜40質量%の範囲内である。該脂肪含量が少ないほど本発明の有用性が大きいことから、該脂肪含量は、3.0〜30質量%が好ましく、3.0〜15質量%がより好ましい。
【0019】
タンパク質原料としては、脱脂粉乳、脱脂濃縮乳、脱脂乳、牛乳、全脂粉乳、酸カゼイン、アルカリカゼイネート、還元脱脂乳等が挙げられる。これらは1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
エマルションの総固形分中のタンパク質含量は、0.5〜25質量%の範囲内が好ましく、1.0〜20質量%がより好ましい。
【0020】
エマルションは、さらに、必要に応じて、前記分離ホエイ以外のその他の炭水化物原料を含有してもよい。
該その他の炭水化物原料としては、デキストリン、乳糖、ショ糖、その他単糖類、その他のオリゴ糖等が挙げられる。
該他の炭水化物原料の配合量は、ホワイトナーの総固形分中の炭水化物含量を考慮して設定される。ホワイトナーの総固形分中の炭水化物含量は、20〜80質量%の範囲内が好ましく、30〜60質量%がより好ましい。
【0021】
エマルションは、上記以外の他の成分を配合してもよい。該他の成分としては、ホワイトナーの添加剤として公知の添加剤が利用でき、たとえば乳化剤、安定剤、pH調整剤、香料、着色料等が挙げられる。
【0022】
本発明のホワイトナーは、脂肪、タンパク質および炭水化物を含有するエマルションを調製する際に分離ホエイを配合する以外は、公知のホワイトナーの製造方法と同様にして製造できる。
たとえば、脂肪原料と、タンパク質原料と、分離ホエイと、その他の任意の原料(分離ホエイ以外の他の炭水化物原料等)を混合し、均質化することで、エマルションを調製できる。
脂肪原料、特に植物油脂原料は、タンパク質原料および炭水化物原料と混合する前に、水、乳化剤等を必要に応じて配合し、均質化しておくことが好ましい。
タンパク質原料は、脂肪原料と混合する前に、水又は温水に溶解して水溶液としておくことが好ましい。
各原料の混合時に、または混合後、均質化を行う前に、pH調整を行ってもよい。混合液のpHは、6.5〜8.5が好ましい。
均質化は、乳化液に圧力をかけ、乳化液中の脂肪球を微細化し、粒子径を揃えて安定化させる処理である。均質化は、均質機等を使用して均質化する公知の方法により実施できる。
均質化の前または後に、120℃2秒から130℃2秒程度の加熱処理条件等により殺菌してもよい。
【0023】
ホワイトナーが液状である場合、上記のようにして得られたエマルションに安定剤等を適宜添加して、液状ホワイトナーとして用いることができる。また、該エマルションを、所望の固形分濃度となるように濃縮してもよい。ホワイトナーが液状である場合、その固形分濃度は40〜60質量%程度が好ましい。
ホワイトナーが粉末である場合、上記のようにして得られたエマルションを濃縮し、乾燥し、適宜造粒する。
濃縮は、エバポレータ等を使用して減圧濃縮する等の公知の方法により行うことが出来る。
乾燥および造粒は、公知の方法、たとえば噴霧乾燥機と流動造粒乾燥機を使用した噴霧乾燥法と流動造粒乾燥法の組合せ、微粉循環乾燥造粒等により行うことができる。
【実施例】
【0024】
次に、試験例および実施例を示して本発明を更に詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
「%」は特に言及のない限り、質量%を示す。
【0025】
<製造例1>
生乳90.0kgに脱脂濃縮乳10.0kgを加えて混合した調乳液に乳酸菌を添加し、25℃で16時間発酵させた後に冷却して乳発酵物を得た。得られた乳発酵物を限外ろ過膜処理して3倍濃縮し、透過液として66.7kgの分離ホエイを得た。
得られた分離ホエイの組成・物性、該組成中のミネラル含量、有機酸含量、リン酸含量、遊離アミノ酸含量の分析結果を以下に示す。
【0026】
[組成・物性]
脂肪 : 0.1%
タンパク質 : 0.3%
炭水化物+酸: 6.1%
灰分 : 1.0%
水分 :92.5%
pH :4.6
【0027】
[ミネラル含量]
Na: 50mg/100g
K :200mg/100g
Ca:140mg/100g
Mg: 10mg/100g
P : 80mg/100g
【0028】
[有機酸含量]
クエン酸:0.1mg/g
乳酸 :8.0mg/g
コハク酸:0.1mg/g
酢酸 :1.0mg/g
ギ酸 :0.1mg/g
【0029】
リン酸:2.0mg/g
【0030】
遊離アミノ酸:30mg/100g
【0031】
<実施例1>
脱脂粉乳51.5kgを水に溶解し、これに生クリームを28.1kg添加し、次いで、乳糖27.8kg及びpH調整剤(リン酸塩)2.3kgを水に溶解して添加・混合してエマルションを得た。該エマルションに、製造例1で得た分離ホエイを60.6kg添加し、これを130℃で2秒間殺菌処理し、15MPaの圧力で均質化し、固形分45質量%程度に減圧濃縮し、噴霧乾燥後、流動造粒を行い、クリーミングパウダー約100kgを得た。
得られたクリーミングパウダーの脂肪含量は14%、タンパク質含量は18%、[炭水化物+酸]含量は59%、ミネラル含量は6%であった。
【0032】
<試験例1>
以下の手順で、クリーミングパウダーの風味を評価した。
(1.風味評価者)
訓練された風味パネリスト7名
(2.評価方法)
インスタントコーヒー(ネスレ社製「ネスカフェ エクセラ」)1.5gおよびクリーミングパウダー6gを80℃の湯92.5gで溶解して100gにしたコーヒーを試飲し、下記の評点基準で評点する。コーヒーは、クリーミングパウダーの種類のみを変えたもので、各コーヒーに用いたクリーミングパウダーはそれぞれ下記のA〜Dである。
【0033】
クリーミングパウダーA:市販の低脂肪タイプのクリーミングパウダー(コントロール、森永乳業社製「クリープライト」、脂肪含量14%、タンパク質含量18%、炭水化物含量59%、ミネラル含量6%)。
クリーミングパウダーB:クリーミングパウダーAに対して乳清ミネラルを1%(クリーミングパウダー6gに対して乳清ミネラル0.06g)添加したもの。
クリーミングパウダーC:クリーミングパウダーAに対して乳清ミネラルを5%(クリーミングパウダー6gに対して乳清ミネラル0.30g)添加したもの。
クリーミングパウダーD:実施例1で得たクリーミングパウダー。
【0034】
[評点基準]
2点:風味が良好で、おいしい。
1点:風味がやや良好で、ややおいしい。
0点:普通。
−1点:風味がやや不良で、ややおいしくない。
−2点:風味が不良で、おいしくない。
【0035】
クリーミングパウダーB、Cに用いた乳清ミネラルは、Armor Proteines社の「Lactosalt」を使用した。該乳清ミネラルの組成およびミネラル含量(分析値)は以下の通りである。
【0036】
[組成]
水分 : 1.7%
脂肪 : 0.2%
タンパク質:13.2%
炭水化物 : 5.0%
灰分 :79.9%
【0037】
[ミネラル含量]
Na: 7680mg/100g
K :20000mg/100g
Ca: 1370mg/100g
Mg: 200mg/100g
P : 26mg/100g
Cl:44000mg/100g
【0038】
(3.評価結果)
7名の風味パネリストの評点結果の合計点を得点として表1に示した。また、クリーミングパウダーAを基準とした風味についての評価を併記した。
表1に示すとおり、分離ホエイ(乳発酵物から分離した水溶性画分)に含まれる成分が追加されることにより、クリーミングパウダーDは脂肪感やコク味が支持され、最も高い評価を得た。
【0039】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂肪、タンパク質および炭水化物を含有するエマルションからなるホワイトナー、または前記エマルションを乾燥して得られる粉末からなるホワイトナーを製造する方法であって、
前記脂肪、タンパク質および炭水化物を含有するエマルションに乳発酵物から分離した水溶性画分を配合する工程、を含むホワイトナーの製造方法。
【請求項2】
前記乳発酵物から分離した水溶性画分が、乳発酵物から分離した限外ろ過膜透過液、乳発酵物から分離した精密ろ過膜透過液、および乳発酵物から分離したカードセパレーター分離液から選ばれる少なくとも1種である、請求項1に記載のホワイトナーの製造方法。
【請求項3】
前記乳発酵物から分離した限外ろ過透過液が、発酵乳製品の製造において、乳原料を乳酸菌で発酵させた後、得られた乳発酵物を、限外ろ過膜を用いた膜処理により濃縮した際に、限外ろ過膜を透過したものである、請求項2に記載のホワイトナーの製造方法。
【請求項4】
前記水溶性画分の脂肪含量が2質量%以下、タンパク質含量が5質量%以下、[炭水化物+酸]含量が5〜15質量%、灰分含量が0.2〜3.0質量%、水分含量が70〜95質量%である、請求項1〜3のいずれか一項に記載のホワイトナーの製造方法。
【請求項5】
前記エマルションの総固形分に対する前記水溶性画分の固形分の割合が1.0質量%以上7.5質量%以下である、請求項1〜4のいずれか一項に記載のホワイトナーの製造方法。
【請求項6】
前記水溶性画分中の[炭水化物+酸]/灰分の質量比が3〜10/1である、請求項1〜5のいずれか一項に記載のホワイトナーの製造方法。
【請求項7】
脂肪、タンパク質および炭水化物を含有するエマルションからなるホワイトナー、または前記エマルションを乾燥して得られる粉末からなるホワイトナーであって、
前記エマルションが、乳発酵物から分離した水溶性画分を含有することを特徴とするホワイトナー。

【公開番号】特開2013−51885(P2013−51885A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−190109(P2011−190109)
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【出願人】(000006127)森永乳業株式会社 (269)
【Fターム(参考)】