説明

ホワイトバランス制御方法および装置

【目的】 カソード電流検出用パルスのCRTへの供給を必要最小限に抑える。
【構成】 CPU4は、カソード電流検出用パルスをCRT22に供給してホワイトバランスの補正値を求めることを、ホワイトバランスの補正値が収束するまで続け、ホワイトバランスの補正値が収束したときに、CRT22へのカソード電流検出用パルスの供給を停止し、設定時間の間、収束した補正値を使用してホワイトバランスを固定的に制御し、設定時間経過後、ホワイトバランスの補正値を更新するために、再び、カソード電流検出用パルスをCRT22に供給する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、CRT(陰極線管)のホワイトバランス制御方法および装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来のホワイトバランス制御装置は、アナログ的なフィードバックループを使用し、1水平期間毎または1垂直期間毎に、カソード電流検出用パルスをCRTに供給し、補正値を求めてホワイトバランスの制御を行っている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】上述の従来のホワイトバランス制御装置においては、CRTの画面上(有効画面内であることもあり、そうでないこともある)に常にカソード電流検出用パルスが表示されていることになり、光学的妨害または視覚的妨害を生じさせていた。
【0004】図5は、CRT22のカソード電流検出用パルスが、CRT22の有効画面内に表示されることにより、正規の映像信号に対して視覚的妨害を与えることを示し、図6は、CRT22のカソード電流検出用パルスが、CRT22の有効画面外に表示されるときに、CRT22の内部構造物にカソード電流検出用パルスのビームが反射して、有効画面内に不要な発光現象が生じることを示す。従来技術では、CRTに連続的にカソード電流検出パルスを供給しているため、上述の視覚的妨害または不要な発光現象が常に生じることになる。
【0005】本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、カソード電流検出用パルスのCRTへの供給を必要最小限に抑えてホワイトバランスを制御することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】請求項1に記載のホワイトバランス制御方法は、CRTのカソード電流検出用パルスをCRTに供給してホワイトバランスの補正値を求めることを、ホワイトバランスの補正値が収束するまで続け、ホワイトバランスの補正値が収束したときに、CRTへのカソード電流検出用パルスの供給を停止し、設定時間の間、収束した補正値を使用してホワイトバランスを制御し、設定時間経過後、ホワイトバランスの補正値を更新するために、カソード電流検出用パルスを再びCRTに供給することを特徴とする。
【0007】請求項2に記載のホワイトバランス制御方法は、外部からの命令(例えば、図4のトリガーボタンの操作)に応じて、CRTのカソード電流検出用パルスをCRTに供給してホワイトバランスの補正値を求めることを、ホワイトバランスの補正値が収束するまで続け、ホワイトバランスの補正値が収束したときに、CRTへのカソード電流検出用パルスの供給を停止し、収束した補正値を使用してホワイトバランスを制御することを特徴とする。
【0008】請求項3に記載のホワイトバランス制御装置は、ホワイトバランスの補正値をデジタルデータとして保持するデジタル信号処理手段(例えば、図1のデジタル信号処理部2)を備えることを特徴とする。
【0009】請求項4に記載のホワイトバランス制御装置は、CRTのカソード電流検出用パルスをCRTに供給するタイミングを制御するデジタル信号処理手段(例えば、図1のデジタル信号処理部2)を備えることを特徴とする。
【0010】
【作用】請求項1の構成のホワイトバランス制御方法においては、CRTのカソード電流検出用パルスをCRTに供給してホワイトバランスの補正値を求めることを、ホワイトバランスの補正値が収束するまで続けられ、ホワイトバランスの補正値が収束したときに、CRTへのカソード電流検出用パルスの供給が停止され、設定時間の間、収束した補正値を使用してホワイトバランスが制御され、設定時間経過後、ホワイトバランスの補正値を更新するために、カソード電流検出用パルスが再びCRTに供給される。従って、収束した補正値を使用してホワイトバランスを制御する間、カソード電流検出用バルスがCRTに供給されない。
【0011】請求項2の構成のホワイトバランス制御方法においては、外部からの命令に応じて、CRTのカソード電流検出用パルスをCRTに供給してホワイトバランスの補正値を求めることを、ホワイトバランスの補正値が収束するまで続けられ、ホワイトトバランスの補正値が収束したときに、CRTへのカソード電流検出用パルスの供給が停止され、収束した補正値を使用してホワイトバランスが制御される。従って、収束した補正値を使用してホワイトバランスを制御する間、カソード電流検出用バルスがCRTに供給されない。
【0012】請求項3の構成のホワイトバランス制御装置においては、デジタル信号処理手段が、ホワイトバランスの補正値をデジタルデータとして保持する。従って、カソード電流検出用パルスをCRTに供給しなくても、ホワイトバランスを制御することができる。
【0013】請求項4の構成のホワイトバランス制御装置においては、デジタル信号処理手段が、CRTのカソード電流検出用パルスをCRTに供給すべきタイミングを制御する。従って、必要なときのみ、カソード電流検出用パルスをCRTに供給することができる。
【0014】
【実施例】図1は、本発明のホワイトバランス制御装置の一実施例の構成を示す。デジタル信号処理部2は、CPU4と、CPU4から出力されるデジタル信号をアナログ信号に変換するD/Aコンバータ6と、CPU4へのアナログ信号をデジタル信号に変換するA/Dコンバータ8を含んでいる。
【0015】CPU4は、最後にホワイトバランス制御用補正データを得たときから所定時間経過したとき、またはトリガーボタンの操作等の外部からの命令に応じて、カソード電流検出用パルスをCRT22に供給すべきことを示す検出パルスオン信号を、検出パルス発生回路10に出力する。検出パルス発生回路10は、R,GおよびBの各チャンネルに対する直流レベル制御用(すなわちカソード電流の直流レベル検出用)カソード電流検出用パルスおよびホワイトバランス安定のための利得制御用(すなわち高輝度レベルにおける)カソード電流検出用パルスを、検出パルス挿入回路12に供給する。
【0016】検出パルス挿入回路12は、図2に示すように、R,GおよびBチャンネルの映像信号の垂直帰線期間の最後付近に、直流レベル制御用カソード電流検出用パルスおよび利得制御用カソード電流検出用パルスを挿入する。カソード電流検出用パルスが挿入された映像信号は、CRT駆動回路18を介してCRT22に供給される。
【0017】CRT駆動回路18とCRT22との間に設けられたカソード電流検出回路20は、映像信号中のカソード電流検出用パルスの部分のみに対応するカソード電流を抵抗24に流して電圧に変換する(1チャンネルにつき直流レベル制御用と利得制御用の2つ検出部があるので、R,GおよびBの3つのチャンネルで6つ検出部があることになる)。
【0018】抵抗24の端子電圧すなわち6つの検出部の電圧は、バッフア26を介して、サンプルホールド回路28に供給される。サンプルホールド回路28は、R,GおよびBの3つのチャンネルについての直流制御用および利得制御用のカソード電流検出出力をサンプルホールドする。サンプルホールド回路28の出力は、A/Dコンバータ8によってデジタル信号に変換されて、CPU4に取り込まれる。
【0019】CPU4は、A/Dコンバータ8から供給されたR,GおよびBの3つのチャンネルについての直流制御用および利得制御用のカソード電流検出出力データと、内部に保持しているこれらに対応する6つのデシタルリファレンスデータとを比較し、その差に基づいて、R,GおよびBの3つのチャンネルについての直流レベル制御用電圧データおよび利得制御用電圧データを出力する。これらのデータは、D/Aコンバータ6によってアナログ電圧に変換され、それぞれ、直流レベル制御用電圧サンプルホールド回路14および利得制御用サンプルホールド回路16によってサンプルホールドされて、CRT駆動回路18に供給される。
【0020】すなわち、CPU4は、カソード電流検出出力データとリファレンスデータとを比較しながら、両者が一致する方向にCRT駆動回路18を制御することにより、ホワイトバランスの制御(すなわち補償)を行う。
【0021】CRTのホワイトバランスの経時変化および経年変化は、電源投入直後の比較的短い時間を除いては、非常に緩慢であるため、カソード電流の検出を常時連続的に行う必要はない。
【0022】図1の実施例では、ホワイトバランスの制御データは、デジタル信号処理部2がデジタルデータとして保持できるため、固定値を使用した制御の継続時間は、システムリセットが行われない限り、無限とすることができる。従来のアナログ方式の制御では、ホワイトバランスの制御データを保持(すなわち固定)することが困難であり、ある制御状態を任意の時間保持することができない。
【0023】また、図1の実施例では、デジタル信号処理部2が、カソード電流検出の回数およびタイミングを、ホワイトバランス制御にとって必要最小限に抑制できる。
【0024】図3は、図1の実施例の第1の動作態様、すなわち、設定時間間隔で自動的にホワイトバランス(W/B)の補正値を更新するモードにおける動作を示す。このモードでは、CPU4は、CRT22のカソード電流検出用パルスをCRT22に供給してホワイトバランスの補正値を求めることを、ホワイトバランスの補正値が収束するまで続け、ホワイトバランスの補正値が収束したときに、CRT22へのカソード電流検出用パルスの供給を停止し、設定時間の間、収束した補正値を使用してホワイトバランスを固定的に制御し、設定時間経過後、ホワイトバランスの補正値を更新するために、カソード電流検出用パルスを再びCRTに供給する。なお、上記設定時間は、CPU4用のソフトウェア等で任意に設定できる。このモードでは、収束した補正値を使用してホワイトバランスを制御する間、カソード電流検出用バルスがCRT22に供給されない。従って、カソード電流検出用パルスに起因する光学的妨害および視覚的妨害を最小にできる。
【0025】図4は、図1の実施例の第2の動作態様、すなわち、ユーザが、ホワイトバランスのズレを感じたときに、ホワイトバランスの補正値更新をスタートさせるモードにおける動作を示す。この動作モードでは、ユーザが、CRT22のホワイトバランスが異常と感じたときに、トリガーボタンを押す。CPU4は、トリガーボタンが押されることにより発せられる命令に応じて、CRT22のカソード電流検出用パルスをCRTに供給してホワイトバランスの補正値を求めることを、ホワイトバランスの補正値が収束するまで続け、ホワイトバランスの補正値が収束したときに、CRTへのカソード電流検出用パルスの供給を停止し、収束した補正値を使用してホワイトバランスを固定的に制御する。このモードでも、収束した補正値を使用してホワイトバランスを制御する間、カソード電流検出用バルスがCRT22に供給されない。従って、カソード電流検出用パルスに起因する光学的妨害および視覚的妨害を最小にできる。
【0026】なお、上記実施例では、CPU4が保持しているデジタルリファレンスデータを変化させることにより、ホワイトバランスを容易に変化させることができる。
【0027】
【発明の効果】請求項1のホワイトバランス制御方法によれば、ホワイトバランスの補正値が収束したときに、CRTへのカソード電流検出用パルスの供給を停止し、設定時間の間、収束した補正値を使用してホワイトバランスを制御するようにしたので、CRTへのカソード電流検出用パルスの供給を必要最小限に抑えることができるから、カソード電流検出用パルスに起因する光学的妨害および視覚的妨害を最小にできるので、CRT表示画面を使用して正確または繊細な情報処理を行うディスプレイ装置およびシステムに有効である。
【0028】請求項2のホワイトバランス制御方法によれば、外部からの命令に応じて、CRTのカソード電流検出用パルスをCRTに供給してホワイトバランスの補正値を求めることを、ホワイトバランスの補正値が収束するまで続け、ホワイトトバランスの補正値が収束したときに、CRTへのカソード電流検出用パルスの供給が停止し、収束した補正値を使用してホワイトバランスを制御するようにしたので、CRTへのカソード電流検出用パルスの供給を必要最小限に抑えることができるから、カソード電流検出用パルスに起因する光学的妨害および視覚的妨害を最小にできるので、CRT表示画面を使用して正確または繊細な情報処理を行うディスプレイ装置およびシステムに有効である。
【0029】請求項3のホワイトバランス制御装置によれば、デジタル信号処理手段がホワイトバランスの補正値をデジタルデータとして保持するようにしたので、カソード電流検出用パルスをCRTに供給しなくても、ホワイトバランスを制御することができるから、CRTへのカソード電流検出用パルスの供給を必要最小限に抑えることができる。
【0030】請求項4のホワイトバランス制御装置によれば、デジタル信号処理手段が、CRTのカソード電流検出用パルスをCRTに供給すべきタイミングを制御するようにしたので、必要なときのみ、カソード電流検出用パルスをCRTに供給することができるから、カソード電流検出用パルスに起因する光学的妨害および視覚的妨害を最小にできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のホワイトバランス制御装置の一実施例の構成を示すブロック図である。
【図2】図1の実施例によって挿入される直流制御のためのカソード電流検出用パルスおよび利得制御のためのカソード電流検出用パルスの映像信号中の位置を示す波形図である。
【図3】図1の実施例の第1の動作態様、すなわち、設定時間間隔で自動的にホワイトバランスの補正値を更新するモードにおける動作を示す説明図である。
【図4】図1の実施例の第2の動作態様、すなわち、ユーザが、ホワイトバランスのズレを感じたときに、ホワイトバランスの補正値更新をスタートさせるモードにおける動作を示す説明図である。
【図5】CRTのカソード電流検出用パルスが、CRTの有効画面内に表示されることにより、正規の映像信号に対して視覚的妨害を与えることを示す図である。
【図6】CRTのカソード電流検出用パルスが、CRTの有効画面外に表示されるときに、CRTの内部構造物にカソード電流検出用パルスのビームが反射して、有効画面内に不要な発光現象が生じることを示す図である。
【符号の説明】
2 デジタル信号処理部
4 CPU
6 D/Aコンバータ
8 A/Dコンバータ
10 検出パルス発生回路
12 検出パルス挿入回路
14 直流レベル制御用電圧サンプルホールド回路
16 利得制御用電圧サンプルホールド回路
18 CRT駆動回路
20 カソード電流検出回路
22 CRT
24 抵抗
26 バッファ

【特許請求の範囲】
【請求項1】 CRTのカソード電流検出用パルスを前記CRTに供給してホワイトバランスの補正値を求めることを、ホワイトバランスの補正値が収束するまで続け、前記ホワイトバランスの補正値が収束したときに、前記CRTへの前記カソード電流検出用パルスの供給を停止し、設定時間の間、前記収束した補正値を使用してホワイトバランスを制御し、前記設定時間経過後、ホワイトバランスの補正値を更新するために、前記カソード電流検出用パルスを再び前記CRTに供給することを特徴とするホワイトバランス制御方法。
【請求項2】 外部からの命令に応じて、CRTのカソード電流検出用パルスを前記CRTに供給してホワイトバランスの補正値を求めることを、ホワイトバランスの補正値が収束するまで続け、前記ホワイトバランスの補正値が収束したときに、前記CRTへの前記カソード電流検出用パルスの供給を停止し、前記収束した補正値を使用してホワイトバランスを制御する、ことを特徴とするホワイトバランス制御方法。
【請求項3】 ホワイトバランスの補正値をデジタルデータとして保持するデジタル信号処理手段を備えることを特徴とするホワイトバランス制御装置。
【請求項4】 CRTのカソード電流検出用パルスを前記CRTに供給するタイミングを制御するデジタル信号処理手段を備えることを特徴とするホワイトバランス制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図3】
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【図6】
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【公開番号】特開平6−113321
【公開日】平成6年(1994)4月22日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平4−285178
【出願日】平成4年(1992)9月30日
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)