説明

ホワイトバランス調整装置

【目的】 ストロボ撮影において、被写体距離に関係なく高精度にホワイトバランス調整を行い、かつ、その調整処理を短時間の間に行う。
【構成】 ストロボ16を発光させた状態における露出条件、すなわち絞り値とシャッタースピードを決定する。その露出条件においてストロボ16を発光させず撮影を行い、その時の画像データを第1の画像メモリ21に格納する。また、その露出条件においてストロボ16を発光させて撮影を行い、その時の画像データを第2の画像メモリ22に格納する。第1および第2の画像メモリ21、22に格納された各画像データをブロック毎に読み出し、各ブロックについて代表画素の輝度を比較する。代表画素の輝度の差が大きい場合、ホワイトバランス調整はストロボ光に応じて行う。代表画素の輝度の差が小さい場合、ホワイトバランス調整は外光に応じて行う。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、電子スチルカメラに関し、特にホワイトバランス調整を行う装置の改良に関する。
【0002】
【従来の技術】従来電子スチルカメラでは、照明光の色温度にかかわらず、白い被写体が白く撮影されるようにするため、ホワイトバランス調整が行われている。例えば照明光の色温度が高い場合には、B信号を含んだ色差信号Cbに乗じられる係数が、R信号を含んだ色差信号Crに乗じられる係数よりも小さく定められ、これによりブルーの光に対する感度が抑えられて、被写体像が青みがかることが防止される。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】ストロボ撮影を行う場合、ストロボ光がとどく距離には限界があるため、カメラ本体に比較的近い被写体の色温度はストロボ光のそれに近く、またカメラ本体から比較的遠い被写体の色温度は外光のそれに近い。したがってストロボ光の色温度に基づいてホワイトバランス調整を行うと、遠距離の被写体についてホワイトバランス調整がとれなくなり、逆に外光の色温度に基づいてホワイトバランス調整を行うと、近距離の被写体についてホワイトバランス調整がとれなくなるという問題が発生する。
【0004】本発明は、以上のような問題点に鑑み、ストロボ撮影において、被写体距離に関係なく高精度にホワイトバランス調整を行うことができ、しかもその調整処理を短時間の間に行うことができる装置を提供することを目的としている。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明に係るホワイトバランス調整装置は、ストロボを発光させた状態における露出条件を決定する手段と、その露出条件においてストロボを発光させずに得られた画像データを格納する第1のメモリと、その露出条件においてストロボを発光させて得られた画像データを格納する第2のメモリと、第1および第2のメモリに格納された各画像データを読み出し、同一画素の輝度を比較した結果に応じて、第2のメモリから読み出された画像データにホワイトバランス調整を施すホワイトバランス調整手段とを備えたことを特徴としている。
【0006】
【実施例】以下図示実施例に基づいて本発明を説明する。図1は本発明の一実施例であるホワイトバランス調整装置を備えた電子スチルカメラのブロック図である。
【0007】レンズ11と絞り12を通った光線はCCD(固体撮像素子)13の受光面上に照射され、CCD13に被写体像が結像する。CCD12の受光面には多数の光電変換素子が配設され、また光電変換素子の上面には、例えばR、G、Bの各色フィルタ要素から成るカラーフィルタが設けられている。各光電変換素子はひとつの画素データに対応している。被写体像は、各光電変換素子によって所定の色に対応した電気信号に変換され、信号処理回路14において所定の処理を施され、輝度信号Yと色差信号Cb、Crから成る画像データが生成される。
【0008】また信号処理回路14では、撮影動作に先立ち、CCD13から出力された画素データに基づいて測光値が計算され、露出ストロボ制御回路15に入力される。露出ストロボ制御回路15では、測光値に基づいて絞り12の開度(絞り値)とシャッタースピード、すなわち露出条件が決定されるとともに、露出制御(電荷蓄積制御)やストロボ16の発光動作の制御が行われる。本実施例では、この露出条件下で、ストロボの発光動作を伴わない第1の露出動作と、ストロボの発光動作を伴う第2の露出動作とが行われる。
【0009】信号処理回路14から出力された画像データは、A/D変換器17においてデジタル信号に変換され、第1の画像メモリ21または第2の画像メモリ22に入力される。第1の画像メモリ21には、ストロボ16を発光させない第1の露出動作で得られた画像データ(第1の輝度信号Y1 )が格納され、第2の画像メモリ22には、ストロボ16を発光させた第2の露出動作で得られた画像データ(第2の輝度信号Y2 、色差信号Cb2、Cr2)が格納される。第2の画像メモリ22は輝度信号Y2 および色差信号Cb2 、Cr2 をそれぞれ格納するために、相互に独立したメモリ領域に分割されており、各メモリ領域は1画像分の記憶容量を有している。
【0010】第1の画像メモリ21から読み出された第1の輝度信号Y1 は、ラスタ/ブロック変換回路23においてラスタ/ブロック変換され、1画像分の画素データがN個の8×8画素のブロックに分割される。すなわち、1画像の画素数が約40万である場合、Nは約6200である。ブロックに分割された第1の輝度信号BY1 は、輝度比較回路24に入力される。
【0011】第2の画像メモリ22から読み出された第2の輝度信号Y2 と色差信号Cb2、Cr2は、ラスタ/ブロック変換回路25においてそれぞれラスタ/ブロック変換される。ブロックに分割された第2の輝度信号BY2 は輝度比較回路24に入力され、ブロックに分割された色差信号BCb2、BCr2はそれぞれホワイトバランス調整回路26に入力される。なお、図中、ラスタ/ブロック変換回路25は1つだけ示されているが、実際には各信号毎に設けられる。
【0012】図2は8×8画素のブロックを示す。パラメータxは画素の水平方向の位置を示し、パラメータyは画素の垂直方向の位置を示す。各パラメータx,yは0から7の範囲の値をとり、例えば左端から4番目で、上端から5番目の位置の画素の輝度信号はBYn(3,4) により表される。なお、この座標(x,y) は各ブロック毎に定義される相対的な座標である。
【0013】輝度比較回路24では、第1および第2の輝度信号BY1 、BY2 が比較され、下式(1)に従って輝度比較関数L(x,y) が求められる。
L(x,y) =BY2(x,y)−BY1(x,y) (1)
すなわち輝度比較関数L(x,y) は同一画素の輝度信号BY1 、BY2 の差であり、各ブロック毎に代表画素(例えば(3,4) の画素)に関して求められる。なお、この代表画素はそのブロックの平均的な輝度値を示す画素であると仮定しているが、そのブロックの中央付近に位置している必要はない。
【0014】CCDの受光画素において、被写体によるストロボ光の反射光を受けた画素においては、第2の輝度信号BY2 の方が第1の輝度信号BY1 よりも実質的に大きな値を有し、ストロボ光が照射されない被写体の画素では、第2の輝度信号BY2 は第1の輝度信号BY1 とほぼ同じ値を有する。したがって本実施例では、輝度比較関数L(x,y) の値が所定の基準レベルよりも大きい時、ストロボ光に基づいてホワイトバランス調整し、輝度比較関数L(x,y) の値が基準レベルよりも小さい時、外光に基づいてホワイトバランス調整している。この基準レベルは所定の範囲の値を有しており、輝度比較関数L(x,y) の値がその範囲内にある時、ストロボ光と外光の中間の光に基づいてホワイトバランス調整が行われる。
【0015】輝度比較回路24では、全てのブロックにおいて代表画素の輝度比較関数L(x,y) の値が求められ、ホワイトバランス調整回路26では、輝度比較関数L(x,y) に基づいて、各ブロック毎にホワイトバランス調整が行われる。すなわち、輝度比較関数L(x,y) に応じた係数Ab、Arが色差信号BCb2、BCr2にそれぞれ乗じられ、これによりホワイトバランス調整された色差信号BCb3、BCr3が求められる。
【0016】ストロボ光の色温度は一定であるため、ストロボ光に基づいたホワイトバランス調整の係数は定数であり、予めホワイトバランス調整回路26に記憶されている。これに対し、外光の色温度は撮影の条件に応じて変化するため、外光に基づいたホワイトバランス調整の係数は、カメラ本体の外面に設けられたホワイトバランスセンサ27から得られる信号に基づいて、ホワイトバランス調整回路26において生成される。
【0017】ホワイトバランス調整回路26から出力された色差信号BCb3、BCr3と、輝度比較回路24から出力された第2の輝度信号BY2 は、データ圧縮処理回路28において、例えばJPEGアルゴリズムに準拠して、離散コサイン変換、量子化およびハフマン符号化等の処理が施され、圧縮処理される。圧縮された画像信号(DY , DCb,DCr)は、ICメモリカード(記録媒体)Mに記録される。
【0018】図3は本実施例におけるホワイトバランス調整の処理ルーチンを示すフローチャートである。ステップ101では、ホワイトバランスセンサ27による得られる信号に基づいて、外光のホワイトバランス情報が求められる。ステップ102では、露出ストロボ制御回路15において、信号処理回路14から入力される測光値に基づいて、ストロボ16を使用した場合の適正絞り値とシャッタースピード、すなわち露出条件が決定される。次いで、ステップ103において図示しないレリーズスイッチがオン状態に定められていないと判断された場合、ステップ101へ戻るが、レリーズスイッチがオン状態に切り換えられている時、ステップ104以下において撮影動作が行われ、画像の圧縮データが記録媒体Mに記録される。
【0019】ステップ104では、前述の露出条件による、ストロボ16を発光させない状態で撮影(第1露出動作)が行われる。この撮影によりCCD13において発生した電気信号は、信号処理回路14において第1の輝度信号Y1 (画像データ)に変換され、第1の輝度信号Y1 はステップ105において第1の画像メモリ21に格納される。ステップ106では、ストロボ16を発光させた状態で撮影(第1露出動作)が行われ、第2の輝度信号Y2 、色差信号Cb2、Cr2(画像データ)が得られる。これらの画像データはステップ107において第2の画像メモリ22に格納される。
【0020】ステップ108では、第1の輝度信号Y1 が第1の画像メモリ21から読み出され、ラスタ/ブロック変換回路23においてラスタ/ブロック変換される。同様に、第2の輝度信号Y2 と色差信号Cb2、Cr2が第2の画像メモリ22から読み出され、ラスタ/ブロック変換回路25においてラスタ/ブロック変換される。ステップ109では、ブロック番号Nが1にセットされる。ステップ110では、第1および第2の画像メモリ21、22からブロック番号Nのブロックの代表画素(x,y) の輝度信号BY1(x,y)、BY2(x,y)が読み出される。ステップ111では、輝度比較回路24において、第1および第2の輝度信号BY1(x,y) 、BY2(x,y)の差すなわち輝度比較関数L(x,y) が上記(1)式に従って計算される。
【0021】ステップ112〜117では、輝度比較関数L(x,y) の値に応じてホワイトバランス調整の係数が設定される。図4は、輝度比較関数L(x,y) の値とホワイトバランス調整において基準にされる光との関係を示している。この図から理解されるようにホワイトバランス調整の係数は、輝度比較関数L(x,y) が第1の基準値S1よりも大きい時、ストロボ光に基づいて設定される。またホワイトバランス調整の係数は、輝度比較関数L(x,y) が第1の基準値S1と第2の基準値S2の間にある時、ストロボ光と外光の中間の光に基づいて設定され、輝度比較関数L(x,y) が第2の基準値S2よりも小さい時、外光に基づいて設定される。
【0022】図5において実線Cで示されるように、被写体に照射されるストロボ光量(ストロボ反射光量)は、被写体距離が短くなるほど大きくなり、また第1の基準値S1は第2の基準値よりも所定値だけ大きい値を有する。すなわち、例えば距離hにある被写体を考えると、この被写体に照射されるストロボ光量Chは第1の基準値S1よりも大きいので、この被写体に対応する画素におけるホワイトバランス調整はストロボ光に基づいて行われる。一方、背景部分(∞)に対応する画素は、ストロボ光量が0に等しく、S2よりも小さくなるので、ホワイトバランス調整は外光に基づいて行われる。
【0023】さてステップ112では、輝度比較関数L(x,y) が第1の基準値S1よりも大きいか否かが判定される。輝度比較関数L(x,y) が第1の基準値S1よりも大きい時、ステップ113において、ストロボ光に基づいてホワイトバランス調整の係数が設定される。ステップ112において輝度比較関数L(x,y) が第1の基準値S1よりも小さいと判定された時、ステップ114において輝度比較関数L(x,y) が第2の基準値S2よりも小さいか否かが判定される。輝度比較関数L(x,y) が第2の基準値S2よりも小さい時、ステップ115において、外光に基づいてホワイトバランス調整の係数が設定される。輝度比較関数L(x,y) が第1の基準値S1と第2の基準値S2の間にある時、ステップ116において、ストロボ光と外光の中間の光に基づいてホワイトバランス調整の係数が設定される。
【0024】ステップ117では、ステップ113、115または116において求められたホワイトバランス調整係数を用いて、ブロック番号Nのブロックについてホワイトバランス調整が行われ、色差信号BCb3、BCr3が生成される。ステップ118では、第2の輝度信号BY2 と色差信号BCb3、BCr3がデータ圧縮処理回路28に出力される。ステップ119では、各信号BY2 、BCb3、BCr3が圧縮処理され、記録媒体Mに記録される。
【0025】ステップ120では、ブロック番号Nが1画像のブロック数n(例えば6200)に達したか否かが判定される。ブロック番号がブロック数nに達していない場合、ステップ121においてブロック番号Nが1だけインクリメントされ、ステップ110へ戻って上述した動作が繰り返される。これに対し、ステップ120においてブロック番号Nがブロック数nに達していると判定された場合、ステップ122において記録媒体Mへの書き込み禁止処理等の記録動作完了処理が行われ、この処理ルーチンは終了する。
【0026】以上のように本実施例は、各ブロック毎に、ストロボ光が照射された場合と照射されない場合との比較を行い、ストロボ光の影響が大きいブロックについてはストロボ光に基づいてホワイトバランス調整を行い、ストロボ光の影響が小さいブロックについては外光に基づいてホワイトバランス調整を行うように構成されている。したがって、遠距離の被写体と近距離の被写体が混在した1つの画像に対してストロボ撮影を行う場合であっても、各ブロック毎に、しかも簡単な処理により短時間でホワイトバランス調整を行うことができる。
【0027】また本実施例では、ホワイトバランス調整における単位ブロックの画素数はデータ圧縮処理回路28における画像圧縮の単位ブロックの画素数に一致しているので、データ処理の効率が高い。
【0028】なお上記実施例では、各ブロック毎にホワイトバランス調整を行っていたが、いくつかのブロックに対して1つのホワイトバランス調整を行うようにしてもよい。
【0029】また上記実施例では、ホワイトバランス調整を3段階に分けて行っていたが、基準値を1つとして2段階としたり、あるいは3段階以上に分けてもよい。
【0030】
【発明の効果】以上のように本発明によれば、ストロボ撮影において、被写体距離に関係なく高精度にホワイトバランス調整を行うことができ、しかもその調整処理を短時間の間に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例であるホワイトバランス調整装置を備えた電子スチルカメラのブロック図である。
【図2】8×8画素のブロックを示すである。
【図3】ホワイトバランス調整を示すフローチャートである。
【図4】輝度比較関数の値とホワイトバランス調整において基準にされる光との関係を示す図である。
【図5】被写体に照射されるストロボ光量と被写体距離の関係を示す図である。
【符号の説明】
13 CCD
16 ストロボ
21 第1の画像メモリ
22 第2の画像メモリ
26 ホワイトバランス調整回路
27 ホワイトバランスセンサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】 ストロボを発光させた状態における露出条件を決定する手段と、前記露出条件においてストロボを発光させずに得られた画像データを格納する第1のメモリと、前記露出条件においてストロボを発光させて得られた画像データを格納する第2のメモリと、前記第1および第2のメモリに格納された各画像データを読み出し、同一画素の輝度を比較した結果に応じて、前記第2のメモリから読み出された画像データにホワイトバランス調整を施すホワイトバランス調整手段とを備えたことを特徴とするホワイトバランス調整装置。
【請求項2】 前記ホワイトバランス調整手段は、第1のメモリから読み出された輝度と第2のメモリから読み出された輝度との差が、基準レベルよりも大きい時、ストロボ光に基づいてホワイトバランス調整し、前記輝度の差が、基準レベルよりも小さい時、外光に基づいてホワイトバランス調整することを特徴とする請求項1に記載のホワイトバランス調整装置。
【請求項3】 前記基準レベルは、所定の範囲の値を有し、前記ホワイトバランス調整手段は、前記輝度の差が前記所定の範囲にある時、ストロボ光と外光の中間の光に基づいてホワイトバランス調整することを特徴とする請求項2の記載のホワイトバランス調整装置。
【請求項4】 前記ホワイトバランス調整手段は、前記第1および第2のメモリに格納された各画像データを、所定の画素数からなる単位ブロック毎に読み出し、各ブロックについて、対応する位置の画素の輝度を比較した結果に応じて、前記第2のメモリから読み出された画像データにホワイトバランス調整を施すことを特徴とする請求項1に記載のホワイトバランス調整装置。
【請求項5】 画像圧縮処理回路を備え、前記単位ブロックの画素数が前記画像圧縮処理回路により実行される画像圧縮処理の単位ブロックの画素数と一致することを特徴とする請求項4に記載のホワイトバランス調整装置。

【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図1】
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【図3】
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【公開番号】特開平8−51632
【公開日】平成8年(1996)2月20日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平7−152600
【出願日】平成7年(1995)5月26日
【出願人】(000000527)旭光学工業株式会社 (1,878)