説明

ホース用継手

【課題】外部接触によって誤作動し、ロック状態である筈の接手が意図せずに分離してしまうような事態を防ぎ、更にガタつきをなくして連結ないし解除状態を確実に維持する。
【解決手段】差し込み部材1には、差し込み端側の外周面に軸方向へスライド可能に装着され、スライド移動によって突入溝12を連結端側から覆設し得る筒状の第一スライド枠部14と、第一スライド枠部14の差し込み端側の外周面に軸方向へスライド可能に装着される筒状の第二スライド枠部15とを具備し、係止解除状態または連結状態のそれぞれにおいて、前記第二スライド枠部15を連結端側へスライド移動させることで、開口端22Eから前記開口隙間内に突入した第二スライド枠先端が、開口端22Eと第一スライド枠との間の残りの隙間を埋めるように、開口端22E内へ突入し得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は受け口側と差し口側とから着脱可能に構成された消防ホース用継手であって、特にリリース機能を有する差し口側の接手構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、本体が互いに脱着自在な管状の受け金具2と差し金具3とから構成された消防ホース用継手において、差し金具3に、軸方向にスライド可能な押し輪7が装着され、また、受け金具2側に外周に嵌合溝8が設けられ、この嵌合溝8にテープ状の反射材9が巻き付けられ、さらにこの反射材9の外周を包み込むように、透明樹脂から成形された弾性バンド10が装着されたものが開示される(特許文献1参照)。弾性バンド8は受け金具2の外周に凸状に突出し、この突出により接手金具やホース端末が路面を引きずられたとき損傷しないように保護し、また落下や衝突時の衝撃を緩和するようしている、とされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−71172号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の消防ホース用継手は実際には、受け金具の弾性バンド装着位置の管内面から内方へ出没可能な係止爪が設けられており、接続時にはこの係止爪が差し金具先端付近に設けられた周溝に係止することで、接続状態がロックされる。また差し金具の上記周溝の基端側には押し輪が装着されており、リリース時にはこの押し輪を軸方向先側に押し込んでスライドさせることで、周溝内の係止爪が外周側へ押し出されて接続状態のロックが解除される。
【0005】
しかしながら、接続状態のロック時であっても、ホースの運搬時等に外部接触によって押し輪が誤ってスライドし、ロック状態である筈の接手が意図せずに分離してしまうことがあった。特に消防ホースを接続した状態は緊急的な使用に供され、管内が消防水で加圧されるため、操作ミスは重大な被害の発生にもつながりかねず、この種接手の接続ないし解除操作は確実に行われる必要がある。
【0006】
そこで本発明は、ホースの運搬時等に外部接触によって誤作動し、ロック状態である筈の接手が意図せずに分離してしまうような事態を防ぎ、更にガタつきをなくして連結ないし解除状態を確実に維持する消防ホース用継手を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を達成すべく本発明は以下(1)〜(3)の手段を講じている。
【0008】
(1)連結端方向へ開口した受け枠(24)とこの受け枠(24)の内面側から軸中心へ突出可能に弾性付勢された係止爪(3)とを有する筒状の受け部材と、この係止爪(3)が嵌入し得る突入溝(12)を筒状端部の外周方向の一部に有した筒状の差し込み部材(1)とによって着脱可能に構成され、受け部材に設けた係止爪(3)の突出係止によって相互の接続状態がロックされるホース用継手であって、
前記係止爪(3)は、連結端側に傾斜湾曲した先端爪面を有する棒状体からなり、
前記突入溝(12)は、差し込み部材(1)の筒軸線に対し、前記先端爪面よりも緩やかな傾斜角度で湾曲した溝面を有し、
前記受け枠(24)は、差し込み部材(1)の筒状端部の外径よりも大きい開口径で開口した開口端(22E)を有してなることで、
係止爪(3)が突入溝(12)内に嵌入した連結状態において、前記先端爪面との間に連結端側へ開口した開口隙間が形成されるものであって、
前記差し込み部材(1)には、
差し込み端側の外周面に軸方向へスライド可能に装着され、スライド移動によって突入溝(12)を連結端側から覆設し得る筒状の第一スライド枠部(14)と、
第一スライド枠部(14)の差し込み端側の外周面に軸方向へスライド可能に装着され、スライド移動によって受け枠(24)の開口端内面へ突入し得る筒状の第二スライド枠部(15)と、を具備してなり、
連結解除の際に、
前記第一スライド枠部(14)を連結端側へスライド移動させることで、連結端側から前記開口隙間内に突入した第一スライド枠先端が、突入溝(12)内の係止爪(3)の前記先端筒面を筒径方向外方へ押し出して係止解除状態とするものであり、かつ、
係止解除状態または連結状態のそれぞれにおいて、前記第二スライド枠部(15)を連結端側へスライド移動させることで、開口端(22E)から前記開口隙間内に突入した第二スライド枠先端が、開口端(22E)と第一スライド枠との間の残りの隙間を埋めるように、開口端(22E)内へ突入し得ることを特徴とするホース用継手。
(2)前記開口端(22E)は、受け部材の筒軸線に対し、連結端側に傾斜した筒内面を有してなり、
連結状態における前記開口隙間は、受け枠(24)の開口端(22E)の筒内面から連結状態の係止爪(3)の先端爪面へと連なった連続傾斜面と、
差し込み部材の突入溝(24)の溝面、およびこの溝面から差し込み部材の基部側へ連なる第一スライド枠部の覆設面との間に形成されるものである請求項1記載のホース用継手。
(3)前記いずれかの第一スライド枠部(14)及び第二スライド枠部(15)はそれぞれ、差し込み部材の基部寄りの位置に外方へ張り出した第一鍔部および第二鍔部を外周面に有してなり、
、第一鍔部と第二鍔部の間に、第一スライド枠部の枠外面上に沿ってスライド弾性材(S)が周設されてなり、
第一スライド枠部(14)のスライド操作に伴って第二スライド枠部(15)がスライド移動し、開口隙間内に突入することが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明は上記手段を講じており、第一、第二の二重構成されたスライド組み枠によって、受け枠内面と差し込み部材外面との間に形成される開口隙間を確実に埋めることができ、ロック時及びロック解除時のガタつきを制限することで、確実に内部流体を封止でき、さらに外部接触によってロック機構が誤作動したり、ロック状態である筈の接手が意図せずに分離したりするといった事態を防ぎ、接続ないし解除操作を確実に行うことのできる消防ホース用継手を提供するものとなった。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施例1のホース用継手の連結(ロック)状態の側面一部破断図。
【図2】図1におけるAA断面図。
【図3】図1の要部拡大図。
【図4】実施例1のホース用継手の連結解除(ロック解除)状態の側面半断面図。
【図5】図3におけるB−B断面図。
【図6】実施例2のホース用継手の連結(ロック)状態の側面半断面図。
【図7】実施例2のホース用継手の連結解除(ロック解除)状態の側面半断面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態例につき実施例として示す各図と共に説明する。
【0012】
本発明は基本的に、連結端方向へ開口した受け枠(24)とこの受け枠(24)の内面側から軸中心へ突出可能に弾性付勢された係止爪(3)とを有する筒状の受け部材と、この係止爪(3)が嵌入し得る突入溝(12)を筒状端部の外周方向の一部に有した筒状の差し込み部材(1)とによって着脱可能に構成され、受け部材に設けた係止爪(3)の突出係止によって相互の接続状態がロックされるホース用継手である。
【0013】
前記係止爪(3)は、連結端側に傾斜湾曲した先端爪面を有する棒状体からなり、実施例では矩形断面の四角柱の下部突入面が連結端側にのみ湾曲傾斜し、上部端が段状に拡径して、受け枠24の収容空間230内に嵌め込み収容される。またこの上部端の上面に弾性リング3Sからなる突入弾性材が固定されることで、受け枠の筒軸中心へ弾性付勢される。
【0014】
前記突入溝(12)は、差し込み部材(1)の筒軸線に対し、前記先端爪面よりも緩やかな傾斜角度で湾曲した溝面を有し、
前記受け枠(24)は、差し込み部材(1)の筒状端部の外径よりも大きい開口径で開口した開口端(22E)を有してなることで、
係止爪(3)が突入溝(12)内に嵌入した連結状態において、前記先端爪面との間に連結端側へ開口した開口隙間が形成される。
【0015】
前記差し込み部材(1)には、
差し込み端側の外周面に軸方向へスライド可能に装着され、スライド移動によって突入溝(12)を連結端側から覆設し得る筒状の第一スライド枠部(14)と、
第一スライド枠部(14)の差し込み端側の外周面に軸方向へスライド可能に装着され、スライド移動によって受け枠(24)の開口端内面へ突入し得る筒状の第二スライド枠部(15)と、を具備してなる。
【0016】
連結解除の際には、前記第一スライド枠部(14)を連結端側へスライド移動させることで、連結端側から前記開口隙間内に突入した第一スライド枠先端が、突入溝(12)内の係止爪(3)の前記先端筒面を筒径方向外方へ押し出して係止解除状態とするものである。
【0017】
また係止解除状態または連結状態のそれぞれにおいて、前記第二スライド枠部(15)を連結端側へスライド移動させることで、開口端(22E)から前記開口隙間内に突入した第二スライド枠先端が、開口端(22E)と第一スライド枠との間の残りの隙間を埋めるように、開口端(22E)内へ突入し得る。
【0018】
前記開口端(22E)は、受け部材の筒軸線に対し、連結端側に傾斜した筒内面を有してなり、連結状態における前記開口隙間は、受け枠(24)の開口端(22E)の筒内面から連結状態の係止爪(3)の先端爪面へと連なった連続傾斜面と、
差し込み部材の突入溝(24)の溝面、およびこの溝面から差し込み部材の基部側へ連なる第一スライド枠部の覆設面との間に形成されるものである。
【0019】
前記いずれかの第一スライド枠部(14)及び第二スライド枠部(15)はそれぞれ、差し込み部材の基部寄りの位置に外方へ張り出した第一鍔部および第二鍔部を外周面に有してなり、
、第一鍔部と第二鍔部の間に、第一スライド枠部の枠外面上に沿って弾性材(S)が周設されてなり、
第一スライド枠部(14)のスライド操作に伴って第二スライド枠部(15)がスライド移動し、開口隙間内に突入することが好ましい。
【実施例1】
【0020】
図1〜5に示す実施例1では第二スライド枠部のスライド枠15Eの外面が先側に向かって縮径となるように傾斜外面15ETとして構成され、この傾斜外面が、開口端22Eの傾斜内面と略同角度で傾斜して、第二スライド枠部15の突入状態において開口隙間の開口端寄り部分が埋められた状態となっている(図4)。またこの状態では、スライド弾性材Sが第二スライド枠部15を突入方向へ弾性付勢することで、よりガタつきの発生が無くなるものとなっている。
連結時には、受け部材の受け枠基部22内部に設けられた環状の断面扁平ガスケット21Gが、差し込み部材1の差し込み先端13の内部傾斜面と当接して密閉(流体封止)状態を維持する。
第一スライド枠部14は止めリング11Cによって抜け止めされ、差し込み部材1の差し込み先端13と止めリング11Cの間を軸方向へスライド移動可能に構成される。
【実施例2】
【0021】
図6〜7に示す実施例2では受け部材に、係止爪3を径方向外方へ引き抜き操作可能な引き抜き構造を具備してなり、また差し込み部材の第一スライド枠、第二スライド枠が受け部材との開口隙間の形状に応じた長さの筒部を有すると共に、第一、第二スライド枠間にスライド弾性材Sを有さない。その他の基本的構成および使用方法は実施例1と共通である。
【符号の説明】
【0022】
24 受け枠
3 係止爪
12 突入溝
1 差し込み部材
22E 開口端
14 第一スライド枠部
15 第二スライド枠部
S スライド弾性材


【特許請求の範囲】
【請求項1】
連結端方向へ開口した受け枠(24)とこの受け枠(24)の内面側から軸中心へ突出可能に弾性付勢された係止爪(3)とを有する筒状の受け部材と、この係止爪(3)が嵌入し得る突入溝(12)を筒状端部の外周方向の一部に有した筒状の差し込み部材(1)とによって着脱可能に構成され、受け部材に設けた係止爪(3)の突出係止によって相互の接続状態がロックされるホース用継手であって、
前記係止爪(3)は、連結端側に傾斜湾曲した先端爪面を有する棒状体からなり、
前記突入溝(12)は、差し込み部材(1)の筒軸線に対し、前記先端爪面よりも緩やかな傾斜角度で湾曲した溝面を有し、
前記受け枠(24)は、差し込み部材(1)の筒状端部の外径よりも大きい開口径で開口した開口端(22E)を有してなることで、
係止爪(3)が突入溝(12)内に嵌入した連結状態において、前記先端爪面との間に連結端側へ開口した開口隙間が形成されるものであって、
前記差し込み部材(1)には、
差し込み端側の外周面に軸方向へスライド可能に装着され、スライド移動によって突入溝(12)を連結端側から覆設し得る筒状の第一スライド枠部(14)と、
第一スライド枠部(14)の差し込み端側の外周面に軸方向へスライド可能に装着され、スライド移動によって受け枠(24)の開口端内面へ突入し得る筒状の第二スライド枠部(15)と、を具備してなり、
連結解除の際に、
前記第一スライド枠部(14)を連結端側へスライド移動させることで、連結端側から前記開口隙間内に突入した第一スライド枠先端が、突入溝(12)内の係止爪(3)の前記先端筒面を筒径方向外方へ押し出して係止解除状態とするものであり、かつ、
係止解除状態または連結状態のそれぞれにおいて、前記第二スライド枠部(15)を連結端側へスライド移動させることで、開口端(22E)から前記開口隙間内に突入した第二スライド枠先端が、開口端(22E)と第一スライド枠との間の残りの隙間を埋めるように、開口端(22E)内へ突入し得ることを特徴とするホース用継手。
【請求項2】
前記開口端(22E)は、受け部材の筒軸線に対し、連結端側に傾斜した筒内面を有してなり、
連結状態における前記開口隙間は、受け枠(24)の開口端(22E)の筒内面から連結状態の係止爪(3)の先端爪面へと連なった連続傾斜面と、
差し込み部材の突入溝(24)の溝面、およびこの溝面から差し込み部材の基部側へ連なる第一スライド枠部の覆設面との間に形成されるものである請求項1記載のホース用継手。
【請求項3】
第一スライド枠部(14)及び第二スライド枠部(15)はそれぞれ、差し込み部材の基部寄りの位置に外方へ張り出した第一鍔部および第二鍔部を外周面に有してなり、
、第一鍔部と第二鍔部の間に、第一スライド枠部の枠外面上に沿って弾性材(S)が周設されてなり、
第一スライド枠部(14)のスライド操作に伴って第二スライド枠部(15)がスライド移動し、開口隙間内に突入する請求項1又は2記載のホース用継手。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−79659(P2013−79659A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−218783(P2011−218783)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(509190598)寧波瀛震机械部件有限公司 (9)
【Fターム(参考)】