説明

ホース継手

【課題】簡単迅速にホースの接続が行えると同時に、構造の簡略化によって価格面での改良を図ることができるホース継手を提供する。
【解決手段】円筒状の差込み部材2と、先端部にソケット部3が設けられた受け部材4と、前記差込み部材2の外側で途中の位置に回動自在となるよう外嵌した操作リング5からなり、前記操作リング5に、内面側に係止突起11が設けられた突出部10を設け、前記ソケット部3の外周に、係止突起11の軸方向への進入位置で操作リング5を回動させることにより、係止突起11の係合によって差込み部材2と受け部材4の接続状態を保持する突条17を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば、消防用のホースを互いに接続するために用いるホース継手に関する。
【背景技術】
【0002】
消防用のホースは、取り扱い上その長さに制約があるため、使用時に必要な長さを得るには複数本のホースを接続する必要があり、この場合、ホースの接続にホース継手を用いることになる。
【0003】
従来、一般に用いられている消防用ホースの継手としては、ねじ式継手と差込み式継手に大別される。
【0004】
前者のねじ式継手は、先端部外周に接続用の雄ねじが設けられ、後端がホースの接続部となる筒状の差込み金具と、この差込み金具に回転と軸方向への移動が可能となるよう外嵌した締結金具と、先端に前記雄ねじへ螺合する雌ねじ部材が回転と軸方向への移動が可能となるよう抜止状に外嵌され、後端がホースの接続部となる受け金具とからなり、雌ねじ部材と雄ねじを螺合し、更に、締結金具を雄ねじに螺合して雌ねじ部材に当接させることで、差込み金具と受け金具を同軸心状に結合するようになっている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
また、後者の差込み式継手は、先端に受け部と後端にホースの接続部が設けられ、前記受け部の内周に複数の係合爪を半径方向に移動可能となるよう組み込み、この係合爪にスプリングで内方への突出弾性を付勢した筒状の受け金具と、先端部外周に、前記受け部内への挿入により係合爪が抜け止め状に係合する係合段部及び後端にホースの接続部が設けられ、外部の途中に係合解除リングを軸方向に移動可能に外嵌した筒状の差込み金具とからなり、前記、差込み金具の先端を受け部内に挿入し、係合爪と係合段部の係合で受け金具と差込み金具を同軸心状に結合すると共に、係合解除リングを受け部内に押し込んで係合爪を没入させることで結合を解くようになっている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8−277975号公報
【特許文献2】特開2008−142301号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、前者のねじ式継手は、接続及び分離を行う場合、雌ねじ部材と締結金具をそれぞれ回転させて、雄ねじに対するねじ込みや取外しを行わなければならないので、接続及び分離に手間がかかり、特に、火災現場で迅速な接続が要求される消防用ホースの接続には不向きである。
【0008】
また、後者の差込み式継手は、受け金具の受け部内へ差込み金具を挿入するだけで接続が行えるので、火災現場での迅速な接続が可能であるという利点はあるが、受け部の内部に係合爪とこれに弾性を付勢するスプリングを組み込む必要があるため、構造が複雑となり、価格的に高価なものとなるという問題がある。
【0009】
そこで、この発明の課題は、ワンタッチで簡単迅速にホースの接続が行えると同時に、構造の簡略化によって価格面での改良を図ることができるホース継手を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するため、この発明は、後端側がホース接続部分となる円筒状の差込み部材と、先端部に前記差込み部材の先端側が嵌合する内径のソケット部が設けられ、後端側がホース接続部分となる円筒状の受け部材と、前記差込み部材の外側で途中の位置に回動自在となるよう外嵌した操作リングからなり、前記操作リングに、差込み部材の先端側を受け部材のソケット部に挿入した状態でソケット部の外周における外側に位置し、その内面側に係止突起が設けられた突出部を設け、前記ソケット部の外周に、係止突起の軸方向への進入を許容し、進入位置で操作リングを回動させることにより、係止突起の係合によってソケット部と操作リングを軸方向に結合し、差込み部材と受け部材の接続状態を保持する突条を設けたものである。
【0011】
ここで、差込み部材に外嵌した操作リングは、差込み部材の外周面で先端寄りの位置に周設した突条と後端寄りの位置に嵌め込んだ止めリングの間で、回転が可能となるように保持され、前記突条に外嵌する内径を有するリング状で先端側が開放し、後端側が差込み部材の外径に適合する後端壁となっている。
【0012】
上記操作リングに設けた突出部は、この操作リングの外径よりも大径の内径を有する先端が開口する筒状となり、その内周面で先端寄りの位置に複数の係止突起が周方向に等間隔の配置で設けられている。
【0013】
また、受け部材の先端側は、差込み部材の先端が丁度納まる内径の拡径部と、この拡径部よりも大径の内径となる大径部を連ねて設けた二段の段付き構造となり、前記大径部に環状のソケット部の後端がねじ込みによって固定され、ソケット部の後端側内周にシール材が組み込まれ、受け部材に挿入した差込み部材の外周面をシールするようになっている。
【0014】
このソケット部は、差込み部材を挿入することのできる内径と、操作リングの突出部に嵌合する外径を有し、外周面の先端側に上記係止突起と等しい数の突条が設けられている。
【0015】
上記突条は、ソケット部の外面周方向に長く間歇的に設けられ、隣接する突条の端部間が突条のない部分となって係止突起を軸方向に出し入れするための出し入れ部となり、このソケット部に操作リングの突出部を外嵌した状態で、操作リングを一方に回転させると、係止突起が突条に係合することで操作リングが受け部材側に引き寄せられ、これにより、差込み部材と受け部材を接続することになる。
【発明の効果】
【0016】
この発明によると、差込み部材の先端側を受け部材のソケット部に挿入した状態で、前記差込み部材に外嵌した操作リングを軸方向に前進させた位置で回動させることにより、係止突起と突条の係合で差込み部材と受け部材の接続状態を保持するようにしたので、ホースの接続及び分離が操作リングを軸方向に移動させて回動させるワンタッチ操作で行え、接続及び分離が迅速に行えることで、特に、火災現場での消防用ホースの接続に適している。
【0017】
また、差込み部材に操作リングを外嵌し、この操作リングに係止突起と受け部材のソケット部に突条を設けただけであるので、構造の簡略化によって価格面での改良を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】この発明に係るホース継手の分解斜視図
【図2】受け部材を示すソケット部を分解した斜視図
【図3】差込み部材を示す操作リングを分解した斜視図
【図4】この発明に係るホース継手の接続状態を示す縦断正面図
【図5】図4の矢印V−Vでの縦断側面図であり、(a)はソケット部に操作リングが外嵌した結合前の状態を示す縦断側面図、(b)はソケット部に操作リングが外嵌した結合状態を示す縦断側面図
【図6】(a)はソケット部に操作リングが外嵌した結合前の状態を示す図5(a)に対応するホース継手の斜視図、(b)はソケット部に操作リングが外嵌した結合状態を示す図5(b)に対応するホース継手の要部斜視図
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、この発明の実施の形態を図示例に基づいて説明する。
【0020】
図1乃至図4のように、ホース継手1は、円筒状の差込み部材2と、先端部に前記差込み部材2の先端側が嵌合する内径のソケット部3が設けられた受け部材4と、前記差込み部材2の外側で途中の位置に回動自在となるよう外嵌した操作リング5からなり、この操作リング5を軸方向に移動させて回動させる操作によって接続と分離が行えるようになっている。ここで、各部材において先端とは差込み部材2と受け部材4の接続側の端部を言い、後端はホースの接続側を言う。
【0021】
上記差込み部材2は、後端側がホース接続部分2aとなる内径がストレートな円筒状となり、その外周面には、少し先端寄りの位置に突条6と、この突条6よりも後端寄りの位置に止めリング7を嵌め込む凹溝8とが周設され、前記差込み部材2の外側で途中の位置に外嵌した上記操作リング5は、この突条6と止めリング7の間に回転と軸方向の移動が可能となる抜け止め状態に保持されている。
【0022】
上記操作リング5は、上記突条6の外径に嵌り合う内径の円筒部5aと、この円筒部5aの後端から内径側へ屈曲し、差込み部材2へ嵌り合う内径を有する後端壁5bとで形成され、この後端壁5bが、差込み部材2の外周で先端寄りに設けた環状の突条2bと、これよりも後端寄りの位置に嵌め込んだ止めリング7の間に納まり、差込み部材2に対して操作リング5は回転が可能となるように保持されている。
【0023】
この操作リング5における円筒部5aの先端側に、内径が上記受け部材4に設けたソケット部3の外径よりも大径となる突出部10が先端側に向けて突出するよう設けられ、この突出部10の内面側で先端寄りの位置に複数の係止突起11が周方向に等間隔の配置で設けられている。
【0024】
図示の場合、上記突出部10は円筒状に形成し、その内周面に角形の係止突起11を三箇所の位置に突設した例を示したが、係止突起11は二箇所の位置に設けるようにしてもよく、また、突出部10は、円筒状に限定されるものではなく、円筒部5aの先端側で係止突起11を設けたい位置だけに部分的に突設したアームによって形成するようにしてもよい。
【0025】
上記受け部材4は、差込み部材2と等しい内径のストレートな筒状に形成され、その先端側が、前記差込み部材2の先端が丁度納まる内径の拡径部12と、この拡径部12よりも大径の内径となる大径部13を連ねて設けた二段の段付き構造となり、前記大径部13に環状のソケット部3の後端がねじ込みによって固定され、また、受け部材4の後端側がホース接続部分14となっている。
【0026】
上記ソケット部3は、上記突出部10の内部に納まる外径と、上記突条6に外嵌する内径の筒状に形成され、その後端側を大径部13に螺合固定することにより、大径部13から前方へ延長状に突出する配置になっている。
【0027】
このソケット部3の内周で中間部の位置に差込み部材2の先端が嵌る内径で周設した環状突部15と、大径部13の内部端面との対向面間に形成された空間に、受け部材4のソケット部3内に挿入された差込み部材2の外周に密接し、差込み部材2と受け部材4の嵌合部分を水密にするシール材16が組み込まれている。
【0028】
上記ソケット部3の外周に、係止突起11の軸方向への進入を許容し、進入位置で操作リング5を回動させることにより、係止突起11の係合によってソケット部3と操作リング5を軸方向に結合し、差込み部材2と受け部材4の接続状態を保持する突条17が設けられている。
【0029】
この突条17は、ソケット部3の外周で先端部の位置に周方向に沿って長く、突出部10の内径が丁度嵌り合う高さを有し、前記係止突起11と等しい数が間歇的な配置で設けられ、隣接する突条17の端部間が突条17のない部分となって係止突起11を軸方向に出し入れするための出し入れ部18となり、前記ソケット部3に操作リング5の突出部10を外嵌した状態で、操作リング5を一方に回転させると、係止突起11が突条17に係合することで操作リング5が受け部材4の側に向けて引かれ、その結果、差込み部材2と受け部材4を互いに引き寄せることで接続することになる。
【0030】
図示の場合、ソケット部3の外周における突条17よりも少し軸方向内側寄りの位置には、出し入れ部18の一方側方に位置し、出し入れ部18に進入させた係止突起11を一方に回転しないようにするストッパー突起19と、前記突条17の中間部と対応する位置に、この突条17に係合させた係止突起11の回り止めストッパー20とが設けられ、出し入れ部18に係止突起11を進入させた操作リング5をストッパー突起19と反対側へ回動させれば、係止突起11が突条17に係合すると共に、係止突起11が回り止めストッパー20に当接する位置で接続完了となる。
【0031】
なお、図示の場合、受け部材4に対してソケット部3を別部材としたが、受け部材4の大径部13に連ねてソケット部3を一体的に成形して設けるようにしてもよく、また、突条17の中間部に凹部17aを形成し、回り止めストッパー20に当接した係止突起11がこの凹部17aに嵌まり込むようにしたが、突条17の軸方向に沿う幅を、出し入れ部18側で狭く回り止めストッパー20側に向けて広くなるような傾斜を持たせ、係止方向に回した操作リング5を軸方向に引き込むような形状に形成してもよい。
【0032】
この発明のホース継手1は、上記のような構成であり、差込み部材2の後端側に形成したホース接続部分2aに一方消防用ホースaの端部を接続し、受け部材4の後端側に形成したホース接続部分14に他方消防用ホースbの端部を接続しておく。
【0033】
両ホースaとbを接続するには、受け部材4のソケット部3に差込み部材2の先端側を奥まで挿入し、この差込み部材2の途中に取付けた操作リング5の係止突起11とソケット部3の外周で突条17間に形成された出し入れ部18の位相を合わせた状態で、操作リング5を軸方向に押し込んで係止突起11を出し入れ部18に進入させ、この押し込み位置で操作リング5を図5aと図6aの矢印のように、ストッパー突起19と反対側に向けて回動させると、係止突起11が突条17に対して抜け止め方向に係合し、差込み部材2と受け部材4を互いに引き寄せることになり、回り止めストッパー20に当接する位置で操作リング5から手を離せば、図5bと図6bのように、差込み部材2と受け部材4が抜け止め状態に結合され、図4で示すように、両消防用ホースaとbの接続状態となる。
【0034】
このとき、ソケット部3の内周に設けた環状のシール材16が差込み部材2の先端部外周に密接することで、差込み部材2と受け部材4の接続部分の水密を保つと共に、係止突起11の凹部17aへの嵌まり込みが弾力的に保持されることで、操作リング5は自然に回動することはなく、両消防用ホースaとbの接続状態を維持することができる。
【0035】
次に、両消防用ホースaとbの接続を解く場合は、操作リング5を軸方向に押し込んで、係止突起11を凹部17aから離脱させた状態で、この操作リング5を接続時とは逆にストッパー突起19の側に回動させ、係止突起11がストッパー突起19に当接した状態で、係止突起11が出し入れ部18に位置することになるので、続いて差込み部材2と受け部材4を引き離すようにすればよく、係止突起11が出し入れ部18を通ってソケット部3の外部に抜けると同時に、差込み部材2がソケット部3内から抜けることで両消防用ホースaとbの接続が解かれることになる。
【符号の説明】
【0036】
1 ホース継手
2 差込み部材
3 ソケット部
4 受け部材
5 操作リング
6 突条
7 止めリング
8 凹溝
10 突出部
11 係止突起
12 拡径部
13 大径部
14 ホース接続部分
15 環状突部
16 シール材
17 突条
18 出し入れ部
19 ストッパー突起
20 回り止めストッパー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
後端側がホース接続部分となる円筒状の差込み部材と、先端部に前記差込み部材の先端側が嵌合する内径のソケット部が設けられ、後端側がホース接続部分となる円筒状の受け部材と、前記差込み部材の外側で途中の位置に回動自在となるよう外嵌した操作リングからなり、前記操作リングに、差込み部材の先端側を受け部材のソケット部に挿入した状態でソケット部の外周における外側に位置し、その内面側に係止突起が設けられた突出部を設け、前記ソケット部の外周に、係止突起の軸方向への進入を許容し、進入位置で操作リングを回動させることにより、係止突起の係合によってソケット部と操作リングを軸方向に結合し、差込み部材と受け部材の接続状態を保持する突条を設けたホース継手。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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