説明

ホース継手

【課題】ソケット部における外径を嵩低くコンパクトにして取り扱いや格納に便利であり、接続したホースの分離が一人の作業者で行うことができるホース継手を提供する。
【解決手段】先端の差込み部に環状の係合溝が設けられた円筒状の差込み部材22と、先端部にソケット部23が設けられた受け部材24と、前記ソケット部23に外嵌した操作リング30からなり、前記ソケット部23の外側に設けたケース部29の内部に、拡散と集合が自在でコイルスプリング36によって常時集合する方向の弾性が付勢された複数の分割リング31を組込み、この分割リング31に、前記ソケット部23の貫通孔33からソケット部23の内側に出没し、ソケット部23に挿入した差込み部25の係合溝27に対して係脱する係止爪35を設け、前記分割リング31の内周に、ケース部29の内部に押し込まれた操作リング30によって、この分割リング31を押し広げによる拡散状態にするための傾斜面38を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば、消防用のホースを互いに接続するために用いるホース継手に関する。
【背景技術】
【0002】
消防用のホースは、取り扱い上その長さに制約があるため、使用時に必要な長さを得るには複数本のホースを接続する必要があり、この場合、ホースの接続にホース継手を用いることになる。
【0003】
消防用ホースを互いに接続する継手としては、ねじ式ホース継手と差込み式ホース継手に大別されるが、後者の差込み式ホース継手は、筒状の受け金具に設けたソケット部に筒状の差込み金具を挿入し、ソケット部と差込み金具の嵌合部分を係止爪で自動的に係止するようになっているので、ホースの接続及び分離がねじ式ホース継手よりも能率的に行えるという利点がある。
【0004】
図6と図7は、従来の差込み式ホース継手1を示し、後端側がホース接続部分2で先端側が差込み部3となり、この差込み部3の外周に環状の係合溝4が設けられた円筒状の差込み部材5と、後端側がホース接続部分6で先端側に前記差込み部材5の先端側差込み部3を内部に挿入する内径のソケット部7が設けられた円筒状の受け部材8とからなり、前記ソケット部7の外周で軸心を挟む両側の位置に円筒体9が突設されている。
【0005】
上記ソケット部7の円筒体9を突設した部分には半径方向の貫通孔10が設けられ、この円筒体9の内部に、貫通孔10からソケット部7の内側に対して出没可能となり、突出時に前記ソケット部7に挿入した差込み部材5の係合溝4に対して係合し、差込み部材5と受け部材8を抜止め状態に結合し、貫通孔10内に没入した状態で係合溝4との係合を解く係止爪11が組み込まれている。
【0006】
前記係止爪11には、円筒体9の内部に縮設したスプリング12でソケット部7の内側に常時突出する方向の弾性が付勢され、この係止爪11を没入状態にするため、係止爪11に設けた軸13の外端に結合した操作摘まみ14が上記円筒体9の外端から外部に突出している。
【0007】
ホースaとbを接続する場合は、受け部材8のソケット部7に差込み部材5の差込み部3を挿入すればよく、差込み部3がソケット部7の内周に突出している係止爪11を押し開き、差込み部3がソケット部7に納まると、係合溝4が係止爪11に臨むことで係止爪11は係合溝4に係合し、図6のように、受け部材8と差込み部材5が結合され、ホースaとbの接続状態となる。
【0008】
また、接続したホースaとbを分離する場合は、図7のように、各円筒体9の外端に突出する操作摘まみ14をスプリング12に抗して外方に引っ張り、一体に移動する係止爪11を貫通孔10に没入させることで係合溝4との係合を解き、その後ソケット部7から差込み部材5を抜き取るようにする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、上記したような従来の差込み式ホース継手1は、ソケット部7の両側外部に、係止爪11を収納する円筒体9と、その外端に係止爪11を外方に引くための操作摘まみ14が突出し、係止爪11の係合溝4に対する係止と解除の操作を半径方向の外側から行う構造になっているので、ソケット部7における両側外方への突出量が多い構造となり、ホース継手1が径方向に嵩高いものとなり、その取り扱いや格納に不便である。
【0010】
また、接続したホースaとbを分離する場合、両側の操作摘まみ14を両手で同時に引っ張って係止爪11を係合溝4から引き離した状態で、受け部材8から差込み部材5を引き抜くようにしなければならないので、両側の操作摘まみ14を引っ張るための作業と、受け部材8と差込み部材5を軸方向に引き離す作業が必要になり、このため接続したホースaとbの分離に二人の作業者が必要になるという問題がある。
【0011】
そこで、この発明の課題は、ソケット部における外径を嵩低くコンパクトにして取り扱いや格納に便利であるようにすると共に、接続したホースの分離が一人の作業者で行うことができるホース継手を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題を解決するため、この発明は、後端側がホース接続部分で先端側が差込み部となり、この差込み部の外周に環状の係合溝が設けられた円筒状の差込み部材と、後端側がホース接続部分で先端側に前記差込み部材の先端側差込み部を内部に挿入する内径のソケット部が設けられた円筒状の受け部材とからなり、前記受け部材のソケット部の外側に、内部が環状の空間となるケース部と、このケース部の内部に対して出没できるよう軸方向に移動可能となるよう外嵌する操作リングを設け、前記ケース部の内部に、前記ソケット部の外周に外接する内径を有する弧状となり、周方向の複数箇所で分割することにより、径方向に沿って集合と拡散の移動が可能となるよう収納され、スプリングによって常時集合する方向の弾性が付勢された複数の分割リングを組込み、前記分割リングに、前記ソケット部のケース部で覆われた部分に設けた半径方向の貫通孔に収まり、分割リングの集合状態でソケット部の内側に突出し、このソケット部に挿入した差込み部材の係合溝に対して抜止め状態に係合し、分割リングの拡散状態で貫通孔内に没入して係合溝との係合を解く係止爪を設け、前記分割リングの内周で操作リングに臨む側の位置に、ケース部の内部に押し込まれた操作リングによって、この分割リングを押し広げによる拡散状態にするための傾斜面を設けたものである。
【0013】
ここで、受け部材に設けたソケット部は、円筒状となるホース接続部分の先端側に、このホース接続部分よりも大径となり、その内径が差込み部材の先端側差込み部が丁度嵌り合う先端が開放した円筒状に形成され、内端部の内周に、前記差込み部の先端が当接することにより嵌り合い部分の水密を保つシール部材が組み込まれ、このソケット部の長さ方向の中間で軸線を挟む両側の位置に半径方向の貫通孔が設けられている。
【0014】
上記ソケット部の外側に設けたケース部は、断面コ字形の環状となり、上記貫通孔を設けた部分を覆うようにソケット部の外側に固定され、受け部材のホース接続部分側に位置する端壁の内周はソケット部の外周面との間に、操作リングが収まる環状隙間を形成している。
【0015】
上記分割リングは、ソケット部の外径に一致する内径のリングを周方向に二分割することにより形成され、外周に巻付けたコイルスプリングによって常時集合する方向の弾性が付勢され、係止爪がソケット部の内部に突出しているので、このソケット部に差込み部材の差込み部を挿入すれば、この差込み部が係止爪を押し開いた後、係合溝が係止爪に臨むことで係合し、接続状態になると共に、操作リングを傾斜面に向けて押し込むことにより分割リングを拡散状態にすれば、係止爪は係合溝から外れ、受け部材と差込み部材を分離することができる。
【発明の効果】
【0016】
この発明によると、係合溝に対する係止爪の離脱を、分割リングに設けた傾斜面とソケット部に外嵌した操作リングの軸方向への押し込みによって行うようにしたので、ソケット部の外側に設けたケース部は、分割リングの拡散状態を許容する突出量でよくなり、これにより、受け部材におけるソケット部の外径を嵩低くコンパクトにすることができ、ホース継手の取り扱いや格納に便利である。
【0017】
また、係合溝に対する係止爪の離脱を、分割リングに設けた傾斜面とソケット部に外嵌した操作リングの軸方向への押し込みによって行うようにしたので、操作リングの軸方向への押し込みを片手で保持でき、もう片方の手で受け部材に対する差込み部材の引き抜きが行え、これにより、接続したホースの分離が一人の作業者で可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】この発明に係るホース継手の要部を切り欠いた分解斜視図
【図2】この発明に係るホース継手のホース接続状態を示す一部切欠き正面図
【図3】この発明に係るホース継手のホース分離時の状態を示す要部を拡大した縦断正面図
【図4】図2の矢印IV−IVに沿った縦断側面図
【図5】図4と同じ位置において、係止爪が開いて差込み部材を引き抜いた状態を示す縦断面図
【図6】従来のホース継手のホース接続状態を示す一部切欠き正面図
【図7】従来のホース継手のホース分離時の状態を示す要部を拡大した縦断正面図
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、この発明の実施の形態を図示例に基づいて説明する。
【0020】
図1乃至図3のように、ホース継手21は、円筒状の差込み部材22と、先端部に前記差込み部材22の先端側が嵌合する内径のソケット部23を有する受け部材24とからなり、前記差込み部材22は、先端側が差込み部25で後端側がホース接続部分26となる円筒状となり、前記差込み部25の先端寄り外周面に、環状の係合溝27が設けられている。
【0021】
上記受け部材24は、ストレートの円筒となる後端側のホース接続部分28と、このホース接続部分28の先端側に設けられ、前記ホース接続部分28よりも大径となり、その内径が差込み部材22の先端側差込み部25が丁度嵌り合う先端が開放した円筒状に形成されたソケット部23とからなり、前記ソケット部23の外側に、内部が環状の空間となるケース部29と、このケース部29に対してホース接続部分28側の位置に、前記ケース部29の内部に対して押し込めるよう軸方向への移動が可能に外嵌する操作リング30を設け、前記ケース部29の内部に、複数の分割リング31が組込まれている。
【0022】
上記ソケット部23は、内端部の内周に、上記先端側差込み部25の先端が当接することにより嵌り合い部分の水密を保つ環状のシール部材32が組み込まれ、このソケット部23の長さ方向の中間で軸線を挟む両側二箇所の位置に、周方向に長く半径方向に対して貫通する貫通孔33が設けられ、この貫通孔33は、図2のように、先端がシール部材32に当接するよう差込んだ先端側差込み部25の係合溝27に対して外側に臨む位置関係に設けられている。
【0023】
上記ケース部29は、断面コ字形でソケット部23の外周を囲む環状となり、上記貫通孔33を設けた部分を含めてソケット部23の外側を覆うように固定され、受け部材24のホース接続部分28側に位置する端壁29aの内周はソケット部23の外周面との間に、操作リング30が収まる環状隙間34を形成している。
【0024】
上記ケース部29の内部に設けた分割リング31は、ソケット部23の外径に外接する内径のリングを周方向に二分割することにより、図4と図5のように、周方向の長さが半円よりも短い弧状に形成され、周方向の複数箇所で分割することにより、径方向に沿って集合と拡散の移動が可能となるよう収納され、両分割リング31の内周面には、貫通孔33に対してソケット部23の半径方向に移動可能となるよう嵌り合う係止爪35が設けられている。
【0025】
上記分割リング31は、その外周に緊張状態で巻き付けたコイルスプリング36によって常時集合する方向の弾性が付勢され、図2と図4のように、その内径がソケット部23の外径に外接する集合状態で、上記係止爪35は先端側がソケット部23の内側に所定量だけ突出し、先端側差込み部25の係合溝27に対して係合可能な状態になっている。
【0026】
図1のように、先端側差込み部25に設けた係合溝27は、先端側差込み部25の先端側に位置する部分が直角に凹入する係合壁27aとなり、この係合壁27aの内端から後方へ弧状となって浅くなる断面形状に形成され、また、係止爪35において、ソケット部23の内側に突出する先端側は、前記係合溝27の断面形状に合わせ、ホース接続部分28側に臨む面がソケット部23の半径方向に沿う係合面35aとなり、この係止爪35の先端はソケット部23の先端側に向けて外方への下がり傾斜となる弧状面35bになっている。
【0027】
係合溝27と係止爪35の形状を上記のように設定すると、係止爪35に先端側差込み部25を挿入したとき、弧状面35bによって先端側差込み部25で係止爪35を確実に押し広げることができ、係止爪35と係合溝27の結合が得られると共に、係止爪35の係合面35aと係合溝27の係合壁27aが、差込み部材22と受け部材24の抜け止め方向に係合し、差込み部材22と受け部材24の接続状態を保持することができる。
【0028】
上記操作リング30は、ソケット部23の外側に軸方向への移動が自在となるよう外嵌した円筒状となり、ケース部29と反対側の後端部外周面に操作用の環状鍔30aが設けられ、ソケット部23の外側端部に嵌め込んだストッパーリング37によって、先端がケース部29の環状隙間34に納まる状態で後方への抜け止め状態になっている。
【0029】
上記分割リング31の内周で操作リング30に臨む側の位置に、ケース部29の内部に押し込まれた操作リング30によって、この分割リング31を押し広げによる拡散状態にするための傾斜面38が形成されている。
【0030】
この発明のホース継手21は、上記のような構成であり、差込み部材22の後端側に形成したホース接続部分26に一方消防用ホースaの端部を接続し、受け部材24の後端側に形成したホース接続部分28に他方消防用ホースbの端部を接続しておく。
【0031】
上記受け部材24の分割リング31は、コイルスプリング36の締め付け力によって径方向に沿って集合し、内周がソケット部23の外周に接合することにより、係止爪35はその先端がソケット部23の軸線を挟む両側二箇所の位置で内方に突出している。
【0032】
両ホースaとbを接続するには、受け部材24のソケット部23に差込み部材22の先端側差込み部25を奥まで挿入すればよく、この差込み部25が係止爪35を押し開いたのち係合溝27が係止爪35に臨み、係止爪35はコイルスプリング36の復帰弾性によってソケット部23の内方に突出し、係合溝27が係止爪35に係合することで、図2のように、差込み部材22と受け部材24が抜け止め状態に結合され、両ホースaとbの接続状態になり、差込み部25の先端がソケット部23の内部に組み込んだシール部材32に圧接し、接続部分の水密を保つことになる。
【0033】
次に、両消防用ホースaとbの接続を解く場合は、操作リング30をケース部29内に向けて軸方向に押し込めばよく、図3のように、操作リング30の先端が分割リング31の傾斜面38に対して進入することで、分割リング31はコイルスプリング36の弾性に抗して径方向外側に押し広げられ、拡散状態となる。
【0034】
この分割リング31の内面に固定した係止爪35は、分割リング31と一体に拡散移動することで、図3と図5で示したように、貫通孔33内に没入して係合溝27から先端が抜け出た状態となり、係止爪35と係合溝27の係合が解けるので、差込み部材22と受け部材24を引き離すようにすればよく、差込み部材22がソケット部23内から抜けることで両消防用ホースaとbの接続が解かれることになる。
【0035】
上記した両消防用ホースaとbの接続を解く場合において、ケース部29内に向けて軸方向に押し込んだ操作リング30は、ソケット部23の外側を握る片方の手で押し込み状態を保持することができ、従って、差込み部材22をソケット部23内から抜く作業はもう片方の手で行うことができ、従って、両消防用ホースaとbの接続解除が一人で行なえることになる。
【0036】
また、この発明のホース継手21は、操作リング30の軸方向への押し込みによって、差込み部材22と受け部材24の分離を行うようにしたので、ソケット部23の外側に設けたケース部29の外方への突出高さは、分割リング31の拡散状態を許容する突出量でよくなり、これにより、受け部材24におけるソケット部23の外径を嵩低くコンパクトにすることができ、ホース継手21の取り扱いや格納に便利である。
【符号の説明】
【0037】
21 ホース継手
22 差込み部材
23 ソケット部
24 受け部材
25 差込み部
26 ホース接続部分
27 係合溝
28 ホース接続部分
29 ケース部
30 操作リング
31 分割リング
32 シール部材
33 貫通孔
34 環状隙間
35 係止爪
36 コイルスプリング
37 ストッパーリング
38 傾斜面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
後端側がホース接続部分で先端側が差込み部となり、この差込み部の外周に環状の係合溝が設けられた円筒状の差込み部材と、
後端側がホース接続部分で先端側に前記差込み部材の先端側差込み部を内部に挿入する内径のソケット部が設けられた円筒状の受け部材とからなり、
前記受け部材のソケット部の外側に、内部が環状の空間となるケース部と、このケース部の内部に対して出没できるよう軸方向に移動可能となるよう外嵌する操作リングを設け、
前記ケース部の内部に、前記ソケット部の外周に外接する内径を有する弧状となり、周方向の複数箇所で分割することにより、径方向に沿って集合と拡散の移動が可能となるよう収納され、スプリングによって常時集合する方向の弾性が付勢された複数の分割リングを組込み、
前記分割リングに、前記ソケット部のケース部で覆われた部分に設けた半径方向の貫通孔に収まり、分割リングの集合状態でソケット部の内側に突出し、このソケット部に挿入した差込み部材の係合溝に対して抜止め状態に係合し、分割リングの拡散状態で貫通孔内に没入して係合溝との係合を解く係止爪を設け、
前記分割リングの内周で操作リングに臨む側の位置に、ケース部の内部に押し込まれた操作リングによって、この分割リングを押し広げによる拡散状態にするための傾斜面を設けたホース継手。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2011−158083(P2011−158083A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−22825(P2010−22825)
【出願日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【出願人】(509190598)寧波瀛震机械部件有限公司 (9)
【Fターム(参考)】