説明

ホース

【課題】微生物がホース内部に付着することにより、きれいな水の取水が不可能になることを、長期間にわたり効果的に防止するとともに、いったん、ホースの内面に水藻、微生物、カビ等が発生したとしても、設置初期の、微生物、カビ等の発生していない状態に再び戻すことが簡単にできる新規なホースを提供すること。
【解決手段】内面チューブ層、補強層および外面ゴム層を少なくとも有して構成されているホースにおいて、前記内面チューブ層が、抗菌剤が含有された材料で構成され、かつ互いに剥離可能な複数層の積層構造をなして形成されているホース。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はホースに関する。
【0002】
更に詳しくは、代表的には、例えば、浮遊式海上荷役設備(FPSO)システムにおいて、船内冷却水として使用するために船底から海水を取水するのに好適に使用することができるホースに関する。
【背景技術】
【0003】
従来、浮遊式海上荷役設備(FPSO)システムにおいて、船内冷却水として使用するために船底から海水を取水することが行われており、該海水の汲み上げ・取水にあたっては、マリンホースと呼ばれる可撓性のあるチューブを、浮遊式海上荷役設備の底部、すなわち、船底に設けた開口部から海中に常時突出させておいて使用することが多くなってきた。すなわち、鋼管を取水チューブに使用した従来の海水取水システムと比較して、マリンホースは可撓性があるために、取水時の負圧や潮流力に対する抗力等を吸収することができ、長期間にわたり安定して使用することが可能になり、常時かつ長期間、海中に突出されて使用される使用態様が生じてきた。
【0004】
その一方で、長期間にわたり海水中に保持されることから、海洋微生物がホース内部に付着し、これがホース内のつまりを招いて、きれいな海水を所望通りに取水できなくなるという問題を生じていた。
【0005】
これらの海洋微生物を除去するために船体から強制的にホース内に水圧をかけて内部を清掃したり、付着すること自体を防止するために次亜塩素酸ナトリウム等をホース内に流し、付着を防止するという方法が行われている。
【0006】
また、園芸用や散水用などのホースにおいて、内層を抗菌剤を混入した素材で構成することにより、該抗菌剤の抗菌作用により、ホースの内面に水藻、微生物、カビ等が発生することやその増殖を防止しようとするホースが提案されている(特許文献1)。
【0007】
また、使用する人の目に光遮断層の暗い色が入らず、しかも、不純物や雑菌などの影響も受けないという防藻シートに関する発明が、提案されている(特許文献2)。
【0008】
しかし、これらの構造のホースではいったん水藻、微生物、カビ等が発生してしまうと、所期の該微生物やカビなどの発生防止、付着防止の効果を達成することは全くできなくなってしまうものであった。
【特許文献1】実開平5−87383号公報
【特許文献2】特開平7−55070号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、上述のような従来技術に鑑み、微生物がホース内部に付着することにより、きれいな水の取水が不可能になることを、長期間にわたり効果的に防止するとともに、いったん、ホースの内面に水藻、微生物、カビ等が発生したとしても、設置初期の、微生物、カビ等の発生していない状態に再び戻すことが簡単にできる新規なホースを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した目的を達成する本発明のホースは、以下(1) の構成からなる。
(1)内面チューブ層、補強層および外面ゴム層を少なくとも有して構成されているホースにおいて、前記内面チューブ層が、抗菌剤が含有された材料で構成され、かつ互いに剥離可能な複数層の積層構造をなして形成されていることを特徴とするホース。
【0011】
かかる構成を有する本発明のホースは、より具体的に好ましくは、以下の(2) 〜(4) の構成からなるものである。
(2)内面チューブ層を形成する材料が、静摩擦係数が0.01〜0.3であるものであることを特徴とする上記(1) 記載のホース。
(3)ホースが、取水用ホースであることを特徴とする上記(1) または(2) 記載のホース。
(4)ホースが、海水の取水用であることを特徴とする上記(1) または(2) 記載のホース。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、微生物がホース内部に付着することにより、きれいな水の取水が不可能になることを、長期間にわたり効果的に防止するとともに、いったん、ホースの内面に水藻、微生物、カビ等が発生したとしても、設置初期の、微生物、カビ等の発生していない状態に再び戻すことが簡単にできる新規なホースを提供されるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、更に詳しく本発明のホースについて、説明する。
【0014】
本発明のホースは、ホース内表面を呈する内面チューブ層、ホースの外表面を呈する外面ゴム層とを有し、さらにその中間層として補強層が存在しているという、少なくとも3層の積層構造を有するものである。
【0015】
そして、内面チューブ層は、抗菌剤が含有された材料で構成され、かつ互いに剥離可能な複数層の積層構造をなして形成されている。
【0016】
本発明のホースにおいて、ホースの外表面を呈する外面ゴム層は、主に本発明のホース全体に可撓性をもたらすための層であり、その材質は特に限定されない。
【0017】
また、「補強層」は、内面チューブ層および/または外面ゴム層よりも強度が高い材料で構成されていて、ホースの全体に強力の向上効果を与えている層をいい、具体的には、特に限定されるものではないが、例えば、繊維強化ゴム層、補強繊維層あるいは補強織物または編物層などの層である。
【0018】
また、本発明のホースにおいて、内面チューブ層と補強層の間に、必要に応じて、内面ゴム層が存在するように構成してもよいものである。
【0019】
内面チューブ層は、抗菌剤が含有された材料で構成されている。抗菌剤とは、抗菌機能を有する物質のことをいい、抗菌とは、菌の増殖を抑制、制菌あるいは静菌することをいい、より詳しくは、殺菌、滅菌、消毒、除菌、静菌、制菌、防腐あるいはサニタイズなどと呼ばれる全てを含む広い概念である。
【0020】
ただし、本発明では、海洋汚染などの問題が実際上存在しないものを使用するのが好ましく、例えば、銀系無機抗菌材料、アルミ系無機抗菌材料、亜鉛系無機抗菌材料、酸化チタン系抗菌材料、有機化合物などを使用するのが好ましく、これらの中から、使用する海域の特質等に合わせて、具体的に使用する抗菌剤を適宜に決定するのが良いものである。本発明者らの知見によれば、例えば、銀系無機抗菌材料、アルミ系抗菌材料、酸化チタン系抗菌材料などが最も好ましいものである。
【0021】
抗菌剤を含有させる量は、薬剤の種類にもよるので、一概に言えない点もあるが、一般的には、0.1〜10重量%(対内面チューブ層全体重量)程度の範囲内で十分である。
【0022】
本発明のホースにおいて、上述した抗菌剤が含有された材料で構成された内面チューブ層は、互いに剥離可能な複数層からなる積層多層構造として形成されていることが重要である。
【0023】
このような互いに剥離可能な積層多層構造とすることにより、海洋微生物がいったん付着した際には、それ以上、そのまま使用することなくあるいは別の新品ホースに交換することなく、該内面チューブ層の最内層をホースから剥離させて該最内層を除去して、次内層にあった内面チューブ層を最外層として現出させて、ホース本体自体はそのままで使用することができるのである。本発明のホースにおいては、これを内面チューブ層がなくなるまで繰り返して使用することができる。
【0024】
内面チューブ層を形成する材料は、剥離除去のしやすさなどの理由から静摩擦係数値が小さい材料から構成することも好ましく、より具体的には、JIS K7125:1999「プラスチック−フィルム及びシート−摩擦係数試験方法」による静摩擦係数が0.01〜0.3であるものを用いるのが好ましい。
【0025】
具体的素材としては、高密度ポリエチレン樹脂、ナイロン樹脂、フッ素樹脂などを使用するのが好ましいものである。
【0026】
本発明のホースにおいて、抗菌剤が含有された材料で構成された内面チューブ層を、互いに剥離可能な複数の積層からなる多層構造として形成させるに際しては、その形成手段は特に限定されるものではないが、フィルム状に片面粘着成型されたシートを螺旋状にホース内面に巻き付けていくことや、径の異なるチューブを多数用いて密着積層させて形成することができる。内面チューブ層の積層構造の積層数は、全体ホース径に応じても変わるべきものであり、一概には言えないが、5〜10層の範囲内が好ましい。また、各層の厚さは、0.1〜2mmの範囲内とするのが好ましい。
【0027】
最外層の内面チューブ層を剥離するに際しては、例えば、上述したフィルム状に片面粘着成型されたシートを螺旋状にホース内面に巻き付けて複数層を形成せしめた場合には、ホース端部にある螺旋状シート端部から該螺旋シートを引っ張って剥ぎ取っていくという手段や(この場合、船側である上方に引っ張るようにする方が、下方の海中側に引っ張るようにするのが実際的である)、あるいは、上述したように、径の異なるチューブを多数用いて密着積層させて形成せしめた場合には、ホース端部において、各層間に空気もしくは液体などの流体を注入することが可能な流体注入孔を設けておき、剥離希望時に、該流体注入孔に圧搾空気や高圧水などの高圧流体を注入して、積層界面を剥離させていくという方法などにより行なうことができる。
【0028】
本発明のホースは、使用期間が経過していくにつれて、ホース内面に水中に生息している微生物が付着するという事態が進行していくような分野での取水ホースとして用いるのが最適なものである。特に、海水中には微生物が多く生息しているので、例えば、浮遊式海上荷役設備(FPSO)システムにおいて、船内で使用する冷却水として使用するため海水を取水するホースとして、常時、船底から海中まで延ばして設置されて使用される海水取水ホースとして用いられると非常に効果的なものである。
【0029】
図1は、本発明のホースをFPSOシステムに使用しているときの状態を示したモデル図であり、本発明にかかるホース1が船底2に開けられた開口を介して船体3から延びていて、先端は取水口4となっているものである。
【0030】
図2は、ホース1の内面チューブを、片面粘着成型されたフィルム状シートを螺旋状にホース内面に巻き付けて内面チューブを形成せしめた場合の構造をモデル的に示した概略断面図である。同図において、補強層(図示せず)の内側に、螺旋状に粘着フィルム状シートが巻かれて1層を形成し、それを何層も繰り返して積層構造を形成させて、内面チューブ5を構成しているものである。
【0031】
図3は、径の異なるチューブを多数用いて密着積層させて内面チューブ5を形成せしめた場合において、ホース端部において、各層間に空気もしくは液体などの流体を注入するための流体注入孔8を設けた場合のホース端面構造をモデル的に示したものであり、6は外面ゴム層、7は補強層である。かかる態様において、流体注入孔8から、剥離希望時に圧搾空気や高圧水などの高圧流体を注入して、積層界面を剥離させて、新たな内面チューブ層を現出させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】図1は、本発明のホースをFPSOシステムに使用しているときの状態を示したモデル図である。
【図2】図2は、ホース1の内面チューブを、片面粘着成型されたフィルム状シートを螺旋状にホース内面に巻き付けて内面チューブを形成せしめた場合の構造をモデル的に示した概略断面図である。
【図3】図3は、径の異なるチューブを多数用いて密着積層させて内面チューブを形成せしめた場合において、ホース端部において、各層間に空気もしくは液体などの流体を注入するための流体注入孔を設けた場合のホース端面構造をモデル的に示したものである。
【符号の説明】
【0033】
1:ホース
2:船底
3:船体
4:取水口
5:内面チューブ
6:外面ゴム層
7:補強層
8:流体注入孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内面チューブ層、補強層および外面ゴム層を少なくとも有して構成されているホースにおいて、前記内面チューブ層が、抗菌剤が含有された材料で構成され、かつ互いに剥離可能な複数層の積層構造をなして形成されていることを特徴とするホース。
【請求項2】
内面チューブ層を形成する材料が、静摩擦係数が0.01〜0.3であるものであることを特徴とする請求項1記載のホース。
【請求項3】
ホースが、取水用ホースであることを特徴とする請求項1または2記載のホース。
【請求項4】
ホースが、海水の取水用であることを特徴とする請求項1または2記載のホース。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−200707(P2006−200707A)
【公開日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−15678(P2005−15678)
【出願日】平成17年1月24日(2005.1.24)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【Fターム(参考)】