説明

ホームエージェント及びモバイルノード

【課題】複数のインタフェースを有するモバイル機器が、複数のインタフェースを活用してモバイルIPを使用できるようにする。
【解決手段】セルラネットワーク112に接続することが可能な携帯電話インタフェースと、ローカルネットワーク122、132に接続することが可能な無線LANインタフェースとを有するMN(モバイルノード)100は、セルラネットワークのHA(ホームエージェント)やCN(コレスポンデントノード)160に対して、無線LANインタフェースのアドレスをCoA(気付アドレス)とするバインディングアップデートメッセージを送信する。また、このバインディングアップデートメッセージには、携帯電話インタフェースが現在ホームネットワークに接続していることを示す特殊なラベルが含まれている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パケット交換型データ通信ネットワークにおける通信技術に関する。より具体的には、本発明は、複数のアクセスインタフェースを有するモバイルノードによって行われる通信を制御するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、技術の進歩により、時間や場所を問わず、インターネットに接続可能となってきている。実際、ビジネス、学習、エンターテインメント及び個人的使用のためなど、日常生活の様々な状況において、人々は、インターネットへの常時接続に依存してきている。また、近年の無線技術の進歩により、移動中でもインターネットに接続が可能である。また、例えば、第3世代(3G:Third Generation)携帯電話ネットワーク、汎用パケット無線システム(GPRS:General Packet Radio Service)、IEEE(Institute of Electronic and Electronics Engineers)802.11a/b/g、ブルートゥースなどの広範囲なアクセス技術を利用してインターネットに接続する能力を備えたマルチモード端末も普及してきている。
【0003】
携帯端末、ノート型コンピュータ、携帯型情報端末(PDA:Personal Digital Assistants)などのネットワーク機能が拡張された様々な携帯型コンピューティングデバイスには、有線ネットワーク及び無線ネットワークの双方においてシームレスな通信をすることが求められており、その要求は高まっている。ビデオ会議などのマルチメディアコンテンツの利用の増加により、モバイル接続において、シームレス通信は必要不可欠なものとなっている。実際の移動管理では、ユーザが通信の中断を体感することのないシームレスハンドオフ機能が提供される必要がある。最近のモバイルデータネットワークは、一般的には、異なるデータ転送速度や異なる地理的範囲をカバーする複数の無線ネットワークがオーバラップする構成を有しており、各伝送媒体に対応するエアーインタフェースを介してのみアクセス可能である。
【0004】
また、現在、多数のデバイスが、IP(インターネットプロトコル:Internet Protocol)ネットワークを使用して、相互に通信を行っている。モバイル機器にモビリティサポートを提供するために、IETF(Internet Engineering Task Force)では、IPv6におけるモビリティサポートの拡張が進められている(下記の非特許文献1参照)。モバイルIPでは、各モバイルノードは、永続的なホームドメインを持っている。モバイルノードが、自身のホームネットワークに接続している場合、モバイルノードには、ホームアドレス(HoA:Home Address)としてプライマリグローバルアドレスが割り当てられる。なお、本明細書では、モバイルノードが、自身のホームネットワークに接続している状態を「アットホーム」と呼ぶこともある。
【0005】
一方、モバイルノードがホームネットワークから離れている場合、すなわち、他のフォーリンネットワークに接続している場合には、通常、モバイルノードには、気付アドレス(CoA:Care-of Address)として一時的なグローバルアドレスが割り当てられる。モビリティサポートの考えは、モバイルノードが他のフォーリンネットワークに接続している場合でも、自身のホームアドレスで、そのモバイルノードまで到達可能となるようにするものである。
【0006】
このような考えは、非特許文献1において、ホームエージェント(HA:Home Agent)として知られるエンティティを、ホームネットワークに導入することによって実践されている。モバイルノードは、バインディングアップデート(BU:Binding Update)メッセージを使用して、ホームエージェントへの気付アドレスの登録を行う。これにより、ホームエージェントは、モバイルノードのホームアドレスと気付アドレスとの間のバインディングを生成することが可能となる。ホームエージェントは、モバイルノードのホームアドレスに向けられたメッセージを受信(intercept)し、パケットのカプセル化(あるパケットを新たなパケットのペイロードとすることであり、パケットトンネリングとしても知られている)を用いて、そのパケットをモバイルノードの気付アドレスに転送する機能を担っている。
【0007】
また、バインディングアップデートメッセージは、コレスポンデントノード(CN:Correspondent Node)と呼ばれる通信相手(ピア:Peer)にも送信される。これにより、コレスポンデントノードは、モバイルノードのホームアドレスあてのパケットを、モバイルノードの気付アドレスに向けて送信することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】欧州特許公開1432198号
【特許文献2】国際特許公開00/042755号
【特許文献3】米国特許公開2004−0142657号
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Johnson, D, B., Perkins, C, E., and Arkko, J., “Mobility Support in IPv6”, Internet engineering Task Force Request For Comments 3775, June 2004
【非特許文献2】Wakikawa, R., “Multiple Care-of Address Registration”, Internet Draft: draft-wakikawa-mobileip-multiplecoa-03.txt (expired), July 2004
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、モバイルIPv6は、近年、より一般的となりつつある複数のアクセスインタフェースを有することが可能なモバイルノードを利用する場合には不向きである。例えば、最近のノート型コンピュータは、IEEE802.11a/b/g及びブルートゥースの両方のインタフェースを備えている。また、3G、ブルートゥース、及び無線LAN(Local Area Network)機能を備えた電話機が既に市販されている。
【0011】
また、いくつかの従来の技術において、モバイルIPを有する複数のアクセスインタフェースの使用が試みられている。特許文献1には、異なるホームアドレスを使用しているデータフローに係るハンドオーバ方法が開示されている。この方法では、ハンドオーバの負荷を緩和するためにモバイルノードが複数のアクセスを利用することを可能とするが、モバイルノードがどのようにして複数のインタフェースを同時に使用するのかに関しては開示されていない。
【0012】
また、特許文献2には、モバイルノードが自身のホームエージェントに対して接続情報を送信することによって、このホームエージェントがこの接続情報に基づいてパケットを転送できるようにするメカニズムが開示されている。しかしながら、このメカニズムはホームエージェントにのみ限定して適用可能である。したがって、コレスポンデントノードがこの接続情報をどのようにして受信できるのかに関しては不明瞭である。
【0013】
さらに、特許文献3には、モバイルノードが、自身のホームエージェント及びコレスポンデントノードに対して、異なる気付アドレスを選択的に登録する方法が開示されている。また、非特許文献2には、モバイルノードが、ホームエージェント及びコレスポンデントノードに、複数の気付アドレスと1つのホームアドレスとの関連付けを行わせる方法が提案されている。
【0014】
特許文献3及び非特許文献2には、モバイルノードが一度に複数のアドレスを使用することを可能とする方法が記載されているが、これらの方法には2つの大きな制限が存在する。
【0015】
1つ目は、あるインタフェースがアットホームな状態にある場合には、気付アドレスの登録が行えない点である。モバイル機器は、ホットスポットを渡り歩くための無線LANインタフェースと、3G(又は、GPRS)接続用のインタフェースとを備えていることが一般的に考えられる。通常、3G接続によって、モバイルIPサービスが提供される。しかしながら、3G及びGPRSでは、一般的に広範囲なサービスエリアが提供されるので、モバイル機器は常時ホームネットワークに接続されているのが一般的である。この場合、特許文献3及び非特許文献2に係る技術を利用することはできない。
【0016】
2つ目は、特許文献3及び非特許文献2に係る技術では、ホームエージェントの存在が前提とされている点である。サービスプロバイダはモバイルIPサービスの提供を試みようとする傾向にあるが、多くの携帯電話通信業者は、現時点では、契約者に対してホームエージェントの提供(ホームエージェントサービス)ができていない。ホームエージェントが利用可能でない場合には、特許文献3及び非特許文献2に係る技術を利用することはできない。
【0017】
上記課題に鑑み、本発明は、従来技術の問題を解決すること、又は少なくとも実質的に改善することを目的とする。具体的には、本発明は、複数のインタフェースを有するモバイル機器が、あるインタフェースがホームネットワークに接続しているか否かにかかわらず、複数のインタフェースを活用してモバイルIPを使用できるようにすることを目的とする。また、本発明は、上記の目的を達成する方法と同様の方法を利用して、複数のインタフェースを有するモバイル機器が、そのサービスプロバイダがモバイルIPv6サービスを提供しているか否かにかかわらず、複数のインタフェースを活用してモバイルIPを使用できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記目的を達成するため、本発明のホームエージェントは、モバイルノードのホームアドレス宛のパケットを前記モバイルノードの複数のネットワークインタフェースの一つに転送するホームエージェントであって、
前記ホームアドレスと気付アドレスとの関連付けを示す情報を含むメッセージであって、前記メッセージのホームアドレスオプションに含まれている前記ホームアドレスが前記メッセージの気付けアドレスフィールドに挿入されている前記メッセージを前記モバイルノードから受信する受信部を有している。
【0019】
さらに、本発明のホームエージェントは、前記パケットをホームネットワーク又はフォーリンネットワークを介して前記モバイルノードに転送する転送部をさらに有している。
【0020】
また、上記目的を達成するため、本発明のモバイルノードは、モバイルIPを実装した移動可能なモバイルノードであって、
複数のネットワークインタフェースと、ホームアドレスと気付アドレスとの関連付けを示す情報を含むメッセージを送信する手段とを有している。
【発明の効果】
【0021】
本発明は、複数のインタフェースを有するモバイル機器が、あるインタフェースがホームネットワークに接続しているか否かにかかわらず、複数のインタフェースを活用してモバイルIPを使用できるようになるという効果を有している。また、本発明は、複数のインタフェースを有するモバイル機器が、そのサービスプロバイダがモバイルIPv6サービスを提供しているか否かにかかわらず、複数のインタフェースを活用してモバイルIPを使用できるようになるという効果を有している。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施の形態におけるネットワーク構成の一例を示す図
【図2】本発明の実施の形態において用いられるBUメッセージの内容の一例を示す図
【図3】本発明の実施の形態において、特殊なBUメッセージが使用された場合の効果を模式的に示すネットワーク構成図
【図4】本発明の実施の形態において、ホームエージェントが存在しない場合の動作モードを模式的に示すネットワーク構成図
【図5】本発明の実施の形態におけるモバイルノードの機能アーキテクチャの一例を示す図
【図6】本発明の実施の形態において、インタフェースコントローラがパケット送信のためにネットワークインタフェースを適宜選択するために使用可能なアルゴリズムの一例を示すフローチャート
【図7】本発明の実施の形態において、インタフェースコントローラが新たなセッションの予定期間にアプリケーションレイヤが使用する送信元アドレスを選択するために使用可能なアルゴリズムの一例を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態について説明する。図1は、本発明の実施の形態におけるネットワーク構成の一例を示す図である。図1に示すように、モバイルノード(MN)100は、2つのネットワークアクセスインタフェースを備えている。第1のアクセスインタフェースは、広範囲なサービスエリア114をカバーするアクセスルータ(AR)110に接続される。第1のアクセスインタフェースは、例えば、3Gネットワークなどを利用したパケット交換型携帯電話ネットワーク(セルラネットワーク)112に接続可能である。以下、第1のアクセスインタフェースを、C−インタフェースと呼ぶ。
【0024】
一方、第2のアクセスインタフェースは、範囲が狭いサービスエリア124をカバーするアクセスルータ(AR)120に接続される。第2のアクセスインタフェースは、例えば、802.11/a/b/gなどの無線ローカルエリアネットワークに接続可能である。また、図1に図示されている他のアクセスルータ(AR)130は、AR120と同一のアクセス技術を利用するものである。AR130は、範囲が狭いサービスエリア134をカバーする。以下、第2のインタフェースを、W−インタフェースと呼ぶ。
【0025】
MN100は、AR110を介して、AR110が属するセルラネットワーク112を経由してインターネット150などのグローバル通信ネットワークに接続可能である。また、MN100は、AR120を介して、AR120が属するローカルネットワーク122を経由してインターネット150に接続することも可能である。
【0026】
MN100が、インターネット150上のコレスポンデントノード(CN)160と通信を行っている場合、CN160は、モバイルノード100との接続を確立するために、複数のインタフェースや複数の接続を用いて、複数のルートを利用することが可能である。第1のルートは、図1に示すように、MN100のC−インタフェースが使用され、セルラネットワーク112及びAR110を介して経路116を経由する。一方、第2のルートは、図1に示すように、MN100のW−インタフェースが使用され、ローカルネットワーク122及びAR120を介して経路126を経由する。
【0027】
一般的に、AR110とMN100との間のC−インタフェースのリンクは、AR120とMN100との間のW−インタフェースのリンクと比べて帯域幅が狭く、経路116の伝送速度は、経路126と比較して遅い。しかしながら、サービスエリア124はサービスエリア114と比較して狭いので、MN100が移動した場合には、MN100及びAR120間のW−インタフェースは切断されやすい。図1に示すように、MN100がサービスエリア124の外に出て、サービスエリア134内に入った場合には、AR120との接続が切断され、AR130との新たな接続が確立される。その結果、経路126は切断される。
【0028】
このとき、通信セッションの切断を防止するために、CN160は、経路126の代わりに経路116を利用することも可能である。しかしながら、この方法では、利用可能な帯域幅が狭くなってしまう。そこで、この問題を解消するため、本発明の好適な実施の形態では、MN100が、セルラネットワーク112によって提供されるホームエージェント(HA)118に対して、特殊なバインディングアップデート(BU)メッセージを送信する。このBUメッセージでは、MN100は、ローカルネットワーク122に接続されたネットワークインタフェースで構成されたアドレスを気付アドレス(CoA)として登録する。なお、セルラネットワーク112に接続されたネットワークインタフェースのアドレスが、ホームアドレス(HoA)であることは自明である。MN100は現在セルラネットワーク112に接続されているので(つまり、MN100はホームネットワークに接続されているので)、非特許文献1の技術によれば、上述のような形態でのバインディングアップデートを行うことはできない。しかしながら、本発明では、MN100が、1つ以上のCoAをBUメッセージ内に登録できるようにすることで、この問題を解消する。BUメッセージには、MN100が2つのインタフェースを備えていることが記載される。一方のインタフェースは、ローカルネットワーク122に接続されたW−インタフェースから構成されたCoAを有している。また、他方のインタフェース(すなわち、C−インタフェース)は、セルラネットワーク112に接続されており、「アットホーム」ラベルとして識別される特殊なCoAを有している。HA118は、このようなBUメッセージを受信した場合には、MN100が2つのアドレスによって到達可能である旨を把握する。一方のアドレスは、特殊な「アットホーム」ラベルに関連したMN100のHoAであり、もう1つは、ローカルネットワーク122からのCoAである。
【0029】
また、図2は、本発明の実施の形態において用いられるBUメッセージの内容の一例を示す図である。図2に図示されているBUメッセージ200の送信元アドレスフィールド202及びあて先アドレスフィールド204には、それぞれMN100のアドレス及びHA118のアドレスが含まれる。また、BUメッセージには、MN100のHoAを伝達するため、ホームアドレスオプション(HAO)210が含まれている。
【0030】
また、BUメッセージの実際の内容は、モビリティヘッダ220に格納される。タイプフィールド222は、このメッセージがバインディングアップデートメッセージであることを示し、長さフィールド224は、モビリティヘッダ220のサイズを示すものである。また、シーケンスナンバーフィールド226は、BUメッセージを識別するために単調に増加する数値であり、リプレイアタックを防ぐためのものである。また、ライフタイムフィールド228は、BUメッセージ内に記載されるバインディングの有効期間を示すものである。
【0031】
また、BUメッセージ200には、0又は1つ以上の気付アドレスオプション240が含まれ得る。ここでは、一例として、2つの気付アドレスオプション240−1、240−2が図示されている。各気付アドレスオプション240には、ネットワークインタフェースを識別するためのインタフェースIDフィールド242と、このインタフェースに関連したCoAを特定するためのアドレスフィールド244とが含まれている。なお、インタフェースIDは、モバイルノードによって一意的に割り当てられたものであることが望ましい。また、気付アドレスオプション240には、優先値を含むためのフィールドなどのその他のフィールドが含まれてもよいが、図2では図示省略されている。また、インタフェースIDを特定する必要がない場合には、インタフェースIDフィールド242を省略することが可能である。
【0032】
図1に示す例において、MN100は、HA118に、2つの気付アドレスオプションを含むBUメッセージ200を送信する。第1の気付アドレスオプション240−1は、AR110に接続されたC−インタフェースを識別するためのインタフェースIDフィールド242−1を有している。また、アドレスフィールド244−1には、「アットホーム」ラベルとして識別される特殊なラベルが含まれる。これにより、HA118には、C−インタフェースが、ホームネットワークと現在接続中である旨が通知される。
【0033】
また、第2の気付アドレスオプション240−2は、AR120に接続されたW−インタフェースを識別するためのインタフェースIDフィールド242−2を有している。また、アドレスフィールド244−2には、ローカルネットワーク122から設定されたCoAが含まれている。
【0034】
特殊な「アットホーム」ラベルは、例えば、あらかじめ定められた任意のビットパターンである。例えば、好適には、「アットホーム」ラベルは、「オール0」又は「オール1」のアドレスである。なお、「アットホーム」ラベルを、MN100のHoAと同一のものと定義する方法も望ましい方法である。なお、上述においては2つの気付アドレスが1つのBUメッセージに挿入される例が記載されているが、当業者にとっては、それぞれに1つのCoAが記載された2つのBUメッセージを用いた場合でも同様の効果が実現可能であることは明らかである。
【0035】
また、図3は、本発明の実施の形態において、特殊なBUメッセージが使用された場合の効果を模式的に示すネットワーク構成図である。図3において、CN160は、MN100のHoAあてにパケットを送信している。このパケットは、経路300を経由してHA118に到達する。HA118は、パケットを受信(intercept)し、自身のバインディングキャッシュのテーブルを参照する。そして、HA118は、MN100が2つの接続状態にあるインタフェースを備えており、一方のインタフェースは、ローカルネットワーク122からの特定のCoAを有し、他方のインタフェースは「アットホーム」ラベルを有していることを検出する。
【0036】
そして、HA118は、例えば、優先度の設定やパケットに付与されたフローラベルなどの所定の基準に基づいて、経路310又は経路320を介してパケットを転送する。経路310が選択された場合は、あて先アドレス(すなわちMN100のHoA)に変更がないので、HA118はパケットをカプセル化する必要がない。一方、経路320が選択された場合には、HA118は、パケットをカプセル化して、ローカルネットワーク122を経由してMN100のCoAあてに転送する必要がある。このとき、W−インタフェースのほうが広帯域(high-bandwidth)なので、通常は経路320が選択されることが望ましい。なお、MN100がサービスエリア134に移動してAR130に接続した後でも、MN100がW−インタフェース上のCoAを変更後にHA118に対して新たなBUメッセージで更新を行わない限り、パケットの配送は中断されない。
【0037】
また、MN100が同様のBUメッセージをCN160に送信した場合においても同様の効果が生じ得ることは、当業者にとって明白である。この場合、CN160は、C−インタフェースを用いてAR110を経由する経路と、W−インタフェースを用いてAR120を経由する経路との両方によって、MN100が通信可能な状態にあることが分かる。このとき、W−インタフェースのリンクのほうが広帯域なので、通常はAR120を経由する経路が選択されることが望ましい。なお、MN100がサービスエリア134に移動してAR130に接続した後でも、MN100がW−インタフェース上のCoAを変更後にCN160に対して新たなBUメッセージで更新を行わない限り、パケットの配送は中断されない。
【0038】
上述の本発明に係る好適な動作モードでは、ホームエージェントが「アットホーム」ラベルを理解する必要がある。次に、ホームエージェントが、「アットホーム」ラベルを理解しない場合の別の好適な動作モードについて説明する。なお、この動作モードは、MN100がホームネットワークに接続されている場合であっても、ホームネットワーク上のHAに対して、MN100がホームネットワーク上に存在しないように判別させる(だます)ためのものである。
【0039】
MN100は、通常、そのC−インタフェースを介してホームネットワーク(例えば、セルラネットワーク112)に接続する際には、使用すべきHoAが前もって割り当てられている。本発明の別の動作モードでは、MN100は、AR110によって通知されたプレフィックスに基づいて、C−インタフェース上で第2のアドレスを自動設定する。なお、第2のアドレスは、割り当てられたHoAとは異なるものでなくてはならない。MN100は、第2のアドレスを、C−インタフェース用のCoAとして用いる。その結果、MN100は、上述した動作モードの場合と同様のBUメッセージをHA118に送信する。
【0040】
このBUメッセージには、2つの気付アドレスオプション240−1、240−2が含まれている。第1の気付アドレスオプション240−1は、AR110に接続されたC−インタフェースを識別するためのインタフェースIDフィールド242−1と、C−インタフェースで自動設定された第2のアドレスを含むアドレスフィールド244−1とを有している。一方、第2の気付アドレスオプション240−2には、AR120に接続されたW−インタフェースを識別するためのインタフェースIDフィールド242−2と、ローカルネットワーク122から設定されたCoAを含むアドレスフィールド244−2とを有している。なお、上述においては2つの気付アドレスが1つのBUメッセージに挿入される例が記載されているが、当業者にとっては、それぞれに1つのCoAが記載された2つのBUメッセージを用いた場合でも同様の効果が実現可能であることは明らかである。
【0041】
このBUメッセージに係る効果に関して、再度図3を参照しながら説明する。CN160は、MN100のHoAあてにパケットを送信している。パケットは、経路300を経由してHA118に到達する。HA118は、パケットを受信(intercept)し、自身のバインディングキャッシュのテーブルを参照する。そして、HA118は、MN100が2つの接続状態にあるインタフェースを備えており、一方のインタフェースにはC−インタフェースで使用される第2のCoAを有しており、他方のインタフェースにはW−インタフェースで使用されるCoAを有していることを検出する。
【0042】
そして、HA118は、例えば、優先度の設定やパケットに付与されたフローラベルなどの所定の基準に基づいて、経路310又は経路320を介してパケットを転送する。このとき、いずれの経路が選択された場合でも、あて先アドレスが変更されるので、HA118は、元々のパケットをカプセル化する必要がある。このとき、W−インタフェースのほうが広帯域なので、通常は経路320が選択されることが望ましい。なお、MN100がサービスエリア134に移動してAR130に接続した後でも、MN100がW−インタフェース上のCoAを変更後にHA118に対して新たなBUメッセージで更新を行わない限り、パケットの配送は中断されない。
【0043】
この好適な動作モードによって、MN100は、C−インタフェースがセルラネットワーク112に接続されている場合であっても、HA118に対してMN100がホームネットワーク上に存在しないように判別させる(だます)ことが可能となる。なお、MN100が、同様のBUメッセージをCN160に送信した場合においても同様の効果が得られることは、当業者にとって明白である。この場合、CN160は、C−インタフェースを用いてAR110を経由する経路と、W−インタフェースを用いてAR120を経由する経路との両方によって、MN100が通信可能な状態にあることが分かる。このとき、W−インタフェースのリンクのほうが広帯域なので、通常はAR120を経由する経路が選択されることが望ましい。なお、MN100がサービスエリア134に移動してAR130に接続した後でも、MN100がW−インタフェース上のCoAを変更後にCN160に対して新たなBUメッセージで更新を行わない限り、パケットの配送は中断されない。
【0044】
以上、本発明の2つの好適な動作モードについて説明を行ったが、これらの動作モードでは、複数のCoAの登録をサポートしているホームエージェントの存在が必要である。次に、ホームエージェントが複数のCoAの登録をサポートしていない場合の別の好適な動作モードについて説明する。この動作モードでは、ホームエージェントが存在しなくてもよい。この動作モードを、図4に示す。
【0045】
図4は、本発明の実施の形態において、ホームエージェントが存在しない場合の動作モードを模式的に示すネットワーク構成図である。MN100は、例えばCN160との間で、比較的長期間継続してセッションを確立したい場合、まず、C−インタフェースのアドレスを用いてセッションを確立する。次に、広帯域なW−インタフェースを使用するために、MN100は、非特許文献1に記載されているように、CN160との間でリターンルータビリティ手順を行う。しかしながら、本発明は、非特許文献1の要請とは異なり、実際のところ、MN100がリターンルータビリティ手順を行うために、ホームエージェントとの間で双方向トンネルを確立する必要がないという利点を有している。MN100は、単に、C−インタフェースを介してCN160にホームテストイニット(HoTI:Home Test Init)メッセージ400を送信する。なお、従来の技術では、ホームエージェントを介してHoTIメッセージを送信する必要がある。さらに、MN100は、W−インタフェースを介して、気付テストイニット(CoTI:Care-of Test Init)メッセージ420を送信する。ここで、HoTIメッセージ400は、C−インタフェースのアドレスに等しい送信元アドレスを有し、一方、CoTIメッセージ420は、W−インタフェースのアドレスに等しい送信元アドレスを有する。また、HoTIメッセージ400及びCoTIメッセージ420は両方共、CN160のアドレスに等しいあて先アドレスを有する。
【0046】
リターンルータビリティ手順によれば、CN160は、MN100のC−インタフェースのアドレスに送信されるホームテスト(HoT:Home Test)メッセージ410を用いて、HoTIメッセージ400に対して応答を行う。このHoTメッセージ410は、セルラネットワーク112を介してMN100に到達する。なお、従来の技術によれば、HoTメッセージは、ホームエージェントによって受信(intercept)され、モバイルノードのCoAに転送される必要がある。本発明では、MN100がセルラネットワーク112に直接接続されているので、HoTメッセージ410は、ホームエージェントによって受信(intercept)されて転送される必要がなく、MN100のC−インタフェースに直接送信される。
【0047】
さらに、CN160は、MN100のC−インタフェースのアドレスに送信される気付テスト(CoT:Care-of Test)メッセージ430を用いて、CoTIメッセージ420に対して応答を行う。MN100は、HoTメッセージ410及びCoTメッセージ430の両方を受信した後、BUメッセージ440をCN160に送信することで、リターンルータビリティ手順を完了する。BUメッセージ440は、W−インタフェースのアドレスに等しい送信元アドレスを有する。なお、W−インタフェースのアドレスがCoAとして機能する。また、BUメッセージ440には、C−インタフェースのアドレスに等しいHoAが記載されたホームアドレスオプション(HAO)が含まれている。
【0048】
この好適な動作モードによって、MN100は、ホームエージェントが存在するか否かにかかわらず、効率的に、広範囲(long-ranged)対応(すなわち、広いサービスエリア)のC−インタフェースのアドレスをHoAとして使用するとともに、狭範囲対応(すなわち、狭いサービスエリア)のW−インタフェースのアドレスをCoAとして使用することができるようになる。C−インタフェースは、広範囲で利用可能なので、HoAを頻繁に変更する必要がなく、したがって、長期にわたってセッションの継続が可能となる。さらに、CoAが広帯域のW−インタフェースに由来するアドレスであり、これによって、より高速な伝送速度でのセッションが実現可能となる。また、その後、MN100がサービスエリア124から移動し(したがって、AR120との接続が切断され)、新たなサービスエリア134内に入る(したがって、AR130と接続する)場合には、MN100は、W−インタフェースの新たなアドレスをCoAとして記載した新たなBUメッセージ450を送信することができるので、引き続き、移動前と同一のセッションを継続することが可能となる。
【0049】
次に、図5を参照しながら、本発明の好適な実施の形態を実現するためのMN100の機能アーキテクチャについて説明する。図5は、本発明の実施の形態におけるモバイルノードの機能アーキテクチャの一例を示す図である。MN100は、複数のネットワークインタフェース510−1〜510−nと、インタフェースコントローラ520と、IPスタック530と、トランスポートスタック540と、アプリケーションレイヤ550とを有している。なお、上記のnは、1よりも大きい整数値である。
【0050】
各ネットワークインタフェース510−x(xは、1〜nの間の任意の整数)は、アクセス技術を利用してMN100が他のノードと通信を行うために必要なすべてのハードウェア、ソフトウェア及びプロトコルを示す機能ブロックである。例えば、国際標準化機構(ISO:International Standards Organization)による7階層のOSI(Open System Interconnect)モデルにおいて、ネットワークインタフェース510−xは、物理層及びデータリンク層を包含する。一例として、ネットワークインタフェース510−1は、3Gアクセスのための物理的なハードウェア及びソフトウェアドライバを表しており、ネットワークインタフェース510−2は、802.11gアクセスのための物理的なハードウェア及びソフトウェアドライバを表している。
【0051】
また、インタフェースコントローラ520は、パケット送受信のためのインタフェースを選択する。なお、従来の技術においては、この動作は、一般的にIPスタック530の動作であったが、本発明では、後述のように、インタフェースコントローラ520によって実施される独立した機能として実現される。ネットワークインタフェース510−xのいずれかによって受信されたパケットは、パケットデータ経路515−xを介してインタフェースコントローラ520に渡される。また同様に、インタフェースコントローラ520がパケットを送信するためのネットワークインタフェース510−xを選択した後、パケットは、パケットデータ経路515−xを介して、インタフェースコントローラ520からネットワークインタフェース510−xに渡される。
【0052】
IPスタック530は、インターネットワーキングレイヤにおけるルーティングに関するすべての処理を行う。OSIモデルにおいては、IPスタック530は、ネットワークレイヤにおけるすべての機能を包含するものである。IPスタック530は、基本的には、IPv6の機能を実現するものである。また、MN100はモバイルなので、IPスタック530には、非特許文献1に記載されているモバイルIPv6の機能を実現するモバイルIPモジュール535が含まれている。インタフェースコントローラ520によって受け取られたすべてのパケットは、パケットデータ経路525を介してIPスタック530に渡される。また同様に、IPスタックが配送する必要があるすべてのパケットは、パケットデータ経路525を介してインタフェースコントローラ520に渡される。なお、インタフェースコントローラ520は、モバイルIPモジュール535との間で、パケットを直接受け渡しする必要が生じる場合もある。この場合には、パケットの受け渡しは、パケットデータ経路526を経由して行われる。
【0053】
また、トランスポートスタック540は、TCP(Transfer Control Protocol:伝送制御プロトコル)、UDP(User Datagram Protocol:ユーザデータグラムプロトコル)などのすべてのトランスポートセッションプロトコルを取り扱う。OSIモデルにおいては、トランスポートスタック540は、セッションレイヤ及びトランスポートレイヤにおけるすべての機能を包含する。トランスポートスタック540が送信すべきデータを有する場合、トランスポートスタック540は、IPスタック530に対して、データ経路545を介してそのデータを渡す。また同様に、IPスタック530が、トランスポートスタック540へのデータを受信した場合には、データ経路545を介してそのデータを渡す。
【0054】
また、アプリケーションレイヤ550は、他のノードとのネットワーク通信に必要となるすべてのソフトウェア及びユーザプログラムを表している。OSIモデルにおいては、アプリケーションレイヤ550は、アプリケーションレイヤ及びプレゼンテーションレイヤのすべての機能を包含する。アプリケーションレイヤ550が送信すべきデータを有している場合、アプリケーションレイヤ550は、通常、パケット化のためにトランスポートスタック540に対して、データ経路555を介してデータを渡す。なお、アプリケーションレイヤ550は、IPスタック530に対して、データ経路556を介して直接データを渡す場合もある。また同様に、アプリケーションレイヤ550は、データ経路555を介してトランスポートスタック540から、又はデータ経路556を介してIPスタック530から、受信データを取得する。さらに、アプリケーションレイヤ550が、インタフェースコントローラ520との間で、所定の信号の送受信を行えるように、シグナル経路557も設けられている。このシグナル経路557の使用については、後述する。
【0055】
本発明によれば、モバイルノードが、あるインタフェースのアドレスをHoAとして使用し、かつ、別のインタフェースのアドレスをCoAとして使用できるようになる。したがって、従来の技術で元々想定されていた、アドレスとネットワークインタフェースとの関係は成立しない。また、本発明では、パケットを送信する必要がある場合に、ネットワークインタフェースを選択するメカニズムが必要となる。好適な一例は、このような機能をインタフェースコントローラ520において実現することである。
【0056】
図6は、本発明の実施の形態において、インタフェースコントローラがパケット送信のためにネットワークインタフェースを適宜選択するために使用可能なアルゴリズムの一例を示すフローチャートである。図6に図示されているように、まずステップ610において、パケットの送信元アドレスがHoAに等しいか否かのチェックが行われる。このHoAは、サービスプロバイダがモバイルIPv6サービスを提供している場合にはサービスプロバイダに指定されたものであり、また、MN100によって選択されたものであってもよい(例えば、通常は、最も広範囲な接続性を提供するネットワークインタフェース510−xのアドレスが選択される)。
【0057】
ここで、送信元アドレスがHoAと等しくない場合には、ステップ640に進み、送信元アドレスがどのインタフェースによって設定されているかに応じて、ネットワークインタフェース510−xが選択される。一方、送信元アドレスがHoAと等しい場合には、ステップ620に進む。このステップ620では、あて先アドレスが、バインディングアップデートリストに存在するか否かのチェックが行われる。バインディングアップデートリストに存在しない場合には、ステップ640に進み、送信元アドレスがどのインタフェースによって設定されたかに応じて、ネットワークインタフェース510−xが選択される。一方、あて先アドレスがバインディングアップデートリストに存在する場合には、ステップ630に進み、パケットの送信元アドレス(HoA)が、バインディングアップデートリストに記載されているCoAに変更されるとともに、ホームアドレスオプション(HAO)がパケットヘッダに挿入される。次に、ステップ640に進み、送信元アドレス(CoA)がどのインタフェースによって設定されたかに応じて、ネットワークインタフェース510−xが選択される。
【0058】
本発明によれば、モバイルノードは、広範囲インタフェースによって設定されたHoAの使用による長期的なセッションの継続と、広帯域インタフェースによって設定されたCoAの使用による高速伝送速度とを享受することが可能となるが、オーバヘッドが発生するものでもある。このオーバヘッドは、バインディングアップデートメッセージのためのシグナリングメッセージ、リターンルータビリティ手順のために必要とされるなどの形で現れる。しかしながら、このようなオーバヘッドは、セッションの長期的な継続が要求される場合には容認可能なものである。一方、セッションの継続が必要でない場合には、このようなオーバヘッドは、特別な利益をもたらすものではない。
【0059】
例えば、典型的なウェブブラウジングアプリケーションの場合、ブラウザは、ウェブサーバに対して単にウェブリクエストを送信するだけでよく、ウェブサーバは、要求されたウェブページを応答するのみである。この往復時間は、一般的なウェブページであれば短時間であり、検索プロトコルは、主に、コンテンツの一部の検索を行うにすぎない。したがって、アプリケーションは、大きなイメージファイルのダウンロードを途中で中断することができるとともに、後に新たな送信元アドレスを用いてこのダウンロードを再開することができる。この種のアプリケーションでは、セッションの継続性は要求されず、本発明によって生じるシグナリングのオーバヘッドの影響が大きく現れる(これは、実際のデータ伝送期間は短いからである)。一方、リアルタイムマルチメディアストリーム、VoIP(Voice over IP)、又はビデオ会議アプリケーションなどのようなアプリケーションにおいては、セッションの長期的な継続が必要とされる。
【0060】
以上のことから、本発明では、本発明に係る動作の実行/停止を切り替えるメカニズムがアプリケーションに提供される。好適な動作モードの一例は、図5に示すシグナル経路557を利用することである。このシグナル経路557は、新たなセッションが確立された際に、アプリケーションレイヤ550がインタフェースコントローラ520に対して、使用すべき送信元アドレスを決定するように問い合わせを行うために用いられる。この問い合わせの際には、インタフェースコントローラ520に、セッションがどのくらい継続することが予想されるかの通知が行われる。インタフェースコントローラ520は、この情報に基づいて、本発明によって特定されたメカニズムを作動させるか否かを決定する。なお、インタフェースコントローラ520は、広帯域ネットワークインタフェースが同一のアクセスルータのサービスエリア内の滞在予定期間を推測できることが望ましい。これは、例えば、インタフェースコントローラ520が、MN100の移動速度や、所定のネットワークインタフェースの動作パラメータ(送信電力や動作周波数など)を推定することができる場合に算出可能である。
【0061】
なお、シグナル経路557は、単に概念的な表現にすぎず、他のメカニズムを用いても実施可能であることは、当業者にとって明白である。例えば、ユニックス(Unix)(登録商標)環境においては、ネットワークプロトコルスタック内の異なるレイヤ間でメッセージの受け渡しを行うために、ソケットバッファと呼ばれるデータ構造を利用してカーネル(kernel)が実行される。ここでは、シグナル経路557は、アプリケーションによって設定され、インタフェースコントローラ520によって読み出されるソケットバッファのフィールドによって実現可能である。
【0062】
また、図7は、本発明の実施の形態において、インタフェースコントローラが新たなセッションの予定期間にアプリケーションレイヤが使用する送信元アドレスを選択するために使用可能なアルゴリズムの一例を示すフローチャートである。図7に図示されているように、まずステップ710において、セッションの予定期間が長期にわたるものか否かのチェックが行われる。なお、ここで、長期とは、セッションの予定期間が、同一のサービスエリア内に広帯域インタフェース(W−インタフェースなど)が滞在する予定期間よりも長いことを意味する。
【0063】
セッションが長期にわたって継続しない場合には、ステップ720に進み、広帯域インタフェース(W−インタフェースなど)のアドレスが、セッションの送信元アドレスとして用いられる。一方、セッションが長期にわたって継続する場合には、ステップ730に進み、モバイルノードは、サービスプロバイダがモバイルIPサービスを提供しているか否かのチェックを行う。具体的には、ホームエージェントのサービスが存在するか否か(すなわち、ホームエージェントが存在するか否か)のチェックが行われる。モバイルIPサービス(モビリティサービス)が提供されていない場合には、ステップ770に進み、一方、モビリティサービスが提供されている場合には、ステップ740に進む。
【0064】
ステップ770では、広範囲インタフェース(C−インタフェースなど)のアドレスがHoAとして選択される。そして、例えば図4に示されているように、通信相手に対してリターンルータビリティ手順(RR手順)が開始される。また、この場合には、セッションにおいては、選択されたHoAがモバイルノードのアドレス(送信元アドレス)として用いられる。
【0065】
一方、ステップ740では、ホームエージェントが「アットホーム」ラベルをサポートしているか否かのチェックが行われる。ホームエージェントが「アットホーム」ラベルをサポートしている場合には、ステップ750に進み、2つの気付アドレスオプションを含むBUメッセージがホームエージェントに送信される。このとき、気付アドレスオプションの1つに「アットホーム」ラベルが記載され、別の気付アドレスオプションには、広帯域インタフェースのアドレスがCoAとして記載される。また、この場合には、セッションにおいては、ホームエージェントに関連付けられたHoA(C−インタフェースのHoA)が、モバイルノードのアドレス(送信元アドレス)として用いられる。
【0066】
一方、ホームエージェントが「アットホーム」ラベルをサポートしていない場合には、ステップ760に示すように、ホームエージェントが複数CoAの登録をサポートしているか否かのチェックが行われる。ホームエージェントが複数CoAの登録をサポートしていない場合は、ステップ770に進み、複数CoAの登録をサポートしている場合には、ステップ780に進む。なお、モバイルノードが「アットホーム」ラベルの使用をサポートしない場合には、「アットホーム」ラベルに関する動作を行うための手段は、モバイルノードに実装される必要はない。
【0067】
ステップ780において、モバイルノードは、まず、広範囲インタフェース(C−インタフェースなど)において新たなアドレスを自動設定する。この新たなアドレスは、広帯域インタフェースのアドレスに加え、広範囲インタフェースのHoAに対する代わりのCoAとして用いられる。これは、ホームエージェントに、2つの気付アドレスオプションを含むバインディングアップデートメッセージを送信することで実行される。このとき、第1のアドレスオプションには、新たに設定された広範囲インタフェースのアドレスが記載され、第2の気付アドレスオプションには、広帯域インタフェースのアドレスが記載される。また、この場合には、セッションにおいては、ホームエージェントに関連付けられたHoA(C−インタフェースのHoA)が、モバイルノードのアドレス(送信元アドレス)として用いられる。
【0068】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、構成やパラメータなどの詳細に関して様々な変更が可能であることは、当業者にとって自明である。例えば、上述の説明では、モバイルノードがネットワークインタフェースを2つのみ備えている場合を例にして説明を行ったが、3つ以上のネットワークインタフェースを備えている場合でも本発明を適用可能であることは、当業者にとって自明である。さらに、本発明が、モバイルノードが実際には複数のネットワークインタフェースを備えたモバイルルータである場合にも適用可能であることは、当業者にとって自明である。
【0069】
なお、上記の本発明の実施の形態の説明で用いた各機能ブロックは、典型的には集積回路であるLSI(Large Scale Integrated Circuit)として実現される。これらは個別に1チップ化されてもよいし、一部又はすべてを含むように1チップ化されてもよい。なお、ここでは、LSIとしたが、集積度の違いにより、IC(Integrated Circuit)、システムLSI、スーパーLSI、ウルトラLSIと呼称されることもある。
【0070】
また、集積回路化の手法はLSIに限るものではなく、専用回路又は汎用プロセッサで実現してもよい。LSI製造後に、プログラムすることが可能なFPGA(Field Programmable Gate Array)や、LSI内部の回路セルの接続や設定を再構成可能なリコンフィギュラブル・プロセッサを利用してもよい。
【0071】
さらには、半導体技術の進歩又は派生する別技術によりLSIに置き換わる集積回路化の技術が登場すれば、当然、その技術を用いて機能ブロックの集積化を行ってもよい。例えば、バイオ技術の適応などが可能性としてあり得る。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明は、複数のインタフェースを有するモバイル機器が、あるインタフェースがホームネットワークに接続しているか否かにかかわらず、複数のインタフェースを活用してモバイルIPを使用できるようになるという効果や、複数のインタフェースを有するモバイル機器が、そのサービスプロバイダがモバイルIPv6サービスを提供しているか否かにかかわらず、複数のインタフェースを活用してモバイルIPを使用できるようになるという効果を有しており、パケット交換型データ通信ネットワークにおける通信技術分野、特に、複数のアクセスインタフェースを有するモバイルノードによって行われる通信を制御するための技術分野に適用可能である。
【符号の説明】
【0073】
100 モバイルノード(MN)
110、120、130 アクセスルータ(AR)
112 セルラネットワーク
114、124、134 サービスエリア
118 ホームエージェント(HA)
122、132 ローカルネットワーク
150 インターネット
160 コレスポンデントノード(CN)
200 バインディングアップデートメッセージ(BUメッセージ)
510−x ネットワークインタフェース
520 インタフェースコントローラ
530 IPスタック
535 モバイルIPモジュール
540 トランスポートスタック
550 アプリケーションレイヤ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モバイルノードのホームアドレス宛のパケットを前記モバイルノードの複数のネットワークインタフェースの一つに転送するホームエージェントであって、
前記ホームアドレスと気付アドレスとの関連付けを示す情報を含むメッセージであって、前記メッセージのホームアドレスオプションに含まれている前記ホームアドレスが前記メッセージの気付けアドレスフィールドに挿入されている前記メッセージを前記モバイルノードから受信する受信部を有するホームエージェント。
【請求項2】
前記パケットをホームネットワーク又はフォーリンネットワークを介して前記モバイルノードに転送する転送部をさらに有する請求項1に記載のホームエージェント。
【請求項3】
モバイルIPを実装した移動可能なモバイルノードであって、
複数のネットワークインタフェースと、
ホームアドレスと気付アドレスとの関連付けを示す情報を含むメッセージを送信する手段と、
を有するモバイルノード。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−93904(P2013−93904A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2013−12053(P2013−12053)
【出願日】平成25年1月25日(2013.1.25)
【分割の表示】特願2011−244499(P2011−244499)の分割
【原出願日】平成18年7月7日(2006.7.7)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】