説明

ホームドア装置

【課題】この発明は、ホーム又はホーム発着時の車両に緊急事態が発生した場合、乗客を安全でかつ速やかに脱出させることができるホームドア装置を提供するものである。
【解決手段】乗降扉と、前記乗降扉を収納する固定戸袋と、前記固定戸袋に隣接して配設された緊急脱出扉と、前記固定戸袋に隣接して配設された前記緊急脱出扉を前記固定戸袋部の側面に沿って斜行移動して進出させる第1移動手段と、前記第1移動手段の動作終了後に、前記緊急脱出扉を前記固定戸袋の表面部を覆って横行移動させる第2移動手段とを備えたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えばプラットホームに設置されるホーム柵の緊急時における緊急脱出扉を有するホームドア装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、プラットホームに設置されるホーム柵の緊急時における緊急脱出扉を有するホームドア装置としは、図8および図9に示すようなものがある。図8は正面図を示し、図9は平面図を示す。
【0003】
従来のホームドア装置50は、スクリーンパネル61、ドアパネル62,63、非常ドアパネル51により構成されている。プラットホームに車両が到着すると、その車両の側扉の開閉に対応して開閉するようになっている。
【0004】
次に、車両火災等の緊急事態が発生した場合は、通常は固定されている非常ドアパネル51のロック装置(図示せず)を解錠して、非常ドアパネル51を手動でプラットホーム側に押すと、非常ドアパネル51は一端部の枢軸51aを中心に矢印G方向に旋回して開状態となり、通路が形成される。(例えば、特許文献1参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3502001号公報(図3、第4頁段落番号[0036])
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した従来のホームドア装置においては、非常ドアパネル51を矢印G方向に旋回して開状態とすることにより、緊急時の避難通路を確保するようにしているので、脱出通路を広くするように扉巾を大きく取れば取るほど、開閉する為の旋回スペースが広く必要となり、また、旋回中に乗客や品物にぶつかる危険があり、さらに旋回した扉が大きく突出しているので、特に幅の狭いホームではパニック時に危険性を増すことになるなどの問題点があった。
【0007】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、その目的は、ホーム又はホーム発着時の車両に緊急事態が発生した場合、乗客を安全でかつ速やかに脱出させることができるホームドア装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明に係わるホームドア装置は、乗降扉と、前記乗降扉を収納する固定戸袋と、前記固定戸袋に隣接して配設された緊急脱出扉と、前記固定戸袋に隣接して配設された前記緊急脱出扉を前記固定戸袋部の側面に沿って斜行移動して進出させる第1移動手段と、前記第1移動手段の動作終了後に、前記緊急脱出扉を前記固定戸袋の表面部を覆って横行移動させる第2移動手段とを備えたものである。
【発明の効果】
【0009】
この発明に係わるホームドア装置によれば、ホーム又はホーム発着時の車両に緊急事態が発生した場合、乗客を安全でかつ速やかに脱出させることができるホームドア装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】この発明の実施の形態1に係わるホームドア装置を示す正面図である。
【図2】この発明の実施の形態1に係わるホームドア装置を示す要部平面図である。
【図3】この発明の実施の形態1に係わるホームドア装置を示す要部斜視図である。
【図4】この発明の実施の形態1に係わるホームドア装置の開閉状態を示す斜視図である。
【図5】この発明の実施の形態1に係わるホームドア装置の開閉状態を示す要部平面図である。
【図6】この発明の実施の形態1に係わるホームドア装置のロック状態を示す要部平面図である。
【図7】この発明の実施の形態1に係わるホームドア装置における緊急脱出扉のロック状態を示す動作図である。
【図8】従来のホームドア装置を示す正面図である。
【図9】従来のホームドア装置を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
実施の形態1.
以下、この発明の実施の形態1を図1〜図7に基づいて説明するが、各図において、同一、または相当部材、部位については同一符号を付して説明する。図1はこの発明の実施の形態1に係わるホームドア装置を示す正面図である。図2はこの発明の実施の形態1に係わるホームドア装置を示す要部平面図である。図3はこの発明の実施の形態1に係わるホームドア装置を示す要部斜視図である。図4はこの発明の実施の形態1に係わるホームドア装置の開閉状態を示す斜視図である。図5はこの発明の実施の形態1に係わるホームドア装置の開閉状態を示す要部平面図である。図6はこの発明の実施の形態1に係わるホームドア装置のロック状態を示す要部平面図である。図7はこの発明の実施の形態1に係わるホームドア装置における緊急脱出扉のロック状態を示す動作図である。
【0012】
これら各図において、1はプラットホームに設けられたホームドア装置であり、プラットホームに車両が到着すると、その車両の側扉の開閉に対応して開閉する乗降扉2,3と、この乗降扉2,3をそれぞれ図示しない駆動装置で駆動及び収納する固定戸袋4と、この固定戸袋4に隣接して配設された緊急脱出扉5とから構成されている。
【0013】
固定戸袋4の一端側部には三角形状のベース支柱4aが固着され、斜面形状の斜行スライド部4bと鋭端部にストッパー4cが設けられている。
【0014】
6はスライド支持装置であり、三角形状のブラケット7の斜面部7aをベース支柱4aの斜行スライド部4bと対応して設けられている。7bはブラケット7の平面部であり、このブラケット7の平面部7bが緊急脱出扉5の裏面側に装着されている。すなわち、スライド支持装置6が緊急脱出扉5の裏面側に装着されている。
【0015】
8は第1移動手段を構成する斜行スライド機構であり、斜行リニアガイド8aがスライド支持装置6であるブラケット7の斜面部7aに固着され、斜行リニアレール8bがベース支柱4aの斜行スライド部4bの長さ方向に沿って設けられている。
【0016】
9は第2移動手段を構成する横行スライド機構であり、横行リニアガイド9aがスライド支持装置6であるブラケット7の平面部7bに固着され、横行リニアレール9bが緊急脱出扉5の裏面に横方向に沿って設けられているので、スライド支持装置6により緊急脱出扉5は横方向摺動が容易となる。
【0017】
10はブラケット7に装着されるロック機構であり、支持板11の一辺に斜出して一面にラック12aを形成し、進出方向底部にバネ12bを設けた斜行ロックピン12と、他の一辺に一面にラック13aを形成した横行ロックピン13と、軸部に図示しないハンドルを設け、横行ロックピン13のラック13aと噛み合う第1の歯車14と、第1の歯車14および斜行ロックピン12のラック12aと噛み合う第2の歯車15とが連結して装着されている。12cはベース支柱4aの所定位置に設けられたロックピン穴、13bは緊急脱出扉5の所定位置に設けられたロックピン穴である。なお、斜行ロックピン12、ラック12a、バネ12b、ロックピン穴12cにより斜行ロック装置が構成され、横行ロックピン13、ラック13a、ロックピン穴13bにより横行ロック装置が構成される。
【0018】
16は緊急脱出扉5の平常時の緊急脱出扉ロック装置であり、緊急脱出扉5の裏面の上部に、図示しないハンドルを軸支した第1の歯車17と、下部に第2の歯車18を設けて例えばタイミングベルト19で上記両歯車を連結する。
【0019】
20は二辺に切り欠き部20aを形成した円孤状のロック部材であり、第2の歯車18の軸部に装着されている。20bは円孤部である。
【0020】
21はプラットホーム表面部に埋設された保持部材であり、溝部21aが上面に形成され、ロック部材20が出入容易に設けられている。なお、溝部21aは緊急脱出扉5の移動方向と90度の方向に沿って設置されている。
【0021】
このように構成された緊急脱出扉5を有するホームドア装置1においては、平常時は固定戸袋4と隣接横列して設けられた緊急脱出扉5は、スライド支持装置6であるブラケット7の平面部7bに突出して設けられた横行ロックピン13を図示しないレバーで最終位置まで突出して、緊急脱出扉5のロックピン穴13bに挿入してブラケット7と連結保持される。この際、斜行ロックピン12の突出先端部は、ベース支柱4aの斜行スライド部4b面と相対している。
【0022】
また、緊急脱出扉5に装着されたロック装置16は、ロック部材20の円孤部20bが、プラットホームに埋設された保持部材21の溝部21a内に挿入されて、緊急脱出扉5の移動をロックしている。
【0023】
次に、ホームドア装置1の列車側で非常事態が発生した際は、まず、緊急脱出扉5に装着された緊急脱出扉ロック装置16の第1の歯車17に軸支されたハンドル(図示せず)を操作し、図7(a)(正面図),(b)(側面図)に示すように、タイミングベルト19を介して第2の歯車18を回動させ、図7(c)(正面図),(d)(側面図)に示すように、保持部材21の溝部21a内に挿入されているロック部材20の円孤部20bを離脱させて、切り欠き部20aが溝部21a上に位置するように動作させ、緊急脱出扉5のロックを解除する。
【0024】
次に、ブラケット7を手動でベース支柱4aの斜行スライド部4bに沿って動作させると、斜行スライド機構8の作動によりブラケット7が矢印A方向に斜行進出移動し、これによりブラケット7と横行ロックピン13とで連結された緊急脱出扉5も斜行移動し、図4(a)に示すように、緊急脱出扉5のロックが解除された状態から、図4(b)に示すように、固定戸袋4の表面よりプラットホーム側に突出した状態となる。
【0025】
ブラケット7の斜行移動は、図5(a)に示すように、斜行スライド機構8の斜行リニアレール8bの始端部から、図5(b)に示すように、ベース支柱4aの斜行スライド部4bに装着された斜行スライド機構8の斜行リニアレール8bの終端部で停止する。
【0026】
次に、ブラケット7に装着されたロック機構10の第1歯車14に軸支されたハンドル(図示せず)を所定方向に回動操作させると、図6(a)に示すように、横行ロックピン13が緊急脱出扉5のロックピン穴13bに係合された状態から、図6(b)に示すように、第1の歯車14と噛み合うラック13aにより横行ロックピン13が、緊急脱出扉5のロックピン穴13bから矢印C方向に離脱し、緊急脱出扉5の移動ロックが解除される。
【0027】
上記と同時に、第1の歯車14と連動して回動する第2の歯車15と噛み合うラック12aにより斜行ロックピン12がベース支柱4aの斜行スライド部4bに設けられたロックピン穴12c内に矢印D方向に挿入され、ブラケット7をロックする。
【0028】
次に、固定戸袋4の表面よりプラットホーム側に突出した状態の緊急脱出扉5を手動で矢印Bの固定戸袋4方向に押すと、横行スライド機構9により、図4(c)および図5(c)に示すように、緊急脱出扉5は固定戸袋4の表面を覆うように横行して所定位置まで移動する。これにより、緊急脱出扉5の旧位置に乗客の緊急脱出通路が形成される。
【0029】
次に、復帰動作について説明する。非常事態が終了すると、固定戸袋4の表面部を覆うように併列している緊急脱出扉5を緊急脱出通路方向に手動で動作させると、横行スライド機構9の作動により緊急脱出扉5が平行移動し、横行リニアレール9bの終端部で停止する。
【0030】
次に、ブラケット7に装着されたロック機構10の第1の歯車14に軸支されたハンドル(図示せず)を所定方向に回動操作させると、図6(c)に示すように、第1の歯車14と噛み合うラック13aにより横行ロックピン13が、緊急脱出扉5のロックピン穴13b内に矢印E方向に挿入され緊急脱出扉5はスライド支持装置6のブラケット7とロックされる。
【0031】
上記と同時に、第1の歯車14と連動して回動する第2の歯車15と噛み合うラック12aにより斜行ロックピン12がベース支柱4aの斜行スライド部4bに設けられたロックピン穴12cから矢印F方向に離脱し、ベース支柱4aとスライド支柱装置6とのロックが解除される。
【0032】
次に、ホームドア装置1のラインより突出している緊急脱出扉5を突出解消方向へ手動で動作させると、斜行スライド機構8の作動により緊急脱出扉5をロックしたブラケット7はベース支柱4aの斜行スライド部4bに沿って摺動移動し、斜行リニアレール8bの終端部で停止する。
【0033】
次に、緊急脱出扉5に装着されている緊急脱出扉ロック装置16を動作させて、ロック部材20の円孤部20bを保持部材21の溝部21a内に回動挿入して緊急脱出扉5をロックする。
【0034】
以上のように、緊急脱出扉5を斜行移動後、固定戸袋4の表面部に平行移動するように設けたので、安全でかつ、速やかに乗客が通過できる脱出通路を得ることができる効果がある。
【0035】
なお、上述した実施の形態1では、緊急脱出扉5の平常時の緊急脱出扉ロック装置16を緊急脱出扉5とホームに埋設された保持部材21とでロックした例を示したが、同様に、隣接する固定戸袋4の側面部と緊急脱出扉5とをロックするように設けてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0036】
この発明は、ホーム又はホーム発着時の車両に緊急事態が発生した場合、乗客を安全でかつ速やかに脱出させることができるホームドア装置の実現に好適である。
【符号の説明】
【0037】
1 ホームドア装置
2 乗降扉
3 乗降扉
4 固定戸袋
4a 斜行スライド部
5 緊急脱出扉
6 スライド支持装置
7 ブラケット
7a 斜面部
7b 平面部
8 斜行スライド機構
9 横行スライド機構
10 ロック機構
12 斜行ロックピン
12a ラック
12b バネ
12c ロックピン穴
13 横行ロックピン
13a ラック
13b ロックピン穴
16 ロック装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗降扉と、前記乗降扉を収納する固定戸袋と、前記固定戸袋に隣接して配設された緊急脱出扉と、前記固定戸袋に隣接して配設された前記緊急脱出扉を前記固定戸袋部の側面に沿って斜行移動して進出させる第1移動手段と、前記第1移動手段の動作終了後に、前記緊急脱出扉を前記固定戸袋の表面部を覆って横行移動させる第2移動手段とを備えたことを特徴とするホームドア装置。
【請求項2】
前記第1移動手段は、前記緊急脱出扉に装着されたスライド支持装置の一辺部に係合された斜行スライド機構を有し、前記第2移動手段は、前記スライド支持装置の他辺部に係合された横行スライド機構を有することを特徴とする請求項1に記載のホームドア装置。
【請求項3】
前記スライド支持装置は、前記緊急脱出扉の開閉移動ストロークエンド毎に、ロック機構を備えたことを特徴とする請求項2に記載のホームドア装置。
【請求項4】
前記スライド支持装置の前記ロック機構は、前記スライド支持装置と前記固定戸袋部の斜行スライド部とをロックする斜行ロック装置と、前記スライド支持装置と前記緊急脱出扉とをロックする横行ロック装置とを備えたことを特徴とする請求項3に記載のホームドア装置。
【請求項5】
前記緊急脱出扉は、平常時は緊急脱出扉ロック装置でロックされていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のホームドア装置。
【請求項6】
前記緊急脱出扉の平常時の緊急脱出扉ロック装置は、隣接する前記固定戸袋の側面部とロック形成されていることを特徴とする請求項5に記載のホームドア装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−210870(P2012−210870A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−77571(P2011−77571)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【出願人】(000221616)東日本旅客鉄道株式会社 (833)
【出願人】(593092482)JR東日本メカトロニクス株式会社 (85)