説明

ホーム柵搬送装置

【課題】 ホーム柵装置の積み込みおよび積み降ろしを容易に行うことができるとともに、ホーム柵装置の搬送を容易に行うことができ、作業者の労力を著しく低減させることのできるホーム柵搬送装置を提供する。
【解決手段】 移動可能な搬送車両5と、搬送車両5に設けられ昇降自在とされた昇降機構7と、昇降機構7に取付けられホーム柵装置2を収納するホーム柵収納部8と、ホーム柵収納部8の両端部に開閉自在に設けられトラックの荷台や列車の乗降口に掛け渡してスロープを形成するためのスロープ扉10と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はホーム柵搬送装置に係り、特に、ホーム柵装置の積み込みおよび積み降ろしを容易に行うことができるとともに、ホーム柵装置の運搬を容易に行うことができ、作業者の労力を著しく低減させることを可能としたホーム柵搬送装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、駅のプラットホームにおいては、通過列車の風圧により乗客が線路側に転落する等の不測の事故を防止するために、ホーム柵本体に進退自在に設けられ、列車の乗降ドアと連動して開閉動作される扉体を備えたホーム柵装置が設置されている。
【0003】
このような従来のホーム柵装置を設置する場合は、設置すべきプラットホームにホーム柵装置を搬送し、ホーム柵装置の設置工事を行うようになっている。
【0004】
しかしながら、地下鉄駅のプラットホームにホーム柵装置を設置する場合には、地下鉄駅が地下数10mの深部にあることが多いため、プラットホームへの部品の搬送に手間がかかってしまうという問題を有している。また、プラットホームへの部品の搬送にエレベータを利用することも考えられるが、地下鉄駅に設置されているエレベータの多くは、車椅子用の小形エレベータであるため、小形エレベータに積載可能な重量となるようにホーム柵装置の部品を細かく分解する必要があり、分解、組立に手間がかかるとともに、極めて作業効率が悪いという問題を有している。
【0005】
そのため、従来から、ホーム柵装置の部品を列車に搭載し、列車を線路に沿って移動させ、ホーム柵装置の部品の搭載位置がプラットホームにおける部品の設置位置の近傍となるようにプラットホームの横に列車を停車させ、列車からプラットホームに部品を降ろすことにより、ホーム柵本体の設置位置に効率よくホーム柵装置の部品を搬送するようにした技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4334781号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、ホーム柵装置は、約500kg程度の重量があり、前記特許文献1に記載の技術のように、ホーム柵装置を列車に搭載するため、プラットホームに搬送することが困難であり、さらに、列車にホーム柵装置を搭載することも極めて困難であるという問題を有している。
【0008】
現状では、ホーム柵装置をプラットホーム上で搬送する場合は、プラットホームにコロなどを設けて、ホーム柵装置を移動させるとともに、列車に搭載する場合は、列車の乗降口にスロープを形成したり、棚を形成するようにして、ホーム柵装置を列車に搭載するようにしていた。そのため、ホーム柵装置の搬送や積み込みに極めて時間が掛かるとともに、多くの作業者による労力が必要であるという問題を有している。
【0009】
本発明は前記した点に鑑みてなされたものであり、ホーム柵装置の積み込みおよび積み降ろしを容易に行うことができるとともに、ホーム柵装置の搬送を容易に行うことができ、作業者の労力を著しく低減させることのできるホーム柵搬送装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は前記目的を達成するために、請求項1の発明に係るホーム柵搬送装置は、移動可能な搬送車両と、
前記搬送車両に設けられ昇降自在とされた昇降機構と、
前記昇降機構に取付けられ、ホーム柵装置を収納するホーム柵収納部と、
前記ホーム柵収納部の両端部に開閉自在に設けられるスロープ扉と、
を備えていることを特徴とする。
【0011】
請求項2に係る発明は、請求項1において、下面にキャスタが取付けられ、前記ホーム柵装置を取り付けて搬送するための搬送基台をさらに備えていることを特徴とする。
【0012】
請求項3に係る発明は、請求項1または請求項2において、前記スロープ扉の両側には、前記ホーム柵装置の落下を防止するためのガイド壁が設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に係る発明によれば、搬送車両の昇降機構にホーム柵収納部を取付け、このホーム柵収納部の両端部に設けられたスロープ扉を開閉自在に設けるようにしているので、トラックの荷台からのホーム柵装置の積み降ろし、列車の乗降口へのホーム柵装置の積み込みを行う場合に、スロープ扉を開いて、トラックの荷台や列車の乗降口に掛け渡すことにより、スロープ扉をスロープとして利用することができ、その結果、スロープ扉を用いてホーム柵装置の搬送を容易に行うことができるとともに、搬送車両を用いて、プラットホームなどにおけるホーム柵装置の搬送、移動を容易に行うことができ、作業者の労力を著しく低減させることができる。
【0014】
請求項2に係る発明によれば、下面にキャスタが取付けられ、ホーム柵装置を取り付けて搬送するための搬送基台を設けるようにしているので、スロープ扉上およびホーム柵収納部にホーム柵装置を移動させる場合に、搬送基台により容易にホーム柵装置を移動させることができる。
【0015】
請求項3に係る発明によれば、スロープ扉の両側にホーム柵装置の落下を防止するためのガイド壁を設けるようにしているので、スロープ扉上にホーム柵装置を移動させる場合に、ガイド壁により、ホーム柵装置の落下を防止して、安全にホーム柵装置の移動を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係るホーム柵搬送装置の実施形態を示す概略正面図である。
【図2】本発明に係るホーム柵搬送装置の実施形態を示すホーム柵収納部の概略平面図である。
【図3】本発明に係るホーム柵搬送装置の実施形態におけるトラックの荷台からホーム柵装置を積み降ろす状態を示す説明図である。
【図4】本発明に係るホーム柵搬送装置の実施形態における列車の乗降口にホーム柵装置を積み込む状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0018】
図1から図4は、本発明に係るホーム柵搬送装置の実施形態を示したものである。ホーム柵搬送装置1により搬送されるホーム柵装置2は、下面にキャスタ3が取付けられた搬送基台4(図3参照)の上面に取り付けた状態で、搬送されるものである。
【0019】
ホーム柵搬送装置1は、ホーム柵装置2を搬送するための搬送車両5を備えており、この搬送車両5は、エンジンまたはモータにより駆動される走行タイヤ6を備えている。また、搬送車両5には、例えば、油圧などにより昇降動作される昇降機構7が設けられている。なお、搬送車両5は、作業車が乗車して運転する車両でもよいし、リモートコントローラなどにより遠隔運転する車両でもよい。
【0020】
また、図1および図2に示すように、昇降機構7の上面には、ホーム柵収納部8が取付けられている。ホーム柵収納部8は、搬送基台4が載置できるように前後方向に所定間隔をもって配置された一対の支持壁9,9を備えており、ホーム柵収納部8の幅寸法は、ホーム柵装置2が収納できる幅寸法を有している。これら各支持壁9の両端部には、この支持壁9の両端部を閉塞するスロープ扉10,10が設けられており、このスロープ扉10は、その下端部を中心として開閉自在とされている。スロープ扉10の両側部には、それぞれガイド壁11が立設されている。このスロープ扉10は、閉じた状態で、ホーム柵収納部8に載置されたホーム柵装置2のホーム柵収納部8の幅方向に沿った移動を規制するとともに、スロープ扉10を開いて搬送トラックの荷台や列車の乗降口に掛け渡した状態で、搬送基台4の搬送用のスロープとして機能するように構成されている。
【0021】
次に、本実施形態の作用について説明する。
【0022】
本実施形態においては、まず、図3に示すように、工場などからトラック12により搬送されたホーム柵本体を、搬送基台4の上面に取付ける。一方、搬送車両5をそのホーム柵収納部8の一端部をトラック12の荷台13に近づけるように停止させる。
【0023】
この状態で、昇降機構7を動作させて、昇降機構7の高さ位置をトラック12の荷台13の高さ位置に合わせる。その後、トラック12側のスロープ扉10を開いて、スロープ扉10の先端部分をトラック12の荷台13に掛け渡して、ホーム柵収納部8とトラック12の荷台13との間にスロープを形成する。そして、ホーム柵装置2が取り付けられた搬送基台4をスロープ扉10のガイド壁11の間に移動させ、スロープ扉10上を移動させることにより、搬送基台4をホーム柵収納部8の内部に収容し、スロープ扉10を閉じる。この場合において、スロープ扉10の両側にガイド壁11を設けるようにしているので、搬送基台4がスロープ扉10から落下してしまうことを確実に防止することができるものである。
【0024】
その後、搬送車両5を走行させて駅のプラットホーム14に移動させる。そして、図4に示すように、搬送車両5をそのホーム柵収納部8の一端部をプラットホーム14に停車している列車15の所定の乗降口(図示せず)に近づけるように停止させる。この状態で、昇降機構7を動作させて、昇降機構7の高さ位置を列車15の乗降口の高さ位置に合わせる。その後、乗降口側のスロープ扉10を開いて、スロープ扉10の先端部分を乗降口の床部分に掛け渡して、ホーム柵収納部8と列車15の乗降口との間にスロープを形成する。そして、搬送基台4をスロープ扉10のガイド壁11の間に移動させ、スロープ扉10上を移動させることにより、搬送基台4をホーム柵収納部8から列車15の内部に移動させ、スロープ扉10を閉じる。
【0025】
その後、列車15をホーム柵装置2を設置したい駅に移動させ、該当する駅で搬送基台4を降ろし、ホーム柵装置2の設置を行うようになっている。
【0026】
以上述べたように、本実施形態においては、搬送車両5の昇降機構7にホーム柵収納部8を取付け、このホーム柵収納部8の両端部に設けられたスロープ扉10を開閉自在に設けるようにしているので、トラック12の荷台13からのホーム柵装置2の積み降ろし、列車15の乗降口へのホーム柵装置2の積み込みを行う場合に、スロープ扉10を用いて容易に行うことができるとともに、搬送車両5を用いて、プラットホーム14などにおけるホーム柵装置2の搬送、移動を容易に行うことができ、作業者の労力を著しく低減させることができる。また、ホーム柵装置2を搬送基台4に取り付けて、スロープ扉10およびホーム柵収納部8において、ホーム柵装置2を移動させるようにしているので、搬送基台4により容易にホーム柵装置2を移動させることができる。
【0027】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々の変形が可能である。
【符号の説明】
【0028】
1 ホーム柵搬送装置
2 ホーム柵装置
3 キャスタ
4 搬送基台
5 搬送車両
6 走行タイヤ
7 昇降機構
8 ホーム柵収納部
9 支持壁
10 スロープ扉
11 ガイド壁
12 トラック
13 荷台
14 プラットホーム
15 列車

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動可能な搬送車両と、
前記搬送車両に設けられ昇降自在とされた昇降機構と、
前記昇降機構に取付けられ、ホーム柵装置を収納するホーム柵収納部と、
前記ホーム柵収納部の両端部に開閉自在に設けられるスロープ扉と、
を備えていることを特徴とするホーム柵搬送装置。
【請求項2】
下面にキャスタが取付けられ、前記ホーム柵装置を取り付けて搬送するための搬送基台をさらに備えていることを特徴とする請求項1に記載のホーム柵搬送装置。
【請求項3】
前記スロープ扉の両側には、前記ホーム柵装置の落下を防止するためのガイド壁が設けられていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のホーム柵搬送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−61880(P2012−61880A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−205487(P2010−205487)
【出願日】平成22年9月14日(2010.9.14)
【出願人】(000004651)日本信号株式会社 (720)
【Fターム(参考)】