説明

ホールカッター

【解決手段】ホールカッターは基端壁部4と基端壁部4から筒状に延びる刃筒5とを有する刃体1を備えている。刃体1の基端壁部4の外周には回転中心線10を中心とする円周方向Xへ周溝12が延設されている。ストッパとしてのリング14は、両端部15,16間で互いに突き合わされてその両端部15,16を互いに接近させる弾性を有し、周溝12に対し着脱可能に嵌め込まれてその周溝12の外側に突出している。刃体1に対しリング14を着脱することにより、一つのホールカッターでリング14の取付け状態Pとリング14の取外し状態とに変換することができる。
【効果】穿孔作業を簡単にすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基端壁部から円筒状に延びる刃筒を備えたホールカッターに関するものである。
【背景技術】
【0002】
図4に示す従来のホールカッターは、シャンク2及びセンタードリル3のほかに、基端壁部4と刃筒5とを有する刃体1を備えている。この刃体1の基端壁部4の外周にはフランジ状のストッパ14が一体に突設されている。ワークがこのストッパ14に当接するまで穿孔することができる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、前述したストッパ14を有するホールカッターでは、ワークの形態が多様化してきている現在、そのストッパ14が邪魔になって穿孔作業を行えなくなるおそれがあった。そのため、ストッパ14を有するホールカッターのほかに、ストッパ14を有しないホールカッターも提供され、ワークの形態に応じてそれらのホールカッターを使い分けねばならず、穿孔作業が面倒であった。
【0004】
この発明は、一つのホールカッターでストッパを有するものとストッパを有しないものとに変換できるようにして、穿孔作業を簡単にすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
後記実施形態の図面(図1,3に示す第一実施形態、図2,3に示す第二実施形態)の符号を援用して本発明を説明する。
請求項1の発明にかかるホールカッターは下記のように構成されている。
【0006】
このホールカッターは、基端壁部(4)とこの基端壁部(4)から筒状に延びる刃筒(5)とを有する刃体(1)を備えている。この刃筒(5)の先端縁部には回転中心線(10)を中心とする周方向(X)へ切削刃(11)を並設している。この刃体(1)の外周(基端壁部4または刃筒5の外周)には刃筒(5)の外周面(19)よりも半径方向(Y)へ突出する突出状態(P)と突出しない非突出状態(Q)とを取り得るストッパ(14)を備えている。ちなみに、請求項2の発明のようにストッパ(14)を刃体(1)の外周に対し着脱可能に支持してもよいし、図示しないが、ストッパ(14)を刃体(1)の外周に対し突出状態(P)と非突出状態(Q)との間で移動可能に取り付けてもよい。また、ストッパの形態としては、例えば、請求項5の発明のように両端部(15,16)間で互いに突き合わせたリング(14)であっても、図示しないが、両端部を有する半円弧部材であってもよい。
【0007】
請求項1の発明では、一つのホールカッターでストッパ(14)の突出状態(P)とストッパ(14)の非突出状態(Q)とに変換することができる。
請求項2の発明にかかるホールカッターは下記のように構成されている。
【0008】
このホールカッターは、基端壁部(4)とこの基端壁部(4)から筒状に延びる刃筒(5)とを有する刃体(1)を備えている。この刃筒(5)の先端縁部には回転中心線(10)を中心とする周方向(X)へ切削刃(11)を並設している。この刃体(1)の外周(基端壁部4または刃筒5の外周)には刃筒(5)の外周面(19)よりも半径方向(Y)へ突出するストッパ(14)を着脱可能に支持している。
【0009】
請求項2の発明では、刃体(1)に対しストッパ(14)を着脱することにより、一つのホールカッターでストッパ(14)の取付け状態(P)とストッパ(14)の取外し状態(Q)とに変換することができる。
【0010】
請求項2の発明を前提とする請求項3の発明において、前記ストッパは、両端部(15,16)を有する弧部材(14)であって、前記刃体(1)の基端壁部(4)の外周で回転中心線(10)を中心とする周方向(X)へ延設した溝(12)に対し着脱可能に嵌め込まれ、その溝(12)の外側に突出する。請求項3の発明では、弧部材(14)を刃体(1)に対し容易に支持することができる。
【0011】
請求項3の発明を前提とする請求項4の発明においては、前記ストッパとしての弧部材(14)の両端部(15,16)のうち少なくとも一方の端部(15)を前記基端壁部(4)に挿着している。請求項4の発明では、弧部材(14)の離脱を防止して刃体(1)に対し弧部材(14)を確実に支持することができる。
【0012】
請求項3または請求項4の発明を前提とする請求項5の発明においては、前記ストッパとしての弧部材は、両端部(15,16)間で互いに突き合わせたリング(14)であって、その両端部(15,16)を互いに接近させる弾性を有している。請求項5の発明では、リング(14)の弾性を利用して、リング(14)を刃体(1)に対し容易に着脱することができるとともに、リング(14)を刃体(1)に対し確実に支持することができる。
【0013】
請求項5の発明を前提とする請求項6の発明において、前記ストッパとしてのリング(14)では、両端部(15,16)に対する反対側で撓み許容部(20)を設け、この撓み許容部(20)と両端部(15,16)との間に両可撓腕(20)を設けている。請求項6の発明では、リング(14)が撓み易くなるので、リング(14)を刃体(1)に対しより一層容易に着脱することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、穿孔作業を簡単にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
まず、本発明の第一実施形態にかかるホールカッターについて図1及び図3を参照して説明する。
このホールカッターは刃体1とシャンク2とセンタードリル3とを備えている。この刃体1は基端壁部4と刃筒5とを有している。この刃筒5はこの基端壁部4の下側に嵌着されて基端壁部4から下方へ円筒状に延びている。この基端壁部4の中心部には雌ねじ孔6が形成されている。このシャンク2の下端部には雄ねじ部7が形成されている。このシャンク2の雄ねじ部7がこの基端壁部4の雌ねじ孔6に螺着されて刃体1とシャンク2とが互いに取着されている。このセンタードリル3は、刃体1の刃筒5内でこのシャンク2の下側に挿嵌されて両止めねじ8により取着され、刃筒5の先端縁部から下方へ突出している。このセンタードリル3の外周には圧縮コイルばね9が巻装されている。この刃筒5の先端縁部にはシャンク2及びセンタードリル3の回転中心線10を中心とする円周方向Xへ切削刃11が並設されている。
【0016】
前記刃体1の基端壁部4の外周にはシャンク2及びセンタードリル3の回転中心線10を中心とする円周方向Xの全体で周溝12が延設されている。この周溝12の内底面の一部には止め穴13が外側から内側へ半径方向Yに沿って形成されている。
【0017】
図1(c)に示すリング14(弧部材、ストッパ)は、両端部15,16間で開放口17をあけて互いに突き合わされ、その両端部15,16を互いに接近させる弾性を有している。この両端部15,16のうち、一方の端部15は外側から内側へ半径方向Yに沿って屈曲され、他方の端部16は内側から外側へこの端部15に沿って屈曲されている。
【0018】
まず、前記リング14の両端部15,16を手または治具によりリング14の弾性に抗して互いに広げて両端部15,16間の開放口17を大きくする。その状態のまま開放口17から前記刃体1の基端壁部4をリング14の内孔18へ通してこの両端部15,16をこの基端壁部4の周溝12に嵌め込み、この周溝12に対しこの両端部15,16を滑らすとともに、一方の端部15を前記止め穴13に挿着すると、ホールカッターは図1(a)(b)(d)に示すリング14の取付け状態P(突出状態)となる。この取付け状態Pでリング14は、周溝12に支持されて基端壁部4に巻かれ、その周溝12の外側へ突出するとともに、刃筒5の外周面19よりも半径方向Yへ突出する。そのため、回転中心線10に対する外周面19の半径R19よりも回転中心線10に対するリング14の半径R14がそれらの差(R14−R19)だけ大きくなる。従って、このリング14の取付け状態Pでホールカッターを使用することができる。
【0019】
また、前記リング14の取付け状態Pで、リング14の両端部15,16を前述したように互いに広げるとともに、一方の端部15を止め穴13から抜いた状態で、両端部15,16間の開放口17から刃体1の基端壁部4を抜きながら周溝12に対し両端部15,16を滑らすと、ホールカッターは図3(a)(b)に示すリング14の取外し状態Q(非突出状態)となる。従って、このリング14の取外し状態Qでホールカッターを使用することができる。
【0020】
次に、本発明の第二実施形態にかかるホールカッターについて第一実施形態との相違点を中心に図2及び図3を参照して説明する。なお、第一実施形態の図1(a)(b)(c)(d)がそれぞれ第二実施形態の図2(a)(b)(c)(d)に対応する。
【0021】
図2(c)に示すリング14においては、両端部15,16に対する反対側でV形状の撓み許容部20が形成され、この撓み許容部20と両端部15,16との間で両可撓腕21が延設されている。この撓み許容部20は、両可撓腕21から一連に延びる基端部22と、この両基端部22が互いに連続する頂部23とからなる。この両基端部22間には両可撓腕21間の内孔18から連続する隙間24が形成されている。この撓み許容部20があると、両可撓腕21が撓み易くなる。
【0022】
なお、リング14の両端部15,16を共に刃体1の基端壁部4に挿着してもよい。また、たとえ止め穴13に対する一方の端部15の挿着を省略しても、リング14の弾性により、基端壁部4に対する両端部15,16の係止状態が維持されるため、リング14は刃体1の基端壁部4から不用意に抜け落ちることはない。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】(a)は第一実施形態にかかるホールカッターにおいてストッパリングを取り付けた状態を示す正面図であり、(b)はこのホールカッターを正面側から見た断面図であり、(c)は上記ストッパリングを示す平面図であり、(d)は(a)のA−A線断面図である。
【図2】(a)は第二実施形態にかかるホールカッターにおいてストッパリングを取り付けた状態を示す正面図であり、(b)はこのホールカッターを正面側から見た断面図であり、(c)は上記ストッパリングを示す平面図であり、(d)は(a)のB−B線断面図である。
【図3】(a)は第一実施形態または第二実施形態にかかるホールカッターにおいてストッパリングを取り外した状態を示す正面図であり、(b)はこのホールカッターを正面側から見た断面図である。
【図4】従来のホールカッターを正面側から見た断面図である。
【符号の説明】
【0024】
1…刃体、4…基端壁部、5…刃筒、10…回転中心線、11…切削刃、12…周溝、14…リング、15,16…リングの端部、19…刃筒の外周面、20…撓み許容部、21…可撓腕、X…円周方向、Y…半径方向、P…リングの取付け状態、Q…リングの取外し状態。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基端壁部とこの基端壁部から筒状に延びる刃筒とを有する刃体を備え、この刃筒の先端縁部には回転中心線を中心とする周方向へ切削刃を並設したホールカッターにおいて、この刃体の外周には刃筒の外周面よりも半径方向へ突出する突出状態と突出しない非突出状態とを取り得るストッパを備えたことを特徴とするホールカッター。
【請求項2】
基端壁部とこの基端壁部から筒状に延びる刃筒とを有する刃体を備え、この刃筒の先端縁部には回転中心線を中心とする周方向へ切削刃を並設したホールカッターにおいて、この刃体の外周には刃筒の外周面よりも半径方向へ突出するストッパを着脱可能に支持したことを特徴とするホールカッター。
【請求項3】
前記ストッパは、両端部を有する弧部材であって、前記刃体の基端壁部の外周で回転中心線を中心とする周方向へ延設した溝に対し着脱可能に嵌め込まれ、その溝の外側に突出することを特徴とする請求項2に記載のホールカッター。
【請求項4】
前記ストッパとしての弧部材の両端部のうち少なくとも一方の端部を前記基端壁部に挿着したことを特徴とする請求項3に記載のホールカッター。
【請求項5】
前記ストッパとしての弧部材は、両端部間で互いに突き合わせたリングであって、その両端部を互いに接近させる弾性を有していることを特徴とする請求項3または請求項4に記載のホールカッター。
【請求項6】
前記ストッパとしてのリングにおいて、両端部に対する反対側で撓み許容部を設け、この撓み許容部と両端部との間に両可撓腕を設けたことを特徴とする請求項5に記載のホールカッター。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−26801(P2006−26801A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−208764(P2004−208764)
【出願日】平成16年7月15日(2004.7.15)
【出願人】(000205052)大見工業株式会社 (27)
【Fターム(参考)】