説明

ホールカッター

【解決手段】ホールカッターの各刃部は、回転向きXF側で半径方向Yに沿って延びる前切刃10と、半径方向Yの内側で回転中心線方向Zに沿って延びる内横切刃11と、半径方向Yの外側で回転中心線方向Zに沿って延びる外横切刃12と、前切刃10を含む前逃げ面13とを備えている。前逃げ面13は、内前切刃17を含む内前逃げ面19がなす内前逃げ角β19と、外前切刃18を含む外前逃げ面20がなす外前逃げ角β20とを有している。内前逃げ角β19を外前逃げ角β20よりも大きく設定している。内前切刃17がなす内前切刃角γ17を外前切刃18がなす外前切刃角γ18よりも大きく設定するとともに、内前切刃17の半径方向幅W17を外前切刃18の半径方向幅W18よりも小さく設定している。
【効果】内刃付角θ17を小さくして切れ味を維持する。外刃付角θ18を大きくして外前切刃18と外横切刃12との間の交差部分を欠けにくくする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転軸に設けた刃筒の端部外周に複数の刃部を回転方向へ間隔をあけて並設したホールカッターに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のホールカッターにおいて、刃部は、回転方向の両側のうち回転向き側で半径方向に沿って延びる前切刃と、半径方向の内側で回転中心線の方向に沿って延びる内横切刃と、半径方向の外側で回転中心線の方向に沿って延びる外横切刃と、この前切刃を含む前逃げ面と、この前切刃と内横切刃と外横切刃とで囲まれたすくい面と、この内横切刃を含む内横逃げ面と、この外横切刃を含む外横逃げ面とを備えている。この前逃げ面とすくい面とがなす前切刃の刃付角は刃部の強度を維持するために所定値に設定されているとともに、このすくい面のすくい角も所定値に設定され、この刃付角とすくい角とが決まると、前逃げ面の前逃げ角も所定値で自ずと決まる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前記すくい角を所定値に設定した場合に前記前逃げ角を大きく設定すると、前記刃付角が小さく設定されるため、刃部の切れ味は良くなる。しかし、前記前切刃と外横切刃との間の交差部分は、切削開始時や切削終了時に最も切削荷重がかかる箇所であるため、欠け易くなる問題があった。
【0004】
この発明は、ホールカッターにおいて刃部の形態を改良することにより、前切刃と外横切刃との間の交差部分を欠けにくくして強度を維持するとともに切れ味も維持することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
後記実施形態の図面(図1〜3)の符号を援用して本発明を説明する。
請求項1の発明にかかるホールカッターは下記のように構成されている。
このホールカッターにおいては、回転軸4に設けて回転中心線4aを有する刃筒3の端部外周に複数の刃部6を回転方向Xへ間隔をあけて並設している。この刃部6は、回転方向Xの両側のうち回転向きXF側で半径方向Yに沿って延びる前切刃10と、半径方向Yの内側で回転中心線4aの方向Zに沿って延びる内横切刃11と、半径方向Yの外側で回転中心線4aの方向Zに沿って延びる外横切刃12と、この前切刃10を含む前逃げ面13とを備えている。この刃部6の前逃げ面13は、この内横切刃11に連続する内前切刃17を含む内前逃げ面19がなす内前逃げ角β19と、この外横切刃12に連続する外前切刃18を含む外前逃げ面20がなす外前逃げ角β20とを有している。この内前逃げ角β19を外前逃げ角β20よりも大きく設定している。後記実施形態のホールカッターにおいてはすべての刃部6のチップ刃8で切削刃9を同一形態にしている。
【0006】
請求項1の発明では、内前逃げ角β19を外前逃げ角β20よりも大きく設定しているので、外前逃げ面20がなす外前切刃18の外刃付角θ18は、内前逃げ面19がなす内前切刃17の内刃付角θ17よりも大きくなる。そのため、内刃付角θ17を小さくして切れ味を維持するとともに、外刃付角θ18を大きくして外前切刃18と外横切刃12との間の交差部分を欠けにくくすることができる。
【0007】
請求項1の発明を前提とする請求項2の発明においては、前記内前切刃17がなす内前切刃角γ17を前記外前切刃18がなす外前切刃角γ18よりも大きく設定するとともに、この内前切刃17の半径方向幅W17をこの外前切刃18の半径方向幅W18よりも小さく設定するか、または、この内前切刃17の半径方向幅W17とこの外前切刃18の半径方向幅W18とを同一に設定している。
【0008】
請求項1または請求項2の発明を前提とする請求項3の発明において、前記刃部6は前記内前切刃17と外前切刃18と内横切刃11と外横切刃12とで囲まれたすくい面14を備え、このすくい面14はすくい角αを有している。
【0009】
請求項3の発明を前提とする請求項4の発明において、前記内横切刃11と外横切刃12とのうち、少なくとも外横切刃12は外横切刃角γ12を有している。
請求項3または請求項4の発明を前提とする請求項5発明において、前記刃部6は、前記内横切刃11を含む内横逃げ面15と、前記外横切刃12を含む外横逃げ面16とを備え、この内横逃げ面15と外横逃げ面16とのうち、少なくとも内横逃げ面15は内横逃げ角β15を有している。
【0010】
請求項2〜5の発明では、請求項1の発明の効果を確実に発揮させることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明はホールカッターにおいて刃部6の切れ味と強度を維持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態にかかるホールカッターについて図面を参照して説明する。
図1(a)に示すように、刃体1は基端壁部2とその基端壁部2から突出する円筒状の刃筒3とを備え、回転軸4がこの刃体1の基端壁部2に螺着され、この回転軸4に挿着されたセンタードリル5がこの刃体1の刃筒3の内側を通してその刃筒3の開放端部から突出している。図1(b)に示すように、この刃筒3の端部外周には複数(例えば6個)の刃部6と複数の溝部7(例えば6個)とがこの回転軸4の回転中心線4aを中心とする回転方向Xへ交互に並設され、この各刃部6間にはこの各溝部7により互いに等しい間隔があけられている。図1(c)に示すように、この各刃部6においては、チップ刃8が溝部7に隣接して刃筒3に取着され、このチップ刃8の先端部には同一の形態(形状及び大きさ)をなす切削刃9が形成されている。
【0013】
図2及び図3に示すように、前記チップ刃8の切削刃9は、回転方向Xの両側のうち回転向きXF側で半径方向Yに沿って延びる前切刃10と、半径方向Yの内側で回転中心線4aの方向Zに沿って延びる内横切刃11と、半径方向Yの外側で回転中心線4aの方向Zに沿って延びる外横切刃12と、この前切刃10を含む前逃げ面13と、この前切刃10と内横切刃11と外横切刃12とで囲まれたすくい面14と、この内横切刃11を含む内横逃げ面15と、この外横切刃12を含む外横逃げ面16とを備えている。
【0014】
前記前切刃10は、前記内横切刃11に連続する内前切刃17と、前記外横切刃12に連続する外前切刃18とに区分されている。前記前逃げ面13は、この内前切刃17を含む内前逃げ面19と、この外前切刃18を含む外前逃げ面20とに区分され、この内前逃げ面19と外前逃げ面20との間で内前切刃17と外前切刃18との境界点から延びる境界線21を有している。
【0015】
前記内前逃げ面19と前記すくい面14とがなす内前切刃17の内刃付角をθ17とし、前記外前逃げ面20と前記すくい面14とがなす外前切刃18の外刃付角をθ18とする。このすくい面14が半径方向Y及び回転中心線4a方向Zを含む想定平面に対しなすすくい角をαとする。この内前逃げ面19が回転方向X及び半径方向Yを含む想定平面に対しなす内前逃げ角をβ19とし、この外前逃げ面20が該想定平面に対しなす外前逃げ角をβ20とする。前記内横逃げ面15が回転方向X及び回転中心線4a方向Zを含む想定平面に対しなす内横逃げ角をβ15とし、前記外横逃げ面16が該想定平面に対しなす外横逃げ角をβ16とする。この前切刃10は回転方向Xと直交し、この前切刃10のうち内前切刃17が回転方向X及び半径方向Yを含む想定平面に対しなす内前切刃角をγ17とするとともに外前切刃18が該想定平面に対しなす外前切刃角をγ18とする。この内横切刃11が回転方向X及び回転中心線4a方向Zを含む想定平面に対しなす内横切刃角をγ11とし、この外横切刃12が該想定平面に対しなす外横切刃角をγ12とする。
【0016】
前記内前逃げ角β19は前記外前逃げ角β20(<β19)よりも大きく設定されている。そのため、所定のすくい角αで、前記外刃付角θ18は前記内刃付角θ17(<θ18)よりも大きくなる。例えば、すくい角αが6度の場合、内前逃げ角β19が23度で内刃付角θ17が61度となり、外前逃げ角β20が18度で外刃付角θ18が66度となる。すくい角αは0〜20度に設定される。内刃付角θ17や外刃付角θ18は59〜69度に設定することが強度維持のために好ましい。内前逃げ角β19と外前逃げ角β20との比(β19:β20)は、1.3:1程度に設定することが好ましい。
【0017】
また、前記内前切刃角γ17は前記外前切刃角γ18(<γ17)よりも大きく設定されている。この内前切刃17の半径方向幅W17はこの外前切刃18の半径方向幅W18(>W17)よりも小さく設定されている。例えば、内前切刃角γ17が10度であるとともに外前切刃角γ18が3度である場合、半径方向幅W17が0.5mmであるとともに半径方向幅W18が1.5mmである。この内前切刃17の半径方向幅W17とこの外前切刃18の半径方向幅W18(=W17)とを同一に設定してもよい。
【0018】
なお、前記内横逃げ角β15を5度に、外横逃げ角β16を0度に、内横切刃角γ11を0度に、外横切刃角γ12を3度に設定しているが、この外横逃げ角β16及び内横切刃角γ11に適宜角度を持たせてもよい。
【0019】
このように構成されたホールカッターを回転向きXFへ回転させて切削すると、切削開始時や切削終了時に最も切削荷重がかかる箇所である外前切刃18と外横切刃12との間の交差部分は、外刃付角θ18が大きくなるために欠けにくくなる。一方、内刃付角θ17が小さくなるために切れ味を維持することができる。
【0020】
前記実施形態の各刃部6においてはチップ刃8を刃筒3に取着したが、各刃部6を刃筒3に対し一体に形成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】(a)は本実施形態にかかるホールカッターを示す一部切欠き正面図であり、(b)は同じく拡大平面図であり、(c)はこのホールカッターの刃部を示す部分拡大斜視図である。
【図2】(a)は上記ホールカッターの刃部を示す部分拡大正面図であり、(b)は同じく部分拡大平面図であり、(c)は(a)の刃部を側面側から見た断面図である。
【図3】(a)は図2(a)の部分拡大図であり、(b)は図2(b)の部分拡大図であり、(c)は図2(c)の部分拡大図である。
【符号の説明】
【0022】
3…刃筒、4…回転軸、4a…回転中心線、6…刃部、10…前切刃、11…内横切刃、12…外横切刃、13…前逃げ面、14…すくい面、15…内横逃げ面、16…外横逃げ面、17…内前切刃、18…外前切刃、19…内前逃げ面、20…外前逃げ面、X…回転方向、XF…回転向き、Y…半径方向、Z…回転中心線方向、θ17…内刃付角、θ18…外刃付角、α…すくい角、β19…内前逃げ角、β20…外前逃げ角、β15…内横逃げ角、β16…外横逃げ角、γ17…内前切刃角、γ18…外前切刃角、γ12…外横切刃角、W17…内前切刃の半径方向幅、W18…外前切刃の半径方向幅。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転中心線を有する刃筒の端部外周に複数の刃部を回転方向へ間隔をあけて並設したホールカッターにおいて、この刃部は、回転方向の両側のうち回転向き側で半径方向に沿って延びる前切刃と、半径方向の内側で回転中心線の方向に沿って延びる内横切刃と、半径方向の外側で回転中心線の方向に沿って延びる外横切刃と、この前切刃を含む前逃げ面とを備え、この刃部の前逃げ面は、この内横切刃に連続する内前切刃を含む内前逃げ面がなす内前逃げ角と、この外横切刃に連続する外前切刃を含む外前逃げ面がなす外前逃げ角とを有し、この内前逃げ角を外前逃げ角よりも大きく設定したことを特徴とするホールカッター。
【請求項2】
前記内前切刃がなす内前切刃角を前記外前切刃がなす外前切刃角よりも大きく設定するとともに、この内前切刃の半径方向幅をこの外前切刃の半径方向幅よりも小さく設定するか、または、この内前切刃の半径方向幅とこの外前切刃の半径方向幅とを同一に設定したことを特徴とする請求項1に記載のホールカッター。
【請求項3】
前記刃部は前記内前切刃と外前切刃と内横切刃と外横切刃とで囲まれたすくい面を備え、このすくい面はすくい角を有していることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のホールカッター。
【請求項4】
前記内横切刃と外横切刃とのうち、少なくとも外横切刃は外横切刃角を有していることを特徴とする請求項3に記載のホールカッター。
【請求項5】
前記刃部は、前記内横切刃を含む内横逃げ面と、前記外横切刃を含む外横逃げ面とを備え、この内横逃げ面と外横逃げ面とのうち、少なくとも内横逃げ面は内横逃げ角を有していることを特徴とする請求項3または請求項4に記載のホールカッター。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−90486(P2007−90486A)
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−282522(P2005−282522)
【出願日】平成17年9月28日(2005.9.28)
【出願人】(000205052)大見工業株式会社 (27)
【Fターム(参考)】