説明

ホールカッター

【課題】 本発明は熟練を要せず安全確実容易にグリーンのホールカップを新設し、既設グリーンホール9’を埋戻し得るホールカッターを得ることを目的とする。
【解決手段】 鋼製円筒1の下縁に複数の切削刃2を設け、該円筒1の上端板3に共通中心軸線c上に回動軸4を設け、上記上端板3に昇降摺動自在に挿通した複数個のロッド5の下端に上記中心軸線cを共有する1個の接地板6を上記円筒1内に設け、上記ロッド5の上端部を上記回動軸4に摺動自在に嵌合した踏板7に接続し、上記回動軸4を回動して上記円筒1、上記上端板、上記ロッド5及び踏板7を上記中心軸線cの回りに回動可能に形成してなり、上記上端板3に抜気用開閉弁8を設けてなるホールカッター。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はゴルフ場のグリーンのホールカップを穿設する装置(ホールカッター)に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ホールカッターは、両手でハンドルレバーを把持し、押し下げながら手動で左右に回動させ、又はエンジンによる叩打装置により、円筒をグリーンに叩打進入させた(例えば特許文献1)。
【0003】
又電気ドリルに設けたハンドルレバーを把持し、電気ドリルで回動軸を左右に回動させながら押し下げることによって円筒下端の切削刃でグリーンを切削し、円筒内に芝生及び土砂を進入させた。
【0004】
上記円筒内に進入する芝生及び土砂は接地板を押上げるため、接地板と円筒の上端板との間に空気が圧縮される。そのため円筒内の土砂は接地板によって上記圧縮空気で下方に押されてグリーン上方に持上げた円筒から下降排出される力が働き、既設グリーンホールに移送途中で円筒から摺動落下するおそれがあり、安全確実に新規グリーンホールの掘削及び既設グリーンホールの埋戻しを行うための熟練を要した。
【0005】
【特許文献1】実開昭58−72289号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は熟練を要せず安全確実容易にグリーンのホールカップを新設し、既設グリーンホール9’を埋戻し得るホールカッターを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するため本発明は
第1に鋼製円筒の下縁に複数の切削刃を設け、該円筒の上端板に共通中心軸線上に回動軸を設け、上記上端板に昇降摺動自在に挿通した複数個のロッドの下端に上記中心軸線を共有する1個の接地板を上記円筒内に設け、上記ロッドの上端部を上記回動軸に摺動自在に嵌合した踏板に接続し、上記回動軸を回動して上記円筒、上記上端板、上記ロッド及び踏板を上記中心軸線の回りに回動可能に形成してなり、上記上端板に抜気用開閉弁を設けてなるホールカッター、
第2に上記円筒と上記上端板との間及び該上端板と上記ロッドとの間を気密に形成した上記第1発明記載のホールカッター、
第3に上記踏板の外径が上記上端板及び上記円筒の外径より大であり、かつ該踏板に複数の覗き部を切欠き形成した上記第1又は第2発明記載のホールカッター、
によって構成される。
【0008】
従って上端板に設けた抜気用開閉弁を開いて上端板と接地板との間の空間を大気に連通させ、その状態でハンドルを把持してこれを押し下げながら回動軸及び上端板並びに円筒を一方に回動することにより、円筒下端の切削刃が芝生及び土砂を掘削し、円筒が下降するから掘削土砂は円筒内に進入し接地板を上端板に向って押上げ、接地板と上端板との間の空気は開かれた上記開閉弁から大気に抜気される。
【0009】
その状態で掘削土砂は接地板を押上げ、上端板と近接するから上記開閉弁を閉鎖し、空気を接地板と上端板との間に密封する。
【0010】
その状態で上記円筒をグリーン上方に上昇させると掘削土砂は円筒内に密封空気の影響によって円筒内を摺動下降することなく保持されるから、これを既設グリーンホール直上に運搬し、開閉弁を開くことによって上記密封空気を大気に連通させることができ、その状態で踏板を踏むことにより円筒内の掘削土砂は接地板、ロッド及び踏板と共に下降し、これを既設グリーンホールに埋戻すことができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明は上述のように掘削下降に際し、上記開閉弁を開いて上端板と接地板との間の空間を大気に連通させるため、接地板は容易に上昇し、円筒内に芝生及び土砂を進入させ易く切削容易であり、
その状態で上記開閉弁を閉鎖して上記空間を大気と隔絶し、大気の進入がないため円筒内に進入した土砂は上記空間内の密閉空気に負圧が働き進入土砂の自重による摺動下降は阻止され、大気中に引上げた上記円筒内の土砂が落下するおそれがないし、
既設グリーンホールの直上において上記開閉弁を開いて上記空間を大気と連通させることによって円筒内の土砂に掛る上記負圧は大気に開放され、該土砂は円筒から摺動落下し易くなり既設グリーンホールを容易に埋戻すことができる効果がある。
【0012】
尚、上記踏板の外径が円筒、上端板の外径より大であるため足先で踏下し易くかつ安全であると共に覗き部の形成により軽量であるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
高さ約150〜260mm、外径約108mm、厚さ約1mmの鋼製円筒1の下端縁に開き角45度毎に大形鋸刃状の山形切削刃2を複数(4個)形成する。
【0014】
上記各山形切削刃2はそれぞれ緩傾斜刃2’と急傾斜刃2”とよりなり、緩急各傾斜刃2’,2”にそれぞれ超硬チップ2a,2a’を植設する。この超硬チップ2a,2a’はダイヤモンド研磨機で研磨可能で、かつ取替可能である。
【0015】
上記円筒1の上端縁内周には上端板3の外周下向環3’をゴム製Oリング20を介して密封嵌合し、ボルト21で止着する(図2)。
【0016】
上記円筒1及び上端板3の中心軸線cを共有する回動軸4の下端を上端板3にボルト22(図2(イ)図)で固定し、該回動軸4の回動によって上端板3及び円筒1を中心軸線cの回りに左又は右に回動させる。
【0017】
又上記上端板3には上記回動軸4の回りに複数個の透孔3”,3”,3”を穿設し、該透孔3”,3”,3”にそれぞれ気密筒3aを介してロッド5,5,5を昇降摺動自在に挿入し、気密筒3aと上記透孔3”とを気密ゴムパッキング3b及び気密ゴムシール3cにより、上記ロッド5と上端板3とを気密に保持することができる。
【0018】
上記ロッド5,5,5の上端部にはそれぞれ螺旋5’を形成し、上記回動軸4に昇降摺動自在に嵌合した踏板7に穿設した小透孔に上記螺旋5’を挿通しナット5”,5”で締付けてロッド5と踏板7とを止着固定し、複数の上記ロッド5,5,5の下端には上記中心軸線cを共有する円形接地板6を上記円筒1内に昇降摺動自在に設ける。
【0019】
上記踏板7の外径は図3(イ)(ロ)(ハ)に示すように上記上端板3及び円筒1の外径よりも大であり(約1.4倍、約150mm)、(イ)(ロ)図では外周に沿って約40mm径の窓孔による覗き部7’を複数個形成し、又(ハ)図ではほぼW形切欠きによる覗き部7’を形成し、ボス部7”をスライドベアリング或はブッシュを介して上記回動軸4に摺動自在に嵌合させる。尚、図3(イ)(ロ)図による踏板7は回動軸4を電気ドリル14で回動させる際に用い、(ハ)図による3方延長踏板7は図1に示す手動ハンドル13,13による回動に用いる。
【0020】
上端板3には隣接する上記ロッド5,5の中間に図4に示すように抜気用開閉弁(ボールコック)8を設ける。
【0021】
上記開閉弁8は図5(イ)(ロ)(ハ)図に示すように直立小円筒9を上端板3に螺着8’し、該小円筒9の内部にボール弁10を設け、回動杆11を介して小腕12でボール弁10を垂直開通状態(図5(イ)図)から水平閉鎖状態(図5(ロ)(ハ)図)に90度回動させることによって該弁8を手動で開閉することができる。
【0022】
上記回動軸4の上端に図1に示す手動ハンドル13,13を設けた場合には上記開閉弁8を1個設け、図6に示すように電動ドリル14の駆動軸15を回動軸4の上端に設け、該ドリル14の両側にハンドル13,13を設けた場合には上記円筒1による掘削速度が大であるから上記開閉弁8を図4に示すように上記ロッド5,5の間にそれぞれ設けて(3個設ける)回転バランスをとり、かつ抜気量を増加する。
【0023】
上記抜気用開閉弁8は上記円筒1の掘削下降時即ち接地板6が上端板3に向って近接する際には小腕12を垂直にして開き(抜気し)、掘削後円筒1を地上に持上げる場合は円筒1内の土砂16が下降勝手となり(図6(ニ)図)接地板6と上端板3との間の空気圧が負圧となるから小腕12を水平(図5(ロ)(ハ)図)にして開閉弁8を閉鎖することにより円筒1内の土砂16の落下を阻止することができる。
【0024】
上記開閉弁8は図5に示す手動ボールコックによるが、円筒1の下降回動による土砂進入時に開き、円筒1の上昇時に閉じる逆止弁であっても差支えない。
【0025】
上記円筒1内に土砂16が進入充満し、これをグリーン(地面)17上方にハンドル13,13を把持して持ち上げ、既設グリーンホール19直上において抜気用開閉弁8を開き踏板7を足先で踏みつけて圧下することによりロッド5,5,5を介して接地板6を円筒1の内部を摺動下降し、円筒1内の土砂16を既設グリーンホール19内に圧入して埋戻すことができる(図6(ホ)図)。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明では新規グリーンホール18の掘削に際しては抜気用開閉弁8を開き、掘削後掘削土砂16を円筒1内に保持して上方空間に上昇させる場合は上記開閉弁8を閉鎖することによって土砂16の落下を防止し安全確実かつ容易に既設グリーンホール19を埋戻すことができる。
【0027】
又踏板7は径が大であるため踏み下し容易であるばかりでなく複数の覗き部7’によって踏板7を軽量化し、かつ該覗き部7’を経て上記開閉弁8を観察し、その開閉操作を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の手動式ホールカッターの正面図である。
【図2】(イ)図は円筒、上端板及び踏板の縦断面図、(ロ)図は上端板とロッドとの気密交差部の縦断面図である。
【図3】(イ)(ロ)(ハ)図は図2(イ)図A−A線による平面図である。
【図4】図2(イ)図B−B線による平面図である。
【図5】(イ)図は抜気用開閉弁の開放状態の縦断面図、(ロ)図は閉鎖状態の縦断面図、(ハ)図は(ロ)図を左方から見た正面図である。
【図6】(イ)(ロ)(ハ)図は電動式ホールカッターによる掘削状態の一部縦断正面図、(ニ)図は電動式ホールカッター及び掘削土砂の持上げ状態の一部縦断正面図、(ホ)図は埋戻し状態の一部縦断正面図である。
【符号の説明】
【0029】
1 鋼製円筒
2 切削刃
3 上端板
c 共通中心軸線
4 回動軸
5 ロッド
6 接地板
7 踏板
8 抜気用開閉弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼製円筒の下縁に複数の切削刃を設け、該円筒の上端板に共通中心軸線上に回動軸を設け、
上記上端板に昇降摺動自在に挿通した複数個のロッドの下端に上記中心軸線を共有する1個の接地板を上記円筒内に設け、
上記ロッドの上端部を上記回動軸に摺動自在に嵌合した踏板に接続し、
上記回動軸を回動して上記円筒、上記上端板、上記ロッド及び踏板を上記中心軸線の回りに回動可能に形成してなり、
上記上端板に抜気用開閉弁を設けてなるホールカッター。
【請求項2】
上記円筒と上記上端板との間及び該上端板と上記ロッドとの間を気密に形成した請求項1記載のホールカッター。
【請求項3】
上記踏板の外径が上記上端板及び上記円筒の外径より大であり、かつ該踏板に複数の覗き部を切欠き形成した請求項1又は2記載のホールカッター。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−7804(P2009−7804A)
【公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−169191(P2007−169191)
【出願日】平成19年6月27日(2007.6.27)
【出願人】(506227770)
【Fターム(参考)】