説明

ホーン受信装置、ホーンシステム、ホーン受信装置の駆動方法およびプログラム

【課題】運転者がホーンを鳴らすと、通常のホーンの音で警報を伝える一方、それと同時に、その警報電波を検知できる手段で、警報の発生を伝える仕組みを実現する。
【解決手段】ホーン音とともに出力される識別可能な警報電波を、受信する受信アンテナと、ホーン音を検出するとともに、ホーン音の方向を識別するホーン音検出識別手段と、ホーン音検出識別手段により識別されたホーン音の方向を知らせるための報知手段と、受信アンテナで前記識別可能な警報電波を受信すると、ホーン音検出識別手段に前記ホーン音の方向を識別するように指示し、識別結果で得られた方向を前記報知手段で知らせるように制御するホーン受信制御部と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両から発生するホーン音と警報電波を受信するホーン受信装置、ホーンシステム、ホーン受信装置の駆動方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車や電動自転車は、従来の自動車やオートバイに比べると、エンジン音がしない。そのために、電気自動車や電動自転車が近づいていることを知らせる方法が求められる。
【0003】
電気自動車や電動自転車等の車両の運転者が前方の歩行者に車両が近づいていることを知らせる方法としては、ホーンを鳴らすことがある。しかし、耳の遠い高齢者や聴覚障害者の場合は、健常者には騒音になるようなホーンの音が、届かないこともある。そこで、運転者がクラクションを鳴らすと、その警報を健常者だけでなく、耳の遠い高齢者や聴覚障害者にも伝える仕組みの実現が望まれる。
【0004】
このような仕組みとして基本的な考えは、運転者がホーンスイッチを押すと、従来のホーンが鳴ることと同時に、FM電波や通信電波を使ってホーンスイッチが押されたことを通知し、その通知を受信できる受信機を歩行者に持たせておき、その通知を受信すると、受信機でバイブレータなどを動作させて、聴覚に障害がある人でも、ホーンが鳴ったことを認知できる仕組みである。この基本的な考え方に基づいて種々の発明提案がすでになされている。
【0005】
大きく分けると、車と歩行者での状況を想定して発明されたものと、騒音の大きな工事現場等でクレーンのような機械とそこでの作業員の間の接触事故を防ぐための状況を想定して発明されたものにわけることができる。
【0006】
車と歩行者での状況を想定して発明されたものとしては、特許文献1と特許文献2がある。一方、騒音の大きな工事現場等を想定して発明されたものとしては、特許文献3と特許文献4がある。
【0007】
特許文献1は、車両から発生するホーン音の有無を聴覚障害者に伝えることを目的としている。運転者が、ハンドルについている通常のホーンスイッチを押すと、通常のホーンがなるのと同時に、近距離用FM放送電波を発信させる。
【0008】
一方、聴覚障害者は、そのFM放送電波の受信機を持っている。その受信機が事前に取り決めておいた特定の電波を受信すると接続されているバイブレータを振動させる。これにより、聴覚障害者も、バイブレーションを体感することで、健常者と同様に、運転者のホーンスイッチを押すアクションによる警告を認識することができるようになる。ただし、ホーンの大きさや緊急度については固定的である。通常のホーンでは、ホーンスイッチの押し方によって、音量を変えることができる。従って、運転者は、注意を促したい時は大きい音を、歩行者にちょっとした気づきを与えたい程度の時は小さい音をならすようにしている。しかし、この発明では、運転者がバイブレーションの動きの程度を選択的に変える仕組みは有していない。
【0009】
特許文献2は、車両から発生するホーン音の有無を聴覚障害者に伝えることを目的としている。この発明でも、特許文献1と同様に、車体側でホーンスイッチを押すと、車体のボンネットに設置された電波発信装置から周辺に警告の電波が一斉に放送される。一方、歩行者は、対応する受信機を有している。上記電波を受信すると、特定はしていないが、バイブレーション等で歩行者に接近車両の存在を通知する。
【0010】
特許文献3は、工事現場等におけるクレーンフックに発信機をとりつけ、近辺で作業をしている作業員への警報装置が開示されている。発信機からは、発信機の電源がオンの場合は常時、警告電磁波が発信されている。一方、受信機は、作業員の体(例:ヘルメット)に保持され、作業員は、騒音環境の作業中でも発信機の電磁波の受信を、(特定されてはいないが)バイブレーション等で認知できるようにするものである。また、クレーンフックから遠い距離にいる作業員には、このような警告信号は無用なものなので、到達距離を変更可能になっている。それにより、クレーンの近くにいる作業員、あるいは、クレーンの近くに接近した作業員だけに、警告信号が伝わるようにしている。このように、この発明の特徴は、常時警告信号が発信されていることと、警告信号の到達距離が変更可能な点である。
【0011】
特許文献4は、特許文献3と同様、作業現場等において工作機械に発信機をとりつけ、近辺で作業をしている作業員への警報装置が開示されている。この発明の特徴は、工作機械が異常を発生したときに、その異常状態を電波で発信し、近くの作業員に伝えることをする点である。特許文献3では、クレーンなどが対象だったので、クレーンの近くにいるということを知らしめるために、常に発信していたが、この発明の場合は、工作機械が異常状態になったときだけ発信される点が異なる。
【0012】
これら4つの発明をまとめると、以下のようになる。
・車やクレーンから人間(歩行者や作業者)へ電波を発信して、注意を喚起する仕組みは多数の提案が存在する。
・その伝達手段としては、FM電波、通信電波のいずれも存在する。
・車の場合は、ホーンスイッチを押される時が注意の喚起の発信になるが、工事現場の場合は、クレーンや工作機械から常に電波を発信して、その近くに来た作業員に通知できるようにしている。
・受信側は、受信するとバイブレータなどで、ホーンの音を認識しにくい人(例: 聴覚障害者)にも、注意すべきことを伝達できる仕組みを持つ。
・特許文献3では、注意を伝達する範囲(距離)を指定できる。それにより、十分、遠い所にいる人まで、通知される鬱陶しさがなくなる。
・特許文献4では、工作機械から常に電波を発信するのではなく、工作機械が異常状態になったときだけ、その電波を発信するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2007-182195号公報
【特許文献2】特開2002-092781号公報
【特許文献3】実開平07-013092号公報
【特許文献4】特開2006-221463号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
このように、上述した特許文献では、すでに複数の発明がすでに提案されているが、これらの発明のいずれもが含んでいないのが、「どの方向からの通知なのか」ということである。たとえば、歩行者が、ホーンを鳴らされたときに、それが、後方からなのか、右横からなのか、左横からなのか、前方からなのか、は、既存の発明では知るすべがない。車両等の対象が近くにいる、ということだけが通知されていた。
【0015】
本発明の目的は、運転者がホーンを鳴らすと、通常のホーンの音で警報を伝える一方、それと同時に、その警報電波を検知できる手段で、警報の発生を伝える仕組みを実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明に係わるホーン受信装置は、ホーン音とともに出力される識別可能な警報電波を、受信する受信アンテナと、
前記ホーン音を検出するとともに、前記ホーン音の方向を識別するホーン音検出識別手段と、
前記ホーン音検出識別手段により識別された前記ホーン音の方向を知らせるための報知手段と、
前記受信アンテナで前記識別可能な警報電波を受信すると、前記ホーン音検出識別手段に前記ホーン音の方向を識別するように指示し、識別結果で得られた方向を前記報知手段で知らせるように制御するホーン受信制御部と、
を有することを特徴とする。
【0017】
本発明に係わるホーンシステムは、指定された到達距離が遠ければ大きく、該到達距離が小さければ小さくホーン音を発生するホーン部、
前記到達距離が遠ければ警報電波の伝搬距離が遠くなるように、前記到達距離が小さければ警報電波の距離が近くなるように、警報電波を送信する電波ホーン部、及び
前記到達距離を含むホーン作動指示を受けて、前記到達距離を指定して前記ホーン部と前記電波ホーン部との両方を作動させ、前記ホーン作動指示がとまったときに、前記ホーン部と前記電波ホーン部との両方の作動を止めるホーンスイッチを有するホーン発生装置と、
上記本発明に係わるホーン受信装置とを備えることを特徴とする。
【0018】
本発明に係わるホーン受信装置の駆動方法は、ホーン音とともに出力される、識別可能な警報電波を受信し、
前記識別可能な警報電波を受信すると、前記ホーン音を検出するとともに前記ホーン音の方向を識別し、
識別した方向を、前記ホーン音の方向を知らせるための報知手段で知らせることを特徴とする。
【0019】
本発明に係わるプログラムは、コンピュータに、
ホーン音とともに出力される識別可能な警報電波を、受信アンテナで受信すると、ホーン音検出識別手段に、前記ホーン音を検出するとともに、前記ホーン音の方向を識別するように指示する機能と、
前記ホーン音検出識別手段により識別された前記ホーン音の方向を報知手段で知らせるように該報知手段を制御する機能と、
を実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明の第1の効果は、聴覚障害者や高齢者のように音による自動車やバイクのホーンを聞くことが困難な人、騒音中の作業者等の対象者に対して、運転者が音以外の振動という手段で通知をする仕組みが提供でき、振動のオン・オフだけではなく、どの方向にその音源があるかも伝えることができる効果がある。
【0021】
本発明の第2の効果は、運転者側でホーン音と電磁ホーンとの両方で、ホーンを伝播させたい範囲を距離の遠近に応じて可変に指定できることである。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に係わる第1の実施形態のホーンシステムの構成を示すブロック図である。
【図2】本発明に係わる第2の実施形態のホーンシステムのホーン発生装置の構成を示すブロック図である。
【図3】ホーン受信制御部の動作を示すフローチャートである。
【図4】本発明に係わる一実施形態のホーン受信装置の原理を示す説明図である。
【図5】本発明に係わる一実施形態のホーンシステムの原理を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に係わる典型的な実施の形態について図面を用いて説明する。
【0024】
まず、本発明に係わる一実施形態のホーン受信装置及びホーンシステムの原理について図4及び図5を用いて説明する。図5は本実施形態のホーンシステムの原理を示す説明図であり、図4は本実施形態のホーン受信装置の原理を示す説明図である。
【0025】
図5に示すように、ホーン送信装置のホーンスイッチを押すと、ホーンが鳴る(ホーン音が出力される)だけでなく、近距離に警報電波を発信させる。一方、受信者にはその警報電波の受信機(ホーン受信装置)を持たせておき、その警報電波を受信すると接続されているバイブレータを振動させる。かかる構成及び動作は、特許文献1を基本にしている。しかし、本実施形態では、特許文献1に比較して、受信機に追加の機能を具備している。受信機には、電波の受信部の他に、
・音源の方向を推定するマイクロホンアレイ(マイクロホンを複数個)
・方向単位に独立に振動が可能なバイブレータを複数個
を持たせておく。このマイクロホンアレイ(ホーン音検出識別手段となる)では、鳴ったホーンを入力として、音源の位置を推定する。そして、その方向に対応するバイブレータのみを振動させるのである。方向を知らせる報知手段としては、バイブレータに限定されず、骨伝導のスピーカを複数個設けてもよい。報知手段を構成する、複数のバイブレータや複数の骨伝導のスピーカにおいて、各バイブレータ、各骨伝導のスピーカは報知素子となる。
【0026】
音源方向推定技術は、マイクロホンアレイに限らず、音源方向推定に関する既存技術を用いることができる。音源方向推定については、音源方向推定の研究(東京電気研究室)
http://www.asp.c.dendai.ac.jp/act_s_DOA01.html
に記載されている。音源方向検知装置としては特開平11−83982号公報に記載がある。
【0027】
この仕組みを組みこんだ受信機のイメージを図4に示している。図4では、マイクロホンとバイブレータの対が、直角対角線の4方向に1つずつ固定されている冠状のものを人間がかぶっている様子を示している。この状態で、この人間の後方に車が近づき、ホーンが鳴ったとする。そうすると、マイクロホンアレイで、まず音源の位置を同定する。音源が後部にあることを判断すると、音源に近いマイクロホンに対応する後部のバイブレータのみを振動させる。これにより、この人は、後部からホーンが鳴ったことを頭の後部につけられているバイブレータが振動することで認識できることになる。なお、これは、6方向でも8方向でも構わない。マイクロホンとバイブレータの対の数は特に限定されず、必要に応じて設定される。例えば、2方向、3方向にマイクロホンとバイブレータの対を設定することも可能である。ただし、交差点等では前後、左右から自転車等が出現する可能性があるので、4方向以上であることが望ましい。
【0028】
この受信機の構成の原理の詳細を図5を用いて更に説明する。
【0029】
本実施形態のホーンシステムでは、電気自転車を含む自転車、バイク(自動2輪車)、電気自動車を含む自動車等の車両の運転者がホーンスイッチを押すと、実際の音としてのホーンと、電波の両方を使うことで、受信者に接近事象とその方向を伝達している。
【0030】
車両の運転手がホーンスイッチを押すと、ホーン音が鳴るのと同時に、スイッチが押されたことをFM電波で、その車の周囲に届く範囲に送信する。
【0031】
一方、歩行者の持つ受信機では、まず、そのFM電波を受信する。それを受信すると、マイクロホンアレイに対して、その時に鳴った音の音源の方向(位置)を同定するように指示をだす。マイクロホンアレイが音源の方向(位置)を同定すると、その方向のバイブレータを振動するように指令をだす。例えば、マイクロホンAが音源の方向に近いと判断した場合には、マイクロホンAに対応するバイブレータAに振動の指令を出す。
【0032】
ここで、ホーン音をマイクロホンアレイで常に正しく検知できれば、ホーン音を使うだけでも方向の同定は実現可能とも考えられる。しかし、世の中には、ホーン音に限らず、様々な音が受信者の周りに存在しており、その様々な音の中から、ホーン音だけを区別して聞き出すのは、現在のコンピュータの音処理技術では、まだ精度が十分に得られない。実際、ホーン部から発生するホーン音に含まれる周波数成分をPLL回路によって検出する仕組みで実現した場合ホーン部が配設された自動車等の車両の移動や周囲環境の雑音などの影響を受けて、ホーン音の周波数は容易に変化し、ホーン音の誤検出や未検出となる恐れがある。
【0033】
また、PLL回路における周波数分周器の設定値やVCOの電圧値等の調整を行なうことが求められる。
【0034】
これに対し、ホーン音と同時に警報電波でホーンスイッチの押下を通知してもらうことで、「いつ、ホーンが鳴ったか」ということを、正確に検知できるようになり、それを受信した時の音は、「ホーンの音」であることが確実であるので、その音の音源位置をマイクロホンアレイによって推定することで、ホーンの音の音源位置を高精度に推定できるようになる。
【0035】
なお、特許文献1では、バイブレータは、受信者は1つしかもっていないので、方向を示すことができなかったことを注記しておく。
【0036】
本実施形態は、内容的には、2つの実施形態から構成される。第1の実施形態は、本発明における基本構成を表している。また、第2の実施形態は、第1の実施形態に機能を追加した応用形である。
【0037】
第2の実施形態は、ホーンを遠くまで鳴らす(例:車から50メートル離れている歩行者)か、近くだけに(例:車から10メートル離れている歩行者)鳴らすかを区別して作動させる仕組みを加えている。従来のホーンの場合は、強く押せば、大きな音がでるし、軽く押せば、小さな音がでるので、遠くの歩行者にホーンを伝えるかどうかは、音の強弱で制御できた。しかし、本実施形態では、音の代わりに振動で伝えるため、音の強弱は使えない。そこで、送信側で、通信電波の強さをかえることで、遠くの受信機まで信号を送信するか、あるいは、近くの受信機にのみ信号を送信するかを制御できるようになる。受信側は、特段の処置をすることはない。受信側は、自分に電波が届けば処理をするし、自分に電波が届かなければ、何もしないだけである。既存発明の特許文献3では、注意を伝達する範囲(距離)を指定できる電波の強度を可変にしているが、本実施形態では、さらに、特許文献3には存在しない「音源の方向」情報を組み合わせて受信者に提供できるようにしている。
【0038】
以下、本発明に係わる第1の実施形態について説明する。
【0039】
図1に、本発明に係わる第1の実施形態を示す。
【0040】
図1で、1は、外部からホーンを作動するよう指示されると大きな騒音を発生するホーン部である。図1の構成を、自動車へ組み込む場合で考えた場合は、ホーン部1は、既存の自動車に通常設置されているホーンでかまわない。
【0041】
2は電波ホーン部であり、外部からホーンを作動するよう指示されると、指示されている間、警報であることが識別可能な警報電波を生成してFM変調された電波で、電波の伝搬距離が所定範囲内に制限されるように設定して送信する送信アンテナを持つ。識別可能な警報電波は、事前に取り決めておいた特定のコードをメモリに記憶しておき、電波を生成するときに電波源信号に埋め込む。
【0042】
3はホーンスイッチであり、運転者が、視界前方の人や車に注意を喚起するようホーン作動を指示すると、指示されている間、ホーン部1と電波ホーン部2のホーン同報送信部の両方に対してホーンを作動するよう指示を送出し、運転者の指示が止まれば送出をとりやめる。ホーンスイッチ3は、既存の自動車でいえば、ハンドルに設置されるのが運転上都合が良い。
【0043】
ホーン部1、電波ホーン部2およびホーンスイッチ3は、車両側に設置され、車両設置ホーン部を構成する。
【0044】
次に、聴覚障害者や高齢者の歩行者が保持する歩行者保持ホーン受信部の構成要素を示す。
【0045】
4は、識別可能な警報電波を受信する受信アンテナである。
【0046】
5は、直角対角線の4方向に対応する位置に配置され、外部からの指示により、聴覚障害者に触覚的な報知のために振動する独立制御可能な4つのバイブレータである。各バイブレータは、外部からの指示を受け取ると、モータ駆動信号に変換し、このモータ駆動信号を用いてバイブレータが具備するモータを駆動させる。
【0047】
6は、4つのバイブレータと対応した4つのマイクホンから構成され、ホーン部1から出る音の音源の方向を識別して出力するマイクロホンアレイである。バイブレータ5の各バイブレータとマイクロホンアレイ6の各マイクは、一対一に対応している。また、マイクロホンアレイ6は、商用品を使えばよい。
【0048】
また、この図では、簡単なため4方向にしているが、より細かく、6方向、8方向、12方向、のようにマイクロホンを設置し、同様にバイブレータも同数を設置することも可能である。マイクロホンとバイブレータの設置数が増加するほど、音源の方向の同定の精度が高まるが、一方、コストが上昇し、装置の重さも重くなるので、精度と実用との兼ね合いが重要である。本実施形態において、マイクロホンの数は特定されず、必要に応じて設定される。例えば、2方向、3方向にマイクロホンを設定することも可能である。ただし、交差点等では前後、左右から自転車等が出現する可能性があるので、4方向以上であることが望ましい。
【0049】
7は、受信アンテナ4で識別可能な警報電波を受信すると、マイクロホンアレイ6に対して、音源の方向を識別するように指示を出し、識別結果で得られた方向に対応するバイブレータ5を一定時間動作させるホーン受信制御部である。受信アンテナ4、バイブレータ5、マイクロホンアレイ6、ホーン受信制御部7はまとめて歩行者保持ホーン受信部を構成する。
【0050】
ホーン受信制御部の処理の流れをフローチャートにして図3に示す。
【0051】
処理に先立ち、ホーン受信制御部7には、事前に電波ホーン部2のメモリに記憶してある識別可能なコードと同じものをメモリに記憶しておく。ホーン受信制御部7は、常に受信アンテナ4で識別可能な警報電波を受信しておく。受信アンテナ4で電波を受信すると(ステップS100)、電波信号に含まれるコードと、メモリに記憶しておいた特定のコードとを照合する(ステップS101)。照合が一致しない間は、そのまま無視する(ステップS102)。ホーン受信制御部7の周囲に車がいない、あるいは、その車がホーンを鳴らしていない限り、ほとんどの時間は、照合が成立しないので、受信しても何もしないことが続く。
【0052】
一方、近くに車が来て、そこから本実施形態に基づく送信側の装置を有している車から運転手がホーンを鳴らしたときには、同時に警報電波がでるので、それを受信することで照合が取れる。このような状況になり照合が取れたときに、所望の警報電波を受信したことを識別し、マイクロホンアレイ6に対して、音源の方向を識別するように指示を出す(ステップS103)。マイクロホンアレイ6から識別結果である方向情報を受け取る。そして、その方向情報に配置されたバイブレータ5を一定時間振動するよう指令を出す(ステップS104)。
【0053】
このように特定のコードの照合をとる結果、車両ごと、受信機ごとに共通であるため、本発明のホーン装置を持ついかなる車両からの警報電波に対しても、受信機を保持するいかなる歩行者に対しても反応できるようになる。
【0054】
次に、本発明に係わる第2の実施形態について説明する。
【0055】
第2の実施形態は、第1の実施形態の車両設置ホーン部のみが、新しいものに置換され、歩行者保持ホーン受信部については第1の実施形態と同じものが使われる。
【0056】
図2において、11は、外部からその到達距離の指定値とともにホーンを作動するよう指示されると、到達距離が遠ければ大きく、小さければ小さな騒音を発生するホーンである距離可変型ホーン部である。到達距離の指定値については、自転車のギアのように3段階や10段階など複数段階が可能である。本実施形態では、特定の段階数を指定されず、必要に応じて任意の数を設定可能である。
【0057】
図2の実施形態の構成を、自動車へ組み込む場合で考えた場合は距離可変型ホーン部11は、既存の自動車に通常設置されているホーン(ホーン)でかまわない。既存の自動車に設置されているホーンも、通常は、音量を可変にして発生することが可能である。到達距離の指定値については、自転車のギアのように3段階や10段階など複数段階が可能である。本実施形態では、特定の段階数を指定されず、必要に応じて任意の数を設定可能である。
【0058】
12は距離可変型電波ホーン部であり、外部からその到達距離の指定値とともにホーンを作動するよう指示されると、指示されている間、警報であることが識別可能な警報電波を生成してFM変調された電波で、前記指定された到達距離が遠ければ電波の伝播距離が遠くなるように、一方小さければ伝播距離が近くなるように、設定して送信する送信アンテナを持つ。
【0059】
距離可変型電波ホーン部12は、電波ホーン部2と同じ仕組みであるが、外部から到達距離の指定値を与えられると、図2に示すような対応表を参照して、電波強度を読み出し、その電波強度で、周辺に同報的に発信する。ここでは、到達距離のレベルを3段階にして、レベル1の電波強度では周囲10メートル到達程度、レベル2の電波強度では周囲30メートル到達程度、レベル3の電波強度では周囲50メートル到達程度、としている。なお、これは概算であり、周囲30メートル程度と言っても、周囲の環境によっては、30メートル以上伝播する場合も、あるいは、逆にそれ以下にしか伝播しない場合があってもかまわない。
【0060】
13は距離可変型ホーンスイッチであり、運転者が、視界前方の人や車に注意を喚起するよう到達距離の遠近も含めて警笛作動を指示すると、指示されている間、ホーン部と電波ホーン部の両方に対して、前記遠近の設定を含めてホーンを作動するよう指示を送出し、前記運転者の指示が止まれば送出をとりやめる距離可変型ホーンスイッチである。
【0061】
距離可変型ホーンスイッチ13も、ホーンスイッチ3と同様、既存の自動車でいえば、ハンドルに設置されるのが運転上都合が良い。距離可変型ホーンスイッチ13の場合、ホーンスイッチ3と異なり、運転者が容易にレベルを入力できる必要がある。形態について特に本実施形態で指定されないが、図2には、レベルが3段階ある場合の例を示している。ここでは、3つのボタンスイッチが連続に配置されている。このうちのどれかを押すことで、到達距離を指定したホーンの発生を運転者が指示できることになる。 上述した第1及び第2の実施形態に係わるホーン受信制御部は専用IC等のハードウェアで構成されるが、ソフトウェアで実現することもできる。コンピュータをCPU、ROM等の記憶手段、RAM等のメモリで構成し、図3に示したようなホーン受信制御部の動作をプログラムで記述し、このプログラムをROM等の記憶手段に記憶し、演算に必要な情報をRAM等のメモリに記憶し、CPUで当該プログラムを動作させることで、本実施形態のホーン受信制御部の機能をプログラムで実現することができる。
【0062】
以上説明した各実施形態の構成によれば、聴覚障害者や高齢者のように音による自動車やバイクのホーンを聞くことが困難な人、又は騒音中の作業者等に対して、運転者が音以外の振動という手段で通知をする仕組みが提供できる。また、このとき、振動のオン・オフだけではなく、どの方向にその音源があるかも伝えることができる。
【0063】
また各実施形態の構成によれば、運転者側でホーンを伝播させたい範囲を距離の遠近に応じて可変に指定できる。これにより、「緊急度は低いが、広い範囲の距離に通知したい」(例:廃品回収業者の車が通行)ような場合のホーンの発生の仕方が可能になる。
【0064】
上記の実施形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載されうるが、以下の構成には限られない。
【0065】
(付記1)
ホーン音とともに出力される識別可能な警報電波を、受信する受信アンテナと、
前記ホーン音を検出するとともに、前記ホーン音の方向を識別するホーン音検出識別手段と、
前記ホーン音検出識別手段により識別された前記ホーン音の方向を知らせるための報知手段と、
前記受信アンテナで前記識別可能な警報電波を受信すると、前記ホーン音検出識別手段に前記ホーン音の方向を識別するように指示し、識別結果で得られた方向を前記報知手段で知らせるように制御するホーン受信制御部と、
を有するホーン受信装置。
【0066】
(付記2)
付記1に記載のホーン受信装置において、
前記報知手段は、複数の報知素子を備え、前記ホーン受信制御部は、該複数の報知素子のうち前記ホーン音の方向に配置された報知素子を動作させることで前記ホーン音の方向を知らせるホーン受信装置。
【0067】
(付記3)
付記1に記載のホーン受信装置において、前記ホーン音検出識別手段は、前記複数の報知素子に対応して設けられた複数のマイクロホンを備えたマイクロホンアレイであるホーン受信装置。
【0068】
(付記4)
指定された到達距離が遠ければ大きく、該到達距離が小さければ小さくホーン音を発生するホーン部、
前記到達距離が遠ければ警報電波の伝搬距離が遠くなるように、前記到達距離が小さければ警報電波の距離が近くなるように、警報電波を送信する電波ホーン部、及び
前記到達距離を含むホーン作動指示を受けて、前記到達距離を指定して前記ホーン部と前記電波ホーン部との両方を作動させ、前記ホーン作動指示がとまったときに、前記ホーン部と前記電波ホーン部との両方の作動を止めるホーンスイッチを有するホーン発生装置と、
付記1から3のいずれかのホーン受信装置とを備えたホーンシステム。
【0069】
(付記5)
ホーン音とともに出力される、識別可能な警報電波を受信し、
前記識別可能な警報電波を受信すると、前記ホーン音を検出するとともに前記ホーン音の方向を識別し、
識別した方向を、前記ホーン音の方向を知らせるための報知手段で知らせるホーン受信装置の駆動方法。
【0070】
(付記6)
付記5に記載のホーン受信装置の駆動方法において、
前記報知手段は、複数の報知素子を備え、該複数の報知素子のうち前記ホーン音の方向に配置された報知素子を動作させることで前記ホーン音の方向を知らせるホーン受信装置の駆動方法。
【0071】
(付記7)
付記5に記載のホーン受信装置の駆動方法において、前記ホーン音の検出および識別は、前記複数の報知素子のそれぞれに対応して設けられた複数のマイクロホンで行うホーン受信装置の駆動方法。
【0072】
(付記8)
コンピュータに、
ホーン音とともに出力される識別可能な警報電波を、受信アンテナで受信すると、ホーン音検出識別手段に、前記ホーン音を検出するとともに、前記ホーン音の方向を識別するように指示する機能と、
前記ホーン音検出識別手段により識別された前記ホーン音の方向を報知手段で知らせるように該報知手段を制御する機能と、
を実行させるプログラム。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明は、自動車やバイク、自転車等の車両、特にエンジン音がしない電気自動車や電動自転車に対して、或いは騒音の大きな工事現場で用いられるホーン受信装置、ホーンシステム、ホーン受信装置の駆動方法およびプログラムに適用される。
【符号の説明】
【0074】
1 ホーン部
2 電波ホーン部
3 ホーンスイッチ
4 受信アンテナ
5 バイブレータ
6 マイクロホンアレイ
7 ホーン受信制御部
11 距離可変型ホーン部
12 距離可変型電波ホーン部
13 距離可変型ホーンスイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホーン音とともに出力される識別可能な警報電波を、受信する受信アンテナと、
前記ホーン音を検出するとともに、前記ホーン音の方向を識別するホーン音検出識別手段と、
前記ホーン音検出識別手段により識別された前記ホーン音の方向を知らせるための報知手段と、
前記受信アンテナで前記識別可能な警報電波を受信すると、前記ホーン音検出識別手段に前記ホーン音の方向を識別するように指示し、識別結果で得られた方向を前記報知手段で知らせるように制御するホーン受信制御部と、
を有するホーン受信装置。
【請求項2】
請求項1に記載のホーン受信装置において、
前記報知手段は、複数の報知素子を備え、前記ホーン受信制御部は、該複数の報知素子のうち前記ホーン音の方向に配置された報知素子を動作させることで前記ホーン音の方向を知らせるホーン受信装置。
【請求項3】
請求項1に記載のホーン受信装置において、前記ホーン音検出識別手段は、前記複数の報知素子に対応して設けられた複数のマイクロホンを備えたマイクロホンアレイであるホーン受信装置。
【請求項4】
指定された到達距離が遠ければ大きく、該到達距離が小さければ小さくホーン音を発生するホーン部、
前記到達距離が遠ければ警報電波の伝搬距離が遠くなるように、前記到達距離が小さければ警報電波の距離が近くなるように、警報電波を送信する電波ホーン部、及び
前記到達距離を含むホーン作動指示を受けて、前記到達距離を指定して前記ホーン部と前記電波ホーン部との両方を作動させ、前記ホーン作動指示がとまったときに、前記ホーン部と前記電波ホーン部との両方の作動を止めるホーンスイッチを有するホーン発生装置と、
請求項1から3のいずれか記載のホーン受信装置とを備えたホーンシステム。
【請求項5】
ホーン音とともに出力される、識別可能な警報電波を受信し、
前記識別可能な警報電波を受信すると、前記ホーン音を検出するとともに前記ホーン音の方向を識別し、
識別した方向を、前記ホーン音の方向を知らせるための報知手段で知らせるホーン受信装置の駆動方法。
【請求項6】
請求項5に記載のホーン受信装置の駆動方法において、
前記報知手段は、複数の報知素子を備え、該複数の報知素子のうち前記ホーン音の方向に配置された報知素子を動作させることで前記ホーン音の方向を知らせるホーン受信装置の駆動方法。
【請求項7】
請求項5に記載のホーン受信装置の駆動方法において、前記ホーン音の検出および識別は、前記複数の報知素子のそれぞれに対応して設けられた複数のマイクロホンで行うホーン受信装置の駆動方法。
【請求項8】
コンピュータに、
ホーン音とともに出力される識別可能な警報電波を、受信アンテナで受信すると、ホーン音検出識別手段に、前記ホーン音を検出するとともに、前記ホーン音の方向を識別するように指示する機能と、
前記ホーン音検出識別手段により識別された前記ホーン音の方向を報知手段で知らせるように該報知手段を制御する機能と、
を実行させるプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−238206(P2012−238206A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−107202(P2011−107202)
【出願日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【出願人】(390001395)NECシステムテクノロジー株式会社 (438)
【Fターム(参考)】