説明

ボイド含有ポリエステル収縮フィルム

本発明では、連続ポリエステル相内にボイド形成剤を含むポリエステル収縮フィルムが開示される。当該ボイド形成剤には、少なくとも一種の第1のポリマー及び少なくとも一種の第2のポリマーが含まれ、当該ポリマー成分は、所定の選定されたガラス転移温度、融点、引張弾性、表面張力、及び溶融粘度のような物性を有する。得られる収縮フィルムは、高不透明度、低摩擦係数、低密度、低収縮力、及び良好な印刷性を有する。当該フィルムは、スリーブ、ラベル及び他の収縮フィルムの用途に有用であり、その低密度によって、再生時に、ソフトドリンクボトル、食品容器などからこれを容易に分離することが可能である。また、ポリマー混合物からのボイド含有ポリエステルの分離方法も開示している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボイド含有ポリエステル収縮フィルムに関する。より詳細には、本発明は、少なくとも一種の第1のポリマー及び少なくとも一種の第2のポリマーを含むボイド形成剤を分散して有する、延伸された連続ポリエステル相を含み、前記ポリマー成分がガラス転移温度、引張弾性率、融点、表面張力、および溶融粘度のような選定された物性を有する、ボイド含有収縮フィルムに関する。更に、本発明は、ボイド含有収縮フィルムの製造方法及び種々のポリマー混合物からのボイド含有ポリエステルの分離方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、シート、フィルム、チューブ、ボトル、スリーブ、及びラベルのような成形品は、通常、種々な包装用途に使われている。例えば、ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリ(塩化ビニル)、ポリエステルなどのようなポリマーから作られたフィルム及びシートは、屡、プラスチック飲料又は食品容器用の収縮ラベルの製造に使用されている。多くの包装用途では、その成形品が、例えば、良好な印刷適正、高い不透明度、低密度、低収縮力、優れた質感、再循環性、及び高剛性のような特性を示すことが望ましい。例えば、プラスチック材料の再利用時に、ラベルが、当該再利用されるポリマーを汚し、また脱色させるインク、接着剤、及び他の物質が存在するために、屡、容器の架台から分離してしまう。仮に、ラベルポリマーの密度が、容器ポリマーの密度と実質的に異なるならば、当該ラベルポリマーの分離は、ラベルポリマーが浮遊するか沈み込んで他のポリマーと分離するようになっている単純で経済的なフロート法によって行うことができる。残念なことに、包装に屡使われるラベル材料と容器材料とは、かかるフロート法の使用を妨げる同じような密度を有していることが多い。
【0003】
この密度を下げる一つの手段は、多数の小さなボイド又は孔を成形品中に導入することである。この工程は、「ボイド化(voiding)」と呼ばれ、また、「空洞化(cavitating)」又は「微孔質化(microvoiding)」と定義されてもよい。ボイドは、マトリクスポリマー中に5〜50重量%の有機または無機の小粒子、即ち「包含物」(当該分野では、「ボイド化」又は「空洞化」剤ともいう。)を混入させ、少なくとも一方向に当該ポリマーを延伸することによって得られる。延伸時に、小さな空洞やボイドが、ボイド形成剤の周囲に形成される。ボイドがポリマーフィルムに導入されるときは、得られるボイドフィルムは、非ボイドフィルムよりも低密度を有するばかりでなく、不透明となり、紙様の表面をもつようになる。また、この表面は、印刷適正を増大させるという利点を有する。つまり、この表面は、非ボイドフィルムを超える実質的により大きな能力を有し、多くのインクを受容することができる。ボイドフィルムの典型的な具体例は、米国特許第3,426,754号、同第3,944,699号、同第4,138,459号、同第4,582,752号、同第4,632,869号、同第4,770,931号、同第5,176,954号、同第5,435,955号、同第5,843,578号、同第6,004,664号、同第6,287,680号、同第6,500,533号、同第6,720,085号明細書、及び米国特許出願2001/0036545号、同第2003/0068453号、同第2003/0165671号、同第2003/0170427号明細書、特開昭61−037827号、特開昭63−193822号、特開2004−181863号公報、欧州特許第0581970号、及び欧州特許出願第0214859号明細書に記載されている。
【0004】
ボイド形成フィルムは公知であるが、それらは、屡、多くの欠点を有し、時々、非ボイド化対象物に比して、例えば、貧弱な剛性、不十分な不透明性、高い収縮力、及び大きな表面粗さのような劣った特性を示し、そのため多くの包装用途にとって望ましくないものとされている。包装用ラベルの場合は、屡、例えば、ボイド形成フィルムが不透明となるような高濃度のボイドを有することが美的目的のために望ましいとされている。しかしながら、このボイド数を増加させると、ラベルの表面荒さが増大して、印刷の画質、質感及び感覚、及びラベルの接合性が悪くなることとなる。この問題に対処するために、多くのボイド形成フィルムでは、多層を有しており、そこでは非ボイド化表面層がボイド含有コア層に(付着あるいは同時押出によって)固着されている。この非ボイド化層は、それがボイド形成層よりも平滑な表面を与えるために適用されている。このアプローチは、多くの前記問題を解決するが、かかる多層フィルムの製造は高価であり、また、付加的な共押出し又は積層設備を要することになる。多層フィルムは、また、その表面にボイドが欠如し、あるいは減少しているために、典型的に、全体のフィルム密度が高く、単層フィルムほど望ましいものではない。また、例えば、ボトルや熱成形トレーのような容器にボイドを導入することも可能である。ボイド形成容器は、軽量であり、より少ないポリマーで済み、そして直接印刷が可能であるので、ラベルに対する要求を省くことができる。
【0005】
慣用のボイド形成剤には、いくつかの不都合がある。炭酸カルシウム、タルク、シリカなどのような無機剤が、ボイド形成剤として使用されてもよいが、無機物質は典型的に高密度な材料であるので、成型品の最終密度が、屡、高くなり過ぎる。ボイド形成フィルムの場合には、例えば、ボイドの形成によってもたらされる密度の減少は、屡、無機剤の重量によって相殺されてしまう。
【0006】
例えば、ポリプロピレンのようなポリオレフィンが、ボイド形成剤として使われてもよい。しかしながら、ポリオレフィンは、屡、十分に分散せず、ボイドの均一な分布を得るために、例えば、カルボキシル化ポリエチレンのような相溶化剤を必要とすることがある。ボイド形成フィルムを得るためにポリエステルポリマーが使用されるときは、また、ポリオレフィンは、フィルムの界面張力を低減させ、それによってフィルムの印刷適正を低下させる傾向がある。ポリオレフィンは、室温下でポリエステルよりも柔らかく、時々、受け入れ難い程度まで全体のフィルムモジュラスを低下させてしまう。最終的に、ポリオレフィンは比較的効果の低いボイド形成剤であり、必要な密度の低下を達成するにはその大量が必要となる。先に議論したように、このことは、不良な表面粗さ及び印刷問題に通じるので、よって、それを単層フィルムに用いることは困難である。
【0007】
他のポリマーボイド形成剤、例えば、スチレン系樹脂材料、ポリメチルペンテン、ポリカーボネート、ナイロン、セルロース系材料などは、ポリオレフィンと同じいくつかのボイド形成における効率上の問題を欠点として有している。アタクチックポリスチレンのような、高モジュラスのスチレン系樹脂材料は、効果的なボイド形成剤であるが、それが高温下で混合、処理されるときに、ガスが発生するという問題を欠点として有しているので、低レベルでしか有用でない。また、スチレン系樹脂材料は、当該フィルムを脆化させる傾向を有する。架橋スチレンビーズがこの問題を回避するために使われてもよいが、これらのビーズは、高価であるという傾向を有する。セルロース系材料は、吸湿性であるという傾向を有し、これをポリマーマトリクスに混入する前には、別個の乾燥及び湿気除去工程を必要とする。ボイド形成収縮フィルムの場合には、セルロース系材料は、また、望ましくない高い収縮力が生ずる傾向がある。
【0008】
したがって、低密度、良好な印刷適正、低収縮力、高い不透明性、及び高剛性及び良好な質感と感覚のような他の望ましい物性を有する、例えば、フィルム、シート、ボトル、チューブ、繊維、及びロッドのようなボイドが形成された成形品の製造を可能とするような組成物が、必要とされている。フィルムの場合には、受け入れ可能な印刷適正、剛性、及び低密度を有する単層のボイド含有フィルムの製造が可能となる組成物が、求められている。かかる組成物は、ボイド含有収縮ラベルを製造するために、飲料及び食品包装業界にその有用性を有している。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0009】
我々は、ボイド含有製品の製造に有効な、ポリマーマトリクス及びボイド形成剤を含む組成物を見出した。本発明の組成物は、ポリエステルがポリマーマトリクスを含み、そしてそれが二軸延伸又は一軸延伸されて、高品質なボイド含有収縮フィルムとなるボイド含有フィルムの製造に有用である。よって、本発明によれば、少なくとも一種の第1のポリマー及び少なくとも一種の第2のポリマーを含むボイド形成剤を分散して有する延伸された連続ポリエステル相を含むボイド含有収縮フィルムであって、当該第1のポリマーが、当該ポリエステルのTgより大きいガラス転移温度(Tg)又は融点温度(Tm)、少なくとも1GPaの引張弾性率、及び当該ポリエステルの表面張力と絶対値で5ダイン/cm以下だけ異なる表面張力を有し、そして第2のポリマーが、当該ポリエステルの表面張力と絶対値で少なくとも5ダイン/cmだけ異なる表面張力、及び当該ポリエステルの溶融粘度に対する第2のポリマーの溶融粘度の比が0.1〜3.5である溶融粘度を有する、ボイド含有収縮フィルムが提供される。
【0010】
本発明のボイド含有ポリエステル収縮フィルムには、種々の組成物からなるポリエステルが含まれる。例えば、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、又はイソフタル酸の一種以上のジ酸残基、及び1,4−シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール、又はジエチレングリコールの一種以上のジオール残基を含む、非晶質又は半結晶質ポリエステルが使用されてよい。所望の当該フィルムの特性を変えるために、付加的な変性用の酸及びジオールが用いられてもよい。
【0011】
本発明の当該フィルムには、ある種の物性及びこれらのいくつかの物性とポリマーマトリクスの相当物性との関係に基づいて選定される、少なくとも一種の第1のポリマー及び少なくとも一種の第2のポリマーを含むボイド形成剤がフィルム中に分散して含まれている。これらのパラメータには、ガラス転移温度(明細書中、「Tg」と略される)又はその融点温度(明細書中、「Tm」と略される)、表面張力、引張弾性率、及び溶融粘度が含まれる。この第1及び第2のポリマーの組合せによれば、いずれの単独のポリマー成分をも超える優れた性能を有する、特に、収縮フィルムに高度な不透明性を与え、価格を引き下げ、加工性を向上させ、そして収縮力を低減させるボイド形成剤が提供される。第1のポリマーとして使用される典型的なポリマーには、セルロース系ポリマー、澱粉、エステル化澱粉、ポリケトン、ポリエステル、ポリアミド、ポリスルホン、ポリイミド、ポリカーボネート、オレフィンポリマー、及びそれらのコポリマーが含まれるが、これに限定されない。同様に、第2のポリマーには、ポリアミド、ポリケトン、ポリスルホン、ポリエステル、ポリカーボネート、オレフィンポリマー、及びそれらのコポリマーから選定される一種以上のポリマーが含まれる。本発明のその他の態様では、第1のポリマーには、一種以上の酢酸セルロース又は酢酸プロピオン酸セルロースが含まれ、そして第2のポリマーには、一種以上のポリスチレン、ポリプロピレン、又はエチレンメチルメタクリレートコポリマーが含まれる。
【0012】
また、本発明によれば、(i)ポリエステルのTg温度又はそれを超える温度でポリエステルとボイド形成剤を混合して、ポリエステル内にボイド形成剤の均一分散を形成すること、ここで、当該ボイド形成剤には、少なくとも一種の第1のポリマー及び少なくとも一種の第2のポリマーが含まれ、その第1のポリマーが、ポリエステルのTgより大きいTg又はTm、少なくとも1GPaの引張弾性率、及びそのポリマーマトリクスの表面張力と絶対値で5ダイン/cm以下だけ異なる表面張力を有し、そして第2のポリマーが、ポリエステルの表面張力と絶対値で少なくとも5ダイン/cmだけ異なる表面張力、及びポリエステルの溶融粘度に対する第2のポリマーの溶融粘度の比が0.1〜3.5である溶融粘度を有すること、(ii)シート又はフィルムを形成すること、そして(iii)工程(ii)のシート又はフィルムを一以上の方向に延伸すること、を含むボイド含有収縮フィルムの製造方法が提供される。本発明のボイド収縮フィルムは、一以上の方向に延伸されてよく、一層以上の層が含まれてもよい。当該フィルムは、優れた不透明性、良好なフィルム剛性、低収縮力、改善された接合性、高い表面張力(印刷用)、及び高い収縮性を有している。
【0013】
本発明のボイド含有ポリエステル収縮フィルムは、ポリマー混合物から容易に分離され、よって、市場の廃棄物から容易に回収、再生される。従って、本発明のその他の態様によれば、(i)ボイド含有ポリエステル及び少なくとも一の他のポリマーを含むポリマー混合物を、切断、細断し、又は磨砕して、粒子混合物とすること、(ii)当該混合物を、水性又はガス媒体中に分散させること、(iii)当該粒子を、高密度留分と低密度留分とに分配すること、そして(iv)高密度留分から低密度留分を分離すること、ここで、当該ボイド含有ポリエステルには、少なくとも一種の第1のポリマー及び少なくとも一種の第2のポリマーを含むボイド形成剤を分散して有する連続ポリエステル相が含まれ、その第1のポリマーが、ポリエステルのTgより大きいTg又はTm、少なくとも1GPaの引張弾性率、及びそのポリマーマトリクスの表面張力と絶対値で5ダイン/cm以下だけ異なる表面張力を有し、そして第2のポリマーが、ポリエステルの表面張力と絶対値で少なくとも5ダイン/cmだけ異なる表面張力、及びポリエステルの溶融粘度に対する第2のポリマーの溶融粘度の比が0.1〜3.5である溶融粘度を有すること、を含む異なるポリマー混合物からのボイド含有ポリエステルの分離方法が提供される。その優れた物性と組合せた本発明の収縮フィルムのリサイクル性は、特に、ラベルとして、及び他の包装用途に有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明では、少なくとも一種の第1のポリマー及び少なくとも一種の第2のポリマーを含むボイド形成剤を分散して有する延伸された連続ポリエステル相を含むボイド含有収縮フィルムであって、当該第1のポリマーが、当該ポリエステルのTgより大きいガラス転移温度(Tg)又は融点温度(Tm)、少なくとも1GPaの引張弾性率、及び当該ポリエステルの表面張力と絶対値で5ダイン/cm以下だけ異なる表面張力を有し、そして第2のポリマーが、当該ポリエステルの表面張力と絶対値で少なくとも5ダイン/cmだけ異なる表面張力、及び当該ポリエステルの溶融粘度に対する第2のポリマーの溶融粘度の比が0.1〜3.5である溶融粘度を有する、ボイド含有収縮フィルムが提供される。本発明の収縮フィルムは、二軸又は一軸延伸されて、単層又は多層に層状化されてよい。したがって、本発明には、例えば、当該ボイド含有基体に印刷ラベルが固着されあるいは積層化されている巻取り供給されたラベルにあるように、単一の層状フィルムが、例えば積層体又は共押出物のような一層以上の多層構造として組み込まれているフィルムが含まれるものと解されるべきである。本発明の収縮フィルムは、低温度での高い収縮率、及び低密度を有する。これらのフィルムは、スリーブラベルの用途、巻取供給ラベル、及び他の収縮フィルムの用途に有用である。
【0015】
本発明の組成物は、ボイド含有製品の製造に有用であり、そしてポリマーマトリクス及び当該ポリマーマトリクス内に分散されたボイド形成剤が含まれる。本明細書中で使用される用語「ボイド(voids)」、「微孔(microvoids)」、及び「微孔質(microporous)」は、同義語であることを意味し、製品の製造時に意図的に作られる、製品表面下のポリマー内に含有される小さな、分離したボイド又は孔を意味することは、当業者に十分に理解されている。同様に、本発明の組成物、ポリマー、及び成形品に関して、細書中で使用される用語「ボイドの(voided)」、「微孔の(microvoided)」、「空洞の(cavitated)」及び「ボイド含有の(void-containing)」は、同義語であることを表すつもりであり、「小さな、分離したボイド又は孔を含有する」ことを意味する。本発明の組成物には、ポリマーマトリクス内に分散した「ボイド形成剤」が含まれる。本明細書中で使用される用語「ボイド形成剤(voiding agent)」は、用語「ボイド形成組成物(voiding composition)」、「微孔形成剤(microviding)」、及び「空洞形成剤(cavitation agent)」と同義であり、ポリマーマトリクスの延伸又は伸張時に、「ポリマーマトリクス内にボイドの形成を引き起こす、即ち発生させるのに有用なポリマーマトリクス内に分散した物質」を意味するものと理解されるべきである。明細書中で使用される用語「ポリマーマトリクス(polymer matrix)」は用語「マトリクスポリマー(matrix polymer)」と同義であり、ボイド形成剤の粒子が連続相に取り囲まれて含有されるようにボイド形成剤が再分散されてもよい、連続相を与える一種以上のポリマーのことをいう。
【0016】
本発明組成物のポリマーマトリクスは、種々のポリマー範囲から選定されてよく、単一のポリマー又は一種以上のポリマーブレンドが含まれてもよい。適当な剛さの成形品を得るためには、当該ポリマーマトリクスは、典型的に、少なくとも50℃のガラス転移温度(以下、「Tg」と略記する。)を有する。本発明組成物のポリマーマトリクスに含まれてよいポリマーの非制限的な具体例には、一種以上のポリエステル、ポリ乳酸、ポリケトン、ポリアミド、オレフィンポリマー、フルオロポリマー、ポリアセタール、ポリスルホン、ポリイミド、ポリカーボネート、又はそれらのコポリマーが含まれる。本明細書で使用される用語「オレフィンポリマー」は、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ(アクリロニトリル)、ポリ(アクリルアミド)、アクリルポリマー、ポリ(酢酸ビニル)、ポリ(塩化ビニル)、及びこれらポリマーのコポリマーのようなエチレン系不飽和モノマーの付加重合から得られるポリマーを意味するものと考えている。本発明の組成物は、マトリクスポリマーのTg温度で、あるいはそれを超える温度で延伸又は伸張する際にボイドが形成される。延伸は、少なくとも1.5の延伸比で、一以上の方向に行われる。よって、当該組成物は、ポリマーマトリクスが一方向に延伸されることを意味する「一軸延伸され」ても、又は、ポリマーマトリクスが二つの異なる方向に延伸されることを意味する「二軸延伸され」てもよい。
【0017】
ボイド形成剤には、ガラス転移温度又は融点、表面張力、弾性率、及び溶融粘度、並びにそれらと関連するポリマーマトリクスの相当物性における特定の諸物性に従って選定される第1の又は第2のポリマーが含まれる。したがって、当該ポリマーマトリクス内に効率よくボイドを作るには、第1のポリマーが、延伸温度でのマトリクスポリマーよりも大きい硬さを有していることが望ましい。換言すれば、第1のポリマーは、室温で少なくとも1GPaである引張弾性率、及びポリマーマトリクスのTgよりも高い「融点」としても知られる溶融転移温度(以下、「Tm」と略記する。)又はTgを有することが必要である。結晶性ポリマーの場合には、Tmは、結晶領域がその構造を消失し、即ち溶融して、その弾性率が急勾配で下がる温度である。非晶質ポリマーの場合には、Tgは、非晶質領域がそのポリマー鎖の構造的易動度を失って、硬質のガラスとなる前の温度である。ある種のポリマー、特に、例えばポリエステルエーテルのような多くのエラストマーブロックコポリマーは、一つの相で高融点を有するが、依然として弾性率が低過ぎて、顕著な量のボイド形成を誘発しない。
【0018】
よって、一具体例として、仮に第1のポリマーが結晶性ポリマーであるならば、そのTmは、マトリクスポリマーのTgよりも高くなければならない。同様に、仮に第1のポリマーが非晶質であるならば、そのときはそのTgは、ポリマーマトリクスのTgよりも高くなければならない。第1のポリマーのTg又はTmがポリマーマトリクスのTgよりも大きいときには、ボイド形成剤の粒子は、ポリマーマトリクスよりも「より硬くなる」傾向があり、それによって延伸時でのポリマーマトリクス内のボイドの形成を効率的に行うことが可能となる。例えば、仮に、ポリマーマトリクスが、Tg74℃〜77℃(165〜170°F)を有するコポリエステルであるならば、本発明のボイド形成剤の第1のポリマーは、スチレンポリマー(Tg=100℃以上)であってよい。非晶質のポリマーは、典型的に、例えば、ASTM法D3418を用いる示差操作熱量計によるような周知な手段で測定されるときに、ガラス転移温度のみが示される。本発明の一の実施態様では、第1及び第2のボイド形成剤のポリマーは、架橋ポリマーではない。
【0019】
ポリマーマトリクス内でのボイド形成剤の分散は、仮に第1及び第2のポリマー成分の表面張力が、ポリマーマトリクスに比してある値の範囲内に維持されるならば改善される。よって、本発明によれば、ボイド形成剤の第1のポリマー成分は、ポリマーマトリクスの表面張力と絶対値で5ダイン/cm以下だけ異なり、そして第2のポリマー成分の表面張力は、ポリマーマトリクスの表面張力と絶対値で少なくとも5ダイン/cmだけ異なる表面張力を有する。更に、第1のポリマーとポリマーマトリクスとの間に示されてもよい表面張力の差の具体例は、絶対値で4ダイン/cm以下及び絶対値で3ダイン/cm以下である。また、第2のポリマーとポリマーマトリクスとの間に示されてもよい表面張力の差の具体例は、絶対値で少なくとも6ダイン/cm及び絶対値で少なくとも7ダイン/cmである。表面張力(以下、「臨界表面張力」ともいう。)は、公表された文献から決定されてもよいし、あるいは例えばセシルドロップ法又はZisman 臨界表面法(例えば、Accudyne(商標)ダインマーカーペンを用いて)によるような、当該分野で周知な手段によって測定されてもよい。後者の方法では、「臨界表面張力」を与え、それは、それぞれが異なる周知な表面張力を有する一連の試験流体に対して完全湿潤が起こる効果的な流体表面張力である。他の方法による臨界表面張力及び総表面張力は、略同じであるが、異なるときは、臨界表面張力値が、精度のため使用されるべきである。ポリマーマトリクス内へのボイド形成剤の更なる良好な分散を図るため、ポリマーマトリクスの溶融粘度に対する第2のポリマーの溶融粘度の比は、0.1〜3.5にされてよい。この比は、混合温度での第2のポリマーの溶融粘度を当該マトリクスの溶融粘度で割ったものとして定義される。典型的に、1秒-1の剪断速度での値が、動的又は静的状態の並行板又はコーン及び板の粘度計から決定される。この数値は、凡そ「ゼロ剪断」粘度である。その他の具体例では、ポリマーマトリクスの溶融粘度に対する第2のポリマーの溶融粘度の比は、0.5〜2.0であってよい。典型的に、本発明のポリマーの溶融粘度は、(押出機内で見られることを含めて)広範な剪断範囲に亘って、ニュートン挙動(即ち、非剪断流)を示している。
【0020】
第1のポリマーは、典型的に、ポリマーマトリクスに分散させた後で、平均粒度0.01〜50μmを有する。この粒度範囲であれば、ボイド形成剤がマトリクスポリマーの全体にわたって均一に分散することが可能となる。ボイド形成剤の第1のポリマーに係る平均粒度の付加的な具体例は、0.1〜40μm及び0.1〜10μmである。本明細書中で用いられる用語「平均粒度」とは、全ての粒子の直径の総和を粒子の全数で割ったもののことをいう。第1のポリマーの平均粒度は、当業者に知られている手段を用いて、光学又は電子顕微鏡で測定されてよい。典型的に、顕微鏡測定は、一般に100〜500個の粒子を含む小さな、代表的な粒子サンプルの直径を測定し、次いで個々の直径の総和を粒子数で割って平均粒径を計算することによって行われる。粒子直径の顕微鏡測定は、手を使って、あるいは当業者に周知な自動計測及び手段を用いて実施されてよい。
【0021】
多くの用途では、当該ボイド形成剤によって、マトリクスポリマーに高レベルの不透明度を与えることが望ましい。不透明度は、第1及び第2のポリマーとポリマーマトリクスとのそれぞれの屈折率における差の絶対値を増大させることによって高められてもよい。よって、第1のポリマー及び第2のポリマーは、ポリマーマトリクスの屈折率と絶対値で少なくとも0.02だけ異なる屈折率を有することが、好都合である。ポリマーマトリクスとボイド形成剤の第1のポリマー又は第2のポリマーとの屈折率間の絶対値における差の他の具体例は、0.04及び0.06である。ポリマーマトリクス及び第1のポリマーの屈折率は、当該分野で周知な手段を用いて、Abbe(商標)又はMetricon(商標)屈折計で決定されても、あるいは公表された文献から得れれてもよい。例えば、当該屈折率は、633nmの波長をもつMetricon(商標)プリズムカプラーを用いて測定されてよい。
【0022】
ボイド形成剤の第1及び第2のポリマー成分は、広範囲なポリマーから選定されてよい。第1のポリマーは、単一のポリマーであっても、一種以上のポリマーのブレンドであってもよい。例えば、第1のポリマーには、セルロース系ポリマー、澱粉、エステル化澱粉、ポリケトン、フルオロポリマー、ポリアセタール、ポリエステル、ポリアミド、ポリスルホン、ポリイミド、ポリカーボネート、オレフィンポリマー、及びこれらポリマーと他のモノマーとのコポリマー、例えばエチレンとアクリル酸及びそのエステルとのコポリマーから選定される一種以上のポリマーが含まれてよい。セルロース系ポリマーは、特に有効なボイド形成剤であり、多くのタイプのマトリクスポリマーに関して望ましい範囲の表面張力を有する。よって、一つの具体例では、本発明の新規なボイド形成剤の第1のポリマーは、セルロース系ポリマーであってよく、一種以上の微晶質セルロース、セルロースエステル、又はセルロースエーテルが含まれてよい。その他の実施態様では、第1のポリマーは、例えば、酢酸セルロース、三酢酸セルロース、酢酸プロピオン酸セルロース、又は酢酸酪酸セルロースのようなセルロースエステルであってよい。更にその他の具体例では、第1のポリマーは、一種以上のヒドロキシプロピルセルロース、メチルエチルセルロース、又はカルボキシメチルセルロースを含むが、それに限定されないセルロースエーテルであってもよい。
【0023】
本発明のボイド形成剤の場合には、我々は、酢酸セルロース、三酢酸セルロース、酢酸プロピオン酸セルロース、又は酢酸酪酸セルロース、セルロースエーテル、カルボキシメチルセルロースなどのようなセルロース系ポリマーは、本発明のボイド形成剤の第1のポリマー成分として有用であり、ポリプロピレン、ポリスチレンなどのような他の標準ボイド形成剤よりもボイドの形成により有効であることを見出している。典型的に、セルロース系ポリマーは、高いTgを有し、延伸時での十分な硬度を維持したまま、数多くのポリマーマトリクスに使用することができる。また、セルロース系材料は、ポリマーマトリクスに十分に分散し、均一な孔径分布をもった不透明なフィルムも与える。セルロース系材料は、粉体又はペレット形態のいずれにも製造され、そしていずれの形態も、本発明のボイド形成剤に使用されてよい。例えば、本発明のボイド形成剤には、28〜45重量%のアセチル含量及び0.01〜99秒の落下球粘度を有する、粉体形態での酢酸セルロースが含まれる。
【0024】
また、PET、ポリ(1,3−トリメチレンテレフタレート)、ポリ(シクロへキシレンテレフタレート)、又はポリ(1,4−ブチレンテレフタレート)のような高結晶質のポリエステルホモポリマー粉体も、当該結晶質ポリエステルのTmが連続ポリエステル相のTgよりも大きいことを条件として、第1のポリマーとして用いられてもよい。この実施態様では、ポリマーマトリクスは、当該結晶質ポリエステルの溶融温度より低い温度で、十分に低い溶融粘度を有していることが好ましい。ポリマーマトリクスがポリエステルである場合には、ポリマーマトリクスは、当該結晶質ポリエステルボイド形成剤のTm以下の温度で、溶融加工できることが好ましい。さもないと、そのボイド形成剤が溶融し、ポリエステルマトリクスとエステル交換して、そのボイド形成能を失ってしまう。
【0025】
第2のポリマーには、ポリアミド、ポリケトン、ポリスルホン、フルオロポリマー、ポリアセタール、ポリエステル、ポリカーボネート、オレフィンポリマー、及びそれらのコポリマーから選定される一種以上のポリマーが含まれてよい。例えば、第2のポリマーには、例えばポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、及びそれらのコポリマーのような一種以上のオレフィンポリマーが含まれてもよいが、これに限定されない。更に、オレフィンポリマーの限定されない具体例には、エチレンビニルアセテート、エチレンビニルアルコールコポリマー、エチレンメチルアクリレートコポリマー、エチレンブチルアクリレートコポリマー、エチレンアクリル酸コポリマー、及びイオノマーが含まれる。好ましい実施態様では、第1のポリマーには、一種以上の酢酸セルロース又は酢酸プロピオン酸セルロースが含まれ、そして第2のポリマーには、一種以上のポリスチレン、ポリプロピレン、又はエチレンメチルアクリレートコポリマーが含まれる。典型的には、ボイド形成剤には、ボイド形成剤の全重量に対して5〜95重量%の第1のポリマーが含まれる。ボイド形成剤中の第1のポリマーに係る他の重量割合は、30〜60重量%及び50〜60重量%である。
【0026】
本発明の第1のポリマー、第2のポリマー、及びポリマーマトリクスとして使用されるポリマーは、当該分野での周知な方法によって製造されても、あるいは商業的に入手されてもよい。本発明に使われる商業的に入手可能なポリマーの具体例には、Eastman Chemical 社から入手可能なEASTAR(商標)、EASTAPAK(商標)、SPECTAR(商標)、及びEMBRACE(商標)ポリエステル及びコポリエステル;Dupont から入手可能なLUCITE(商標)アクリル系樹脂;Eastman Chemical 社から入手可能なTENITE(商標)セルロースエステル;LEXAN(商標)(GE PLastics から入手可能)又はMAKROLON(商標)(Bayer から入手可能)ポリカーボネート;Dupont から入手可能なDELRIN(商標)ポリアセタール;K−RESIN(商標)(Phillips から入手可能)及びFINACLEAR(商標)/FINACRYSTAL(商標)(Atofina から入手可能)スチレン系樹脂及びスチレン系コポリマー;FINATHENE(商標)(Atofina から入手可能)及びHIFOR(商標)/TENITE(商標)(Eastman Chemical 社から入手可能)ポリエチレン;Dupont から入手可能なZYTEL(商標)ナイロン;BASF から入手可能なULTRAPEK(商標)PEEK;Dupont から入手可能なKAPTON(商標)ポリイミド;及びDupont 及び Atofina からそれぞれ入手可能なTEDLAR(商標)及びKYNAR(商標)フルオロポリマーが含まれる。
【0027】
また、本発明では、ポリマーマトリクス内に分散したボイド形成剤を含むボイドの形成が可能な組成物が提供される。よって、本発明では、ポリマーマトリクス及び当該ポリマーマトリクス内にそれぞれ分散した少なくとも一種の第1のポリマー及び少なくとも一種の第2のポリマーを含んでなり、ここで、当該第1のポリマーが、微晶質セルロース、セルロースエステル、又はセルロースエーテルの一種以上を含み、ポリマーマトリクスのTgより大きいTg又はTm、及びポリマーマトリクスの表面張力と絶対値で3ダイン/cm以下だけ異なる表面張力を有し、そして当該第2のポリマーが、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、及びそれらのコポリマーからなる群より選定される一種以上のポリマーを含み、ポリマーマトリクスの表面張力と絶対値で少なくとも6ダイン/cmだけ異なる表面張力を有し、かつポリマーマトリクスの溶融粘度に対する第2のポリマーの溶融粘度の比が0.1〜3.5である、ボイドの形成が可能な組成物が提供される。第1のポリマーは、微晶質セルロース、セルロースエステル、又はセルロースエーテルを含むが、それに限定されないセルロース系ポリマーであってよい。第1及び第2のポリマーの屈折率は、ポリマーマトリクスの屈折率と絶対値で少なくとも0.04だけ異なることが好ましいが、本発明では決定的なことではない。第1のポリマーの表面張力は、ポリマーマトリクスのそれと絶対値で3ダイン/cm以下だけ異なり、一方、第2のポリマーの表面張力は、ポリマーマトリクスのそれと絶対値で少なくとも6ダイン/cmだけ異なっている。また、第1及び第2のポリマー、Tg、Tm、及び表面張力には、本発明に従って上記したように、それらの種々な実施態様が含まれる。
【0028】
ポリマーマトリクスは、種々なポリマーから選定されてよく、単一のポリマー又は一種以上のポリマーのブレンドが含まれてよい。本発明組成物のポリマーマトリクスに含まれてよいポリマーの非制限的な具体例には、一種以上のポリエステル、ポリ乳酸、ポリケトン、ポリアミド、フルオロポリマー、ポリアセタール、ポリスルホン、ポリイミド、ポリカーボネート、オレフィンポリマー、又はそれらのコポリマーが含まれる。典型的に、このポリマーマトリクスは延伸される。本明細書中で使用される用語「延伸され」とは、当該ポリマーマトリクスが伸張されて、ポリマー鎖に方向性又は配向性が付与されることを意味する。よって、ポリマーマトリクスは、当該ポリマーマトリクスが一方向に伸張されることを意味する「一軸延伸」されても、あるいは当該ポリマーマトリクスが二方向の異なる方向に伸張されることを意味する「二軸延伸」されてもよい。典型的に、必ずではないが、二方向は実質的に直角である。例えば、フィルムの場合には、二方向は、フィルムの長さ方向、即ち縦方向(「MD」)(フィルムが、フィルム製造機上で作られる方向)とフィルムの横断方向(「TD」)(フィルムのMDと直角な方向)である。二軸延伸製品は、逐次的に延伸されても、同時に延伸されても、あるいは同時及び逐次的延伸の組み合わせで延伸されてもよい。
【0029】
決定的ではないが、第2のポリマーは、本発明のボイド形成を効率的に増進させるために、ポリマーマトリクスのTgより大きいTg又はTmを有してよい。ある場合に、第1及び第2のポリマーに加えて、第3のポリマー成分を含めると、不透明度が増加し、特に、ポリマーマトリクス内の第1及び第2のポリマーの分散を高めることが、見出されている。よって、本発明の新規な組成物には、ポリマーマトリクスと第2のポリマーの表面張力の間にある表面張力、及び1.1g/cc以下の密度を有する第3のポリマーが、ポリマーマトリクス内に分散して更に含まれていてもよい。第3のポリマーとポリマーマトリクスとの間の絶対値で少なくとも0.04の屈折率の差は、第1及び第2のポリマー成分に関して前述したように、当該組成物に良好な不透明度を達成するために望ましいが、決定的なものではない。当該第1、第2及び第3のポリマー成分とポリマーマトリクスとの分散及び混合を良好なものとするためには、当該第3ポリマーの表面張力が、ポリマーマトリクスと第2のポリマーの表面張力との間にあることが好都合である。また、第3のポリマーの密度が1.1g/cc以下であることは、当該組成物全体の密度を下げるためにも望ましい。
【0030】
一の実施態様では、第1のポリマーには、一種以上の酢酸セルロース又は酢酸プロピオン酸セルロースが含まれ、そして第2のポリマーには、一種以上のポリスチレン、ポリプロピレン、又はエチレンメチルアクリレートコポリマーが含まれる。その他の実施態様では、第1のポリマーには酢酸セルロースが含まれ、第2のポリマーにはポリプロピレンが含まれ、そして第3のポリマーにはエチレンメチルアクリレートコポリマーが含まれる。
【0031】
本発明の組成物は、ボイドを含有する成形品を製造するために用いられてよい。よって、本発明のその他の態様は、ボイド形成剤を分散して有する延伸されたポリマーマトリクスを含んでなるボイド含有成形品であり、そこでのボイド形成剤には、少なくとも第1のポリマー、及び少なくとも第2のポリマーが含まれ、当該第1のポリマーが、微晶質セルロース、セルロースエステル、又はセルロースエーテルの一種以上を含み、ポリマーマトリクスのTgより大きいTg又はTm、及びポリマーマトリクスの表面張力と絶対値で5ダイン/cm以下だけ異なる表面張力を有し、そして当該第2のポリマーが、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、及びそれらのコポリマーからなる群より選定される一種以上のポリマーを含み、ポリマーマトリクスの表面張力と絶対値で少なくとも5ダイン/cmだけ異なる表面張力を有し、かつポリマーマトリクスの溶融粘度に対する第2のポリマーの溶融粘度の比が0.1〜3.5であるような成形品である。当該第1及び第2のポリマー、ポリマーマトリクス、Tg、Tm、及び表面張力には、本発明により前記される他の種々な実施態様も含まれる。
【0032】
典型的に、成形品には、当該製品の全重量に対して少なくとも50重量%のポリマーマトリクスが含まれる。このポリマーマトリクスには、ポリエステル、ポリ乳酸、ポリケトン、ポリアミド、ポリアセタール、フルオロポリマー、ポリスルホン、ポリイミド、ポリカーボネート、オレフィンポリマー、及びそれらのコポリマーを含むが、これらに限定されない一種以上のポリマーが含まれてよい。一の具体例では、当該ポリマーマトリクスには、例えば、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリ(ブチレンテレフタレート)、ポリ(プロピレンテレフタレート)、ポリ(シクロへキシレンテレフタレート)のような一種以上のポリエステルが含まれてよい。前述したポリエステルに加えて、本発明の成形品には、一種以上の芳香族ジ酸と一種以上のジアルコールとの縮合から得られるポリエステルが含まれてよい。当該ポリマーマトリクスとして使用されるポリエステルの具体例には、(i)ジ酸残基の全モルに対して少なくとも80モル%の一種以上のテレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、又はイソフタル酸の残基を含むジ酸残基、及び(ii)ジオール残基の全モルに対して10〜100モル%の一種以上の1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール、又はジエチレングリコールの残基を含むジオール残基、及び0〜90モル%の一種以上のエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノールA、又はポリアルキレングリコールの残基を含むものが含まれる。典型的に、これらのコポリエステルは、35℃〜150℃のガラス転移温度を有する。
【0033】
ボイド形成剤には、少なくとも一種の第1のポリマー及び少なくとも一種の第2のポリマーが含まれることとなる。第1のポリマーには、前記したポリマーのいずれかが含まれるが、酢酸セルロース、酢酸プロピオン酸セルロース、又はそれらの混合物が好ましい。同様に、第2のポリマーには、前記したポリマーのいずれかが含まれるが、しかし、一種以上のポリスチレン、ポリプロピレン、又はエチレンメチルアクリレートコポリマーが好ましく含まれる。本発明成型品の更なるその他の具体例では、当該ポリマーマトリクスには、ジ酸残基が少なくとも95モル%のテレフタル酸残基を含み、そしてジオール残基が10〜40モル%の1,4−シクロヘキサンジメタノール残基、1〜25モル%のジエチレングリコール残基、及び35〜89モル%のエチレングリコール残基を含むポリエステルが含まれ、第1のポリマーには、酢酸セルロースが含まれ、そして第2のポリマーには、ポリプロピレン及びエチレンメチルアクリレートコポリマーが含まれる。
【0034】
本発明に決定的ではないが、ボイド形成剤の効率は、仮に、第2のポリマーが、ポリマーマトリクスのTgより大きいTg又はTmを有するならば、増大する。加えて、ボイド形成剤には、ポリマーマトリクスと第2のポリマーの表面張力の間にある表面張力及び1.1g/cc以下の密度を有する第3のポリマーが更に含まれてもよい。
【0035】
本発明の典型的な成形品には、繊維、シート、フィルム、チューブ、ボトル、及び異形材が含まれる。当該成形品は、当業者に周知ないかなる手段、例えば、押出、カレンダー掛け、熱成形、吹込成形、流し込成形、紡糸、延伸、幅出し、又は吹込によって製造されてもよい。例えば、成形品は、収縮フィルムであってもよい。本発明の収縮フィルムの具体例は、一層以上の層を有し、70℃の水浴中で10秒後、少なくとも5%の収縮率を有するものである。
【0036】
また、本発明によれば、(i)ポリマーマトリクスとボイド形成剤を、当該ポリマーマトリクスのTg温度又はそれを超える温度で混合して、ポリマーマトリクス内にボイド形成剤の均一分散体を形成すること、ここで、当該ボイド形成剤には、少なくとも一種の第1のポリマー及び少なくとも一種の第2のポリマーが含まれ、その第1のポリマーが、ポリマーマトリクスのTgより大きいTg又はTm、少なくとも1GPaの引張弾性率、及びそのポリマーマトリクスの表面張力と絶対値で5ダイン/cm以下だけ異なる表面張力を有し、そして第2のポリマーが、ポリマーマトリクスの表面張力と絶対値で少なくとも5ダイン/cmだけ異なる表面張力、及びポリマーマトリクスの溶融粘度に対する第2のポリマーの溶融粘度の比が0.1〜3.5である溶融粘度を有すること、(ii)成形品を形成すること、(iii)成形品を延伸すること、そして(iv)選択的に、工程(iii)の成形品を熱硬化させることを含む、ボイド含有成形品の製造方法が提供される。
【0037】
当該混合物は、ポリマーマトリクスの溶融物を形成して、そこにボイド形成剤を混合することによって作られてよい。ボイド形成剤は、固体、半固体、又は溶融形態であってよい。混合時に、ポリマーマトリクス内に迅速で均一な分散を可能となすためには、ボイド形成剤は、固体又は半固体であることが好都合である。
【0038】
ボイド形成剤がポリマーマトリクス中に均一に分散しているときは、成形品は、当該分野で周知な工程、例えば、押出し、カレンダー掛け、熱成形、吹込み成形、流し込成形、紡糸、延伸、幅出し、又は吹込みによって成形される。例えば、仮に成形品が流し込み又は押出しフィルムであるならば、当該製品は、幅出しフレーム、延伸機、又はダブル発泡吹込みフィルムラインを用いて、一以上の方向に伸張することによって延伸されてもよい。一軸又は二軸延伸シートあるいはフィルムの製法は、当該分野で周知である。典型的に、かかる方法には、その成形後に、原寸の1.5〜10倍、通常は3〜6倍の量で少なくとも縦方向、即ち長さ方向にシート又はフィルムを延伸することが含まれる。また、かかるシート又はフィルムは、当該分野で周知な装置及び方法によって、原寸の一般に1,5〜10倍、通常は3〜6倍の量で横断方向、即ち横方向に延伸されてもよい。また、本発明の延伸フィルムは、収縮率を調節し又は寸法的に安定なフィルムを得るために、熱セットされてもよい。例えば、ポリマーマトリクスには、ポリ(エチレンテレフタレート)のような結晶性ポリマーが含まれてよく、それは、ボイド形成され、延伸された後に、170℃〜220℃で熱セットされて、収縮率が下げられ、寸法安定性が付与される。
【0039】
仮に、成形品がボトルの形成にあるならば、延伸は、一般に、それが吹込み成形される際に、ボトルが全方向に延伸されるように二軸延伸される。かかるボトルの成形は、当該分野で周知であり、例えば、米国特許3,849,530号明細書に記載されている。
【0040】
ボイドは、ポリマーマトリクスが、当該ポリマーのガラス転移温度のTgで、あるいはその近傍で延伸されるにつれて、ボイド形成剤の周囲に形成される。ボイド形成組成物の粒子は、ポリマーマトリクスに比して比較的硬いため、それが延伸されるにつれて、ポリマーマトリクスがボイド形成剤から離れて、滑走し、その結果、ボイドが延伸方向に形成され、マトリクスポリマーが引き続いて引っ張られるとボイドは細長くなってゆく。よって、ボイドの最終寸法及び形状は、延伸の方向及び量に依存している。例えば、仮に、延伸が一方向のみであるならば、ボイドは、延伸方向のボイド形成剤の両側面に形成されることとなる。
【0041】
一般的に、当該延伸操作により、同時にボイドが形成され、マトリクスポリマーが延伸される。最終製品の特性は、延伸時間と温度及び延伸のタイプと程度に左右され、それらを操作することによって調整することができる。典型的に、延伸は、ポリマーマトリクスのガラス転移温度の正に直上で(例えば、Tg+5℃〜Tg+60℃)行われる。
【0042】
本発明のボイド形成剤は、マトリクスポリマーにポリエステルが含まれるボイド形成収縮フィルムに用いられてよい。よって、本発明では、当該ボイド含有ポリエステルの収縮フィルムを特に参照して、更に記載し、説明することとする。また、当該ポリエステル収縮フィルムに関して記載する実施態様は、前記した成形品にも適用される。
【0043】
また、本発明では、少なくとも一種の第1のポリマー及び少なくとも一種の第2のポリマーを含むボイド形成剤を分散して有する延伸された連続ポリエステル相を含むボイド含有収縮フィルムであって、当該第1のポリマーが、当該ポリエステルのTgより大きいガラス転移温度(Tg)又は融点温度(Tm)、少なくとも1GPaの引張弾性率、及び当該ポリエステルの表面張力と絶対値で5ダイン/cm以下だけ異なる表面張力を有し、そして第2のポリマーが、当該ポリエステルの表面張力と絶対値で少なくとも5ダイン/cmだけ異なる表面張力、及び当該ポリエステルの溶融粘度に対する第2のポリマーの溶融粘度の比が0.1〜3.5である溶融粘度を有する、ボイド含有収縮フィルムが提供される。第1及び第2のポリマーのTg、Tm、引張弾性率、及び表面張力には、また、前記したように、本発明によるそれぞれの実施態様が含まれる。
【0044】
ボイド含有収縮フィルムには、マトリクスポリマーとしてポリエステルが含まれる。本明細書中で使用される「ポリエステル」には、「コポリエステル」が含まれることを意図し、そして一種以上の二官能性カルボン酸と一種以上の二官能性ヒドロキシル化合物との重縮合によって製造される合成ポリマーが含まれるものと理解されるべきである。典型的に、当該二官能性カルボン酸は、ジカルボン酸であり、そして当該二官能性ヒドロキシ化合物は、例えば、グリコール及びジオールのような二塩基酸である。これに代わって、二官能性カルボン酸は、例えば、p−ヒドロキシ安息香酸であってよく、また、二官能性ヒドロキシル化合物は、例えば、ヒドロキノンのような2−ヒドロキシ置換基をもつ芳香核であってもよい。本明細書中で使用する用語「残基」とは、対応モノマーに関連する重縮合反応によってポリマー又は可塑剤中に取り込まれる、ある有機構造を意味する。本明細書中で使用される用語「繰返し単位」とは、カルボニルオキシ基によって結合されたジカルボン酸残基とジオール残基を有する有機構造を意味する。よって、ジカルボン酸残基は、ジカルボン酸モノマー又はそれと関連する酸ハライド、エステル、塩、無水物、又はそれらの混合物から誘導されてよい。したがって、本明細書中で用いられるときは、ジカルボン酸なる用語には、それと関連する酸ハライド、エステル、半エステル、塩、半塩、無水物、混合無水物、又はそれらの混合物を含む、ジオールと重縮合させて高分子量ポリエステルを作るのに有用な、ジカルボン酸及びジカルボン酸からの誘導体が含まれることを意味している。
【0045】
本発明で使用されるポリエステルは、典型的に、実質的に同比率で反応して、ポリエステルポリマー中にそれらの対応残基として取り込まれる、ジ酸とジオールから製造される。したがって、本発明のポリエステルには、その繰返し単位の全体のモルが100%に等しくなるように、実質的に等モル比の酸残基(100モル%)とジオール残基(100モル%)が含まれる。よって、本発明の開示で与えられるモルパーセントは、酸残基の全体のモル、ジオール残基の全体のモル、又は繰返し単位の全体のモルに基づいている。例えば、全体の酸残基に対して、30モル%のイソフタル酸を含有するポリエステルとは、当該ポリエステルが、100モル%の全体の酸残基中に30モル%のイソフタル酸が含有しているポリエステルを意味している。よって、全ての100モルの酸残基中、30モルのイソフタル酸残基が存在している。その他の具定例では、全体のジオール残基に対して、30モル%のエチレングリコールを含有するポリエステルとは、全ての100モルのジオール残基中、30モル%のエチレングリコールが含有しているポリエステルを意味している。よって、100モルのジオール残基中に30モル%のエチレングリコール残基が存在している。
【0046】
収縮フィルム用に好ましいポリエステルは、比較的低い結晶質をもつ、非晶質又は半結晶質のポリマー、又はそのブレンドである。好ましくは、当該ポリエステルは、そのポリエステルが実質的に不規則なポリマー領域を含んでいることを意味している、実質的な非晶質形態を有している。
【0047】
本発明のフィルムに使われるポリエステルには、(i)ジ酸残基の全体のモルに対して少なくとも80モル%の一種以上のテレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、又はイソフタル酸の残基を含むジ酸残基、及び(ii)ジオール残基の全体のモルに対して10〜100モル%の一種以上の1,4−シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール、又はジエチレングリコールの残基を含むジオール残基、及び0〜90モル%の一種以上のエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノールA、又はポリアルキレングリコールの残基が含まれる。1,4−シクロヘキサンジメタノール(「CHDM」)及び1,4−シクロヘキサンジカルボン酸(「CHDA」)は、純シス、トランス、又はシス/トランス混合物の異性体として使用されてもよい。ナフタレンジカルボン酸の異性体は、そのいずれが使用されてもよいが、1,4−、1,5−、2,6−、及び2,7−異性体又はこれら異性体の混合物が好ましい。ポリアルキレングリコールの具体例には、2000までの分子量を有する、ポリテトラメチレングリコール(PTMG)及びポリエチレングリコール(PEG)が含まれる。その他の具体例では、ジオール残基は、10〜99モル%の1,4−シクロヘキサンジメタノール残基、0〜90モル%のエチレングリコール残基、及び1〜25モル%のジエチレングリコール残基が含まれてよい。更にその他の具体例では、ジ酸残基は、少なくとも95モル%のテレフタル酸残基が含まれてよく、そしてジオール残基は、10〜40モル%の1,4−シクロヘキサンジメタノール残基、約1〜25モル%のジエチレングリコール残基、及び35〜89モル%のエチレングリコール残基が含まれてよい。
【0048】
当該ジ酸残基には、0〜20モル%の、所望の場合、4〜40個の炭素原子を有する一種以上の変性ジ酸残基が更に含まれてもよい。例えば、0〜約30モル%の、8〜16個の炭素原子を有する他の芳香族ジカルボン酸、8〜16個の炭素原子を有する脂環式ジカルボン酸、2〜16個の炭素原子を有する脂環式ジカルボン酸又はそれらの混合物が用いられてよい。変性カルボン酸の具体例には、一種以上のコハク酸、グルタル酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ダイマー酸、スルホイソフタル酸が含まれるが、これらに限定されない。最終組成物が、種々の樹脂をブレンドすることによって、あるいは直接反応体を共重合させることによって得られることは、当業者に理解されていることである。後者の方法は、組成の変動を最小となし、しかも経済的な負担を、屡、ブレンドよりも一層効率的なコストとなすために、望ましい。
【0049】
当該連続ポリエステル相に含まれてよいポリエステルの他の具体例は、15〜55モル%の1,3−又は1,4−シクロヘキサンジメタノール、及び1〜25モル%のジエチレングリコールを含有するポリ(エチレンテレフタレート)及び15〜35モル%の1,3−又は1,4−シクロヘキサンジメタノール、及び5〜15モル%のジエチレングリコールを含有するポリ(エチレンテレフタレート)をベースとするものである。付加的に、前述したような0〜約5%の他のジカルボン酸又は他の変性グリコールが、所望の場合に、使用されてもよい。
【0050】
当該ポリエステルは、一般に、0.5dL/g〜1.4dL/gの範囲の内部粘度(I.V.)を有している。I.V.範囲の付加的な具体例には、0.65dL/g〜1.0dL/g及び0.65dL/g〜0.85dL/gが含まれる。
【0051】
本発明のポリエステルは、典型的な重縮合反応条件を用いて、適当なジカルボン酸、エステル、無水物、又は塩と、適当なジオール又はジオール混合物とから容易に製造される。それらは、連続、半連続、及びバッチ型の操作によって製造されてよく、また、種々な反応機のタイプが使われてよい。適当な反応機のタイプの具体例には、撹拌タンク、連続撹拌タンク、スラリー、管状、塗布フィルム、落下フィルム、又は押出の反応機が含まれるが、それに限定されない。本明細書に使用される用語「連続」とは、中断されない様式で、反応体が連続して導入され、製品が連続的に取り出される処理のことをいう。「連続」とは、「バッチ」処理に対する、当該処理が、実質的に、あるいは完全に操作上連続していることを意味する。「連続性」は、例えば、運転開始、反応機のメンテナンス、又は計画的な操業停止期間のため、当該処理の連続性に通常の中断を禁止することは決して意味しない。本明細書中で使用される用語「バッチ」処理とは、全ての反応体が反応機に装填され、次いで所定の反応コースに従って処理され、その間に、いかなる材料も反応機中に供給され、取り出されることが全くない処理のことをいう。用語「半連続」とは、反応体の一部が処理の開始時に装填され、残部の反応体は、反応が進むにつれて連続的に供給される処理のことをいう。これに代わって、半連続処理には、また、製品の一部以上が反応の進行につれて連続的に取り除かれることを除き、全ての反応体が処理の開始時に装填される、バッチ処理に類似した処理も含まれる。当該処理は、ポリマーが高温下であまりに長時間反応機内に滞留すると外観が悪化することがあるので、経済的理由のため及びポリマーに優れた着色を施すために、連続処理として操作するのが好都合である。
【0052】
本発明のポリエステルは、当業者に知られる手順によって製造される。ジオールとジカルボン酸との反応は、慣用のポリエステル重合条件を用いて又は溶融相処理によって行われるが、十分な結晶性を有するものは先ず溶融相とされ、続いて固相重縮合手段に付される。例えば、当該ポリエステルがエステル交換反応の手段によって、つまりジカルボン酸成分のエステル型から製造されるときは、その反応には、二段階工程が含まれてもよい。その第1工程では、例えば、ジメチルフタレートのようなジオール成分とジカルボン酸成分が、典型的には、150℃〜250℃の高温下で、0.5〜8時間、0.0kPaゲージ〜414kPaゲージ(60ポンド/平方インチ、「psig」)の圧力下で反応に付される。好ましくは、このエステル交換反応の当該温度は、180℃〜230℃、1〜4時間であり、一方、好ましい圧力は、103kPaゲージ(15psig)〜276kPaゲージ(40psig)の圧力下である。したがって、この反応生成物は、高温下でかつ低圧力下に加熱されて、ポリエステルが生成され、そのジオールは、これらの条件下で容易に揮発されて、系から取り除かれる。この第2工程、即ち重縮合工程は、引き続いて、一般に、230℃〜350℃、好ましくは250℃〜310℃、そして最も好ましくは260℃〜290℃で0.1〜6時間、又は好ましくは0.2〜2時間に亘り、内部粘度によって決定される所望の重合度を有するポリマーが得られるまで、高い真空下及び温度下で継続される。当該重縮合工程は、53kPa(400トール)〜0.013kPa(0.1トール)に亘る減圧下で行われてもよい。撹拌又は適当な条件は、好適な熱交換及び反応混合物の表面更新を確保するため、両工程に用いられる。両工程での反応速度は、例えば、アルコキシチタン化合物、アルカリ金属水酸化物及びアルコラート、有機カルボン酸塩、アルキル錫化合物、金属酸化物などのような適当な触媒によって増進される。また、米国特許第5,290,631号明細書に記載されるものと類似した、三段階工程の製造手続きが、酸とエステルの混合モノマー供給が採用されるときには、用いられてもよい。
【0053】
エステル交換反応によるジオール成分とジカルボン酸成分の反応が完了するまで行われることを確保するために、時々、1モルのジカルボン酸成分に対して1.05〜2.5モルのジオール成分を使用することが、好ましい。しかしながら、このジカルボン酸成分に対するジオール成分の割合は、一般に、その反応工程が起こる反応機の設計によって決まることが、当業者に分かっている。
【0054】
直接エステル化による、即ちジカルボン酸成分の酸形態から行われるポリエステルの製造では、ポリエステルは、ジカルボン酸又はジカルボン酸の混合物とジオール成分又はジオール成分の混合物とを反応させることによって製造される。当該反応は、7kPa(1psig)〜1379kPa(200psig)、好ましくは689kPa(100psig)未満の圧力下で行われて、平均重合度1.4〜10を有する低分子量のポリエステル生成物が得られる。直接エステル化反応時に採用される温度は、典型的に、180℃〜280℃、より好ましくは220℃〜270℃である。この低分子量ポリマーは、次いで、重縮合反応によってポリマー化されてもよい。
【0055】
加えて、当該ポリエステルは、一種以上の次の、酸化防止剤、溶融強度促進剤、分枝剤(例えば、グリセロール、トリメリック酸及び無水物)、連鎖延長剤、難燃剤、フィラー、酸スカベンジャー、色素、着色剤、顔料、粘着防止剤、流れ向上剤、耐衝撃性改良剤、静電防止剤、処理助剤、金型離型添加剤、可塑剤、滑り剤、安定化剤、ワックス、UV吸収剤、蛍光増白剤、滑剤、穿孔添加剤、発泡剤、帯電防止剤、核剤、ガラスビーズ、金属球、セラミックビーズ、カーボンブラック、架橋ポリスチレンビーズなどが更に含まれてもよい。着色剤、時々「トナー」ともいう、が、ポリエステル及びカレンダー掛けした製品に望ましい中性の色相及び/又は明度を与えるために、添加されてもよい。好ましくは、ポリエステル組成物には、当該組成物の表面特性を変更するため及び/又は流れを向上させるために、0〜30重量%の一種以上の処理助剤が含まれてもよい。処理助剤の代表的な具体例には、炭酸カルシウム、タルク、クレー、雲母、ゼオライト、ウォラストナイト、カオリン、珪藻土、TiO2、NH4Cl、シリカ、酸化カルシウム、硫酸ナトリウム、及びリン酸カルシウムが含まれる。二酸化チタン及び他の顔料又は色素の使用には、例えば、フィルムの白色度を調節するため、あるいは着色フィルムを作るために、含まれることがある。また、帯電防止剤又は他の塗料が、フィルムの片面又は両面に塗布されてもよい。また、コロナ及び/又は火炎処理は、選択事項であるが、ボイド含有フィルムの表面張力を高めるために、一般に、必要ではない。また、ポリマー同士のある組み合わせには、セルロースエステルの退化/褐色化を防ぐために、酸スカベンジャーや安定化剤を加えることが必要となることがある。
【0056】
当該収縮フィルムには、広範なポリマーから選定される第1及び第2のポリマーを含むボイド形成剤が含まれる。第1のポリマーは、単一のポリマー又は一種以上のポリマーのブレンドであってよい。例えば、第1のポリマーには、セルロース系ポリマー、澱粉、エステル化澱粉、ポリケトン、ポリエステル、ポリアミド、ポリスルホン、ポリイミド、ポリカーボネート、フルオロポリマー、ポリアセタール、オレフィンポリマー、及びこれらポリマーと他のモノマーとのコポリマー、例えば、エチレンとアクリル酸及びそのエステルとのコポリマーから選定される一種以上のポリマーが含まれてよい。
【0057】
セルロースポリマーは、多くの典型的なポリマーマトリクスと調和したその高いガラス転移温度と良好な表面張力のため、効果的なボイド形成剤である。よって、一の具体例では、本発明の新規なボイド形成剤の第1のポリマーは、セルロース系ポリマーであってよく、一種以上の微晶質セルロース、セルロースエステル、又はセルロースエーテルが含まれてもよい。その他の実施態様では、第1のポリマーは、例えば、酢酸セルロース、三酢酸セルロース、酢酸プロピオン酸セルロース、又は、酢酸酪酸セルロースのようなセルロースエステルであってもよい。更にその他の実施態様では、第1のポリマーは、一種以上のヒドロキシプロピルセルロース、メチルエチルセルロース、又はカルボキシメチルセルロースが含まれてもよいがこれに限定されないセルロースエーテルであってもよい。
【0058】
第2のポリマーには、ポリアミド、ポリケトン、ポリスルホン、ポリエステル、フルオロポリマー、ポリアセタール、ポリカーボネート、オレフィンポリマー、及びそれらのコポリマーから選定される一種以上のポリマーが含まれてよい。例えば、第2のポリマーには、例えば、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、及びそれらのコポリマーのような一種以上のオレフィンポリマーが含まれてもよいが、それに限定されない。更に、非制限的な具体例のオレフィンコポリマーには、エチレンビニルアセテートコポリマー、エチレンビニルアルコールコポリマー、エチレンメチルアクリレートコポリマー、エチレンブチルアクリレートコポリマー、エチレンアクリル酸コポリマー、又は異性体が含まれる。一の具体例では、第1のポリマーには、一種以上の酢酸セルロース又は酢酸プロピオン酸セルロースが含まれ、そして第2のポリマーには、一種以上のポリスチレン、ポリプロピレン、又はエチレンメチルアクリレートコポリマーが含まれる。
【0059】
典型的に、ボイド形成剤には、ボイド形成剤の全重量に対して5〜95重量%の第1のポリマーが含まれる。ボイド形成剤中の第1のポリマーに係る他の範囲は、40〜60重量%及び50〜60重量%である。第1のポリマーがセルロース系樹脂であるときは、第2のポリマーが存在する一つの利点は、とりわけ、第1のポリマーの加工性及び分散を改良することである。例えば、セルロースポリマーの粉体は、それを取り扱い又は供給することが難しいため、一軸スクリュー押出機を用いて直接配合することが困難である。加えて、当該セルロース系樹脂には高い湿気吸収力があるため、ポリマーマトリクス内で容認できない加水分解が起こり、また水分の蒸発が起こってしまう。よって、もしも、予めペレット化しておかないときには、当該セルロース系樹脂には、適宜混合でき、ポリマーマトリクス中でのその分散時にこれらの粉体を逃がすことができる、二軸スクリュウ、カレンダー、又は類似した設備を用いることが必要となる。
【0060】
前述したように、第2のポリマーには、例えば、エチレン、プロピレン、スチレン系樹脂、ビニル、アクリル系樹脂、ポリ(アクリロニトリル)などのような当該分野で周知な一種以上のオレフィンポリマー及びコポリマーが含まれてよい。オレフィンポリマーの選定は、収縮フィルムの所望の特性に左右される。例えば、ポリスチレン、メチルメタクリレート、ブタジエンスチレン、スチレンアクリロニトリルなどのようなスチレン系樹脂を添加すると、(それらは、多くの通常の溶剤によって容易に溶解するので)溶剤接合を改変、改良することを助け、そして不透明度を改善するのに役立つが、また、それらは、当該フィルムを脆化して、脱ガスを起こし易くする。それらの屈折率は、ポリエステルに一層近づき、そして、それらの不透明性はセルロース系樹脂よりも低くなる。これに対して、例えば、ポリプロピレンのようなボイド形成剤は、スチレン系樹脂よりも効果が劣るが、より柔らかくなり、容易にセルロース系樹脂とブレンドする。また、それらは、セルロース系樹脂と組合せて使用すると、それが多過ぎる量では印刷し易く、接合し易くなるけれども、屈折率に大きな差があるために、顕著に不透明度を高める。
【0061】
第2のポリマーが、当該ポリエステルの屈折率と絶対値で少なくとも0.02だけ異なる屈折率を有することは、好都合であるが、決定的に重要なことではない。例えば、ポリエステルは、典型的に、約1.57の屈折率を有し、よって、約1.50の屈折率をもつポリエチレン及びポリプロピレン、そして約1.59の屈折率を有するポリスチレンは、当該ポリエステルの屈折率とそれらの屈折率とにおける差が0.02より大きいため、ボイド形成剤の第2のポリマーとして選定されてよい。屈折率におけるこの差によって、当該収縮フィルムの不透明度が向上する。また、例えば、TiO2、カーボンブラックなどのような無機フィラー又は顔料を添加することによって不透明度を高めることも可能であるが、無機物質の添加は、屡、最終フィルムの密度を増加してしまうので、望ましくない。本発明の場合、当該フィルムの密度は、これらの無機フィラーを必要としないほど、十分に高い。例えば、本発明のフィルム、シート及び成形品は、典型的に、200cm-1より高い吸光係数を有している。よって、2ミル(50μm)のフィルムは、この吸光係数で、全光透過率35%以下を有することとなる。透過光の殆どは、拡散光又は散乱光である。また、フィルムに使われるボイド及び何らかの添加剤が存在すると、UV光の透過を遮断することにも役立つので、UV感光性製品の用途に有用である。インフレートフィルム法によって造られるフィルムの場合、オレフィンとセルロース樹脂を組合せることも、両者によって、一般に、当該ポリエステルの連続相の溶融強度が改善されるという点で、有益である。溶融強度が高くなるほど、泡形状のコントロールを向上させ、また、二重泡立ち時での延伸条件を改善する。
【0062】
ある程度の剛さは、例えば、スリーブラベルのようなある種のフィルム用途に関して望ましい。例えば、EMACのようなオレフィンのある種のものは、より柔軟なフィルムを与え、スリーブであることが決定的に重要でない場合(例えば、巻取供給ラベル)に有効な「ソフトな触感」を有する。また、このソフトな感触は、当該フィルムと他のオレフィンとの相溶性を改善して、エチレン(酢酸ビニル)系ホットメルト接着剤でのラベルの接着、又はヒートシールをより容易とする。したがって、ソフトなオレフィンと硬いオレフィンとを組合せて、例えば、柔軟性と剛性のような収縮フィルムの特性をバランスさせることは、有用であることがある。
【0063】
本発明者等は、例えば、エチレンメチルアクリレートコポリマー(本明細書中では、「EMAC」と略記する。)、エチレンブチルアクリレートコポリマー(同じく「EBAC」と略記する。)、エチレンアクリル酸(同じく「EAA」と略記する)コポリマー、マレート化、酸化又はカルボキシレート化したPE、及び異性体は、これらを第2のポリマーとして前記したセルロース系ポリマーと併用すると、フィルムの不透明度を高め、かつフィルムの全体の美感及び触感を改善できること、を見出している。また、これらのオレフィンは、セルロース系樹脂の配合及び分散を助成する。よって、例えば、第2のポリマーには、一種以上のEMAC又はEBACが含まれてよい。
【0064】
その他の実施態様では、第1のポリマーには、一種以上の酢酸セルロース又は酢酸プロピオン酸セルロースが含まれ、そして第2のポリマーには一種以上のポリスチレン、ポリプロピレン、又はエチレンメチルメタクリレートコポリマーが含まれてよい。決定的に重要なことではないが、当該ポリエステル連続相のTgよりも大きいTg又はTmを有する第2のポリマーは、ボイド形成剤のボイド形成効率を改善するように、助成されてもよい。いくつかの事例では、第1及び第2のポリマーに加えて、第3のポリマー成分を含めると、不透明度が増加し、また、特に、連続ポリエステル相内の第1及び第2のポリマー成分の分散が向上することが、見出されている。よって、本発明の新規な組成物には、当該連続ポリエステル相と第2のポリマーとの表面張力の間にある表面張力、及び1.1g/cc以下の密度を有する、連続ポリエステル相内に分散される第3のポリマーが含まれてよい。この第3のポリマーと連続ポリエステル相との間の屈折率における差が絶対値で少なくとも0.04だけあることが、第1及び第2のポリマー成分に関して前記したように、当該組成物に良好な不透明度を達成するために望ましい。この第1、第2、及び第3のポリマー成分と連続ポリマー相との良好な分散と混合を可能とするためには、当該第3のポリマーが、ポリマーマトリクスの表面張力と第2のポリマーのそれとの間にある表面張力を有することが好都合である。また、当該第3のポリマーの密度も、当該組成物の全体の密度を下げるために、1.1g/ccであることが、望ましい。
【0065】
ボイド形成剤にセルロースポリマーとオレフィンポリマーが含まれるときは、当該ボイド形成剤には、典型的に、組成物全体の重量に対して、少なくとも5重量%以上のセルロースポリマーが含まれることになる。好ましくは、当該ボイド形成剤には、少なくとも30重量%のセルロースポリマーが含まれる。当該ボイド形成剤の各成分は、例えば、二軸スクリュウ押出機、遊星型ミキサー、又はバンバリーミキサーのような混合装置に一緒に配合されるか、あるいは、当該各成分が、フィルム形成時に別個に添加されてもよい。また、少量の無機ボイド形成剤が、含まれてもよい。当該セルロースポリマーとオレフィンとは予備配合されることが望ましく、その場合には、オレフィンは、セルロースが分散する際のキャリア樹脂の一部として用いられてもよい。オレフィンとセルロースポリマーとを予備配合することは、そのオレフィンが、セルロースポリマーを分散させるためのビヒクルとして働き、また、当該セルロースポリマーが最終押出に付される前での水分の吸収を妨げる効果的な湿気バリアとしても働くという付加的な利点も奏する。加えて、当該ボイド形成剤の取り扱いと乾燥が容易となる。また、例えば、ボイド形成剤成分を十分に分散させるため使用される、二軸スクリュウ押出機又は高剪断一軸スクリュウ押出機を用いることによって、十分な剪断が得られる限り、当該ボイド形成剤として、ポリマーブレンドを使用することも可能である。
【0066】
本発明のボイド含有収縮フィルムには、単一の層が含まれても、あるいは例えば、ロール供給ラベルに使用される積層体のような一層以上の多層構造として含まれてもよい。典型的に、当該フィルムの密度は、1.2g/cm3(本明細書中では、「g/cc」と略記する。)以下である。本発明のボイド含有フィルムの密度の具体例は、1.20g/cc以下、1.1g/cc以下、1.0g/cc以下、0.9g/cc以下、0.8g/cc以下、0.7g/cc以下、及び0.6g/cc以下である。いくつかの用途、例えば、再生可能な収縮ラベルでは、当該フィルムの密度は、再生時での真の浮遊及び水浴でのフレーク洗浄を達成するために、好ましくは1.0g/cc以下で、より好ましくは0.90g/cc以下である。当該フィルムの最終密度は、フィラーの量と密度、ボイド形成の程度、延伸比、及び延伸温度の関数であり、例えば、包装材料内に存在する種々な他のポリマー成分からのフィルムの分離を改良するために、適宜、調整されてよい。
【0067】
本発明のボイド含有収縮フィルムは、典型的に、当業者に周知な方法、例えば、押出、カレンダー掛け、流延、延伸、幅出し、又は吹込成形で製造されてよい。これらの方法は、最初に、非配向の、即ち「流延した」フィルムが作製され、続いて、実質的に少なくとも一方向に延伸されて、配向が付与され、ボイドが形成される。一般に、3X〜8Xの延伸比が一以上の方向に付与されて、一軸配向又は二軸配向のフィルムが造られる。より典型的には、延伸比は、4X〜6Xである。当該延伸は、例えば、二重バブル吹込み塔、幅出しフレーム、又は縦方向延伸機を用いて、行うことができる。延伸は、好ましくは、当該ポリマーのガラス転移温度(Tg)下又はその近傍で行われる。ポリエステルの場合は、例えば、この範囲は、添加剤によって僅かに変わるが、典型的には、Tg+5℃(Tg+10°F)〜Tg+33℃(Tg+60°F)である。延伸温度が低いと、より強く配向され、緩和が少ない(よって、収縮率が高い)ボイドが形成されるが、フィルムの引裂は増大する。これらの効果をバランスさせるため、中間範囲の最適温度が選定される。典型的には、4.5〜5.5Xの延伸比が用いられて、その収縮性能が最適にされ、また厚さの均一性が改善される。
【0068】
本発明の場合には、当該フィルムは、典型的に、70℃(167°F)下で少なくとも5%の、そして95℃(200°F)下で少なくとも30%の主軸に沿う収縮率を有する。収縮率は、予め計測されたフィルム片を、水浴中に10秒間浸漬することによって測定される。本明細書中で使用される「収縮率」は、長さの変化を原長(倍率100%)で割ったものとして定義される。その他の実施例では、収縮率は、70℃(167°F)下で少なくとも10%及び95℃下で少なくとも40%である。更なるその他の実施例では、70℃下で15%以上及び95℃下で50%以上である。収縮率の量が大きくなることは、例えば、市販の用途品のような収縮ラベルの場合には、より高度にボトルの輪郭を浮き立たせるようなラベルの取り付けが改善されるので、望ましい。
【0069】
また、本発明には、当業者に周知なような、収縮フィルムをコントロールし、改善するための種々な改変も含まれているものと、理解されるべきである。例えば、低い温度での収縮を改善するために、ポリエステルやポリエステルモノマー、又はそれに代わる低軟化点(例えば、DEG又はブタンジオール)を有するポリマーを配合して、ポリマーフィルムの全体のTgを下げてもよい。ポリテトラメチレングリコール、PEG,及び同様なモノマーに基づくソフトセグメントを添加して、収縮曲線を平坦にし、収縮開始点を下げ、収縮率をコントロールし、あるいは引裂き特性を改善してもよい。この収縮特性は、例えば、調整される収縮力、それぞれの方向での収縮力の割合、調整される収縮、及び収縮後の残留特性のような特性に適宜変化を与えるように改変されてもよい延伸条件に左右される。ポリマーフィルムの収縮特性をコントロールする種々な要因は、例えば、Shih により、Polym. Eng. Sci.、34巻、1121頁(1994年)のような数種のジャーナル雑誌記事のおいて、盛んに議論されている。
【0070】
本発明のボイド含有収縮フィルムには、種々の組成のポリエステルが含まれてよい。例えば、本発明の一の実施態様は、(i)ジ酸残基の全モルに対して、少なくとも80モル%の一種以上のテレフタル酸又はイソフタル酸を含むジ酸残基、及び(ii)ジオール残基の全モルに対して、15〜55モル%の一種以上の1,4−シクロヘキサンジメタノール又はジエチレングリコールを含むジオール残基、及び45〜85モル%のエチレングリコールを含む延伸された連続ポリエステル相を含み、当該ポリエステル相中には、少なくとも一種の第1のポリマーと少なくとも一種の第2のポリマーとを含むボイド形成剤が分散して含まれ、そして当該第1のポリマーには、一種以上の微晶質セルロース、セルロースエステル、又はセルロースエーテルが含まれて、その第1のポリマーが、当該ポリエステルのTgよりも大きいTg又はTm、及び当該ポリエステルの表面張力と絶対値で5ダイン/cm以下だけ異なる表面張力を有し、当該第2のポリマーには、一種以上のポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、及びそれらのコポリマーからなる群より選択されるポリマーが含まれて、その第2のポリマーが、当該ポリエステルの表面張力とは絶対値で少なくとも5ダイン/cmだけ異なる表面張力、及び当該ポリエステルの溶融粘度に対する第2のポリマーの溶融粘度比が0.1〜3.5である溶融粘度を有するような、ボイド含有収縮フィルムである。当該第1のポリマーには、一種以上の酢酸セルロース又は酢酸プロピオン酸セルロースが含まれてよく、そして第2のポリマーには、一種以上のポリスチレン、ポリプロピレン、又はエチレンメチルアクリレートコポリマーが含まれてよい。更なる具体例では、当該ジ酸残基には、少なくとも95モル%のテレフタル酸残基が、当該ジオール残基には、10〜40モル%の1,4−シクロヘキサンジメタノール残基、1〜25モル%のジエチレングリコール残基、及び35〜89モル%のエチレングリコール残基が含まれてよく、当該第1のポリマーには酢酸セルロースが、そして当該第2のポリマーには、ポリプロピレン及びエチレンメチルアクリレートコポリマーが含まれてよい。
【0071】
前記したように、本発明のフィルムは、押出、カレンダー掛け、流延、延伸、幅出し、又は吹込みによって製造されてよい。当該フィルムは、少なくとも一方向に延伸されてよく、主軸に沿って、70℃の水浴中で10秒後に少なくとも10%の、そして95℃の水浴中で10秒後に少なくとも40%の収縮率を有する。仮に、当該フィルムが一方向に延伸されるならば、主軸、即ち主要な収縮方向に直角な方向には低い収縮率を有していてもよい。例えば、当該フィルムが一方向に延伸されて、70℃〜95℃の温度範囲の水浴中で10秒後に、主軸に対する直角な方向で10%以下の収縮率を有していてもよい。延伸し、ボイドを形成した後には、当該フィルムは、典型的に、非延伸フィルムよりも低い密度及び高い光学吸光係数を有する。本発明のボイド含有フィルムにより示される密度の具体例は、1.20g/cc以下、1.1g/cc以下、1.0g/cc以下、0.9g/cc以下、0.8g/cc以下、0.7g/cc以下及び0.6g/cc以下である。加えて、ボイド含有収縮フィルムは、典型的に、200cm-1以上の吸光係数を有することとなる。
【0072】
スリーブ及びラベルは、当該分野で周知な方法によって、本発明のボイド含有収縮フィルムから製造されてよい。これらのスリーブ及びラベルは、例えば、ポリ(エチレンテレフタレート)を含むプラスチックボトル用ラベルのような包装用途に有用である。したがって、本発明では、前記したボイド含有収縮フィルムを含むスリーブ又はロール供給ラベルが提供される。これらのスリーブ及びラベルは、例えば、溶剤接着、ホットメルト接着剤、UV−硬化性接着剤、高周波封止、熱封止、又は超音波接着によるような当該分野で周知な方法によって、適宜、接合されてよい。横断方向に延伸されたフィルム(幅出し又は二重バブル成形を介しての)を含む伝統的な収縮スリーブの場合には、当該ラベルは、最初にプリントされ、次いでチューブとなすように一端に沿って接合される。溶剤接合は、例えば、THF,ジオキシラン、アセトン、シクロヘキサノン、塩化メチレン、n−メチルピリリドン、及びMEKのような多くの溶剤又は当該分野で知られる溶剤の組み合わせを用いて、行うことができる。これらの溶剤は、当該フィルムの溶解パラメータに近い溶解パラメータを有し、溶着が十分となるように当該フィルムを溶着させるのに役立つ。RF封止、接着剤接合、UV硬化性接着剤、及び超音波接着のような他の方法も、適用可能である。得られる接合チューブは、次いで切断され、蒸気、赤外線又は加熱空気タイプのトンネル内で収縮される前に、ボトルに被せられる。あるタイプのスリーブ形成装置に当該スリーブを適用する際には、当該スリーブは、摩擦が原因でボトルの側面に粘着し又は定着する傾向があるので、破砕や潰れを起こさずにボトルを通過させることが可能となるように、当該フィルムを十分に硬化させることが重要である。本発明のボイド含有スリーブは、ボイドの無いフィルムの摩擦係数よりも典型的に20〜30%低い摩擦係数(COF)を有する。この低い摩擦係数によって、ラベルの懸垂を妨げ、スリーブの適用を容易とするのに役立つが、これは、本発明の予期しない利点である。
【0073】
ロール供給ラベルの場合は、当該ボイド含有フィルムは、伝統的に、例えば、延伸機を用いて縦方向に延伸される。これらのラベルは、これらのラベルは、ボトルの周りに包まれて、一般に、配置ライン上で接着される。しかしながら、生産ラインのスピードが上がるにつれて、より速い接合手段が必要となり、UV硬化性、RF封止性で、かつホットメルト性の接着剤が、溶剤接合よりも一層好ましいものとなる。例えば、ホットメルトポリエステルは、ポリエステル系のボイド含有フィルムを接合するために、有効なものとなろう。
【0074】
また、本発明では、(i)ポリエステルのTg温度又はそれを超える温度でポリエステルとボイド形成剤を混合して、ポリエステル内にボイド形成剤の均一分散を形成すること、ここで、当該ボイド形成剤には、少なくとも一種の第1のポリマー及び少なくとも一種の第2のポリマーが含まれ、その第1のポリマーが、ポリエステルのTgより大きいTg又はTm、少なくとも1GPaの引張弾性率、及びそのポリマーマトリクスの表面張力と絶対値で5ダイン/cm以下だけ異なる表面張力を有し、そして第2のポリマーが、ポリエステルの表面張力と絶対値で少なくとも5ダイン/cmだけ異なる表面張力、及びポリエステルの溶融粘度に対する第2のポリマーの溶融粘度の比が0.1〜3.5である溶融粘度を有すること、(ii)シート又はフィルムを形成すること、(iii)当該シート又はフィルムを一以上の方向に延伸すること、及び(iv)選択的に、工程(iii)ののフィルムをヒートセットさせること、を含むボイド含有収縮フィルムの製造方法も提供される。
【0075】
当該シート又はフィルムの形成は、例えば、押出、カレンダー掛け、流延、又は吹込み成形によるような当業者に知られるいかなる方法で行われてもよい。当該ボイド形成剤及び当該ポリエステルは、一軸又は二軸スクリュー押出機、ロールミル又はバンバリーミキサー中で、そのポリエステルのTg温度下、あるいはそれよりも高い温度下でドライブレンドされ、あるいは溶融ブレンドされて、ポリエステル中にボイド形成剤が均一分散されてもよい。例えば、セルロース系ポリマー及びオレフィンを含むボイド形成剤、及びポリマーマトリクスとしてポリエステルを使用するようなフィルムを製造する典型的な製法では、当該溶融体が、200℃(400°F)〜280℃(540°F)の溶融温度を用いて、スロットダイを通して押出され、−1℃(30°F)〜82℃(180°F)に維持された冷却ロール上に流延される。このようにして形成されるフィルム又はシートは、一般に、5〜50ミルの厚さを有するが、より典型的な範囲では5〜15ミルである。次いで、当該フィルム又はシートは、200〜700%の範囲量で一軸延伸又は二軸延伸されて、約1〜10ミルの、より典型的には1〜3ミルの厚さを有する延伸フィルムが提供される。例えば、ボイド含有フィルムの絶縁性又はクッション性の利点を考えると、最終の厚さが大きくなるほど、望ましいといえる。その延伸操作時に形成されるボイドは、発泡フィルムの孔と全く同様に、絶縁体として働くことが可能である。よって、当該フィルムの厚さは、所望の絶縁レベルに達するまで、適宜、増やすことが可能である。また、このボイド含有層を、層状、即ち積層構造における複数の発泡層と組合せることも、可能である。例えば、発泡中間層が二層のボイド含有層によって包み込まれるようにして、密度の減少を最大とし、かつ印刷性能を改善することも可能である。
【0076】
延伸処理は、インラインで、あるいはそれに続く操作において行われてよい。本発明の収縮フィルムの場合には、当該フィルムは、一般的に、最大の収縮率が得られるような十分なヒートセットは、行われない。続いて、当該ボイド含有フィルムは印刷されて、例えば、飲料又は食品容器上のラベルとして使用されてよい。ボイドが存在するため、当該フィルムの密度は低下して、当該フィルムの効果的な表面張力が増加して、それに紙様の質感を与える。したがって、当該フィルムは、殆どの印刷インクサンドを容易に許容することとなり、それ故、「合成紙」であると考えられている。また、本発明の収縮フィルムは、多層フィルム又は共押し出しフィルムの一部として使われ、又は、積層製品の一要素として使用されてもよい。
【0077】
また、後延伸アニール又はヒートセットは、低密度を維持し、かつ収縮力を下げるために好都合である。普通、アニールは、幅出しフレームのヒートセットゾーンで、通常のヒートセット温度よりもはるかに低い温度下で行われる。当該フィルムは、そのフィルムのTgに近いアニール温度まで加熱されたまま、拘束される。選択的に、幅出しクリップを僅かに(例えば、1〜10%)接近させて、処理を促進させ、フィルムが僅かに弛緩するのを助ける。これによって、ボイドの形成が向上し、収縮応力が低下する。高い収縮応力が当該フィルムに発生すると、早計に収縮が起こり、それによって数個のボイドが接近して、密度の低下を相殺してしまう。アニール時間及び温度は、機器により、そしてそれぞれの組成によって変えられるが、典型的には、1〜15秒間に、Tg−20℃〜Tg+20℃の範囲とする。より高い温度では、通常、より短いアニール時間が必要となり、かつより高速なラインスピードであることが好ましい。アニール後の付加的な延伸は、必要ではないが、行われてもよい。このアニール処理は、典型的に、最大収縮率を僅かに(例えば、数%)下げることになるが、この減少は、時に、ボイドセルを維持して、フィルムの寸法を維持するのに有効である。
【0078】
本発明のボイド含有ポリエステル組成物、成形品、及び収縮フィルムは、そのボイド形成剤の量及び延伸条件、組成及び処理のパラメータを変えることによって、当該ボイド含有ポリエステルと回収及び再生用の他のポリマーとを分離する際に好都合に適応されるような密度範囲となるように、製造されてよい。したがって、本発明の他の態様によれば、(i)当該ボイド含有ポリエステルと少なくとも一の他のポリマーを含むポリマー混合物を、切断、細断し、又は磨砕して、粒子混合物とすること、
(ii)当該混合物を、水性又はガス媒体中に分散させること、
(iii)当該粒子を、高密度留分と低密度留分とに分配すること、そして
(iv)高密度留分から低密度留分を分離すること、
ここで、当該ボイド含有ポリエステルには、少なくとも一種の第1のポリマー及び少なくとも一種の第2のポリマーを含むボイド形成剤を分散して有する連続ポリエステル相が含まれ、その第1のポリマーが、ポリエステルのTgより大きいTg又はTm、少なくとも1GPaの引張弾性率、及びそのポリマーマトリクスの表面張力と絶対値で5ダイン/cm以下だけ異なる表面張力を有し、そして第2のポリマーが、ポリエステルの表面張力と絶対値で少なくとも5ダイン/cmだけ異なる表面張力、及びポリエステルの溶融粘度に対する第2のポリマーの溶融粘度の比が0.1〜3.5である溶融粘度を有すること、
を含む異なるポリマーの混合物からボイド含有ポリエステルの分離方法が提供される。本発明の処理には、前記したような、ボイド形成剤及びポリエステルの種々な付加的な実施態様が含まれているものと解されるべきである。
【0079】
ボイド含有ポリエステルに加えて、当該ポリマー混合物には、例えば、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリ(塩化ビニル)、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリ(ブチレンテレフタレート)、ポリスチレン、又はポリエチレンのような市販の包装用途に通常用いられる一種以上のポリマーが含まれるが、それに限定されない。ボイド含有ポリエステルを含むポリマー混合物は、切断、細断、又は磨砕されて、例えばフレーク形態の混合粒子とされる。次いで、当該粒子は、例えば、空気(例えば、空気分級)又は水のようなガス又は水性媒体中に分散される。次いで、この混合物は、分級にかけられて、高密度留分と低密度留分に分配されて、その後分離される。混合物におけるボイド含有ポリエステルと他のポリマー混合物との間の密度差のため、当該ボイド含有ポリエステルは、混合物中に残留するポリマーの密度に依存して、実質的に、低密度層又は高密度層のいずれかに含まれることとなる。例えば、ポリマー混合物に、例えばポリエチレン又はポリプロピレンのような低密度ポリマーが含まれると、高密度留分には、ボイド含有ポリエステルが実質的に含まれることとなる。例えば、ボイド含有収縮フィルムを用いてポリエチレンボトル用のラベルが作られるときは、そのラベルは、収縮後に1.0g/cc以上の密度を有することが望ましい。この密度では、ボイド含有ラベルの方が水性浮遊タンク内で沈むことになるので、それにより、低密度の、浮遊ポリエチレンポリマーから分離することが可能となる。その他の具体例では、ポリマー混合物に、例えばポリ(エチレンテレフタレート)又はポリ(塩化ビニル)のような高密度ポリマーが含まれると、その低密度留分には、実質的にボイド含有ポリエステルが含まれることとなる。例えば、当該ボイド含有収縮フィルムを用いて、PETボトル用のラベルを作ることが可能である。このボイド含有ラベルは、収縮後に1.0g/cc未満の密度を有することが好ましく、それによって、分離タンク中に浮遊することが可能となる。PETフレークは、1.0を超える密度を有して、沈むことになるから、これを容易に分離して、収集することが可能となる。よって、微孔フィルムに係る最適な密度範囲は、それが適用される包装材料のタイプに依存している。
【0080】
本発明方法について説明し、更に、このボイド含有ポリエステル収縮ラベルと、ボトル又は包装材料から得られるポリ(エチレンテレフタレート)との分離に関して詳細に述べてきた。再生処理されるボトル及びラベルは、一般に、最初に磨砕されて、空気分級工程を通過する。空気が、そのフレーク及びラベル中に吹き込まれ、強制的に低密度物質が上昇し、当該タンクから排除される。この工程により、ラベルの実質的部分が取り除かれる。次いで、残留ポリマー混合物は、85℃の温度下の苛性アルカリ溶液中で洗浄される。1g/cc未満の密度(略、浴の密度)を有するボイド含有収縮ラベルは、頂部に向かって浮遊し、そこで掬い取られる。1g/ccを超える密度を有するポリ(エチレンテレフタレート)のボトルフレークは、タンクの底まで沈降し、そこで、分離され、及び/又は回収される。同様に、当該ラベル及びボトルのフレークが、空気分級によって、高密度留分と低密度留分とに分配されて、実質的に分離されてもよい。例えば、低密度ポリエチレン又はポリプロピレンのような低密度ポリマーを含むポリマー混合物の場合には、その回収工程は、逆転する。これらの具体例では、ポリマー混合物には実質的に低密度留分が含まれることとなり、ボイド含有ポリエステルは、実質的に高密度留分に含まれることとなる。例えば、仮に、水を用いてポリマー粒子の混合物を分散するときには、便宜的に、そのボイド含有フィルムが、洗浄浴中で1.0g/ccを超える密度を有するようにしなければならない。
【0081】
ボイド含有ポリエステルの密度は、収縮の結果として変わることがあるので、よって、本発明の分離工程を考慮しておくことが必要である。典型的に、密度は、収縮後に約0.05g/ccだけ増える。更にまた、仮に当該フィルムが印刷されると、インク及び何らかの被覆が、その有効密度を増加させる。よって、これら変動量の組合せ効果によって、収縮後の良好な浮遊を確保するためには、出発の密度は、好ましくは約0.90g/cc以下であることが必要となる。この収縮時での密度の減少量は、適当なアニールによってこれをコントロールすることが可能である。後延伸アニールを大きくすると、ボイドはより安定となるが、最大収縮率が低下してしまう。
【実施例】
【0082】
以下の実施例によって、本発明を、更に説明する。
【0083】
一般: 試験法は、可能な限り、標準ASTM手順に従った。しかしながら、T.M.長フィルム延伸機を用いて延伸したいくつかのサンプルでは、粒度が小さかったため、ASTM手順の多少の変更が必要であった。
【0084】
密度の測定は、エタノールと水から作製した勾配カラムを用いて行った。当該カラムの密度範囲は、公称、0.82〜1.00g/ccであった。また、フィルムの量が十分であった幅出しフィルムの場合には、10×10cm面積の10枚のシートに切断して、秤量し、各シート断面の複数個所でシートの厚さを測定して、その測定値を平均した。次いで、その平均密度は、容積で割った質量から計算した。
【0085】
一般的なフィルムの品質と美感は、主観的評価に基づいて、表IIに示した。優れたフィルムでは、ボイド/添加剤が均一分散し、高い不透明度で、強/弱の斑点は全く無く、混合不良から発生する縦縞も全く無かった。また、フィルムの触質性(即ち、「風合」)では、剛くて、ザラザラしたフィルムは不良と評価し、柔らかくて、「ザラザラ感の低い」フィルムを良と評価した。不良なフィルムは、一般に、高度なザラザラ感と、劣悪な表面/不透明度の不均一性(例えば、「縦筋」)を示した。
【0086】
引張特性は、T.M.長延伸フィルムの小さいサンプル寸法を考慮して、ASTM法D−638により測定した。また、いくつかの試験は、長いゲージ長にも適用可能な、より普通のASTM法D882を用いて行った。弾性率のデータは、全て室温で得られたものであり、他に注釈が無い限り、公称の、無延伸状態の材料を指す。また、表Iの弾性率データのいくつかは、一般の製品カタログから得た。
【0087】
光の全透過率は、ASTM法D1003により測定した。更に、吸光係数は、透過率に関して厚さを変えることによる効果を標準化し、より正しい不透明度値を得る方法として測定した。吸光係数(1/cmの単位)は、Beer の法則に基づき、以下のものとして算定される。
吸光係数=−ln(内部透過率)/厚さ
式中、lnは、自然対数(ベース e)であり、厚さは、フィルムの厚さ(cm)を指し、そして内部透過率は、表面の反射損失を補正した透過率である。透明で、ボイドの無いポリエステルフィルムの場合は、フィルムと空気の間に屈折率の不一致があるため、一般に、全面で4%の反射損失、裏面で4%の反射損失がある。不透明な、ボイド含有フィルムの場合は、不十分な光がフィルムを透過して裏面に達するので、前面に4%の反射損失があるだけである。
【0088】
フィルムの収縮率は、既知の初期長さを有するサンプルを、65℃〜95℃の所定温度下の水浴中に、それぞれ5秒、10秒、又は30秒間浸漬し、次いで、それぞれの方向の長さにおける変化を測定することによって、測定した。収縮率は、長さにおける変化を原長で割って100倍したものとして報告する。95℃下で10秒後の収縮を「極限収縮率」として報告する。公称のサンプル寸法は、10cm×10cmであったが、T.M.長延伸フィルムの場合は、軸から外れた幅を減じた。
【0089】
収縮力は、強制変換機を備えた引張リグに固定した1/2インチ幅のフィルムストリップに関して測定した。二つのグリップ間のゲージ長は、2インチであった。サンプルをホットエアーガンで急速に加熱して、強制変換機に最大の収縮力を記録させた。この収縮力は、ポンド又はニュートン単位で直接報告することはできるが、収縮応力の方がより普通であるので、前記収縮力を初期の断面積で割ることによって当該収縮応力を得た。
【0090】
表面エネルギーは、時に、これを「臨界表面張力」ともいうが、Accudyne(商標)ダインマーカーペンを用いて測定し、あるいは文献(J. Brandrup 及び E.H.Immergut編の「Polymer Handbook(ポリマーハンドブック)」、第3編、Ed. John Willey & Sons発行、411〜426頁(1989年)、及びD. W. Van Krevelin 著の「Properties of Polymers(ポリマー特性)」、Elsevier、アムステルダム、(1990年))から得た。これは、種々のポリマーに関する屈折率を添付して、表Iに示す。値は、可能な場合、ポリマーの非晶質型に関して示す。
【0091】
表面張力は、結晶化度及び配向に伴って変化する(例えば、表面張力は、結晶化したとき、PET及びPBTのようなポリエステルの場合には低下する。)。溶融混合時に、当該ポリマーは非晶質状態にあり、よって、その非配向で、非晶質の表面張力の値は、可能な限り表Iに報告している。しかしながら、混合時に完全には溶融しない結晶質粒子の場合には、その結晶の値の方が適当であると認められているので、それが代わりに用いられるべきである。この方法で測定された臨界表面張力は、他の方法で測定されたものと略同じであるが、それらの値が異なるときは、当該データと一致させるため、臨界表面張力を参照した。
【0092】
摩擦係数(COF)は、フィルム自体の場合には、ASTM法D1894を用いて測定した。溶融粘度は、動的モードの窒素雰囲気で、並行板流動計を用いて測定した。本件のポリマーは、広範な剪断範囲に亘って典型的なニュートニアンであった(押出機内に見られるものを含めて)ため、1ラジアン/秒(1秒-1の剪断速度に等しい)での粘度を、公称のゼロ剪断粘度として理解して、実施例における算定に用いた。屈折率は、633nm波長のレーザを備えたMetricon(商標)プリズムカプラーを用いて測定し、あるいは文献から得た。この屈折率は、延伸材料に係る三方向全ての平均値として算定した。公称的には、当該屈折率は、最終フィルムの材料形態(即ち、結晶質又は非晶質)に基づいて測定されなければならない。
【0093】
融点及びガラス転移温度は、DSC(ASTM法D3418を用いて)、動的機械分析(16ラジアン/秒周期)のいずれかによって測定し、あるいは製品及び一般文献から得た。実施例の組成物に係る特性データは、表IIに示し、延伸フィルムに係るデータは表IIIに示す。表IVには、実施例フィルムのいくつかについての弾性率及び密度のデータを示す。
【0094】
比較例1〜3: セルロース系ボイド形成剤対オレフィン系ボイド形成剤の効率比較
100モル%のテレフタル酸、10〜40モル%の1,4−シクロヘキサンジメタノール、35〜89モル%のエチレングリコール、及び1〜25モル%のジエチレングリコールを含む非晶質ポリエステル(密度=1.30g/cc、屈折率=1.565、表面エネルギー=42ダイン/cm、Tg=75℃)を、二軸スクリュウ押出機を用いて、種々のボイド形成剤と混合した。酢酸セルロース(「CA」)粉体(CA398−30、Eastman Chemical 社製)、ポリプロピレン(P4G3Z−039、Huntsman Chemical 社製、5メルトインデックス)、又は線状低密度ポリエチレン(「LIDPE」)(HIFOR(商標)ポリエチレン、Eastman Chemical 社製、2メルトインデックス)のいずれかを含む当該ボイド形成剤は、表II及びIIIに示されている。当該CAは、1.473の屈折率(RI)、44ダイン/cmの表面張力、及び約185℃のガラス転移温度を有していた。当該ポリプロピレンは、1.490の屈折率、30ダイン/cmの表面張力、及び160℃の融点を有し、そして当該ポリエチレンは、1.49の屈折率、32ダイン/cmの表面張力、及び120℃の融点を有していた。当該セルロース系樹脂は、当該ポリエステルの表面張力の5ダイン/cm以下の範囲にあるが、他方、当該オレフィン系樹脂は範囲内になかった。よって、後者のものは、表II中に、「第2のポリマー」として区分された。
【0095】
この混合生成物を、その取り扱いが容易なようにペレット化し、次いで、最終的に10%のボイド形成剤の装填量が得られるように、純粋なコポリエステルと50/50の比で混合した。全てのサンプルを、押出す前に、54.4℃(130°F)で8時間乾燥させた。この第2の混合は、フィルムダイを備えた2.5インチの単軸スクリュウ押出機(L/D=30:1)を用いて、260℃の公称溶融温度で行った。この温度での樹脂の粘度は、ポリエステル:11000ポイズ、PP:6500ポイズ、LLDPE:17400ポイズである。この混合物から、10ミルの最終厚さを有するフィルムをキャスト(流延)した。当該二種のオレフィン濃厚物には、相溶剤として、全フィルムの重量に対して1重量%のイーストマン製のエチレンメチルアクリレートコポリマー(EMAC2260、Eastman Chemical 社製)も含んでいた。
【0096】
キャストフィルムの延伸を、市販の幅出しフレーム(Marshall & Williams 社製、Providence、RI)上で行った。この延伸条件は、材料毎に変更したが、ラインスピードは、公称、15〜35フィート/分(「fpm」)であった。幅出し機のアニール区画は、全てのサンプルの収縮力を低減させるために、クリップを用いて約5%収縮させた状態で、70℃下でセットした。
【0097】
PPボイド形成剤(比較例2)の場合には、当該フィルムを80℃(約、180°F)、で5.2倍延伸することによって、1.12〜1.15g/ccの密度が達成された。得られたフィルムは、75℃(167°F)で36%の収縮率、及び95℃で70%の収縮率であった。全透過率は、ボイドの形成効率が悪かったため、82%であった。
【0098】
LLDPEボイド形成剤(比較例3)の場合には、ラインスピード15fpmで、85℃下での6倍の延伸後に、僅か1.19g/ccの密度しか達成されなかった。フィルムの収縮率は、75℃で21%、そして95℃で70%であった。延伸比が高かったにも拘らず、LLDPEのより柔軟な特性のため、PPよりもはるかに効率が悪かった。透過率は、89%であった。
【0099】
CAボイド形成剤(比較例1)の場合には、PPと同じ5.2倍の延伸比、及び85℃の延伸温度を用いて、1.03〜1.05g/ccの密度が達成された。延伸比を85℃(185°F)下で、6.4倍にまで高めると、結果として0.99g/ccの比重が得られた。5.2倍の延伸比でのフィルムの収縮率は、75℃で23%、そして95℃(200°F)で72%であった。透過率は、僅か27%であったが、これは、PP又はLLDPEボイド形成剤よりもはるかに不透明であった。
【0100】
当該CAフィルムは、より良好な分散(つまり、マトリクス樹脂との表面張力の調和性)のため、オレフィン系フィルムのいずれよりも、より滑らかで、より均一な艶消仕上げ及びはるかに高い不透明度(透過率値でも見られる)を有し、外観も著しく良好であった。オレフィンフィルムは、両者とも、比較的に半透明であり、かつ優れた「接触透明度」を示したが、これらは、殆どの包装用に利点とならない。
【0101】
全てのフィルムには、同じ重量%のボイド形成剤が用いられたが、CA系のフィルムでは、著しく低い密度と大きい表面張力を有していた。このことは、確かに、本来、密度が小さい(それぞれの場合、約0.90g/cc)オレフィン系樹脂でさえも、容量基準では、ボイド形成剤の濃度が大きくなることを意味する。よって、当該CAは、明らかに、より効率がよく、また分散も良好である。
【0102】
比較例4〜5: 企業規模での微小ボイド形成剤の延伸
この比較例では、横断方向(「TD」)の延伸に対向して縦方向(「MD」)の延伸を付与するための延伸用幅出しフレームに代えて、市販の縦方向(「MD」)延伸装置(Marshall & Williams 社製)を使用した。この延伸装置は、二軸延伸の一部として、又はそれ自体、MD収縮ラベル(例えば、ロール供給ラベル)用に使用した。この装置は、幅出しよりもはるかに大きい剪断速度を有し、所定の延伸比に対する効果的な延伸量がより大きいという利点を有する。LLDPEフィルム(比較例3)がこの延伸機を用いて再試験され、比較例4として示されているが、不十分なフィルムでも、重大な試験に適用することができた。試験は、6倍の延伸比及び公称82℃(180°F)の延伸温度で行い、1.02g/ccの密度を達成した。95℃での収縮率は、僅か59%であった。このフィルムは、テンターフレーム上で延伸した同じ組成物よりも僅かに高い不透明度(39%の透過率)であったが、全体としては、非常に縦縞が多く、外見も不良であった。
【0103】
比較例5は、当該ポリエステルに、15重量%のK−RESIN(商標)KR05スチレン−ブタジエン−スチレンコポリマー(「SBS」、Phillips Chemical 製)と5重量%のTerlux(商標)2812メタクリレート−アクリロニトリル−ブタジエン−スチレンコポリマー(「MABS」、BASF 社製)を混合したことを除き、比較例1〜3と同じポリエステルからなり、前記したと同じ条件を用いて、当該延伸機上で延伸した。押出機での樹脂のペレット/ペレット混合は、添加剤の予備混合に対する低コストの代替法として行った。SBS及びMABSの表面張力は、それぞれ、34及び35〜36ダイン/cmであると評価した。SBS及びMABSのTgは、それぞれ、約90℃及び100℃である(両者は、ブロック構造であるため、非常に広い転移温度を有する)。SBS及びMABSの屈折率は、それぞれ、1.57及び1.54であった。当該SBSの粘度は、公称200℃の処理温度下で、約100,000ポイズであると評価したが、他方、当該ポリエステルは、当該コポリエステルについて1.3の比を与えると、75,000ポイズであった。このコポリエステル/スチレン系樹脂の混合物は、最終密度0.98g/ccを有し、そして85℃及び95℃下でそれぞれ33%及び70%の収縮率を有していた。全透過率は、32%であった。それは、LLDPEよりも美感が高くて(縦縞がより少ない)、硬いが、先に製造したCAフィルム(より大量のボイド形成剤を含有し、延伸機での引張速度がより大きいけれども)よりも劣っていた。また、このフィルムは、より脆かったが、それは、MABSとコポリエステルとの表面張力の不調和の結果であると思われた。当該延伸機でのフル操業の場合、CA樹脂では不十分であったが、そのより大きな引張速度と延伸比のため、オレフィン及びスチレン系のシステムよりも低密度で、かつ優れた美感を有し、これによると、当該延伸機は、幅出しフレームと同じようなものであるという示唆が得られた。
【0104】
実施例1及び比較例6〜7: T.M.長フィルム延伸機でのセルロース系樹脂ボイド形成剤とセルロース−EMAC及びセルロース−EBACボイド形成剤との比較
種々なポリマーを、二軸スクリュウ押出機を用いて混合し、前記比較例1〜3と同様にして(及び同じマトリクスコポリエステルを用いて)ペレット化した。次いで、これらの濃厚物を、単軸スクリュウ押出機(1.5インチKillion)を用いて、25重量%の装填量でコポリエステル中に混合し、その後、公称260℃の溶融温度で、10ミル厚のフィルムにキャストした。実施例1では、CA−398−3酢酸セルロース(屈折率RI=1.473、表面張力=44ダイン/cm、Tg=185℃)とエチレンメチルアクリレートコポリマー2260(「EMAC」、Eastman Chemical 社製、2メルトインデックス、RI=1.496、表面張力=34ダイン/cm、粘度=9900ポイズ、融点=77℃)との60/40の混合物からなる濃厚物を使用した。比較例6では、CA−398−3酢酸セルロースとエチレンブチルアクリレートコポリマー(「EBAC」、Eastman Chemical 社製、0.5メルトインデックス、RI=1.495、表面張力=33ダイン/cm、Tm=86℃)との60/40の混合物であった。当該EBACは、より高分子量であるため、EMACサンプルよりも約4倍高い粘度を有している。比較例7では、CA−398−3とPETG6763コポリエステル(Eastman Chemical 社製、Tg=80℃)との60/40の混合物であった。この後者の比較例では、先の二つの例に反して、CAのみが「ボイド形成剤」の一部であると考えられている。同様に、PETG6763は、マトリクスポリエステルの一部である(そして、特性は、主たるコポリエステルと同様である)。比較例8は、延伸方法が異なることを除いて、比較例1と同様であった。
【0105】
フィルムを、T.M.長のラボフィルム延伸機を用いて、85℃下で、一軸方向に5倍(5×1の平面延伸比)延伸した。延伸後、フィルムを普通に空冷して、凍結配向させた。密度は、全てが、公称で約1.0g/cc又は僅かにそれより大きくて、カラム上での分解はできなかった。当該EMAC又はEBACを加えたフィルムに係る吸光係数の値は、CAのみ(比較例7)に比して著しく改良されていた。その収縮力は、CAサンプルに比して、25%も大きく低下していた。当該EBACサンプルの品質は、EMACほど良好でなく、その小さい吸光係数によって示されるように、全体の不透明度もより劣るものであった。この実施例では、実質的に異なる表面張力を有するが所望の粘度比の範囲内にある(EMACに対して)第2のボイド形成剤を加えると、不透明度、収縮力、及びボイド形成性を更に向上させることに役立つことを例示している。
【0106】
実施例2〜3: セルロース系樹脂/オレフィン混合物の幅出し
EastmanCA398−3とEMAC(前述した)との60/40濃厚物を用いて、幅出しフレームによりボイド含有フィルムを作製した。当該濃厚物を、比較例1〜3と同じコポリエステル中に15及び25重量%の装填量で混合し、2.5インチの押出機上でフィルムにキャストした。次いで、フィルムを、比較例1に記載した幅出しフレームで延伸した。延伸比は、公称89℃下で5.5倍であった。
【0107】
実施例2及び実施例3を比較例1(CA対照)と比較すると、同様な延伸条件下でオレフィンを加えた効果が示されている。実施例3では、当該オレフィンは、CAそれ自体を超えて、吸光係数(又は不透明度)及びソフト感を増大させていることがわかる。更にまた、収縮力についても、極限収縮率に顕著な損失を与えること無しに、大きく減少していた。表面張力は、全ての場合、高いまま維持していた。これによって、印刷の容易さを維持できる。
【0108】
比較例8: 純のポリエステルフィルム
比較例1〜3に関して前述したと同じ非晶質ポリエステルを、T.M.長フィルム延伸機を用いて、実施例1で記載したように延伸した。このフィルムには、ボイド形成剤を有していない。
【0109】
実施例4〜15: T.M.長延伸フィルム上の種々なCA/オレフィンボイド形成混合物の比較
多くの濃厚物を、前記実施例に記載したような二軸スクリュウ押出機で作製し、次いで当該ポリエステル中に、25重量%又は35重量%の装填量で加えた。フィルムを、6インチのダイをもつ1インチKillionの押出機上に、公称260℃の温度で押出し、T.M.長フィルム延伸機を用いて、延伸した。フィルム特性は、表II、III、及びIVに示されている。当該混合物には、EMAC(前記したような)、スチレンアクリロニトリルコポリマー(「SAN」)、メタクリル−アクリロニトリル−ブタジエン−スチレンコポリマー(「MABS」)、アタクチックポリスチレンPS(全てBASF 社製、RI=1.59、表面張力=36ダイン/cm、粘度=3300ポイズ、Tg=105℃)及びPP(メルトインデックス=5、RI=1.49、表面張力=30ダイン/cm、粘度=6500ポイズ)が含まれていた。しかし、MABSとSANのサンプルは、過剰な変色に通じるセルロースとの触媒相互作用のため、各表に掲載されていない。25重量%装填量のボイド形成濃厚物の場合に用いられる5.5倍の延伸に代えて、35%の装填量を含有するサンプルでは、5倍でしか延伸されなかった。
【0110】
当該表によると、PS及びPPは、EMACに比して、密度低下の改善に役立ち、かつCA対照に比して、不透明度(及び収縮力)も著しく改善した(比較例1と実施例7)ことが認められる。両者は、ポリエステルと大きな表面張力の不整合を有するが、その粘度比は所望の範囲内にあり、それによって、それらの優れた特性に寄与していた。PPは、それがコポリエステルと大きな屈折率の不整合があるということで、不透明度に関しては良好であった。極限収縮率は、これら混合物の全てに関して、収縮力が低いまま高く維持されていた。
【0111】
比較例9: PSフィルムにボイド形成するためのCA/オレフィン混合物の使用
比較例6に記載されるような25重量%装填量の60/40のCA/EMAC濃厚物を、SBS及び結晶スチレン(60重量%のSBSと40重量%の結晶ポリスチレン)と共に混合して、ボイド含有延伸ポリスチレン(「oPS」)フィルムを作製した。当該スチレンマトリクスのRIは、約1.57であり、表面張力は、約36ダイン/cmであった。当該スチレンマトリクスのガラス転移温度は、90〜95℃であった。押出条件は、公称の融点温度約210℃よりも低い温度で、また、延伸は、公称の105℃で行った。この温度でのスチレン混合物の粘度は、公称で約50,000ポイズであったが、CAは、この温度で固体であり、粘度は、無限大に達していた。よって、その粘度比は、3.5よりはるかに大きかった。最適値での試験は行わなかったが、粘度は、純oPSでの1.05g/ccから微細ボイドが形成される1.0g/cc未満にまで低下した。ボイド形成の品質は劣悪であり、先の実施例よりも劣っていた。また、サンプルは、おそらく、SBS触媒とセルロース系樹脂との間における酸の相互作用の結果であるが、外見上黄変していた。この変色の問題は、酸掃去剤及び/又は安定化剤を用いて容易に取り除くことができると思われる。
【0112】
実施例16: 酢酸プロピオン酸セルロース
この実施例では、酢酸セルロースを酢酸プロピオン酸セルロース(Eastman CAP482−20)(表面張力=40ダイン/cm、RI=1.476、Tg(公称)=120℃)に代えて、フィルムを、60/30/10のCAP/PP/EMAC濃厚物及びポリマーマトリクスとして同じコポリエステルを用いて、比較例1に記載したように作製した。CAPは、一軸スクリュウ押出機で容易に溶融処理でき、その分散も良好であることが認められた。この実施例で用いたCAPは粉体であったが、それは、また、ペレット形態でも容易に入手でき、二軸スクリュウ押出機で予備混合するよりも、むしろ直接に、押出機で混合することが可能である。
【0113】
実施例17〜18: ナイロン及びポリカーボネートフィルムの微細ボイド形成
種々なポリマーマトリクスでのボイド形成剤の有効性を例証するために、追加のサンプルを、ベース樹脂としてナイロンMXD−6600(商標)(三菱ガス化学製、屈折率=1.582、表面張力=42〜47ダイン/cm、Tg=85℃)及びビスフェノールAポリカーボネート(メルトインデックス=6、屈折率=1.585、表面張力=45ダイン/cm、Tg=150℃)から作製した。それぞれのサンプル中に、前記した成分を用いて、50重量%の酢酸セルロース、30重量%のポリプロピレン、10重量%のEMAC、及び10重量%のPSを含む25重量%のボイド形成剤を混合した。フィルムは、6インチのフィルムダイを備えた1インチのKillion押出機を用いて押出した。公称の押出温度は280℃で、フィルム厚は10ミル(0.0254cm)であった。この温度下での成分の粘度は、次のとおり、ナイロン=7300ポイズ、PC=14000ポイズ、PP=5200ポイズ、EMAC=7000ポイズ、PS=1500ポイズである。ポリカーボネートマトリクスに対するポリスチレンの粘度比は重要ではなかったが、全てがよく調和して、ナイロンとの混合は良好であった。CAのTg(約180℃)は、ポリカーボネートマトリクスのTg(150℃)及びナイロンのTg(85℃)よりも高かった。表面張力は全てに成分に関して所望の範囲内であった。ナイロンブレンドに係る得られたキャストフィルムの品質は、分解及び/又は残留触媒活性のため黄変したことを除いて、優れていた。逆に、PC混合物に係るフィルムの品質は、ナイロンの場合ほど良好ではなかったけれども、許容できるものであった。
【0114】
次いで、それぞれのフィルムサンプルを、1/2インチ(1.3cm)のストリップに切断して、これらをグリップ間に公称2インチのゲージ長をもつChatillonLTCM−6引張リグ上に固定した。それから、このフィルムを、ホットエアガンを用いて軟らかくなるまで加熱し、その後、一軸方向に15インチ/分(38cm/分)の速度で延伸して、ボイドを形成させた。延伸比は、樹脂及び加熱の均一性に応じて約3倍〜6倍まで変えた。ボイドの形成は、ネッキング時でのフィルムの白化から明らかであった。ボイド形成フィルムの試験片は、その後、ストリップから切断して、水中に浸漬した。浮遊した両者から、密度が1g/cc未満であることが示され、それによってボイド形成包装品の有効性が確認された。
【0115】
比較例10
この比較例は、米国特許第4,770,931号明細書の実施例13から援用したものであり、溶融粘度に関する追加のデータをもつ比較例として提供される。ボイド含有混合物は、酢酸セルロース、4.7メルトインデックスのポリプロピレン(PP4230)、及び0.70IVの PETを用いて、3.2cmの押出機で作製した。酢酸セルロースの装填量は20重量%であるが、他方、PPの装填量は、3%、5%及び10%と変えた。公称の溶融処理温度は280℃で、この温度下での溶融粘度は、それぞれPET及びPPに関して、4000ポイズ及び20,000ポイズであり、結果として約5の粘度比が得られた。これは、良好な混合範囲外である。T.M.長フィルム延伸機で、フィルムを延伸し、ボイドを含有させた。白色、不透明な、紙様フィルムが作製されたが、フィルムの強度及び品質は、ポリプロピレンの量が増えるにつれて低下した。
【0116】
比較例11
この例では、マトリクス樹脂として比較例1〜3のポリエステル、ボイド形成剤としてポリプロピレン、ポリスチレン、及び/又はポリメチルペンテンの混合物を用いて、混合物を作製した。表面張力の比較によれば、当該マトリクス樹脂は、そのいずれもが当該ポリエステル(これは、約42〜43ダイン/cmである)の許容可能な5ダイン/cmの範囲内に無いことが示されている。この劣悪な表面張力の調和性のため、これらのボイド形成剤は、高剪断及び正確な粘度比といった最適混合条件に頼らざるをえず、その混合は、再凝集に起因して効率的でないものとなる。結果として、粒度分布は良好で無く、フィルム表面は粗くて、それへの印刷を可能とするには、フィルムの上面に付加的な平滑層が必要となる。
【0117】
実施例19: ボイド形成剤としての結晶質ポリエステルの使用
この実施例では、PETの粉体が、商業的使用のため、及び反応生成物から濾過された「微粉」の形態で作られた。これらの微粉は、濾過時に除かれるPET製造工程の望ましくない副産物である。それらは、高度に結晶質であり、高融点温度(Tm=240℃、最大280℃)を有し、通常の処理時に完全に溶融することは困難である。よって、この結晶相の値は、より適用可能である。結晶質のPET表面張力は、当該粒子が極めて溶融し難い(結晶の表面張力は、局部の溶融程度に左右されて、36〜40ダイン/cmと予測される)ので、より低くなる傾向がある。このポリエステル微粉及び/又は粉末状のPET粉体を、二軸スクリュウ押出機を用いて、EMAC樹脂と共にコポリエステル中に混合した。押出条件は220℃であるが、これは、溶融を最小となすため、PETの融点より低い。前述したように、フィルムの延伸及びボイドの形成は可能であるが、当該PET粒子は、表面張力をボイド形成剤と整合させるのに役立っている。PBTのような他の結晶質ポリマーを、PETに代えて使用してもよい。
【0118】
実施例20: ボイド寸法の分析
比較例1(コポリエステル及びCA)及び比較例3(CA及びEMACを含むコポリエステル)から得たフィルムサンプルを、電子顕微鏡を用いて解析し、ボイド寸法及び粒度を決定した。比較例1では、1.398μmの平均ボイド寸法を有し、その標準偏差は1.30μmであった。最大の検出可能なボイド寸法は、17.6μmであった。逆に、比較例3では、0.286μmの平均ボイド寸法を有し、その標準偏差は0.183μmであった。最大の検出可能なボイド寸法は、2.38μmであった。CA及びEMACの両者を含有する比較例3では、CAのみを含有するサンプルよりも細かなボイドの寸法分布を有し、そのため、より良好な品質を有するフィルムが得られた。それぞれのボイド形成剤の粒度は、粒子からボイドを分離することが困難であるため,決定しなかった。
【0119】
実施例21: フィルムの溶剤接合
実施例1〜15及び比較例1〜8から得られるフィルムを、市販の接合溶剤(Flexcraft460(商標)又はFlexcraft331(商標)(Flexcraft Industries 社製))を用いて溶剤接合試験を行い、その結果を表IIIに示した。各フィルムをストリップに切断し、ピペット又は綿棒を用いて少量の溶剤を片面に塗布し、続いてフィルムの第2のストリップにも塗布して壁紙ローラーで「ロール掛け」した。これらフィルムを、1分間又は2.5時間(長時間)放置した後、引張試験を行った(Flexcraft460での1分間のデータのみ、表IIIに示す)。強い接合強度は、その結合部が破壊又は変形する前に、フィルムが破壊又は変形することを示す。中程度の接合強度では、接合部の破壊前にある種の変形が示され、他方、弱い接合強度では、容易に接合破壊が起こることが示されている。接合強度の殆どは、高含量のPPを含むフィルム(実施例15)を除き、2.5時間後では強力であった。殆どのフィルムでは、1分後に、典型的なラベル用途に十分な結合強度となることが示されている。よって、当該フィルムの成分によっては、ある種の特注の溶剤が必要となるが、これらラベルのいずれも、慣用法を用いての接合が可能である。
【0120】
実施例22: 摩擦係数
ボイド含有フィルム(比較例8)を、純コポリエステル収縮フィルムの対照と比較した。純コポリエステルに係る静的COFは0.35であったが、他方、実施例3に係るその値は0.24であった。また、ボイド含有フィルムは、そのデータと一致して、はるかに滑らか感を有していた。
【0121】
実施例23〜24: 収縮性
表II及びIIIに記載される全てのフィルムは、10秒後、70℃下で5%より大きい収縮率を有していた。その殆どのものは、これらの条件下で、15〜50%の収縮率の範囲にあった。全ては、その温度範囲に亘って10%未満の軸ずれ収縮率値を有していた。収縮の開始は、主としてマトリクスポリマーの機能であり、公称には、ガラス転移温度(実施例1〜15及び比較例1〜8で使用するポリエステルの場合、そのTgは75℃であった)より約5〜10℃低い温度で開始する。
【0122】
収縮性は、当該分野で周知なように、ボイド形成剤及び延伸条件によって相当変化した。この実施例の場合、濃厚物は、前記したような二軸スクリュウ押出機で作製した。実施例23では、60重量%のCAと40重量%のEMACをベースとする濃厚物を用いた。実施例24では、60重量%のCA、20重量%のEMAC、10重量%のPP及び10重量%のPSからなる濃厚物を用いた。両濃厚物とも、25重量%の装填量で、比較例1〜3に記載のポリエステル中に混合した。表面張力及び粘度比は、両サンプルの場合好ましい範囲にあった。フィルムを押出し、公称5倍の延伸比及び85℃の延伸温度で幅出しした。実施例23では、延伸後のアニール温度は、約70℃で、実施例24でのアニール温度は、約80℃であった。それぞれのフィルム収縮率は、異なる温度及び時間で測定した。
【0123】
実施例23では、5及び10秒後の70℃下での主軸方向における収縮率は、それぞれ33%及び46%であった。80℃下では、その5及び10秒後の収縮率は、65%及び68%であった。軸ずれ収縮率は、決して5%を超えなかった。よって、実施例23では、微細ボイドフィルムが、非常に高速かつ高収縮率で作製可能であることが示されている。このタイプのフィルムは、例えば、非常に正確な温度コントロールをなすことによって、極端に異形の容器周囲に、顕著だが、均一な収縮が可能となる蒸気タイプの収縮トンネルに有用である。
【0124】
これに対して、実施例24では、5及び10秒後の70℃下での主軸方向における収縮率は、それぞれ9%及び15%であった。80℃下では、その収縮率は、それぞれ41%及び45%であった。最大の軸ずれ収縮率は、3%であった。この実施例では、温度と共に徐々に収縮率が増大する収縮フィルムであり、そして、これは、例えば、温度コントロールが正確ではないホットエアタイプの収縮トンネルに有用であることが示されている。
【0125】
実施例25: 低温開始収縮フィルム
この実施例では、前記実施例のポリエステルマトリクスを、Eastman のEASTOBOND(商標)コポリエステル、高DEG、低Tgコポリエステル(Tg=55℃)と代えた。EASTOBOND(商標)は、先のコポリエステルと同じ表面張力、屈折率、及び粘度を有し、よって、前記したボイド形成剤(例えば、60重量%のCA/40重量%のEMAC添加剤)を用いて、良好な混合が起こる。したがって、例えば、その収縮は、約50℃で始まり、約65℃までの最大収縮率に達することとなる。その最終収縮率は、延伸温度と延伸比によることとなる。公称の65℃の延伸温度及び5倍の延伸比の場合には、その最終収縮率は、約60%〜75%となる。このタイプのフィルムは、例えば標準のヘアドライヤーを用いて家庭使用で開始できるフィルムのような、極めて低い収縮温度が必要となる用途に有用である。
【0126】
実施例26: 延伸フィルムの剛性
軸ずれ(即ち、非収縮方向)におけるフィルム弾性率は、収縮スリーブが、圧潰や座屈無しにボトルを被って塗布することができるようになすために特に重要である。軸ずれの弾性率は、実施例4〜15及び実施例23及び24に関して測定し、表IVに示した。弾性率と密度との間の直接相関は、線回帰に基づいて認められた。
E=2.04×密度−1.15
式中、Eは、弾性率(GPa)で、密度は、単位g/ccである。この相関は、殆どのポリエステルが略同じ正味の弾性率を有しているので、マトリクス依存性があり、収縮フィルムに使われる殆どの典型的なポリエステルに理論的に間違いがないと考えられている。また、この相関によると、密度に関する弾性率の依存性が強い(ボイドは剛さを有しない)ことが示されている。この回帰線から僅かに変位すると、結果的にボイド形成剤の剛さが変動することとなる。例えば、軟化剤のEMAC物質を全く含有しない実施例9〜15の場合、EMACを含有する他のフィルムよりも、一定密度でより高い弾性率を有していた。よって、所定の密度のターゲットを得る場合に、剛さは主として密度に依存しているが、組成によって僅かに弾性率を微調整することが可能であった。
【0127】
実施例38: スリーブの座屈強度
弾性率と密度との間の相関は、スリーブの圧潰強度に密度を相関させることにも使用される。負荷天井荷重をもつ薄壁チューブの座屈強度は、工学文献(例えば、W.C. Young 著の「Roark's Formulas for Stress and Strain(応力及び歪に関する Roark の式)」、第6編、McGraw-Hill、ニューヨーク、689頁(1989年))によく引証されている。典型的なスリーブの幾何学の場合、点座屈/圧潰が起こる天井荷重σは、次式で表わされ、
σ=0.3Et/R
式中、Eは、弾性率(パスカル)、Rは、半径、及びtは、厚さ(m)である。
天井荷重の応力は、以下の座屈の開始時での天井荷重力G(ニュートン)に変換でき、
G=0.6πEt2
密度関数としてEに置換すると、以下の式が得られる。
G=0.6π(2.04×密度−1.15)t2
この表現では、天井荷重強度を、密度と厚さの関数として示している。微細ボイドの形成の度合いが増えて、密度が減ると、これを補正するために、その厚さが増えなければならない。なお、環の圧潰/座屈強度は、平方厚さの関数であるだけでなく、密度/弾性率の一次関数でもある。また、それは、低い強度を示す平坦でない厚さをもつフィルム厚の均一性にも依存している。
【0128】
一例として、当該天井荷重強度を、紙ボードに関してTappi 822に概要されているのと同様な手順を用いて、比較例8及び実施例23及び24について測定した。直径50mm、幅12mmのフィルムフープを、13mm/分のクロスヘッド荷重速度で試験した。その荷重方向は、当該フィルムの非収縮方向が軸方向に沿ったものであるような方向であった。座屈の開始は、荷重時での力対時間のプロット(5個の測定値の平均)から得られた。厚さ55μm(55-6m)をもつ、比較例8からの55μm(55-6m)の厚さをもつ非ボイド形成フィルムの場合は、その測定座屈強度は11.2ニュートンで、予測値は9.2ニュートンであったが、それらはよく一致している。実施例23及び24からのフィルムは、それぞれ、厚さ45μm及び57μmを有していた。実施例23からのフィルムの場合は、その測定圧潰強度は3.9ニュートンで、予測値は3.6ニュートンであった。実施例24からのフィルムの場合は、その測定値は7.1ユートンで、予測値は5.9ニュートンであった。測定及び予測値の全ては、よく一致しており、実験エラーの範囲内であったので、それによって等式が立証される。よって、仮に、所定のラベル貼付機に対して最小の圧潰強度となすことを求める要求があるならば、前記の等式を用いて、その圧潰強度を満足するような密度の関数としてフィルムの所要厚さを与えることが可能である。
【0129】
【表1】

【0130】
【表2】

【0131】
【表3】

【0132】
【表4】

【0133】
【表5】

【0134】
【表6】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一種の第1のポリマー及び少なくとも一種の第2のポリマーを含むボイド形成剤を分散して有する延伸された連続ポリエステル相を含むボイド含有収縮フィルムであって、当該第1のポリマーが、当該ポリエステルのTgより大きいガラス転移温度(Tg)又は融点温度(Tm)、少なくとも1GPaの引張弾性率、及び当該ポリエステルの表面張力と絶対値で5ダイン/cm以下だけ異なる表面張力を有し、そして第2のポリマーが、当該ポリエステルの表面張力と絶対値で少なくとも5ダイン/cmだけ異なる表面張力、及び当該ポリエステルの溶融粘度に対する第2のポリマーの溶融粘度の比が0.1〜3.5である溶融粘度を有する、ボイド含有収縮フィルム。
【請求項2】
前記ポリエステルが(i)ジ酸残基の全モルに対して、少なくとも80モル%の、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、又はイソフタル酸の一種以上の残基を含むジ酸残基、及び(ii)ジオール残基の全モルに対して、10〜100モル%の、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール、又はジエチレングリコールの一種以上の残基を含むジオール残基、及び0〜90モル%の、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノールA、又はポリアルキレングリコールの一種以上の残基を含む、請求項1に記載のボイド含有収縮フィルム。
【請求項3】
前記ジオール残基が10〜99モル%の1,4−シクロヘキサンジメタノール残基、0〜90モル%のエチレングリコール残基、及び1〜25モル%のジエチレングリコール残基を含む、請求項2に記載のボイド含有収縮フィルム。
【請求項4】
前記ジ酸残基が10〜20モル%の一種以上の、4〜40個の炭素原子を有する変性ジ酸の残基を更に含む、請求項2に記載のボイド含有収縮フィルム。
【請求項5】
前記変性ジ酸が一種以上のコハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ダイマー酸、又はスルホイソフタル酸を含む、請求項4に記載のボイド含有収縮フィルム。
【請求項6】
前記ポリエステルが一種以上の酸化防止剤、溶融強度向上剤、分枝剤、連鎖延長剤、難燃剤、フィラー、色素、着色剤、顔料、ナノクレー、粘着防止剤、流れ向上剤、耐衝撃性改良剤、帯電防止剤、加工助剤、離型剤、又は軟化剤を更に含む、請求項5に記載のボイド含有収縮フィルム。
【請求項7】
前記第1のポリマーが、セルロース系ポリマー、澱粉、エステル化澱粉、ポリケトン、ポリエステル、ポリアミド、ポリスルホン、ポリイミド、ポリカーボネート、オレフィンポリマー、及びこれらのコポリマーからなる群より選ばれる一種以上のポリマーを含み、そして前記第2のポリマーが、ポリアミド、ポリケトン、ポリスルホン、ポリエステル、ポリカーボネート、オレフィンポリマー、及びそれらのコポリマーからなる群より選ばれる一種以上のポリマーを含む、請求項3に記載のボイド含有収縮フィルム。
【請求項8】
前記第1のポリマーが微晶質セルロース、セルロースエステル、又はセルロースエーテルの一種以上を含む、請求項7に記載のボイド含有収縮フィルム。
【請求項9】
前記セルロースエステルが酢酸セルロース、三酢酸セルロース、酢酸プロピオン酸セルロース、又は酢酸酪酸セルロースの一種以上を含み、そして前記セルロースエーテルがヒドロキシプロピルセルロース、メチルエチルセルロース、又はカルボキシメチルセルロースの一種以上を含む、請求項8に記載のボイド含有収縮フィルム。
【請求項10】
前記第2のポリマーがポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、及びそれらのコポリマーからなる群より選ばれる一種以上のポリマーを含む、請求項2に記載のボイド含有収縮フィルム。
【請求項11】
前記第2のポリマーがエチレンビニルアセテート、エチレンビニルアルコールコポリマー、エチレンメチルアクリレートコポリマー、エチレンブチルアクリレートコポリマー、エチレンアクリル酸コポリマー、又はイオノマーの一種以上を含む請求項10に記載のボイド含有収縮フィルム。
【請求項12】
前記ボイド形成剤が当該ボイド形成剤の全重量に対して5〜95重量%の前記第1のポリマーを含む、請求項11に記載のボイド含有収縮フィルム。
【請求項13】
前記第1のポリマーが酢酸セルロース又は酢酸プロピオン酸セルロースの一種以上を含み、そして第2のポリマーがポリスチレン、ポリプロピレン、又はエチレンメチルメタクリレートコポリマーの一種以上を含む、請求項10に記載のボイド含有収縮フィルム。
【請求項14】
前記ジ酸残基が少なくとも95モル%のテレフタル酸の残基を含み、前記ジオール残基が10〜40モル%の1,4−シクロヘキサンジメタノールの残基、1〜25モル%のジエチレングリコールの残基、及び35〜89モル%のエチレングリコールの残基を含み、前記第1のポリマーが酢酸セルロースを含み、そして前記第2のポリマーがポリプロピレン及びエチレンメチルアクリレートコポリマーを含む、請求項13に記載のボイド含有収縮フィルム。
【請求項15】
前記第2のポリマーが前記ポリマーマトリクスのTgよりも大きいTg又はTmを有し、そして前記ボイド形成剤が前記連続ポリエステル相の屈折率と絶対値で少なくとも0.04だけ異なる屈折率、前記ポリエステルと前記第2のポリマーの表面張力の間にある表面張力、及び1.1g/cc以下の密度を有する第3のポリマーを更に含む、請求項2に記載のボイド含有収縮フィルム。
【請求項16】
前記フィルムが1.0g/cc以下の密度を有し、そして少なくとも一層を含む、請求項2に記載のボイド含有収縮フィルム。
【請求項17】
前記フィルムが少なくとも一方向に延伸され、そして70℃の水浴中での10秒後に少なくとも5%の、また95℃の水浴中での10秒後に少なくとも30%の主軸に沿う収縮率を有する、請求項2に記載のボイド含有収縮フィルム。
【請求項18】
(i)ジ酸残基の全モルに対して少なくとも80モル%の、テレフタル酸又はイソフタル酸の一種以上の残基を含むジ酸残基、及び(ii)ジオール残基の全モルに対して15〜55モル%の1,4−シクロヘキサン−ジメタノール又はジエチレングリコールの一種以上の残基を含むジオール残基、及び45〜85モル%のエチレングリコールを含み、少なくとも一種の第1のポリマー及び少なくとも一種の第2のポリマーを含むボイド形成剤を分散して有する、延伸された連続ポリエステル相を含むボイド含有収縮フィルムであって、当該第1のポリマーが、微晶質セルロース、セルロースエステル、又はセルロースエーテルの一種以上を含み、当該ポリエステルのTgより大きいTg又はTm、及び当該ポリエステルの表面張力と絶対値で5ダイン/cm以下だけ異なる表面張力を有し、そして当該第2のポリマーが、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、及びそれらのコポリマーからなる群より選ばれる一種以上のポリマーを含み、当該ポリエステルの表面張力と絶対値で少なくとも5ダイン/cmだけ異なる表面張力、及び当該ポリエステルの溶融粘度に対する第2のポリマーの溶融粘度の比が0.1〜3.5である溶融粘度を有する、ボイド含有収縮フィルム。
【請求項19】
前記第1のポリマーが酢酸セルロース又は酢酸プロピオン酸セルロースの一種以上を含み、そして第2のポリマーがポリスチレン、ポリプロピレン、又はエチレンメチルアクリレートコポリマーの一種以上を含む、請求項18に記載のボイド含有収縮フィルム。
【請求項20】
前記フィルムが少なくとも一方向に延伸され、そして70℃の水浴中での10秒後に少なくとも10%の、また95℃の水浴中での10秒後に少なくとも40%の主軸に沿う収縮率を有する、請求項19に記載のボイド含有収縮フィルム。
【請求項21】
前記フィルムが0.9g/cc以下の密度を有する、請求項19に記載のボイド含有収縮フィルム。
【請求項22】
前記フィルムが一方向に延伸され、70℃〜95℃の水浴中での10秒後に、10%以下の主軸に対する垂直方向の収縮率を有する、請求項20に記載のボイド含有収縮フィルム。
【請求項23】
前記フィルムが200cm-1以上の吸光係数を有する、請求項19に記載のボイド含有収縮フィルム。
【請求項24】
前記フィルムが押出、カレンダー掛け、流延、延伸、幅出し、又は吹込成形によって製造される、請求項19に記載のボイド含有収縮フィルム。
【請求項25】
請求項19に記載のボイド含有収縮フィルムを含む、スリーブ又は巻取供給ラベル。
【請求項26】
前記スリーブ又はラベルが溶剤接合、ホットメルト接着剤、UV硬化性接着剤、高周波シール、熱シール、又は超音波接合によって接合されている、請求項25に記載のスリーブ又はラベル。
【請求項27】
(i)ポリエステルのTg温度又はそれを超える温度でポリエステルとボイド形成剤を混合して、ポリエステル内にボイド形成剤の均一分散を形成すること、ここで、当該ボイド形成剤には、少なくとも一種の第1のポリマー及び少なくとも一種の第2のポリマーが含まれ、その第1のポリマーが、ポリエステルのTgより大きいTg又はTm、少なくとも1GPaの引張弾性率、及びそのポリマーマトリクスの表面張力と絶対値で5ダイン/cm以下だけ異なる表面張力を有し、そして第2のポリマーが、ポリエステルの表面張力と絶対値で少なくとも5ダイン/cmだけ異なる表面張力、及びポリエステルの溶融粘度に対する第2のポリマーの溶融粘度の比が0.1〜3.5である溶融粘度を有すること、(ii)シート又はフィルムを形成すること、そして(iii)工程(ii)のシート又はフィルムを一以上の方向に延伸すること、を含むボイド含有収縮フィルムの製造方法。
【請求項28】
前記シート又はフィルムの形成工程(ii)が押出、カレンダー掛け、流延、又は吹込成形による、請求項27に記載のボイド含有収縮フィルムの製造方法。
【請求項29】
請求項28に記載の製造方法によって製造された、ボイド含有収縮フィルム。
【請求項30】
(i)ボイド含有ポリエステル及び少なくとも一の他のポリマーを含むポリマー混合物を、切断、細断し、又は磨砕して、当該混合物の粒子を製造すること、(ii)当該混合物を、水性又はガス媒体中に分散させること、(iii)当該粒子を、高密度留分と低密度留分とに分配すること、そして(iv)高密度留分から低密度留分を分離すること、ここで、当該ボイド含有ポリエステルには、少なくとも一種の第1のポリマー及び少なくとも一種の第2のポリマーを含むボイド形成剤を分散して有する連続ポリエステル相が含まれ、その第1のポリマーが、ポリエステルのTgより大きいTg又はTm、少なくとも1GPaの引張弾性率、及びそのポリマーマトリクスの表面張力と絶対値で5ダイン/cm以下だけ異なる表面張力を有し、そして第2のポリマーが、ポリエステルの表面張力と絶対値で少なくとも5ダイン/cmだけ異なる表面張力、及びポリエステルの溶融粘度に対する第2のポリマーの溶融粘度の比が0.1〜3.5である溶融粘度を有することを含む、異なるポリマーの混合物からボイド含有ポリエステルを分離する方法。
【請求項31】
前記混合物が、ボイド含有ポリエステルに加えて、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリ(塩化ビニル)、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリ(ブチレンテレフタレート)、ポリスチレン、又はポリエチレンを含む、請求項30に記載のボイド含有ポリエステルを分離する方法。
【請求項32】
前記混合物がポリエチレン又はポリプロピレンを含み、そして前記高密度留分が実質的にボイド含有ポリエステルを含む、請求項31に記載のボイド含有ポリエステルを分離する方法。
【請求項33】
前記混合物がポリ(エチレンテレフタレート)又はポリ(塩化ビニル)を含み、そして前記低密度留分が実質的にボイド含有ポリエステルを含む、請求項31に記載のボイド含有ポリエステルを分離する方法。
【請求項34】
前記ポリ(エチレンテレフタレート)がボトル又は包装材料から得られ、そして前記ボイド含有ポリエステルが収縮フィルムから得られる、請求項31に記載のボイド含有ポリエステルを分離する方法。

【公表番号】特表2007−517924(P2007−517924A)
【公表日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−542611(P2006−542611)
【出願日】平成16年11月17日(2004.11.17)
【国際出願番号】PCT/US2004/038592
【国際公開番号】WO2005/061596
【国際公開日】平成17年7月7日(2005.7.7)
【出願人】(594055158)イーストマン ケミカル カンパニー (391)
【Fターム(参考)】