説明

ボイラおよびボイラ支持方法

【課題】 ボイラ本体の上部に開口ダクトを有してもボイラ本体を吊下げるための補強部材を取付けできるとともに、その補強部材の部品点数を削減し、補強部材の製作および取付けに要する費用を削減できるボイラおよびその支持方法を提供すること。
【解決手段】 ボイラ1は、ボイラ本体2と、ボイラ本体2の上部に取付けられる開口ダクト3と、ボイラ本体2を支持する支持部材9とを備えたボイラであって、開口ダクト3はボイラ本体2の構造部材と同一に構成されており、支持部材9を用いて開口ダクト3の上部を吊ることによってボイラ本体2を支持することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボイラおよびボイラ支持方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のボイラにおいては、火炉および火炉の後部に接続された伝熱部を備えたいわゆる2パス型ボイラが使用されている。この2パス型ボイラは、ボイラの周囲に配置された鉄骨支柱に水平な支持梁に支持されるとともに、鉛直に多数のボイラ伝熱壁管の上端部を接続する水平な管寄せがその支持梁から吊棒によって吊下げられた構造となっている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平7−35306号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
最近では、ボイラの敷地面積の削減を目的として、火炉の後部に接続された伝熱部を有しないいわゆる1パス型ボイラ、すなわちタワー型ボイラが用いられている。このタワー型ボイラは、開口ダクトがボイラ本体の上部に設けられるため、上部が薄肉鋼板によって形成された構造となっている。
ところで、上記タワー型ボイラは、稼動することによってボイラ本体が熱膨張する性質を有することから、ボイラ本体の熱膨張を許容するために、ボイラ本体を吊下げて支持するように設置されることが望まれている。このタワー型ボイラにおいて、ボイラ本体を吊下げて支持した場合、吊下げによるボイラ全体の自重に耐え得る強度を確保するための補強部材をボイラ本体に取付ける必要がある。しかしながら、ボイラ本体の上部に薄肉鋼板によって形成した開口ダクトを設けた構造であるため、ボイラ本体の上部に補強部材を直接取付けることが困難である。
また、ボイラ本体の上部ではなく例えば側面に補強部材を取付けてボイラ本体を吊下げた場合、補強部材が大型化、多量化するとともに、補強部材の製作および取付けに要する費用が莫大になってしまう。
【0004】
本発明は、このような事情を考慮してなされたもので、ボイラ本体の上部に開口ダクトを有してもボイラ本体を吊下げるための補強部材を取付けできるとともに、その補強部材の部品点数を削減し、補強部材の製作および取付けに要する費用を削減できるボイラおよびその支持方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記課題を解決するため、以下の手段を採用する。すなわち本発明に係るボイラは、ボイラ本体と、前記ボイラ本体の上部に取付けられる開口ダクトと、前記ボイラ本体を支持する支持部材とを備えたボイラであって、前記開口ダクトは前記ボイラ本体の構造部材と同一に構成されており、前記支持部材を用いて前記開口ダクトの上部を吊ることによって前記ボイラ本体を支持することを特徴とする。
開口ダクトをボイラ本体の構造部材と同一の構成とすることで、開口ダクトが補強部材として機能するため、ボイラ本体の構造部材と同一の構成部材を用いて開口ダクトを補強できるとともに、ボイラ本体に大型化した補強部材を新たに製作して取付ける必要がなくなる。
【0006】
また、本発明に係るボイラにおいて、前記開口ダクトは、上下方向に延在しかつ並列に配置される複数の炉壁管と、これら複数の炉壁管間を接続するフィンとを備えたことを特徴とする。
炉壁管は円筒状に形成されており、その上下方向の引張荷重に対して高強度を有している。したがって、この炉壁管を並列に複数配置すると、ボイラ本体の自重からなる上下方向の引張荷重に対して強度を増大させることができる。また、フィンがこれら複数の炉壁管間を接続することで、それぞれの炉壁管が水平方向に安定して支持されることとなる。
【0007】
また、本発明に係るボイラ支持方法は、ボイラ本体の上部に取付けられ前記ボイラ本体の構造部材と同一に構成される開口ダクトの上部を吊ることによって前記ボイラ本体を支持することを特徴とする。
開口ダクトをボイラ本体の構造部材と同一に構成してボイラ本体の上部に取付け、開口ダクトの上部を吊りながらボイラ本体を支持することで、開口ダクトが補強部材として機能するため、ボイラ本体の構造部材と同一の構成部材を用いて開口ダクトを補強できるとともに、ボイラ本体に大型化した補強部材を新たに製作して取付ける必要がなくなる。
【0008】
また、本発明に係るボイラ支持方法において、上下方向に延在しかつ並列に配置される複数の炉壁管と、これら複数の炉壁管間を接続するフィンとを備えた前記開口ダクトの上部を吊ることを特徴とする。
炉壁管は円筒状に形成されており、その上下方向の引張荷重に対して高強度を有している。したがって、この炉壁管を並列に複数配置すると、ボイラ本体の自重からなる上下方向の引張荷重に対して強度を増大させることができる。また、フィンがこれら複数の炉壁管間を接続することで、それぞれの炉壁管が水平方向に安定して支持されることとなる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ボイラ本体の構造部材と同一の構成部材を用いて開口ダクトを補強できるとともに、ボイラ本体に大型化した補強部材を新たに製作して取付ける必要がなくなるので、ボイラ本体の上部に開口ダクトを有してもボイラ本体を吊下げるための補強部材を取付けできるとともに、ボイラに設置する補強部材の部品点数を削減し、補強部材の製作および取付けに要する費用を削減することができる。
【0010】
また、本発明によれば、炉壁管の延在方向の引張荷重に対して強度を増大させることができ、また、フィンによって炉壁管が水平方向に安定して支持されることとなるので、ボイラ本体を吊下げて支持するのに十分な補強部材をボイラ本体に取付けることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
図1および図2は、本発明を適用したボイラの概略構成を示す図である。
ボイラ1は、ボイラ本体2と、ボイラ本体2の上部に取付けられた開口ダクト3と、開口ダクト3の上部に設置された支持部材としての吊棒9とを備えている。
ボイラ本体2には、複数の炉壁管4がボイラ本体2の鉛直上下方向に延在するように設けられており、所定の間隔を空けて並列に配置されている。また、これら複数の炉壁管4,4の間には、隣接する炉壁管4,4どうしを所定の間隔に保持するようにフィン5が取付けられている。したがって、これら炉壁管4およびフィン5によってボイラ本体2の炉壁が構成される。
【0012】
開口ダクト3は、中央部3aおよび開口部3bからなり、ボイラ本体2の構造部材、すなわち炉壁管4およびフィン5と同一に構成されている。また、ボイラ本体2と一体化して形成されている。中央部3aは、ボイラ本体2を延長するように鉛直上下方向に延在しかつ中空に形成されている。また、開口部3bは、中央部3aの一側面、すなわち図1および図2に示す側面Aの上部に取付けられ、その側面Aの垂線方向、すなわち水平方向に延在しかつ中空に形成されている。そして、これら中央部3aおよび開口部3bは一体化して形成され、ボイラ本体2内で発生した燃焼
ガスをボイラ本体2から外部に排出できるようになっている。すなわち、ボイラ本体2および開口ダクト3は、炉壁管4およびフィン5によって一体化して形成されている。
【0013】
炉壁管4のうち側面Aに配置された炉壁管4aは、開口ダクト3の開口部3bを形成するために、それらの先端が水平方向に屈曲されている。また、炉壁管4の側面Aの両端に接する側面のうち最も側面A側に配置された炉壁管4bについても同様に、それらの先端が水平方向に屈曲されている。
炉壁管4の頂部、すなわち炉壁管4a,4bを除く炉壁管4cの先端には、補強部材としての梁6が、炉壁管4cの頂部それぞれに接するように水平方向に取付けられている。また、梁6の上部には、梁6を外縁として開口ダクト3の頂板を形成した平板6aが取付けられている。
【0014】
開口ダクト3の開口部3bの先端には、梁6の端部および炉壁管4a,4bの先端に接するように、梁7が開口部3bの外縁を覆うように取付けられている。さらに、梁7の外側、すなわち炉壁管4の側面Aより離間する側には、ダクトカバー8が取付けられている。
また、吊棒9は、図示しないボイラ建屋の頂部からワイヤを介してボイラ本体2を吊下げて支持するために用いられるものであり、梁6の上部に所定の間隔、例えば1m間隔で鉛直上下方向に並列に設置されている。また、吊棒9の先端には、ワイヤの取付けを容易にするための取付金具9aが設けられている。
【0015】
このような構成とされたボイラ1において、開口ダクト3とボイラ本体2とを炉壁管4で一体化して形成し、すなわちボイラ本体2の構造部材と同一の構成とすることで、開口ダクト3が補強部材として機能するため、ボイラ本体2の構造部材と同一の構成部材、すなわち炉壁管4を用いて開口ダクト3を補強できるとともに、ボイラ本体2に大型化した補強部材を新たに製作して取付ける必要がなくなる。したがって、ボイラ本体2の上部に開口ダクト3を有してもボイラ本体2を吊下げるための補強部材を取付けできるとともに、ボイラ1に設置する補強部材の部品点数を削減し、補強部材の製作および取付けに要する費用を削減することができる。
【0016】
炉壁管4は円筒状に形成されており、その上下方向の引張荷重に対して高強度を有している。したがって、炉壁管4を並列に複数配置すると、ボイラ本体2の自重からなる上下方向の引張荷重に対して強度を増大させることができる。また、フィン5がこれら複数の炉壁管4,4間を接続することで、それぞれの炉壁管4が水平方向に安定して支持されることとなる。したがって、ボイラ本体2を吊下げて支持するのに十分な補強部材をボイラ本体2に取付けることができる。
【0017】
なお、上記実施の形態におけるボイラ1において、炉壁管4およびフィン5で構成する開口ダクト3の強度が確保できていれば開口ダクト3を加工してもよく、例えば開口ダクト3の側面を開口して、連絡用管の抜出しおよび点検用マンホールを設けてもよい。
また、上記実施の形態におけるボイラ1において、炉壁管4で開口ダクト3を構成する代わりに、張り出しを水平方向外側に設け、張り出しに吊棒を取付けてボイラ本体2を吊下げて支持する構造としてもよい。しかしながら、上記のように開口ダクト3の側面を開口して連絡用管の抜出しおよび点検用マンホールを設けた場合、吊棒9とそれら開口部とが干渉した構造となるため、吊棒9が煩雑化しないように配置することとなる。
【0018】
また、上記実施の形態におけるボイラ本体2および開口ダクト3は、ボイラ本体2を吊下げ支持したときに構造部材としての強度が確保されていれば、炉壁管4およびフィン5によって一体化して形成されていなくてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係る実施の形態におけるボイラの概略側面図である。
【図2】本発明に係る実施の形態におけるボイラの概略部分斜視図である。
【符号の説明】
【0020】
1 ボイラ
2 ボイラ本体
3 開口ダクト
4 炉壁管
5 フィン
9 吊棒(支持部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボイラ本体と、
前記ボイラ本体の上部に取付けられる開口ダクトと、
前記ボイラ本体を支持する支持部材とを備えたボイラであって、
前記開口ダクトは前記ボイラ本体の構造部材と同一に構成されており、前記支持部材を用いて前記開口ダクトの上部を吊ることによって前記ボイラ本体を支持することを特徴とするボイラ。
【請求項2】
前記開口ダクトは、上下方向に延在しかつ並列に配置される複数の炉壁管と、
これら複数の炉壁管間を接続するフィンとを備えたことを特徴とする請求項1記載のボイラ。
【請求項3】
ボイラ本体の上部に取付けられ前記ボイラ本体の構造部材と同一に構成される開口ダクトの上部を吊ることによって前記ボイラ本体を支持することを特徴とするボイラ支持方法。
【請求項4】
上下方向に延在しかつ並列に配置される複数の炉壁管と、
これら複数の炉壁管間を接続するフィンとを備えた前記開口ダクトの上部を吊ることを特徴とする請求項3記載のボイラ支持方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−64192(P2006−64192A)
【公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−243648(P2004−243648)
【出願日】平成16年8月24日(2004.8.24)
【出願人】(000000099)石川島播磨重工業株式会社 (5,014)