説明

ボイラ処理剤組成物、及び、ボイラシステムの防食方法

【課題】高濃度で、かつ、高温であっても鉄系配管に腐食を生じさせないボイラ処理剤組成物を提供する。
【解決手段】没食子酸及び/またはタンニン酸を有効成分として含有するボイラ処理剤において、エリソルビン酸及びその塩と、アスコルビン酸及びその塩と、の中から選ばれる少なくとも1種が配合されてなるボイラ処理剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボイラ処理剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
没食子酸あるいはタンニン酸はボイラの防食剤として広く使用されている(特開平06−108274号公報(特許文献1)等)。本発明者等も特開2006−150267公報(特許文献2)によって、稼働中のボイラ機器の防食効果及びスケール付着防止効果が得られ、さらに、特にボイラの稼働時のみならず、稼働中はもとより停止中にも鉄スラッジの発生がなく、そのために、ボイラ停止中であっても腐食が生じない没食子酸系ボイラ処理剤を提案している。
【0003】
しかしながら、このような没食子酸あるいはタンニン酸を含むボイラ処理剤は、高濃度で、かつ、例えば60℃以上の高温であると鉄を激しく腐食する。
【0004】
実際のボイラシステムでは、ボイラの給水配管に薬注配管(薬剤注入配管)として分岐を設け、薬注配管からこれらボイラ処理剤を注入するが、この薬注配管および薬注箇所(上記分岐部)付近にボイラの熱が伝熱して高温となると、配管に腐食が生じるという問題が発生することが判った。
【0005】
このような問題に対して、薬注箇所をボイラからの熱が伝わらない場所に設ける、薬注配管及び薬注箇所付近の材質をステンレスなどの耐食性材料とする等の改造の必要が生じ、これが没食子酸やタンニン酸を含むボイラ処理剤の使用の障害となっていた。
【特許文献1】特開平06−108274号公報
【特許文献2】特開2006−150267公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記した従来の問題点を改善する、すなわち、高濃度で、かつ、高温であっても鉄系配管に腐食を生じさせないボイラ処理剤組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のボイラ処理剤組成物は上記課題を解決するため、請求項1に記載の通り、没食子酸及び/またはタンニン酸を有効成分として含有するボイラ処理剤において、エリソルビン酸及びその塩と、アスコルビン酸及びその塩と、の中から選ばれる少なくとも1種が配合されてなることを特徴とするボイラ処理剤組成物である。
【0008】
また、本発明のボイラシステムの防食方法は、請求項2に記載の通り、没食子酸及び/またはタンニン酸を有効成分として含有するボイラ処理剤を用いるボイラシステムにおいて、該ボイラ処理剤にエリソルビン酸及びその塩と、アスコルビン酸及びその塩と、の中から選ばれる少なくとも1種を添加することを特徴とするボイラシステムの防食方法である。
【発明の効果】
【0009】
本発明のボイラ処理剤組成物によれば、高濃度で、かつ、高温であっても鉄系配管に腐食が生じないので、給水配管に合流する薬注配管(薬剤注入配管)及びその合流付近にボイラからの熱が伝わって高温となるようなボイラシスステムであっても、改造なしにそのまま用いることができ、そのとき、没食子酸系やタンニン酸系のボイラ処理剤の効果を、薬注配管(薬剤注入配管)及びその分岐部付近の腐食の恐れなしに、得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明は、没食子酸及び/またはその塩を含む没食子酸系ボイラ処理剤や、タンニン酸及び/またはその塩を含むタンニン酸系ボイラ処理剤の高温、高濃度での腐食性を改良するものであるため、当然のことながら没食子酸系ボイラ処理剤やタンニン酸系ボイラ処理剤に対して、エリソルビン酸及びその塩と、アスコルビン酸及びその塩と、の中から選ばれる少なくとも1種を添加する。
【0011】
本発明は、ボイラの腐食を抑制し、かつ、スケール付着を防止するための没食子酸及び/またはその塩を含む没食子酸系ボイラ処理剤や、タンニン酸及び/またはその塩を含むタンニン酸系ボイラ処理剤に応用することができる。このようなものとしては例えば、特開平06−108274号公報、特開2006−150267公報などにより公知なボイラ処理剤が挙げられる。
【0012】
本発明におけるエリソルビン酸の塩、及び、アルコルビン酸の塩としては、ナトリウム塩やカリウム塩などのアルカリ金属塩が一般的であるが、水に溶解し、没食子酸系やタンニン酸系のボイラ処理剤の高温・高濃度での鉄系金属の腐食性を抑制するものであれば、可能な他の種類の塩であっても良い。
【0013】
本発明における、エリソルビン酸及びその塩と、アスコルビン酸及びその塩と、の中から選ばれる薬剤の添加量としては、没食子酸及び/またはその塩と、タンニン酸及び/またはその塩と、から選ばれる主剤の配合量(以下「主剤配合量」と云う)に対して、重量比で1/10ないし20/10(境界値含む)となるよう配合することが優れた腐食防止性能が得られるので好ましい。すなわち、エリソルビン酸及びその塩と、アスコルビン酸及びその塩と、の中から選ばれる薬剤の添加量が、主剤配合量10(重量)に対して1未満であると充分な腐食低減効果を得ることができず、20超であると、添加の増加に伴う効果の増加が得られず、さらに、ボイラ処理剤として一液化が困難となる場合がある。より好ましい範囲は主剤配合量10(重量)に対して3以上で、さらに好ましい範囲としては5以上である。
【0014】
本発明のボイラ処理剤組成物には、没食子酸及び/またはその塩と、タンニン酸及び/またはその塩と、から選ばれてなる主剤、エリソルビン酸及び/またはその塩、及び、アスコルビン酸及び/またはその塩の他に、これらの機能を高めたり、あるいは、他の機能を付与する成分を、本発明の効果を損なわない限りにおいて配合することができる。このような他の成分としては、例えば、他の防食剤、スケール防止剤、復水処理剤、pH調整剤等、具体的には、ポリアクリル酸又はその塩、ポリメタクリル酸又はその塩、アクリル酸とメタクリル酸とのコポリマ又はその塩、アクリル酸とアクリルアミドメチルプロピルスルホン酸とのコポリマ又はその塩、ポリマレイン酸又はその塩、スチレンスルホン酸とマレイン酸とのコポリマ又はその塩、ホスフィン酸又はその塩、亜硝酸塩、亜鉛塩、錫塩、モリブデン酸又はその塩、ヒドラジン、カルボヒドラジド、ジエチルヒドロキシルアミン、イソプロピルヒドロキシルアミン、メチルエチルケトオキシム、タンニン、リグニン、リグニンスルホン酸、糖類、オキシカルボン酸又はその塩、燐酸又はその塩、アミノトリメチレンホスホン酸又はその塩、ヒドロキシエチリテンジホスホン酸又はその塩、ホスホノブタントリカルボン酸又はその塩、エチレンジアミン四酢酸又はその塩、ニトリロ三酢酸又はその塩、アミノメチルプロパノール、オクタテシルアミン、モルホリン、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩などの一種又は二種以上を挙げることができる。
【実施例】
【0015】
以下に、本発明のボイラ処理剤組成物の実施例について具体的に説明する。
つくば市水軟化水を用い、表1に示す組成(単位:重量%)に調整した従来例1〜4、実施例1〜10、及び、比較例1〜3の計17種類のボイラ処理剤組成物をふた付きの1Lのポリ容器にそれぞれ1Lずつ入れ、70℃に保つと共に、その中に表面積0.272dmの研磨鋼板(SPCC−SB)を浸漬して60rpmで攪拌しながら1週間の腐食試験を行った。一週間後に鋼板の腐食減量を測定して腐食度(mg/dm/日(mdd))を算出した。その結果を表1に併せて示す。
【0016】
【表1】

【0017】
表1より、本発明に係るボイラ処理剤組成物によれば、没食子酸系ボイラ処理剤組成物による高濃度、高温での鉄系材料の腐食を軽減し、特にその効果は没食子酸10(重量)に対してエリソルビン酸及びその塩と、アスコルビン酸及びその塩と、の中から選ばれる少なくとも1種を3以上配合したときに大きくなることが理解される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
没食子酸及び/またはタンニン酸を有効成分として含有するボイラ処理剤において、エリソルビン酸及びその塩と、アスコルビン酸及びその塩と、の中から選ばれる少なくとも1種が配合されてなることを特徴とするボイラ処理剤組成物。
【請求項2】
没食子酸及び/またはタンニン酸を有効成分として含有するボイラ処理剤を用いるボイラシステムにおいて、該ボイラ処理剤にエリソルビン酸及びその塩と、アスコルビン酸及びその塩と、の中から選ばれる少なくとも1種を添加することを特徴とするボイラシステムの防食方法。

【公開番号】特開2008−248357(P2008−248357A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−93835(P2007−93835)
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【出願人】(000101042)アクアス株式会社 (66)
【Fターム(参考)】