説明

ボイラ装置

【課題】安価にてガス封入することができ、保存コストの低いボイラ装置を提供する。
【解決手段】窒素置換式脱酸素装置10内に給水及び窒素ガスを供給し、これらを効率よく接触させて水中の溶存酸素を除去する。酸素が除去された給水は、ボイラユニット20a,20b,20c内に流入し蒸気となり、蒸気流出配管24から流出する。窒素置換脱酸素装置10から流出した不活性ガスは、チャンバ30内に貯留される。ボイラユニット20aの燃焼を停止する場合、ボイラユニット20aの加熱を停止し、開閉弁3aを閉弁する。ボイラユニット20a内の圧力が所定圧力以下となると、電磁弁28aが開弁し、チャンバ30内から不活性ガス導入配管26aを通って不活性ガスがボイラユニット20a内に供給される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボイラ装置に係り、特にボイラの燃焼停止時にボイラ缶内に不活性ガスを封入する手段を備えたボイラ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ボイラの運転を停止して保存する際に、ボイラの腐食防止を目的としてボイラ缶内に窒素を充填することが行われている。
【0003】
例えば、『ボイラーの水質管理<知識と応用>(社団法人日本ボイラ協会、初版第313頁〜第321頁)』には、保存期間が9週間以上の長期保存の際に、窒素封入による保存等の乾燥保存が行われることが記載されている。
【0004】
また、特開平10−185104号公報には、窒素発生装置や窒素ガスボンベ等の窒素供給源が、弁を介してボイラの蒸気ドラムに接続されており、ボイラの運転停止に際し、該蒸気ドラム内が所定圧力以下となったときに該弁が開弁し、該蒸気ドラム内に窒素ガスが供給されることが記載されている。
【非特許文献1】ボイラーの水質管理<知識と応用>(社団法人日本ボイラ協会、初版第313頁〜第321頁)
【特許文献1】特開平10−185104号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特開平10−185104号公報のように、ボイラ缶の封入ガスとして窒素ガスを用いる場合、封入ガスのコストが高いことから、ボイラ装置の保存コストが高くなる。
【0006】
本発明は、上記問題点を解決し、安価にてガス封入することができ、保存コストの低いボイラ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明(請求項1)のボイラ装置は、ボイラの燃焼停止時にボイラ缶内が所定圧力以下となったときに不活性ガスを含む気体を該ボイラ缶内に封入する不活性ガス封入手段を備えたボイラ装置であって、ボイラ給水を窒素ガスと接触させて該ボイラ給水中の溶存酸素を除去する密閉式の窒素式脱酸素装置を備え、該窒素式脱酸素装置から排出される気体を前記不活性ガス封入手段によってボイラ缶内に封入するようにしたことを特徴とするものである。
【0008】
請求項2のボイラ装置は、請求項1において、前記ガス封入手段は、前記ボイラ缶内が所定圧力以下となったときに開弁してガスを該ボイラ缶内に流入させるガス流入制御弁を備えたことを特徴とするものである。
【0009】
請求項3のボイラ装置は、請求項1又は2において、前記ボイラ装置は複数のボイラを備えており、各々のボイラは運転制御を独立に行うことが可能となっており、各々のボイラに、前記不活性ガス封入手段を備えたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明(請求項1)のボイラ装置は、ボイラ給水を窒素ガスと接触させて該ボイラ給水中の溶存酸素を除去する密閉式の窒素式脱酸素装置を備え、該窒素式脱酸素装置から排出される気体を不活性ガス封入手段によってボイラ缶内に封入するようにしたことから、ボイラ缶の封入ガスとして別途窒素ガスを用いる必要がなくなり、封入ガスのコストが低くなり、これによりボイラ缶の保存コストが低くなる。
【0011】
前記ガス封入手段は、前記ボイラ缶内が所定圧力以下となったときに開弁してガスを該ボイラ缶内に流入させるガス流入制御弁を備えることが好ましく(請求項2)、この場合、ボイラの停止時にボイラ装置内が大気圧以下となってボイラ缶やボイラ装置に付属する計装装置が損傷することが確実に防止される。
【0012】
複数のボイラを備えたボイラ装置にあっては、一部のボイラが燃焼停止状態となる場合が多いが、各々のボイラに前記不活性ガス封入手段を備えた場合(請求項3)、燃焼が停止された各々のボイラを確実かつ安価に保存することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。図1は本発明の実施の形態に係るボイラ装置の概略図である。
【0014】
本発明に係るボイラ装置は、主に窒素置換式脱酸素装置10と、ボイラ20と、チャンバ30と、配管類とからなる。
【0015】
窒素置換式脱酸素装置10は、給水に窒素ガスを効率よく接触させて、水中の飽和酸素濃度を低下させ、溶存酸素を除去する周知の装置であり、塔上部から充填材に給水を噴霧落下させ、下部から窒素ガスを供給して接触させるものであってもよく、水中に窒素ガスをバブリングするものであってもよい。この窒素置換式脱酸素装置10には、給水を供給するための給水流入配管1と、窒素ガスを供給するための窒素ガス流入配管3が接続されている。また、窒素置換式脱酸素装置10内で窒素置換された給水を抜き出すための給水流出配管2と、窒素置換式脱酸素装置10内のガスを排気する排気配管4が接続されている。この給水流出配管2は、下流側が分岐して配管2a,2b,2cとなっており、各々ボイラユニット20a,20b,20cの下部に接続されている。配管2a,2b,2cの各々には、開閉弁3a,3b,3cが設けられている。
【0016】
ボイラ20は、3個のボイラユニット20a,20b,20cより構成されている。
【0017】
各ボイラユニット20a,20b,20c内には、その上部側に配置されたボイラ缶22a,22b,22cと、上端側が該ボイラ缶の下部に接続され、下端側が各ボイラユニット20a,20b,20cの下部まで延在した複数のチューブ23a,23b,23cとが設けられている。各チューブ23a,23b,23cの下端側は、合流して前記配管2a,2b,2cと接続されている。
【0018】
ボイラ缶22a,22b,22cの各々には、蒸気流出配管24a,24b,24cと、不活性ガス導入配管26a,26b,26cとが接続されている。
【0019】
蒸気流出配管24a,24b,24cには、開閉弁25a,25b,25c及び逆止弁29a,29b,29cが設けられており、その下流側で合流して1本の蒸気流出配管24となっている。逆止弁29a,29b,29cは、ボイラ缶22a,22b,22cから蒸気流出配管24a,24b,24cへの流出を許容するように設けられている。
【0020】
不活性ガス導入配管26a,26b,26cには、各々逆止弁27a,27b,27c及び電磁弁28a,28b,28cが設けられている。これら不活性ガス導入配管26a,26b,26cの他端側は、チャンバ30と接続されている。逆止弁27a,27b,27cは、チャンバ30からボイラ缶22a,22b,22cへの流入を許容するように設けられている。
【0021】
各ボイラ缶22a,22b,22cの上部には、ボイラ缶の圧力を計測する圧力計P,P,Pが設けられている。各圧力計P,P,Pから前記電磁弁28a,28b,28cへ電気信号が送信され、圧力計P,P,Pが所定圧力以下であると、対応する電磁弁28a,28b,28cが閉弁するように構成されている。これら不活性ガス導入配管26a,26b,26cと、電磁弁28a,28b,28cと、圧力計P,P,Pとにより不活性ガス封入手段が構成されている。
【0022】
チャンバ30には、前記排気配管4及び前記不活性ガス導入配管26a,26b,26cが接続されると共に、ベント管31が接続されている。ベント管31には電磁弁31aが設けられている。チャンバ30には圧力計Pが設けられている。圧力計Pから電磁弁31aへ電気信号が送信され、圧力計Pが設定圧力以上であると、電磁弁31aが開弁するように構成されている。なお、この設定圧力は、前記電磁弁28a,28b,28cが開弁する所定圧力よりも高く設定されており、電磁弁28a,28b,28cの開弁時にチャンバ30内の不活性ガスがボイラユニット20a,20b,20c内に流入可能となっている。
【0023】
次に、このように構成されたボイラ装置において、ボイラユニット20a,20b,20cの総てを運転する場合と、その後ボイラユニット20aの燃焼を停止し、ボイラユニット20b,20cのみを運転する場合とを説明する。
【0024】
[ボイラユニット20a,20b,20cの総てを運転する場合]
開閉弁3a,3b,3c及び開閉弁25a,25b,25cの総てを開弁し、給水流入配管1から窒素置換式脱酸素装置10に給水すると共に窒素ガス流入配管3から窒素置換式脱酸素装置10に窒素ガスを導入する。
【0025】
この窒素置換式脱酸素装置10内で給水と窒素ガスとが接触し、給水中の溶存酸素が窒素と置換されて除去される。
【0026】
給水から除去された酸素は窒素ガスと共に排気配管4から排気され、チャンバ30内に送られる。
【0027】
溶存酸素が除去された給水は、給水流出配管2から流出し、配管2a,2b,2cを通って各ボイラユニット20a,20b,20cに送水される。各ボイラユニット20a,20b,20c内に送水された給水は、各チューブ23a,23b,23c内で加熱された後、各ボイラ缶22a,22b,22c内に流入し、気液分離される。気液分離された蒸気は、蒸気流出配管24a,24b,24c及び蒸気流出配管24を通ってボイラ装置の外部に供給される。
【0028】
なお、総てのボイラユニット20a,20b,20cは燃焼運転状態にあり、ユニット20a,20b,20c内は高圧となっていることから、電磁弁28a,28b,28cは閉弁したままとなっている。
【0029】
窒素置換式脱酸素装置10からチャンバ30内に送給された、窒素ガスに若干の酸素が混入した不活性ガスは、チャンバ30内に貯蓄される。該不活性ガスが十分に貯蓄されてチャンバ30内が設定圧力以上になると、電磁弁31aが開弁し、余剰の不活性ガスがベント管31から排気される。これにより、チャンバ30内は設定圧力に保持される。
【0030】
[ボイラユニット20aのみを燃焼停止する場合]
上記の通りボイラユニット20a,20b,20cを運転している状態において、ボイラユニット20aの燃焼を停止する場合、ボイラユニット20aの加熱を停止し、開閉弁3aを閉弁する。蒸気流出配管24内の圧力とボイラユニット20a内の圧力とが等しくなると逆止弁29aが閉となり、ボイラユニット20aへの蒸気の逆流を防止する。
【0031】
これにより、ボイラユニット20a内の温度が徐々に低下し、それに伴い圧力も低下する。ボイラユニット20a内の圧力が所定圧力以下となると、電磁弁28aが開弁し、チャンバ30内の不活性ガスが不活性ガス導入配管26aを通り、ボイラユニット20a内に供給される。これにより、ボイラユニット20a内に不活性ガスが封入され、ボイラユニット20aが保存される。
【0032】
なお、一般に、窒素置換式脱酸素装置10から排気される不活性ガス中の酸素は約0.1〜2.0%程度と極めて低濃度であることから、この不活性ガスはボイラの保存用の封入ガスとして問題なく用いることができる。
【0033】
本実施の形態のボイラ装置は、窒素置換式脱酸素装置10を備え、該窒素置換式脱酸素装置10から排気される気体をボイラ缶22a,22b,22c内に封入するようにしたことから、ボイラ缶22a,22b,22cの封入ガスとして別途窒素ガスを用いる必要がなくなり、封入ガスのコストが低くなり、これによりボイラ缶22a,22b,22cの保存コストが低くなる。
【0034】
ボイラ缶22a,22b,22c内が所定圧力以下となったときに開弁してガスを該ボイラ缶内に流入させる電磁弁28a,28b,28cを備えたため、ボイラユニット20a,20b,20cのいずれかの燃焼を停止した場合にあっても、停止したボイラ内が大気圧以下となってボイラ缶、チューブ、ボイラに付属する圧力計等の計装装置が損傷することが確実に防止される。
【0035】
本実施の形態のボイラ装置は、各々のボイラユニット20a,20b,20cに、電磁弁28a,28b,28c、不活性ガス導入配管26a,26b,26c、圧力計P、P、Pよりなる不活性ガス封入手段を備えていることから、各々のボイラユニットを個別に保存することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の実施の形態に係るボイラ装置の概略図である。
【符号の説明】
【0037】
1 給水流入配管
2 給水流出配管
3 窒素ガス流入配管
4 排気配管
20 ボイラ
20a,20b,20c ボイラユニット
22a,22b,22c ボイラ缶
23a,23b,23c チューブ
24,24a,24b,24c 蒸気流出配管
26a,26b,26c 不活性ガス導入配管
28a,28b,28c 電磁弁
30 チャンバ
31 ベント管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボイラの燃焼停止時にボイラ缶内が所定圧力以下となったときに不活性ガスを含む気体を該ボイラ缶内に封入する不活性ガス封入手段を備えたボイラ装置であって、
ボイラ給水を窒素ガスと接触させて該ボイラ給水中の溶存酸素を除去する密閉式の窒素式脱酸素装置を備え、
該窒素式脱酸素装置から排出される気体を前記不活性ガス封入手段によってボイラ缶内に封入するようにしたことを特徴とするボイラ装置。
【請求項2】
請求項1において、前記ガス封入手段は、前記ボイラ缶内が所定圧力以下となったときに開弁してガスを該ボイラ缶内に流入させるガス流入制御弁を備えたことを特徴とするボイラ装置。
【請求項3】
請求項1又は2において、前記ボイラ装置は複数のボイラを備えており、各々のボイラは運転制御を独立に行うことが可能となっており、
各々のボイラに、前記不活性ガス封入手段を備えたことを特徴とするボイラ装置。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2006−112735(P2006−112735A)
【公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−301710(P2004−301710)
【出願日】平成16年10月15日(2004.10.15)
【出願人】(000001063)栗田工業株式会社 (1,536)