説明

ボイラ

【課題】 蒸気の乾き度の維持と水管過熱の防止とを両立可能なボイラ(角型水管群を備えたボイラ)を提供することを課題とする。
【解決手段】 本発明は、上部管寄せと、下部管寄せと、前記上部管寄せと前記下部管寄せとの間に略垂直な水管群21,22,23を縦列配置して構成された角型水管群と、前記角型水管群の側面に設けられたバーナ10とを備えたボイラ1であって、前記角型水管群を構成する水管の中で、前記バーナ10にて部分的な加熱が行われる水管の少なくとも一部について、他の水管よりも小さな流路面積を有する特別流路水管21Aが用いられていることを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボイラに関し、詳しくは、上部管寄せと下部管寄せとの間に略垂直な水管群を縦列配置して構成された角型水管群を備えたボイラに関するものである。
【背景技術】
【0002】
蒸気ボイラにおいて、製造される蒸気の乾き度は非常に重要であり、従来から、高品質の蒸気(高い乾き度を有する蒸気)を得るために、種々の工夫がなされている。この高品質の蒸気を得るための技術の一つとして、セパレータ(気液分離器)が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
蒸気ボイラに取り付けられるセパレータは、飽和水と飽和蒸気とを分離し、製造される蒸気の乾き度を高めるための機器である。このセパレータとしては、一般に、蒸気の流れに旋回流を与えて気液を分離する遠心式のものと、障害物に蒸気の流れを衝突させて気相分を取り出す衝突式のものとが知られている。また、遠心式のセパレータとしては、羽根によって蒸気の流れに旋回流を与える軸流式のものと、蒸気の流れを接線方向から流入させることによってサイクロンの作用を利用するサイクロン式のものとが知られている。
【0004】
一方、近年においては、省スペース化等の観点から、角型缶体(ここで、「角型缶体」とは、例えば、平行な複数の水管列(角型水管群)から成る缶体を角型のハウジングないしケーシング内に収容して構成されたものであり、これに送風機、給水ポンプ、バーナ等の機器を組み付けて、全体が極めて薄型構造にとなるように工夫された缶体をいう。)の利用が盛んである。
【0005】
この角型缶体を用いて構成された蒸気ボイラは、法規上の制約から管寄せ高さをあまり大きくとることができないため(一般に、管寄せ高さが低く構成されることとなるため)、上部管寄せに連通して設けられた蒸気出口管に対して、飽和水が流入しやすくなる。
【0006】
蒸気出口管に対して飽和水が流入すると、製造される蒸気の乾き度が低下するため、角型缶体を用いて構成された蒸気ボイラには、通常、先に説明したセパレータのいずれかが取り付けられている。
【0007】
ところが、セパレータを取り付けても、蒸気出口管に対する飽和水の流入が多い場合には、通水管の通水圧損流動が増加してセパレータ水位が上がるため、効果的に乾き度を高めることができないこともある。
【0008】
このような場合、蒸気の乾き度を高めるための一つの手段として、角型缶体の缶内水位を低く抑える方法がある。缶内水位を低く抑えれば、蒸気出口管に対する飽和水の流入が低減するため、得られる蒸気の乾き度を高めることができる。
【0009】
しかしながら、缶内水位を低く抑えた場合、缶体を構成する水管への悪影響(水管過熱等)が発生するおそれがある。すなわち、缶内水位を低く抑えることは、高い乾き度を有する蒸気を得るために有効な手段ではあるが、一方では、水管過熱等のリスクを負うことにもなる。特に、角型水管群を構成する各水管の中で、バーナからの加熱を受けにくい水管壁(を構成する水管)においては、水管内における蒸発量が小さく気泡の発生が少ないため、水管が過熱状態になりやすい。
【0010】
すなわち、従来技術においては、蒸気の乾き度の維持と水管過熱の問題とを両立することが困難である。
【0011】
【特許文献1】特開2005−349318号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
そこで、本発明は、上記従来技術の問題を解決するためになされたものであって、蒸気の乾き度の維持と水管過熱の防止とを両立可能なボイラ(角型水管群を備えたボイラ)を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、上部管寄せと、下部管寄せと、前記上部管寄せと前記下部管寄せとの間に略垂直な水管群を縦列配置して構成された角型水管群と、前記角型水管群の側面に設けられたバーナとを備えたボイラであって、前記角型水管群を構成する水管の中で、前記バーナにて部分的な加熱が行われる水管の少なくとも一部について、他の水管よりも小さな流路面積を有する特別流路水管が用いられていることを特徴としている。
【0014】
また、本発明にかかるボイラにおいては、前記バーナにて部分的な加熱が行われる水管が、前記バーナから噴出される燃焼ガスの流れ方向と略平行に位置する水管壁を構成する水管であることが好ましい。
【0015】
さらに、本発明にかかるボイラにおいては、前記特別流路水管が、前記他の水管と同様の水管中に水管内流路調整手段を設けて構成さていることが好ましい。
【0016】
また、本発明にかかるボイラにおいては、前記特別流路水管が、前記他の水管と同様の水管を変形させて構成されていることが好ましい。
【0017】
さらに、本発明にかかるボイラにおいては、前記特別流路水管が、前記他の水管よりも小さな直径を有する水管にて構成されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、蒸気の乾き度の維持と水管過熱の防止とを両立可能なボイラ(角型水管群を備えたボイラ)を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明の実施形態を説明する前に、本明細書において使用する用語について説明する。
【0020】
本明細書において、単に「ガス」と称する場合、ガスとは、燃焼反応中のガスおよび燃焼反応が完了したガスの少なくとも一方を含む概念であり、「燃焼ガス」と称することもできる。つまり、ガス(燃焼ガス)とは、燃焼反応中のガスおよび燃焼反応が完了したガスの両方を有する場合、燃焼反応中のガスのみを有する場合、あるいは燃焼反応が完了したガスのみを有する場合の、いずれをも含む概念である。以下、特に説明しない場合は同様の概念である。
【0021】
また、ガス温度は、特に説明しない限り、燃焼反応中のガスの温度を意味し、燃焼温度あるいは燃焼火炎温度と同義である。さらに、ガス温度の抑制とは、ガス(燃焼火炎)温度の最高値を低く抑えることを意味する。なお、通常、燃焼反応は、上述した「燃焼反応が完了したガス」中においても極微量であるが継続しているので、「燃焼反応の完了」とは、燃焼反応の100%完結を意味するものではない。
【0022】
以下、本発明の実施形態について説明する。
【0023】
まず、本実施形態の第一態様にかかるボイラは、上部管寄せと、下部管寄せと、前記上部管寄せと前記下部管寄せとの間に略垂直な水管群を縦列配置して構成された角型水管群と、前記角型水管群の側面に設けられたバーナとを備えたボイラであって、前記角型水管群を構成する水管の中で、前記バーナにて部分的な加熱が行われる水管の少なくとも一部について、他の水管よりも小さな流路面積を有する特別流路水管が用いられている。
【0024】
このような構成によれば、蒸気の乾き度の維持と水管過熱の防止とを両立可能なボイラ(角型水管群を備えたボイラ)を得ることができる。前記角型水管群を構成する水管の中で、前記バーナにて部分的な加熱が行われる水管は、水管内における蒸発量が小さく気泡の発生が少ないため、水管が過熱状態になりやすい。しかしながら、上述した本実施形態の第一態様にかかるボイラによれば、前記バーナにて部分的な加熱が行われる水管の少なくとも一部について、他の水管よりも小さな流路面積を有する特別流路水管が用いられている。すなわち、この第一態様によれば、過熱状態になりやすい箇所に特別流路水管(他の水管よりも小さな流路面積を有する)が用いられているため、前記バーナにて部分的な加熱が行われても、前記特別流路水管内における気泡発生率が高まり、前記特別流路水管内部の上方位置まで「濡れ」状態となる。つまり、このような構成によれば、従来であれば最も過熱のおそれがあった箇所に、過熱状態になりにくい特別流路水管(他の水管よりも小さな流路面積を有する)を配設したため、角型水管群全体における「水位」を比較的低く設定することができる。したがって、本実施形態にかかるボイラによれば、蒸気の乾き度の維持と水管過熱の防止とを両立することができる。
【0025】
また、本実施形態の第二態様にかかるボイラは、第一態様にて、前記バーナにて部分的な加熱が行われる水管が、前記バーナから噴出される燃焼ガスの流れ方向と略平行に位置する水管壁を構成する水管である。
【0026】
角型水管群を有するボイラにおいては、前記バーナから噴出される燃焼ガスの流れ方向と略平行に位置する水管壁を構成する水管が、前記バーナによる加熱を受けにくい。これは、水管壁を構成する水管の片面が断熱材等で覆われているからである。つまり、この第二態様に示すように、水管壁を構成する水管の少なくとも一部について、前記特別流路水管を用いれば、前記バーナにて部分的な加熱が行われても、前記特別流路水管内における気泡発生率が高まり、水管壁を構成する前記特別流路水管内部の上方位置まで「濡れ」状態となる。したがって、第二態様にかかるボイラによれば、蒸気の乾き度の維持と水管過熱の防止とを両立することができる。
【0027】
さらに、本実施形態の第三態様にかかるボイラは、第一態様または第二態様の構成にて、前記特別流路水管が、前記他の水管と同様の水管中に水管内流路調整手段を設けて構成さている。
【0028】
このような構成によれば、前記他の水管と同様の水管を用いて、比較的容易に前記特別流路水管を構成可能である。前記水管内流路調整手段としては、例えば、前記他の水管中に挿入可能な棒状部材等があげられる。棒状部材の断面形状は、特に何等かの形状に限定されず、半円形、楕円形、円形、矩形等があげられる。また、前記水管内流路調整手段は、棒状部材に限定されず、水管内の流路面積を調整可能であれば(縮小させることが可能であれば)、両端を閉塞状態とした円筒等の筒状部材等、どのような構成であってもよい。このような構成を有する前記特別流路水管を用いれば、上述した種々の効果(蒸気の乾き度の維持と水管過熱の防止)を実現可能なボイラを得ることができる。
【0029】
また、本実施形態の第四態様にかかるボイラは、第一態様または第二態様の構成にて、前記特別流路水管が、前記他の水管と同様の水管を変形させて構成されている。
【0030】
このような構成によれば、前記他の水管と同様の水管を用いて、比較的容易に前記特別流路水管を構成可能である。具体的には、例えば、水管を押し潰す等して、前記特別流路水管を構成すればよい。このような構成を有する前記特別流路水管を用いれば、上述した種々の効果(蒸気の乾き度の維持と水管過熱の防止)を実現可能なボイラを得ることができる。
【0031】
さらに、本実施形態の第五態様にかかるボイラは、第一態様または第二態様の構成にて、前記特別流路水管が、前記他の水管よりも小さな直径を有する水管にて構成されている。
【0032】
このような構成によれば、容易に前記特別流路水管を構成可能である。そして、このような構成を有する前記特別流路水管を用いることにより、上述した種々の効果(蒸気の乾き度の維持と水管過熱の防止)を実現可能なボイラを得ることができる。
【0033】
次に、本発明の実施例を示すが、本発明はもとより上記実施形態および下記実施例によって制限を受けるものではなく、前後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に含まれる。
【0034】
以下、本発明にかかるボイラの実施例について、図面を用いて説明する。
【0035】
図1は、本発明の一実施例を適用した蒸気ボイラの縦断面の説明図である。また、図2は、図1のII−II線に沿う横断面の説明図である。さらに、図3は、図1に示されたボイラを構成する特別流路水管を説明するための概略図であって、図3(a)は特別流路水管の縦断面の説明図、図3(b)は図3(a)のIII−III線に沿う横断面の説明図である。
【0036】
これらの図1から図3に示すように、本実施例にかかるボイラ1は、平面状の予混合ガス噴出面(平板状で、予混合ガス噴出孔が略同一平面状に形成された燃焼面)を有する完全予混合式のバーナ10(本発明の「バーナ」に相当)、多数の熱吸収用の水管(伝熱管)21,22,23を用いて構成された水管群(本発明の「角型水管群」に相当)を有する缶体20、バーナ10に対して燃焼用空気を送るために設けられた送風機30、缶体20内の排ガスをボイラ1外部に排出するために設けられた煙突部40、および缶体20を構成する各水管21,22,23内にて生成された蒸気を取り出すために設けられた蒸気取出部80等を用いて構成されている。
【0037】
本実施例にかかるボイラ1を構成するバーナ10は、予混合ガス噴出孔が略同一平面状に形成された予混合ガス噴出面を有する予混合ガスバーナであって、波板と平板とを交互に積層して構成されている。このような構成に基づき、バーナ10の予混合ガス噴出面(燃焼面)10aには、多数の予混合ガス噴出孔が形成されることとなる。そして、このバーナ10は、後述する缶体20を構成する水管(水管群)に近接して設けられている。なお、詳細な構造等はここでは省略するが、本実施例にかかるバーナ10は、例えば、特許第3221582号公報に記載された「燃焼バーナ」と同様な構成を有している。
【0038】
また、本実施例にかかるボイラ1を構成する缶体20は、上部管寄せ24、下部管寄せ25、およびこれらの上下部管寄せ24,25間に立脚して配設された複数の水管(外側水管21,内側水管22,中央水管23)から成る角型水管群等を用いて構成されている。この缶体20内においては、外側水管21、内側水管22、および中央水管23が、ガス流動方向(缶体20の長手方向)に配置されており、中央水管群(中央水管23を用いて構成された水管群)を中心として、二列ずつの内側水管群(内側水管22を用いて構成された水管群)および外側水管群(外側水管群21を用いて構成された水管群)が構成されている。また、隣り合う水管同士は、千鳥状に配設されている。さらに、図2に示すように、本実施例にかかる缶体20においては、長手方向の両側部に設けられた外側水管21(後述する「特別流路水管21A」も含む。)と、各外側水管21間を連結した連結部26とを用いて、一対の水管壁27が構成されている。缶体20は、この一対の水管壁27と、上下部管寄せ24,25とを用いて、略矩形のガス流動空間29が形成されることとなり、このガス流動空間29内に、所定間隔を隔てて、内側水管22および中央水管23が配設されている。
【0039】
また、本実施例にかかるボイラ1を構成する送風機30は、バーナ10に対して燃焼用空気を送るために設けられたものであって、この送風機30とバーナ10とは、空気供給経路部31を用いて接続されている。この空気供給経路部31中には、ガス燃料供給管32が設けられており、ガス燃料供給管32には、高燃焼時と低燃焼時とで燃料流量を調整する燃料調整弁33が設けられている。なお、この空気供給経路部31には、必要に応じて、燃料と空気との混合性を向上させるために絞り部を設けることも可能である。
【0040】
また、本実施例にかかるボイラ1を構成する煙突部40は、その入口がバーナ10と対向すべく、缶体20の最下流側に設けられている。したがって、本実施例にかかるボイラ1においては、バーナ10にて生成されたガスは、缶体20を構成する水管21,22,23と直線的に接触した後(接触して熱交換を行った後)、排ガスとして煙突部40を介してボイラ1外部に排出される。
【0041】
また、本実施例にかかるボイラ1においては、上部管寄せ24の上方位置に蒸気取出部80が設けられており、上部管寄せ24と蒸気取出部80とは、蒸気出口管(第一蒸気出口管81,第二蒸気出口管82)にて連通状態に構成されている。なお、上部管寄せ24内における角型水管群の上方位置には、必要に応じて、バッフル板(図示省略)を設けてもよい。
【0042】
ここで、「バッフル板」とは、水管21,22,23と蒸気出口管81,82との間に設けた板状部材であって、水管21,22,23から噴出される蒸気は、このバッフル板に衝突した後に、蒸気出口管81,82に流入する。すなわち、バッフル板を設けることによって、水管21,22,23から噴出された蒸気が、直接的に蒸気出口管81,82に流入することはない。このような構成によれば、水管21,22,23から噴出された蒸気(混合流体)は、蒸気出口管81,82に流入する前にバッフル板に衝突し、この衝突時に混合流体を構成する液相分が取り除かれることとなるため、乾き度の高い蒸気が、バッフル板を介して、蒸気出口管81,82から取り出されることとなる。この際、バッフル板にて分離された液相分は水管21,22,23側に戻るため、この構成によれば、水管過熱等のリスクも低減させることができる。
【0043】
ところで、本実施例にかかるボイラ1においては、図2に示すように、水管壁27を構成する外側水管21中の前段4本として、特別流路水管21Aを用いている。この特別流路水管21Aは、図3に示すように、外側水管21と同様の水管(外側水管21)を用いて構成されており、この外側水管21中に水管内流路調整手段21bを有している。
【0044】
特別流路水管21Aを構成している水管内流路調整手段21bは、図3に示すように、断面半月状の棒状部材を用いて構成されている。このような水管内流路調整手段21bを設けることにより、特別流路水管21Aの流路(縮小流路21c)は、通常の外側水管21(および他の水管22,23)よりも小さくなる。つまり、特別流路水管21Aは、他の水管21,22,23よりも小さな流路面積を有することとなる。
【0045】
本実施例にかかるボイラ1は、以上のように構成されており、この構成に基づき、そのボイラ1内部では、次のような燃焼状態が形成される。
【0046】
まず、ガス燃料供給管32から供給されたガス燃料と、送風機30から供給された空気とが、空気供給経路部31中で混合され、ここで混合された予混合ガスがバーナ10に供給される。
【0047】
バーナ10の予混合ガス噴出面10aから噴出された予混合ガスは、着火手段(図示省略)により着火され、バーナ10にて火炎を伴う燃焼反応中のガスFが形成される。予混合ガスは、バーナ10から、缶体20内の水管21,22,23に対して、略垂直となるように(直交するように)噴出されているため、燃焼反応中のガスFは、缶体20内の水管21,22,23と交差するように接触を繰り返して(水管と熱交換を行った後)、排ガスとなる。そして、この排ガスは、缶体20の最下流側に設けられた煙突部40を介して、ボイラ1外部に排出される。
【0048】
本実施例にかかるボイラ1においては、水管壁27を構成する外側水管21の一部は連結部26および断熱材にて覆われているため、バーナ10のガスFにて直接的に加熱されることはない。つまり、水管壁27を構成する外側水管21は、バーナ10にて部分的な加熱が行われる水管となる。
【0049】
また、本実施例においては、中央水管群と外側水管群との間に設けられた第一領域61(図2参照)が、燃焼反応促進領域として機能する。つまり、所定の空間である第一領域61を設けることによって、その空間で燃焼を促進させ、積極的にガス中のCOを酸化させることができる。さらに、本実施例においては、缶体20の最下流側の第二領域71も、燃焼反応促進領域として機能し得る。なお、ここでは特に示していないが、例えば、この第一領域61および第二領域71の少なくとも一方には、より燃焼反応を促進するために、CO酸化触媒物質を設けてもよい。
【0050】
各水管21,22,23中の水は、バーナ10から噴出されたガスとの熱交換によって加熱されて蒸気化される。この蒸気は、上部管寄せ24、蒸気出口管81,82、および蒸気取出部80を介して、蒸気使用設備(図示省略)に供給される。なお、必要に応じて、蒸気取出部80の内部、あるいは蒸気取出部80の下流側にセパレータを設けてもよい。
【0051】
本実施例にかかるボイラ1は、その内部において以上のような燃焼状態が形成され、各水管21,21A,22,23にて構成される水管群(角型水管群)中の水は加熱されて蒸気化されるため、次のような効果を得ることができる。
【0052】
まず、本実施例にかかるボイラ1は、上部管寄せ24と、下部管寄せ25と、上部管寄せ24と下部管寄せ25との間に略垂直な水管群を縦列配置して構成された角型水管群と、角型水管群の側面に設けられたバーナ10とを備えたボイラ1であって、角型水管群を構成する水管(外側水管21,内側水管22,中央水管23)の中で、バーナ10にて部分的な加熱が行われる水管(外側水管21)の少なくとも一部について、他の水管(外側水管21,内側水管22,中央水管23)よりも小さな流路面積を有する特別流路水管21Aが用いられている。
【0053】
このような構成によれば、蒸気の乾き度の維持と水管過熱の防止とを両立可能なボイラ1(角型水管群を備えたボイラ)を得ることができる。角型水管群を構成する水管21,22,23の中で、バーナ10にて部分的な加熱が行われる水管(外側水管21)は、水管内における蒸発量が小さく気泡の発生が少ないため、水管が過熱状態になりやすい。しかしながら、本実施例にかかるボイラ1によれば、この外側水管21(バーナ10にて部分的な加熱が行われる水管)の少なくとも一部について、他の水管よりも小さな流路面積を有する特別流路水管21Aが用いられている。すなわち、この実施例によれば、過熱状態になりやすい箇所に特別流路水管21Aが用いられているため、バーナ10にて部分的な加熱が行われても、特別流路水管21A内における気泡発生率が高まり、特別流路水管21A内部の上方位置まで「濡れ」状態となる。つまり、このような構成によれば、従来であれば最も過熱のおそれがあった箇所に、過熱状態になりにくい特別流路水管21Aを配設したため、角型水管群全体における「水位」を比較的低く設定することができる。したがって、本実施例にかかるボイラ1によれば、蒸気の乾き度の維持と水管過熱の防止とを両立することができる。
【0054】
なお、本実施例においては、全ての外側水管21に特別流路水管21Aを適用しているわけではない。これは、水管壁27を構成する外側水管21の中でも、特に問題となる水管(過熱状態となりやすい水管)が、バーナ10に近接した前段側の水管だからである。ただし、これは、ボイラにおける水管配列状況、燃焼負荷状況等によって異なるため、必要に応じて、特別流路水管の適用範囲は変更可能である。したがって、例えば、水管壁27を構成する全ての外側水管21について、特別流路水管21Aを適用してもよい。
【0055】
また、本実施例にかかるボイラ1においては、特別流路水管21Aが、他の水管と同様の水管(外側水管21)中に水管内流路調整手段21bを設けて構成さている。このような構成によれば、他の水管と同様の水管(外側水管21)を用いて、比較的容易に特別流路水管21Aを構成可能である。水管内流路調整手段21bとしては、上述したように、断面半月状の棒状部材が用いられている。
【0056】
以上説明したように、本実施例によれば、図2および図3にて示した特別流路水管21Aを過熱状態になりやすい箇所に設けることによって、バーナ10にて部分的な加熱が行われても、特別流路水管21A内における気泡発生率が高まり、特別流路水管21A内部の上方位置まで「濡れ」状態となる。すなわち、本実施例は、従来であれば最も過熱のおそれがあった箇所に、過熱状態になりにくい特別流路水管21Aを配設した構成であるため、角型水管群全体における「水位」を比較的低く設定することができる。したがって、本実施例によれば、蒸気の乾き度の維持と水管過熱の防止とを両立可能なボイラ(角型水管群を備えたボイラ)を得ることができる。
【0057】
なお、本発明は、上述した実施形態および実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨に適合し得る範囲で必要に応じて種々の変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に含まれる。
【0058】
上記実施例においては、特別流路水管21Aが、角型水管群を構成する他の水管と同様の水管(外側水管21)中に水管内流路調整手段21bを設けた構成である場合について説明したが、本発明はこの構成に限定されず、他の水管よりも小さな流路面積を有するのであれば、特別流路水管はどのような構成であってもよい。したがって、例えば、他の水管と同様の水管を変形させて特別流路水管を構成してもよい。また、例えば、他の水管よりも小さな直径を有する水管にて特別流路水管を構成してもよい。
【0059】
また、上記実施例においては、角型水管群を構成する水管壁27中の前段4本を特別流路水管21Aとする場合について説明したが、本発明はこの構成に限定されず、水管壁27中の3本以下、あるいは5本以上を特別流路水管としてもよい。さらに、必要に応じて、水管壁27を構成する全ての水管を特別流路水管としてもよい。
【0060】
また、上記実施例においては、バーナ10にて部分的な加熱が行われる水管の一部(水管壁27を構成する外側水管21中の前段4本)に特別流路水管21Aを適用する場合について説明したが、本発明は、この構成に限定されない。したがって、例えば、バーナ10にて水管全体の加熱が行われてはいるものの、その水管配置上等の影響で水管内の蒸発量が小さい水管については、適宜、上記実施例および上記実施形態等にて説明した本発明にかかる特別流路水管を適用してもよい。このような構成にかかるボイラも、本発明の技術的範囲に属する。
【0061】
さらに、上記実施例においては、特別流路水管21Aを構成する水管内流路調整手段21bとして、棒状部材(断面半月状)のものを用いる場合について説明したが、本発明はこの構成に限定されず、水管内の流路面積を縮小させることが可能であれば、どのような構造あるいは形状であってもよい。すなわち、特に棒状部材に限定されるものではない。したがって、例えば、棒状部材の場合、その断面形状は特に何等かの形状に限定されず、半円形、楕円形、円形、矩形等であってもよい。さらに、例えば、水管内流路調整手段としては、両端を閉塞状態とした円筒等の筒状部材を用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の一実施例を適用した蒸気ボイラの縦断面の説明図である。
【図2】図1のII−II線に沿う横断面の説明図である。
【図3】図1に示されたボイラを構成する特別流路水管を説明するための概略図であって、図3(a)は特別流路水管の縦断面の説明図、図3(b)は図3(a)のIII−III線に沿う横断面の説明図である。
【符号の説明】
【0063】
1…ボイラ
10…バーナ
10a…予混合ガス噴出面
20…缶体
21…外側水管(水管)
21A…特別流路水管(外側水管)(水管)
21b…水管内流路調整手段
21c…縮小流路
22…内側水管(水管)
23…中央水管(水管)
24…上部管寄せ
25…下部管寄せ
26…連結部
27…水管壁
29…ガス流動空間
30…送風機
31…空気供給経路部
32…ガス燃料供給管
33…燃料調整弁
40…煙突部
61…第一領域
71…第二領域
80…蒸気取出部
81…第一蒸気出口管
82…第二蒸気出口管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部管寄せと、下部管寄せと、前記上部管寄せと前記下部管寄せとの間に略垂直な水管群を縦列配置して構成された角型水管群と、前記角型水管群の側面に設けられたバーナとを備えたボイラであって、
前記角型水管群を構成する水管の中で、前記バーナにて部分的な加熱が行われる水管の少なくとも一部について、他の水管よりも小さな流路面積を有する特別流路水管が用いられている
ことを特徴とするボイラ。
【請求項2】
前記バーナにて部分的な加熱が行われる水管が、前記バーナから噴出される燃焼ガスの流れ方向と略平行に位置する水管壁を構成する水管である
請求項1に記載のボイラ。
【請求項3】
前記特別流路水管が、前記他の水管と同様の水管中に水管内流路調整手段を設けて構成さている
請求項1または2に記載のボイラ。
【請求項4】
前記特別流路水管が、前記他の水管と同様の水管を変形させて構成されている
請求項1または2に記載のボイラ。
【請求項5】
前記特別流路水管が、前記他の水管よりも小さな直径を有する水管にて構成されている
請求項1または2に記載のボイラ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−180421(P2009−180421A)
【公開日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−19413(P2008−19413)
【出願日】平成20年1月30日(2008.1.30)
【出願人】(000175272)三浦工業株式会社 (1,055)
【出願人】(504143522)株式会社三浦プロテック (488)