説明

ボイラ

【課題】 簡易な構成および施工で、水管の過熱を確実に検知できるボイラの提供。
【解決手段】 上部管寄せ3と下部管寄せ4との間に、内側水管列7と外側水管列8とが、同心円筒状に配列されて設けられる。外側水管列8の上端部から放射状に排出される排ガスは、缶体カバー20を介して煙道21へ排出される。外側水管列8と缶体カバー20との間の円筒状隙間には、上端部を残して断熱材28が充填される。これにより、外側水管6の受熱量は、内側水管5よりも低くなる。それ故、外側水管6は、内側水管5に比べて、沸騰が緩やかで、内面が濡れにくく、過熱し易くなる。従って、外側水管6の上端部の温度を温度センサ29で監視することにより、缶体2の過熱を検知できる。外側水管6に温度センサ29を設けるので、温度センサ29の設置やメンテナンスが容易である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、蒸気ボイラ、廃熱ボイラおよび排ガスボイラを含む各種ボイラに関するものである。
【背景技術】
【0002】
多管式のボイラとして、下記特許文献1に開示されるものが知られている。この種のボイラは、環状に形成した上部管寄せと下部管寄せとの間に、多数の水管が同心円筒状に配列されて構成される缶体を備える。このような缶体では、内側水管列よりも内側が燃焼室とされ、それよりも外側が燃焼ガス流路とされる。
【0003】
従って、缶体上部に設置したバーナから燃焼室内へ向けて燃料の燃焼を行うと、燃焼ガスは燃焼室の下部で反転して、内側水管列と外側水管列との間を通って、排ガスとして缶体上部から煙道へ排出される。この間、燃焼ガスは、各水管内の水と熱交換し、各水管内の水の加熱が図られる。
【0004】
このようなボイラにおいて、水管の過熱を検知したい場合、最も過熱の起こり易い箇所の水管温度を監視して、その水管温度に基づき過熱を検知することが考えられる。ここで、内側水管と外側水管との熱負荷が均一である場合、すなわち各水管の燃焼ガスからの受熱量が等しい場合には、内外の各水管はいずれも過熱する可能性があるが、燃焼ガス温度が高い内側水管の上端部に、温度センサを設けようとするのが通常である。缶内水位よりも上方で、内周面が沸騰により濡れるだけの箇所は、過熱し易い上に、外側水管よりも高温に晒されるためである。
【特許文献1】特開平2−75805号公報 (第2図、第3図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、内側水管は外側水管に取り囲まれているので、そのような内側水管に温度センサを設置することは、困難である。かといって、単に外側水管に温度センサを設置するだけでは、先に過熱するであろう内側水管の過熱を検知することができない。
【0006】
この発明が解決しようとする課題は、簡易な構成および施工で、水管の過熱を確実に検知することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、前記課題を解決するためになされたもので、請求項1に記載の発明は、上部管寄せと下部管寄せとの間に円筒状に配列されて内側伝熱管列を構成する複数の内側伝熱管と、前記内側伝熱管列を取り囲むように、前記上部管寄せと前記下部管寄せとの間に円筒状に配列されて外側伝熱管列を構成し、前記内側伝熱管よりも受熱量が低い複数の外側伝熱管と、前記内側伝熱管列の下端部を残して、隣接する前記内側伝熱管間の隙間を閉塞するよう設けられる複数の内側縦ヒレと、前記外側伝熱管列の上端部を残して、隣接する前記外側伝熱管間の隙間を閉塞するよう設けられる複数の外側縦ヒレと、前記外側伝熱管間に前記外側縦ヒレが設けられた前記外側伝熱管列に設けられる温度センサとを備えることを特徴とするボイラである。
【0008】
請求項1に記載の発明によれば、内側伝熱管と外側伝熱管の各熱負荷を意図的にコントロールして、外側伝熱管の受熱量を内側伝熱管よりも低くし、受熱量の低い外側伝熱管に温度センサを設けた。そして、その箇所の温度を温度センサにより計測することで、伝熱管の過熱を監視することができる。内側伝熱管列ではなく外側伝熱管列に温度センサを設けるので、施工やメンテナンスが容易である。
【0009】
請求項2に記載の発明は、前記外側伝熱管列を取り囲むように、前記上部管寄せと前記下部管寄せとの間に設けられる円筒状の缶体カバーと、前記外側伝熱管列と前記缶体カバーとの間の円筒状隙間に、その上端部を残して充填されることで、前記内側伝熱管よりも前記外側伝熱管の受熱量を下げる断熱材とをさらに備え、前記温度センサは、前記外側伝熱管および/または前記外側縦ヒレの上端部に設けられることを特徴とする請求項1に記載のボイラである。
【0010】
請求項2に記載の発明によれば、外側伝熱管列と缶体カバーとの間に断熱材が充填されるので、外側伝熱管列の外周部は上端部を除き燃焼ガスや排ガスに接触されない。このようにして、外側伝熱管の受熱量を内側伝熱管よりも低く設定することができる。そして、外側伝熱管および/または外側縦ヒレの上端部に温度センサを設けることで、伝熱管の過熱の監視を簡易で有効に行うことができる。
【0011】
請求項3に記載の発明は、上部管寄せと下部管寄せとの間に、内側伝熱管列と外側伝熱管列とが同心円筒状に配列されて設けられ、前記内側伝熱管列は、複数の内側伝熱管が円筒状に配列されると共に、隣接する前記内側伝熱管間の隙間が下端部を残して内側縦ヒレで閉塞されて構成され、前記外側伝熱管列は、複数の外側伝熱管が円筒状に配列されると共に、隣接する前記外側伝熱管間の隙間が上端部を残して外側縦ヒレで閉塞されて構成され、前記内側伝熱管列の内側は、燃焼室とされるか、排ガスの導入空間とされ、前記外側伝熱管列の外側には、前記外側伝熱管列の内、前記外側縦ヒレが設けられない箇所からの排ガスを受け入れて煙道へ導く缶体カバーが設けられ、前記外側伝熱管列が燃焼ガスまたは排ガスと接触する表面積は、前記内側伝熱管列が燃焼ガスまたは排ガスと接触する表面積よりも小さくされており、前記外側伝熱管および/または前記外側縦ヒレの上端部に、温度センサが設けられることを特徴とするボイラである。
【0012】
請求項3に記載の発明によれば、外側伝熱管列が燃焼ガスまたは排ガスと接触する表面積は、内側伝熱管列が燃焼ガスまたは排ガスと接触する表面積よりも小さく設定される。これにより、外側伝熱管の受熱量を内側伝熱管よりも低くすることができる。そして、外側伝熱管および/または外側縦ヒレの上端部に温度センサを設け、その箇所の温度を温度センサにより計測することで、伝熱管の過熱を監視することができる。内側伝熱管列ではなく外側伝熱管列に温度センサを設けるので、施工やメンテナンスが容易である。
【0013】
請求項4に記載の発明は、前記温度センサは、前記缶体カバーの周方向一部に接続される煙道と略対向した位置に設けられることを特徴とする請求項2または請求項3に記載のボイラである。
【0014】
請求項4に記載の発明によれば、煙道と略対向した位置に温度センサが設けられる。この箇所は、煙道から最も離れた箇所であるから、ガスの流量が比較的少なく、伝熱量も少ないため、伝熱管内の沸騰が緩やかで、それ故に過熱され易い箇所といえる。この箇所の温度を監視することで、伝熱管の過熱を確実に検知することができる。
【0015】
さらに、請求項5に記載の発明は、前記内側伝熱管間に前記内側縦ヒレが設けられた前記内側伝熱管列と、前記外側伝熱管間に前記外側縦ヒレが設けられた前記外側伝熱管列とは、燃焼ガスまたは排ガスに接触される表面積の比が3:2とされることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のボイラである。
【0016】
請求項5に記載の発明によれば、内側伝熱管列と外側伝熱管列との外表面積比を3:2程度とすることで、外側伝熱管列の必要以上の過熱を防止することができる。
【発明の効果】
【0017】
この発明のボイラによれば、簡易な構成および施工で、伝熱管の過熱を確実に検知することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
つぎに、この発明の実施の形態について説明する。
本発明のボイラは、その種類を特に問わないが、たとえば、蒸気ボイラ、廃熱ボイラまたは排ガスボイラである。いずれの場合も、ボイラは、多管式ボイラとされ、典型的には多管式小型貫流ボイラとされる。
【0019】
ボイラは、上部管寄せと下部管寄せとの間を複数の伝熱管で接続して構成される缶体を備える。上部管寄せと下部管寄せとは、上下に離隔して平行に配置され、それぞれ中空の円環状とされる。各伝熱管は、垂直に配置され、上部管寄せと下部管寄せとの間を接続する。すなわち、各伝熱管は、上端部が上部管寄せに接続される一方、下端部が下部管寄せに接続される。
【0020】
各伝熱管は、上部管寄せと下部管寄せとの間に、それらの周方向へ沿って配列されることで、円筒状の伝熱管列を構成する。伝熱管列は、典型的には内側伝熱管列と外側伝熱管列との二列とされる。但し、場合により、内側伝熱管列と外側伝熱管列とに加えて、他の伝熱管または伝熱管列を設けてもよい。内側伝熱管列と外側伝熱管列とは、同心円筒状に配列される。内側伝熱管列を構成する伝熱管を内側伝熱管といい、外側伝熱管列を構成する伝熱管を外側伝熱管という。
【0021】
内側伝熱管列は、複数の内側伝熱管が円筒状に配列されると共に、隣接する内側伝熱管間の隙間が下端部を残して内側縦ヒレで閉塞されて構成される。内側伝熱管列の下端部には、内側縦ヒレが設けられないことで、内側伝熱管間に隙間(内列連通部)が形成される。
【0022】
外側伝熱管列は、複数の外側伝熱管が円筒状に配列されると共に、隣接する外側伝熱管間の隙間が上端部を残して外側縦ヒレで閉塞されて構成される。外側伝熱管列の上端部には、外側縦ヒレが設けられないことで、外側伝熱管間に隙間(外列連通部)が形成される。
【0023】
このような構成の缶体は、上端部にバーナが設けられ、下端部が耐火材で閉塞される。これにより、内側伝熱管列よりも内側は燃焼室とされ、この燃焼室内へ向けてバーナから燃料の燃焼が可能とされる。但し、廃熱ボイラや排ガスボイラとする場合には、缶体は、上下方向一方が閉塞され、上下方向他方の開口部から排ガスが導入される。つまり、この場合には、内側伝熱管列よりも内側は、排ガスの導入空間とされる。
【0024】
このような構成であるから、燃焼ガスまたは排ガスは、内側伝熱管列の下端部の内列連通部を介して、内側伝熱管列と外側伝熱管列との隙間へ導入され、外側伝熱管列の上端部の外列連通部から放射状に導出される。外側伝熱管列の外周部には、少なくとも上部に円筒状の缶体カバーが設けられ、この缶体カバーを介して、排ガスは煙道へ導出される。
【0025】
缶体カバーは、外側伝熱管列の上端部の外列連通部からの排ガスを受け入れて煙道へ導くものであればその構成を問わないが、典型的には、外側伝熱管列を取り囲むように、上部管寄せと下部管寄せとの間に設けられる円筒状の部材である。この際、缶体カバーは、上端部において、上部管寄せとの隙間が封止され、下端部において、下部管寄せとの隙間が封止される。そして、缶体カバーの周側壁の上部には、周方向一部に煙道が接続される。この際、缶体カバーの上部を大径部としておき、外側伝熱管列の上端部から放射状に排出される排ガスを、缶体カバーの大径部に受け入れた後、煙道へと導く構成としてもよい。
【0026】
缶体には、その過熱を検知するための温度センサが取り付けられる。この温度センサを用いて伝熱管の温度を監視することで、その過熱を検知することができる。温度センサとしては、サーミスタなどでもよいが、熱電対が好適に用いられる。
【0027】
缶体は、内側伝熱管と外側伝熱管の各熱負荷に差がある構成とされ、外側伝熱管の受熱量は内側伝熱管よりも低く設定される。内側伝熱管と外側伝熱管とは、いずれもその上端部の内周面が沸騰により濡れることで過熱が防止されるが、外側伝熱管の受熱量を内側伝熱管よりも低くした場合には、外側伝熱管は内側伝熱管よりも沸騰が緩やかとなる。それ故、外側伝熱管は、内側伝熱管よりも濡れにくくなり、過熱し易くなる。
【0028】
これにより、缶体の過熱の監視は、外側伝熱管の温度を検出することで容易に行うことができる。つまり、過熱を監視するための温度センサは、受熱量の低い外側伝熱管に設ければよい。この際、温度センサは、内周面が沸騰による濡れるだけの上端部に設けるのが好ましい。このようにして、外側伝熱管の上端部に温度センサを設けるので、温度センサの設置やメンテナンスが容易となる。但し、温度センサは、外側伝熱管自体ではなく、場合により外側縦ヒレに設けてもよい。この場合も、外側縦ヒレに設けられた温度センサは、間接的に外側伝熱管の温度を検出することになる。
【0029】
内側伝熱管よりも外側伝熱管の受熱量を下げるには、外側伝熱管列が燃焼ガスまたは排ガスと接触する表面積を、内側伝熱管列が燃焼ガスまたは排ガスと接触する表面積よりも小さくするのが簡易である。そのために、外側伝熱管列と缶体カバーとの間の円筒状隙間に断熱材を充填させてもよい。この際、外側伝熱管列の上端部から放射状に排出されるガスを煙道へ導けるように、外側伝熱管列と缶体カバーとの間の円筒状隙間の上部には断熱材は充填されない。
【0030】
内側伝熱管列が燃焼ガスまたは排ガスと接触する表面積と、外側伝熱管列が燃焼ガスまたは排ガスと接触する表面積との比は、特に問わないが、3:2程度とするのが好ましい。これにより、外側伝熱管列の必要以上の過熱を防止することができる。
【0031】
また、温度センサは、缶体カバーの周方向一部に接続される煙道と略対向した位置に設けるのがよい。この箇所は、煙道から最も離れた箇所であるから、ガスの流量が比較的少なく、伝熱量も少ないため、伝熱管内の沸騰が緩やかで、それ故に過熱され易い箇所といえる。この箇所の温度を監視することで、伝熱管の過熱を確実に検知することができる。
【実施例】
【0032】
以下、この発明の具体的実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明のボイラの一実施例を示す概略縦断面図である。また、図2は、そのII−II断面図である。本実施例のボイラ1は、円筒状の缶体2を備えた多管式小型貫流ボイラである。缶体2は、上部管寄せ3と下部管寄せ4との間を、円筒状に配列された多数の水管(伝熱管)5,5,…、6,6,…で接続して構成される。
【0033】
上部管寄せ3と下部管寄せ4とは、上下に離隔して平行に配置され、それぞれ中空の円環状とされている。また、上部管寄せ3と下部管寄せ4とは、それぞれ水平に配置されると共に、同一軸線上に配置される。
【0034】
各水管5,6は、垂直に配置され、上端部が上部管寄せ3に接続される一方、下端部が下部管寄せ4に接続される。各水管5,6は、上部管寄せ3と下部管寄せ4との周方向へ順次に配列されることで、円筒状の水管列を構成する。本実施例では、内側水管列7と外側水管列8とが同心円筒状に配列される。内側水管列7は、円筒状に配列された内側水管5,5,…にて構成される。一方、外側水管列8は、内側水管列7を取り囲むように、円筒状に配列された外側水管6,6,…にて構成される。
【0035】
内側水管列7には、下端部の設定領域を残して、隣接する内側水管5,5間の隙間を閉塞するように、内側縦ヒレ9が設けられる。つまり、内側水管5,5間の隙間は、下端部の設定領域を残して、内側縦ヒレ9にて閉塞される。内側水管列7は、内側縦ヒレ9が設けられない下端部において、隣接する内側水管5,5間に隙間が空けられる。この隙間から構成される内列連通部10を介して、内側水管列7の内側と外側とは連通される。
【0036】
外側水管列8には、上端部の設定領域を残して、隣接する外側水管6,6間の隙間を閉塞するように、外側縦ヒレ11が設けられる。つまり、外側水管6,6間の隙間は、上端部の設定領域を残して、外側縦ヒレ11にて閉塞される。外側水管列8は、外側縦ヒレ11が設けられない上端部において、隣接する外側水管6,6間に隙間が空けられる。この隙間から構成される外列連通部12を介して、外側水管列8の内側と外側とは連通される。
【0037】
ところで、図示例では、各内側水管5の下端部は、それより上部よりも小径部13に形成されている。これは、内列連通部10を通過する燃焼ガスの流量を所望に確保するためである。従って、内列連通部10を通過する燃焼ガスの流量を所望に確保できる場合には、小径部13はなくてもよい。内列連通部10の大きさは、隣接する内側水管5,5間の隙間と、内側縦ヒレ9の下端部の高さ位置にも左右されるため、小径部13を設ける代わりに、これら寸法を調整してもよい。一方、図示例では、各外側水管6の上端部には、小径部は形成されていないが、各内側水管5と同様に小径部を形成してもよい。
【0038】
図3は、図1におけるIII−III断面の部分拡大図である。また、図4は、図1におけるIV−IV断面の部分拡大図である。図1から図4に示すように、各内側水管5には、所望により、その外周面から突出する内側横ヒレ14などをさらに設けてもよい。図示例では、各内側水管5には、内側水管列7の外周面を構成する面に、内側スタッド15と内側横ヒレ14とが設けられる。その際、各内側水管5には、下方領域に内側スタッド15が設けられ、上方領域に内側横ヒレ14が設けられる。
【0039】
具体的には、各内側水管5の下半分で小径部13を除いた領域には、内側水管列7の外周面を構成する面に、内側水管5の半径方向外側へピン状に突出して、複数の内側スタッド15が設けられる。図示例では、内側水管5の周方向に等間隔に四つずつ設けられると共に、上下にも等間隔に多数の内側スタッド15が設けられる。また、各内側水管5の上半分の領域には、内側水管列7の外周面を構成する面に、内側水管5の半径方向外側へツバ状に延出して、複数の内側横ヒレ14が設けられる。図示例では、上下に等間隔に多数の内側横ヒレ14が設けられる。そして、各内側横ヒレ14には、図3に示すように、熱応力を緩和する切欠き16が先端部に形成されている。
【0040】
また、同様に、各外側水管6には、所望により、その外周面から突出する外側横ヒレ17などをさらに設けてもよい。図示例では、各外側水管6には、外側水管列8の内周面を構成する面に、外側スタッド18と外側横ヒレ17とが設けられる。その際、内側水管5の場合と同様に、各外側水管6には、下方領域に外側スタッド18が設けられ、上方領域に外側横ヒレ17が設けられる。
【0041】
具体的には、各外側水管6の下半分の領域には、外側水管列8の内周面を構成する面に、外側水管6の半径方向外側へピン状に突出して、複数の外側スタッド18が設けられる。図示例では、外側水管6の周方向に等間隔に四つずつ設けられると共に、上下にも等間隔に多数の外側スタッド18が設けられる。また、各外側水管6の上半分の領域には、外側水管列8の内周面を構成する面に、外側水管6の半径方向外側へツバ状に延出して、複数の外側横ヒレ17が設けられる。図示例では、上下に等間隔に多数の外側横ヒレ17が設けられる。そして、各外側横ヒレ17には、図3に示すように、熱応力を緩和する切欠き19が先端部に形成されている。
【0042】
ところで、内側水管5と外側水管6とは、互い違いに配置されるように、周方向に半ピッチずつ、ずらして配置される。そして、内側横ヒレ14および外側横ヒレ17は、缶体2の平面視において重ならないように大きさ、形状および配置が調整されている。また、内側横ヒレ14と外側横ヒレ17とは、いずれも缶体2の周方方向一方へ行くに従って上方へ傾斜して設けられる。但し、横ヒレ14,17やスタッド15,18の設置の有無、設置領域および設置位置、設置個数、形状や大きさなどは適宜に変更可能である。
【0043】
上部管寄せ3と下部管寄せ4との間にはさらに、外側水管列8を取り囲むように、円筒状の缶体カバー20が設けられる。缶体カバー20は、上端部において、上部管寄せ3との隙間が封止され、下端部において、下部管寄せ4との隙間が封止される。缶体カバー20の周側壁上部には、周方向一部に煙道21が接続される。図示例では、缶体カバー20の上端部は、大径部22に形成されており、この大径部22の周方向一部に煙道21が接続される。
【0044】
上部管寄せ3の下面および下部管寄せ4の上面には、各管寄せ3,4と各水管5,6との接続部を覆うように、耐火材23が設けられる。この際、下部管寄せ4側の耐火材23は、下部管寄せ4の中央部をも閉塞するように設けられる。下部管寄せ4側の耐火材23の中央部には、円柱状または円錐台状の凹部24が形成される。
【0045】
上部管寄せ3の中央部には、下方へ向けてバーナ25が設けられる。このバーナ25には、燃料が供給されると共に、燃焼用空気が供給される。バーナ25を作動させることで、缶体2内において燃料の燃焼が行われる。この際、内側水管列7の内側は、燃焼室26として機能する。
【0046】
燃焼室26での燃料の燃焼による燃焼ガスは、内列連通部10を介して、内側水管列7と外側水管列8との間の燃焼ガス流路27へ導出される。そして、その燃焼ガスは、外列連通部12を介して、外側水管列8の上部から放射状に導出され、缶体カバー20に受け入れられる。その後、排ガスとして、缶体カバー20に接続された煙道21を介して、外部へ排出される。この間、燃焼ガスは、各水管5,6内の水と熱交換し、各水管5,6内の水の加熱が図られる。これにより、上部管寄せ3から蒸気を取り出すことができ、その蒸気は気水分離器(図示省略)などを介して、蒸気使用設備(図示省略)へ送られる。
【0047】
外側水管列8と缶体カバー20との間の円筒状隙間には、下方の設定領域に断熱材28が充填される。断熱材28は、その種類を特に問わないが、たとえばセラミックファイバーまたはロックウールである。図示例の場合、外列連通部12よりも下方領域の外側水管列8と、大径部22よりも下方領域の缶体カバー20との間に、断熱材28が充填される。これにより、断熱材28が充填された領域において、外側水管列8が燃焼ガスまたは排ガスと接触するのが防止される。
【0048】
このようにして、外側水管列8が燃焼ガスまたは排ガスと接触する表面積は、内側水管列7が燃焼ガスまたは排ガスと接触する表面積よりも小さくされる。よって、外側水管6の受熱量は、内側水管5の受熱量よりも低くなる。内側水管列7が燃焼ガスまたは排ガスと接触する表面積と、外側水管列8が燃焼ガスまたは排ガスと接触する表面積との比は、本実施例では3:2とされる。
【0049】
ここで、内側水管列7が燃焼ガスまたは排ガスと接触する表面積は、内側水管5の他、内側縦ヒレ9、内側横ヒレ14および内側スタッド15が、燃焼ガスまたは排ガスを接触する表面積である。また、外側水管列8が燃焼ガスまたは排ガスと接触する表面積は、外側水管6の他、外側縦ヒレ11、外側横ヒレ17および外側スタッド18が、燃焼ガスまたは排ガスを接触する表面積である。
【0050】
内側水管5と外側水管6との各上端部は、内部の水が沸騰により内周面を濡らすことで過熱が防止されるが、外側水管6の受熱量を内側水管5よりも低くした場合には、外側水管6は内側水管5よりも沸騰が緩やかとなる。それ故、外側水管6は、内側水管5よりも濡れにくくなり、過熱し易くなる。言い換えれば、外側水管6は、内側水管5よりも熱負荷が低くされ、沸騰量や蒸発量が少なく、蒸気流速が遅く、濡れにくいので過熱し易い。従って、缶体2の過熱は、外側水管6の上端部の温度を監視することで行うことができる。
【0051】
そのために、本実施例のボイラ1は、外側水管6の上端部に、熱電対を用いた温度センサを設けている。この際、図2に示すように、煙道21と略対向した位置に設けるのがよい。図示例では、外側水管列8の外側に温度センサ29を設けているが、外側水管列8の内側に温度センサ29を設けてもよい。また、温度センサ29は、外側水管6に設けて、外側水管6の温度を検出するが、場合により外側縦ヒレ11に設けて、外側縦ヒレ11の温度から間接的に外側水管6の温度を検出してもよい。
【0052】
ボイラ1の運転中、温度センサ29により、外側水管6の過熱が監視される。万一、温度センサ29の検出温度が設定温度を超えると、外側水管6が過熱しているとして、バーナ25の燃焼を停止するなどの制御がなされる。
【0053】
本実施例の構成によれば、内側水管5と外側水管6とで受熱量を調整することで、缶体カバー20に近い外側水管6の上端部が過熱し易いように、過熱位置をコントロールした。従って、過熱を検知するための温度センサ29の設置やメンテナンスが容易である。
【0054】
本発明のボイラ1は、前記実施例の構成に限らず適宜変更可能である。特に、外側水管6の受熱量を内側水管5よりも少なくして、その外側水管6の上端部に温度センサ29を設ける構成とする限り、水管5,6の本数や配置などの缶体構造は適宜に変更可能である。また、前記実施例では、煙道21と略対向した位置に温度センサ29を設けたが、缶体カバー20に対する温度センサ29の周方向取付位置は適宜に変更可能である。さらに、前記実施例において、バーナ25を設ける代わりに、内側水管列7の内側に排ガスを導入すれば、廃熱ボイラや排ガスボイラとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明のボイラの一実施例を示す概略縦断面図である。
【図2】図1のII−II断面図である。
【図3】図1におけるIII−III断面の部分拡大図である。
【図4】図1におけるIV−IV断面の部分拡大図である。
【符号の説明】
【0056】
1 ボイラ
2 缶体
3 上部管寄せ
4 下部管寄せ
5 内側水管(内側伝熱管)
6 外側水管(外側伝熱管)
7 内側水管列(内側伝熱管列)
8 外側水管列(外側伝熱管列)
9 内側縦ヒレ
11 外側縦ヒレ
12 外列連通部
20 缶体カバー
21 煙道
26 燃焼室
28 断熱材
29 温度センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部管寄せと下部管寄せとの間に円筒状に配列されて内側伝熱管列を構成する複数の内側伝熱管と、
前記内側伝熱管列を取り囲むように、前記上部管寄せと前記下部管寄せとの間に円筒状に配列されて外側伝熱管列を構成し、前記内側伝熱管よりも受熱量が低い複数の外側伝熱管と、
前記内側伝熱管列の下端部を残して、隣接する前記内側伝熱管間の隙間を閉塞するよう設けられる複数の内側縦ヒレと、
前記外側伝熱管列の上端部を残して、隣接する前記外側伝熱管間の隙間を閉塞するよう設けられる複数の外側縦ヒレと、
前記外側伝熱管間に前記外側縦ヒレが設けられた前記外側伝熱管列に設けられる温度センサと
を備えることを特徴とするボイラ。
【請求項2】
前記外側伝熱管列を取り囲むように、前記上部管寄せと前記下部管寄せとの間に設けられる円筒状の缶体カバーと、
前記外側伝熱管列と前記缶体カバーとの間の円筒状隙間に、その上端部を残して充填されることで、前記内側伝熱管よりも前記外側伝熱管の受熱量を下げる断熱材とをさらに備え、
前記温度センサは、前記外側伝熱管および/または前記外側縦ヒレの上端部に設けられる
ことを特徴とする請求項1に記載のボイラ。
【請求項3】
上部管寄せと下部管寄せとの間に、内側伝熱管列と外側伝熱管列とが同心円筒状に配列されて設けられ、
前記内側伝熱管列は、複数の内側伝熱管が円筒状に配列されると共に、隣接する前記内側伝熱管間の隙間が下端部を残して内側縦ヒレで閉塞されて構成され、
前記外側伝熱管列は、複数の外側伝熱管が円筒状に配列されると共に、隣接する前記外側伝熱管間の隙間が上端部を残して外側縦ヒレで閉塞されて構成され、
前記内側伝熱管列の内側は、燃焼室とされるか、排ガスの導入空間とされ、
前記外側伝熱管列の外側には、前記外側伝熱管列の内、前記外側縦ヒレが設けられない箇所からの排ガスを受け入れて煙道へ導く缶体カバーが設けられ、
前記外側伝熱管列が燃焼ガスまたは排ガスと接触する表面積は、前記内側伝熱管列が燃焼ガスまたは排ガスと接触する表面積よりも小さくされており、
前記外側伝熱管および/または前記外側縦ヒレの上端部に、温度センサが設けられる
ことを特徴とするボイラ。
【請求項4】
前記温度センサは、前記缶体カバーの周方向一部に接続される煙道と略対向した位置に設けられる
ことを特徴とする請求項2または請求項3に記載のボイラ。
【請求項5】
前記内側伝熱管間に前記内側縦ヒレが設けられた前記内側伝熱管列と、前記外側伝熱管間に前記外側縦ヒレが設けられた前記外側伝熱管列とは、燃焼ガスまたは排ガスに接触される表面積の比が3:2とされる
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のボイラ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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