説明

ボタン認識装置およびボタン認識方法

【課題】多種多様なボタンについて表裏を判別することができるとともに、スムーズに判別対象となるボタンを変更する。
【解決手段】ボタン2の一面に対して斜め前方であって周方向に4方向の角度から照明装置3により順次照射光を照射する照射工程と、各角度からの照射光の照射に対応して、これらの照射光により形成されたボタン2の影をそれぞれカメラ10により撮像する撮像工程と、撮像された複数の影の画像を合成し、合成された影の画像を用いてボタン2の凹凸形状を認識することにより、ボタン2の表裏を判別する判別工程とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ミシンに供給されるボタンの表裏を判別可能なボタン認識装置およびボタン認識方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、自動ボタン縫い付け装置によってボタンを縫製物に縫い付けるにあたり、ボタンの表裏を判別するボタン認識装置が用いられている。
【0003】
例えば、特許文献1には、ボタンの表裏を検知するためのボタン検知装置を備えた自動ボタン縫着装置が記載されている。このボタン検知装置は、ボタンつまみ足が上昇する際に、このボタンつまみ足によって保持されたボタンの上面に係合可能な位置に進退自在に配置され、ボタンの上面における縁部と中央部に係合可能なボタン検知手段と、このボタン検知手段の上下変位によってボタンの表裏を判別する判別手段とを有している。
【0004】
この自動ボタン検知装置は、例えば、ボタン検知手段として、ボタン有無検知レバーおよびボタン表裏検知レバーを備えている。このような自動ボタン検知装置は、ボタン供給アームによってボタンつまみ足にボタンが供給された後、ボタンつまみ足が上昇する際に、ボタンの縁部によってボタン有無検知レバーが押し上げられたか否かにより、ボタンつまみ足におけるボタンの有無を検知するようになっている。また、自動ボタン検知装置は、ボタンの表面における中央部が窪んでおり、裏面における中央部が平面状であるというボタンの形状を利用して、ボタンつまみ足が上昇する際に、ボタンの中央部によってボタン表裏検知レバーが押し上げられたか否かにより、ボタンの表裏を判別するようになっている。
【0005】
また、特許文献2には、ボタン収納部および移動経路に所定の振動を発生させることにより、ボタン収納部に収納されたボタンを、ボタンの表裏選別後にボタン排出口から順次排出するボタン供給部を備えたボタン供給装置が記載されており、このボタン供給装置は、移動経路の途中にボタン選別機構を備えている。そして、ボタン供給装置においては、ボタンの表面における中央部が窪んでおり裏面の中央部が平面状であるというボタン形状を利用して、ボタンは、ボタン選別機構を通過する際に、平面状の裏面が下方を向いており、表面が上方に向いているときには、ボタン選別機構を通過するようになっている。一方、ボタンは、中央部に窪みのある表面が下方を向き、裏面が上方に向いているときには、ボタン選別機構からボタン収納部における下方に落下するようになっている。これにより、ボタン供給装置は、ボタンの表裏を判別し、表面が上方を向いているボタンのみをボタン排出口から順次排出するようになっている。
【0006】
さらに、特許文献3には、表面に刻印や画像が形成されたボタンをミシンに供給する際にボタンの上面を撮像して前方画像を取得する撮像手段を備えたボタンの縫着方向設定装置が記載されている。このボタンの縫着方向設定装置は、撮像手段により取得された前方画像と、ボタンについて予め記録された規格画像とに基づいて、ボタンを平面形状における所定の角度に傾けて配置して、ミシンに供給するようになっている。
【0007】
【特許文献1】特許第2659073号公報
【特許文献2】特許第2648042号公報
【特許文献3】特公平2−023197号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、前述の特許文献1に記載の自動ボタン検知装置、および特許文献2に記載のボタン供給装置によれば、ボタンの表裏の判別を、ボタンの表面における中央部が窪み、裏面が平面状であるというボタン形状を利用して行うものであった。このため、特許文献1に記載の自動ボタン検知装置や特許文献2に記載のボタン供給装置では、中央部の窪みについて相違がないが表裏いずれかの周縁が円弧状である等、表裏の面形状に微妙な相違があるボタンについて、表裏の判別ができないという問題を有していた。
【0009】
また、前述の特許文献3に記載のボタンの縫着方向設定装置によれば、ボタンの表裏に形成された刻印や画像等に相違がある場合は、ボタンの表裏を判別することが可能であるが、表裏ともに刻印や画像が形成されておらず、表裏の面形状に微妙な相違があるボタンについてはやはり表裏の判別ができないという問題を有していた。
【0010】
本発明はこれらの点に鑑みてなされたものであり、多種多様なボタンについて表裏を判別することができるとともに、スムーズに判別対象となるボタンを変更することが可能なボタン認識装置およびボタン認識方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成するため、請求項1に記載の発明に係るボタン認識装置の特徴は、ボタンの一面に対して斜め前方から照射光を照射する照明装置と、前記照射光により形成された前記ボタンの影を撮像する撮像装置と、撮像された前記影の画像を用いて前記ボタンの凹凸形状を認識することにより、前記ボタンの表裏を判別する画像処理装置とを有する点にある。
【0012】
この請求項1に記載の発明によれば、ボタンの一面に照射光をボタンの影を形成し、そのボタンの影を撮像してその影の画像を用いることによりボタンの表裏を判別することができる。このため、ボタンの表裏の面形状の差が微妙な場合であっても、ボタンの表裏や撮像対象となっているボタンが所望のボタンと同一の種類か否かを判別することができる。
【0013】
請求項2に記載の発明に係るボタン認識装置の特徴は、請求項1に記載のボタン認識装置において、前記照明装置として、前記ボタンの一面に対して周方向に所定の間隙をもって複数の照明装置が配置されている点にある。
【0014】
この請求項2に記載の発明によれば、ボタンの一面に対して周方向に所定の間隙をもって複数の照明装置が配置されており、多方向から照射される照射光により形成された影の画像を用いて表裏を判別することができるので、より明確に表裏によって異なる影の画像を取得することができ、ひいてはより確実にボタンの表裏を判別することが可能となる。
【0015】
請求項3に記載の発明に係るボタン認識装置の特徴は、請求項1または請求項2に記載のボタン認識装置において、前記画像処理装置が、撮像された前記影の画像を用いて前記ボタンの糸通し孔の位置を検出する点にある。
【0016】
この請求項3に記載の発明によれば、影の合成画像を用いてボタンの糸通し孔の位置を検出することにより、ボタンの一面の模様が所定の方向を向くようにボタンを回転させてミシンに供給するための位置情報を取得することができる。これにより、この糸通し孔の位置情報に基づいてボタンを所定の角度に向けて供給することができるので、ミシンによって仕上がりよく縫製物にボタンを縫い付けることができる。
【0017】
請求項4に記載の発明に係るボタン認識方法の特徴は、ボタンの一面に対して斜め前方から照射光を照射する照射工程と、前記照射光により形成された前記ボタンの影を撮像する撮像工程と、撮像された前記影の画像を用いて前記ボタンの凹凸形状を認識することにより、前記ボタンの表裏を判別する判別工程とを有する点にある。
【0018】
この請求項4に記載の発明によれば、ボタンの上面に照射された照射光によってボタンの影を形成し、そのボタンの影を撮像してその影の画像を用いることによりボタンの表裏を判別することができる。このため、ボタンの表裏の面形状やボタンの種類による形状の差が微妙な場合であっても、ボタンの表裏や撮像対象となっているボタンが所望のボタンと同一の種類か否かを判別することができる。
【0019】
請求項5に記載の発明に係るボタン認識方法の特徴は、請求項4に記載の発明に係るボタン認識方法において、前記照射工程において、前記ボタンの一面に対して周方向に複数の角度から順次照射光を照射し、前記撮像工程において、前記各角度からの照射光の照射に対応して前記ボタンの影をそれぞれ撮像し、前記判別工程において、撮像された複数の前記影の画像を合成し、前記合成された影の画像を用いて前記ボタンの凹凸形状を認識することにより、前記ボタンの表裏を判別する点にある。
【0020】
この請求項5に記載の発明によれば、多方向から照射される照射光により形成された影の画像を用いて表裏を判別することができるので、より明確に表裏によって異なる影の画像を取得することができ、ひいてはより確実にボタンの表裏を判別することが可能となる。
【0021】
請求項6に記載の発明に係るボタン認識方法の特徴は、請求項4に記載の発明に係るボタン認識方法において、前記照射工程において、前記ボタンの一面に対して周方向に複数の角度から異なる色彩の照射光を同時に照射し、前記撮像工程において、前記各照射光の照射により形成された前記ボタンの影を1回で撮像し、前記判別工程において、撮像された1つの前記ボタンの影の画像を用いて、前記ボタンの表裏を判別する点にある。
【0022】
この請求項6に記載の発明によれば、多方向から照射される照射光により形成された影の画像を用いて表裏を判別することができるので、より明確に表裏によって異なる影の画像を取得することができ、ひいてはより確実にボタンの表裏を判別することが可能となる。さらに、多方向からの照射光により形成される影を、1回の撮像工程によって撮像することができ、各画像の合成処理を行う必要もないので、多方向からの照射光により形成される影の画像を用いて表裏を判別するにあたり、時間の短縮化を図ることが可能となる。
【発明の効果】
【0023】
以上述べたように、本発明に係るボタン認識装置およびボタン認識方法によれば、表面と裏面との形状が異なる多種多様のボタンの表裏を判別することができ、従来と比較してより多種類のボタンについて表裏の判別を行うことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明に係るボタン認識装置およびボタン認識方法の実施形態を図1から図9を参照して説明する。
【0025】
図1は、ボタン認識装置の一実施形態を示す概略斜視図であり、図2は、図1のボタン認識装置の構成を示すブロック図である。
【0026】
図1および図2に示すように、本実施形態に係るボタン認識装置1は、ボタン2の一面(本実施形態においては上面)に対して斜め前方(本実施形態においては斜め上方)から照射光を照射する4つの照明装置3A、3B、3C、3D(3)を有している。各照明装置3は、図3に示すように、ボタン2の上面に対して周方向に等間隔の角度によって配置されており、本実施形態においては、ボタン2の上面に対して周方向に90°毎に間隙をもって配置されている。各照明装置3は同一の色彩の照射光を照射するようになっている。
【0027】
そして、ボタン認識装置1の各部を制御する画像処理装置5のCPU6は、各照明装置3によってボタン2の上面に対して周方向に複数の角度から順次照射光を照射するようになっている。
【0028】
各照明装置3は、ボタン2の上面からの高さ方向における照射光の照射角度を調整するために各照明装置3の高さを不図示のモータ等の駆動手段により調整可能な高さ位置調整装置8に接続されており、CPU6は、高さ調整装置8によって、各照明装置3からボタン2の上面に照射光が照射されたときにボタン2の影を形成するのに適当な高さ位置に、各照明装置3の高さ位置を調整するようになっている。
【0029】
なお、ボタン2の上面からの高さ方向における照射光の照射角度を調整するための調整手段は、本実施形態における高さ調整装置8に限定されるものではなく、例えば、各照明装置3が高さ方向に複数の光源を備え、適当な高さ位置の光源を選択して照射光を照射してもよい。また、各照明装置3において照射光をボタン2の上面に照射する出光窓が高さ方向に複数形成されており、適当な高さ位置の出光窓から照射光を照射するようにしてもよい。さらには、各照明装置3として液晶表示装置を用いることにより、照射光を照射する高さ位置を調整してもよい。
【0030】
ボタン2の上方には、各照明装置3から照射された照射光によって形成されたボタン2の影を撮像する撮像装置としてのカメラ10が配置されており、CPU6は、各照明装置3による各角度からの照射光の照射に対応して、複数のボタン2の影を撮像するようになっている。このカメラ10は、白黒、カラーのいずれのカメラ10を用いてもよく、種々のカメラ10を用いることができる。
【0031】
画像処理装置5は、カメラ10によって撮像されたボタン2の影の画像について各種の処理を行うようになっており、各照明装置3からの照射に対応して照射光により形成されたボタン2の影をそれぞれ撮像し、4方向からの照射光により形成されたそれぞれの影の画像を合成し、この合成画像を用いてボタン2の凹凸形状を認識することにより、ボタン2の表裏を判別するようになっている。また、画像処理装置5は、撮像された影の画像を用いてボタン2の糸通し孔2cの位置を検出することもできるようになっている。
【0032】
画像処理装置5は、画像処理装置5の各部を制御するCPU6と、ボタン2の影の各画像を記録する画像メモリ12と、CPU6が画像処理を行うために画像データを仮に格納するワークメモリ13とを有している。カメラ10は、アナログ・デジタルコンバータ(A/Dコンバータ)15を介して画像メモリ12に接続されており、カメラ10が撮像した影の画像の各画像データは、A/Dコンバータ15によってデジタル化された後、画像メモリ12に記録されるようになっている。
【0033】
また、画像処理装置5は、カメラ10の制御を行うカメラ制御部16と、各照明装置3の制御を行う照明制御部17と、高さ調整装置8の制御を行う高さ調整制御部18とを有している。
【0034】
さらに、画像処理装置5は、高さ調整装置8によって各照明装置3の高さ位置を調整する処理、各照明装置3によって順次照射光を照射する処理、カメラ10によって各照明装置3による所定の角度からの照射光の照射に対応して順次ボタン2の影の画像を撮像する処理、および影の各画像を用いてボタン2の凹凸形状を認識し表裏を判別する処理を行うための画像処理プログラムを有している。画像処理プログラムは、プログラムメモリ19に記憶されている。
【0035】
そして、画像処理装置5は、CPU6によってプログラムメモリ19から画像処理プログラムを読み出して、各制御部16、17、18に制御情報を出力し、各制御部16、17、18によって、高さ調整装置8により各照明装置3の高さを調整し、各照明装置3により順次ボタン2に照射光を照射し、カメラ10によりボタン2の影を撮像するようになっている。さらに、画像処理装置5は、CPU6によって、4方向からの照射光により形成された影の各画像を合成し、ボタン2の凹凸形状を認識してボタン2の表裏を判別するようになっている。
【0036】
ボタン認識装置1は、ボタン2をカメラ10の下方に搬送する搬送装置21を備えており、CPU6は、搬送制御部22を介して、搬送するボタン2がカメラ10の下方に位置したときに搬送装置21による搬送を停止させるようになっている。また、搬送装置21は、画像処理装置5によるボタン2の表裏判別が終了した後、判別結果に基づいて、ボタン2をミシンに供給し、または除去するようになっている。
【0037】
搬送装置21におけるボタン2を載置する部分の色彩は特に限定されるものではないが、ボタン2の影を撮像する際の背景となるため、例えば白色等、影が鮮明に写る色彩にすることが好ましい。また、搬送装置21におけるボタン2の搬送経路であってカメラ10による撮像位置よりもボタン2の搬送方向において上流側に、搬送経路上における所定の位置にボタン2を載置するためのガイド(図示せず)を設けてもよい。これにより、カメラ10によってボタン2の影を所定の位置において確実に撮像することができる。さらに、搬送装置21の駆動手段は、モータやエア等種々の駆動手段を用いることができる。
【0038】
次に、本実施形態に係るボタン認識装置1によるボタン認識方法について説明する。ここで、本実施形態に係るボタン認識方法においては、表面2aの中央部に窪み2dが形成されており、裏面2bの周縁が円弧状に形成されたボタン2を用いて説明する。
【0039】
ボタン2が搬送装置21により搬送され、カメラ10の下方に到達したとき停止すると、図4に示すように、まず、画像処理装置5は、第1照明装置3Aを点灯し、第1照明装置3Aによりボタン2の上面に照射光を照射する照射工程を行い(ST1)、この照射光により、ボタン2の影を形成する。このとき、図5(a)(b)に示すように、ボタン2の表面2aが上方を向いている場合には、ボタン2の糸通し孔2cおよび中央の窪み2dによって影が形成されるとともに、表面2aの周縁により影が形成される。一方、図6(a)(b)に示すように、ボタン2の裏面2bが上方を向いている場合には、ボタン2の糸通し孔2cによって影が形成されるとともに、裏面2bの周縁により影が形成される。このとき、ボタン2の裏面2bの周縁は円弧状に形成されているので、ボタン2における表面2aの周縁により形成される影と比較して、裏面2bの周縁により形成される影の方が短く形成されることとなる。
【0040】
この状態で、画像処理装置5は、ボタン2の上方からカメラ10によって照射光により形成されたボタン2の影を撮像する撮像工程を行う(ST2)。
【0041】
続いて、画像処理装置5は、カメラ10により撮像された影の画像をA/Dコンバータ15によってデジタル化した後、画像メモリ12に転送して記録する画像記録工程を行う(ST3)。さらに、画像処理装置5は、第1照明装置3Aを消灯する消灯工程を行った後(ST4)、全ての照明装置3を点灯したか否か判別し(ST5)、全ての照明装置3を点灯していないと判断した場合には(ST5においてNo)、続いて第2照明装置3Bを点灯して、照射工程(ST1)、撮像工程(ST2)、画像記録工程(ST3)、消灯工程(ST4)を行う。そして、画像処理装置5は、第1照明装置3Aから第4照明装置3Dまで、これらの各工程(ST1〜ST4)を繰り返して、ST5において全ての照明装置3を点灯したと判断した場合には(ST5においてYes)、撮像された影の画像を用いてボタン2の凹凸形状を認識することにより、ボタン2の表裏を判別する判別工程を行う(ST6)。
【0042】
判別工程(ST6)について、画像処理装置5は、図7に示すように、まず画像メモリ12において記録されている4方向からの照射光により形成された影の各画像を合成して、影の合成画像を作成する(ST61)。このとき、図8(a)に示すように、ボタン2の表面2aが上方を向いている場合の合成画像は、ボタン2の糸通し孔2cにより形成された影と、窪み2dにより形成された影と、表面2aの周縁により形成された影とにより構成される。一方、図8(b)に示すように、ボタン2の裏面2bが上方を向いている場合の合成画像は、ボタン2の糸通し孔2cにより形成された影と、裏面2bの周縁によって形成されとにより構成され、裏面2bの周縁によって形成された影は、表面2aの周縁によって形成された影と比較して細くなる。
【0043】
画像処理装置5は、この合成画像を用いてボタン2の表裏を判別するにあたり、本実施形態においては、まず、合成画像を二値化して(ST62)、合成画像において連結した画素の集合に番号(ラベル)を付加することにより画素の集合を分類するラベリング処理を行う(ST63)。画像処理装置5は、一定画素数以上あるラベルのみを有効とみなして、有効なラベル数によってボタン2の表裏を判別する(ST64)。ここで、本実施形態において、図8(a)に示すように、ボタン2の表面2aが上方を向いている場合の有効なラベル数は4となり、図8(b)に示すように、ボタン2の裏面2bが上方を向いている場合の有効なラベル数は3となる。さらに、画像処理装置5は、ラベリング処理された合成画像から、ボタン2の糸通し孔2cの位置を検出する。
【0044】
一方、画像処理プログラムにおいては、予めラベル数が4である場合にはボタン2の表面2aが上方を向いており、ラベル数が4以外である場合にはボタン2の裏面2bが上方を向いていると判断するように設定されている。
【0045】
このため、画像処理装置5は、ラベル数が4である場合にはボタン2の表面2aが上方を向いていると判断し(ST64においてYes)、ボタン2の供給処理を行う(ST65)。画像処理装置5は、ボタン2の供給処理として、ボタン2の表面2aが上方を向いている旨およびボタン2の糸通し孔2cの位置をI/F20を介してミシンの各部を制御するミシン制御部23に出力し、ミシン制御部23は、入力したボタン2の表裏の判別結果に基づいて、ボタン2の表面2aが上方に向いているのであれば、入力したボタン2の構成情報に基づき、糸通し孔2cの形成位置を確認する。そして、ミシン制御部23は、糸通し孔2cの形成位置がずれている場合には、ボタン2の表面の模様が所定の方向を向くようにボタンを回転させてミシンに供給し、縫製物に縫い付ける作業を行う。
【0046】
一方、画像処理装置5は、ラベル数が3である場合には、ボタン2の表面2aが上方を向いていないと判断し(ST64においてNo)、エラー処理を行う(ST66)。画像処理装置5は、エラー処理として、ボタン2の表面2aが上方を向いていない旨をI/F20を介してミシン制御部23に出力し、ミシン制御部23は、入力したボタン2の表裏の判別結果に基づいて、そのボタン2を不図示の排除位置に搬送して排除する。
【0047】
本実施形態によれば、ボタン2の上面に照射光を照射してボタン2の影を形成し、ボタン2の影を撮像してその影の画像を用いることによりボタン2の表裏を判別することができる。このため、本実施形態において用いたボタン2に限定されず、例えば、表面2aの中央部に窪み2dが形成されていないボタン2や、表面2aが凸状の曲面であるボタン2であっても、例えば、表裏とも同じような形状であるが表面にのみ彫刻が施されているボタン等、表面および裏面の形状が種々の態様で異なるボタンについて表裏を判別することができる。
【0048】
また、ボタン2の影の画像を用いてボタン2の表裏を判別するので、判別対象となるボタン2を変更する場合であっても、画像処理プログラムにおいて表裏を判別する際の基準(本実施形態においてはラベル数が4であるか否か)を変更する必要がある場合には変更するのみで、判別対象となるボタン2を変更することができる。したがって、ボタン2のサイズや形状が大きく異なる場合であっても、スムーズに判別対象となるボタン2の種類を変更することができる。
【0049】
さらに、ボタン2の上面に対して周方向に所定の間隙をもって配置された複数の照明装置3によって順次ボタン2の上面に照射光を照射するとともに、各照明装置3の照射に対応して順次ボタン2の影を撮像し、4方向からの照射光により形成された影の各画像を合成するので、より明確に表裏によって異なる影の合成画像を取得することが可能となる。これにより、ボタン認識装置1は、より確実にボタン2の表裏を判別することができる。
【0050】
さらにまた、画像処理装置5において、影の合成画像を用いてボタン2の糸通し孔2cの位置を検出することにより、ボタン2の表面の模様が所定の方向を向くようにボタンを回転させてミシンに供給するための位置情報を取得することができる。これにより、この糸通し孔2cの位置情報に基づいてボタン2を所定の角度に向けてミシンに供給することができるので、ミシンによって仕上がりがよく縫製物にボタン2を縫い付けることができる。
【0051】
また、ボタン認識装置1は、高さ調整装置8を用いて、各照明装置3の高さ位置をボタン2の影を形成するのに適当な高さ位置に調整することができるので、より明確に表裏によって異なる影の画像を取得することができ、確実にボタン2の表裏判別を行うことができる。
【0052】
次に、本発明に係るボタン認識装置1の第2の実施形態について、図9を用いて説明する。ここで、第2の実施形態について第1の実施形態と同様の構成については同一の符号を用いて説明し、詳説を省略する。
【0053】
図9に示すように、第2の実施形態に係るボタン認識装置1は、ボタン2の上面に対して斜め上方から照射光を照射する3つの照明装置25R、25G、25B(25)を有している。各照明装置25は、ボタン2の上面に対して周方向に120°毎に間隙をもって配置されており、第1照明装置25Rは、レッド(R)の色彩の照射光を、第2照明装置25Gはグリーン(G)の色彩の照射光を、第3照明装置25Bはブルー(B)の色彩の照射光を照射するようになっている。そして、第2の実施形態に係るボタン認識装置1において、画像処理装置5のCPU6は、各照明装置25によってボタン2の上面に対して周方向に複数の角度から同時にRGBの照射光を照射するようになっている。
【0054】
このようなボタン認識装置1によれば、各照明装置25から同時にRGBの照射光を照射すると、第1照明装置25Rからボタン2を介して対向する位置には、GBの混色の影が形成され、第2照明装置25Gからボタン2を介して対向する位置には、RBの混色の影が形成され、第3照明装置25Bからボタン2を介して対向する位置には、RGの混色の影が形成されることとなる。
【0055】
また、第2の実施形態におけるボタン認識装置1において用いられるカメラ10も、白黒、カラーのいずれのカメラ10を用いてもよく、種々のカメラ10を用いることができる。
【0056】
次に、第2の実施形態の作用について説明する。
【0057】
まず、画像処理装置5は、各照明装置25を同時に点灯してボタン2の上面にRGBの照射光を照射する照射工程を行い、各照射光によりボタン2の影を形成する。この状態で、画像処理装置5は、同時に照射されたRGBの照射光により形成されたボタン2の影をボタン2の上方からカメラ10によって撮像する撮像工程を行う。これにより、第2実施形態におけるボタン認識装置1は、3方向からの照射光により形成された影を1つの撮像工程によって撮像することができる。
【0058】
続いて、画像処理装置5は影の画像を画像メモリ12に記録する画像記録工程を行うとともに、各照明装置25を消灯する消灯工程を行った後、撮像された影の1つの画像を用いてボタン2の凹凸形状を認識することにより、ボタン2の表裏を判別する判別工程を行う。第2の実施形態における判別工程において、画像処理装置5は、各画像の合成処理を行うことなく、3方向からの照射光により形成された影の1つの画像を用いて判別工程を行う。
【0059】
第2の実施形態によれば、第1の実施形態と同様にボタン2の上面に照射光を照射してボタン2の影を形成し、ボタン2の影を撮像してその影の画像を用いることによりボタン2の表裏を判別することができるので、表面2aと裏面2bとの形状が異なる種々のボタン2について表裏を判別することができる。したがって、従来と比較して表裏の判別を行うことが可能なボタン2の種類が増え、表面2aと裏面2bとの形状が異なる多種多様のボタン2の表裏を判別することができる。
【0060】
また、ボタン2の影の画像を用いてボタン2の表裏を判別するので、判別対象となるボタン2を変更する場合であっても、画像処理プログラムにおいて表裏を判別する際の基準を変更するのみで、判別対象となるボタン2を変更することができ、ボタン2のサイズや形状が大きく異なる場合であっても、スムーズに判別対象となるボタン2の種類を変更することができる。
【0061】
さらに、ボタン認識装置1は、3方向からの照射光により形成される影を、1回の撮像工程によって撮像することができ、各画像の合成処理を行う必要もないので、多方向からの照射光により形成される影の画像を用いて表裏を判別するにあたり、時間の短縮化を図ることが可能となる。
【0062】
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、必要に応じて種々変更することが可能である。
【0063】
例えば、前記各実施形態においては、複数の照明装置25がボタン2の上面に対して周方向に等間隔の間隙をもって配置されているが、本発明はこれに限定されるものではない。1方向から照射光を1回照射することにより形成されるボタン2の影の画像により明らかに表裏の判別が可能であれば、照明装置3、25の数は1つであってもよい。また、ボタン認識装置1が複数の照明装置3、25を備えている場合に、ボタン2の上面に対して周方向に等間隔の角度によって配置されていなくてもよい。
【0064】
また、前記各本実施形態においては、ボタン2の上面に対して周方向に複数の角度から照射光を照射するにあたり、複数の照明装置3、25が用いられているが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば1つの照明装置を用い、カメラ10の下方に搬送されたボタン2自体を回転させたり、または、1つの照明装置をボタン2の一面に対して周方向に回転させて、所定の位置においてボタン2の一面に照射光を照射するようにしてもよい。
【0065】
さらに、本発明に係るボタン認識装置1およびボタン認識方法においてボタン2の表裏を判別する方法は、ラベリング処理に限定されず、種々の方法によってボタン2の表裏を判別することが可能である。例えば、予め判別対象となるボタン2の表面2aまたは裏面2bの影の規格画像を記録し、カメラ10によって撮像された影による画像と前記規格画像と比較してボタン2の表裏の判別を行ってもよい。また、判別対象となるボタン2の表面2aまたは裏面2bの影の規格画像について、影部分の画素数の総和を予め記録し、撮像された影による画像の影部分の画素数の総和と比較してボタン2の表裏の判別を行ってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明に係るボタン認識装置の一実施形態を示す概略斜視図
【図2】図1に示すボタン認識装置の構成を示すブロック図
【図3】図1に示すボタン認識装置の照明装置の配置位置を示す概略平面図
【図4】図1に示すボタン認識装置を用いたボタン認識方法を示すフローチャート
【図5】(a)は、図4に示すボタン認識方法においてボタンの表面が上方を向いている場合における照射工程を示す概略側面図、(b)は、図5(a)におけるボタンの概略平面図
【図6】(a)は、図4に示すボタン認識方法においてボタンの裏面が上方を向いている場合における照射工程を示す概略側面図、(b)は、図5(a)におけるボタンの概略平面図
【図7】図4に示すボタン認識方法におけるボタンの表裏を判別する判別工程を示すフローチャート
【図8】(a)は、図7に示す判別工程においてボタンの表面が上方を向いている場合のボタンの影の合成画像を示す概略平面図、(b)は、図7に示す判別工程においてボタンの裏面が上方を向いている場合のボタンの影の合成画像を示す概略平面図
【図9】本発明に係るボタン認識装置の第2の実施形態における照明装置の配置位置および影の形成状態を示す概略平面図
【符号の説明】
【0067】
1 ボタン認識装置
2 ボタン
3A、3B、3C、3D(3) 照明装置
5 画像処理装置
6 CPU
8 高さ調整装置
10 カメラ
12 画像メモリ
13 ワークメモリ
15 A/Dコンバータ
16 カメラ制御部
17 照明制御部
18 高さ調整制御部
19 プログラムメモリ
20 I/F
21 搬送装置
22 搬送制御部
23 ミシン制御部
25R、25G、25B(25) 照明装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボタンの一面に対して斜め前方から照射光を照射する照明装置と、
前記照射光により形成された前記ボタンの影を撮像する撮像装置と、
撮像された前記影の画像を用いて前記ボタンの凹凸形状を認識することにより、前記ボタンの表裏を判別する画像処理装置とを有することを特徴とするボタン認識装置。
【請求項2】
前記照明装置として、前記ボタンの一面に対して周方向に所定の間隙をもって複数の照明装置が配置されていることを特徴とする請求項1に記載のボタン認識装置。
【請求項3】
前記画像処理装置が、撮像された前記影の画像を用いて前記ボタンの糸通し孔の位置を検出することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のボタン認識装置。
【請求項4】
ボタンの一面に対して斜め前方から照射光を照射する照射工程と、
前記照射光により形成された前記ボタンの影を撮像する撮像工程と、
撮像された前記影の画像を用いて前記ボタンの凹凸形状を認識することにより、前記ボタンの表裏を判別する判別工程とを有することを特徴とするボタン認識方法。
【請求項5】
前記照射工程において、前記ボタンの一面に対して周方向に複数の角度から順次照射光を照射し、
前記撮像工程において、前記各角度からの照射光の照射に対応して前記ボタンの影をそれぞれ撮像し、
前記判別工程において、撮像された複数の前記影の画像を合成し、前記合成された影の画像を用いて前記ボタンの凹凸形状を認識することにより、前記ボタンの表裏を判別することを特徴とする請求項4に記載のボタン認識方法。
【請求項6】
前記照射工程において、前記ボタンの一面に対して周方向に複数の角度から異なる色彩の照射光を同時に照射し、
前記撮像工程において、前記各照射光の照射により形成された前記ボタンの影を1回で撮像し、
前記判別工程において、撮像された1つの前記ボタンの影の画像を用いて、前記ボタンの表裏を判別することを特徴とする請求項4に記載のボタン認識方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−78562(P2010−78562A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−250480(P2008−250480)
【出願日】平成20年9月29日(2008.9.29)
【出願人】(000003399)JUKI株式会社 (1,557)
【Fターム(参考)】