説明

ボツリヌス毒素除去用高分子基材、及び医療器具

【課題】 本発明の課題は、これまでの技術を鑑み、安全性や血液適合性が高く、ボツリヌス毒素に対する吸着除去能の高い糖類が結合された高分子基材、その製造方法、該高分子基材を用いた医療器具を提供することにある。
【解決手段】 分子内にメチレン基を有する中空糸膜等の高分子支持体に糖類が結合された高分子鎖がグラフト重合反応により結合した高分子基材、該固定化高分子基材を用いた医療器具を提供することにより課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はボツリヌス毒素を除去するための糖類が結合された高分子基材、及び医療器具に関する。
本発明は、「平成18年度、新エネルギー・産業技術総合開発機構委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願」(旧「平成18年度、新エネルギー・産業技術総合開発機構委託研究、産業活力再生特別措置法第30条の適用を受ける特許出願」)である。
【背景技術】
【0002】
血液中から疾病の原因となる因子を除くことで疾病の治療及び予防を目的とした医療用の血液浄化器が1990年代に市場に投入され、医薬品では十分な治療効果が得られない家族性高脂血症、自己免疫疾患、潰瘍性大腸炎、敗血症ショック等の治療に貢献している。
開発の方向性は、患者の侵襲を軽減化させるため血漿成分吸着法から全血を用いた血液浄化用吸着法へ転換させるための改良研究、ならびに既存製品を用いて新たな対象疾患を探索することで適応拡大を目指した開発が行なわれている。
これらの吸着型の血液浄化装置の要求される仕様は、疾病を起こす原因となる因子に高い特異性を示すリガンドを用いること、また高効率に血液(血漿)から捕捉できる固定化基材を作製することが必要である。リガンドの選択と高分子基材への有効な固定法が必要となる。
【0003】
細菌毒素で最も致死活性が高いといわれているボツリヌス毒素はボツリヌス菌によって産生される毒素で、神経麻痺を引き起こす食中毒の原因菌として知られている。この毒素は数種類のタンパク質から構成されているが、その正確な構造や各成分の結合様式はよく分かっていない。ボツリヌス毒素に由来する疾患の治療は、特異抗体による中和で血中の毒素を不活化する抗毒素療法が有効である。破傷風毒素に対してはヒト血液由来破傷風免疫グロブリンが用いられているが、ボツリヌス毒素に対してはウマ由来の古典的な抗毒素が用いられるため、血清病の発症が懸念される。このような欠点を克服すべく、抗毒素を用いずに人工透析で血中から毒素を除去することが試みられ、有効性が示されているが、さらに効率の良い治療法の開発が求められている。
【0004】
血球凝集素(HA)と結合したボツリヌス16S毒素がラクトースと結合するとの報告(非特許文献1)があり、ラクトース固定化担体を用いて毒素の分離・精製が行なわれている。該糖鎖を多孔質中空糸に固定化した中空糸束を作製することでヒト血液中等からボツリヌス毒素を効率よく捕捉する感染症治療用の血液浄化装置の開発が可能となる。
【0005】
(1)毒素除去用器材及びその製造方法の例として、アクリルアミドを主鎖とする糖質高分子を中空糸素材内面に化学結合してなる病原性微粒子吸着性中空糸が知られている(特許文献1及び非特許文献2)。例えば、特許文献1には、再生セルロースを始めとする高分子素材に水酸化ナトリウム水溶液を加え、次に1,4−ブタンジオールグリシジルエーテルの水−ジメチルスルホキシド混合溶液を加え、高分子素材を活性化させた後、前記糖質高分子の溶液と接触させることにより、該素材に糖鎖を導入する方法が記載されている。また、非特許文献2には、セルロース表面を水酸化ナトリウムを用いて活性化しておき、ブロモ酢酸と反応させて表面にカルボキシ基を導入し、これと前記糖質高分子とをWSC(Water Soluble Carbodiimide)で縮合することにより糖鎖を導入する方法が記載されている。
【0006】
(2)また、市販の「BIACORE CM5」の様なカルボキシメチルデキストラン鎖を有する金チップ素材表面に、Galα1→4Galβ1→4Glc(Gb)又はGalα1→4Gal(Gb)で表される糖鎖をカルボキシ基を介して結合させるものや、金チップ素材表面を1−チオ−アルカン−ω−アミン、1−チオ−アルカン−ω−カルボン酸、リポ酸、システミンなどで処理し、それらのアミノ基やカルボキシ基を介してチップ表面にGb又はGbを結合させるものが知られている(特許文献2)。
(3)ボツリヌス菌のHA陽性毒素(L及び/又はLL毒素)とHA陰性毒素(M毒素)とを含む毒素の液をラクトースカラムに通すことにより、HA陽性毒素とHA陰性毒素とを分離することを特徴とする、ボツリヌス菌毒素の分離・精製法であって、ラクトースがβ−ラクトースである分離・精製法が記載されている(特許文献3)。
(4)特許文献4には、糖類としてグロボ多糖が固定化された高分子基材について、ベロ毒素除去作用があることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−135596号公報
【特許文献2】特表2003−226697号公報
【特許文献3】特開2003−9897号公報
【特許文献4】特開2009−287011号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Arimitsu,H.,Infect.Immun.,71,1599−1603,2003
【非特許文献2】A. Miyagawa et al, Biomaterials, 27, 3304(2006)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
(1)で挙げた特許文献1及び非特許文献2に記載の高分子基材はその製造工程においてアルカリ処理が必要な上、ブロモ酢酸や1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテルなどの毒性(アレルギー性皮膚炎、皮膚炎、粘膜炎症性など)の強い化合物を用いなければならず安全性に問題があった。それ故、安全性確保には煩雑で徹底した洗浄処理が必要であった。
【0010】
また、該高分子基材からなる器具(中空糸モジュール)を血液体外循環による場合には、血液を体外に置かれた中空糸モジュールに通液後、連続的に血液を体内に戻すことが必要となるため、使用にあたって血液が凝固しないことが必須となる。しかし、器材表面へ水酸基や官能基を導入すると、糖質高分子と結合しなかった水酸基や官能基はそのまま器材表面に残ることになり、これらが血液凝固系因子である補体を活性化してしまうため(岩田博夫著、高分子学会編「バイオマテリアル」共立出版、2005年参照)、結果として血液適合性を低下させる要因となっていた。
【0011】
(2)で挙げた特許文献2に記載のバイオセンサーは、高真空下で金を加熱して蒸着させる工程が必要であるため原材料費や製造コストがかかり、かつ工程も煩雑であった。また、得られた糖鎖固定化器材も、センサー用途であるため糖鎖密度が非常に低く、その結果、吸着除去効果が非常に小さいものであった。また、BIACORE CM5は、デキストラン鎖自身の立体障害により、毒素を接触させてもデキストラン鎖内部へ浸透しづらく、センサーチップ表面でしか相互作用しないため、センサー機能を発揮するには充分であっても、吸着除去効果は発揮できなかった。
【0012】
本発明が解決しようとする課題は、安全性や血液適合性が高く、また、ボツリヌス毒素に対する吸着除去能の高い糖類が結合された高分子基材、該高分子基材を備えてなる医療器具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者等は上記課題を解決するため鋭意研究した結果、糖類を、メチレン基を有する高分子素材へ結合することによって安全性や血液適合性が高く、またボツリヌス毒素に対する吸着除去能の高い高分子基材が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0014】
すなわち、本発明は、分子内にメチレン基を有する高分子支持体に、下記一般式(1)
【0015】
【化1】

【0016】
〔式中、Rは水素原子又はメチル基を表し、Xはアルキレン基又は−R−Z−R−(但しR及びRは各々独立してアルキレン基を表し、Zは−O−、−NH−、−NR−(但しRは水素原子又は炭素原子数1〜4のアルキル基を表す)又は−S−を表す)を表し、Lは糖類を表す。〕で表される繰り返し単位(A)を有する高分子鎖、及び前記一般式(1)で表される繰り返し単位(A)と下記一般式(2)
【0017】
【化2】

【0018】
(式中、Rは水素原子又はメチル基を表し、Rは水酸基又はアミノ基を表す)で表される繰り返し単位(B)を有する高分子鎖が結合していることを特徴とする、ボツリヌス毒素除去用高分子基材を提供する。また、上記高分子基材を備えてなる医療器具、例えば中空糸モジュールを提供する。更に、当該医療器具を用いたボツリヌス毒素を含む液からのボツリヌス毒素除去方法をも提供する。
【発明の効果】
【0019】
本発明の製造方法によれば、アルカリ処理やブロモ酢酸や1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテルといった毒性の強い化合物を用いずに糖類を高分子支持体に結合することができるため、安全性の高い糖類が結合された高分子基材を製造することができる。更に、当該基材は、表面に水酸基や官能基を持たないため血液凝固系因子である補体を活性化させることはなく、素材自身が有している血液適合性を維持することができるため、高い血液適合性を有する高分子基材となる。
即ち、本発明によれば、安全性や血液適合性が高く、ボツリヌス毒素に対する吸着除去能の高い糖類が結合された高分子基材、その製造方法、医療器具、及びそれを用いたウイルス除去方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】ラクトースが固定化された高分子基材に対するウエスタンブロッティングによる吸着効果を示す図面である。
【図2】Gb3が固定化された高分子基材に対するウエスタンブロッティングによる吸着効果を示す図面である。
【図3】本発明の糖類が結合された高分子基材を備えてなる医療器具を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
1.高分子基材
本発明の高分子基材について説明する。
本発明の高分子基材は、分子内にメチレン基を有する高分子支持体に、下記一般式(1)
【0022】
【化5】

【0023】
〔式中、Rは水素原子又はメチル基を表し、Xはアルキレン基又は−R−Z−R−(但しR及びRは各々独立してアルキレン基を表し、Zは−O−、−NH−、−NR−(但しRは水素原子又は炭素原子数1〜4のアルキル基を表す)、又は−S−を表す)を表し、Lは糖類を表す。〕で表される繰り返し単位(A)を有する高分子鎖、及び前記一般式(1)で表される繰り返し単位(A)と下記一般式(2)
【0024】
【化6】

【0025】
(式中、Rは水素原子又はメチル基を表し、Rは水酸基又はアミノ基を表す)で表される繰り返し単位(B)を有する高分子鎖が結合されている特徴を有する。
【0026】
また、前記一般式(1)で表される繰り返し単位(A)と前記一般式(2)で表される繰り返し単位(B)の素材に対する結合比率は特に限定されるものではないが、期待効果や対象とするボツリヌス毒素の種類などに応じて最終的に最適な糖類密度となるよう勘案して調節すればよい。例えば、ボツリヌス毒素対する吸着除去能の向上が見られることから、前記素材単位面積当たりの結合割合は、例えば0.01〜1μmol/cmとすることが好ましい。
【0027】
本発明の糖類が結合された高分子基材は、前記製造方法により容易に得ることができる。この場合、前記繰り返し単位(A)、(B)の、素材と逆側の片末端は何れも上述した重合性化合物残基である。
【0028】
2.高分子基材の製造方法
次に、糖類が結合された高分子基材の製造方法について説明する。
本発明の糖類が結合された高分子基材の製造方法は、一般式(3)で表される繰り返し単位(C)
【0029】
【化7】

【0030】
(式中、Rはカルボキシ基、活性エステル残基を表し、Rは水素原子又はメチル基を表す)が結合している高分子素材に、下記一般式(4)
【0031】
【化8】

【0032】
(式中、Xは2価の連結基を表し、Lは糖類を表す)で表される化合物を接触させ、アミド化反応を行うことを特徴とする。
【0033】
・高分子支持体への繰り返し単位(C)の結合方法
高分子支持体への繰り返し単位(C)の結合は、グラフト重合法により行うことができる。即ち、前記高分子支持体に、エチレン性不飽和結合を有する重合性化合物(以下、単に「重合性化合物」という)を接触させる工程(1)と、前記高分子支持体に前記重合性化合物を接触させた状態で電離放射線を照射する工程(2)とをこの順で、又は、前記高分子支持体に電離放射線を照射する工程(3)と、電離放射線を照射した前記高分子支持体に前記重合性化合物を接触させる工程(4)とをこの順で行うことにより、高分子支持体への結合を行うことができる。
【0034】
・高分子支持体
本発明に用いる高分子支持体は、電離放射線照射によって発生したラジカルに、重合性化合物がグラフト重合することができ、かつ、血液適合性の高いものであれば、公知慣用の高分子素材を用いることができる。この様な高分子支持体として、分子内にメチレン基を有するような高分子化合物が挙げられる。本発明に用いる高分子支持体の具体例としては、例えば、オレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、スルホン系樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、エステル系樹脂、エーテル系樹脂又はセルロースアセテートが挙げられ、より具体的にはポリエチレンテレフタレート、エチレンビニルアルコール共重合体、ポリメチルメタクリレート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアクリロニトリル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ−4−メチルペンテン等を例示できる。
【0035】
高分子支持体の形状は特に限定はなく、中空糸膜、ビーズ状成型物、不織布など種々の形態のものとして用いることができる。体外循環への適用時には血液が滞留する構造を持つビーズ状成型物や不織布として用いることも可能であるが、ビーズ状成型物や不織布は滞留部において血栓の発生が多くなることから、このような用途を目的とする場合は中空糸膜を使用することが望ましい。また、中空糸膜をろ過膜として使用しないのであれば、多孔質である必要もない為、用途に応じて中空糸の形態は選択すればよい。
【0036】
・重合性化合物
エチレン性不飽和結合を有する重合性化合物としては、血液適合性の高いものであれば特に限定することなく用いることができるが、好ましくはHC=CR(但し、Rは水素原子又はメチル基を表し、Rはカルボキシ基、活性エステル残基を表す。)で表されるエチレン性不飽和結合を有する重合性化合物が挙げられる。このうち、好ましい化合物の具体例としては、アクリル酸、メタクリル酸、活性エステル残基とアクリル酸の縮合物、活性エステル残基とメタクリル酸の縮合物などが挙げられ、ここで用いられる活性エステル残基としては、ヒドロキシスクシンイミド、ヒドロキシベンゾトリアゾールなど、後述するアミド化反応で挙げた慣用の活性エステルの残基を挙げることができる。上述した重合性化合物のうち、異なる重合性化合物を2種以上用いることもできる。
【0037】
・接触方法
前記高分子支持体と前記重合性化合物との接触方法は、前記重合性化合物を水系溶媒に溶解させて水溶液とした上で、上記高分子支持体と接触させればよい。本発明においては、前記高分子支持体表面におけるグラフト重合を優先的に進行させることから、水溶液中の前記重合性化合物の濃度は低い方が好ましい。あまり高い濃度、例えば20質量%以上では、ラジカルが溶液中に拡散し溶液中で重合反応が同時進行する場合がある。具体的には、使用する重合性化合物各々の溶解度により上限が限定されるが、概ね0.1質量%以上、好ましくは0.1〜20質量%、より好ましくは0.1〜15質量%の範囲である。
【0038】
・電離放射線照射、グラフト重合
前記高分子支持体に電離放射線を照射して発生させたラジカルにより、前記重合性化合物が有するエチレン性不飽和結合部位を高分子支持体にグラフト重合させる。グラフト重合に際して用いる電離放射線としては、α線、β線、γ線、加速電子線、X線等があげられ、実用的にはγ線、加速電子線が望ましい。
【0039】
グラフト重合法は前記高分子支持体と重合性化合物とを接触させて電離放射線を照射する同時照射グラフト重合法と高分子支持体を予め照射した後、重合性化合物と接触させる前照射グラフト重合法のいずれでも可能であり、目的に合わせて選択できる。
【0040】
本発明の電離放射線を用いたグラフト重合法において、要求される照射線量や加速電圧は高分子素材によって異なるため一概には範囲を決めることができず、よって該高分子の素材、形態、厚みなどを考慮し適宜調整することが必要である。たとえば、照射量が多いと帯電による絶縁破壊が発生し、照射量が少ないと重合反応が進まない。このため、高分子支持体の材質や形態などを考慮し、帯電による絶縁破壊が発生せず、かつ重合反応が充分に進むよう照射量を適宜調整すればよい。また、加速電圧は透過性に関係するため高分子支持体の厚みや形態によって調整すればよく、例えばフィルムなど薄い形態の場合、加速電圧は一般には小さくてよい。
【0041】
例えば、高分子支持体が4−メチル−1−ペンテンからなる厚さ0.1μm〜10μmの中空糸の場合においては、照射線量を10kGyから300kGyとすることが好ましく、10kGyから90kGyとすることがより好ましい。また、加速電圧は0.1kVから10kVとすることが好ましく、0.1kVから5kVとすることがより好ましい。
【0042】
前記照射グラフト重合において、照射後の素材中のラジカルは温度の上昇、酸素との接触によって速やかに不活化される。従って、照射後は十分に酸素を除いた状態で低温にて貯蔵し、速やかに重合反応を行うことが好ましい。また同じ理由で、当該重合反応は、脱酸素下、又は不活性ガス下で実施することが望ましい。
【0043】
重合後の高分子支持体は、水洗など種々の方法で未反応や未結合の重合性化合物を除去すればよい。未反応の重合性化合物は水溶性であり、また、高分子支持体に未結合のものはある程度反応して高分子量化したものが中心であるため、アルカリ処理やブロモ酢酸や1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテルを用いた化学結合法に比べるとより簡便な洗浄工程で除去することができる。水洗など種々の方法で未反応や未結合の重合性化合物等を除去した後、適宜、乾燥工程を加えることもできる。なお、未反応や未結合の重合性化合物等の除去は、GPCによる測定で検出限界以下になるまで行うことが好ましい。
【0044】
高分子支持体の形状が中空糸膜である場合には、製造する器材(器具)の使用形態に応じて糸の内面、外面のどちらか一方、あるいは両面のいずれかを選択して前記重合性化合物をグラフト重合反応により結合すればよい。例えば、中空糸内部に血液を還流させて使用するのであれば中空糸内部に前記重合性化合物を結合すれば良く、逆に外部に還流させて使用するのであれば中空糸外部に結合すればよい。さらに中空糸膜をろ過膜として使用する場合には両面に結合させてもよい。
【0045】
グラフト重合は、一般式(3)で表される繰り返し単位(C)の繰り返し数が1以上となるよう行うことが好ましい。
また、繰り返し単位(C)の単位面積当たりの導入量はグラフトモノマー換算で0.01μmol/cm以上とすることが好ましく、一方、重合性化合物の結合量の過剰な増加は素材内部からのグラフト重合進行による変形や変質をもたらし、洗浄を困難にすることから、0.1〜5μmol/cmとすることがより好ましい。
【0046】
・アミド化反応
上述の方法などで得られた一般式(3)で表される繰り返し単位(C)が結合している高分子支持体に、一般式(4)で表される化合物を接触させ、アミド化反応する。アミド化反応の方法は、例えば、活性エステルによるアミド化、縮合剤によるアミド化、これらの併用、混合酸無水物法、アジド法、酸化還元法、DPPA法、ウッドワード法など、ペプチド合成などで用いられている公知慣用のアミド化反応を行えばよい。
【0047】
活性エステルによるアミド化としては、例えば、NHS(N−ヒドロキシスクシンイミド)、ニトロフェノール、ペンタフルオロフェノール、DMAP(4−ジメチルアミノピリジン)、HOBT(1−ヒドロキシベンゾトリアゾール)、HOAT(ヒドロキシアザベンゾトリアゾール)、HOSu(ヒドロキシスクシンイミド)などを用いて、脱離能の高い基をカルボキシ基と一旦縮合させた活性エステルを形成させておき、これにアミノ基を反応させる方法が挙げられる。縮合剤によるアミド化は、それ単独で用いても良いが、上記活性エステルと併用することができる。縮合剤としては、EDC(1−(3−ジメチルアミノプロピル−3−エチル−カルボジイミドヒドロクロライド)、HONB(エンド−N−ヒドロキシ−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボキサミド)、DCC(ジシクロヘキシルカルボジイミド)、BOP(ベンゾトリアゾール−1−イルオキシトリス(ジメチルアミノ)ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート)、HBTU(O−ベンゾトリアゾール−1−イル−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート)、TBTU(O−ベンゾトリアゾール−1−イル−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムテトラフルオロボレート)、HOBt(1−ヒドロキシベンゾトリアゾール)、HOOBt(3,4−ジヒドロ−3−ヒドロキシ−4−オキソ−1,2,3−ベンゾトリアジン)、ジ−p−トリオイルカルボジイミド、DIC(ジイソプロピルカルボジイミド)、BDP(1−ベンゾトリアゾールジエチルホスフェート−1−シクロヘキシル−3−(2−モルホリニルエチル)カルボジイミド)、フッ化シアヌル、塩化シアヌル、TFFH(テトラメチルフルオロホルムアミジニウムヘキサフルオロホスホスフェート)、DPPA(ジフェニルホスホラジデート)、TSTU(O−(N−スクシニミジル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムテトラフルオロボレート)、HATU(N−[(ジメチルアミノ)−1−H−1,2,3−トリアゾロ[4,5,6]−ピリジン−1−イルメチレン]−N−メチルメタンアミニウム・ヘキサフルオロホスフェート・N−オキシド)、BOP−Cl(ビス(2−オキソ−3−オキサゾリジニル)ホスフィンクロライド)、PyBOP((1−H−1,2,3−ベンゾトリアゾール−1−イルオキシ)−トリス(ピロリジノ)ホスホニウム・テトラフルオロホスフェート)、BrOP(ブロモトリス(ジメチルアミノ)ホスホニウム・ヘキサフルオロホスフェート)、DEPBT(3−(ジエトキシホスホリルオキシ)−1,2,3−ベンゾトリアジン−4(3H)−オン)、PyBrOP(ブロモトリス(ピロリジノ)ホスホニウム・ヘキサフルオロホスフェート)などが挙げられる。
【0048】
このうち、カルボキシ基を一旦、NHS化した後に、一般式(4)で表される化合物のアミノ基と反応させアミド化する方法が好ましく、さらに、NHSにEDCを加えてアミド化する方法がより好ましい。
【0049】
これらのアミド化方法において利用できる溶媒としては、水やペプチド合成に用いられる有機溶媒、例えばジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ヘキサホスホロアミド、ジオキサン、テトラヒドロフラン(THF)、酢酸エチル等、更にはこれらの混合溶媒やこれらを含む水溶液が挙げられる。
【0050】
カルボキシ基への活性化エステル残基導入割合は、用いる活性化剤の種類や、試薬の使用量に依存する。一般的に、溶液中での反応と比較し、重合性化合物から得られる重合体が結合されていることで、反応性が落ちる為、導入量を上げる為には反応試薬をかなり過剰量用いる必要があると考えられる。従って、カルボキシ基固定化量に対する活性化剤と縮合剤反応試薬の量比は一概には規定できないが、概ねモル比で、1から100程度用いることが望ましい。糖類の量は活性エステル残基に対してモル比で1から100倍程度過剰量用いることができる。
【0051】
未反応の活性エステル残基はアンモニア水溶液との反応でアミドに変換し、取り除くことができる。アンモニア以外の反応後除去の容易な1級アミンを用いてアミド化することで、取り除くこともできる。いずれにせよ、器材に残存しないよう除去しておくのが望ましい。
【0052】
・一般式(4)で表される化合物
本発明で用いる下記一般式(4)
【0053】
【化9】

【0054】
の化合物において、Xは2価の連結基を表し、その例としてアルキレン基、任意の位置が単一又は複数の炭素以外の元素(酸素原子、窒素原子、硫黄原子など)で置換されたアルキレン基などが挙げられる。より具体的には、炭素原子数1〜30のアルキレン基、又は−R−Z−R−で表される基が挙げられる。但し、R及びRはアルキレン基、具体的には炭素原子数1〜30のアルキレン基を表し、Zは−O−、−NH−、−NR−(但しRは水素原子又は炭素原子数1〜4のアルキル基を表す)又は−S−を表す。
【0055】
また、式中のLは糖類を表し、本発明においてボツリヌス毒素に対して吸着、不活化する性能を有する糖類である。上記の本発明で用いられる好ましい意糖類としては、ラクトース、グロボ多糖を挙げることができ、更に好ましいグロボ多糖の例として、下記式
【0056】
【化10】

【0057】
(式中、nは0〜1の整数を表す)で表されるガラクトシルラクトース(Gb3、P
ッカライド)、ガラクトシルガラクトース(Gb2)などの糖類を挙げることができる。
これらの糖類の高分子基材への固定化は、公知慣用の方法で行うことができる(例えば、特開2009−287011号公報に記載の方法を参照)。
【0058】
上記の製造方法は、重合性化合物を高分子支持体と重合させた後に、アミド化反応により糖類を固定化する方法であるが、糖類と高分子支持体と反応し得る重合性官能基を有する化合物を反応させた化合物を予め作製しておいて、グラフト重合法により当該化合物と高分子支持体を反応させ、高分子鎖を導入する方法も挙げられる。しかし、当該法では、ボツリヌス毒素の吸着率が低く、本発明の製造方法が優れていることが判明した(実施例及び比較例を参照)。
【0059】
3.用途
本発明の糖類が結合された高分子基材の製造方法は高分子支持体の材質や形態に関して広範囲に適用できることから、目的や用途に応じて種々の高分子基材を得ることが可能である。よって本発明の器材や器具は、前記ボツリヌス毒素吸着除去以外にもボツリヌス毒素の精製や分離など広範な用途に利用することができる。
本発明の高分子基材で吸着されるボツリヌス毒素は、ボツリヌス菌によって産生され、種々の型を有する神経毒素である。ボツリヌス毒素には、AからGまでの型があり、型に応じて様々な複合体を形成することが知られている。
【0060】
本発明で除去の対象とするボツリヌス毒素は、上記種々の毒素が含まれるが、本発明の高分子基材は、特に赤血球凝集素(HA)を有するB型16S毒素に対する除去作用が強い特徴を有する。
【0061】
4.医療器具の形態、使用方法
本発明の高分子基材を備えてなる医療器具の形態としては、前記用途に適用可能な形状であれば特に限定されるものではないが、例えば中空糸モジュールや濾過カラム、フィルターなどが挙げられる。中空糸モジュールや濾過カラムにおいて、容器の形状及び材質は特に限定されないが、体液(血液)の体外循環に適用する場合、内部容量が10〜400mLで外径が2〜10cm程度の筒状容器とすることが好ましく、内部容量が20〜200mLで外径が2.5〜4cm程度の筒状容器とすることがより好ましい。
本発明の医療器具の一例を図3に示す。
【0062】
本発明の医療器具の使用方法としては、ボツリヌス毒素を含む液(例えば、ボツリヌス毒素を含む水溶液や血液、血漿、血清等の体液)と接触させて該液中のボツリヌス毒素を吸着除去、分離することができればいずれの方法でもよい。このような方法として例えば以下の方法を挙げることができる。
(1)本発明の高分子基材としての中空糸を有するモジュールを用意し、該モジュールにボツリヌス毒素を含む液を通過させる方法
(2)流出口に液は通過できるが本発明の高分子基材は通過できないフィルターを装着し、内部に該器材を充填したカラム様容器を用意し、これにボツリヌス毒素を含む液を通過させる方法
(3)貯留バッグ等の容器を用意し、これにボツリヌス毒素を含む液と本発明の高分子基材を加えて混合した後、上澄み液を回収する方法
(1)や(2)の方法は操作が簡便である点で好ましく、体外循環回路に組み込むことにより患者の体液から効率よくインラインでボツリヌス毒素を除去することが可能である。このうち、さらに好ましい方法として(1)の方法が挙げられる。(2)や(3)の方法では、例えば血液を扱う場合、その凝固を防止するため血液を血球と血漿に分離した上で血漿のみを処理する必要があるが、(1)の方法ではこのような工程を必要とせず、操作が最も簡便でかつ患者への負担が少なくて済む。
【実施例】
【0063】
以下、具体例により、本発明を更に詳しく説明する。
【0064】
(実施例1)<ラクトース固定化高分子基材の作製>
アクリル酸モノマー5gをメタノール100mLに溶解して5[g/dL]メタノール溶液とし、窒素ガスを溶液中に導入してメタノール溶液中の溶存酸素を除去した。次にポリ−4−メチルペンテン−1製の中空糸束(中空糸面積:240cm、DIC(株)製)をガラス製試験管に入れ、ゴム栓にて密封し、試験間内部を窒素置換した。その後、4.8MeVの加速エネルギーで90kGyの電子線を照射した。
【0065】
次に、23℃で、電子線を照射した中空糸束入り試験管内を真空にしてから、脱酸素したアクリル酸モノマーのメタノール溶液を加えて電子線グラフト重合を行った。23℃で4時間静置した後、中空糸束を取り出し、メタノールで数回洗浄して未反応のモノマー等を除去し、未反応のモノマーがGPC測定で検出限界以下になったことを確認し、アクリル酸ポリマー固定化中空糸を得た。中空糸の固定化されたポリアクリル酸の量は、重量増加から算出した(アクリル酸ポリマー固定化量28.7mg、1.7μmol/cm)。
【0066】
次に、N−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)92mg、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩EDC158mgをDMF15mLに溶解し、続いて該DMF溶液にアクリル酸ポリマー固定化中空糸240cmを浸漬し、一晩静置した。中空糸を洗浄後、得られたラクトース−O−C12−NH化合物の1mg/mL含有DMF溶液に23℃で16時間浸漬後、アンモニア水溶液を10μL加えて、未反応の活性エステルを除去し、水100mLに10分浸漬後、水を交換して、再浸漬を数回繰り返して洗浄して、固定化中空糸を得た。浸漬前後でラクトース−O−C12−NH化合物濃度をHPLCにより測定し、単位面積当たりの糖固定化量を算出したところ、0.4μmol/cmであった。
【0067】
(実施例2)<Gb3固定化高分子基材の作製>
特開2009−287011号公報(実施例1)に記載の方法に従って糖類(Gb3)固定化高分子基材を調整した。
【0068】
<合成例>
次に、高分子支持体への高分子鎖の導入方法の異なる下記合成例を行った後に、下記試験例を行った。
即ち、先ず、下記化学式で示される6−[2−(N−Acryloylamino)ethylthio]hexyl β−D−galactopyranosyl−(1→4)−β−D−glucopyranoside(5)(以下、ラクトースモノマーという)の合成を行った。
【0069】
【化10】

【0070】
【化11】

【0071】
(合成例1)<6−[2−(N−Acryloylamino)ethylthio]hexyl 2,3,4,6−tetra−O−acetyl−β−D−galactopyranosyl−(1→4)−2,3,6−tri−O−acetyl−β−D−glucopyranoside(7)の合成>
【0072】
5−hexenyl 2,3,4,6−tetra−O−acetyl−β−D−galactopyranosyl−(1→4)−2,3,6−tri−O−acetyl−β−D−glucopyranoside(6)50〔mg〕及びアミノエタンチオール塩酸塩28〔mg〕をTHF2〔mL〕に溶解、懸濁し、AIBN 2〔mg〕を加えて減圧窒素置換後、油浴温度70℃で加熱撹拌した。反応の進行はTLC(ヘキサン/酢酸エチル=1/2)で確認した。原料消失後、酢酸エチルと炭酸水素ナトリウム水溶液を加えて分液し、酢酸エチル層に無水硫酸ナトリウムを加えて乾燥、ろ過後、次工程にそのまま用いた。
【0073】
酢酸エチル溶液にトリエチルアミン12〔mg〕を加えて氷冷下、アクリル酸クロリド5.4〔mg〕を滴下した。10分後、TLC(酢酸エチル/メタノール=1/2)で原料の消失を確認した。水を加えて分液、後処理を行い、シリカゲルカラムクロマト(トルエン/酢酸エチル=1/3)で精製し、化合物(7)を得た。収量51.4〔mg〕、収率90%。
【0074】
(合成例2)<6−[2−(N−Acryloylamino)ethylthio]hexyl α−D−galactopyranosyl−(1→4)−β−D−galactopyranosyl−(1→4)−β−D−glucopyranosideの合成>
【0075】
合成例1で得られた化合物(7)51.4〔mg〕をメタノール1〔mL〕に溶解し、MeONa2.4〔mg〕を加えて室温で撹拌した。LC(MeOH/HO=20/80)で反応の進行を確認した。イオン交換樹脂で中和し、濃縮乾固して目的物のGb3モノマーを得た。収量 30.5〔mg〕、収率90%。
H−NMR(300MHz,DO)δ6.32−6.15(m,2H),5.76(dd,1H),4.47(d,1H),4.43(d,1H),3.99−3.62(m,12),3.48(t,2H),3.30(t,1H),2.74(t,2H),2.59(t,2H),1.70−1.50(m,4H),1.40−1.30(m,4H)
13C−NMR(75MHz,DO)δ169.4,130.8,128.3,103.8,102.9,79.4,76.2,75.6,75.36,73.7,73.4,71.8,71.4,69.4,61.9,61.4,61.0,39.7,31.9,31.2,29.5,28.5,25.4
【0076】
(試験例1)ボツリヌス毒素吸着量の測定試験
ボツリヌス毒素の吸着能は、固定化中空糸に4℃で一夜浸漬させた上清中に残存した毒素をウサギ抗16S毒素抗体によるウエスタンブロッティングによる方法及び50,000〜100,000[LD50/mL]になるように濃度調整した毒素を一定量マウスに静脈注射し、死亡時間から吸着せずに残った毒素量を算出する方法(マウス接種法)で行った。
【0077】
中空糸にアクリル酸をグラフトした後に、ラクトースモノマーを固定化した中空糸のボツリヌス16S毒素に対する吸着能を比較した。浸漬後の溶液中の毒素は、残存がみられず、中空糸に吸着されていることがウサギ抗ボツリヌス16S毒素抗体を用いたウエスタンブロッティングで確認した(図1)。
また、吸着試験後の溶液をマウス接種法により毒素吸着量を定量した。
本結果から、ラクトース固定化中空糸は対照の(処理前)に比し、毒素液を浸漬させた後の上清中の毒素量は、90%以上の減少が確認された。結果を表1に示す。
【0078】
【表1】

【0079】
(比較例1)
試験例1と同様にして、電子線を照射した中空糸に直接、アクリルアミドを重合末端に持つ糖類モノマー(5)を加えて固定化した中空糸のボツリヌス毒素に対する吸着効果を確認した。結果を、図1のウエスタンブロッティングに示すが、吸着の効果は認められなかった。図1にウエスタンブロッティングによる吸着効果を示す。
【0080】
(試験例2)
実施例2で得られたGb3固定化中空糸を用いて、ウサギ抗ボツリヌス16S毒素抗体の替わりに、ウサギ抗ボツリヌス12S毒素抗体を用いる他は、試験例1と同様にウエスタンブロッティングで確認を行った(図2)。
更に、試験例1と同様にして、吸着試験後の溶液をマウス接種法によりボツリヌス毒素吸着量の測定試験を行った。本結果から、Gb3固定化中空糸は対照の(処理前)に比し、毒素液を浸漬させた後の上清中の毒素量は、80%以上の減少が確認された。結果を表2に示す。
【0081】
【表2】

【0082】
これらの結果から、実施例による本発明の高分子基材が好適に、ボツリヌス毒素を吸着することが明らかとなった。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明により得られる、安全性や血液適合性が高く、またボツリヌス毒素に対する吸着除去能の高い糖類が結合された高分子基材、該高分子基材を備えてなる中空糸モジュール等の医療器具として利用が可能である。
【符号の説明】
【0084】
1:処理前の上清中のボツリヌス毒素のウエスタンブロッティング
2:アクリル酸のみを固定化した中空糸で処理を行った上清中のボツリヌス毒素のウエスタンブロッティング
3:比較例1で作製した中空糸で処理を行ったボツリヌス毒素のウエスタンブロッティング
4:実施例1で作製した中空糸で処理を行ったボツリヌス毒素のウエスタンブロッティング
5:分子量マーカー
6:処理前の上清中のボツリヌス毒素のウエスタンブロッティング
7:実施例1で作製したアクリル酸ポリマー固定化中空糸で処理を行った上清中のボツリヌス毒素のウエスタンブロッティング
8:実施例1で作製したラクトース固定化中空糸で処理を行った上清中のボツリヌス毒素のウエスタンブロッティング
9:実施例2で作製したGb3固定化中空糸で処理を行った上清中のボツリヌス毒素のウエスタンブロッティング
10:流出口
11:流入口
12:糖類
13:中空糸
14:容器
15:隔壁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高分子鎖が高分子支持体に結合してなる高分子基材であって、一般式(1)
【化1】

(1)
〔式中、Rは水素原子又はメチル基を表し、Xはアルキレン基又は−R−Z−R−(但しR及びRは各々独立してアルキレン基を表し、Zは−O−、−NH−、−NR−(但しRは炭素原子数1〜4のアルキル基を表す)又は−S−を表す)を表し、Lは糖類を表す。〕で表される繰り返し単位(A)を有する高分子鎖、
及び下記一般式(2)
【化2】

(2)
(式中、Rは水素原子又はメチル基を表し、Rは水酸基又はアミノ基を表す)で表される繰り返し単位(B)を有する高分子鎖が結合していることを特徴とするボツリヌス毒素除去用高分子基材。
【請求項2】
前記高分子支持体が、オレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、スルホン系樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、エステル系樹脂、エーテル系樹脂又はセルロースアセテートである請求項1に記載のボツリヌス毒素除去用高分子基材。
【請求項3】
前記オレフィン系樹脂が、4−メチル−1−ペンテンの重合体である請求項2記載のボツリヌス毒素除去用高分子基材。
【請求項4】
前記高分子支持体が中空糸膜又はビーズ状成型物である請求項1〜3のいずれかに記載のボツリヌス毒素除去用高分子基材。
【請求項5】
前記糖類が、ラクトース、又はグロボ多糖である請求項1〜4の何れかに記載のボツリヌス毒素除去用高分子基材。
【請求項6】
前記グロボ多糖が、ガラクトシルラクトース、又はガラクトシルガラクトースである請求項5に記載のボツリヌス毒素除去用高分子基材。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載のボツリヌス毒素除去用高分子基材を備えてなるボツリヌス毒素除去用医療器具。
【請求項8】
請求項7に記載の医療器具を用いるボツリヌス毒素を含む液から該ボツリヌス毒素を除去する方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2011−189334(P2011−189334A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−242111(P2010−242111)
【出願日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成18年度、新エネルギー・産業技術総合開発機構委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000002886)DIC株式会社 (2,597)
【出願人】(591222245)国立感染症研究所長 (48)
【Fターム(参考)】